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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】冷却装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240710BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 510
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020108813
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006533
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218241(JP,A)
【文献】特開2016-062024(JP,A)
【文献】特開2014-134819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有する回転部材を冷却する冷却装置であって、
気流を発生させる気流発生部と、
前記回転部材の長手方向中央よりも一端側に配置され、前記気流発生部により生じた気流を前記回転部材へ向かって吹き出す第1送風口と、
前記回転部材の長手方向中央よりも他端側に配置され、前記気流発生部により生じた気流を前記回転部材へ向かって吹き出す第2送風口と、
前記第1送風口の少なくとも一部に対向する第1位置と、前記第2送風口の少なくとも一部に対向する第2位置とのいずれか一方に選択的に、移動可能な1つのシャッタと、
を備える冷却装置。
【請求項2】
前記回転部材の長手方向中央を基準に互いに対称な各位置における前記回転部材の温度が一方よりも他方で高い場合、前記シャッタを、前記第1位置と前記第2位置のうち、前記回転部材の温度が低い側の位置に移動させる請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記回転部材の長手方向中央を基準に互いに対称な各位置における前記回転部材の温度差が所定の閾値を超える場合、前記シャッタを、前記第1位置及び前記第2位置のうち、前記回転部材の温度が低い側の位置に移動させ、
前記温度差が前記所定の閾値以下である場合、前記シャッタを、前記第1位置及び前記第2位置以外の位置に移動させる請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
シートを加熱する加熱装置と、
前記加熱装置を冷却する冷却装置と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、長手方向を有し前記シートを通過させるニップ部を形成する一対の回転部材と、前記一対の回転部材のうち少なくとも一方を加熱する加熱部材と、有し、
前記一対の回転部材のうち少なくとも一方を冷却する前記冷却装置として、請求項1から3のいずれかに記載の冷却装置を用いる画像形成装置。
【請求項5】
前記加熱部材は、基材と、発熱体と、電極部と、前記発熱体と前記電極部とを接続する導電部と、を有する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電極部は、第1電極部及び第2電極部を有し、
前記導電部は、前記発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電部と、前記発熱体から前記基材の長手方向のうち第1方向側に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電部と、前記第2導電部から分岐し、前記第1方向とは反対の第2方向側に伸びて前記第1導電部を介さずに前記第2導電部又は前記第2電極部に接続される分岐経路の少なくとも一部を構成する第3導電部と、を有する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記分岐経路上に、前記第3導電部と、前記第1電極部及び前記第2電極部とは別の第3電極部と、前記第3導電部を介して前記第3電極部に接続される発熱体と、が配置される請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記加熱部材の前記発熱体が設けられた面に沿って長手方向と交差する方向を、短手方向とすると、
前記加熱部材の短手方向寸法に対する前記発熱体の短手方向寸法の比が、25%以上である請求項5から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱部材の前記発熱体が設けられた面に沿って長手方向と交差する方向を、短手方向とすると、
前記加熱部材の短手方向寸法に対する前記発熱体の短手方向寸法の比が、40%以上である請求項5から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、フィルムやローラなどの一対の回転部材を備え、これらの回転部材によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2012-252194号公報)においては、回転部材の長手方向両端側(非通紙領域)の温度上昇を抑制するため、ファンによって回転部材の長手方向両端側へ冷却風を送風する構成が提案されている。さらに、この構成においては、回転部材の長手方向の一端側と他端側での温度上昇のばらつきに対応するため、回転部材の長手方向両端側に設けられた2つの送風口を開閉するシャッタが設けられている。すなわち、温度上昇が顕著な部分とそうでない部分で同様に送風すると、温度上昇が顕著でない部分では温度が低くなり過ぎるため、その部分に対しては送風しないように送風口をシャッタで塞ぐことにより、温度が低くなり過ぎないようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に記載の画像形成装置によれば、2つの送風口のうち、一方又は他方をシャッタで塞ぐことにより、温度上昇が顕著でない側での温度低下を回避することが可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、2つの送風口のそれぞれにシャッタが個別に設けられているため、部品点数が多くなり、これらの開閉動作を独立して制御しなければならないため、制御が複雑化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、長手方向を有する回転部材を冷却する冷却装置であって、気流を発生させる気流発生部と、前記回転部材の長手方向中央よりも一端側に配置され、前記気流発生部により生じた気流を前記回転部材へ向かって吹き出す第1送風口と、前記回転部材の長手方向中央よりも他端側に配置され、前記気流発生部により生じた気流を前記回転部材へ向かって吹き出す第2送風口と、前記第1送風口の少なくとも一部に対向する第1位置と、前記第2送風口の少なくとも一部に対向する第2位置とのいずれか一方に選択的に、移動可能な1つのシャッタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】前記定着装置の斜視図である。
図4】前記定着装置の分解斜視図である。
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
図6】前記加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図8】前記ヒータの分解斜視図である。
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図10】前記ヒータの平面図である。
図11】全ての抵抗発熱体を発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図12】一部の発熱部のみを発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図13】本実施形態に係る定着装置、及びこれを冷却する冷却装置の構成を示す図である。
図14】シャッタの動作を説明するための図である。
図15】シャッタの動作を説明するための図である。
図16】本発明の他の実施形態に係る構成を示す図である。
図17】シャッタの動作を説明するための図である。
図18】シャッタの動作を説明するための図である。
図19】シャッタを定着装置内に設けた例を示す図である。
図20】加圧ローラ側へ送風する例を示す図である。
図21】気流発生部として吸引ファンを用いた例を示す図である。
図22】小型化されたヒータの平面図である。
図23】他のヒータの平面図である。
図24】さらに別のヒータの平面図である。
図25】他の定着装置の構成を示す図である。
図26】別の定着装置の構成を示す図である。
図27】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0012】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段である。
【0013】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0014】
定着部400には、用紙を加熱する加熱装置であって、用紙を加熱することにより用紙上の画像を定着させる定着装置9が設けられている。
【0015】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0016】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0017】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0019】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーやその他の異物がクリーニングブレード5によって除去され、感光体2は次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0024】
定着ベルト20は、回転可能に設けられた第1回転部材であって、用紙Pの未定着トナー担持面側(画像形成面側)に配置されて未定着トナーを用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基材を有する無端状のベルト部材で構成される。基材の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル、SUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基材の外周面に、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基材と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基材の内周面に、ポリイミドやPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0025】
加圧ローラ21は、定着ベルト20とは別の回転可能な第2回転部材であって、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の内周面に接触し、定着ベルト20を内側から加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。また、導体層52は、発熱部60を有している。
【0027】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0028】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0029】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0030】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。しかしながら、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。本実施形態のように、定着ベルト20の内周面にヒータ22を接触させている場合は、定着ベルト20の外周面の傷付きを抑制でき、定着品質の低下を回避できる利点がある。
【0031】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持するヒータ保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0032】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0034】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に進入することにより、回転する定着ベルト20と加圧ローラ21によって搬送されると共に、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0035】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが、後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0037】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0038】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0039】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0040】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0041】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれた状態で、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。また、同様にステー24も、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。
【0042】
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0043】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0044】
また、図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、図5及び図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0045】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0046】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
【0047】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向Zに渡って一列に並んで配置されている。導体層52は、複数の抵抗発熱体59のほか、複数の電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、が設けられている。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して複数の電極部61のいずれか2つに電気的に接続されている。図7に示すように、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。また、各抵抗発熱体59は、互いに間隔をあけて配列されているため、隣り合う抵抗発熱体59同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0048】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0049】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0050】
図9は、ヒータ22に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0051】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが電気的に接続される。また同様に、図9に示す電極部61とは反対側の端にある電極部61に対しても、コネクタ70が接続される。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
【0053】
以下、図10に基づき、本実施形態に係るヒータ22の構成についてさらに詳しく説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施形態に係るヒータ22には、7つの抵抗発熱体59A~59Gと、3つの電極部61A~61Cと、これらを接続する4つの給電線62A~62Dと、が設けられている。3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの一端側(図10における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの他端側(図10における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、一端側に配置される2つの電極部61A,61Cのうちのいずれかと、他端側に配置される1つの電極部61Bに対して、電気的に接続されている。
【0055】
詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0056】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部60Bとを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部60Aのみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部60A及び第2の発熱部60Bの両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0057】
ここで、本実施形態に係るヒータ22に生じる温度のばらつき(温度分布偏差)について説明する。
【0058】
一般的に、上記のような抵抗発熱体が給電線を介して電極部に接続されたヒータにおいては、抵抗発熱体を発熱させる際、給電線への通電により給電線でもわずかながら発熱が生じる。従って、給電線の発熱分布によっては、ヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。特に、画像形成装置の高速化に伴い、発熱量を増大させるべく発熱体へ流れる電流を大きくすると、給電線で生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0059】
図11では、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合に、抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62Dの発熱量とその合計値を示す。ここで、基材50の抵抗発熱体59が設けられている面に沿って長手方向Zと交差する方向Y(図10参照)を、基材50の「短手方向」と称すると、本実施形態では、各給電線62A,62B,62Dの短手方向Yに伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることから無視し、長手方向Zに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、算出された発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0060】
【数1】
【0061】
発熱量の算出方法について、図11における第1ブロック及び第2ブロックを例に説明すると、第1ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が100%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が80%、第2給電線62Bに流れる電流が20%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0062】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、図11中のグラフである。このグラフを見てわかるように、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなる。また、中央に対して対称のブロック同士(例えば、第1ブロックと第7ブロック)における各給電線の合計発熱量も異なっている。このように、給電線の発熱分布には基材の長手方向Zに渡ってばらつきがあるため、このばらつきによってヒータの発熱分布にもばらつきが発生する。
【0063】
また、このような給電線の発熱に起因する温度のばらつきは、全ての抵抗発熱体を発熱させる場合(図11に示す例)だけに限らず、一部の抵抗発熱体を発熱させる場合でも発生し得る。特に、ヒータの小型化や画像形成装置の高速化に伴って、給電線に意図しない分流が生じた場合は、温度のばらつきが顕著となる虞がある。また、意図しない分流は、ヒータを短手方向に小型化すべく、給電線の幅をヒータの短手方向に小さくした結果、給電線の抵抗値が大きくなった場合や、画像形成装置を高速化するため、抵抗発熱体の発熱量を増加させるべく、抵抗発熱体の抵抗値を小さくした場合に、発生しやすくなる。すなわち、小型化や高速化に伴って給電線の抵抗値と抵抗発熱体の抵抗値とが相対的に接近した場合は、これまで通電しなかった経路にも通電し得る(意図しない分流が発生し得る)状態となる。
【0064】
例えば、図12に示すように、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)のみに通電した場合に、図の左から2番目の抵抗発熱体59Bを通過した電流の一部が、その先の第2給電線62Bの分岐部Xにて第2電極部61B側とは反対側(図の左側)にも流れる意図しない分流が発生することがある。分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59Aを通過し、さらに、第3給電線62C、第3電極部61C、第4給電線62Dを介して右端の抵抗発熱体59Gを通過した後、第2給電線62Bに合流する。
【0065】
このように、意図しない分流は、分岐部Xから図12中の一点鎖線K3で示す分岐経路を通って第2給電線62Bに至る。また、このような意図しない分流は、本実施形態に係るヒータ22のような、導電経路が、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)と第1電極部61Aとを接続する第1導電経路(第1導電部)K1と、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fからヒータ22の長手方向のうちの第1方向S1側(図12における右方向)に伸びて第2電極部61Bに接続される第2導電経路(第2導電部)K2と、第2導電経路K2から分岐し、第1方向S1とは反対の第2方向S2側(図12における左方向)に伸びて第1導電経路K1を介さずに第2導電経路K2又は第2電極部61Bに接続される第3導電経路(分岐経路)K3と、を少なくとも有する構成であれば生じ得る。また、本実施形態では、第3導電経路(分岐経路)K3が、第2給電線62Bの一部(分岐部Xから図12における左側の部分)と、第3給電線62Cと、第4給電線62Dとから成る第3導電部のほか、両端の各抵抗発熱体59A,59G(第2発熱部60B)と、第3電極部61Cと、を含む導電経路で構成されている。なお、第3導電経路K3は、抵抗発熱体や電極部を含まない給電線のみの導電経路であってもよい。そのような場合も、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0066】
図12中の表及びグラフに、意図しない分流が発生した場合のブロックごとの各給電線62A,62B,62Dで生じる発熱量及びその合計値を示す。この例では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fへ電流が20%ずつ均等に流れた場合に、そのうちの一部の電流が分岐部Xにおいて5%分流したとして、発熱させるブロック(第2ブロック~第6ブロック)ごとの各給電線62A,62B,62Dの発熱量を算出している。なお、発熱量の算出方法は、図11に示す例で説明した方法と同様である。また、図11及び図12では、電流が一方向に流れる様子を示しているが、ヒータ22に流れる電流は直流に限らず交流であってもよい。
【0067】
図12中の表及びグラフに示すように、この場合も、給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなり、ばらつきが発生する。ただし、図12の場合は、図11とは反対に、グラフの右側のブロックよりも左側のブロックの温度が高くなる。
【0068】
このように、本実施形態に係る定着装置においては、ブロックごとに生じる給電線の発熱量に応じてヒータの温度にばらつきが生じる。また、ヒータの温度分布にばらつきがあると、ヒータによって加熱される定着ベルトの表面温度にもばらつきが発生し、定着画像に光沢ムラが発生するなど、品質が低下する虞がある。そのため、本実施形態においては、定着ベルトの長手方向に渡る温度分布のばらつきを抑制するため、以下のような対策を講じている。
【0069】
図13に、本実施形態に係る定着装置、及びこれを冷却する冷却装置の構成を示す。
【0070】
図13に示すように、本実施形態に係る冷却装置80は、気流発生部である送風ファン81と、流路形成部材としてのダクト82と、ダクト82に設けられた2つの送風口83A,83Bを開閉可能なシャッタ84と、を備えている。
【0071】
ダクト82は、送風ファン81から定着装置9へ向かって二股に分かれており、二股に分かれた部分の先にそれぞれ送風口83A,83Bが設けられている。2つの送風口83A,83Bのうち、一方の送風口83A(第1送風口)は、定着ベルト20の長手方向中央mよりも一端側(図13における左端側)に配置され、他方の送風口83B(第2送風口)は、定着ベルト20の長手方向中央mよりも他端側(図13における右端側)に配置されている。
【0072】
また、定着装置9の外装部である装置フレーム40には、各送風口83A,83Bと対向するように2つの開口部41A,41Bが設けられている。従って、一方の開口部41A(第1開口部)は、定着ベルト20の長手方向中央mよりも一端側(図13における左端側)に設けられ、他方の開口部41B(第2開口部)は、定着ベルト20の長手方向中央mよりも他端側(図13における右端側)に設けられている。また、各送風口83A,83B及び各開口部41A,41Bは、定着ベルト20の長手方向中央mを基準に互いに対称となるように配置されている。ただし、これに限らず、各送風口83A,83B及び各開口部41A,41Bは、対称な位置から多少ずれて(非対称に)配置されていてもよい。
【0073】
また、各開口部41A,41Bは、定着ベルト20や加圧ローラ21を囲むように設けられた装置フレーム40のうち、定着ベルト20に対向する部分に設けられている。このため、送風ファン81によって発生した気流がダクト82によって案内されて、各送風口83A,83Bから吹き出されると、気流は、主に定着ベルト20の長手方向両端側の表面に積極的に吹き付けられる。これにより、定着ベルト20の長手方向両端側の部分が冷却される。本実施形態では、送風ファン81として、プロペラ式の送風ファンを用いているが、送風ファン81はこれに限らず、シロッコファン、ターボファン、エアホイルファン、プレートファンなどの各種送風ファンを用いることが可能である。
【0074】
また、定着装置9の装置フレーム40には、定着装置9内へ気流を流入させる上記給気用の各開口部41A,41Bのほかに、排気用の開口部41C(第3開口部)が設けられている。排気用の開口部41Cは、装置フレーム40のうち、給気用の各開口部41A,41Bが設けられた部分とは反対側、すなわち加圧ローラ21側の部分に設けられている。本実施形態では、排気用の開口部41Cが、1つの開口部で構成されているが、複数のスリットや、網状の開口部であってもよい。同様に、給気用の各開口部41A,41B及び各送風口83A,83Bも、それぞれ1つの開口部であってもよいし、複数のスリット又は網状の開口部であってもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、定着ベルト20の長手方向中央mを含む一定の領域内に、送風口や給気用の開口部は設けられていない。すなわち、本実施形態では、ヒータ22の発熱量がその長手方向両端側よりも中央側で小さいので(図11図12参照)、送風によって定着ベルト20の長手方向中央m側の温度が低下しないように、送風口や給気用の開口部を設けないようにしている。このような送風口や給気用の開口部を設けない長手方向中央m側の部分の範囲は、定着装置の構成などに応じて適宜設定することが可能であるが、画像形成装置において通紙可能な最小用紙の幅サイズ(最小通紙領域)には、少なくとも送風口や給気用の開口部を設けないようにすることが望ましい。
【0076】
シャッタ84は、図13の矢印Aで示す定着ベルト20の長手方向に移動可能に構成されている。また、定着ベルト20の長手方向Aは、加圧ローラ21の長手方向又は回転軸方向、あるいはヒータ22の長手方向と同じ方向でもあるので、シャッタ84はこれらの方向に移動可能であるともいえる。シャッタ84を移動させる移動機構としては、ラックアンドピニオン機構や、ボールねじ機構、あるいはベルト機構などを適用できる。これにより、シャッタ84は、一方の送風口83A(第1送風口)に対向する遮蔽位置(第1位置)と、他方の送風口83B(第2送風口)に対向する遮蔽位置(第2位置)とに、移動することができる。このように、シャッタ84がいずれか一方の送風口に対向する遮蔽位置に選択的に配置されることにより、一方の送風口から定着装置9への送風を弱めることができる。
【0077】
また、シャッタ84は、上記遮蔽位置に移動した状態で、各送風口83A,83Bのいずれか一方に対して、その全体に渡って対向するように配置されてもよいし、その一部に対向するように配置されてもよい。また、シャッタ84に複数の通気孔が設けられ、シャッタ84が各送風口83A,83Bのいずれか一方に対向した状態で、通気孔から気流の一部が流出するようにしてもよい。すなわち、シャッタ84は、遮蔽位置に配置された状態で、一方の送風口からの送風を完全に遮断する以外に、送風の一部を許容しつつ送風を弱めるように構成されていてもよい。
【0078】
続いて、シャッタ84の動作について説明する。
【0079】
図14に示すように、ヒータ22が有する全ての抵抗発熱体59A~59G(図のグレーで示す抵抗発熱体)を発熱させた場合は、上述の給電線に生じる発熱分布の影響により、発熱領域における図の右端側(第7ブロック側)の温度が、図の左端側(第1ブロック側)の温度に比べて高くなる。従って、この場合は、定着ベルト20の温度も、図の右端側の部分が図の左端の部分よりも高くなる。
【0080】
このような場合、相対的に温度の高い右端側では定着ベルト20の冷却を積極的に行い、反対に、相対的に温度の低い左端側では定着ベルト20を冷却しすぎないようにする必要がある。そのため、図14に示す例では、シャッタ84を、図の左側へ移動させ、左側の送風口83Aの全部又は一部に対向するように配置する。これにより、左側の送風口83Aでは定着装置9への送風が弱められ、温度が下がり過ぎないようにすることができる。一方で、定着ベルト20の相対的に温度が高い右端側では、送風口83Bからの送風がシャッタ84によって妨げられないため、定着ベルト20が効果的に冷却され、温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、定着ベルト20の長手方向に渡る温度分布のばらつきを抑制することが可能である。
【0081】
次に、図15に示す例は、本実施形態において、両端の各抵抗発熱体59A,59G以外の抵抗発熱体59B~59F(図のグレーで示す抵抗発熱体)を発熱させた場合である。この場合は、給電線の発熱分布が上記図14に示す例とは左右反対となるため、発熱領域における図の左端側(第2ブロック側)の温度が、図の右端側(第6ブロック側)の温度に比べて高くなる。
【0082】
従って、この場合は、図15に示すように、シャッタ84を、図の右側へ移動させ、右側の送風口83Bの全部又は一部に対向するように配置する。これにより、右側の送風口83Bでは定着装置9への送風が弱められ、温度が下がり過ぎないようにすることができる。一方で、定着ベルト20の相対的に温度が高い左端側では、送風口83Aからの送風がシャッタ84によって妨げられないため、定着ベルト20が効果的に冷却され、温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、図15に示す発熱態様においても、定着ベルト20の長手方向に渡る温度分布のばらつきを抑制することが可能である。
【0083】
以上、本実施形態のように、定着ベルト20の温度が高くなる端部側が、ヒータ22の発熱態様に応じて左右反対となる構成においても、シャッタ84を相対的に温度が低い側へ移動させることにより、温度が低い側での定着ベルト20の温度低下を防止でき、定着ベルト20の温度分布のばらつきを抑制できるようになる。しかも、このような温度分布のばらつきの抑制を、1つのシャッタ84を移動させることにより実現できるので、各送風口に個別にシャッタを設ける場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、シャッタの制御も容易となる。従って、本実施形態に係る冷却装置80によれば、簡易な構成により、定着ベルト20の温度分布のばらつきを抑制でき、定着品質の向上を図れるようになる。
【0084】
シャッタ84の移動方向を決定するための判断材料となる温度情報は、定着ベルト20の長手方向中央mを基準に互いに対称な位置で測定された表面温度であってもよいし、ヒータ22の発熱領域H(各抵抗発熱体59A~59Gが配列された領域)における長手方向中央c(図7参照)を基準に互い対称な位置で測定されたヒータ22の温度であってもよい。また、上述の式(1)に示すように、ヒータ22の温度(発熱量)は、発熱領域Hにおいて流れる電流の二乗の合計値を用いて表すことができるので、ヒータ22の発熱領域Hの長手方向中央cを基準に互いに対称な位置の電流を測定し、測定されたそれぞれの電流の二乗の合計値を比較することにより、シャッタ84の移動方向を決定してもよい。
【0085】
また、本実施形態に係るヒータ22のように、ヒータ22の発熱態様に応じてどちらの端部側の発熱量が大きくなるか、あらかじめわかっている場合は、稼働中の定着ベルト20の温度やヒータ22の温度を検知せず、通紙サイズごとに設定された発熱態様や連続通紙枚数などの条件に基づきシャッタ84の移動方向を決定してもよい。すなわち、本実施形態では、全部の抵抗発熱体59A~59Gを発熱させる場合は、図11に示す第1方向S1側で発熱量が大きくなるので、発熱量の小さい第2方向S2側へシャッタ84を移動させ、両端の抵抗発熱体59A,59G以外の抵抗発熱体59B~59Fを発熱させる場合は、図12に示す第2方向S2側で発熱量が大きくなるので、発熱量の小さい第1方向S1側へシャッタ84を移動させればよい。
【0086】
また、定着ベルト20の長手方向両端側の温度差がそれほど生じていない場合(温度差が所定の閾値以下の場合)は、シャッタ84を、図13に示すような、各送風口83A,83B同士の間の待機位置へ移動させてもよい。この場合、シャッタ84は、いずれの送風口83A,83Bに対しても対向しない位置に配置されるため、各送風口83A,83Bからの送風がシャッタ84によって妨げられることがなく、定着ベルト20の長手方向両端側の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0087】
図16は、本発明の他の実施形態に係る構成を示す図である。
【0088】
図16に示す構成は、上述の実施形態と同様の構成要素に加え、定着ベルト20の表面温度を検知する温度検知手段としての一対の温度センサ85A,85Bが、定着ベルト20の長手方向中央mを基準に一端側と他端側とに設けられている。これらの温度センサ85A,85Bとしては、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの接触式又は非接触式の温度センサを用いることができる。
【0089】
各温度センサ85A,85Bは、特定の幅サイズの用紙Pが通過する通紙領域W1よりも外側の非通紙領域W2に配置されている。本実施形態では、用紙Pがその幅方向中央を定着ベルト20の長手方向中央mに揃えて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式を採用している。このため、特定の幅サイズの用紙Pが搬送されると、定着ベルト20の長手方向両端側の領域が非通紙領域W2(記録媒体非通過領域)となる。各温度センサ85A,85Bは、各非通紙領域W2に1つずつ、定着ベルト20の長手方向中央mを基準に互いに対称な位置に配置されている。なお、ここでいう「特定の幅サイズ」とは、画像形成装置において通紙可能な最大用紙の幅サイズであってもよいし、それよりも小さい用紙の幅サイズであってもよい。すなわち、各温度センサ85A,85Bは、少なくとも最小用紙の通紙領域よりも外側(非通紙領域)に配置されていればよい。また、本実施形態においては、各温度センサ85A,85Bと同様、各送風口83A,83B及び給気用の各開口部41A,41Bも、非通紙領域W2に対応する位置に配置されている。
【0090】
ここで、ヒータの発熱領域よりも幅サイズの小さい用紙を通紙すると、通紙領域では定着ベルトの熱が用紙によって積極的に奪われるが、非通紙領域では用紙によって熱が奪われにくいため、特に複数枚の用紙を連続通紙した場合に、非通紙領域の温度が過度に上昇し、定着ベルトが劣化する虞がある。これに対して、本実施形態においては、非通紙領域W2に対応する位置に、送風口83A,83Bや開口部41A,41Bを設けることにより、非通紙領域W2における過度な温度上昇を抑制できるようにしている。すなわち、送風口83A,83Bや開口部41A,41Bが非通紙領域W2に対応する位置に設けられていることにより、送風ファン81によって発生した気流を定着ベルト20の非通紙領域W2に吹き付けることができ、非通紙領域W2における過度な温度上昇を抑制することが可能である。
【0091】
しかしながら、図17に示すように、用紙P(その幅方向中央)が定着ベルト20の長手方向中央mに対して図の右側に位置ずれし、用紙Pが一方に片寄って搬送された場合は、図の右側の非通紙領域W2と図の左側の非通紙領域W2とで互いに幅が異なるため、各非通紙領域W2における温度上昇量にもばらつきが発生する。具体的に、図17に示す例の場合、用紙Pが右側に片寄って搬送されると、左側の非通紙領域W2が右側の非通紙領域W2よりも広くなるため、図17中の実線グラフに示すように、左側の非通紙領域W2における温度上昇が右側の非通紙領域W2における温度上昇よりも顕著となる。また反対に、図18に示す例のように、用紙Pが図の左側に片寄って搬送された場合は、右側の非通紙領域W2における温度上昇が顕著となる。
【0092】
このように、用紙Pが定着ベルト20の長手方向中央mに対して長手方向のいずれか一方に片寄って搬送されると、各非通紙領域W2における温度上昇量にばらつきが発生する。このような場合、各非通紙領域W2における温度上昇を抑制するために、各送風口83A,83Bからの送風を同様に(同じ送風量で)行うと、温度上昇が顕著な部分を十分に冷却できなかったり、温度上昇が顕著でない部分の温度が低下し過ぎたりする虞がある。
【0093】
そのため、本実施形態においては、図17に示すように、用紙Pが右側へ片寄った場合は、シャッタ84を、右側へ移動させ、右側の送風口83Bに対向するように配置する。これにより、右側の送風口83Bでは定着装置9への送風が弱められ、温度上昇が顕著ではない側(右側)の非通紙領域W2の温度が下がり過ぎないようにすることができる。一方で、温度上昇が顕著な左側の非通紙領域W2では、送風口83Aからの送風がシャッタ84によって妨げられないため、定着ベルト20が効果的に冷却され、図17中の点線グラフに示すように、温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、定着ベルト20の長手方向に渡る温度分布のばらつきを抑制することが可能である。
【0094】
また、図18に示す例のように、用紙Pが左側へ片寄って搬送された場合は、シャッタ84を、左側に移動させ、左側の送風口83Aに対向するように配置すればよい。これにより、左側の送風口83Aでは定着装置9への送風が弱められ、温度上昇が顕著ではない側(左側)の非通紙領域W2の温度が下がり過ぎないようにすることができる。一方で、温度上昇が顕著な右側の非通紙領域W2では、送風口83Bからの送風がシャッタ84によって妨げられないため、定着ベルト20が効果的に冷却され、図18中の点線グラフに示すように、温度上昇を効果的に抑制することができる。これにより、定着ベルト20の長手方向に渡る温度分布のばらつきを抑制することが可能である。
【0095】
以上のように、本実施形態においては、用紙の片寄りに起因する定着ベルト20の温度分布の違いに応じてシャッタ84を相対的に温度が低い側へ移動させることにより、定着ベルト20の温度が下がり過ぎないようにすることができ、定着ベルト20の温度分布のばらつきを抑制することが可能である。また、上述の実施形態と同様に、このような温度分布のばらつきの抑制を、1つのシャッタ84を移動させることにより実現できるので、部品点数を少なくすることができ、シャッタの制御も容易となる。このため、簡易な構成により、定着ベルト20の温度分布のばらつきを抑制でき、定着品質を向上させることが可能である。
【0096】
本実施形態において、シャッタ84をいずれの方向に移動させるかについては、左右の温度センサ85A,85Bの検知温度に基づいて決定する。ただし、各温度センサ85A,85Bの検知温度の差が所定の閾値未満であった場合は、シャッタ84の移動は行わない。ここで、検知温度の差が所定の閾値未満であった場合にシャッタ84の移動を行わないのは、温度センサの個体ごとに存在する検知精度のばらつきによるシャッタ84の移動を防止するためである。例えば、温度検知センサが接触式のサーミスタである場合は、3℃程度の検知精度のばらつきがあるため、検知温度の差がばらつき範囲内の3℃以下である場合は、用紙の片寄り搬送に起因する温度のばらつきは発生していないとして、シャッタ84の移動は行わない。この場合、シャッタ84を、例えば図16に示すような、各送風口83A,83B同士の間など、いずれの送風口83A,83Bに対しても対向しない待機位置に配置しておく。
【0097】
一方、検知温度の差が閾値である3℃を超える場合は、用紙の片寄り搬送に起因する温度のばらつきが発生していると判断し、温度が低い側の送風口へシャッタ84を移動させる。このように、各温度センサ85A,85Bの検知温度の差が、これらの検知精度のばらつき程度の温度差(所定の閾値)を超える場合にのみ、シャッタ84を移動させることにより、シャッタ84の不要な移動を回避することが可能である。
【0098】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、上述のシャッタ84による送風量の調整に加えて、送風ファン81の風量(送風強度)を変化させてもよい。この場合、冷却能力をさらに細かく調整することが可能となる。
【0099】
また、上述の実施形態では、シャッタ84が定着装置9の装置フレーム40よりも外側に配置されているが、図19に示す例のように、シャッタ84が装置フレーム40の内側に配置されていてもよい。この場合、シャッタ84は、定着ベルト20の長手方向Aに移動することにより、装置フレーム40の内側から開口部41A又は開口部41Bを介して各送風口83A,83Bの一方に対向するように配置される。また、この場合、各送風口83A,83Bが給気用の各開口部41A,41Bに対して隙間なく接続されていることにより、ダクト82を介して送風ファン81からの気流を定着装置9内へ効率良く送り込むことが可能である。なお、設置スペースに余裕が無い場合は、ダクト82を省略してもよい。その場合、送風ファン81からの気流が直接給気用の各開口部41A,41Bを介して定着装置9内へ送り込まれるため、各開口部41A,41Bが定着ベルト20へ向かって気流を吹き出す送風口として機能する。
【0100】
また、図20に示す例のように、各送風口83A,83B及び給気用の各開口部41A,41Bは、定着ベルト20ではなく、加圧ローラ21の外周面に対向するように設けられていてもよい。この場合、各開口部41A,41Bから導入される気流によって加圧ローラ21の表面が積極的に冷却される。これにより、加圧ローラ21と接触する定着ベルト20の表面も間接的に冷却されるため、定着ベルト20の温度分布のばらつきを抑制することが可能である。また、各送風口83A,83B及び各開口部41A,41Bは、定着ベルト20及び加圧ローラ21の両方に対向するように設けられていてもよい。
【0101】
また、図21に示す例のように、送風ファン81に代えて、吸引ファン86を気流発生部として用いてもよい。この場合、吸引ファン86によって定着装置9内の空気が吸引されることにより、定着装置9内で気流が発生する。これにより、給気用の各開口部41A,41Bから気流が導入され、定着ベルト20を冷却することが可能である。
【0102】
以上のように、本発明によれば、定着ベルトなどの回転部材の長手方向両端側で温度にばらつきがあっても、そのばらつきを抑制することができるので、定着品質の低下や非通紙領域における温度上昇の問題を改善することが可能である。また、本発明によれば、温度分布のばらつきに起因する種々の問題を改善できるため、温度分布のばらつきが発生しやすい小型のヒータや、高速化のために発熱量を増大させたヒータを用いた構成にも対応できるようになる。
【0103】
従って、本発明は、特に次のような小型のヒータを備える画像形成装置に適用された場合に大きな効果が期待できる。具体的は、図22に示すような基材50の短手方向寸法Qに対する各抵抗発熱体59A~59Gの短手方向寸法Rの比(R/Q)が、25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合に、大きな効果を期待できる。さらに、短手方向の寸法比(R/Q)が、40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することによる効果はより一層大きくなる。
【0104】
このような短手方向寸法比(R/Q)が25%以上又は40%以上となるヒータにおいては、小型化のために基材50の短手方向寸法を小さくした結果、基材50上に配置される各給電線62A~62Dの短手方向寸法も小さくする必要があり、各給電線62A~62Dから生じる発熱量が相対的に大きくなる。さらに、下記表1に示すように、短手方向寸法比(R/Q)が大きくなるほど、発熱領域の長手方向中央と端の温度差が大きくなり、これに伴って、長手方向両端における温度分布のばらつきも顕著となる。
【0105】
【表1】
【0106】
具体的に、表1の短手方向寸法比(R/Q)と発熱領域の温度分布との関係を調べた試験では、上記短手方向寸法比(R/Q)が異なる複数のヒータを用意し、各ヒータに所定の電圧を印加して発熱させ、各ヒータの発熱領域の長手方向中央と端の温度差を測定した。各ヒータの表面温度測定は、フリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ(FLIR T620)を用いて行った。なお、短手方向寸法比(R/Q)が80%以上である場合は、基材50の短手方向寸法に対する各抵抗発熱体59A~59Gの短手方向寸法が占める割合が多くなり過ぎ、給電線の設置スペースを確保することが現実的に困難であるため、測定を保留している。
【0107】
このように、短手方向寸法比(R/Q)が25%以上や40%以上となるヒータにおいては、発熱領域の長手方向中央と端の温度差が大きくなるため、ヒータの温度分布のばらつきに起因する問題がより顕著となる。従って、特にこのようなヒータを備える画像形成装置に対して本発明を適用することにより、より大きな効果を期待できるようになる。
【0108】
また、定着装置が備えるヒータは、図22に示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59A~59Gを有するヒータ22に限らず、図23に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59A~59Gを有するヒータ22であってもよい。なお、図23に示すヒータ22の場合、上記抵抗発熱体59A~59Gの短手方向寸法Rは、折り返されるように形成された抵抗発熱体の1つの線状の部分の太さではなく、抵抗発熱体全体の短手方向寸法を意味する。また、図22図23に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形に形成されているため、基材50の短手方向寸法Qは、長手方向Zにおけるどの位置でも同じ寸法であるが、基材50は、長手方向Zの位置によって短手方向寸法Qが変化する形状であってもよい。ただし、その場合は、各抵抗発熱体59A~59Gが配置されている長手方向範囲内(発熱領域内)の基材50の最小の短手方向寸法を、上記基材50の短手方向寸法Qとする。
【0109】
さらに、定着装置が備えるヒータは、図24に示すような1つの抵抗発熱体59が基材50の長手方向Zに伸びるように配置されたものであってもよい。この例では、抵抗発熱体59の上下2辺のうち、一辺(図24における上側の辺)が第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに接続され、他の辺(図24における下側の辺)が第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに接続されている。また、各電極部61A,61Bは、いずれも基材50の長手方向Zの中央よりも一端側(同じ端側)に配置され、各給電線62A,62Bは基材50の長手方向Zに渡って反対方向に折り返されることなく配置されている。
【0110】
このようなヒータ22において、各電極部61A,61B間に電位差を生じさせ抵抗発熱体59を発熱させた場合、温度分布のばらつきが発生する。例えば、図24に示す発熱領域Hの長手方向中央c、それよりも両端e1,e2側の任意の対称位置α1,α2の各位置で、各給電線62A,62Bで流れる電流を、90%、50%、10%とすると、各給電線62A,62Bにおいて生じる発熱量は、図24中の表に示すような値となる。なお、この場合も、発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流の二乗(I)として算出している。
【0111】
図24中の表に示すように、各給電線62A,62Bの合計発熱量は、長手方向の一端e1側(図の右端側)よりも他端e2側(図の左端側)で高くなるので、上記のようなヒータの温度分布のばらつきが発生する。そのため、このようなヒータを備える定着装置においても上述の各実施形態に係る構成を適用することにより、定着ベルトの温度分布のばらつきを抑制でき、画質の低下や非通紙領域における温度上昇などの問題を改善できるようになる。
【0112】
また、ヒータにおける温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/℃程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/℃とするのがよい。
【0113】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(2)を用いて算出することができる。式(2)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図10に示す上述のヒータ22において、第1電極部61Aと第2電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、また、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であるとすると、式(2)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0114】
【数2】
【0115】
また、本発明に係る冷却装置によって冷却される定着装置は、図2に示すような定着装置に限らず、図25図27に示すような定着装置であってもよい。
【0116】
図25に示す定着装置9は、図2に示す定着装置とは異なり、用紙Pを通過させるニップ部Nと、ヒータ22によって定着ベルト20を加熱する部分が、それぞれ別の位置に設定されている。具体的には、定着ベルト20の回転方向における互いに180°反対側に、ヒータ22とニップ形成部材90が配置され、それぞれに対して各加圧ローラ91,92が定着ベルト20を介して押し当てられている。
【0117】
図26に示す定着装置9は、図25に示すヒータ22側の加圧ローラ92が省略され、さらに、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成された例である。それ以外は、図25に示す構成と同様である。この場合、ヒータ22が円弧状に形成されていることにより、定着ベルト20とヒータ22とのベルト回転方向の接触長さを確保し、定着ベルト20を効率良く加熱することが可能である。
【0118】
図27に示す定着装置9は、ローラ93の両側にそれぞれベルト94,95が配置された例である。この場合も、図25及び図26に示す例と同様、用紙Pを通過させるニップ部Nと、ヒータ22による加熱部分が、それぞれ別の位置に設定されている。すなわち、ローラ93に対して、図の右側で一方のベルト94を介してニップ形成部材90が接触し、これとは反対側で、他方のベルト95を介してヒータ22が接触している。
【0119】
このような、図25図27に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、ベルトやローラなどの回転部材の温度分布のばらつきを抑制でき、画質の向上を図って小型化や高速度化に対応できるようになる。
【0120】
また、本発明に係る冷却装置によって冷却される定着装置は、一対のベルト保持部材(例えば図5に示す一対の支持部材32)によって定着ベルト20が非張架で保持されるフリーベルト方式の定着装置に限らず、複数のローラなどによって定着ベルトが張架される定着装置であってもよい。
【0121】
さらに、本発明に係る冷却装置によって冷却される対象は、定着装置などの電子写真方式の画像形成装置に搭載される加熱装置に限らず、インクジェット式の画像形成装置において用紙上のインク(液体)を乾燥させる乾燥装置など、その他の加熱装置であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
9 定着装置(加熱装置)
22 ヒータ(加熱部材)
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電部)
80 冷却装置
81 送風ファン(気流発生部)
82 ダクト
83A 送風口(第1送風口)
83B 送風口(第2送風口)
84 シャッタ
85A 温度センサ
85B 温度センサ
86 吸引ファン(気流発生部)
100 画像形成装置
H 発熱領域
K1 第1導電経路
K2 第2導電経路
K3 第3導電経路(分岐経路)
m 定着ベルトの長手方向中央
P 用紙(記録媒体)
S1 第1方向
S2 第2方向
Y ヒータ(基材)の短手方向
Z ヒータ(基材)の長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【文献】特開2012-252194号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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