(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】メルトブローン不織布及び不織布積層体
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20240710BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
D04H3/16
B32B5/26
(21)【出願番号】P 2020113313
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 真理
(72)【発明者】
【氏名】杉内 拓実
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112757(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042253(WO,A1)
【文献】特開平05-163648(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022004(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0276092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
D01F 1/00- 6/96
C08L 23/00-23/26
C08F 8/00- 8/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂(A)と、プロピレン系重合体(1)と、を含む樹脂組成物(I)から構成されるメルトブローン不織布であって、
前記プロピレン系樹脂(A)のメルトフロレート(MFR)が、500g/10min以上1,700g/10min以下であり、
前記プロピレン系重合体(1)の軟化点が50℃以上100℃以下であり、かつ、
前記プロピレン系重合体(1)の23℃における引張弾性率が40MPa以上150MPa以下であり、
前記メルトブローン不織布の耐水圧の値と、ハンドルオメーターで測定される、前記メルトブローン不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)が、3.1mmAq/mN以上であり、
前記プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)と前記プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)との比(プロピレン系重合体(1)/プロピレン系樹脂(A))が、0.15以上
1.86以下である、メルトブローン不織布。
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂(A)がプロピレン単独重合体である、請求項
1に記載のメルトブローン不織布。
【請求項3】
前記樹脂組成物(I)における前記プロピレン系重合体(1)の含有量が5~50質量%である、請求項1
又は2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項4】
前記プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)が300g/10min以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のメルトブローン不織布。
【請求項5】
前記プロピレン系重合体(1)がプロピレン単独重合体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のメルトブローン不織布。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のメルトブローン不織布を少なくとも1層含み、かつ、メルトフローレート(MFR)が10~200g/10minであるプロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)からなるスパンボンド不織布の層を少なくとも1層含
み、
前記樹脂組成物(II)が、23℃における半結晶化時間(t)が1分以上であるプロピレン系重合体(2)を含有する、不織布積層体。
【請求項7】
前記不織布積層体が3層以上の構造を有し、かつ、前記不織布積層体の最外層が、前記プロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)からなるスパンボンド不織布で構成される、請求項
6に記載の不織布積層体。
【請求項8】
前記プロピレン系樹脂(B)がプロピレン単独重合体である、請求項
6又は
7に記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記樹脂組成物(II)100質量%に対し、前記プロピレン系重合体(2)を5~40質量%含有する、請求項
6~8のいずれか一項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
前記プロピレン系重合体(2)の分子量分布(Mw/Mn)が3以下である、請求項
6~9のいずれか一項に記載の不織布積層体。
【請求項11】
前記プロピレン系重合体(2)の軟化点が135℃以下である、請求項
6~
10のいずれか一項に記載の不織布積層体。
【請求項12】
前記プロピレン系重合体(2)がプロピレン単独重合体である、請求項
6~
11のいずれか一項に記載の不織布積層体。
【請求項13】
前記不織布積層体が、多層不織布である、請求項
6~
12のいずれか一項に記載の不織布積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブローン不織布及び該メルトブローン不織布を含有する不織布積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
メルトブローン不織布はあらゆる用途に用いられており、例えば、使い捨ておむつを始めとする衛生用品の防漏性部材や、マスクやガウンなどのフィルター部材として用いられている。このような用途においては、通常、メルトブローン不織布が単体で使用されることは多くなく、例えば、スパンボンド不織布などを外層に有する不織布積層体(多層不織布)として使用されることが多い。
メルトブローン不織布には、フィルター性能や耐水性などが要求される。これらの性能を高める手段として、例えば、メルトブローン不織布を構成する繊維を細くする(繊維径を小さくする)技術などが開発されている(例えば、特許文献1)。
また、そのような高度な技術を用いずとも、例えば、メルトブローン不織布の目付を厚くすることで上記性能を高めることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、メルトブローン不織布の目付を厚くした場合、不織布自体が柔軟性を失ってしまい、肌触りが悪くなってしまうという問題がある。繊維径を細くした場合は目付には影響がないため、柔軟性を必要以上に欠くことはないが、肌触りをより良好なものとするためにはさらなる柔軟性の向上が必要である。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、メルトブローン不織布が従来有する性能(例えば耐水圧)を維持しながら、柔軟性にも優れるメルトブローン不織布を提供し、併せて耐水性と柔軟性とに優れる不織布積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本願開示は、次の<1>~<15>に関する。
<1>プロピレン系樹脂(A)と、プロピレン系重合体(1)と、を含む樹脂組成物(I)から構成されるメルトブローン不織布であって、前記メルトブローン不織布の耐水圧の値と、ハンドルオメーターで測定する、前記メルトブローン不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)が、3.1mmAq/mN以上であり、前記プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)と前記プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)との比(プロピレン系重合体(1)/プロピレン系樹脂(A))が、0.15以上である、メルトブローン不織布。
<2>前記プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が300~2,000g/10minである、<1>に記載のメルトブローン不織布。
<3>前記プロピレン系樹脂(A)がプロピレン単独重合体である、<1>又は<2>に記載のメルトブローン不織布。
<4>前記樹脂組成物(I)における前記プロピレン系重合体(1)の含有量が5~50質量%である、<1>~<3>のいずれか一つに記載のメルトブローン不織布。
<5>前記プロピレン系重合体(1)の軟化点が110℃以下であり、かつ、前記プロピレン系重合体(1)の23℃における引張弾性率が1~300MPaである、<1>~<4>のいずれか一つに記載のメルトブローン不織布。
<6>前記プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)が300g/10min以上である、<1>~<5>のいずれか一つに記載のメルトブローン不織布。
<7>前記プロピレン系重合体(1)がプロピレン単独重合体である、<1>~<6>のいずれか一つに記載のメルトブローン不織布。
<8><1>~<7>のいずれか一つに記載のメルトブローン不織布を少なくとも1層含み、かつ、メルトフローレート(MFR)が10~200g/10minであるプロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)からなるスパンボンド不織布の層を少なくとも1層含む、不織布積層体。
<9>前記不織布積層体が3層以上の構造を有し、かつ、前記不織布積層体の最外層が、前記プロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)からなるスパンボンド不織布で構成される、<8>に記載の不織布積層体。
<10>前記プロピレン系樹脂(B)がプロピレン単独重合体である、<8>又は<9>に記載の不織布積層体。
<11>前記樹脂組成物(II)が、23℃における半結晶化時間(t)が1分以上であるプロピレン系重合体(2)を更に含有する、<8>~<10>のいずれか一つに記載の不織布積層体。
<12>前記樹脂組成物(II)100質量%に対し、前記プロピレン系重合体(2)を5~40質量%含有する、<11>に記載の不織布積層体。
<13>前記プロピレン系重合体(2)の分子量分布(Mw/Mn)が3以下である、<11>又は<12>に記載の不織布積層体。
<14>前記プロピレン系重合体(2)の軟化点が135℃以下である、<11>~<13>のいずれか一つに記載の不織布積層体。
<15>前記プロピレン系重合体(2)がプロピレン単独重合体である、<11>~<14>のいずれか一つに記載の不織布積層体。
<16>前記不織布積層体が、多層不織布である、<8>~<15>のいずれか一つに記載の不織布積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一定以上の耐水性を有するだけでなく、柔軟性にも優れたメルトブローン不織布を提供することができる。また、耐水性及び柔軟性に優れた不織布積層体(多層不織布)をも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「X~Y」という用語を使用する場合、「X以上Y以下」(X<Yの場合)又は「X以下Y以上」(X>Yの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0009】
<メルトブローン不織布>
本実施形態のメルトブローン不織布は、プロピレン系樹脂(A)と、プロピレン系重合体(1)と、を含む樹脂組成物(I)から構成される。また、メルトブローン不織布の目付量は通常0.05~100gsm、好ましくは0.1~90gsm、より好ましくは0.2~80gsmである。
【0010】
本実施形態のメルトブローン不織布は、耐水性と柔軟性とに優れ、メルトブローン不織布の耐水圧と、メルトブローン不織布のCD方向における剛軟性との比(耐水圧/剛軟性)が、3.1mmAq/mN以上であり、好ましくは3.2mmAq/mN以上であり、より好ましくは3.3mmAq/mN以上である。そして、上限は特に限定されず、例えば、15.0mmAq/mN以下であってもよいし、12.0mmAq/mN以下であってもよい。耐水圧/剛軟性が3.1mmAq/mN以上であることで優れた耐水性及び柔軟性を両立することができる。
【0011】
以下、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(1)について詳述する。
【0012】
(プロピレン系樹脂(A))
プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、メルトブローン不織布が製造できるものであれば特に限定されないが、好ましくは200g/10min以上、より好ましくは300g/10min以上、更に好ましくは400g/10min以上、更に好ましくは500g/10min以上である。そして、好ましくは2,000g/10min以下、より好ましくは1,900g/10min以下、更に好ましくは1,800g/10min以下、更に好ましくは1,700g/10min以下である。
なお、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0013】
プロピレン系樹脂(A)は、紡糸可能である限り種類は特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などが挙げられるが、後述のプロピレン系重合体(1)との相溶性の観点から、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
【0014】
プロピレン系樹脂(A)がプロピレン単独重合体である場合、市販品としては、「SEETEC」シリーズ(例えば「SEETEC H7914」)((株)LG化学製)、「Achieve(登録商標)」シリーズ(例えば「Achieve 6936」)(ExxonMobil Chemical社製)、「Moplen(登録商標)」シリーズ(例えば「HP461Y」)、「Metocene(登録商標)」シリーズ(例えば「MF650Y」)(LyondellBasell社製)等を用いることができる(いずれも商品名)。
【0015】
プロピレン系樹脂(A)は、紡糸性の観点から、樹脂組成物(I)100質量%に対し、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上含む。そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは92質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
なお、プロピレン系樹脂(A)は、上記範囲内であれば、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(プロピレン系重合体(1))
紡糸性の観点からは、メルトブローン不織布を構成する樹脂組成物(I)のメルトフローレート(MFR)が、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)よりも著しく低減していないことが好ましい。ここで、「樹脂組成物(I)のメルトフローレート(MFR)が、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)よりも著しく低減している」とは、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)の値にも依存するが、例えば、樹脂組成物(I)のメルトフローレート(MFR)が、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)の50%以下であることをいう。
プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)の0.15倍以上であり、好ましくは0.20倍以上、より好ましくは0.30倍以上、更に好ましくは0.50倍以上である。また、上限値は特に限定されないが、好ましくは5.0倍以下である。すなわち、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)とプロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)との比(プロピレン系重合体(1)/プロピレン系樹脂(A))は、0.15以上であり、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.50以上である。また、上限値は特に限定されないが、好ましくは5.0以下である。
また、プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は、上記を満たしていればよいが、例えば、300g/10min以上であってもよく、350g/10min以上であってもよく、375g/10min以上であってもよく、1,000g/10min以上であってもよい。また、7,000g/10min以下であってもよい。
以上を勘案すると、例えば、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が1,200g/10minである場合、プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は180~6,000g/10minの範囲に収まっていればよく、プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が1,500g/10minである場合、プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は225~7,500g/10minの範囲に収まっていてもよく、225~7,000g/10minの範囲に収まっていてもよい。
なお、プロピレン系重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0017】
また、プロピレン系重合体(1)は、紡糸性及び柔軟性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下の軟化点を有する。また、下限値は40℃を超えていれば特に限定されないが、好ましくは50℃以上である。
なお、プロピレン系重合体(1)の軟化点は、ISO 4625で規定された方法により測定される。
【0018】
さらに、プロピレン系重合体(1)の23℃における引張弾性率は、柔軟性の観点から、好ましくは300MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは150MPa以下の引張弾性率を有する。また、下限値は0MPaを超えていれば特に限定されないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは40MPa以上である。
なお、プロピレン系重合体(1)の引張弾性率は、ISO 527で規定された方法により測定される。
【0019】
プロピレン系重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、紡糸性の観点から、好ましくは25,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは35,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下である。
【0020】
プロピレン系重合体(1)は、上述した要件を満たすものであれば、特に限定されず、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン系共重合体であってもよい。中でも、プロピレン単独重合体が好ましい。また、プロピレン系重合体(1)は、チーグラー・ナッタ系触媒を用いて製造されていてもよいし、メタロセン系触媒を用いて製造されていてもよい。
【0021】
プロピレン系重合体(1)がメタロセン系触媒によって製造されたプロピレン単独重合体である場合、市販品としては、出光興産(株)製の「L-MODU」(登録商標)の「S400」、「S401」、「S410」、「S600」等を例示できる。
【0022】
プロピレン系重合体(1)は、紡糸性の観点から、樹脂組成物(I)100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上含む。そして、得られる繊維及び不織布のべたつき防止の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
なお、プロピレン系重合体(1)は、上記範囲内であれば、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、樹脂組成物(I)中の、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系重合体(1)の合計含有量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上であり、100質量であってもよい。すなわち、樹脂組成物(I)は、プロピレン系樹脂(A)と、プロピレン系重合体(1)と、のみから構成されていてもよく、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系重合体(1)以外の、他の成分を含んでいてもよい。
【0024】
他の成分としては、例えば、スリップ剤、その他添加剤などが挙げられる。
【0025】
スリップ剤としては、一般にスリップ剤としての機能を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アミド、ワックス、フルオロ化合物、脂肪酸、脂肪酸誘導体等が挙げられ、中でも、脂肪酸誘導体が好ましい。
脂肪酸誘導体としては、例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸塩等が挙げられ、中でも、脂肪酸アミドが好ましい。
脂肪酸アミドは、脂肪酸とアンモニア又はアミン含有化合物(例えば第一級アミン基又は第二級アミン基を含む化合物)との反応から誘導される化合物である。
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは8~28、より好ましくは12~18である。なお、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸は、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよい。
脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)(C16)、オレイン酸(シス-9-オクタデセン酸)(C18)、ステアリン酸(オクタデカン酸)(C18)、アラキジン酸(イコサン酸)(C20)、エルカ酸(シス-13-ドコセン酸)(C22)、ベヘン酸(ドコサン酸)(C22)等が挙げられる。
アミン含有化合物としては、例えば、脂肪族アミン(例えば、ステアリルアミン、オレイルアミン)、エチレンジアミン、2,2’-イミノジエタノール、1,1’-イミノジプロパン-2-オール等が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、具体的に、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0026】
その他添加剤としては、発泡剤、結晶核剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、合成油、電気的性質改良剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、粘度調整剤、着色防止剤、防曇剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、塩素捕捉剤、酸化防止剤、粘着防止剤等が挙げられる。
【0027】
他の成分の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限されず、例えば、スリップ剤を用いる場合は、樹脂組成物(I)100質量%に対して、通常、0~5質量%であり、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、更に好ましくは0.08~1質量%である。
【0028】
なお、樹脂組成物(I)のメルトフローレート(MFR)は、紡糸可能であれば特に限定はされない。したがって、上記した構成にて得られるすべての範囲を包含していてもよい。また、例えば、300g/10min以上であってもよく、500g/10min以上であってもよく、650g/10min以上であってもよく、700g/10min以上であってもよく、750g/10min以上であってもよい。そして、5,000g/10min以下であってもよく、4,500g/10min以下であってもよく、4,000g/10min以下であってもよく、3,500g/10min以下であってもよく、3,000g/10min以下であってもよい。
なお、樹脂組成物(I)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0029】
〔メルトブローン不織布の製造方法〕
本実施形態のメルトブローン不織布は、メルトブロー法により製造される。
メルトブロー法においては、通常、溶融樹脂をノズルより押し出した後に高速の加熱気体流と接触させて微細繊維とし、この微細繊維を移動捕集面に捕集して不織布を得る。本実施形態においては、例えば、公知の方法により前述した原料を混錬して樹脂組成物(I)を得、これを溶融させて不織布を製造する。
本実施形態のメルトブローン不織布の製造条件としては、例えば、樹脂の溶融温度:220~350℃、単孔吐出量:0.1~0.8g/min、圧縮空気温度:220~350℃及び圧縮空気流量:100~800Nm3/hが挙げられる。
【0030】
<不織布積層体>
本実施形態のメルトブローン不織布は、不織布積層体の一層として用いることができ、例えば、本発明のメルトブローン不織布(M)がスパンボンド法で得られるスパンボンド不織布(S)と積層されてなる不織布積層体が挙げられる。不織布積層体は、スパンボンド不織布層/メルトブローン不織布層からなるSM構造であってもよく、当該SM構造が繰り返されてなるものであってもよい。さらに、不織布積層体は、メルトブローン不織布(M)の層の両側に、スパンボンド不織布(S)の層が存在する構造を有する積層体(すなわちスパンポンド不織布層/メルトブローン不織布層/スパンボンド不織布層のSMS構造の不織布積層体)であってもよく、当該SMS構造が繰り返されていてもよい。積層体の強度と柔軟性のバランスの点からは、SMS構造の不織布積層体が好ましい。SMS構造の不織布積層体の目付量は通常7~100gsm、好ましくは10~90gsm、より好ましくは10~80gsmである。
【0031】
(スパンボンド不織布)
本実施形態の不織布積層体を構成するスパンボンド不織布は、プロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)から構成される。不織布積層体が3層以上の構造を有し、かつ、不織布積層体の最外層が、プロピレン系樹脂(B)を含有する樹脂組成物(II)からなるスパンボンド不織布で構成されることが好ましい。不織布積層体は、多層不織布であることが好ましい。また、スパンボンド不織布の目付量は通常1~95gsm、好ましくは2~90gsm、より好ましくは3~80gsmである。
【0032】
(プロピレン系樹脂(B))
プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、紡糸性の観点から、10g/10min以上、好ましくは15g/10min以上、より好ましくは20g/10min以上、更に好ましくは25g/10min以上である。そして、200g/10min以下、好ましくは150g/10min以下、より好ましくは120g/10min以下、更に好ましくは100g/10min以下である。また、100g/10min未満であっても、80g/10min未満であってもよい。
なお、プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0033】
プロピレン系樹脂(B)は、紡糸可能である限り種類は特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などが挙げられるが、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
【0034】
プロピレン系樹脂(B)がプロピレン単独重合体である場合、市販品としては、「NOVATEC(登録商標)PP」シリーズ(例えば「NOVATEC SA03」)(日本ポリプロ(株)製)、「ExxonMobil(登録商標)ポリプロピレン」シリーズ(例えば「PP3155」)(ExxonMobil Chemical社製)、「プライムポリプロ(登録商標)」シリーズ(例えば「Y2000GV」、「Y2000GP」、「S119」)((株)プライムポリマー製)、「HG475FB」(Borealis社製)、「Moplen(登録商標)」シリーズ(例えば「HP561R」、「RP261S」、「HP562T」)(LyondellBasell社製)等を用いることができる。(いずれも商品名)。
【0035】
プロピレン系樹脂(B)は、紡糸性の観点から、樹脂組成物(II)100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上含む。そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
また、樹脂組成物(II)が後述するプロピレン系重合体(2)を含有しない場合、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含む。そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
なお、プロピレン系樹脂(B)は、上記範囲内であれば、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、樹脂組成物(II)は、さらにプロピレン系重合体(2)を含有することができる。プロピレン系重合体(2)を含有することにより、紡糸性を向上させ繊維径の小さいスパンボンド不織布を得ることができる。また、後述するようにプロピレン系重合体(2)の融点が低く、エンボス温度を下げることができるため、スパンボンド不織布に柔軟性を付与することができる。
【0037】
(プロピレン系重合体(2))
プロピレン系重合体(2)の23℃における半結晶化時間(t)は、紡糸性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは50分以下、より好ましくは40分以下、更に好ましくは30分以下である。
半結晶化時間は、結晶化速度を表す指標であり、半結晶化時間が短いほど結晶化速度が速いことを意味する。
ここで、プロピレン系重合体(2)の23℃における半結晶化時間(t)は、FLASH DSC(メトラー・トレド(株)製)を用いて、下記の方法にて測定により求められる値である。
(1)試料を230℃で2分間加熱して融解させた後、2,000℃/秒で23℃まで冷却し、23℃での等温結晶化過程における、発熱量の時間変化を測定する。
(2)等温結晶化開始時から結晶化完了時までの発熱量の積分値を100%とした時、等温結晶化開始時から発熱量の積分値が50%となるまでの時間を半結晶化時間として求める。
【0038】
プロピレン系重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は、紡糸性の観点から、好ましくは25,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは35,000以上であり、そして、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、更に好ましくは140,000以下である。
【0039】
プロピレン系重合体(2)の分子量分布(Mw/Mn)は、紡糸性の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上であり、そして、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.5以下である。プロピレン系樹脂(B)の分子量分布が当該範囲内であれば、紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制される。
上記の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法を用いた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリプロピレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC装置>
機器 :東ソー(株)製「HLC8321GPC/HT」
検出器 :RI検出器
カラム :東ソー(株)製「TOSOH GMHHR-H(S)HT」×2本
<測定条件>
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :0.5mg/mL
注入量 :300μL
検量線 :PS標準物質を用いて作製
分子量換算 :Universal Calibration法を用いて換算
αPS:0.707、κPS:0.00121、αPP:0.750、κPP:0.0137
解析プログラム:8321GPC-WS
【0040】
プロピレン系重合体(2)は、上述の分子量分布(Mw/Mn)を満たすために、メタロセン触媒を用いて製造されることが好ましい。例えば、国際公開第2003/087172号に記載されているようなメタロセン系触媒を用いることができる。特に、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン系触媒が好ましい。
【0041】
プロピレン系重合体(2)は、柔軟性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは125℃以下の軟化点を有する。また、下限値は40℃を超えていれば特に限定されないが、好ましくは50℃以上である。
なお、プロピレン系重合体(2)の軟化点は、ISO 4625で規定された方法により測定される。
【0042】
プロピレン系重合体(2)は、上述した要件を満たすものであれば、特に限定されず、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン系共重合体であってもよい。
【0043】
プロピレン系重合体(2)がプロピレン単独重合体である場合、市販品としては、出光興産(株)製の「L-MODU」(登録商標)の「S400」、「S401」、「S410」、「S600」、「S901」等を例示できる。
【0044】
プロピレン系重合体(2)は、紡糸性の観点から、樹脂組成物(II)100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上含む。そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
なお、プロピレン系重合体(2)は、上記範囲内であれば、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、樹脂組成物(II)は、プロピレン系樹脂(B)のみから構成されていてもよく、プロピレン系樹脂(B)及びプロピレン系重合体(2)のみから構成されていてもよく、プロピレン系樹脂(B)及びプロピレン系重合体(2)以外の、他の成分を含んでいてもよい。
なお、他の成分の詳細は、前述と同様である。
【0046】
〔スパンボンド不織布の製造方法〕
本実施形態の不織布積層体を構成するスパンボンド不織布の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。本実施形態の不織布積層体に用いるスパンボンド不織布の製造においては、例えば、従来公知の方法により前述した原料を混錬して樹脂組成物(II)を得、これを溶融させて不織布を得る。
具体的には、例えば、所定のノズル径を有するノズルを用い、溶融させた樹脂組成物を押し出すことで溶融状の繊維を得る。次に、ノズルから押し出された溶融状の繊維を冷却し、高速の空気流で繊維を延伸する。そして、延伸された繊維は細孔形成ベルト上で収集させてウェブを形成する。その後、ウェブを圧縮ロールに通過させ、続いて加熱カレンダーロール間に通し、1つのロール上の盛り上がり部分がウェブの5%~40%程度の面積を含む部分で結合させることで、不織布を得る。
【0047】
〔不織布積層体の製造方法〕
本実施形態の不織布積層体の製造方法は、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを積層し、両者を一体化して積層体を形成できる方法であれば、いずれの方法にしたがって行ってもよく、特に制限されない。
例えば、メルトブロー法によって形成される繊維をスパンボンド不織布の上に直接堆積させてメルトブローン不織布を形成した後、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを融着させる方法、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを重ね合わせ、加熱加圧により両不織布を融着させる方法、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の接着剤によって接着する方法等を採用することができる。
スパンボンド不織布の上に、直接メルトブローン不織布を形成する方法は、メルトブローン不織布用樹脂組成物の溶融物をスパンボンド不織布の表面に吹き付け、繊維を堆積させるメルトブロー法によって行うことができる。このとき、スパンボンド不織布に対して、溶融物が吹き付けられる側の面の反対側の面は負圧にして、メルトブロー法によって形成される繊維を吹き付け、堆積させると同時に、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布を一体化させて、スパンボンド不織布層とメルトブローン不織布層とを有する柔軟性不織布積層体を得る。両不織布の一体化が不十分である場合は、加熱加圧エンボスロール等により十分に一体化させることができる。
熱融着により、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを融着する方法としては、スパンボンド不織布とメルトブローン不織布との接触面の全面を熱融着する方法、スパンポンド不織布とメルトブローン不織布との接触面の一部を熱融着する方法などがある。
【0048】
本実施形態のメルトブローン不織布及び/又は不織布積層体は、例えば、衛材用途や医療用途をはじめとする幅広い用途で用いることが可能である。
本実施形態のメルトブローン不織布及び/又は不織布積層体を用いた繊維製品としては、例えば以下の繊維製品を挙げることができる。すなわち、使い捨ておむつ用部材、おむつカバー用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、衛生製品用伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣料用伸縮性部材、衣料用絶縁材、衣料用保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布剤の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、クッション材、スピーカー防塵材、エアクリーナー材、インシュレーター表皮、バッッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材や裏材、農業捲布、木材ドレーン、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、かばん用部材、工業用シール材、ワイピング材及びシーツなどを挙げることができる。本実施形態のメルトブローン不織布及び/又は不織布積層体を用いた繊維製品は柔軟性を有するため、特に良好な肌触りが求められる製品に好適である。
【実施例】
【0049】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
以下の例において、下記原料を使用した。なお、メルトフローレート(MFR)、引張弾性率、軟化点、半結晶化時間(t)及び分子量分布(Mw/Mn)は前述の方法にて測定した。
<プロピレン系樹脂(A)>
プロピレン系樹脂(A-1):「SEETEC H7914」((株)LG化学製、プロピレン単独重合体、MFR:1,400g/10min)
プロピレン系樹脂(A-2):「Achieve 6936」(ExxonMobil Chemical社製、プロピレン単独重合体、MFR:1,550g/10min)
<プロピレン系樹脂(B)>
プロピレン系樹脂(B-1):「Moplen HP561R」(LyondellBasell社製、プロピレン単独重合体、MFR:25g/10min)
<プロピレン系重合体(1)>
プロピレン系重合体(1-1):「L-MODU S400」(出光興産(株)製、プロピレン単独重合体、MFR:2,600g/10min、軟化点:93℃、引張弾性率:90MPa)
プロピレン系重合体(1-2):「L-MODU S600」(出光興産(株)製、プロピレン単独重合体、MFR:390g/10min、軟化点:100℃、引張弾性率:90MPa)
プロピレン系重合体(1-3’):「L-MODU S901」(出光興産(株)製、プロピレン単独重合体、MFR:50g/10min、軟化点:120℃、引張弾性率:90MPa)
<プロピレン系重合体(2)>
プロピレン系重合体(2-1):「L-MODU S901」(出光興産(株)製、プロピレン単独重合体、半結晶化時間(t):13.4分、分子量分布(Mw/Mn):2.0、軟化点:120℃)
【0051】
また、得られたメルトブローン不織布の各評価項目について、以下のとおり測定した。なお、樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は前述の方法にて測定した。
【0052】
〔耐水圧〕
JIS L1092に準拠して測定した。耐水度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用い、不織布の各々任意の3箇所について測定を行い、平均値を耐水圧とした。
【0053】
〔剛軟性(ハンドルオメーター試験)〕
得られた不織布から、長さ200mm×幅200mmの試験片を作製した。該試験片を幅1/4インチのスリット上にスリットと直角となるようにセットし、試験片の辺から67mm(試験片幅の1/3)の位置をペネトレーターのブレードにて8mm押し込んだ。この時の抵抗値を測定し試験片の柔軟度を評価した。この測定方法の特徴は、試験片が試験台上で若干スリップし、それによって発生する摩擦力と押し込み時の抵抗力(柔軟度)の複合された力が計測されることである。測定により得られた抵抗値の値が小さい程、不織布の柔軟性が良好であることを示す。
【0054】
〔不織布強度〕
得られた不織布から、長さ150mm×幅50mmの試験片を、機械方向(MD)と機械方向に対して垂直方向(CD)についてサンプリングした。引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAG-1)を用いて、初期長L0を100mmに設定し、引張速度300mm/分で伸張し、伸張過程でのひずみと荷重を測定し、不織布が破断するまでの過程における最大強度を不織布強度とした。
【0055】
〔繊維径の測定(スパンボンド不織布層)〕
走査型電子顕微鏡を用いてスパンボンド不織布層中の繊維を観察し、無作為に選んだ100本の繊維径の平均値(d)を測定した。
【0056】
実施例1
(樹脂組成物の調製)
プロピレン系樹脂(A-1)を80質量%、プロピレン系重合体(1-1)を20質量%の配合比でドライブレンドして、樹脂組成物を得た。
(不織布の成形)
上記樹脂組成物を、単軸押出機、ダイ(孔径0.36mm、孔数720ホール)、高温圧縮空気発生装置、ネットコンベアー及び巻取り装置からなるメルトブローン不織布装置を用いて以下に示すように不織布を成形した。
樹脂温度260℃で原料を溶融し、ダイから単孔当たり0.3g/minの速度で溶融樹脂をノズルからコンベアまでの距離(DCD)が200mmの条件で吐出させ、その樹脂を、260℃の圧縮空気を用いて、400Nm3/hの流量で、ライン速度25m/minのネットコンベアー上に吹き付けた。ネットコンベアーで搬送された不織布を巻取り機にてロール状に巻き取り、目付量が15gsmである不織布を得た。
これにより得られた結果を表1に示す。
【0057】
実施例2
実施例1において、プロピレン系重合体(1-1)をプロピレン系重合体(1-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
プロピレン系樹脂(A-1)を、実施例1と同じメルトブローン不織布装置を用いて、実施例1と同じ条件にて不織布を得た。
これにより得られた結果を表1に示す。
【0059】
比較例2
実施例1において、プロピレン系重合体(1-1)をプロピレン系重合体(1-3’)に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
実施例3
実施例1において、プロピレン系樹脂(A-1)を90質量%、プロピレン系重合体(1-1)を10質量%とした以外は、実施例1と同じメルトブローン不織布装置を用いて、実施例1と同じ条件にて不織布を得た。実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
実施例4
実施例1において、プロピレン系樹脂(A-1)を60質量%、プロピレン系重合体(1-1)を40質量%とした以外は、実施例1と同じメルトブローン不織布装置を用いて、実施例1と同じ条件にて不織布を得た。実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
実施例5
実施例1において、樹脂温度を280℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0065】
実施例6
実施例1において、圧縮空気の流量を600Nm3/hに変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を成形し、同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0066】
【0067】
以上から、本発明のメルトブローン不織布は、一定以上の耐水圧を有しつつ、高い柔軟性を有することができることが確認された。したがって、本発明によれば、耐水性と柔軟性との両者に優れるメルトブローン不織布を得ることができる。
【0068】
実施例7
〔スパンボンド不織布層積層体の成形〕
プロピレン系樹脂(B-1)を90質量%、プロピレン系重合体(2-1)を10質量%の配合比でドライブレンドして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度246℃で溶融押出し、ノズル径0.6mmのノズル(孔数5,800ホール/m)より、単孔当たり0.34g/分の速度で、溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維をキャビン圧力5,000Paで、940m/minのライン速度で移動しているネット面に繊維を積層してスパンボンド不織布(S)を成形した。更にその直後、前述スパンボンド不織布(S)の上に、同条件にて成形される別のスパンボンド不織布(S)を吹き付け、スパンボンド多層不織布(SS)を得た。
【0069】
〔メルトブローン不織布層の成形とSSMMS構造の多層不織布の成形〕
プロピレン系樹脂(A-2)を80質量%、プロピレン系重合体(1-1)を20質量%の配合比でドライブレンドし、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度270℃でダイ(孔径0.36mm、孔数35ホール/インチ)より、単孔当たり0.54g/分の速度で溶融樹脂を吐出させた。その溶融樹脂を、270℃の圧縮空気を用いて、900Nm3/hの流量で、前記スパンボンド不織布積層体(SS)の上に2層吹き付け、その直後にさらにその上に別のスパンボンド不織布(S)を吹き付けた。
これらを105℃/102℃のカレンダー温度として熱ロールで、80N/mmのニップ圧で加圧することよりエンボス加工(繊維同士を熱融着)させて、スパンボンド不織布(S)/スパンボンド不織布(S)/メルトブローン不織布(M)/メルトブローン不織布(M)/スパンボンド不織布(S)からなる多層不織布S/S/M/M/Sを得た(以下、スパンボンド層を単に「S層」、メルトブローン層を単に「M層」と表記することがある。)。
これにより得られた結果を表4に示す。
【0070】
実施例8
〔スパンボンド不織布層積層体の成形〕
プロピレン系樹脂(B-1)を90質量%、プロピレン系重合体(2-1)を10質量%の配合比でドライブレンドして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度246℃で溶融押出し、ノズル径0.6mmのノズル(孔数5,800ホール/m)より、単孔当たり0.4g/分の速度で、溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維をキャビン圧力5,500Paで、890m/minのライン速度で移動しているネット面に繊維を積層してスパンボンド不織布(S)を成形した。更にその直後、前述スパンボンド不織布(S)の上に、同条件にて成形される別のスパンボンド不織布(S)を吹き付け、スパンボンド多層不織布(SS)を得た。
【0071】
〔メルトブローン不織布層の成形とSSMMS構造の多層不織布の成形〕
プロピレン系樹脂(A-2)を80質量%、プロピレン系重合体(1-1)を20質量%の配合比でドライブレンドし、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度270℃でダイ(孔径0.36mm、孔数35ホール/インチ)より、単孔当たり0.54g/分の速度で溶融樹脂を吐出させた。その溶融樹脂を、270℃の圧縮空気を用いて、900Nm3/hの流量で、前記スパンボンド不織布積層体(SS)の上に2層吹き付け、その直後にさらにその上に別のスパンボンド不織布(S)を吹き付けた。
これらを108℃/102℃のカレンダー温度として熱ロールで、80N/mmのニップ圧で加圧することよりエンボス加工させて、実施例7と同様に多層不織布S/S/M/M/Sを得た。
これにより得られた結果を表4に示す。
【0072】
実施例9
〔スパンボンド不織布層積層体の成形〕
プロピレン系樹脂(B-1)を90質量%、プロピレン系重合体(2-1)を10質量%の配合比でドライブレンドして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度246℃で溶融押出し、ノズル径0.6mmのノズル(孔数5,800ホール/m)より、単孔当たり0.6g/分の速度で、溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維をキャビン圧力6,500Paで、890m/minのライン速度で移動しているネット面に繊維を積層してスパンボンド不織布(S)を成形した。更にその直後、前述スパンボンド不織布(S)の上に、同条件にて成形される別のスパンボンド不織布(S)を吹き付け、スパンボンド多層不織布(SS)を得た。
【0073】
〔メルトブローン不織布層の成形とSSMMS構造の多層不織布の成形〕
プロピレン系樹脂(A-2)を80質量%、プロピレン系重合体(1-1)を20質量%の配合比でドライブレンドし、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を樹脂温度270℃でダイ(孔径0.36mm、孔数35ホール/インチ)より、単孔当たり0.54g/分の速度で溶融樹脂を吐出させた。その溶融樹脂を、270℃の圧縮空気を用いて、900Nm3/hの流量で、前記スパンボンド不織布積層体(SS)の上に2層吹き付け、その直後にさらにその上に別のスパンボンド不織布(S)を吹き付けた。
これらを122℃/119℃のカレンダー温度として熱ロールで、80N/mmのニップ圧で加圧することよりエンボス加工させて、実施例7と同様に多層不織布S/S/M/M/Sを得た。
これにより得られた結果を表4に示す。
【0074】
比較例2
〔スパンボンド不織布層積層体の成形〕
プロピレン系樹脂(B-1)を樹脂温度246℃で溶融押出し、ノズル径0.6mmのノズル(孔数5,800ホール/m)より、単孔当たり0.6g/分の速度で、溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維をキャビン圧力4,500Paで、890m/minのライン速度で移動しているネット面に繊維を積層してスパンボンド不織布(S)を成形した。更にその直後、前述スパンボンド不織布(S)の上に、同条件にて成形される別のスパンボンド不織布(S)を吹き付け、スパンボンド多層不織布(SS)を得た。
【0075】
〔メルトブローン不織布層の成形とSSMMS構造の多層不織布の成形〕
プロピレン系樹脂(A-2)を樹脂温度270℃でダイ(孔径0.36mm、孔数35ホール/インチ)より、単孔当たり0.54g/分の速度で溶融樹脂を吐出させた。その溶融樹脂を、270℃の圧縮空気を用いて、900Nm3/hの流量で、前記スパンボンド不織布積層体(SS)の上に2層吹き付け、その直後にさらにその上に別のスパンボンド不織布(S)を吹き付けた。
これらを122℃/120℃のカレンダー温度として熱ロールで、80N/mmのニップ圧で加圧することよりエンボス加工させて、実施例7と同様に多層不織布S/S/M/M/Sを得た。
これにより得られた結果を表4に示す。
【0076】
参考例
(樹脂組成物の調製)
プロピレン系樹脂(A-2)を80質量%、プロピレン系重合体(1-1)を20質量%の配合比でドライブレンドして、樹脂組成物を得た。
なお、樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、1,720g/10minであり、プロピレン系樹脂(A-2)のメルトフローレート(MFR)とプロピレン系重合体(1-1)のメルトフローレート(MFR)との比は、1.68である。
【0077】
(不織布の成形)
上記樹脂組成物、単軸押出機、ダイ(孔径0.36mm、孔数720ホール)、高温圧縮空気発生装置、ネットコンベアー及び巻取り装置からなるメルトブローン不織布装置を用いて以下に示すように不織布を成形した。
樹脂温度260℃で原料を溶融し、ダイから単孔当たり0.3g/minの速度で溶融樹脂をノズルからコンベアまでの距離(DCD)が200mmの条件で吐出させ、その樹脂を、260℃の圧縮空気を用いて、400Nm3/hの流量で、ライン速度25m/minのネットコンベアー上に吹き付けた。ネットコンベアーで搬送された不織布を巻取り機にてロール状に巻き取り、目付量が15gsmである不織布を得た。
また、同様の成形方法により、プロピレン系樹脂(A-2)のみからなり、目付量が15gsmである不織布を得た。
【0078】
得られた2種類の不織布の耐水圧及び不織布のCD方向における剛軟性を測定したところ、上記樹脂組成物からなる不織布の耐水圧は540mmAq、剛軟性は143mNであった。すなわち、上記樹脂組成物からなる不織布の耐水圧と、該不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)は3.78であった。また、プロピレン系樹脂(A-2)からなる不織布の耐水圧は510mmAq、剛軟性は171mNであり、該不織布の耐水圧と、該不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)は2.98であった。
ここで、耐水圧と剛軟性との比は目付量によらずほぼ一定であると考えられることから、実施例7~9において用いたメルトブローン不織布の耐水圧と、該不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)は、3.1を超えるものと判断される。また、同様に、比較例2において用いたメルトブローン不織布の耐水圧と、該不織布のCD方向における剛軟性の値との比(耐水圧/剛軟性)は3.1以下であると判断される。
【0079】
【0080】
表4の結果から、本発明のメルトブローン不織布を含む不織布積層体(多層不織布)は、一定以上の耐水圧を有しつつ、高い柔軟性をも有することが確認された。不織布積層体の目付量を小さくした場合には、目付量低減による柔軟性向上の影響も加わり、一定以上の耐水圧を有しつつ、さらに柔軟性に富んだ不織布積層体が得られることが確認された。
以上のことから、本発明によれば、耐水性と柔軟性との両者に優れる不織布積層体を得ることができる。