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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】フライ食品用衣材
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20240710BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20240710BHJP
【FI】
A23L5/10 E
A23L7/157
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021554494
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043630
(87)【国際公開番号】W WO2021090431
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 貴史
(72)【発明者】
【氏名】藤村 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】高須 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】重松 亨
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 総一郎
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087730(WO,A1)
【文献】特開2006-345747(JP,A)
【文献】特開2015-167479(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188089(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/156098(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/156097(WO,A1)
【文献】特開2021-000063(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTHECHNO(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライ食品用衣材の製造方法であって、
該方法は、フライ食品用衣材の全質量中に粗大粒子状澱粉を5~100質量%用いることを含み、
該粗大粒子状澱粉は、
澱粉スラリーを調製する工程と、
該澱粉スラリーを乾燥させ粉砕する工程と、
得られた粉砕物を分級して、目開き590μmの篩を通過せず目開き3350μmの篩を通過する粒度を有する粗大粒子状澱粉を調製する工程、
とを含む方法によって製造されたものであり、かつ、
該粗大粒子状澱粉は、α化度が30%以下である、
方法。
【請求項2】
前記フライ食品用衣材がブレダーとして使用される、請求項記載の方法
【請求項3】
具材に請求項1又は2記載の方法で製造されたフライ食品用衣材を付着させることを含む、フライ食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライ食品用衣材に関する。
【背景技術】
【0002】
フライ食品は、通常、各種の具材の表面に衣材を付け、油ちょうすることにより製造される。一般的なフライ食品の衣材は、粉粒状の衣材(ブレダー)と、液状の衣材(バッター液)に大きく分類される。衣材は、それが覆う具材の油ちょう中における吸油や水分蒸発を防ぐだけでなく、それ自身が油ちょうにより調理されると、フライ食品に好ましい食感、風味及び外観を与える。
【0003】
一方で、フライ食品の衣は、油っぽくべたついた食感、又は粘り気があるもしくは硬すぎる食感を有する場合がある。また衣の口溶けが悪くても油っこい食感を与える場合がある。このような衣は、フライ食品の好ましさを低下させる。またフライ食品の外観には、表面の衣にざらつきと岩石のような凹凸があり、油ぎった印象を与える艶がないことなどが望まれる。しかし、上記のような油っぽくべたついた食感や粘り気のある衣、又は口溶けの悪い衣は、多くの場合、フライ食品の外観の好ましさをも低下させる。油ちょう後のフライ食品の食感や外観は、調理操作からも少なくない影響を受けるが、衣材の材料や組成によっても影響を受ける。
【0004】
フライ食品の食感や外観を向上させるために、様々な種類の衣材が従来提供されている。特許文献1には、圧縮処理澱粉を含む衣材が記載されており、該圧縮処理澱粉は、通常の澱粉に円筒形のロール等を用いて直接圧力をかけて澱粉粒の一部を変形させた後、再度粉砕して粉末化したものである。特許文献2には、α化澱粉を含む顆粒粉をから揚げ用の衣材として用いることが記載されており、該顆粒粉は、穀粉又は澱粉類にα化澱粉を加え、攪拌下に加水して混合造粒し、乾燥することで製造される。特許文献3には、だまを含有するブレッダーが記載されており、該だまは、起泡させたバッター液をブレッダーに添加することによって製造され、穀粉類及び/又は澱粉類とα化澱粉とを主原料とし、かつ長径0.5~20mmの粒形又は扁平状などの不定形を有する。特許文献4には、薄片形状の澱粉粒子からなる非顆粒状アルファ化澱粉材料からなる固体担体物質を含む液体担持デンプン粉末材料であって、該澱粉粒子が、その少なくとも50重量%の粒度が100μm~375μmとなるような粒度分布を有し、かつBET比表面積が0.5m2/g以下であり、該固体担体物質の内部及び/又は表面に液体成分が吸収されている、液体担持デンプン粉末材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-125332号公報
【文献】特開2005-333861号公報
【文献】特開2005-151876号公報
【文献】国際公開公報第2009/103514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、油っぽい艶がなく大小の凹凸がある外観と、サクミがあり口溶けがよい衣の食感とを有するフライ食品、及びそれを製造するための衣材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、所定のサイズを有する粗大粒子状澱粉をフライ食品用衣材の材料として用いることにより、油っぽい艶がなく凹凸がある外観と、サクミがあり口溶けがよい衣の食感とを有するフライ食品が得られることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、粗大粒子状澱粉を含有するフライ食品用衣材であって、
該粗大粒子状澱粉は、α化度が30%以下であり、かつ目開き590μmの篩を通過せず目開き3350μmの篩を通過する、
フライ食品用衣材を提供する。
また本発明は、具材に前記フライ食品用衣材を付着させることを含む、フライ食品の製造方法を提供する。
また本発明は、フライ食品用衣材としての粗大粒子状澱粉の使用であって、
該粗大粒子状澱粉は、α化度が30%以下であり、かつ目開き590μmの篩を通過せず目開き3350μmの篩を通過する、
使用を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフライ食品用衣材を用いて得られたフライ食品は、油っぽい艶がなく大小の凹凸がある外観と、サクミがあり口溶けがよい衣の食感を有することにより、優れた外観及び食感を呈する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、フライ食品用衣材として使用するための澱粉材料を提供する。当該澱粉材料は、粒度分布が通常の澱粉と比べて大きいサイズにシフトした粗大粒子状澱粉である。該粗大粒子状澱粉の原料としては、食用澱粉の製造に用いることができる澱粉原料であれば限定されないが、例えば、トウモロコシ、ハイアミロースコーン、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、小麦、米等が挙げられる。
【0011】
本発明で用いる該粗大粒子状澱粉は、上述した澱粉原料から通常の澱粉の製造手順に従って、ただし粗大粒子を集めるように手順を改変することによって、製造することができる。該粗大粒子状澱粉は、未加工澱粉であっても、加工澱粉であっても、又はそれらの組み合わせであってもよい。例えば、該粗大粒子状澱粉は、上述した澱粉原料を粉砕又は磨砕等し、得られた粉砕物から澱粉を取り出して澱粉スラリーを調製し、必要に応じて該澱粉スラリーに加工処理(例えば酸化処理やエステル化処理等)を行って加工澱粉を含むスラリーを調製し、次いで、該スラリーを脱水、乾燥及び粉砕した後で、該粉砕物を分級して所望の粒度の粗大粒子を集めることによって製造することができる。あるいは、該粗大粒子状澱粉は、通常の澱粉(未加工澱粉、加工澱粉又はそれらの混合物)に水を加えて澱粉スラリーを調製し、次いでこれを乾燥及び粉砕した後、該粉砕物を分級して所望の粒度の粗大粒子を集めることによって製造することができる。該加工澱粉としては、食用に供することができるものであれば限定されず、例としてエステル化、エーテル化、架橋、酸化、酸処理等、又はそれらの組み合わせによる化工を施した澱粉が挙げられ、例えばエステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉等を例示できる。
【0012】
該澱粉原料から澱粉スラリーを調製する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、トウモロコシ澱粉を製造する場合、トウモロコシ粒を水に浸漬させ、吸水後に磨砕し、胚芽や外皮を篩等で除去する。残った胚乳の分散液は澱粉と蛋白質の混合液であるが、これを比重差により澱粉スラリーと蛋白質液に分離することができる。またジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類由来の澱粉の場合は、原料イモ類を磨砕し、これをほぐして篩う操作を繰り返して澱粉粕(繊維質等)を除去し、澱粉乳を得る。得られた澱粉乳から水への懸濁と沈殿を繰り返して不純物を取り除き、澱粉スラリーを得ることができる。また小麦澱粉の場合は、小麦粉から澱粉を取り出す方法が一般的である。小麦粉は澱粉と蛋白質が複合体化した構造をしているため、これに加水、混練してドウを製造し、該ドウを大量の水で洗浄して澱粉を洗い出す。洗い出した液に含まれる蛋白質や外皮を篩等で除去し、澱粉スラリーを得ることができる。
【0013】
得られた澱粉スラリーの乾燥は、公知の方法に従って、例えば遠心分離、真空脱水、スプレードライ、ドラムドライ、気流乾燥等を単独又は組み合わせて、行うことができる。該乾燥は、水分含量が10~20%程度になるまで行うことが好ましい。一方、該乾燥は、澱粉のα化をできるだけ抑制するように行われることが好ましい。
【0014】
該澱粉スラリーの乾燥物の粉砕は、公知の方法に従って、例えば石臼、ハンマーミル、ローラーミル、ブレンダーミキサー等を単独又は組み合わせて用いて、行うことができる。粉砕物は大小様々な粒子を含んでいるため、これを分級することで、所望の粒度を有する粗大粒子状澱粉を分離することができる。必要に応じて、該粉砕工程を、粗大粒子がより多く生成されるように調整してもよい。該分級は、公知の方法、例えば篩分けによって行うことができる。
【0015】
本発明で用いる該粗大粒子状澱粉は、目開き590μmの篩を通過せず、かつ目開き3350μmの篩を通過する粒度を有する澱粉である。該粗大粒子状澱粉は、好ましくは目開き710μmの篩を通過せず、より好ましくは目開き850μmの篩を通過しない。また好ましくは、該粗大粒子状澱粉は目開き2800μmの篩を通過する。さらに好ましくは、該粗大粒子状澱粉は、目開き710μmの篩を通過せず、かつ目開き2800μmの篩を通過する。さらに好ましくは、該粗大粒子状澱粉は、目開き850μmの篩を通過せず、かつ目開き2800μmの篩を通過する。このような粒度を有する澱粉は、上記のように澱粉スラリーから製造した粉砕物から、目開き590μm(好ましくは710μm、より好ましくは850μm)の篩を通過しない画分を取り分け、さらに該画分を、目開き3350μm(好ましくは2800μm)の篩にかけて該篩を通過した画分を回収することにより(又はその逆の工程により)、調製することができる。本発明で用いられる該粗大粒子状澱粉は、通常の澱粉を必要に応じてバインダー等を用いて造粒して得られる造粒澱粉、及び通常の澱粉を圧縮処理することで得られる圧縮澱粉とは異なる。
【0016】
当該粗大粒子状澱粉は、α化度が30%以下であればよいが、好ましくは24%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは14%以下、なお好ましくは8%以下である。該粗大粒子状澱粉のα化度が30%を超えると、本発明のフライ食品用衣材を用いて得られたフライ食品の衣の口溶けが低下する。なお、本明細書における澱粉のα化度は、β-アミラーゼ・プルラナーゼ(BAP)法(Jap.Soc.Starch Sci,28(4):235-240(1981)参照)により求められる。
【0017】
上記の粗大粒子状澱粉は、衣材としてフライ食品の製造に使用される。したがって、本発明は、該粗大粒子状澱粉を含有するフライ食品用衣材を提供する。該粗大粒子状澱粉から、又は必要に応じてこれを他の成分とブレンドすることで、本発明のフライ食品用衣材(以下、単に本発明の衣材ともいう)が製造される。本発明の衣材における該粗大粒子状澱粉の含有量は、該衣材の全質量中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、例えば、好ましくは5~100質量%、より好ましくは10~100質量%、さらに好ましくは20~100質量%、さらに好ましくは20~90質量%、さらに好ましくは30~80質量%である。本発明の衣材中における該粗大粒子状澱粉の量が少なすぎると、フライ食品の外観や衣の食感の向上効果が低減する。
【0018】
本発明の衣材は、当該粗大粒子状澱粉以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分の例としては、限定ではないが、小麦粉、米粉等の穀粉;該粗大粒子状澱粉以外の他の澱粉類;全卵粉、卵白粉等の卵粉;増粘剤;膨張剤;食塩、粉末醤油、発酵調味料、粉末味噌、アミノ酸等の調味料;香辛料;香料;ビタミン、ミネラル等の栄養成分;着色料;粉末油脂;塩類、などが挙げられる。これらの他の成分は、所望するフライ食品の特性に応じて、いずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の衣材における当該他の成分の総含有量は、該衣材の全質量中、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0019】
本発明の衣材は、当該粗大粒子状澱粉以外の他の澱粉類を含有していてもよい。すなわち、該粗大粒子状澱粉より小さい又は大きい粒度を有する澱粉又は加工澱粉を含有していてもよい。該加工澱粉の例としては、油脂加工、又はα化、エステル化、エーテル化、架橋、酸化、酸処理等もしくはそれらの組み合わせによる化工を施した澱粉が挙げられ、例えばα化澱粉、油脂加工澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉等が挙げられる。あるいは、当該他の澱粉類は、澱粉や加工澱粉を必要に応じてバインダー等を用いて公知の方法で造粒した造粒澱粉を含んでいてもよい。一方、本発明の衣材は、澱粉や加工澱粉を圧縮して得られる圧縮澱粉を含有しないか、又は含有する場合でも、含有量が2質量%未満である。本発明の衣材における当該他の澱粉類の含有量は、本発明の効果を過度に阻害しなければ任意であるが、例えば、該衣材の全質量中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。本発明の衣材における当該他の澱粉の含有量が多くなると、フライ食品の外観や衣の食感の向上効果が低減することがある。例えば、該衣材に含有される該粗大粒子状澱粉及び該他の澱粉を含む全澱粉類が目開き590μmの篩を通過する画分を多く含む場合、フライ食品の凹凸が少なくなり、一方、目開き3350μmの篩を通過しない画分を多く含む場合、具材への衣材の付着が悪くなり、フライ食品の凹凸が少なくなる。また、フライ食品の外観及び食感向上効果を維持するため、本発明の衣材に含まれる該粗大粒子状澱粉及び他の澱粉類を含む全澱粉類でのα化度は、30%以下、好ましくは24%以下、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは14%以下、なお好ましくは8%以下である。
【0020】
本発明の衣材を用いて製造されるフライ食品の種類は、特に限定されないが、例えば、から揚げ、竜田揚げ、フライドチキン、及びカツレツ等のパン粉付フライ食品、などが挙げられる。フライ食品の具材としては、特に限定されず、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギ等の肉類;魚介類;野菜類、などを使用することができる。好適には、本発明の衣材を適用する具材は、肉類又は魚介類である。具材には、本発明の衣材を適用する前に、下味をつけてもよい。具材に下味を付ける手法は、特に制限されず、公知の手法を利用することができる。例えば、調味料、ハーブ、スパイス、糖類、アミノ酸、増粘多糖類、酵素等を含む粉末又は液体に具材を漬け込めばよい。
【0021】
本発明の衣材を用いたフライ食品の製造においては、典型的には、本発明の衣材を具材に付着させる。該衣材が付着した具材を油ちょうすることで、フライ食品が製造される。本発明の衣材を具材に付着させる手法は特に限定されず、粉粒状の本発明の衣材(ブレダー)を具材に付着させても、又は本発明の衣材を含むバッター液を具材に付着させてもよい。製造するフライ食品の種類に応じて、本発明の衣材を具材に付着させる前に、本発明の衣材を含まない穀粉、澱粉、卵液、バッター液などを具材に付着させてもよい。パン粉付フライ食品を製造する場合は、卵液、バッター液を付着させた具材に対して、本発明の衣材とともにパン粉を付着させてもよい。一方、衣材中の該粗大粒子状澱粉の形状を保ち、かつフライ食品に凹凸のある外観を付与する観点からは、本発明の衣材は、好ましくは粉粒状の衣材(ブレダー)として使用され、そしてより好ましくは、該ブレダーを、そのまま(例えばバッター液に調製せずに、又は、具材上で卵液もしくはバッター液の層と接触させることなく)具材に付着させる。また、製造したフライ食品の該外観的特徴を保つ観点からは、本発明の衣材と同じ層又はその上層に他の衣材を付着させないことが好ましい。
【0022】
好ましくは、本発明の衣材を、具材の表面にまぶして付着させる。該「まぶす」ための手法としては、一般的なまぶす操作、例えば、具材をそのまま、又は水、調味液、卵液、バッター液等を付着させた後、1)具材の上方から衣材を振り掛ける操作、2)衣材及び具材を袋の中に投入し、該袋の開口部を閉じた状態で振盪する操作、3)皿等の比較的広い容器に衣材を敷詰め、衣材上で具材を転がす操作、などが挙げられる。一方、本発明の衣材を含むバッター液を具材に付着させる手法としては、バッター液への具材の浸漬、具材へのバッター液の噴霧などが挙げられる。
【0023】
衣材を付着させた具材の油ちょうは、常法に従って行うことができる。油ちょうの加熱温度(油温)、加熱時間等は、具材の種類や大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【実施例
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
試験例1
1)粗大粒子状タピオカ澱粉の調製
市販のタピオカ澱粉(平均粒子径20μm、α化度2%)100質量部に水300質量部を加え、澱粉スラリーを調製した。これを吸引ろ過にて脱水後、平板の上に広げ、65℃の恒温槽で乾燥し、シート状の澱粉を成形した。該シート状の澱粉をスクレイパーでかき取りながら粉砕し、次いで篩分けにより、目開き590μmの篩を通過せずかつ目開き3350μmの篩を通過する画分を回収した。同様の手順で、目開き250μm、590μm、710μm、850μm、2800μm、3350μm、4000μmの各篩を用いて、表1の粒度分布を有する粗大粒子状タピオカ澱粉を製造した。得られた粗大粒子状澱粉の一部を用いてα化度をBAP法により測定した。
【0026】
2)粗大粒子状小麦澱粉の調製
市販の薄力小麦粉(α化度2%)100質量部に水70質量部を加え、混練してドウを製造した。1時間ほどドウをねかせた後、1000mLの水中でドウをゆっくり練り、澱粉を洗い出した。目開き50μmの篩を通して溶液を回収し、澱粉スラリーを調製した。該澱粉スラリーを吸引ろ過で脱水し、平板上に広げ、65℃の恒温槽で乾燥した。これを、1)と同様に篩分けし、表2の粒度分布を有する粗大粒子状小麦澱粉を製造した。得られた粗大粒子状澱粉の一部を用いてα化度をBAP法により測定した。
【0027】
3)衣材の調製
1)及び2)で調製した粗大粒子状澱粉それぞれ50質量%、市販の小麦粉(薄力粉)48質量%、及び膨張剤2質量%を混合して、表1、2に示す組成のフライ食品用衣材を調製した。比較のため、粗大粒子状澱粉に代えて市販のタピオカ澱粉(平均粒子径20μm、α化度2%)、又は市販の小麦澱粉(平均粒子径22μm、α化度3%)を用いて同様に衣材を準備した。参考例として、薄力粉98質量部と膨張剤2質量部の混合粉を衣材として準備した。
【0028】
4)フライ食品の製造
鶏もも肉を1個25gとなるよう切り分け、下味を付けて具材とした。この具材に3)で調製した衣材を5gずつ振り掛けて全体に付着させた。衣材が付着した具材を175℃に熱したサラダ油で4分間油ちょうして鶏から揚げを製造した。製造したフライ食品は、粗熱を取った後、外観及び衣の食感について評価した。評価では、10名の専門パネラーが下記評価基準に従ってフライ食品の外観及び衣の食感をそれぞれスコア化し、10名のパネラーの平均点を求めた。評価結果を表1、2に示す。
【0029】
評価基準
(外観)
5:衣の表面全体が大小の凹凸で覆われており、かつ艶が全くなく油っぽさを感じさせない外観を有する。極めて良好。
4:衣の表面が大小の凹凸でほぼ覆われており、かつ艶がなく油っぽさを感じさせない外観を有する。良好。
3:衣表面の半分程度に大小の凹凸があり、かつ艶が少なく油っぽさを感じにくい外観。
2:衣の表面にざらつきはあるが凹凸は少なく、かつやや艶があってやや油っぽさを感じさせる外観を有する。不良。
1:衣の表面にざらつきはあるが凹凸はほとんどなく、かつ艶があって油っぽさを感じさせる外観を有する。極めて不良。
(衣の食感)
5:非常に軽くてサクミがある、かつ咀嚼中に溶けるようになくなり、極めて良好。
4:サクミがあり、かつ咀嚼中に溶けるようになくなり、良好。
3:ややサクミがあり、かつ咀嚼中に溶けるようになくなる感じがある。
2:サクミがあまりなく、かつ咀嚼中に溶けるような感じもなく、不良。
1:サクミがなく、かつ咀嚼中いつまでも残る感じがあり、極めて不良。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
試験例2
試験例1の1)と同様の手順で澱粉スラリーを調製した。調製した澱粉スラリーを70℃~98℃で2~30分間加熱した後、吸引ろ過で乾燥し、次いで試験例1の1)と同様の手順で粉砕及び篩分けを行い、表3に示すα化度を有する粗大粒子状タピオカ澱粉を調製した。この粗大粒子状澱粉を用いて、試験例1の3)及び4)と同様の手順で衣材を調製し、次いで鶏から揚げを製造し、評価した。評価結果を、製造例1の結果とともに表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
試験例3
試験例1の3)と同様の手順で、ただし粗大粒子状タピオカ澱粉と小麦粉の配合比を表4のとおり変更して衣材を調製した。該衣材を用いて試験例1の4)と同様の手順で鶏から揚げを製造し、評価した。評価結果を、製造例1の結果とともに表4に示す。
【0035】
【表4】