(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】グリース組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 115/08 20060101AFI20240710BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20240710BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20240710BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240710BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
C10M115/08
F16C17/02 A
C10N20:06
C10N40:02
C10N50:10
(21)【出願番号】P 2020568622
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003580
(87)【国際公開番号】W WO2020158907
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019016162
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高根 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 潤
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125859(WO,A1)
【文献】特開2017-115109(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047781(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有し、前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たすグリース組成物により、DN値が
200,000以上の高速回転条件において使用される軸受を潤滑する、潤滑方法。
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
【請求項2】
前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む
前記粒子が、さらに下記要件(II)を満たす、請求項1に記載の潤滑方法。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が、20,000cm
2/cm
3以上である。
【請求項3】
前記基油(A)は、鉱油、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、及びエーテル系油から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の潤滑方法。
【請求項4】
前記基油(A)の40℃における動粘度が、10~300mm
2/sである、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【請求項5】
前記ウレア系増ちょう剤(B)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1~40質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【請求項6】
前記ウレア系増ちょう剤(B)が、下記一般式(b1)で表されるジウレア化合物から選択される1種以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑方法。
R
1-NHCONH-R
3-NHCONH-R
2 (b1)
[上記一般式(b1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示す。R
1及びR
2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R
3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
【請求項7】
前記グリース組成物が、更に、酸化防止剤、防錆剤、分散剤、極圧剤、及び金属不活性化剤から選択される添加剤(C)を1種以上含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【請求項8】
前記添加剤(C)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.01~20質量%である、請求項7に記載の潤滑方法。
【請求項9】
前記グリース組成物の25℃における混和ちょう度が、180~350である、請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【請求項10】
前記グリース組成物の滴点が、240℃以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【請求項11】
前記軸受が、電気自動車、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車用の駆動モーターが有する、DN値が
200,000以上の高速回転条件において使用される軸受である、請求項1~10のいずれか1項に記載の潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリースは、基油と増ちょう剤とを含む半固体状の潤滑剤であり、例えばリチウム石けんを増ちょう剤として用いたグリース(以下、「リチウム石けんグリース」ともいう)は、自動車、工作機械、及び建設機械の軸受等に広く用いられている。また、高温下での潤滑寿命が長く、酸化安定性、耐熱性、及び耐水性に優れるグリースとして、ウレア系増ちょう剤を用いたグリース(以下、「ウレアグリース」ともいう)も知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車の普及に伴い、これらの自動車に用いられる駆動モーターの高出力化が急速に進みつつある。当該駆動モーターの高出力化が進むと、当該駆動モーターが有する軸受は、従来の駆動モーターが有する軸受よりも高速回転するため、発熱しやすくなる。このように高温になりやすい条件下においては、リチウム石けんグリースよりも高い耐熱性を有するウレアグリースを用いることが考えられる。
【0005】
しかしながら、従来のウレアグリースは、上記のような高速回転条件下において、油膜切れを起こしやすく、軸受に早期に焼き付きが生じてしまうため、十分な耐久性を軸受に付与することができず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが可能なグリース組成物を提供することを目的とする。
なお、「DN値」とは、軸受の内径をD(単位:mm)とし、軸受の回転速度をN(rpm)とした場合におけるDとNとの積を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基油及びウレア系増ちょう剤を含有するグリース組成物において、当該グリース組成物中のウレア系増ちょう剤を含む粒子の粒子径に着目した。
そして、当該粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径を所定の範囲に調整したグリース組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[11]に関する。
[1] 基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有するグリース組成物であって、
前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たし、
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に用いられる、グリース組成物。
[2] 前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、さらに下記要件(II)を満たす、[1]に記載のグリース組成物。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が、20,000cm2/cm3以上である。
[3] 前記基油(A)は、鉱油、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、及びエーテル系油から選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4] 前記基油(A)の40℃における動粘度が、10~300mm2/sである、[1]~[3]のいずれかに記載のグリース組成物。
[5] 前記ウレア系増ちょう剤(B)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1~40質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のグリース組成物。
[6] 前記ウレア系増ちょう剤(B)が、下記一般式(b1)で表されるジウレア化合物から選択される1種以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のグリース組成物。
R1-NHCONH-R3-NHCONH-R2 (b1)
[上記一般式(b1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示す。R1及びR2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
[7] 更に、酸化防止剤、防錆剤、分散剤、極圧剤、及び金属不活性化剤から選択される添加剤(C)を1種以上含む、[1]~[6]のいずれかに記載のグリース組成物。
[8] 前記添加剤(C)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.01~20質量%である、[7]に記載のグリース組成物。
[9] 電気自動車、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車用の駆動モーターが有する、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載のグリース組成物。
[10] 上記[1]~[9]のいずれかに記載のグリース組成物により潤滑された、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受。
[11] 上記[1]~[9]のいずれかに記載のグリース組成物により、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受を潤滑する、潤滑方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが可能なグリース組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様で使用される、グリース製造装置の断面の模式図である。
【
図2】
図1のグリース製造装置の容器本体側の第一凹凸部における、回転軸に直交する方向の断面の模式図である。
【
図3】比較例で使用した、グリース製造装置の断面の模式図である。
【
図4】実施例1及び比較例1で製造したグリース組成物中のウレア系増ちょう剤を含む粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の、面積基準での粒子径分布曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[グリース組成物]
本発明のグリース組成物は、基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有する。
以降の説明では、「基油(A)」及び「ウレア系増ちょう剤(B)」を、それぞれ「成分(A)」及び「成分(B)」ともいう。
【0012】
本発明の一態様のグリース組成物において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
なお、本発明の一態様のグリース組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)及び(B)以外の他の成分を含有してもよい。
【0013】
また、本発明のグリース組成物は、前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たす。
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
上記要件(I)を満たすことで、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが可能なグリース組成物となる。
【0014】
上記要件(I)は、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)の凝集の状態を示したパラメータともいえる。
ここで、レーザー回折・散乱法により測定する対象となる「ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子」とは、グリース組成物に含まれるウレア系増ちょう剤(B)が凝集してなる粒子を指す。
なお、グリース組成物中にウレア系増ちょう剤(B)以外の添加剤が含まれる場合、上記要件(I)で規定する粒子径は、当該添加剤を配合せずに同一条件で調製したグリース組成物をレーザー回折・散乱法により測定することで得られる。但し、当該添加剤が室温(25℃)で液状である場合には、当該添加剤が配合されたグリース組成物を測定対象としても構わない。
【0015】
ウレア系増ちょう剤(B)は、通常、イソシアネート化合物と、モノアミンとを反応させることによって得られるが、反応速度が非常に速いため、ウレア系増ちょう剤(B)が凝集し、大きな粒子(ミセル粒子、所謂「ダマ」)が過剰に生じ易い。本発明者らが鋭意検討した結果、上記要件(I)で規定する粒子径が2.0μmを超えると、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが困難であることが分かった。
上記要件(I)で規定する粒子径を2.0μm以下に微細化することで、当該粒子による基油(A)の保持力が向上すると共に、グリース組成物自体の流動性も向上する。したがって、軸受が高速回転する条件下においても粒子が基油(A)を良好に保持しつつ、グリース組成物が潤滑を要する部分に良好に行きわたり、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが可能になるものと推察される。
上記観点から、本発明の一態様のグリース組成物において、上記要件(I)で規定する粒子径は、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.9μm以下、より更に好ましくは0.8μm以下、更になお好ましくは0.7μm以下、一層好ましくは0.6μm以下である。また、通常0.01μm以上である。
【0016】
ここで、本発明の一態様のグリース組成物は、さらに下記要件(II)を満たすことが好ましい。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が20,000cm2/cm3以上である。
上記要件(II)で規定する比表面積は、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の微細化の状態と大きな粒子(ダマ)の存在とを示す副次的な指標である。すなわち、上記要件(I)を満たし、さらに上記要件(II)を満たすことで、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の微細化の状態がより良好であり、大きな粒子(ダマ)の存在もより抑えられていることを表す。したがって、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性をより付与しやすくなる。
上記観点から、上記要件(II)で規定する比表面積は、好ましくは50,000cm2/cm3以上、より好ましくは100,000cm2/cm3以上、更に好ましくは200,000cm2/cm3以上である。
【0017】
本明細書において、上記要件(I)、さらには上記要件(II)で規定する値は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
また、上記要件(I)、さらには上記要件(II)で規定する値は、主にウレア系増ちょう剤(B)の製造条件により調整可能である。
以下、上記要件(I)、さらには上記要件(II)で規定する値の調整するための具体的な手段に着目しながら、本発明のグリース組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0018】
<基油(A)>
本発明のグリース組成物に含まれる基油(A)は、グリース組成物に一般的に用いられる基油であればよく、例えば鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油を常圧蒸留もしくは減圧蒸留して得られる留出油、これらの留出油を精製することによって得られる精製油が挙げられる。
精製油を得るための精製方法としては、例えば、水素化改質処理、溶剤抽出処理、溶剤脱ろう処理、水素化異性化脱ろう処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
【0020】
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、及びエーテル系油が挙げられる。また、フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる合成油等も挙げられる。
【0021】
炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ-α-オレフィン(PAO)及びこれらの水素化物等が挙げられる。
【0022】
芳香族系油としては、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;等が挙げられる。
【0023】
エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル系油;トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル系油;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル系油;多価アルコールと二塩基酸及び一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステル等のコンプレックスエステル系油;等が挙げられる。
【0024】
エーテル系油としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール;モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル系油;等が挙げられる。
【0025】
ここで、基油(A)としては、高温下での酸化安定性が求められる場合には、好ましくは合成油、更に好ましくは炭化水素系油、エステル系油、及びエーテル系油である。また、炭化水素系油、エステル系油、及びエーテル系油を混合して使用する事で、耐熱性・耐シール性・低温特性のバランスをとる事が可能である。
【0026】
本発明の一態様で用いる基油(A)の40℃における動粘度としては、好ましくは10~300mm2/s、より好ましくは15~200mm2/s、更に好ましくは20~150mm2/sである。
なお、本発明の一態様で用いる基油(A)は、高粘度の基油と、低粘度の基油とを組み合わせて、動粘度を上記範囲に調製した混合基油を用いてもよい。
【0027】
本発明の一態様で用いる基油(A)の粘度指数としては、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。
なお、本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した値を意味する。
【0028】
本発明の一態様のグリース組成物において、基油(A)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、また、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、より更に好ましくは93質量%以下である。
【0029】
<ウレア系増ちょう剤(B)>
本発明のグリース組成物に含まれるウレア系増ちょう剤(B)としては、ウレア結合を有する化合物であればよいが、2つのウレア結合を有するジウレア化合物が好ましく、下記一般式(b1)で表されるジウレア化合物がより好ましい。
R1-NHCONH-R3-NHCONH-R2 (b1)
なお、本発明の一態様で用いるウレア系増ちょう剤(B)は、1種からなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
上記一般式(b1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示す。R1及びR2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。
【0031】
前記一般式(b1)中のR1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数としては、6~24であるが、好ましくは6~20、より好ましくは6~18である。
また、R1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の1価の鎖式炭化水素基、飽和又は不飽和の1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0032】
ここで、前記一般式(b1)中のR1及びR2における、鎖式炭化水素基の含有率をXモル当量、脂環式炭化水素基の含有率をYモル当量、及び芳香族炭化水素基の含有率をZモル当量とした際、下記要件(a)及び(b)を満たすことが好ましい。
・要件(a):[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100の値が90以上(好ましくは95以上、より好ましくは98以上、更に好ましくは100)である。
・要件(b):X/Y比が、0~100(好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~85/15、更に好ましくは40/60~85/15)である。
なお、前記脂環式炭化水素基、前記鎖式炭化水素基、及び前記芳香族炭化水素基は、上記一般式(b1)中のR1及びR2として選択される基であることから、X、Y、及びZの値の総和は、上記一般式(b1)で示される化合物1モルに対して、2モル当量である。また、上記要件(a)及び(b)の値は、グリース組成物中に含まれる、上記一般式(b1)で示される化合物群全量に対する平均値を意味する。
上記要件(a)及び(b)を満たす、上記一般式(b1)で表される化合物を用いることで、グリース組成物の潤滑寿命と潤滑性能とを両立させて、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与しやすい。
なお、X、Y、及びZの値は、原料として使用する各アミンのモル当量から算出することができる。
【0033】
1価の飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数16~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。また、アルキル基は、直鎖状であることが好ましい。
1価の不飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、オレイル基、ゲラニル基、ファルネシル基、リノレイル基等が挙げられる。
なお、1価の飽和鎖式炭化水素基及び1価の不飽和鎖式炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。これらの中でも、炭素数10~20の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、炭素数16~20の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基がより好ましい。また、アルケニル基は、直鎖状であることが好ましい。
【0034】
1価の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等のシクロアルキル基;メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1-メチル-プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ペンチル-メチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルキル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基);等が挙げられる。これらの中でも、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0035】
1価の不飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等のシクロアルケニル基;メチルシクロヘキセニル基、ジメチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、ジエチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキセニル基);等が挙げられる。
【0036】
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、ジフェニルプロピル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等が挙げられる。
【0037】
前記一般式(b1)中のR3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6~18であるが、好ましくは6~15、より好ましくは6~13である。
R3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、ジフェニルプロピレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、又はジフェニルプロピレン基が好ましく、ジフェニルメチレン基がより好ましい。
【0038】
本発明の一態様のグリース組成物において、成分(B)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~30質量%、更に好ましくは4~25質量%、より更に好ましくは6~20質量%、更になお好ましくは9~18質量%である。
増ちょう剤量が多くなりすぎると硬質になり、潤滑性に乏しくなる。一方、増ちょう剤量が少なくなりすぎると高速回転時の漏洩の問題が発生する可能性がある。
成分(B)の含有量が1質量%以上であれば、得られるグリース組成物の混和ちょう度を適度な範囲に調製し易い。
一方、成分(B)の含有量が40質量%以下であれば、得られるグリース組成物が硬くなり過ぎず、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与しやすくなる。
【0039】
<ウレア系増ちょう剤(B)の製造方法>
ウレア系増ちょう剤(B)は、通常、イソシアネート化合物と、モノアミンとを反応させることによって得ることができる。当該反応は、上述の基油(A)にイソシアネート化合物を溶解させて得られる加熱した溶液αに、基油(A)にモノアミンを溶解させた溶液βを添加する方法が好ましい。
例えば、前記一般式(b1)で表される化合物を合成する場合に、イソシアネート化合物としては、前記一般式(b1)中のR3で示される2価の芳香族炭化水素基に対応する基を有するジイソシアネートを用い、モノアミンとしては、R1及びR2で示される1価の炭化水素基に対応する基を有するアミンを用いて、上記の方法により、所望のウレア系増ちょう剤(B)を合成することができる。
【0040】
なお、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を微細化する観点から、下記[1]に示すようなグリース製造装置を用いて、成分(A)及び成分(B)を含むグリース組成物を製造することが好ましい。
[1]グリース原料が導入される導入部、及び外部にグリースを吐出させる吐出部を有する容器本体と、
前記容器本体の内周の軸方向に回転軸を有し、前記容器本体の内部に回転可能に設けられた回転子とを備え、
前記回転子は、
(i)前記回転子の表面に沿って、凹凸が交互に設けられて、当該凹凸が前記回転軸に対して傾斜し、
(ii)前記導入部から前記吐出部方向への送り能力を有する
第一凹凸部を備えている、グリース製造装置。
【0041】
以下、上記[1]に記載のグリース製造装置について説明するが、以下の記載の「好ましい」とされる規定は、特に断りが無い限り、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を微細化する観点からの態様である。
【0042】
図1は、本発明の一態様で使用し得る、上記[1]のグリース製造装置の断面の模式図である。
図1に示すグリース製造装置1は、グリース原料を内部に導入する容器本体2と、容器本体2の内周の中心軸線上に回転軸12を有し、回転軸12を中心軸として回転する回転子3とを備える。
回転子3は、回転軸12を中心軸として高速回転し、容器本体2の内部でグリース原料に高いせん断力を与える。これにより、ウレア系増ちょう剤を含むグリースが製造される。
容器本体2は、
図1に示すように、上流側から順に、導入部4、滞留部5、第一内周面6、第二内周面7、及び吐出部8に区画されていることが好ましい。
容器本体2は、
図1に示すように、導入部4から吐出部8に向かうにしたがって、次第に内径が拡径する円錐台状の内周面を有していることが好ましい。
容器本体2の一端となる導入部4は、容器本体2の外部からグリース原料を導入する複数の溶液導入管4A、4Bを備える。
【0043】
滞留部5は、導入部4の下流部に配置され、導入部4から導入されたグリース原料を一時的に滞留させる空間である。この滞留部5にグリース原料が長時間滞留すると、滞留部5の内周面に付着したグリースが、大きなダマを形成してしまうので、なるべく短時間で下流側の第一内周面6に搬送するのが好ましい。さらに好ましくは、滞留部5を経ず、直接第一内周面6に搬送することが好ましい。
第一内周面6は、滞留部5に隣接した下流部に配置され、第二内周面7は、第一内周面6に隣接した下流部に配置される。詳しくは後述するが、第一内周面6に第一凹凸部9を設けること、および第二内周面7に第二凹凸部10を設けることが、第一内周面6及び第二内周面7をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与する高せん断部として機能させる上で好ましい。
容器本体2の他端となる吐出部8は、第一内周面6と第二内周面7で撹拌されたグリースを吐出する部分であり、グリースを吐出する吐出口11を備える。吐出口11は、回転軸12に直交する方向又は略直交する方向に形成されている。これにより、グリースが吐出口11から回転軸12に直交する方向又は略直交する方向に吐出される。但し、吐出口11は、必ずしも回転軸12に直交せずともよく、回転軸12と平行方向又は略平行方向に形成されていてもよい。
【0044】
回転子3は、容器本体2の円錐台状の内周面の中心軸線を回転軸12として回転可能に設けられ、
図1に示すように容器本体2を上流部から下流部に向けてみたときに、反時計回りに回転する。
回転子3は、容器本体2の円錐台の内径の拡大に応じて拡大する外周面を有し、回転子3の外周面と、容器本体2の円錐台の内周面とは、一定の間隔が維持されている。
回転子3の外周面には、回転子3の表面に沿って凹凸が交互に設けられた回転子の第一凹凸部13が設けられている。
【0045】
回転子の第一凹凸部13は、導入部4から吐出部8方向に、回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8方向への送り能力を有する。すなわち、回転子の第一凹凸部13は、回転子3が
図1に示された方向に回転する時に、溶液を下流側に押し出す方向に傾斜している。
【0046】
回転子の第一凹凸部13の凹部13Aと凸部13Bの段差は、回転子3の外周面の凹部13Aの直径を100とした際、好ましくは0.3~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは2~7である。
円周方向における回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの数は、好ましくは2~1000個、より好ましくは6~500個、更に好ましくは12~200個である。
【0047】
回転子3の回転軸12に直交する断面における回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの幅と、凹部13Aの幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2である。
回転軸12に対する、回転子の第一凹凸部13の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
【0048】
容器本体2の第一内周面6には、内周面に沿って凹凸が複数形成された第一凹凸部9が備えられていることが好ましい。
また、容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸は、回転子の第一凹凸部13とは逆向きに傾斜していることが好ましい。
すなわち、容器本体2側の第一凹凸部9の複数の凹凸は、回転子3の回転軸12が
図1に示される方向に回転する時に、溶液を下流側に押し出す方向に傾斜していることが好ましい。容器本体2の第一内周面6に備えられた複数の凹凸を有する第一凹凸部9によって、撹拌能力と吐出能力が更に増強される。
【0049】
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の深さは、容器内径(直径)を100とした際、好ましくは0.2~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは1~5である。
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の本数は、好ましくは2~1000本、より好ましくは6~500本、更に好ましくは12~200本である。
【0050】
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の凹部の幅と、溝間の凸部の幅との比〔凹部の幅/凸部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2以下である。
回転軸12に対する、容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
なお、容器本体2の第一内周面6に第一凹凸部9を備えることによって、第一内周面6をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与するせん断部として機能させることができるが、第一凹凸部9は必ずしも設けずともよい。
【0051】
回転子の第一凹凸部13の下流部の外周面には、回転子3の表面に沿って、凹凸が交互に設けられた回転子の第二凹凸部14が設けられていることが好ましい。
回転子の第二凹凸部14は、回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8に向けて、溶液を上流側に押し戻す送り抑制能力を有する。
【0052】
回転子の第二凹凸部14の段差は、回転子3の外周面の凹部の直径を100として際、好ましくは0.3~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは2~7である。
円周方向における回転子の第二凹凸部14の凸部の数は、好ましくは2~1000個、より好ましくは6~500個、更に好ましくは12~200個である。
【0053】
回転子3の回転軸に直交する断面における回転子の第二凹凸部14の凸部の幅と、凹部の幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2である。
回転軸12に対する、回転子の第二凹凸部14の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
【0054】
容器本体2の第二内周面7には、容器本体2側の第一凹凸部9における凹凸の下流部に隣接して、複数の凹凸が形成された第二凹凸部10が備えられていることが好ましい。
凹凸は、容器本体2の内周面に複数形成され、それぞれの凹凸は、回転子の第二凹凸部14の傾斜方向とは逆向きに傾斜していることが好ましい。
すなわち、容器本体2側の第二凹凸部10の複数の凹凸は、回転子3の回転軸12が
図1に示される方向に回転する時に、溶液を上流側に押し戻す方向に傾斜していることが好ましい。容器本体2の第二内周面7に備えられた第二凹凸部10の凹凸によって、撹拌能力が更に増強される。また、容器本体の第二内周面7をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与するせん断部として機能させ得る。
【0055】
容器本体2側の第二凹凸部10の凹部の深さは、容器本体2の内径(直径)を100とした際、好ましくは0.2~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは1~5である。
容器本体2側の第二凹凸部10の凹部の本数は、好ましくは2~1000本、より好ましくは6~500本、更に好ましくは12~200本である。
【0056】
回転子3の回転軸12に直交する断面における容器本体2側の第二凹凸部10の凹凸の凸部の幅と、凹部の幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2以下である。
回転軸12に対する、容器本体2側の第二凹凸部10の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
容器本体2側の第一凹凸部9の長さと、容器本体2側の第二凹凸部10の長さとの比〔第一凹凸部の長さ/第二凹凸部の長さ〕は、好ましくは2/1~20/1である。
【0057】
図2は、グリース製造装置1の容器本体2側の第一凹凸部9における、回転軸12に直交する方向の断面の図である。
図2に示す、回転子の第一凹凸部13には、第一凹凸部13の凸部13Bの突出方向先端よりも、先端が容器本体2の内周面側に突出したスクレーパー15が複数設けられている。また、図示省略するが、第二凹凸部14にも、第一凹凸部13と同様、凸部の先端が容器本体2の内周面側に突出したスクレーパーが複数設けられている。
スクレーパー15は、容器本体2側の第一凹凸部9、及び、容器本体2側の第二凹凸部10の内周面に付着したグリースを掻き取るものである。
回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの突出量に対する、スクレーパー15の先端の突出量は、スクレーパー15の先端の半径(R2)と、凸部13Bの先端の半径(R1)との比〔R2/R1〕が、1.005を超え、2.0未満となるのが好ましい。
【0058】
スクレーパー15の数は、好ましくは2~500箇所、より好ましくは2~50箇所、更に好ましくは2~10箇所である。
なお、
図2に示すグリース製造装置1では、スクレーパー15を設けているが、設けないものであってもよく、間欠的に設けたものであってもよい。
【0059】
グリース製造装置1により、ウレア系増ちょう剤(B)を含むグリースを製造するには、前述したグリース原料である、溶液αと溶液βとを、容器本体2の導入部4の溶液導入管4A、4Bからそれぞれ導入し、回転子3を高速回転させることにより、ウレア系増ちょう剤(B)を含むグリース基材を製造することができる。
そして、このようにして得られたグリース基材に、添加剤(C)を配合しても、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤を微細化することができる。
【0060】
回転子3の高速回転条件として、グリース原料に与えるせん断速度としては、好ましくは102s-1以上、より好ましいは103s-1以上、さらに好ましくは104s-1以上であり、また、通常107s-1以下である。
【0061】
また、回転子3の高速回転する際のせん断における、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは10以下である。
混合液に対するせん断速度ができるだけ均一であることにより、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤やその前駆体を微細化しやすくなり、より均一なグリース構造となる。
【0062】
ここで、最高せん断速度(Max)とは、混合液に対して付与される最高のせん断速度であり、最低せん断速度(Min)とは、混合液に対して付与される最低のせん断速度であって、下記のように定義されるものである。
・最高せん断速度(Max)=(回転子の第一凹凸部13の凸部13B先端の線速度)/(回転子の第一凹凸部13の凸部13B先端と容器本体2の第一内周面6の第一凹凸部9の凸部のギャップA1)
・最低せん断速度(Min)=(回転子の第一凹凸部13の凹部13Aの線速度)/(回転子の第一凹凸部13の凹部13Aと容器本体2の第一内周面6の第一凹凸部9の凹部のギャップA2)
なお、ギャップA1とギャップA2は、
図2に示されるとおりである。
【0063】
グリース製造装置1がスクレーパー15を備えていることにより、容器本体2の内周面に付着したグリースを掻き取ることができるため、混練中にダマが発生することを防止することができ、ウレア系増ちょう剤を微細化したグリースを連続して短時間で製造することができる。
また、スクレーパー15が、付着したグリースを掻き取ることにより、滞留グリースが回転子3の回転の抵抗となるのを防止することができるため、回転子3の回転トルクを低減することができ、駆動源の消費電力を低減して、効率的にグリースの連続製造を行うことができる。
【0064】
容器本体2の内周面が、導入部4から吐出部8に向かうにしたがって、内径が拡大する円錐台状であるので、遠心力がグリースまたはグリース原料を下流方向に排出する効果を持ち、回転子3の回転トルクを低減して、グリースの連続製造を行うことができる。
回転子3の外周面に、回転子の第一凹凸部13が設けられ、回転子の第一凹凸部13が回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8への送り能力を有し、回転子の第二凹凸部14が回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8への送り抑制能力を有しているため、溶液に高いせん断力を付与することができ、添加剤を配合後も、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を微細化することができる。
【0065】
容器本体2の第一内周面6に第一凹凸部9が形成され、回転子の第一凹凸部13とは逆向きに傾斜しているため、回転子の第一凹凸部13の効果に加え、さらに、グリースまたはグリース原料を下流方向に押し出しながら、十分なグリース原料の撹拌を行うことができ、添加剤を配合後も、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を微細化することができる。
また、容器本体2の第二内周面7に第二凹凸部10が設けられると共に、回転子3の外周面に回転子の第二凹凸部14が設けられることにより、グリース原料が必要以上に容器本体の第一内周面6から流出することを防止できるので、溶液に高いせん断力を与えてグリース原料を高分散化して、添加剤を配合後も、上記要件(I)、さらには上記要件(II)を満たすように、ウレア系増ちょう剤(B)を微細化することができる。
【0066】
<添加剤(C)>
本発明の一態様のグリース組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なグリースに配合される、成分(B)以外の添加剤(C)を含有していてもよい。
添加剤(C)としては、例えば、酸化防止剤、防錆剤、分散剤、極圧剤、及び金属不活性化剤等が挙げられる。
添加剤(C)は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン系化合物及びナフチルアミン系化合物等のアミン系酸化防止剤、単環フェノール系化合物及び多環フェノール系化合物等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、アルケニルコハク酸多価アルコールエステル等のカルボン酸系防錆剤、
ステアリン酸亜鉛、チアジアゾール及びその誘導体、ベンゾトリアゾール及びその誘導体等が挙げられる。
分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等の無灰分散剤が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛,ジアルキルジチオリン酸モリブデン,無灰系ジチオカーバメートや亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート等のチオカルバミン酸類;硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、チオリン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等の硫黄化合物;トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;トリフェニルフォスファイト等の亜リン酸エステル等が挙げられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0068】
本発明の一態様のグリース組成物において、添加剤(C)の含有量は、それぞれ独立に、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、通常0.01~20質量%、好ましくは0.01~15質量%、より好ましくは0.01~10質量%、更に好ましくは0.01~7質量%である。
【0069】
<添加剤の配合方法>
本発明のグリース組成物は、上述の方法により合成した、基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含むグリースと、添加剤(C)等の各種添加剤とを混合することにより製造することができる。例えば、添加剤(C)等の各種添加剤を配合した後に撹拌すること、あるいは当該グリースを撹拌しながら添加剤(C)等の各種添加剤を配合することにより製造することができる。
【0070】
<本発明のグリース組成物の物性>
(25℃における混和ちょう度)
本発明の一態様のグリース組成物の25℃における混和ちょう度としては、好ましくは180~350、より好ましくは200~320、更に好ましくは220~310、より更に好ましくは220~280である。
なお、本明細書において、グリース組成物の混和ちょう度は、ASTM D 217法に準拠して、25℃にて測定された値を意味する。
【0071】
(滴点)
本発明の一態様のグリース組成物の滴点としては、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは255℃以上、より更に好ましくは260℃以上である。
なお、本明細書において、グリース組成物の滴点は、JIS K2220 8:2013に準拠して、25℃にて測定された値を意味する。
【0072】
(ASTM D 3336に準拠した軸受寿命)
本発明の一態様のグリース組成物の、ASTM D 3336に準拠した軸受寿命(DN値:200,000)としては、好ましくは1200時間以上、より好ましくは1500時間以上、更に好ましくは1800時間以上、より更に好ましくは2000時間以上である。
なお、ASTM D 3336に準拠した軸受寿命の試験条件は、後述する実施例と同様である。
【0073】
<本発明のグリース組成物の用途>
本発明のグリース組成物は、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受に対して優れた耐久性を付与することが可能である。
したがって、本発明の一態様のグリース組成物は、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受、好ましくはDN値が200,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より好ましくはDN値が300,000以上の高速回転条件において使用される軸受、更に好ましくはDN値が500,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より更に好ましくはDN値が100万以上の高速回転条件において使用される軸受に対し、潤滑用途として用いることができる。具体的には、電気自動車、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車に用いられる駆動モーターが有する軸受や、工作機械のスピンドルモーターが有する軸受に対し、潤滑用途として用いることができる。
したがって、本発明の一態様では、本発明のグリース組成物により潤滑された、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受(好ましくはDN値が200,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より好ましくはDN値が300,000以上の高速回転条件において使用される軸受、更に好ましくはDN値が500,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より更に好ましくはDN値が100万以上の高速回転条件において使用される軸受)が提供される。
また、本発明の一態様では、本発明のグリース組成物により、DN値が100,000以上の高速回転条件において使用される軸受(好ましくはDN値が200,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より好ましくはDN値が300,000以上の高速回転条件において使用される軸受、更に好ましくはDN値が500,000以上の高速回転条件において使用される軸受、より更に好ましくはDN値が100万以上の高速回転条件において使用される軸受)を潤滑する、潤滑方法が提供される。
【実施例】
【0074】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
[各種物性値]
各種物性値の測定法は、以下のとおりとした。
(1)40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)混和ちょう度
ASTM D 217法に準拠して、25℃にて測定した。
(3)滴点
JIS K2220 8:2013に準拠して測定した。
【0076】
<実施例1>
(1)ウレアグリースの合成
基油である、70℃に加熱したポリα-オレフィン(PAO)(40℃動粘度:47mm
2/s、100℃動粘度:7.8mm
2/s、粘度指数:137)92.04質量部に、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)7.96質量部を加えて、溶液αを調製した。
また、別に用意した、70℃に加熱したポリα-オレフィン(PAO)(40℃動粘度:47mm
2/s、100℃動粘度:7.8mm
2/s、粘度指数:137)87.94質量部に、シクロヘキシルアミン2.01質量部と、ステアリルアミン10.05質量部とを加えて、溶液βを調製した。なお、ステアリルアミンとシクロヘキシルアミンのモル比(ステアリルアミン/シクロヘキシルアミン)は65/35である。
そして、
図1に示すグリース製造装置1を用いて、70℃に加熱した溶液αを溶液導入管4Aから流量150L/hで、70℃に加熱した溶液βを溶液導入管4Bから流量150L/hで、それぞれを同時に容器本体2内へ導入し、回転子3を回転させた状態で溶液αと溶液βを容器本体2内へ連続的に導入し続けた。なお、使用したグリース製造装置1の回転子3の回転数は8000rpmとした。
また、この際の最高せん断速度(Max)は10,500s
-1であり、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)との比〔Max/Min〕は3.5として、撹拌を行った。
なお、得られたウレアグリースに含まれるウレア系増ちょう剤は、前記一般式(b1)中のR
1及びR
2が、シクロヘキシル基及びステアリル基(オクタデシル基)から選択され、R
3がジフェニルメチレン基である化合物に相当する。
【0077】
(2)グリース組成物の調製
上記(1)で得たウレアグリース(
図1に示すグリース製造装置1から吐出されたもの)を撹拌した後、自然放冷で冷却し、添加剤(C)として、酸化防止剤である4,4-ジノニルジフェニルアミン及び防錆剤であるアルケニルコハク酸多価アルコールエステルを加え、グリース組成物(i)を得た。
なお、グリース組成物(i)中の各成分の含有量は、表1及び表2に示すとおりである。
【0078】
<実施例2>
溶液αと溶液βを調製するための基油を、PAOから鉱油(40℃動粘度:138.0mm2/s、100℃動粘度:14.5mm2/s、粘度指数:104)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、グリース組成物(ii)を得た。
なお、グリース組成物(ii)中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0079】
<比較例1>
(1)ウレアグリースの合成
実施例1で調製した溶液α及び溶液βと同じものを使用した。
図3に示すグリース製造装置を用いて、70℃に加熱した溶液αを溶液導入管から流量504L/hで容器本体内へ導入した。その後、70℃に加熱した溶液βを溶液導入管から流量144L/hで溶液αの入った容器本体内へ導入した。全ての溶液βを容器本体内へ導入した後、撹拌翼を回転させ、撹拌を継続しながら160℃に昇温し、1時間保持してウレアグリースを合成した。
また、この際の最高せん断速度(Max)は42,000s
-1であり、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)との比〔Max/Min〕は1.03として、撹拌を行った。
(2)グリース組成物の調製
上記(1)で得たウレアグリース(
図3に示すグリース製造装置から吐出されたもの)を撹拌した後、自然放冷で冷却し、添加剤(C)として、酸化防止剤である4,4-ジノニルジフェニルアミン及び防錆剤であるアルケニルコハク酸多価アルコールエステルを加え、グリース組成物(iii)を得た。
なお、グリース組成物(iii)中の各成分の含有量は、表1及び表2に示すとおりである。
【0080】
<比較例2>
溶液αと溶液βを調製するための基油を、PAOから鉱油(40℃動粘度:138.0mm2/s、100℃動粘度:14.5mm2/s、粘度指数:104)に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、グリース組成物(iv)を得た。
なお、グリース組成物(iv)中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0081】
[評価]
実施例1~2及び比較例1~2で調製したグリース組成物(i)~(iv)について、混和ちょう度及び滴点を測定すると共に、下記の測定を行った。
【0082】
<グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の粒子径:要件(I)>
調製したグリース組成物(i)~(iv)を真空脱泡した後1mLシリンジに充填し、シリンジから0.10~0.15mLのグリース組成物を押し出し、ペーストセル用固定治具の板状のセルの表面に押し出したグリース組成物を載せた。
そして、グリース組成物の上に、さらに別の板状のセルを重ねて、2枚のセルでグリース組成物を挟持した測定用セルを得た。
レーザー回折型粒径測定機((株)堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、測定用セルのグリース組成物中の粒子(ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子)の面積基準での算術平均粒子径を測定した。なお、添加剤(C)として用いた4,4-ジノニルジフェニルアミン及びアルケニルコハク酸多価アルコールエステルは、いずれも室温(25℃)で液体であることから、グリース組成物中の粒子(ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子)の測定には影響を与えない。
ここで、「面積基準での算術平均粒子径」とは、面積基準での粒子径分布を算術平均した値を意味する。
面積基準での粒子径分布を
図4に示す。面積基準での粒子径分布は、測定対象である粒子全体における粒子径の頻度分布を、当該粒子径から算出される面積(詳細には、当該粒子径を有する粒子の断面積)を基準として示したものである。
また、面積基準での粒子径分布を算術平均した値は、下記式(1)により計算することができる。
【0083】
【数1】
上記式(1)中、Jは、粒子径の分割番号を意味する。q(J)は、頻度分布値(単位:%)を意味する。X(J)は、J番目の粒子径範囲の代表径(単位:μm)である。
なお、実施例1で調製したグリース組成物(i)と比較例1で調製したグリース組成物(iii)とを、レーザー回折型粒径測定機を用いて測定した、面積基準での粒子径分布を
図4に示す。
図4に示す粒子径分布曲線からも明らかなように、実施例1で調製したグリース組成物(i)中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子は、比較例1で調製したグリース組成物(iii)中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子と比較して、明らかに微細化されていることがわかる。
【0084】
<グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の比表面積:要件(II)>
上記の<グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の粒子径:要件(I)>の欄において測定した、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の粒子径分布を用い、調製したグリース組成物(i)及び(iii)を対象として比表面積を算出した。具体的には、当該粒子径分布を用い、単位体積(1cm3)当たりの粒子の表面積(単位:cm2)の総計を算出し、これを比表面積(単位:cm2/cm3)とした。
【0085】
<グリース組成物の軸受寿命評価>
(1)ASTM D 1741に準拠した軸受寿命の評価
ASTM D 1741に準拠した軸受潤滑寿命試験機を用い、調製したグリース組成物(i)~(iv)の軸受寿命を評価した。
試験条件を以下に示す。
・試験軸受:6306
・回転速度:3,500rpm
・試験荷重:ラジアル荷重 2.5Lbs,スラスト荷重 40Lbs
・試験温度:150℃
・DN値:90,000
・グリース量:20g
なお、モーターが過電流(4アンペア以上)を生じるまでの時間、または軸受外輪温度が試験温度+15℃上昇するまでの時間のいずれか短い方の時間を焼付寿命とし、これを軸受寿命として評価した。
【0086】
(2)ASTM D 3336に準拠した軸受寿命の評価
ASTM D 3336に準拠した軸受潤滑寿命試験機を用い、調製したグリース組成物(i)~(iv)の軸受寿命を評価した。
試験条件を以下に示す。
・試験軸受:6204
・回転速度:10,000rpm
・試験荷重:ラジアル荷重 15Lbs,スラスト荷重 15Lbs
・試験温度:160℃
・DN値:200,000
・グリース量:20g
なお、モーターが過電流(4アンペア以上)を生じるまでの時間、または軸受外輪温度が試験温度+15℃上昇するまでの時間のいずれか短い方の時間を焼付寿命とし、これを軸受寿命として評価した。
【0087】
比表面積以外の評価結果を表1に示し、比表面積の評価結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
ASTM D 1741に準拠した軸受寿命の評価(DN値:90,000)では、実施例1~2と比較例1~2との間に軸受寿命の差はほとんど見られなかった。
これに対し、ASTM D 3336に準拠した軸受寿命の評価(DN値:200,000)では、実施例1~2と比較例1~2との間に顕著な軸受寿命の差があらわれ、実施例1~2において軸受寿命が顕著に長くなることがわかった。
実施例1~2では、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、上記要件(I)を満たす。実施例1では、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、上記要件(II)も満たす。これに対し、比較例1~2では、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、上記要件(I)を満たさない。比較例1では、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、上記要件(II)も満たさない。
したがって、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、上記要件(I)を満たすこと、さらには上記要件(II)を満たすことによって、軸受寿命が顕著に長くなる効果が奏されることがわかる。
【符号の説明】
【0091】
1 グリース製造装置
2 容器本体
3 回転子
4 導入部
4A、4B 溶液導入管
5 滞留部
6 第一凹凸部
7 第二凹凸部
8 吐出部
9 容器本体側の第一凹凸部
10 容器本体側の第二凹凸部
11 吐出口
12 回転軸
13 回転子の第一凹凸部
13A 凹部
13B 凸部
14 回転子の第二凹凸部
15 スクレーパー
A1、A2 ギャップ