(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】牛の評価装置および牛の評価方法
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A01K29/00 D
(21)【出願番号】P 2021176475
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 純
(72)【発明者】
【氏名】川出 哲生
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0154722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180130(US,A1)
【文献】国際公開第2017/187719(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042584(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0032974(US,A1)
【文献】特表2012-510278(JP,A)
【文献】特開2016-165271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、
前記撮像画像から、前記牛の上下方向に関する身体の大きさを示す第1の寸法を予め定められた方法で特定する寸法特定部と、
前記牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の基準点から前記第1の寸法より短い第2の寸法だけ下側に離れた第1の点の略左右両側に位置する前記輪郭線上の2つの点の少なくとも一方を予め定められた方法で特定し、前記2つの点のうちの一方の点と前記基準点とを通る第1直線、および他方の点と前記基準点とを通る第2直線の少なくとも一方を決定する直線決定部と、
前記撮像画像から特定される基準線と前記第1直線または前記第2直線とがなす角度、または、前記第1直線と前記第2直線とがなす角度を取得する角度取得部と、
前記角度取得部が取得した前記角度から、前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える牛の評価装置。
【請求項2】
前記直線決定部は、前記第1の点を特定するとともに前記第1の点を通る前記撮像画像内の略水平線が前記輪郭線に交わる2つの交点を前記2つの点と特定する、請求項1に記載の牛の評価装置。
【請求項3】
前記直線決定部は、前記撮像画像内の2本の略水平線で挟まれた範囲であり、前記第1の点を含む範囲を着目範囲と特定し、前記着目範囲に位置する前記輪郭線おいて最も左側に位置する最左点および最も右側に位置する最右点を前記2つの点と特定する、請求項1に記載の牛の評価装置。
【請求項4】
前記直線決定部は、前記第2の寸法よりも短い第3の寸法だけ前記基準点から下側に離れた第2の点と前記第2の寸法より長い第4の寸法だけ前記基準点から下側に離れた第3の点とを特定するとともに、前記第2の点を通る前記撮像画像内の略水平線と前記第3の点を通る前記撮像画像内の略水平線とにより挟まれた範囲を前記着目範囲と特定する、請求項3に記載の牛の評価装置。
【請求項5】
前記直線決定部は、前記第1の点を特定するとともに、前記第1の点を基準に上下に所定の長さ離れた前記撮像画像内の2本の略水平線により挟まれた範囲を前記着目範囲と特定する、請求項3に記載の牛の評価装置。
【請求項6】
前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部の頂点を結ぶ線分の略中点または前記輪郭線の最も上側の最上点を前記基準点と特定する基準点特定部を備え、
前記寸法特定部は、前記基準点と、前記輪郭線の下部に位置する2つの先端のうちの一方の先端を通る前記撮像画像内の略水平線または前記2つの先端を通る直線と、の間の距離を前記第1の寸法と特定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項7】
前記基準点特定部が前記略中点を前記基準点と特定した場合、前記第2の寸法は前記第1の寸法に0.2以上0.4以下の係数を掛けた値であり、前記基準点特定部が前記最上点を前記基準点と特定した場合、前記第2の寸法は前記第1の寸法に0.3以上0.4以下の係数を掛けた値である、請求項6に記載の牛の評価装置。
【請求項8】
前記寸法特定部は、前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部の頂点の間の距離から前記第1の寸法を特定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項9】
前記2つの山部は、前記牛の腰角に対応する部分である、請求項6から8のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項10】
前記最上点は、前記牛の尾の付け根に対応する部分である、請求項6または7に記載の牛の評価装置。
【請求項11】
前記寸法特定部は、前記基準点と、前記牛の2つの後足の踵のうちの一方の踵を通る前記撮像画像内の略水平線、前記牛の2つの後足の両方の踵を通る直線、前記牛の2つの後足の蹄のうちの一方の蹄を通る前記撮像画像内の略水平線、または前記牛の2つの後足の両方の蹄を通る直線と、の間の距離を前記第1の寸法と特定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項12】
前記寸法特定部が前記第1の寸法として前記牛の肛門付近の前記基準点と前記一方の踵を通る前記略水平線または前記両方の踵を通る前記直線との間の距離を特定する場合、前記第2の寸法は前記第1の寸法に0.25以上0.55以下の係数を掛けた値である、請求項11に記載の牛の評価装置。
【請求項13】
前記基準線は、前記撮像画像内の略垂線または略水平線である、請求項1から12のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項14】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像を取得し、
前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出し、
前記撮像画像から、前記牛の上下方向に関する身体の大きさを示す第1の寸法を予め定められた方法で特定し、
前記牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の基準点から前記第1の寸法より短い第2の寸法だけ下側に離れた第1の点の略左右両側に位置する前記輪郭線上の2つの点の少なくとも一方を予め定められた方法で特定するとともに、前記2つの点のうちの一方の点と前記基準点とを通る第1直線、および他方の点と前記基準点とを通る第2直線の少なくとも一方を決定し、
前記撮像画像から特定される基準線と前記第1直線または前記第2直線とがなす角度、または、前記第1直線と前記第2直線とがなす角度を取得し、
取得した前記角度から、前記牛のルーメンサイズスコアを特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする牛の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の評価装置および牛の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛の健康状態を評価する方法としてルーメンサイズスコアを用いる方法が知られている(例えば非特許文献1)。非特許文献1に記載の方法は、獣医師や酪農の専門家などが判定シートを用いてルーメンサイズスコアを特定する。この方法では、獣医師や専門家それぞれにおいては安定したルーメンサイズスコアの評価が得られるが、獣医師や専門家の間でルーメンサイズスコアにばらつきが生じてしまう。一方、RGBカメラを用いた画像解析により牛の健康状態を評価する方法(例えば特許文献1)や、牛の三次元画像に基づいて牛の健康状態を評価する方法(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-173732号公報
【文献】国際公開第2017/187719号
【非特許文献】
【0004】
【文献】二村 治司著、「乳牛の群管理におけるルーメンサイズスコアの応用」、牛歩誌、2006年、第34号、p44-48
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、牛の画像上での特徴点を線で結んだ線画を用いて牛の健康状態を評価する。この特許文献1の方法では、人が画像上で線画を入力するため、健康状態の評価結果が入力する人ごとにばらつくおそれがある。また、特許文献2に記載の方法は、牛の三次元画像を用いて牛の健康状態を示すスコアを算出するため、大掛かりな設備が設置された特定の場所での撮像が必要であり、多様な飼育現場に適用することは難しい。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、二次元の撮像画像を用いて牛のルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる牛の評価装置および牛の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の牛の評価装置は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、前記撮像画像から、前記牛の上下方向に関する身体の大きさを示す第1の寸法を予め定められた方法で特定する寸法特定部と、前記牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の基準点から前記第1の寸法より短い第2の寸法だけ下側に離れた第1の点の略左右両側に位置する前記輪郭線上の2つの点の少なくとも一方を予め定められた方法で特定し、前記2つの点のうちの一方の点と前記基準点とを通る第1直線、および他方の点と前記基準点とを通る第2直線の少なくとも一方を決定する直線決定部と、前記撮像画像から特定される基準線と前記第1直線または前記第2直線とがなす角度、または、前記第1直線と前記第2直線とがなす角度を取得する角度取得部と、前記角度取得部が取得した前記角度から、前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二次元の撮像画像を用いて牛のルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る牛の評価装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、画像取得部が取得する画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、抽出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における基準点特定部および寸法特定部が実行する処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における直線決定部および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、第1胃(ルーメン)の充満度が異なる牛の撮像画像である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、第1胃(ルーメン)の充満度と角度取得部が取得する角度αとの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、ルーメンサイズスコアが低い牛を略真後ろから撮像した撮像画像である。
【
図10】
図10は、
図9の撮像画像に写された牛の輪郭線を抽出した抽出画像である。
【
図11】
図11は、ルーメンサイズスコアと角度取得部が取得した角度αとの相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図12】
図12は、
図11の実験結果から得られた、算出部が寸法の算出に用いた係数と決定係数との相関を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る牛の評価装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る牛の評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態における基準特定部および寸法特定部が実行する処理を説明するための図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態における直線決定部および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図17】
図17は、ルーメンサイズスコアと角度取得部が取得した角度βとの相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態における寸法特定部、直線決定部、および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図19】
図19は、ルーメンサイズスコアと角度取得部が取得した角度γ1および/またはγ2との相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態の変形例における角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図21】
図21は、第4の実施形態における基準点特定部および寸法特定が実行する処理を説明するための図である。
【
図22】
図22は、第4の実施形態における基準点特定部、寸法特定部、直線決定部、および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図23】
図23は、ルーメンサイズスコアと角度取得部が取得した角度θとの相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図24】
図24は、
図23の実験結果から得られた、算出部が寸法の算出に用いた係数と決定係数との相関を示す図である。
【
図25】
図25は、第5の実施形態における直線決定部および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図26】
図26は、第5の実施形態の変形例における直線決定部および角度取得部が実行する処理を説明するための図である。
【
図27】
図27は、牛の左右の腰角の頂点間の距離と牛の体高との関係を示す図である。
【
図28】
図28は、ルーメンサイズスコアと角度取得部が取得した角度βとの相関を調査した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態に係る牛の評価装置100について、
図1~
図14に基づいて説明する。
図1には、第1の実施形態に係る牛の評価装置100の機能構成がブロック図にて示されている。
図2には、第1の実施形態における制御部15の機能構成がブロック図にて示されている。本第1の実施形態では、評価装置100は、作業者が携帯して利用する携帯型情報機器であるとする。携帯型情報機器として、例えばスマートフォン、タブレット型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートグラスなどが挙げられる。評価装置100は、例えば、電話機能やメール機能、インターネットなどに接続するための通信機能、およびプログラムを実行するためのデータ処理機能などを有する。
【0011】
図1に示すように、評価装置100は、表示部10と、入力部11と、通信部12と、撮像部13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。
【0012】
表示部10は、画像や、各種情報、およびタッチ操作ボタンなどの入力用画像などを表示する表示デバイスである。
【0013】
入力部11は、タッチパネルやスイッチなどのデバイスである。タッチパネルは、作業者が触れたことに応じて情報入力を受け付け、受け付けた情報を制御部15に送信する。タッチパネルは、例えば表示部10に組み込まれている。したがって、タッチパネルは、作業者が表示部10の表面をタッチすることに応じて、種々の情報入力を受け付ける。スイッチは、作業者から評価装置100に対する入力を受け付ける入力部材であり、受け付けた情報を制御部15に送信する。
【0014】
通信部12は、他の機器と近距離無線通信(例えばNFC(Near Field Communication))を行ったり、ネットワークに接続された他の機器と無線通信(例えば携帯電話回線や無線LAN(Local Area Network)などを用いた通信)を行ったりする通信インターフェースである。
【0015】
撮像部13は、静止画や動画などの画像を撮像するデバイスである。撮像部13は、作業者が入力部11を操作することに応じて撮像する。例えば、作業者は、牛のルーメンサイズスコアを特定する場合に、撮像部13によって立位にある牛を略真後ろから撮像する。略真後ろから撮像するとは、牛の左右の腰角周りおよび左右の腹部周りの輪郭が写り、かつ、牛の足元まで写る範囲で撮像することである。したがって、作業者は、牛の後方数m(例えば1m~2m)の位置から、牛の足元まで入りかつ牛の左右の腰角周りおよび左右の腹部周りの輪郭が写るように牛を撮像する。
【0016】
記憶部14は、牛の撮像画像や牛の輪郭線を抽出した抽出画像、牛のルーメンサイズスコアを特定した評価結果など、各種情報を記憶する。
【0017】
制御部15は、評価装置100の各部を制御する処理部である。
図2に示すように、制御部15は、画像取得部20、抽出部21、基準点特定部22、寸法特定部23、算出部24、直線決定部25、角度取得部26、およびスコア特定部27を有する。
【0018】
図3には、画像取得部20が取得する画像の一例が示されている。
図3に示すように、画像取得部20は、立位にある牛を略後ろから撮像した撮像画像30を取得する。取得する撮像画像30は、撮像部13が撮像した画像であってもよいし、通信部12が他の機器から受信した画像であってもよいし、記憶部14に記憶されていた画像の中から作業者が入力部11を用いて選択した画像であってもよい。画像取得部20は、取得した撮像画像30を表示部10に表示してもよい。これにより、作業者は、これからルーメンサイズスコアを特定する牛を表示部10上で視覚的に認識することができる。
【0019】
図4は、抽出部21が実行する処理を説明するための図である。
図4に示すように、抽出部21は、画像取得部20が取得した牛の撮像画像30から、牛の輪郭をなぞった輪郭線40を抽出する。輪郭線40の抽出は、一般的に知られた画像処理技術を用いることができる。抽出部21は、抽出した牛の輪郭線40のみを表した抽出画像31を表示部10に表示してもよい。これにより、作業者は、これからルーメンサイズスコアを特定する牛の輪郭を表示部10上で視覚的に認識することができる。抽出画像31の外形は撮像画像30の外形と同じであり、画像の枠に対する牛の位置は抽出画像31と撮像画像30とで同じである。
【0020】
輪郭線40の上部の左右両側には山部41a、41bが存在する。山部41a、41bは、牛の腰角に対応する部分である。輪郭線40の下部の先端43a、43bは、牛の後足の蹄に対応する部分である。
【0021】
図5は、第1の実施形態における基準点特定部22および寸法特定部23が実行する処理を説明するための図である。
図5に示すように、本第1の実施形態では、基準点特定部22は、牛の輪郭線40の上部の左側に存在する山部41aの頂点42aと右側に存在する山部41bの頂点42bとを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定する。基準点60は、牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍に位置する点となる。また、左右の腰角の間の中央付近には肛門があることから、基準点60は肛門付近に位置する点ともなる。なお、基準点特定部22は、山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとから他の方法によって基準点を特定してもよい。
【0022】
山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bの特定は、以下の方法により行うことができる。例えば、抽出画像31内で上から左下に向かって傾いた傾斜直線51を抽出画像31の左上端点32から輪郭線40に向かって近づけて行き、傾斜直線51が輪郭線40に最初に接した点を左側に存在する山部41aの頂点42aと特定してもよい。同様に、抽出画像31内で上から右下に向かって傾いた傾斜直線52を抽出画像31の右上端点33から輪郭線40に向かって近づけて行き、傾斜直線52が輪郭線40に最初に接した点を右側に存在する山部41bの頂点42bと特定してもよい。傾斜直線51、52は、抽出画像31内の水平線から例えば30°~60°傾いた直線としてもよく、40°~50°傾いた直線としてもよく、45°傾いた直線としてもよい。また、傾斜直線51、52は、山部41a、41bの下側が頂点42a、42bと特定されるような角度で傾斜していてもよい。
【0023】
山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bは、上記の方法によって特定される場合に限られず、その他の方法によって特定されてもよい。例えば、抽出画像31内で上から左下に向かって第1の所定角度で傾いた傾斜直線を左上端点32から輪郭線40に向かって近づけて最初に接する第1の点を特定し、第2の所定角度で傾いた傾斜直線を左上端点32から輪郭線40に向かって近づけて最初に接する第2の点を特定し、輪郭線40上において第1の点と第2の点の略中央に位置する点を山部41aの頂点42aと特定してもよい。同様に、抽出画像31内で上から右下に向かって第3の所定角度で傾いた傾斜直線を右上端点33から輪郭線40に向かって近づけて最初に接する第3の点を特定し、第4の所定角度で傾いた傾斜直線を右上端点33から輪郭線40に向かって近づけて最初に接する第4の点を特定し、輪郭線40上において第3の点と第4の点の略中央に位置する点を山部41bの頂点42bと特定してもよい。第1の所定角度及び第3の所定角度は抽出画像31内の水平線から15°~30°とし、第2の所定角度及び第4の所定角度は抽出画像31内の水平線から60°~75°としてもよい。
【0024】
例えば、抽出画像31をX-Y座標系に変換し、抽出画像31の各画素のX、Y座標から2つの山部41a、41bの頂点42a、42bを特定してもよい。山部41aの頂点42aは輪郭線40のなかで抽出画像31の左上端点32からの距離が最も短い点、山部41bの頂点42bは輪郭線40のなかで抽出画像31の右上端点33からの距離が最も短い点としてもよい。
【0025】
また、上記いずれかの方法によって山部41aまたは山部41bのいずれか一方の頂点を特定し、特定した頂点を通る抽出画像31内の略水平線が他方の山部の輪郭線40に交わる点を他方の山部の頂点と特定してもよい。
【0026】
図5に示すように、本第1の実施形態では、寸法特定部23は、まず、輪郭線40の2つの先端43a、43bのうち下側に位置する先端43aを通る抽出画像31内の略水平線を直線53と特定する。言い換えると、寸法特定部23は、輪郭線40のうち最も下側に位置する箇所である先端43aを通る抽出画像31内の略水平線を直線53と特定する。次いで、寸法特定部23は、基準点60と直線53との間の距離L1を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。すなわち、寸法特定部23は、基準点60と、基準点60を通る抽出画像31内の垂線59が直線53と交差する交点61と、の間の距離L1を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。
【0027】
算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L1に所定の係数を掛けた寸法L2を算出する。本第1の実施形態では、所定の係数は例えば0.2以上0.4以下の範囲内の値である。
【0028】
図6は、第1の実施形態における直線決定部25および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図6に示すように、本第1の実施形態では、直線決定部25は、まず、算出部24が算出した寸法L2だけ基準点60から下側に離れた(例えば真下に位置する)点62を特定し、点62を通る抽出画像31内の略水平線54が輪郭線40に交わる2つの交点を点44、45と特定する。次いで、直線決定部25は、点44と基準点60とを通る直線55および点45と基準点60とを通る直線56を決定する。
【0029】
角度取得部26は、本第1の実施形態では、直線55と直線56とがなす角度αを取得する。角度αは、例えば直線55と直線56が交差することで形成される複数の角度のうち基準点60の上下に位置する角度とする。
【0030】
スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度αから、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。
【0031】
ここで、ルーメンサイズスコアは、牛の健康状態を示す指標の一つであり、第1胃(ルーメン)の充満度を評価するものである。第1胃が健全な牛は乾物摂取量が多くなるため、第1胃の膨らみが大きくなる。第1胃は左腹部に位置することから、第1胃の膨らみが大きくなるほど、左腹部の張り出しが大きくなる。この左腹部の張り出し具合を、立位にある牛を略真後ろから見た腹部全体の相対形状から評価したのがルーメンサイズスコアである。
【0032】
図7(a)および
図7(b)は、第1胃(ルーメン)の充満度が異なる牛の撮像画像30である。
図7(b)の撮像画像30に写された牛は、
図7(a)の撮像画像30に写された牛よりも第1胃の充満度が高い牛である。
図8(a)および
図8(b)は、第1胃(ルーメン)の充満度と角度取得部26が取得する角度αとの関係を示す図である。
図8(a)および
図8(b)には、
図7(a)および
図7(b)の撮像画像30に写された牛の輪郭線40を抽出した抽出画像31が示されている。
図7(a)から
図8(b)に示すように、第1胃の充満度が高いほど、腹部の張り出し具合が大きくなるため、角度αが大きくなる。このため、角度αを求めることで、第1胃の充満度を評価でき、ルーメンサイズスコアを特定できると考えられる。
【0033】
ここで、
図7(a)および
図7(b)の撮像画像30に写された牛は、腹部が他の部位よりも左右外側に張り出している。このため、牛の輪郭線のうち最も左右外側に張り出した点をルーメンサイズスコアの特定に用いることが考えられる。しかしながら、牛が痩せている場合、すなわちルーメンサイズスコアが低い場合、立位にある牛を略真後ろから撮像したときに、腹部よりも臀部の方が左右外側に張り出してしまうことがある。このことについて、図を用いて説明する。
【0034】
図9は、ルーメンサイズスコアが低い牛を略真後ろから撮像した撮像画像30である。
図10は、
図9の撮像画像30に写された牛の輪郭線40を抽出した抽出画像31である。
図9に示すように、痩せてルーメンサイズスコアが低い牛の場合、胃が位置する腹部90よりも臀部91の方が左右外側に張り出してしまうことがある。この場合、
図10に示すように、輪郭線40のうち最も左側の点93および最も右側の点94は臀部に対応する点となる。このため、最も左側の点93と基準点60とを通る直線95と、最も右側の点94と基準点60とを通る直線96と、がなす角度を用いてルーメンサイズスコアを特定しても、正確なルーメンサイズスコアを特定することができない。このことから、腹部の位置を特定し、特定した腹部における点と基準点60とを通る直線から角度を取得するのが好ましいことが分かる。
【0035】
[実験1]
非特許文献1に記載されている判定シートを用いて専門家が特定したルーメンサイズスコアと、角度取得部26が取得した角度αの大きさと、の相関を調査する実験を行った。実験は、乳牛(ホルスタイン種)に対して行った(以下の実験2から実験5においても同じ)。
【0036】
図11には、ルーメンサイズスコアと角度取得部26が取得した角度αとの相関を調査した実験結果が示されている。
図11の横軸(x軸)は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、縦軸(y軸)は角度取得部26が取得した角度αである。
図11中の○、△、□、●、▲、■、×の各点は実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、直線は近似直線を示している。また、○、△、□、●、▲、■、×は、算出部24が寸法L2の算出に用いた係数が互いに異なる場合を示している。寸法L2の算出に用いた係数は、○は0.15、△は0.2、□は0.25、●は0.3、▲は0.35、■は0.4、×は0.45である。
【0037】
図11に示すように、寸法L2の算出に用いた係数が0.15以上0.45以下の範囲内の場合では、いずれにおいても、ルーメンサイズスコアが大きいほど、角度αは大きくなる結果であった。○の結果における近似直線はy=5.64x+96.99であり、決定係数R
2は0.389であった。△の結果における近似直線はy=9.28x+72.46であり、決定係数R
2は0.594であった。□の結果における近似直線はy=12.90x+50.55であり、決定係数R
2は0.724であった。●の結果における近似直線はy=15.76x+31.68であり、決定係数R
2は0.765であった。▲の結果における近似直線はy=13.96x+27.13であり、決定係数R
2は0.717であった。■の結果における近似直線はy=10.11x+27.50であり、決定係数R
2は0.618であった。×の結果における近似直線はy=5.52x+31.51であり、決定係数R
2は0.341であった。
【0038】
図12は、
図11の実験結果から得られた、算出部24が寸法L2の算出に用いた係数と決定係数との相関を示す図である。
図12の横軸は寸法L2の算出に用いた係数であり、縦軸は決定係数である。
図12に示すように、寸法L2の算出に用いた係数が0.3のときに、決定係数が最も大きくなった。また、係数を0.2以上0.4以下の範囲内の値とすることで0.6程度以上の決定係数が得られる結果であった。
【0039】
このように、寸法L2の算出に用いる係数を0.2以上0.4以下の範囲内とした場合に、点44と基準点60を通る直線55と、点45と基準点60を通る直線56と、がなす角度αとルーメンサイズスコアとの相関関係が強くなることから、点44、45は牛の腹部に位置する点であることが言える。すなわち、寸法特定部23が特定した寸法L1に0.2以上0.4以下の範囲内の係数を掛けて寸法L2を算出し、算出した寸法L2だけ基準点60から下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面は腹部の表面であることが言える。このことについて
図9を用いて説明する。
【0040】
図9において、算出部24が寸法L2の算出に用いた係数を0.2とした場合に、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた点を通る水平線を破線97で示し、係数を0.4とした場合に、基準点60から寸法L2だけ離れた点を通る水平線を破線98で示している。
図9に示すように、0.2以上0.4以下の範囲内の係数を用いて寸法L2を算出し、算出した寸法L2だけ基準点60から下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面は、破線97と破線98の間の範囲内となり、牛の腹部の表面となる。したがって、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面上の点を特定することで牛の腹部に位置する点を特定でき、その結果、角度αからルーメンサイズスコアを精度良く特定できるようになる。
【0041】
このように、ルーメンサイズスコアと角度αとには強い相関関係があることから、スコア特定部27が角度αからルーメンサイズスコアを特定することで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。スコア特定部27は、例えば、記憶部14に記憶された、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられたスコア情報を用いて、角度αからルーメンサイズスコアを特定する。
【0042】
表1には、記憶部14に記憶されたスコア情報の一例が示されている。表1に示すように、スコア情報においては、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられている。例えば、角度がa°未満である場合のルーメンサイズスコアは1.00、a°以上b°未満である場合のルーメンサイズスコアは1.50などのように、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられている。なお、表1では、ルーメンサイズスコアが2.00~4.00の間は0.25刻み、それ以外は0.50刻みとしているが、その他の場合でもよい。例えば、全ての範囲で0.25刻み又は0.50刻みとしてもよい。
【表1】
【0043】
なお、記憶部14に記憶されるスコア情報は、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられた情報であれば、表1に示したスコア情報以外であってもよい。例えば、
図11に示す近似直線に対応する一次関数(y=ax+b)がスコア情報として記憶部14に記憶されていてもよい。この場合、yに角度を代入することで得られたxの値に対して四捨五入や、切り上げ、切り下げなどの端数処理を行ってルーメンサイズスコアを特定してもよい。
【0044】
図13は、第1の実施形態に係る牛の評価装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図13に示すように、牛の評価装置100は、記憶装置70、メモリ71、プロセッサ72、通信インターフェース73、入力装置74、表示装置75、および撮像装置76を有する。これらの各部はバス77により相互に接続される。
【0045】
記憶装置70は、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリであって、牛の評価プログラム78を記憶する。
【0046】
メモリ71は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのようなデータを一時的に記憶するハードウェアである。
図1における記憶部14は、記憶装置70とメモリ71によって実現される。
【0047】
プロセッサ72は、牛の評価装置100の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)などのハードウェアである。プロセッサ72は、メモリ71と協働して牛の評価プログラム78を実行する。このように、メモリ71とプロセッサ72とが協働して牛の評価プログラム78を実行することにより、
図2における制御部15の各機能が実現される。
【0048】
通信インターフェース73は、牛の評価装置100を他の機器と近距離無線通信またはネットワークを介した無線通信をさせるためのハードウェアである。通信インターフェース73により
図1における通信部12が実現される。
【0049】
入力装置74は、作業者が牛の評価装置100を操作するためのタッチパネルやスイッチ等の入力デバイスである。入力装置74により
図1における入力部11が実現される。
【0050】
表示装置75は、
図1における表示部10を実現するためのハードウェアであり、牛の撮像画像30や抽出画像31、ルーメンサイズスコアの評価結果などを表示するための液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0051】
撮像装置76は、
図1における撮像部13を実現するためのハードウェアであり、レンズや撮像素子等を備える。
【0052】
次に、第1の実施形態に係る牛の評価方法の一例について、
図14のフローチャートに沿って説明する。
図14の処理は、評価装置100の制御部15によって実行される。なお、記憶部14には、一例として表1のようなスコア情報が格納されているとする。
【0053】
図14の処理では、まず、ステップS10において、制御部15の画像取得部20は、牛の評価プログラム78が起動されるまで待機する。この場合、作業者の操作(例えば入力部11への入力操作またはマイク(不図示)への音声入力など)に応じて制御部15が牛の評価プログラム78を起動した段階で、ステップS12に移行する。
【0054】
ステップS12に移行すると、画像取得部20は、ルーメンサイズスコアを特定する牛が撮像された撮像画像30を取得する(
図3参照)。牛の撮像画像30は、立位にある牛が略真後ろから撮像された画像である。画像取得部20は、例えば、作業者が撮像部13を用いて撮像した牛の撮像画像を取得する。なお、画像取得部20は、通信部12を介して他の機器から受信した牛の撮像画像、または記憶部14に記憶された複数の牛の撮像画像の中から作業者が入力部11を操作することで選択した牛の撮像画像を取得してもよい。なお、画像取得部20は、牛の評価プログラム78が起動した後に、作業者が撮像部13によって牛を撮像できるよう、カメラ機能を立ち上げてもよい。作業者が撮像部13によって牛を撮像した場合、撮像した牛の画像と、この撮像画像を選択するか否かを問う選択ボタンと、を表示部10に表示してもよい。
【0055】
制御部15の抽出部21は、ステップS14において、ステップS12で取得した牛の撮像画像30から牛の輪郭をなぞった輪郭線40を抽出する(
図4参照)。これにより、牛の輪郭線40が示された抽出画像31が生成される。輪郭線40を抽出するにあたり、抽出部21は、輪郭線40を良好な精度で抽出するために、撮像画像30内の牛以外の背景を除去する処理を行ってもよい。
【0056】
次いで、制御部15の基準点特定部22は、ステップS15において、輪郭線40の上部の左右両側に存在する2つの山部41a、41bの頂点42a、42bから基準点60の特定が可能か否か判断し、可能であれば(Yes)、ステップS16に進んで、輪郭線40の上部の左右両側に存在する2つの山部41a、41bの頂点42a、42bから基準点60を特定する(
図5参照)。例えば、基準点特定部22は、抽出画像31内で斜めに傾いた傾斜直線51、52を輪郭線40に近づけて行き、輪郭線40に最初に接した点を山部41a、41bの頂点42a、42bと特定し、この頂点42a、42bを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定する。
【0057】
ステップS15において、例えば、基準点特定部22は、線分50が抽出画像31内の水平線または抽出画像31の枠に対して所定の角度以上で傾いている場合など、牛の撮像画像30がルーメンサイズスコアの特定に適していないと判断した場合に、基準点60の特定ができないと判断する(No)。この場合、ステップS12に戻って、撮像画像30の取得から再度実行し直す。このときに、基準点特定部22は、撮像画像30を再度取得し直すことを作業者に促すメッセージを表示部10に表示したり、音声で出力したりしてもよい。
【0058】
ステップS18では、制御部15の寸法特定部23は、基準点60と、輪郭線40の下部に位置する先端43aを通る抽出画像31内の略水平線である直線53と、の間の距離L1を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する(
図5参照)。
【0059】
次いで、ステップS20では、制御部15の算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L1に所定の係数を掛けた寸法L2を算出する。所定の係数は、例えば0.2以上0.4以下の範囲内の値である。したがって、寸法L2は寸法L1より短い。
【0060】
次いで、ステップS22では、制御部15の直線決定部25は、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた(例えば真下に位置する)点62の略左右両側に位置する輪郭線40上の2つの点44、45を特定し、点44、45と基準点60とを通る直線55、56を決定する(
図6参照)。例えば、直線決定部25は、基準点60から寸法L2だけ真下に位置する点62を特定し、点62を通る抽出画像31内の略水平線54が輪郭線40に交わる2つの交点を点44、45と特定する。そして、直線決定部25は、点44と基準点60とを通る直線55および点45と基準点60とを通る直線56を決定する。
【0061】
次いで、ステップS24では、制御部15の角度取得部26は、ステップS16で決定した直線55と直線56とがなす角度αを取得する(
図6参照)。
【0062】
次いで、ステップS26では、制御部15のスコア特定部27は、ステップS24で取得した角度αと、記憶部14に記憶された表1のようなスコア情報と、から、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。次いで、ステップS28では、スコア特定部27は、ステップS26で特定したルーメンサイズスコアを表示部10に表示すると共に、記憶部14に記憶する。例えば、スコア特定部27は、牛の撮像画像30と共にルーメンサイズスコアを表示部10に表示してもよい。また、スコア特定部27は、ルーメンサイズスコアを特定した牛の個体識別番号と、当該牛を撮像した撮像画像30と、撮像日と、当該牛のルーメンサイズスコアと、を関連付けた1つの情報として記憶部14に記憶してもよい。
【0063】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、画像取得部20は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像30を取得する(
図3参照)。抽出部21は、撮像画像30から、牛の輪郭線40を抽出する(
図4参照)。寸法特定部23は、撮像画像30から、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法L1(第1の寸法)を予め定められた方法で特定する(
図5参照)。直線決定部25は、牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の基準点60から寸法L1より短い寸法L2(第2の寸法)だけ下側に離れた点62の略左右両側に位置する輪郭線40上の点44、45を特定し、点44、45と基準点60とを通る直線55、56(第1直線および第2直線)を決定する(
図6参照)。角度取得部26は、直線55と直線56とがなす角度αを取得する(
図6参照)。スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度αから、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。このように、本第1の実施形態では、制御部15が、直線55、56を決定し、直線55と直線56とがなす角度αを取得し、角度αからルーメンサイズスコアを特定することから、非特許文献1のように人がルーメンサイズスコアを特定する場合に比べて、ルーメンサイズスコアのばらつきを小さく抑えることができる。また、直線決定部25が特定する輪郭線40上の点44、45は、基準点60から寸法L2だけ下側に位置する点62の略左右両側に位置する点であるため、
図9で説明したように牛の腹部の表面に位置する点である。したがって、直線55と直線56とがなす角度αからルーメンサイズスコアを特定することで、牛が痩せている場合でも、太っている場合でも、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。また、2次元画像である撮像画像30に牛が大きく写された場合でも、小さく写された場合でも、角度αは変化しないことから、角度αからルーメンサイズスコアを特定することで、正規化などの処理を行わずにルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。更に、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像30を用いてルーメンサイズスコアを特定するため、牛の三次元画像を用いてルーメンサイズスコアを特定する場合に比べて処理の負荷が小さくなり、スマートフォンなどの携帯性に優れて汎用性の高い簡易な評価装置100を用いてもルーメンサイズスコアを特定することができる。
【0064】
また、本第1の実施形態では、直線決定部25は、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた点62(第1の点)を特定し、点62を通る抽出画像31内の略水平線54が輪郭線40に交わる2つの交点を点44、45と特定する(
図6参照)。そして、直線決定部25は、直線55(第1直線)を決定する場合、2つの点44、45のうちの一方の点44と基準点60とを通る直線を直線55と決定する(
図6参照)。また、直線決定部25は、直線56(第2直線)を決定する場合、2つの点44、45のうちの他方の点45と基準点60とを通る直線を直線56と決定する(
図6参照)。これにより、牛の腹部の表面上に位置する点44、45と基準点60とを通る直線55、56が決定されるため、直線55と直線56とがなす角度αから牛のルーメンサイズスコアを特定することで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。抽出画像31内の略水平線54とは、完全な水平線の場合に限られず、ルーメンサイズスコアの特定に支障がない程度に傾いている場合でもよく、水平線から±5°の範囲内で傾いている場合でもよい。
【0065】
また、本第1の実施形態では、基準点特定部22は、輪郭線40の上部の左右両側に存在する山部41a、41bの頂点42a、42bを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定する(
図5参照)。寸法特定部23は、基準点60と、輪郭線40の下部に存在する2つの先端43a、43bのうちの下側の先端43aを通る抽出画像31内の略水平線である直線53と、の間の距離L1を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する(
図5参照)。そして、直線決定部25は基準点特定部22および寸法特定部23が特定した事項に基づいて直線55と直線56を決定し、角度取得部26は直線55と直線56とがなす角度αを取得し、スコア特定部27は角度αからルーメンサイズスコアを特定する(
図6参照)。これにより、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像30から、人の指示を介さずに制御部15による処理だけで、ルーメンサイズスコアを特定するため、ルーメンサイズスコアのばらつきを小さく抑えることができる。また、基準点特定部22が山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定することで、基準点60は牛の肛門付近に位置する点となる。このような肛門付近に位置する点を基準点60とすることで、直線55と直線56とのなす角度αからルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。山部41a、41bの頂点42a、42bを結ぶ線分50の略中点とは、線分50の完全な中点である場合に限られず、肛門付近に位置する場合であればよく、線分50の完全な中点から左右に線分50の長さの10%の範囲内に位置していればよい。直線53が抽出画像31内の略水平線とは、完全な水平線の場合に限られず、ルーメンサイズスコアの特定に支障がない程度に傾いている場合でもよく、水平線から±5°の範囲内で傾いている場合でもよい。
【0066】
なお、
図5では、線分50は抽出画像31内で略水平となっているが、山部41a、41bの頂点42a、42bの位置によっては水平とならない場合がある。また、線分50は、頂点42a、42bの求め方によっては、
図5から上下方向に多少ずれることもある。しかしながら、線分50が多少傾斜しても基準点60の位置はほとんど変わらないし、線分50が上下に多少ずれても角度αの値はほとんど変わらないため、ルーメンサイズスコアの特定精度への影響はほとんどない。
【0067】
また、本第1の実施形態では、算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L1に0.2以上0.4以下の範囲内の値である係数を掛けて寸法L2を算出する。すなわち、寸法L2は寸法L1に0.2以上0.4以下の係数を掛けた値である。基準点特定部22が山部41a、41bの頂点42a、42bを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定し、寸法特定部23が基準点60と輪郭線40の先端43aを通る直線53との間の距離L1を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合では、
図12のように、係数を0.2以上0.4以下の値とすることで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。ルーメンサイズスコアの特定の精度を向上させる点から、係数は0.25以上0.35以下の場合が好ましく、0.28以上0.32以下の場合がより好ましく、0.3の場合が更に好ましい。
【0068】
なお、上記第1の実施形態において、寸法特定部23は、基準点60と輪郭線40の先端43a、43bのうちの下側の先端43aを通る直線53との間の距離L1を牛の上下方向に関する基準寸法と特定する場合を例に示したが、この場合に限られない。寸法特定部23は、基準点60と、輪郭線40の先端43a、43bのうちの上側の先端43bを通る抽出画像31内の略水平線または先端43aと先端43bを通る直線と、の間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。また、寸法特定部23は、基準点60と、先端43aを通る抽出画像31内の略水平線と先端43bを通る抽出画像31内の略水平線との中間に位置する略水平線と、の間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。これらの場合でも、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法は大きく変わらないことから、算出部24が用いる係数は0.2以上0.4以下であればよく、0.25以上0.35以下が好ましく、0.28以上0.32以下がより好ましく、0.3が更に好ましい。
【0069】
また、本第1の実施形態では、輪郭線40の上部の左右両側に存在する山部41a、41bは、牛の腰角に対応する部分である。このような山部41a、41bの頂点42a、42b(牛の腰角に対応する部分の頂点)から基準点60を特定することで、牛が太っていても、痩せていても、基準点60は牛の肛門付近に位置するようになる。よって、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0070】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る牛の評価装置の機能構成およびハードウェア構成は、第1の実施形態の
図1および
図13と同じである。第2の実施形態における制御部15の機能構成は第1の実施形態の
図2と同じであるが、基準点特定部22、寸法特定部23、および算出部24が実行する処理が第1の実施形態と異なっている。以下においては、第2の実施形態における基準点特定部22、寸法特定部23、算出部24、直線決定部25、角度取得部26、およびスコア特定部27が実行する処理について説明する。画像取得部20および抽出部21が実行する処理は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0071】
図15は、第2の実施形態における基準点特定部22および寸法特定部23が実行する処理を説明するための図である。
図15に示すように、基準点特定部22は、本第2の実施形態では、牛の輪郭線40のうち最も上側に位置する点を基準点60aと特定する。基準点60aは、牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍に位置する点となる。また、基準点60aは、牛の尻尾の付け根付近に位置する点となる。寸法特定部23は、本第2の実施形態では、まず、輪郭線40の下部に位置する2つの先端43aと先端43bを通る直線53aを特定する。そして、寸法特定部23は、基準点60aと直線53aとの間の距離L3を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。すなわち、寸法特定部23は、基準点60aと、基準点60aを通る抽出画像31内の垂線59aが直線53aと交差する交点61aと、の間の距離L3を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。
【0072】
算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L3に所定の係数を掛けた寸法L4を算出する。本第2の実施形態では、所定の係数は例えば0.3以上0.4以下の範囲内の値である。
【0073】
図16は、第2の実施形態における直線決定部25および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図16に示すように、直線決定部25は、本第2の実施形態では、まず、算出部24が算出した寸法L4だけ基準点60aから下側に離れた(例えば真下の位置する)点62aを特定し、点62aを通る抽出画像31内の略水平線54aが輪郭線40に交わる2つの交点を点44a、45aと特定する。次いで、直線決定部25は、点44aと基準点60aとを通る直線55aおよび点45aと基準点60aとを通る直線56aを決定する。角度取得部26は、本第2の実施形態では、直線55aと直線56aとがなす角度βを取得する。角度βは、例えば直線55aと直線56aが交差することで形成される複数の角度のうち基準点60aの上下に位置する角度とする。
【0074】
スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度βから、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。
【0075】
第2の実施形態に係る牛の評価方法は、基準点特定部22が特定する基準点60a、寸法特定部23が特定する寸法L3、および算出部24が算出する寸法L4が異なる点以外は第1の実施形態の
図14のフローチャートと同様であるため図示および説明を省略する。
【0076】
[実験2]
非特許文献1に記載されている判定シートを用いて専門家が特定したルーメンサイズスコアと、角度取得部26が取得した角度βの大きさと、の相関を調査する実験を行った。
図17には、ルーメンサイズスコアと角度取得部26が取得した角度βとの相関を調査した実験結果が示されている。
図17の横軸(x軸)は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、縦軸(y軸)は角度取得部26が取得した角度βである。
図17中の○、△、□の各点は実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、直線は近似直線を示している。また、○、△、□は、算出部24が寸法L4の算出に用いた係数が互いに異なる場合を示している。算出部24が寸法L4の算出に用いた係数は、○は0.3、△は0.35、□は0.4である。
【0077】
図17に示すように、算出部24が寸法L4の算出に用いた係数が0.3以上0.4以下の範囲内では、いずれにおいても、ルーメンサイズスコアが大きいほど、角度βは大きくなる結果であった。○の結果における近似直線はy=12.79x+36.54であり、決定係数R
2は0.906であった。△の結果における近似直線はy=13.24x+26.47であり、決定係数R
2は0.881であった。□の結果における近似直線はy=13.03x+19.15であり、決定係数R
2は0.8571であった。このように、寸法L4の算出に用いる係数を0.3以上0.4以下の範囲内とすることで、点44aと基準点60aを通る直線55aと、点45aと基準点60aを通る直線56aと、がなす角度βとルーメンサイズスコアとの相関関係が強くなることから、点44a、45aは牛の腹部に位置する点であることが言える。すなわち、寸法特定部23が特定した寸法L3に0.3以上0.4以下の範囲内の係数を掛けて寸法L4を算出し、算出した寸法L4だけ基準点60aから下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面は腹部の表面であることが言える。したがって、基準点60aから寸法L4だけ下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面上の点を特定することで牛の腹部に位置する点を特定でき、その結果、角度βからルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0078】
本第2の実施形態によれば、基準点特定部22は、輪郭線40の最も上側の点を基準点60aと特定する(
図15参照)。寸法特定部23は、基準点60aと、輪郭線40の下部に位置する2つの先端43aと先端43bを通る直線53aと、の間の距離L3を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する(
図15参照)。このような場合でも、
図17で説明したように、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0079】
また、本第2の実施形態では、算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L3に0.3以上0.4以下の範囲内の値である係数を掛けて寸法L4を算出する。すなわち、寸法L4は寸法L3に0.3以上0.4以下の係数を掛けた値である。基準点特定部22が輪郭線40の最も上側の点を基準点60aと特定し、寸法特定部23が基準点60aと輪郭線40の先端43aと先端43bを通る直線53aとの間の距離L3を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合では、
図17のように、係数を0.3以上0.4以下の値とすることで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。ルーメンサイズスコアの特定の精度を向上させる点から、係数は0.3以上0.38以下の場合が好ましく、0.3以上0.35以下の場合がより好ましく、0.3以上0.32以下の場合が更に好ましい。
【0080】
なお、上記第2の実施形態において、寸法特定部23は、基準点60aと輪郭線40の先端43aと先端43bを通る直線53aとの間の距離L3を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合に限られず、基準点60aと輪郭線40の先端43a、43bの一方を通る抽出画像31内の略水平線との間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。この場合でも、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法は大きく変わらないことから、算出部24が用いる係数は0.3以上0.4以下であればよく、0.3以上0.38以下が好ましく、0.3以上0.35以下がより好ましく、0.3以上0.32以下が更に好ましい。なお、算出部24が用いる係数は0.2以上0.4以下の場合でもよい。
【0081】
《第3の実施形態》
第3の実施形態に係る牛の評価装置の機能構成およびハードウェア構成は、第1の実施形態の
図1および
図13と同じである。第3の実施形態における制御部15の機能構成は第1の実施形態の
図2と同じであるが、寸法特定部23および角度取得部26が実行する処理が第1の実施形態と異なっている。以下においては、第3の実施形態における寸法特定部23、算出部24、直線決定部25、角度取得部26、およびスコア特定部27が実行する処理について説明する。画像取得部20、抽出部21、および基準点特定部22が実行する処理は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0082】
図18は、第3の実施形態における寸法特定部23、直線決定部25、および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図18では、第1の実施形態と同じ方法によって基準点特定部22が基準点60を特定した後の状態が示されている。
図18に示すように、寸法特定部23は、輪郭線40の下部に位置する2つの先端43aと先端43bを通る直線53aを特定する。そして、寸法特定部23は、基準点60と直線53aとの間の距離L5を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。
【0083】
算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L5に所定の係数を掛けた寸法L6を算出する。所定の係数は、第1の実施形態と同じく、0.2以上0.4以下の範囲内の値である。
【0084】
直線決定部25は、まず、算出部24が算出した寸法L6だけ基準点60から下側に離れた(例えば真下の位置する)点62bを特定し、点62bを通る抽出画像31内の略水平線54bが輪郭線40に交わる交点である点44b、45bのいずれか一方を特定する。次いで、直線決定部25は、点44bと基準点60とを通る直線55bまたは点45bと基準点60とを通る直線56bのいずれか一方を決定する。なお、
図18においては、理解の容易性のため、点44b、45bの両方を図示し、直線55b、56bの両方を図示している。
【0085】
角度取得部26は、基準点60を通る抽出画像31内の略垂線である基準線57と直線55bとがなす角度γ1、または、基準線57と直線56bとがなす角度γ2、のいずれか一方を取得する。角度γ1は、例えば基準線57と直線55bが交差することで形成される複数の角度のうち基準点60に対して左下または右上の角度とする。角度γ2は、例えば基準線57と直線56bが交差することで形成される複数の角度のうち基準点60に対して右下または左上の角度とする。なお、
図18においては、理解の容易性のため、角度γ1、γ2の両方を図示している。
【0086】
スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度γ1またはγ2から、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。
【0087】
第3の実施形態に係る牛の評価方法は、寸法特定部23が特定する寸法L5、算出部24が算出する寸法L6、直線決定部25が決定する直線55b、56b、および角度取得部26が取得する角度γ1、γ2が異なる点以外は第1の実施形態の
図14のフローチャートと同様であるため図示および説明を省略する。
【0088】
[実験3]
非特許文献1に記載されている判定シートを用いて専門家が特定したルーメンサイズスコアと、角度取得部26が取得した角度γ1、γ2と、の相関を調査する実験を行った。
図19には、ルーメンサイズスコアと角度取得部26が取得した角度γ1および/またはγ2との相関を調査した実験結果が示されている。
図19の横軸は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、右縦軸は角度取得部26が取得した角度γ1またはγ2であり、左縦軸は角度γ1と角度γ2の和である。
図19中の○、△、×の各点は実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、○は角度γ1を取得した場合の結果、△は角度γ2を取得した場合の結果、×は参考として角度γ1とγ2を足した場合の結果を示している。また、○の結果の近似直線を太実線で示し、△の結果の近似直線を細実線で示し、×の結果の近似直線を破線で示している。なお、○、△、×の全てにおいて、算出部24が寸法L6の算出に用いた係数は0.3とした。
【0089】
図19に示すように、ルーメンサイズスコアが大きいほど、角度γ1、角度γ2、および角度γ1とγ2の和は全て大きくなる結果であった。角度γ1を取得した○の結果の近似直線の決定係数R
2は0.767であり、角度γ2を取得した△の結果の近似直線の決定係数R
2は0.680であった。参考とした、角度γ1と角度γ2の和を取得した場合の×の結果の近似直線の決定係数R
2は0.826であった。このことから、基準線57と直線55bとがなす角度γ1または基準線57と直線56bとがなす角度γ2からルーメンサイズスコアを特定した場合でも、ルーメンサイズスコアを精度良く特定できることが分かる。
【0090】
本第3の実施形態によれば、角度取得部26は、基準線57と直線55bとがなす角度γ1、または、基準線57と直線56bとがなす角度γ2を取得する(
図18参照)。スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度γ1またはγ2からルーメンサイズスコアを特定する。この場合でも、
図19で説明したように、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。角度取得部26は、角度γ1と角度γ2のどちらを取得する場合でもよいが、第1胃(ルーメン)は左腹部に位置するため、ルーメンサイズスコアを精度良く特定する観点から、角度γ1を取得する場合が好ましい。これは、
図19において、角度γ2を取得した△の結果の近似直線の決定係数R
2は0.680であったのに対し、角度γ1を取得した〇の結果の近似直線の決定係数R
2は0.767であったことからも言える。
【0091】
図20は、第3の実施形態の変形例における角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図20に示すように、本第3の実施形態の変形例では、角度取得部26は、基準点60を通る抽出画像31内の略水平線である基準線57aと直線55bとがなす角度γ3、または、基準線57aと直線56bとがなす角度γ4、のいずれか一方を取得する。角度γ3は、例えば基準線57aと直線55bが交差することで形成される複数の角度のうち基準点60に対して左下または右上の角度とする。角度γ4は、例えば基準線57aと直線56bが交差することで形成される複数の角度のうち基準点60に対して右下または左上の角度とする。なお、
図20においては、理解の容易性のため、角度γ3、γ4の両方を図示している。
【0092】
上記第3の実施形態では、抽出画像31内の略垂線を基準線57とする場合を例に示したが、上記第3の実施形態の変形例のように、抽出画像31内の略水平線を基準線57aとしてもよい。抽出画像31内の略垂線または略水平線を基準線57、57aとすることで、基準線57、57aの決定が容易であるとともに、基準線57、57aと直線55bとがなす角度γ1、γ3および基準線57、57aと直線56bとがなす角度γ2、γ4を容易に取得することができる。なお、上記第3の実施形態の変形例では、角度取得部26が取得する角度γ3、γ4は第1胃(ルーメン)の充満度が高いほど小さくなる。基準線57が抽出画像31内の略垂線とは、完全な垂線の場合に限られず、ルーメンサイズスコアの特定に支障が出ない程度に傾いている場合でもよく、垂線から±5°程度で傾いている場合でもよい。同様に、基準線57aが抽出画像31内の略水平線とは、完全な水平線の場合に限られず、ルーメンサイズスコアの特定に支障が出ない程度に傾いている場合でもよく、水平線から±5°程度で傾いている場合でもよい。また、基準線は、山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとを通る直線、または、山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとを通る直線に略直交する直線であってもよい。
【0093】
上記第3の実施形態において、基準点特定部22は、山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとを結ぶ線分50の略中点を基準点60と特定する場合を例に示したが、上記第2の実施形態のように、輪郭線40の最も上側の点を基準点60aと特定する場合でもよい。また、寸法特定部23は、上記第1の実施形態と同様に、基準点60または60aと、輪郭線40の下部に位置する先端43a、43bのいずれか一方を通る抽出画像31内の略水平線と、の間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。
【0094】
《第4の実施形態》
第1の実施形態から第3の実施形態では牛の輪郭線40から基準点60、60aなどを制御部15が自動で特定する場合を例に示したが、第4の実施形態では作業者の指定に基づいて特定する場合について説明する。第4の実施形態に係る牛の評価装置の機能構成およびハードウェア構成は、第1の実施形態の
図1および
図13と同じである。第4の実施形態における制御部15の機能構成は第1の実施形態の
図2と同じであるが、基準点特定部22、寸法特定部23、および算出部24が実行する処理が第1の実施形態と異なっている。以下においては、第4の実施形態における基準点特定部22、寸法特定部23、算出部24、直線決定部25、角度取得部26、およびスコア特定部27が実行する処理について説明する。画像取得部20および抽出部21が実行する処理は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0095】
図21は、第4の実施形態における基準点特定部22および寸法特定部23が実行する処理を説明するための図である。
図22は、第4の実施形態における基準点特定部22、寸法特定部23、直線決定部25、および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図21は、画像取得部20が取得した牛の撮像画像30を示し、
図22は、抽出部21が牛の輪郭線40を抽出した抽出画像31を示している。
図21の撮像画像30と
図22の抽出画像31は、例えば表示部10に並んで表示されてもよい。
【0096】
図21に示すように、作業者は、表示部10に表示された撮像画像30の牛に対して入力部11を操作して牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の箇所80を指定する。牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の箇所80は、例えば牛の肛門付近に位置する箇所である。基準点特定部22は、
図22に示すように、作業者による入力部11の操作に基づいて、牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の箇所80に対応する基準点60bを特定する。
【0097】
なお、作業者が表示部10に表示された撮像画像30の牛に対して入力部11を操作して牛の左右の腰角の頂点を指定した場合、基準点特定部22は、作業者が指定した左右の腰角の頂点を結ぶ線分の略中点を基準点60bと特定してもよい。
【0098】
図21に示すように、作業者は、表示部10に表示された撮像画像30の牛に対して左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の箇所80を指定するのに続いて、牛の踵の箇所81a、81bを指定する。寸法特定部23は、
図22に示すように、作業者が指定した牛の踵の箇所81a、81bに対応する点63a、63bを特定し、点63a、63bを通る直線53bを特定する。次いで、寸法特定部23は、基準点60bと直線53bとの間の距離L7を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。すなわち、寸法特定部23は、基準点60bと、基準点60bを通る抽出画像31内の垂線59bが直線53bと交差する交点61bと、の間の距離L7を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として特定する。
【0099】
算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L7に所定の係数を掛けた寸法L8を算出する。本第4の実施形態では、所定の係数は例えば0.25以上0.55以下の範囲内の値である。
【0100】
直線決定部25は、
図22に示すように、まず、算出部24が算出した寸法L8だけ基準点60bから下側に離れた(例えば真下に位置する)点62cを特定し、点62cを通る抽出画像31内の略水平線54cが輪郭線40に交わる交点である点44c、45cを特定する。次いで、直線決定部25は、点44cと基準点60bとを通る直線55cおよび点45cと基準点60bとを通る直線56cを決定する。角度取得部26は、直線55cと直線56cとがなす角度θを取得する。
【0101】
スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度θから、撮像画像30に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。
【0102】
第4の実施形態に係る牛の評価方法は、基準点特定部22が特定する基準点60b、寸法特定部23が特定する寸法L7、および算出部24が算出する寸法L8が異なる点以外は第1の実施形態の
図14のフローチャートと同様であるため図示および説明を省略する。
【0103】
[実験4]
非特許文献1に記載されている判定シートを用いて専門家が特定したルーメンサイズスコアと、角度取得部26が取得した角度θの大きさと、の相関を調査する実験を行った。
図23には、ルーメンサイズスコアと角度取得部26が取得した角度θとの相関を調査した実験結果が示されている。
図23の横軸(x軸)は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、縦軸(y軸)は角度取得部26が取得した角度θである。
図23中の○、△、□、●、▲、■、×、◇の各点は実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、直線は近似直線を示している。また、○、△、□、●、▲、■、×、◇は、算出部24が寸法L8の算出に用いた係数が互いに異なる場合を示している。寸法L8の算出に用いた係数は、○は0.25、△は0.3、□は0.35、●は0.4、▲は0.416、■は0.45、×は0.5、◇は0.55である。
【0104】
図23に示すように、寸法L8の算出に用いた係数が0.25以上0.55以下の範囲の場合では、いずれにおいても、ルーメンサイズスコアが大きいほど、角度θは大きくなる結果であった。○の結果における近似直線はy=7.45x+80.94であり、決定係数R
2は0.620であった。△の結果における近似直線はy=11.11x+61.57であり、決定係数R
2は0.827であった。□の結果における近似直線はy=13.01x+47.96であり、決定係数R
2は0.867であった。●の結果における近似直線はy=13.73x+37.98であり、決定係数R
2は0.848であった。▲の結果における近似直線はy=13.29x+37.09であり、決定係数R
2は0.860であった。■の結果における近似直線はy=13.52x+30.98であり、決定係数R
2は0.836であった。×の結果における近似直線はy=12.17x+27.03であり、決定係数R
2は0.802であった。◇の結果における近似直線はy=8.57x+29.57であり、決定係数R
2は0.700であった。
【0105】
図24は、
図23の実験結果から得られた、算出部24が寸法L8の算出に用いた係数と決定係数との相関を示す図である。
図24の横軸は寸法L8の算出に用いた係数であり、縦軸は決定係数である。
図24に示すように、寸法L8の算出に用いた係数が0.4のときに、決定係数が最も大きくなった。また、係数を0.25以上0.55以下の範囲内の値とすることで0.65程度以上の決定係数が得られる結果であった。
【0106】
図23および
図24の結果から、基準点60bと牛の踵の箇所に対応した点63a、63bを通る直線53bとの間の距離L7を牛の上下方向の身体の大きさを示す寸法と特定した場合では、特定した寸法L7に0.25以上0.55以下の範囲内の係数を掛けて寸法L8を算出し、算出した寸法L8だけ基準点60bから下側に離れた点62cの略左右両側に位置する牛の表面は腹部の表面であることが言える。したがって、基準点60bから寸法L8だけ下側に離れた点の略左右両側に位置する牛の表面上の点を特定することで牛の腹部に位置する点を特定でき、その結果、角度θからルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0107】
本第4の実施形態によれば、寸法特定部23は、基準点60bと、牛の2つの後足の両方の踵を通る直線53bと、の間の距離L7を、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する。このような場合でも、
図23および
図24で説明したように、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0108】
また、本第4の実施形態では、算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L7に0.25以上0.55以下の範囲内の値である係数を掛けて寸法L8を算出する。すなわち、寸法L8は寸法L7に0.25以上0.55以下の係数を掛けた値である。寸法特定部23が、牛の肛門付近の基準点60bと、牛の2つの後足の両方の踵を通る直線53bと、の間の距離L7を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合では、
図24のように、係数を0.25以上0.55以下の値とすることで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。ルーメンサイズスコアの特定の精度を向上させる点から、係数は0.28以上0.52以下の場合が好ましく、0.3以上0.5以下の場合がより好ましく、0.35以上0.45以下の場合が更に好ましい。
【0109】
なお、上記第4の実施形態において、寸法特定部23は、基準点60bと牛の両方の踵を通る直線53bとの間の距離L7を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合に限られず、基準点60bと牛の2つの後脚のうちの一方の踵を通る撮像画像30内の略水平線との間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。この場合でも、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法は大きく変わらないことから、算出部24が用いる係数は0.25以上0.55以下であればよく、0.28以上0.52以下が好ましく、0.3以上0.5以下がより好ましく、0.35以上0.45以下が更に好ましい。
【0110】
なお、上記第4の実施形態において、作業者が牛の踵を指定することで、寸法特定部23は、基準点60bと牛の両方の踵を通る直線53bとの間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合を示したが、この場合に限られない。作業者が牛の後足の蹄を指定することで、寸法特定部23は、基準点60bと、牛の2つの後足の蹄のうちの一方の蹄を通る撮像画像30内の略水平線、または、2つの後足の両方の蹄を通る直線と、の間の距離を牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法と特定する場合でもよい。略水平線とは、完全な水平線の場合に限られず、ルーメンサイズスコアの特定に支障がない程度に傾いている場合でもよく、水平線から±5°の範囲内で傾いている場合でもよい。
【0111】
また、上記第4の実施形態において、作業者が指定した、牛の左右方向中央部近傍かつ上端部近傍の箇所80は牛の肛門付近である場合を例に示したが、その他の箇所でもよい。例えば牛の尻尾の付け根付近である場合でもよい。また、角度取得部26は、上記第3の実施形態およびその変形例のように、基準線57、57aと直線55cとがなす角度、または、基準線57、57aと直線56cとがなす角度を取得する場合でもよい。
【0112】
《第5の実施形態》
第1の実施形態から第4の実施形態では、直線決定部25は、算出部24が算出した寸法だけ基準点から下側に離れた点を通る略水平線が輪郭線40と交わる交点である2つの点と基準点とを通る直線を決定する場合を例に示した。本第5の実施形態では、直線決定部25は、算出部24が算出した寸法だけ基準点から下側に離れた点を用いて抽出画像31内で左右方向に伸びた着目範囲を特定し、特定した着目範囲に位置する輪郭線40において最も左側に位置する点および最も右側に位置する点と基準点とを通る直線を決定する場合について説明する。
【0113】
第5の実施形態に係る牛の評価装置の機能構成およびハードウェア構成は、第1の実施形態の
図1および
図13と同じである。第5の実施形態における制御部15の機能構成は第1の実施形態の
図2と同じであるが、算出部24および直線決定部25が実行する処理が第1の実施形態と異なっている。以下において、第5の実施形態における算出部24、直線決定部25、角度取得部26、およびスコア特定部27が実行する処理について説明する。画像取得部20、抽出部21、基準点特定部22、および寸法特定部23が実行する処理は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0114】
図25は、第5の実施形態における直線決定部25および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。まず、算出部24は、寸法特定部23が特定した寸法L1に0.2以上0.4以下の範囲内の異なる係数を掛けて2つの寸法L21と寸法L22を算出する。例えば、寸法L21の算出に用いる係数は、0.2以上0.3未満の値が好ましく、0.2以上0.25以下の値がより好ましく、0.2以上0.22以下の値が更に好ましい。寸法L22の算出に用いる係数は、0.3より大きく0.4以下の値が好ましく、0.35以上0.4以下の値がより好ましく、0.38以上0.4以下の値が更に好ましい。
【0115】
直線決定部25は、
図25に示すように、算出部24が算出した寸法L21だけ基準点60から下側に離れた(例えば真下に位置する)点62dと、算出部24が算出した寸法L22だけ基準点60から下側に離れた(例えば真下に位置する)点62eと、を特定する。次いで、直線決定部25は、点62dを通る抽出画像31内の略水平線54dと、点62eを通る抽出画像31内の略水平線54eと、により挟まれた、抽出画像31内で左右方向に伸びた着目範囲82(
図25の斜線部分)を特定する。着目範囲82内には、上記第1の第1の実施形態で説明した、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた点62が含まれる。次いで、直線決定部25は、特定した着目範囲82に位置する輪郭線40において最も左側に位置する点44dと最も右側に位置する点45dとを特定する。最も左側に位置する点44dの特定は、例えば、抽出画像31内の垂線を輪郭線40の左側から輪郭線40に向けて近づけて行き、着目範囲82に位置する輪郭線40に最初に接した点を最も左側に位置する点44dと特定してもよい。また、抽出画像31をX-Y座標系に変換し、着目範囲82に位置する輪郭線40の各画素のX、Y座標から最も左側の点44dを特定してもよい。最も右側の点45dの特定も同様である。次いで、直線決定部25は、点44dと基準点60とを通る直線55dおよび点45dと基準点60とを通る直線56dを特定する。角度取得部26は、直線55dと直線56dとがなす角度δを取得する。スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度δからルーメンサイズスコアを特定する。
【0116】
本第5の実施形態によれば、直線決定部25は、寸法L2(第2の寸法)よりも短い寸法L21(第3の寸法)だけ基準点60から下側に離れた点62d(第2の点)と、寸法L2より長い寸法L22(第4の寸法)だけ基準点60から下側に離れた点62e(第3の点)と、を特定する。そして、直線決定部25は、点62dを通る抽出画像31内の略水平線54dと点62eを通る抽出画像31内の略水平線54eとに挟まれる範囲を着目範囲82と特定し、着目範囲82に位置する輪郭線40において最も左側に位置する点44dと基準点60とを通る直線を直線55dと決定する。また、直線決定部25は、着目範囲82に位置する輪郭線40において最も右側に位置する点45dと基準点60とを通る直線を直線56dと決定する。これにより、牛の腹部の表面のうちの外側に張り出した点44d、45dと基準点60とを通る直線55d、56dが決定されるため、直線55dと直線56dとがなす角度δから牛のルーメンサイズスコアを特定することで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0117】
図26は、第5の実施形態の変形例における直線決定部25および角度取得部26が実行する処理を説明するための図である。
図26に示すように、本第5の実施形態の変形例では、直線決定部25は、算出部24が算出した寸法L2だけ基準点60から下側に離れた点62を特定し、点62を基準に上下に所定の長さ離れた抽出画像31内の略水平線54f、54gにより挟まれた範囲を着目範囲82a(
図25の斜線部分)と特定する。着目範囲82a内には、基準点60から寸法L2だけ下側に離れた点62が含まれる。そして、直線決定部25は、着目範囲82aに位置する輪郭線40において最も左側に位置する点44eと最も右側に位置する点45eとを特定する。次いで、直線決定部25は、点44eと基準点60とを通る直線55eおよび点45eと基準点60とを通る直線56eを特定する。角度取得部26は、直線55eと直線56eとがなす角度εを取得する。スコア特定部27は、角度取得部26が取得した角度εからルーメンサイズスコアを特定する。
【0118】
本第5の実施形態の変形例によれば、直線決定部25は、基準点60から寸法L2(第2の寸法)だけ下側に離れた点62(第1の点)を特定するとともに、点62を基準に上下に所定の長さ離れた抽出画像31内の略水平線54f、54gにより挟まれた範囲を着目範囲82aと特定する。そして、直線決定部25は、着目範囲82aに位置する輪郭線40において最も左側に位置する点44eと基準点60とを通る直線を直線55eと決定する。また、直線決定部25は、着目範囲82aに位置する輪郭線40において最も右側に位置する点45eと基準点60とを通る直線を直線56eと決定する。この場合でも、上記第5の実施形態と同様に、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0119】
上記第5の実施形態の変形例において、略水平線54f、54gは、算出部24が0.2の係数を用いて算出した寸法だけ基準点60から下側に離れた点を通る抽出画像31内の略水平線と、0.4の係数を用いて算出した寸法だけ基準点60から下側に離れた点を通る抽出画像31内の略水平線と、の間に位置することが好ましい。略水平線54f、54gは、点62を通る抽出画像31内の略水平線から等距離に位置していてもよいし、異なる距離に位置していてもよい。
【0120】
上記第5の実施形態およびその変形例のように、直線決定部25は、抽出画像31内の2本の略水平線で挟まれた範囲であり、基準点60から寸法L2だけ離れた点62を含む範囲を着目範囲82、82aと特定し、着目範囲82、82aに位置する輪郭線40において最も左側に位置する点44d、44eと基準点60とを通る直線を直線55d、55eと決定する。また、直線決定部25は、着目範囲82、82aに位置する輪郭線40において最も右側に位置する点45d、45eと基準点60とを通る直線を直線56d、56eと決定する。このようにすることで、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0121】
なお、上記第5の実施形態およびその変形例において、基準点特定部22は、上記第2の実施形態の
図15のような基準点60aを特定してもよいし、上記第4の実施形態の
図22のような基準点60bを特定してもよい。寸法特定部23は、上記第2の実施形態の
図15のような寸法L3を特定してもよいし、上記第3の実施形態の
図18のような寸法L5を特定してもよいし、上記第4の実施形態の
図22のような寸法L7を特定してもよい。角度取得部26は、上記第3の実施形態の
図18のような角度γ1またはγ2を取得してもよいし、上記第3の実施形態の変形例の
図20のような角度γ3またはγ4を取得してもよい。
【0122】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、制御部15の寸法特定部23が牛の左右の腰角の頂点間の距離から牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法を特定する場合について説明する。
図27は、牛の左右の腰角の頂点間の距離と牛の体高との関係を示す図である。
図27の横軸(x軸)は牛の腰角の頂点間の距離であり、
図5における山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとの間の距離に対応する。
図27の縦軸(y軸)は牛の体高であり、
図15の基準点60aと交点61aとの間の距離L3に対応する。なお、
図27の横軸および縦軸は作図上の長さであり、実際の牛の対象部位の長さを表しているものではない。
図27中の●は乳牛1頭1頭を示していて、直線は近似直線を示している。
図27に示すように、牛の腰角の頂点間の距離と牛の体高とには相関関係があり、近似直線はy=1.17x+128.73であり、決定係数R
2は0.623であった。
【0123】
図27の結果から、
図5における山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとの間の距離を求めることで、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法である
図15の距離L3を特定できることが分かる。
【0124】
[実験5]
実験5では、制御部15の寸法特定部23は、牛の輪郭を抽出した輪郭線40の山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとの間の距離を求め、この距離と
図27における近似直線とから、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法として
図15における距離L3を特定した。そして、
図16に示すように、直線決定部25は、寸法特定部23が特定した寸法L3を用いて直線55aと直線56aを決定し、角度取得部26は直線55aと直線56aとがなす角度βを取得した。
図28には、ルーメンサイズスコアと角度取得部26が取得した角度βとの相関を調査した実験結果が示されている。
図28の横軸(x軸)は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、縦軸(y軸)は角度取得部26が取得した角度βである。
図28中の○、△、□の各点は実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、直線は近似直線を示している。また、○、△、□は、算出部24が寸法L4の算出に用いた係数が互いに異なる場合を示している。寸法L4の算出に用いた係数は、○は0.3、△は0.35、□は0.4である。
【0125】
図28に示すように、輪郭線40の山部41aの頂点42aと山部41bの頂点42bとの間の距離から、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法L3を特定した場合でも、ルーメンサイズスコアが大きいほど角度βは大きくなり、ルーメンサイズスコアと角度βは相関関係がある結果であった。○の結果における近似直線はy=5.88x+54.65であり、決定係数R
2は0.754であった。△の結果における近似直線はy=7.23x+43.00であり、決定係数R
2は0.687であった。□の結果における近似直線はy=5.15x+39.61であり、決定係数R
2は0.439であった。
【0126】
本第6の実施形態によれば、寸法特定部23は、輪郭線40の上部の左右両側に存在する2つの山部41a、41bの頂点42a、42bの間の距離から、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法を特定する。この場合でも、
図28で説明したように、ルーメンサイズスコアを精度良く特定することができる。
【0127】
なお、上記第6の実施形態において、作業者が入力部11を操作して牛の左右の腰角の頂点を指定し、寸法特定部23は、作業者が指定した左右の腰角の頂点間の距離から、牛の上下方向に関する身体の大きさを示す寸法を特定してもよい。
【0128】
なお、上記各実施形態では、牛のルーメンサイズスコアを特定する評価装置が、作業者が携帯して利用される、撮像部13を備える携帯型情報機器である場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、ネットワークに接続された他の機器と通信可能なサーバなどの据置型情報機器の場合でもよい。この場合、作業者は例えばスマートフォンなどの携帯型情報機器を用いて撮像した牛の撮像画像をネットワークを介してサーバなどの据置型情報機器に送信する。据置型情報機器では、評価装置100と同様の処理を行ってルーメンサイズスコアを特定する。そして、据置型情報機器は、特定したルーメンサイズスコアをネットワークを介して作業者が携帯する携帯型情報機器に送信する。これにより、スマートフォンに掛かる負荷を低減できる。また、牛舎内に固定または移動可能にカメラを設置し、スマートフォンなどの携帯型情報機器およびサーバなどの据置型情報機器は、牛舎内に設置されたカメラが撮像した立位にある牛の略真後ろからの撮像画像を取得してもよい。
【0129】
なお、上記の実験1から実験5は、乳牛に対して行ったが、同様の骨格を有する肉牛も同様の結果になると考えられる。したがって、上記各実施形態は乳牛だけでなく肉牛にも適用できる。
【0130】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 表示部
11 入力部
12 通信部
13 撮像部
14 記憶部
15 制御部
20 画像取得部
21 抽出部
22 基準点特定部
23 寸法特定部
24 算出部
25 直線決定部
26 角度取得部
27 スコア特定部
30 撮像画像
31 抽出画像
40 輪郭線
41a、41b 山部
42a、42b 頂点
43a、43b 先端
44、44a、44b、44c、44d、44e 点
45、45a、45b、45c、45d、45e 点
50 線分
51、52 傾斜直線
53、53a、53b 直線
54、54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g 略水平線
55、55a、55b、55c、55d、55e 直線
56、56a、56b、56c、56d、56e 直線
57、57a 基準線
59 垂線
60、60a、60b 基準点
61、61a、61b 交点
62、62a、62b、62c、62d、62e 点
63a、63b 点
70 記憶装置
71 メモリ
72 プロセッサ
73 通信インターフェース
74 入力装置
75 表示装置
76 撮像装置
77 バス
78 牛の評価プログラム
80 左右中央部近傍かつ上端部近傍の箇所
81a、81b 踵の箇所
82、82a 着目範囲
90 腹部
91 臀部
93、94 点
95、96 直線
100 評価装置