(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240710BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240710BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240710BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09G1/02
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
(21)【出願番号】P 2021524614
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022612
(87)【国際公開番号】W WO2020245994
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】大塚 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】南 久貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真悟
(72)【発明者】
【氏名】小峰 真弓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-53213(JP,A)
【文献】特開2018-158988(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179787(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含む砥粒と、下記一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ酸化合物と、水と、を含有し、
前記金属酸化物が酸化セリウムを含み、
前記砥粒の含有量が0.01~10質量%であり、
前記ヒドロキシ酸化合物の含有量が0.01~5.0質量%であり、
前記砥粒の含有量に対する前記ヒドロキシ酸化合物の含有量の比率が0.50以下である、研磨液。
【化1】
[式中、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n11は0以上の整数を示し、n12は0以上の整数を示す。但し、R
11及びR
12の双方が水素原子である場合、並びに、R
11が水素原子であり、R
12がメチル基であり、n11が0であり、n12が0である場合を除く。]
【請求項2】
金属酸化物を含む砥粒と、下記一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ酸化合物と、水と、を含有し、
前記金属酸化物が酸化セリウムを含み、
前記砥粒の含有量が0.01~10質量%であり、
前記ヒドロキシ酸化合物の含有量が0.01~3.0質量%である、研磨液(但し、砥粒と、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、カチオン性化合物と、液状媒体と、を含有し、前記砥粒のゼータ電位が正であり、前記カチオン性化合物の重量平均分子量が1000未満である、研磨液を除く)。
【化2】
[式中、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n11は0以上の整数を示し、n12は0以上の整数を示す。但し、R
11及びR
12の双方が水素原子である場合、並びに、R
11が水素原子であり、R
12がメチル基であり、n11が0であり、n12が0である場合を除く。]
【請求項3】
前記一般式(A1)の前記n11が0又は1である、請求項1又は2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記一般式(A1)の前記n12が1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記ヒドロキシ酸化合物が、グリセリン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、及び、ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記ヒドロキシ酸化合物の含有量が0.01~1.0質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
前記砥粒の含有量が0.10~3.0質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
アミノ酸成分を更に含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項9】
前記アミノ酸成分がグリシンを含む、請求項8に記載の研磨液。
【請求項10】
アルカリ成分を更に含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項11】
pHが1.0~7.0である、請求項1~10のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項12】
pHが3.0~5.0である、請求項1~11のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の研磨液を用いて被研磨材料を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項14】
前記被研磨材料が酸化ケイ素を含む、請求項13に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液、及び、これを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、超LSIデバイスの高性能化に伴い、従来技術の延長線上の微細化技術では高集積化及び高速化を両立することは限界になってきている。そこで、半導体素子の微細化を進めつつ、垂直方向にも高集積化する技術(すなわち、配線を多層化する技術)が開発されている。この技術は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
配線が多層化されたデバイスを製造するプロセスにおいて、最も重要な技術の一つにCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。CMP技術は、化学気相蒸着(CVD)等によって基板上に被研磨材料を形成して基体を得た後、その基体の表面を平坦化する技術である。平坦化後の基体の表面に凹凸があると、露光工程における焦点合わせが不可能となったり、微細な配線構造を充分に形成できなかったり等の不都合が生じる。CMP技術は、デバイスの製造工程において、プラズマ酸化物(BPSG、HDP-SiO2、p-TEOS等)の研磨によって素子分離領域を形成する工程、層間絶縁材料を形成する工程、酸化ケイ素を金属配線に埋め込んだ後にプラグ(例えばAl・Cuプラグ)を平坦化する工程などにも適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板上に素子分離領域を形成する工程においては、基板の表面に予め設けられた溝を埋めるように酸化ケイ素がCVD等によって形成される。その後、酸化ケイ素の表面をCMPによって平坦化することによって素子分離領域が形成される。素子分離領域を得るための凹凸が表面に設けられた基板上に酸化ケイ素を形成する場合、酸化ケイ素の表面にも、基板の凹凸に応じた凹凸が生じる。凹凸を有する表面の研磨においては、凸部が優先的に除去される一方、凹部がゆっくりと除去されることによって平坦化がなされる。
【0006】
半導体生産のスループットを向上させるためには、基板上に形成した酸化ケイ素の不要な部分を可能な限り速く除去することが好ましい。例えば、素子分離領域の狭幅化に対応すべく、シャロー・トレンチ分離(STI)を採用した場合、基板上に設けられた酸化ケイ素の不要な部分を高い研磨速度で取り除くことが要求される。
【0007】
基体の表面に形成される凹凸の態様としては様々な態様があり、配線幅に起因する凹凸の幅;凹凸の高さ;配線の方向が各工程又はデバイスの用途によって相違し得る。しかし、従来では、同一の研磨液を使用した場合に、一の基体は良好に研磨できたとしても、必ずしも同様に他の基体を良好に研磨できるとは限らない場合がある。そのため、研磨液に対しては、基体の被研磨面における凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることが求められる。
【0008】
本発明の一側面は、上記課題を解決しようとするものであり、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることが可能な研磨液を提供する。本発明の他の一側面は、前記研磨液を用いた研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、金属酸化物を含む砥粒と、下記一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ酸化合物と、水と、を含有する、研磨液を提供する。
【化1】
[式中、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n11は0以上の整数を示し、n12は0以上の整数を示す。但し、R
11及びR
12の双方が水素原子である場合を除く。]
【0010】
本発明の他の一側面は、上述の研磨液を用いて被研磨材料を研磨する工程を備える、研磨方法を提供する。
【0011】
上述の研磨液及び研磨方法によれば、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることが可能な研磨液を提供することができる。また、本発明の他の一側面によれば、前記研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。これらの研磨液及び研磨方法は、基体(例えば半導体ウエハ)の表面に設けられた絶縁材料(例えば酸化ケイ素)を研磨するために用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
<定義>
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、金属酸化物を含む砥粒と、下記一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ酸化合物と、水と、を含有する。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液(CMP用研磨液)として用いることができる。
【化2】
[式中、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n11は0以上の整数を示し、n12は0以上の整数を示す。但し、R
11及びR
12の双方が水素原子である場合を除く。]
【0016】
本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることが可能であり、例えば、配線幅に起因して表面の凹凸の幅が異なる各種基体を研磨した際に、凹凸の幅に依存することなく高い研磨速度を得ることができる。このような研磨液は、汎用性が高く、表面状態の異なる各種基体の研磨に用いることができる。上述のヒドロキシ酸化合物が、金属酸化物を含む砥粒の表面に強く吸着しやすいと共に当該砥粒の表面の活性を向上させることにより、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることができると推測される。但し、上記効果が得られる要因は当該内容に限られない。本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸を有する酸化ケイ素の被研磨面を研磨する場合において、例えば、L/S(Line/Space)=50/50μmの条件では12000Å/min以上の研磨速度を得ることが可能であり、L/S=20/80μmの条件では190000Å/min以上の研磨速度を得ることができる。
【0017】
ところで、従来、凹凸を有さない被研磨面を有する酸化ケイ素のウエハ(酸化ケイ素のブランケットウエハ)を研磨する場合は酸化ケイ素の高い研磨速度を達成できるのに対し、凹凸を有する被研磨面を有する酸化ケイ素のウエハ(酸化ケイ素のパターンウエハ)を研磨する場合には、酸化ケイ素の高い研磨速度を達成できないことがある。一方、本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において絶縁材料(例えば酸化ケイ素)の高い研磨速度を達成しつつ、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることができる。例えば、本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸を有さない酸化ケイ素の被研磨面を研磨する場合において3000Å/min以上(好ましくは5000Å/min以上、より好ましくは8000Å/min以上)の研磨速度を得ることができる。本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合の双方において高い研磨速度を得ることが可能であり、被研磨面の表面状態(凹凸の有無、密度等)に依存することなく高い研磨速度を得ることができる。なお、酸化ケイ素がCMPによって研磨されるメカニズムについては未解明の部分が多く、このような現象の原因は明らかではない。
【0018】
ところで、絶縁材料(例えば酸化ケイ素)の研磨速度が高い研磨液を用いると、研磨終了後の被研磨面が粗くなり、平坦性に劣る場合がある。そのため、絶縁材料の研磨処理を二段階に分け、種類の異なる研磨液をそれぞれの工程で使用することによって生産効率の向上を図る場合がある。第1の工程(荒削り工程)では、絶縁材料の研磨速度が高い研磨液を使用して絶縁材料の大部分を除去する。第2の工程(仕上げ工程)では、絶縁材料をゆっくりと除去し、被研磨面が充分に平坦となるように仕上げる。絶縁材料に対するCMPを二段階以上に分ける場合、第1の工程では平坦性よりも高い研磨速度が優先されるため、研磨速度の低下は生産性低下を招き得る。一方、本実施形態に係る研磨液によれば、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることが可能であることから、絶縁材料(例えば酸化ケイ素)に対するCMPを二段階以上に分ける場合であっても生産性の低下を抑制することができる。
【0019】
(砥粒)
砥粒は、金属酸化物を含む。金属酸化物は、酸化セリウム(セリア)、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ムライト等を含むことができる。砥粒の構成成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。砥粒は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、酸化セリウムを含むことが好ましい。
【0020】
酸化セリウムを含む砥粒を用いた研磨液は、被研磨面に生じる研磨傷が比較的少ないという特長を有する。従来、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度を達成しやすい観点から、砥粒としてシリカ粒子を含む研磨液が広く用いられている。しかし、シリカ粒子を用いた研磨液は、一般に被研磨面に研磨傷が生じやすいという課題がある。配線幅が45nm世代以降の微細パターンを有するデバイスにおいては、従来問題にならなかったような微細な傷であっても、デバイスの信頼性に影響するおそれがある。
【0021】
酸化セリウムを使用する場合、砥粒は、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウム(例えば、結晶粒界に囲まれた複数の結晶子を有する多結晶酸化セリウム)を含むことが好ましい。かかる構成の多結晶酸化セリウム粒子は、単結晶粒子が凝集した単なる凝集体とは異なっており、研磨中の応力により細かくなると同時に、活性面(細かくなる前は外部にさらされていない面)が次々と現れるため、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度を高度に維持できると考えられる。このような多結晶酸化セリウム粒子については、例えば、国際公開公報WO99/31195号に詳しく説明されている。
【0022】
酸化セリウムを含む砥粒の製造方法としては、特に制限はないが、液相合成;焼成、又は、過酸化水素等により酸化する方法などが挙げられる。前記結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む砥粒を得る場合には、炭酸セリウム等のセリウム源を焼成する方法が好ましい。前記焼成時の温度は、350~900℃が好ましい。製造された酸化セリウム粒子が凝集している場合は、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、特に制限はないが、例えば、ジェットミル等による乾式粉砕;遊星ビーズミル等による湿式粉砕が好ましい。ジェットミルは、例えば、「化学工学論文集」、第6巻、第5号、(1980)、527~532頁に説明されている。
【0023】
砥粒は、金属酸化物以外の構成成分を含んでよい。金属酸化物以外の構成成分としては、セリウム系化合物(酸化セリウムを除く)、窒化ケイ素、α-サイアロン、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられる。セリウム系化合物としては、セリウム水酸化物、硝酸アンモニウムセリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム水和物、臭素酸セリウム、臭化セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム等が挙げられる。
【0024】
砥粒における金属酸化物(例えば酸化セリウム)の含有量の下限は、酸化ケイ素の高い研磨速度が得られやすい観点から、砥粒の全質量(研磨液に含まれる砥粒の全質量)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましく、99質量%以上が非常に好ましい。金属酸化物を含む砥粒は、実質的に金属酸化物からなる態様(実質的に砥粒の100質量%が金属酸化物である態様)であってもよい。砥粒は、ジルコニアを含まない態様であってよい。
【0025】
砥粒の平均粒径の下限は、被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)の高い研磨速度が得られやすい観点から、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、80nm以上が更に好ましく、90nm以上が特に好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、研磨傷を抑制しやすい観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、280nm以下が更に好ましく、250nm以下が特に好ましく、200nm以下が極めて好ましく、180nm以下が非常に好ましく、150nm以下がより一層好ましく、120nm以下が更に好ましく、100nm以下が特に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、50~500nmが好ましい。
【0026】
砥粒の平均粒径を制御するためには、従来公知の方法を使用することができる。酸化セリウム粒子を例にすると、砥粒の平均粒径の制御方法としては、上述の焼成温度、焼成時間、粉砕条件等の制御;濾過、分級等の適用などが挙げられる。砥粒の平均粒径としては、砥粒が分散した研磨液サンプルをレーザー回折/散乱式粒度分布計で測定した算術平均径を用いることができる。砥粒の平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製のLA-920(商品名)等を用いて測定される値である。
【0027】
研磨液中における砥粒のゼータ電位(表面電位)は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、正である(ゼータ電位が0mVを超える)ことが好ましい。砥粒のゼータ電位の下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、10mV以上が好ましく、20mV以上がより好ましく、30mV以上が更に好ましく、40mV以上が特に好ましく、50mV以上が極めて好ましく、60mV以上が非常に好ましい。砥粒のゼータ電位の上限は、200mV以下が好ましく、150mV以下がより好ましく、100mV以下が更に好ましく、80mV以下が特に好ましく、70mV以下が極めて好ましい。これらの観点から、砥粒のゼータ電位は、0mVを超え200mV以下が好ましく、10~200mVがより好ましく、30~70mVが更に好ましい。砥粒のゼータ電位は、例えば、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaNano C)を用いて測定することができる。
【0028】
砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、高い研磨速度が達成されやすい観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.10質量%を超えることが特に好ましく、0.15質量%以上が極めて好ましく、0.18質量%以上が非常に好ましく、0.18質量%を超えることがより一層好ましく、0.20質量%以上が更に好ましく、0.25質量%以上が特に好ましく、0.25質量%を超えることが極めて好ましく、0.30質量%以上が非常に好ましく、0.50質量%以上がより一層好ましく、0.70質量%以上が更に好ましく、0.90質量%以上が特に好ましく、0.95質量%以上が極めて好ましい。砥粒の含有量の上限は、砥粒の凝集を抑制しやすい観点、及び、高い研磨速度を達成しやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.0質量%以下が特に好ましく、1.5質量%以下が極めて好ましく、1.0質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.10~10質量%がより好ましく、0.10~3.0質量%が更に好ましい。
【0029】
(ヒドロキシ酸化合物)
本実施形態に係る研磨液は、下記一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ酸化合物(以下、「特定ヒドロキシ酸化合物」という。)を含有する。ヒドロキシ酸は、ヒドロキシ基を有するカルボン酸である。
【化3】
[式中、R
11は水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n11は0以上の整数を示し、n12は0以上の整数を示す。但し、R
11及びR
12の双方が水素原子である場合を除く。]
【0030】
一般式(A1)で表される構造を有するヒドロキシ酸の塩としては、カルボキシル基の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム原子)に置換された塩等が挙げられる。本実施形態に係る研磨液は、特定ヒドロキシ酸化合物以外のヒドロキシ酸化合物を含有してよく、含有していなくてもよい。
【0031】
特定ヒドロキシ酸化合物は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、下記の特徴の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
R12のアルキル基の炭素数は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
R12のアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
n11は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1が更に好ましい。
n12は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1が更に好ましく、1が特に好ましい。
特定ヒドロキシ酸化合物は、分岐した炭素鎖を有していることが好ましい。
特定ヒドロキシ酸化合物は、ポリオキシアルキレン基(例えばポリオキシエチレン基)を有さないことが好ましい。
特定ヒドロキシ酸化合物は、分子量90~200のヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。分子量の下限は、95以上が好ましく、100以上がより好ましく、100を超えることが更に好ましく、102以上が特に好ましく、104以上が極めて好ましい。分子量の上限は、180以下が好ましく、170以下がより好ましく、160以下が更に好ましく、150以下が特に好ましい。
【0032】
特定ヒドロキシ酸化合物は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、下記一般式(A2)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩、並びに、下記一般式(A3)で表される構造を有するヒドロキシ酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0033】
【化4】
[式中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、R
21及びR
22の炭素数の合計は2以上である。]
【0034】
【化5】
[式中、R
3は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、n31は0~2の整数を示し、n32は0以上の整数を示す。]
【0035】
一般式(A2)で表される構造は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、下記の特徴の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
R21のアルキル基の炭素数は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
R21のアリール基は、フェニル基であることが好ましい。
R21及びR22の炭素数の合計は、2~9が好ましく、2~6がより好ましく、2~4が更に好ましい。
【0036】
一般式(A3)で表される構造は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点から、下記の特徴の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
R3は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
R3のアルキル基の炭素数は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、1又は2が更に好ましい。
n31は、0又は1が好ましい。
n32は、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0037】
特定ヒドロキシ酸化合物は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、グリセリン酸、マンデル酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、及び、ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、グリセリン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、及び、ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、及び、ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが更に好ましい。ヒドロキシイソ酪酸としては、2-ヒドロキシイソ酪酸(別名:2-メチル乳酸)、3-ヒドロキシイソ酪酸等が挙げられる。
【0038】
特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、ヒドロキシ酸化合物(本実施形態に係る研磨液に含有されるヒドロキシ酸化合物)の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましく、99質量%以上が非常に好ましい。本実施形態に係る研磨液に含有されるヒドロキシ酸化合物は、実質的に特定ヒドロキシ酸化合物からなる態様(実質的に、本実施形態に係る研磨液に含有されるヒドロキシ酸化合物の100質量%が特定ヒドロキシ酸化合物である態様)であってもよい。
【0039】
特定ヒドロキシ酸化合物の含有量は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、酸成分(本実施形態に係る研磨液に含有される酸成分)の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、10質量%を超えることが更に好ましく、15質量%以上が特に好ましく、15質量%を超えることが極めて好ましく、20質量%以上が非常に好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の上限は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましく、70質量%以下が極めて好ましい。これらの観点から、特定ヒドロキシ酸化合物の含有量は、5~90質量%が好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく特に高い研磨速度を得やすい観点から、酸成分の全質量を基準として、20質量%を超えることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、40質量%以上が特に好ましく、50質量%以上が極めて好ましい。
【0040】
特定ヒドロキシ酸化合物の含有量は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の下限は、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.06質量%以上が特に好ましく、0.07質量%以上が極めて好ましく、0.075質量%以上が非常に好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の上限は、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.80質量%以下が極めて好ましく、0.70質量%以下が非常に好ましく、0.60質量%以下がより一層好ましく、0.50質量%以下が更に好ましく、0.40質量%以下が特に好ましく、0.40質量%未満が極めて好ましく、0.30質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、特定ヒドロキシ酸化合物の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~1.0質量%がより好ましい。
【0041】
特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく特に高い研磨速度を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.08質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.10質量%を超えることが更に好ましく、0.15質量%以上が特に好ましく、0.20質量%以上が極めて好ましく、0.25質量%以上が非常に好ましく、0.30質量%以上がより一層好ましい。特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の上限は、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の特に高い研磨速度を達成しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.25質量%以下が好ましく、0.20質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下が更に好ましく、0.10質量%以下が特に好ましく、0.10質量%未満が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.075質量%以下がより一層好ましい。
【0042】
砥粒の含有量に対するヒドロキシ酸化合物の含有量(本実施形態に係る研磨液に含有されるヒドロキシ酸化合物の合計量)の比率A1(ヒドロキシ酸化合物の含有量/砥粒の含有量)、及び/又は、砥粒の含有量に対する特定ヒドロキシ酸化合物の含有量の比率A2(特定ヒドロキシ酸化合物の含有量/砥粒の含有量)は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、下記の範囲が好ましい(以下では、比率A1及び比率A2を「比率A」と称する)。比率Aの下限は、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.05以上が更に好ましく、0.06以上が特に好ましく、0.07以上が極めて好ましく、0.075以上が非常に好ましい。比率Aの上限は、10以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましく、1.0以下が特に好ましく、0.80以下が極めて好ましく、0.70以下が非常に好ましく、0.60以下がより一層好ましく、0.50以下が更に好ましく、0.40以下が特に好ましく、0.40未満が極めて好ましく、0.30以下が非常に好ましい。これらの観点から、比率Aは、0.01~10が好ましい。
【0043】
比率Aの下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく特に高い研磨速度を得やすい観点から、0.08以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.10を超えることが更に好ましく、0.15以上が特に好ましく、0.20以上が極めて好ましく、0.25以上が非常に好ましく、0.30以上がより一層好ましい。比率Aの上限は、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の特に高い研磨速度を達成しやすい観点から、0.25以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、0.15以下が更に好ましく、0.10以下が特に好ましく、0.10未満が極めて好ましく、0.08以下が非常に好ましく、0.075以下がより一層好ましい。
【0044】
(その他の成分)
本実施形態に係る研磨液は、その他の添加剤(砥粒及びヒドロキシ酸化合物を除く)を更に含有していてよい。添加剤としては、ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分;アルカリ成分;水溶性高分子;非イオン性界面活性剤等が挙げられる。酸成分及びアルカリ成分は、pHを調整するためのpH調整剤として用いることができる。本実施形態に係る研磨液は、pHを安定化させるため、緩衝剤を含有してよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してよい。緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る研磨液は、ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分として、アミノ酸及びアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸成分を含有してよい。アミノ酸誘導体としては、アミノ酸のエステル、アミノ酸の塩、ペプチド等が挙げられる。アミノ酸は、アミノ基及びカルボキシル基の両方の官能基を有する化合物である。
【0046】
アミノ酸成分としては、グリシン、α-アラニン、β-アラニン(別名:3-アミノプロパン酸)、2-アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リシン、セリン、トレオニン、アロトレオニン、ホモセリン、チロシン、3,5-ジヨード-チロシン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-アラニン、チロキシン、4-ヒドロキシ-プロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S-(カルボキシメチル)-システイン、4-アミノ酪酸、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ-ヒドロキシ-リシン、クレアチン、キヌレニン、ヒスチジン、1-メチル-ヒスチジン、3-メチル-ヒスチジン、エルゴチオネイン、トリプトファン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、バソプレシン、オキシトシン、カッシニン、エレドイシン、グルカゴン、セクレチン、プロオポオメラノコルチン、エンケファリン、プロジノルフィン等が挙げられる。
【0047】
アミノ酸成分は、砥粒(酸化セリウム粒子等)の凝集を抑制しやすい観点から、低分子量のアミノ酸を含むことが好ましい。アミノ酸成分の分子量は、300以下が好ましく、250以下がより好ましく、200以下が更に好ましい。このようなアミノ酸としては、グリシン(分子量75)、α-アラニン(分子量89)、β-アラニン(分子量89)、セリン(分子量105)、ヒスチジン(分子量155)、グリシルグリシン(分子量132)、グリシルグリシルグリシン(分子量189)等が挙げられる。アミノ酸成分は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、グリシンを含むことが好ましい。
【0048】
ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分(例えばアミノ酸成分)の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分の含有量の下限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.05質量%以上が極めて好ましく、0.10質量%以上が非常に好ましく、0.20質量%以上がより一層好ましい。ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分の含有量の上限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が極めて好ましく、0.40質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、ヒドロキシ酸化合物以外の酸成分の含有量は、0.005~10質量%が好ましい。
【0049】
ヒドロキシ酸化合物の含有量(本実施形態に係る研磨液に含有されるヒドロキシ酸化合物の合計量)に対するアミノ酸成分の含有量の比率B1(アミノ酸成分の含有量/ヒドロキシ酸化合物の含有量)、及び/又は、特定ヒドロキシ酸化合物の含有量対するアミノ酸成分の含有量の比率B2(アミノ酸成分の含有量/特定ヒドロキシ酸化合物の含有量)は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、下記の範囲が好ましい(以下では、比率B1及び比率B2を「比率B」と称する)。比率Bの下限は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましく、0.30以上が特に好ましく、0.50以上が極めて好ましい。比率Bの上限は、10以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましく、4.0以下が特に好ましい。これらの観点から、比率Bは、0.01~10が好ましい。比率Bの上限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく特に高い研磨速度を得やすい観点から、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.0以下が特に好ましい。
【0050】
アルカリ成分としては、複素環式アミン、アルカノールアミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等が挙げられる。本実施形態に係る研磨液は、アルカリ成分を含有しなくてよい。
【0051】
複素環式アミンは、少なくとも1つの複素環を有するアミンである。複素環式アミンとしては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン、及び、これらの誘導体(これらの化合物の構造を骨格とする化合物)が挙げられる。誘導体としては、アミノチアゾール、ジアルキルピラゾール(例えば、3,5-ジアルキルピラゾール等のジメチルピラゾール)などを用いることができる。複素環式アミンは、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、アミノチアゾール及びジアルキルピラゾール(例えば、3,5-ジアルキルピラゾール等のジメチルピラゾール)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0052】
複素環式アミンの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。複素環式アミンの含有量の下限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。複素環式アミンの含有量の上限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が極めて好ましく、0.30質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、複素環式アミンの含有量は、0.001~10質量%が好ましい。
【0053】
アルカノールアミンは、アルカン骨格に結合したヒドロキシ基及びアミノ基を有する化合物である。アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-ポリオキシプロピレンエチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヘプタミノール、イソエタリン、スフィンゴシン等が挙げられる。
【0054】
アルカノールアミンの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。アルカノールアミンの含有量の下限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。アルカノールアミンの含有量の上限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が極めて好ましく、0.30質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、アルカノールアミンの含有量は、0.001~10質量%が好ましい。
【0055】
水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩等のポリアクリル酸系ポリマ;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩等のポリメタクリル酸系ポリマ;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマ;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る研磨液は、水溶性高分子を含有しなくてよい。本実施形態に係る研磨液は、水溶性高分子を含有しなくてよい。例えば、本実施形態に係る研磨液は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグリセリン及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有しなくてよい。
【0057】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル誘導体、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、メトキシポリエチレングリコールのオキシエチレン付加体、アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体等のエーテル型界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールボレイト脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のエーテルエステル型界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;アセチレン系ジオールのオキシエチレン付加体;ポリビニルピロリドン;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。本実施形態に係る研磨液は、非イオン性界面活性剤を含有しなくてよい。
【0058】
本実施形態に係る研磨液において、ヒドロキシ基を有する高分子化合物の含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%未満であってよく、0.005質量%以下であってよく、0.001質量%以下であってよく、0.0001質量%以下であってよく、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、ヒドロキシ基を有する高分子化合物を含有しなくてよい。
【0059】
本実施形態に係る研磨液において、アミド基を有する高分子化合物の含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%未満であってよく、0.005質量%以下であってよく、0.001質量%以下であってよく、0.0001質量%以下であってよく、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、アミド基を有する高分子化合物を含有しなくてよい。例えば、本実施形態に係る研磨液は、ポリ-N-ビニルアセトアミドを含有しなくてよい。
【0060】
本実施形態に係る研磨液において、環状構造を有する化合物(例えば、環状構造を2つ以上有する化合物)の含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%未満であってよく、0.005質量%以下であってよく、0.001質量%以下であってよく、0.001質量%未満であってよく、0.0001質量%以下であってよく、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、環状構造を有する化合物(例えば、環状構造を2つ以上有する化合物)を含有しなくてよい。
【0061】
本実施形態に係る研磨液において、ポリアルキレン鎖を有する化合物の含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%未満であってよく、0.005質量%以下であってよく、0.001質量%以下であってよく、0.0001質量%以下であってく、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、ポリアルキレン鎖を有する化合物を含有しなくてよい。
【0062】
本実施形態に係る研磨液において、水溶性ポリアミドの含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、水溶性ポリアミドを含有しなくてよい。
【0063】
本実施形態に係る研磨液において、アゾ化合物(例えばアゾ誘導体)の含有量の上限は、研磨液の全質量を基準として、0.025質量%未満であってよく、0.02質量%以下であってよく、0.01質量%以下であってよく、0.005質量%以下であってよく、0.001質量%以下であってよく、0.0001質量%以下であってく、0.0001質量%未満であってよい。本実施形態に係る研磨液は、アゾ化合物(例えばアゾ誘導体)を含有しなくてよい。
【0064】
本実施形態に係る研磨液において、酸化剤の含有量の上限は、研磨液の全体を基準として、0.003mol/L未満であってよく、0.001mol/L以下であってよい。本実施形態に係る研磨液は、酸化剤を含有しなくてよい。
【0065】
(水)
本実施形態に係る研磨液は、水を含有する。水としては、脱イオン水、超純水等が挙げられる。水の含有量は、特に限定されず、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよい。
【0066】
砥粒及び水の合計量は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒及び水の合計量の下限は、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましく、99質量%を超えることが非常に好ましく、99.1質量%以上がより一層好ましく、99.2質量%以上が更に好ましく、99.3質量%以上が特に好ましく、99.4質量%以上が極めて好ましい。砥粒及び水の合計量の上限は、100質量%未満が好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.8質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、砥粒及び水の合計量は、95質量%以上100質量%未満が好ましい。砥粒及び水の合計量は、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の特に高い研磨速度を達成しやすい観点から、99.4質量%を超えることが好ましく、99.5質量%以上がより好ましく、99.6質量%以上が更に好ましい。
【0067】
ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量の下限は、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、98.2質量%以上が極めて好ましく、98.4質量%以上が非常に好ましく、98.6質量%以上がより一層好ましく、98.7質量%以上が更に好ましい。ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量の上限は、100質量%未満が好ましく、99.8質量%以下がより好ましく、99.5質量%以下が更に好ましく、99.2質量%以下が特に好ましく、99質量%以下が極めて好ましく、99質量%未満が非常に好ましい。これらの観点から、ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量は、95質量%以上100質量%未満が好ましい。
【0068】
砥粒、ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量の下限は、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得やすい観点、及び、凹凸を有さない被研磨面を研磨する場合において酸化ケイ素の高い研磨速度を達成しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、95質量%以上が好ましく、96質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましく、99.2質量%以上が非常に好ましく、99.4質量%以上がより一層好ましく、99.6質量%以上が更に好ましく、99.8質量%以上が特に好ましく、99.9質量%以上が極めて好ましく、99.95質量%以上が非常に好ましい。砥粒、ヒドロキシ酸化合物及び水の合計量は、100質量%又はそれ未満であってよい。
【0069】
(pH)
本実施形態に係る研磨液のpHの下限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.4以上が極めて好ましく、2.5以上が非常に好ましく、3.0以上がより一層好ましく、3.2以上が更に好ましく、3.4以上が特に好ましく、3.4を超えることが極めて好ましい。pHの上限は、酸化ケイ素の充分に高い研磨速度を達成しやすい観点から、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましく、5.5以下が特に好ましく、5.0以下が極めて好ましく、4.5以下が非常に好ましく、4.0以下がより一層好ましく、4.0未満が更に好ましく、3.8以下が特に好ましく、3.5以下が極めて好ましい。これらの観点から、研磨液のpHは、1.0~7.0が好ましく、3.0~7.0がより好ましく、3.0~6.0が更に好ましく、3.0~5.0が特に好ましく、3.5~5.0が極めて好ましい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0070】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、電気化学計器株式会社製、型番PHL-40)で測定することができる。例えば、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01;中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86;ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極を研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0071】
(保存形態及び使用形態)
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸化合物と、を少なくとも含む一液式研磨液として保存してよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒と、水とを少なくとも含む。添加液は、例えば、ヒドロキシ酸化合物と、水とを少なくとも含む。
【0072】
本実施形態に係る研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0073】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて被研磨材料を研磨する研磨工程を備える。研磨工程は、例えば、本実施形態に係る研磨液を用いて、表面に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体の当該絶縁材料を研磨する工程である。研磨工程は、例えば、本実施形態に係る研磨液を被研磨材料(例えば絶縁材料)と研磨用部材(研磨パッド等)との間に供給しながら、研磨部材によって被研磨材料を研磨する工程である。被研磨材料は、絶縁材料を含んでよく、無機絶縁材料を含んでよく、酸化ケイ素を含んでよい。研磨工程は、例えば、各成分の含有量、pH等が調整された研磨液を使用し、表面に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体をCMP技術によって平坦化する工程である。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってよく、酸化ケイ素膜等の絶縁膜であってよい。
【0074】
研磨工程は、表面に凹凸を有する基板と、当該基板の表面形状に沿って基板上に設けられたストッパと、当該ストッパの形状に沿ってストッパ上に設けられた絶縁材料(例えば酸化ケイ素)と、を備える基体を研磨する工程であってよい。研磨工程は、ストッパにおける基板表面の凸部上に位置する部分が露出するまで絶縁材料を研磨して除去する第1の工程(荒削り工程)と、第1の工程の後、ストッパ及び絶縁材料を研磨して除去する第2の工程(仕上げ工程)と、を有してよい。本実施形態に係る研磨液及び研磨方法は、第1の工程及び第2の工程からなる群より選ばれる少なくとも一種において用いることができる。ストッパは、窒化ケイ素を含んでよい。ストッパは、膜状(ストッパ膜)であってよく、窒化ケイ素膜であってよい。
【0075】
本実施形態に係る研磨方法は、以下のようなデバイスの製造過程において、表面に被研磨材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)を有する基体を研磨することに適している。デバイスとしては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体;DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリ等の記憶素子;マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子;MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子;混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子などが挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る研磨方法は、表面に段差(凹凸)を有する基体における当該表面の平坦化に特に適している。基体としては、例えば、ロジック用の半導体デバイスが挙げられる。被研磨材料は、上から見たときに凹部又は凸部がT字形状又は格子形状に設けられた部分を有してよい。例えば、被研磨材料を有する研磨対象は、メモリセルを有する半導体基板であってよい。本実施形態によれば、メモリセルを有する半導体基板を備える半導体デバイス(DRAM、フラッシュメモリ等)の表面に設けられた絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)も高い速度で研磨できる。本実施形態によれば、粗密依存性が現れやすい3D-NANDフラッシュメモリの表面に設けられた絶縁材料(例えば、酸化ケイ素等の絶縁材料)についても、高い平坦性を確保しつつ高い研磨速度で研磨することができる。
【0077】
本実施形態に係る研磨方法は、ライン幅(L:Line)及びスペース幅(S:Space)の合計に対するライン幅の割合が下記の範囲であるパターンを有する被研磨材料を研磨することができる。ライン幅の割合は、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であってよい。ライン幅の割合は、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下又は20%以下であってよい。ライン幅及びスペース幅の合計は、50μm以上、80μm以上又は100μm以上であってよい。ライン幅及びスペース幅の合計は、200μm以下、150μm以下、120μm以下又は100μm以下であってよい。本実施形態に係る研磨液は、ライン幅の割合がこれらの範囲であるパターンを有する被研磨材料の研磨に用いることができる。本実施形態は、L/S=50/50μmのパターンを有する被研磨材料(例えば酸化ケイ素)を研磨したときの研磨速度と、L/S=20/80μmのパターンを有する被研磨材料(例えば酸化ケイ素)を研磨したときの研磨速度と、に基づき研磨液を選定する選定工程を備える、研磨液の製造方法を提供することができる。選定工程では、L/S=50/50μmのパターンを有する被研磨材料(例えば酸化ケイ素)を研磨したときの研磨速度が12000Å/min以上であり、且つ、L/S=20/80μmのパターンを有する被研磨材料(例えば酸化ケイ素)を研磨したときの研磨速度が190000Å/min以上であることに基づき研磨液を選定してよい。
【0078】
研磨対象は、表面全体を覆う酸化ケイ素を有する基体に限らず、表面に酸化ケイ素の他に窒化ケイ素、多結晶シリコン等を更に有する基体であってもよい。研磨対象は、所定の配線を有する配線板上に絶縁材料(例えば、酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素等の無機絶縁材料)、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaNなどが形成された基体であってよい。
【0079】
研磨装置としては、例えば、基体を保持するホルダーと、研磨パッドが貼り付けられる研磨定盤と、研磨パッド上に研磨液を供給する手段と、を備える装置が好適である。研磨装置としては、株式会社荏原製作所製の研磨装置(型番:EPO-111、EPO-222、FREX200、FREX300等)、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置(商品名:Mirra3400、Reflexion研磨機等)などが挙げられる。
【0080】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、優れた研磨速度及び平坦性を得やすい観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。研磨パッドは、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0081】
研磨条件として、特に制限はないが、基体が飛び出さないようにする観点から、研磨定盤の回転速度は200rpm(min-1)以下が好ましく、基体にかける圧力(加工荷重)は、被研磨面の傷を抑制しやすい観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等によって研磨パッドに研磨液を連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0082】
研磨終了後、流水中で基体を充分に洗浄し、さらに、基体上に付着した水滴をスピンドライヤ等により払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0083】
このように研磨することによって、表面の凹凸を解消し、基体全面にわたって平滑な面を得ることができる。被研磨材料の形成及び研磨を所定の回数繰り返すことによって、所望の層数を有する基体を製造することができる。
【0084】
このようにして得られた基体は、種々の電子部品及び機械部品として使用することができる。具体例としては、半導体素子;フォトマスク、レンズ、プリズム等の光学ガラス;ITO等の無機導電膜;ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路;光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶;固体レーザー単結晶;青色レーザーLED用サファイヤ基板;SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶;磁気ディスク用ガラス基板;磁気ヘッドなどが挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。例えば、研磨液の材料の種類及びその配合比率は、本実施例に記載の種類及び比率以外の種類及び比率でも差し支えなく、研磨対象の組成及び構造も、本実施例に記載の組成及び構造以外の組成及び構造でも差し支えない。
【0086】
<砥粒の作製>
炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れた後、830℃で2時間、空気中で焼成して黄白色の粉末を20kg得た。この粉末についてX線回折法で相同定を行い、当該粉末が多結晶体の酸化セリウムを含むことを確認した。焼成によって得られた粉末の粒径をSEMで観察したところ、20~100μmであった。次いで、ジェットミルを用いて酸化セリウム粉末20kgを乾式粉砕した。粉砕後の酸化セリウム粉末をSEMで観察したところ、結晶粒界を有する多結晶酸化セリウムを含む粒子が含まれていることが確認された。また、酸化セリウム粉末の比表面積は9.4m2/gであった。比表面積の測定はBET法によって実施した。
【0087】
<CMP研磨液の作製>
上述の酸化セリウム粉末15kg、及び、脱イオン水84.7kgを容器内に入れて混合した。さらに、1Nの酢酸水溶液0.3kgを添加して10分間攪拌することにより酸化セリウム混合液を得た。この酸化セリウム混合液を別の容器に30分かけて送液した。その間、送液する配管内で、酸化セリウム混合液に対して超音波周波数400kHzにて超音波照射を行った。
【0088】
上述の砥粒1.0質量%と、表1~3に記載の酸成分(ヒドロキシ酸化合物及び他の酸成分)と、脱イオン水(残部)と、を含有するCMP研磨液を得た。
【0089】
レーザー回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920)を用いて、研磨液における砥粒の平均粒径を測定したところ、いずれも平均粒径は90nmであった。
【0090】
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。実施例、及び、比較例1以外の比較例におけるpHは3.5であり、比較例1のpHは5.0であった。
測定温度:25℃
測定装置:電気化学計器株式会社製、型番PHL-40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極を研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0091】
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリアスラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリアスラリにおけるセリア粒子のゼータ電位は+60mVであった。
【0092】
<研磨特性評価>
(ウエハの準備)
上述のCMP研磨液を用いて、表面に酸化ケイ素膜を有するブランケットウエハを下記研磨条件で研磨して研磨速度(ブランケットウエハ研磨速度)を求めた。ブランケットウエハは、直径200mmのシリコン基板上に配置された膜厚1000nmの酸化ケイ素膜を有するウエハである。
【0093】
上述のCMP研磨液を用いて、凹凸のある酸化ケイ素膜を被研磨膜として有するパターンウエハを下記研磨条件で研磨して研磨速度を求めた。パターンウエハは、直径200mmのシリコン基板上の一部にストッパ膜として窒化ケイ素膜を形成した後、窒化ケイ素膜の無い部分のシリコン基板を350nmエッチングして凹部を形成し、次いで、プラズマCVD法で600nmの酸化ケイ素膜をストッパ膜上及び凹部内に成膜して得られたものである。パターンウエハは、L/S=50/50μm、及び、L/S=20/80μmのパターンを有している。
【0094】
[研磨条件]
研磨装置:CMP用研磨機Mirra3400(APPLIED MATERIALS社製)
研磨パッド:多孔質ウレタンパッドIC-1010(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)
研磨圧力:3.0psi(20.7kPa)
定盤回転数:126rpm
ヘッド回転数:125rpm
CMP研磨液の供給量:200mL/min
研磨時間:30秒
【0095】
(ブランケットウエハ研磨速度の算出)
フィルメトリクス社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:F80)を用いて、酸化ケイ素膜の研磨前後の膜厚を測定した。ウエハの中心を通過する線(直径)上において等間隔に位置する79点の膜厚を測定し、その平均値を膜厚として得た。研磨前後の膜厚と研磨時間とに基づき、下記式により研磨速度を算出した。結果を表1~3に示す。
研磨速度[Å/min]=(研磨前の膜厚[Å]-研磨後の膜厚[Å])/研磨時間[min]
【0096】
(パターンウエハ研磨速度の算出)
ナノメトリクス社製光干渉式膜厚装置(装置名:Nanospec AFT-5100)を用いて、酸化ケイ素膜の研磨前後の膜厚を測定した。研磨前後の膜厚と研磨時間とに基づき、下記式により研磨速度を算出した。結果を表1~3に示す。
研磨速度[Å/min]=(研磨前の膜厚[Å]-研磨後の膜厚[Å])/研磨時間[min]
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
実施例では、凹凸を有する被研磨面を研磨する場合において、凹凸の状態に依存することなく高い研磨速度を得ることができることが分かる。