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  • 特許-ゼラチン含有組成物及び糸引き抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ゼラチン含有組成物及び糸引き抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/281 20160101AFI20240710BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240710BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20240710BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20240710BHJP
【FI】
A23L29/281
A23G3/34 101
A23G3/00
A23L5/00 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019238416
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106505
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】要田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】岡野 美優
(72)【発明者】
【氏名】永井 航太
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 忠杜
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158526(JP,A)
【文献】特表2016-535028(JP,A)
【文献】特開平10-025246(JP,A)
【文献】特開2011-010646(JP,A)
【文献】特開2015-107919(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106620781(CN,A)
【文献】特開2001-279100(JP,A)
【文献】特開2003-047432(JP,A)
【文献】特開2012-231694(JP,A)
【文献】ZAFEIROPOULOU, T. et al.,Retention of selected aroma compounds by gelatine matrices,Food Hydrocolloids,2012年,Vol. 28,pp. 105-109
【文献】JAMROZ, E. et al.,Investigation of the physical properties, antioxidant and antimicrobial activity of ternary potato s,International Journal of Biological Macromolecules,2018年,Vol. 114,pp. 1094-1101
【文献】SHAHBAZI, Y.,The properties of chitosan and gelatin films incorporated with ethanolic red grape seed extract and,International Journal of Biological Macromolecules,2017年,Vol. 99,pp. 746-753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料とゼラチンとを含有
該香料の合計量1質量部に対してゼラチンの含有量が15~500質量部であり、
水の含有量が10~50質量%である、
ゼラチン含有組成物
(但し、ゼラチンの含有量が20質量%以下のゼラチン含有組成物を除く)
【請求項2】
酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料とゼラチンとを含有し、該香料の合計量1質量部に対してゼラチンの含有量が15~500質量部であり、水の含有量が10~50質量%である混合物を容器へ充填する工程を含む、ゼラチン含有組成物(但し、ゼラチンの含有量が20質量%以下のゼラチン含有組成物を除く)の製造方法。
【請求項3】
ゼラチン含有組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を、該香料の合計量1質量部に対してゼラチンの含有量が15~500質量部となるように含有させることを特徴とする、ゼラチン含有組成物の糸引き抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼラチン含有組成物及び糸引き抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、人体に対して毒性がなく安価であり、ゼリー形成能、増粘性等に優れている。このため、ゼラチンは食品や医薬等の分野において広く使用されている。
【0003】
一方、ゼラチンを含有する食品等の一種であるグミキャンディーは、例えばゼラチンを含むグミ液を所望のグミ型に充填する工程を経て成型されるが、このような成型時にグミ液の糸引き(テーリング)の問題が生じることが知られている。糸引きは、例えば充填時に充填ノズルから糸状のグミ液がぶら下がるような現象をいい、必要量以上のグミ液が型に充填される、充填量にばらつきが生じる、形が不揃いになる、グミ液が型外にこぼれるといった様々な問題の原因となる。従って、糸引きの問題を解消することは、製造コストや手間の軽減等において非常に重要である。このことは、グミキャンディーに限らず、例えば、ゼラチン液を充填する工程を経て製造される食品や医薬品等に共通して重要であるといえる。
【0004】
このような糸引きを軽減するために、例えば、ゼラチン溶解時に使用する水分量を増やすことが知られている。しかし、これは水分量の増加により食感が大幅に変わるため、必ずしも満足できる解決法ではない。また、充填機のカットノズル部分を改良して、糸引きを軽減する手法も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-140186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ゼラチンを含有する組成物において糸引きの問題を解消するための新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、酢酸エチル、リナロールまたはターピネオールとゼラチンとを組み合わせて使用することにより、ゼラチンを含有する組成物に生じる糸引きを抑制できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有する、ゼラチン含有組成物。
項2.前記組成物中、前記香料の合計量1質量部に対してゼラチンが1~500質量部である、項1に記載のゼラチン含有組成物。
項3.酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料とゼラチンとを含有する混合物を容器へ充填する工程を含む、ゼラチン含有組成物の製造方法。
項4.ゼラチン含有組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有させることを特徴とする、ゼラチン含有組成物の糸引き抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれは、ゼラチンを含有する組成物において糸引きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例で用いた充填機を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有するゼラチン含有組成物に関する。
【0011】
酢酸エチルは、Cas番号141-78-6としても知られている公知の物質である。
【0012】
リナロールは、公知の物質であり、化学式C1018Oで表される。
【0013】
ターピネオールは、テルピネオールとも呼ばれる公知の物質である。ターピネオールは、α-ターピネオール、β-ターピネオール、λ-ターピネオール、δ-ターピネオールを問わず、これらのうち1種を使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよく、その比率も問わない。
【0014】
本ゼラチン含有組成物は、ゼラチンを含有する。ゼラチンは、食品、医薬品、医薬部外品等の分野において従来使用されているゼラチンであればよく、好ましくは可食性のゼラチンが例示される。この限りにおいて制限されないが、該ゼラチンとして、豚、牛、魚等の皮、骨、腱、靭帯、鱗等を原料とした、酸及び/またはアルカリ処理ゼラチン、アシル化ゼラチン等の化学修飾ゼラチン、ゼラチンの加水分解物等のゼラチンが例示される。ゼラチンは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ゼラチンは商業的に入手可能であり、例えば株式会社ニッピ、新田ゼラチン株式会社、ゼライス株式会社、Rousselot社、Weishardt社等から市販されている。
【0015】
ゼラチンは、この限りにおいて制限されず、例えばゼリー強度(ブルーム値)を指標として適宜選択して使用してもよい。本発明を制限するものではないが、ゼラチンのゼリー強度としては、好ましくは50~350g、より好ましくは80~300g程度が例示される。ゼラチンのゼリー強度はJIS K-6503(2001)に準じて測定され、具体的には、6.67質量%のゼラチン水溶液を、10℃で17時間冷却して調製したゼリーの表面を2分の1インチ(12.7mm)径のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重(g)をゼリー強度とする。
【0016】
本ゼラチン含有組成物中、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料の含有量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、本ゼラチン含有組成物において、該組成物中、該香料の合計量1質量部に対してゼラチンが、好ましくは1~500質量部、より好ましくは7.5~350質量部、更に好ましくは15~150質量部が例示される。
【0017】
本ゼラチン含有組成物中、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料やゼラチンの含有量は制限されないが、該組成物中、該香料の含有量はその合計量で、好ましくは0.01~8質量%、より好ましくは0.01~6質量%、更に好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.5~4質量%が例示される。
【0018】
本ゼラチン含有組成物中、ゼラチンの含有量は本発明の効果が得られる範囲で適宜決定すればよい。
【0019】
本発明はこの限りにおいて制限されないが、本ゼラチン含有組成物は好ましくは更に水を含有する。水は、イオン交換水、蒸留水、水道水等を問わず使用することができる。本ゼラチン含有組成物が水を含有する場合、その含有量も制限されないが、該組成物中、水は10~70質量%、より好ましくは30~60質量%、特に好ましくは40~50質量%が例示される。
【0020】
本ゼラチン含有組成物には、本発明の効果が得られる範囲において、必要に応じて、薬学的に許容される成分、香粧学的に許容される成分、可食性の成分といった任意の他の成分を更に含有してもよい。該他の成分として好ましくは可食性成分が挙げられる。
【0021】
該他の成分として、界面活性剤、着色料、アミノ酸、ビタミン類、酵素、甘味料、清涼剤、果汁、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、矯臭剤、懸濁剤、湿潤剤、可溶化剤、分散剤、緩衝剤、結合剤、滑沢剤、可塑剤、浸透促進剤、安定化剤、増量剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、コーティング剤、吸収促進剤、酸化防止剤、抗炎症剤、酢酸エチル、リナロール、ターピネオール以外の香料、蝋、各種有用成分等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その含有量も適宜決定すればよい。
【0022】
本発明を制限するものではないが、界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が例示される。
【0023】
また、本発明を制限するものではないが、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルとして、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、トリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリンジ脂肪酸エステル等;プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールジ脂肪酸エステル等;ソルビタン脂肪酸エステルとして、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル等;ショ糖脂肪酸エステルとして、ショ糖モノ脂肪酸エステル等;有機酸モノグリセリドとして、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド等が例示される。
【0024】
該界面活性剤において、脂肪酸としては、本発明を制限するものではないが、可食性の動物由来または植物由来の油脂を起源とする脂肪酸が好ましく例示される。本発明を制限するものではないが、炭素数6~24の、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸等が例示され、より具体的には、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が例示される。
【0025】
本ゼラチン含有組成物の形態は制限されず、液状、半固形状(ゲル状(ゼリー状)、クリーム状、ペースト状等)、固形状(粉末状、顆粒状等)等のいずれであってもよい。
【0026】
本ゼラチン含有組成物は、目的とする形態に応じて、従来公知の製造手順に従い、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料、ゼラチン、必要に応じて水、前記他の成分を適宜混合等して混合物(充填物)を得て、該混合物を所望の容器(型を含む)に適宜充填し、必要に応じて乾燥等を行い、製造することができる。
【0027】
本発明を制限するものではないが、本発明によれば糸引きを抑制できるという点から、本ゼラチン含有組成物の製造手順として、該混合物を型に充填する工程を経て、本ゼラチン含有組成物を製造することが好ましく例示される。充填時に使用する混合物は、通常、液状または半固形状であり、本発明を制限するものではないが、80~90℃で液状または半固形状であることが好ましく例示される。
【0028】
成型は所望の形であればよく、例えばフットボール型、オブロング(長楕円)型、ラウンド(球状)型、涙型、三角形、ひし型、シート型等のいずれであってもよく、また、成型後に、必要に応じて成形物を切り分けたもの等であってもよい。このことから、本ゼラチン含有組成物として好ましくは成型物が例示される。このような成形物として、グミキャンディー、ゼリー、ババロア等が例示される。
【0029】
また、本ゼラチン含有組成物は、更に糖衣等により被覆されてもよい。被覆も本分野において従来公知の手法に従って行えばよい。
【0030】
本ゼラチン含有組成物は、経口、非経口のいずれで使用してもよく、好ましくは経口で使用される。本ゼラチン含有組成物の使用態様は制限されず、目的に応じて適宜設定すればよい。該使用態様として経口で使用する場合を例示すると、食品組成物(飲料を含む、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、サプリメント等を含む)、健康補助食品、病者用食品を含む)、医薬組成物、医薬部外品組成物、飼料組成物、また、食品組成物、医薬組成物、医薬部外品組成物、飼料等への添加剤等として使用することができる。本ゼラチン含有組成物は、例えば、速やかに飲み込むものであってもよく、口腔内に一定時間とどめておき、その後飲み込むものであってもよい。
【0031】
本ゼラチン含有組成物を適用(摂取、投与等)する対象者も制限されず、ヒト、ヒト以外の哺乳動物が例示される。ヒト以外の哺乳動物としては、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー等の動物が例示される。
【0032】
本ゼラチン含有組成物によれば、ゼラチンを含有する組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を用いることにより、ゼラチン含有組成物の糸引きを抑制することができる。特に、本発明によれば、前記混合物の容器への充填時の糸引きを抑制することができる。このことから、本発明によれば、ゼラチン含有組成物の製造時において、必要量以上の混合物が容器に充填される、充填量にばらつきが生じる、ゼラチン含有組成物の形が不揃いになるといった問題を軽減することができ、また、該混合物が容器外にこぼれにくくなり、ひいては製造コストや手間等を軽減することができる。このことから、本発明によれば、製造時、特に充填時に糸引きが軽減されたゼラチン含有組成物を提供することができる。
【0033】
このことから、本発明はまた、ゼラチン含有組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有させることを特徴とする、ゼラチン含有組成物の製造方法を提供するともいえる。本発明はまた、ゼラチン含有組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有させることを特徴とする、該組成物の製造時の糸引きが抑制された、該組成物の製造方法を提供するともいえる。本発明を制限するものではないが、該製造方法として、前記混合物の型への充填工程を含む方法が好ましく例示される。
【0034】
このことから、本発明はまた、ゼラチン含有組成物において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料を含有させることを特徴とする、ゼラチン含有組成物の糸引き抑制方法を提供するともいえる。本発明を制限するものではないが、該方法は、例えば前記混合物の型への充填時の糸引きを抑制することができる。
【0035】
これらの方法において、酢酸エチル、リナロール及びターピネオールからなる群より選択される少なくとも1種の香料、ゼラチン、水、任意の成分、その混合や製造手順、ゼラチン含有組成物等については、前述と同様にして説明される。
【実施例
【0036】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.ゼラチン含有組成物の調製
表1の組成に従いゼラチン(商品名BLK-200、新田ゼラチン株式会社製)に水を加えて5分間静置して膨潤させ、次いで85℃の恒温槽で20分間加温し、ゼラチンが完全に溶解していることを確認して、これをゼラチンストックとした。また、酢酸エチル(商品名酢酸エチル、和光純薬株式会社製(酢酸エチル99.5重量%含有))と界面活性剤(商品名ポエムK-37V、理研ビタミン株式会社製(グリセリン脂肪酸エステル))とを表1の組成に従いそれぞれ混合して、酢酸エチルを完全に溶解させて、これを酢酸エチルストックとした。次いで、85℃の恒温槽中で前記ゼラチンストックと前記酢酸エチルストックとを混合し、目視にて一様になるまで攪拌して混合液(充填物(実施例1~4))を得た。
【0037】
比較例1として、酢酸エチルを用いない以外は同様にして、表1の組成に従い各成分を混合し、混合液を得た。
【0038】
酢酸エチルをリナロール(商品名リナロール、東京化成工業株式会社製(リナロール96重量%含有))を代える以外は同様にして、表1の組成に従い各成分を混合し、混合液(実施例5~7)を得た。また、酢酸エチルをターピネオール(商品名ターピネオール、東京化成工業株式会社製(ターピネオール80重量%含有))を代える以外は同様にして、表1の組成に従い各成分を混合し、混合液(実施例8~10)を得た。
【0039】
2.糸引き(テーリング)評価
図1に示す市販の充填機を用いて、各混合液の糸引き(テーリング)を評価した。具体的には、図1に示す充填機の排出口(先端)から、充填機の真下に置いた型までの距離が25cmになるように、充填機と型とをセットし、前述のようにして得た各混合液(85℃)10mLを充填機に上部から流し入れ、次いで、充填機の排出口を開き、排出口から混合液を5秒間落下させたところで充填機の排出口を閉じ、その際の充填機から下側に生じる糸引き(テーリング)の長さを定規を用いて速やかに測定し、次の基準に従い判定した。なお、混合液の落下は自由落下、充填機の排出口径は直径2.5mmであり、充填機は恒温槽で予め85℃に加温したものを使用した。
【0040】
<基準>
×:排出口と型が混合液で繋がっている(25cm)
△:排出口と型が混合液で繋がっていないが、排出口から20cm以上の混合液(ゼラチン糸)が残っている
○:排出口と型が混合液で繋がっていないが、排出口から20cm未満の混合液(ゼラチン糸)が残っている
◎:排出口にゼラチン糸が全く認められない
【0041】
3.結果
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示す通り、酢酸エチル、リナロール、ターピネオールを用いなかった場合(比較例1)では結果が×であり、著しい糸引きの問題が生じた。これに対して、ゼラチンと共に酢酸エチル、リナロール、ターピネオールを用いた実施例1~10では、比較例1よりも、糸引きが抑制された。
【0044】
このことから、ゼラチン含有組成物において酢酸エチル、リナロール、ターピネオールを組み合わせて用いることにより、糸引きを抑制できることが確認された。
図1