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特許7518884硬化性組成物、該硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜、該硬化膜を含むカラーフィルタ、および該カラーフィルタを含むディスプレイ装置
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  • 特許-硬化性組成物、該硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜、該硬化膜を含むカラーフィルタ、および該カラーフィルタを含むディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】硬化性組成物、該硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜、該硬化膜を含むカラーフィルタ、および該カラーフィルタを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240710BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20240710BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G02B5/20
C08F20/20
C08F2/44 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022169639
(22)【出願日】2022-10-24
(65)【公開番号】P2023145318
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0038275
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘 基
(72)【発明者】
【氏名】姜 龍 熙
(72)【発明者】
【氏名】姜 京 喜
(72)【発明者】
【氏名】林 知 ▲げん▼
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲げん▼ 淑
(72)【発明者】
【氏名】李 範 珍
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/241873(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/241874(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0021666(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
C08F 20/20
C08F 2/44
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)表面改質物質で表面改質された量子ドット;および
(B)重合性化合物
を含み、
前記表面改質物質は、下記の化学式1で表される第1表面改質物質、および前記第1表面改質物質と異なる構造を有する第2表面改質物質を含む、硬化性組成物であって、
前記第2表面改質物質は、下記の化学式2で表される化合物であり、
前記第1表面改質物質の含有量は、前記第2表面改質物質の含有量と同じであるか、より少ない含有量である、硬化性組成物:
【化1】

前記化学式1中、
およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
は、下記の化学式R-1で表される基であり、
【化2】

前記化学式R-1中、
Xは、CR(Rは水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である)またはNであり、
およびLは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
n1は、0~20の整数であり、
*は、連結地点である
【化3】

前記化学式2中、
およびL は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n2は、0~20の整数である。
【請求項2】
前記第1表面改質物質および前記第2表面改質物質は、1:9~5:5の質量比で含まれる、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記第1表面改質物質は、下記の化学式1-1または化学式1-2で表される化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物:
【化4】

【化5】

前記化学式1-1および化学式1-2中、
、L、L、およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n1は、それぞれ独立して、0~20の整数である。
【請求項4】
前記第1表面改質物質は、下記の化学式1Aまたは化学式1Bで表される化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化6】

【化7】
【請求項5】
前記第2表面改質物質は、下記の化学式2Aまたは化学式2Bで表される化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化8】

【化9】
【請求項6】
前記硬化性組成物は、無溶媒の硬化性組成物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記無溶媒の硬化性組成物は、前記無溶媒の硬化性組成物の総質量に対して、
前記量子ドット 5質量%~60質量%;および
前記重合性化合物 40質量%~95質量%
を含む、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
重合開始剤、光拡散剤、重合禁止剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記光拡散剤は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ジルコニア、またはこれらの組み合わせを含む、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記硬化性組成物は、前記硬化性組成物の総質量を基準として、
前記量子ドット 1質量%~40質量%;
前記重合性化合物 1質量%~20質量%;および
前記溶媒 40質量%~80質量%を含む、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化膜を含むカラーフィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載のカラーフィルタを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、該硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜、該硬化膜を含むカラーフィルタ、および該カラーフィルタを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な量子ドットの場合、疎水性を有する表面特性により分散する溶媒が制限的であり、そのため、バインダーや硬化性モノマーなどのような極性システムへの導入に多くの困難を経験しているのが事実である。
【0003】
一例として、活発に研究されている量子ドットインク組成物の場合にも、その初期段階では、相対的に極性が低く疎水性が高い硬化性組成物に使用される溶媒に分散する水準であった。このため、組成物の総質量に対して20質量%以上の量子ドットを含ませることが困難であり、インクの光効率を一定水準以上に増加させることができない。光効率を増加させるために、無理やり量子ドットを追加投入して分散させても、インクジェットが可能な粘度の範囲を超えてしまい、工程性を満足させることができなかった。
【0004】
また、インクジェットが可能な粘度の範囲を実現するために、組成物の総質量に対して50質量%以上の溶媒を含ませてインクの固形分含有量を低下させる方法が採用されてきた。この方法も、粘度の面ではある程度満足できる結果が提供されるものの、インクジェット時の溶媒の揮発によるノズル乾燥、ノズル詰まり現象、インクジェット後の経時による単膜の厚さの減少などの問題とともに、硬化後の厚さの偏差が激しくなり、実際の工程に適用しにくいというデメリットを有する。
【0005】
したがって、量子ドットを含むインクは、溶媒を含まない無溶媒タイプが実際の工程への適用に最も好ましい形態であり、現在の量子ドット自体を、溶媒を含む組成物に適用する技術は、もはやある程度限界に達したと評価されている。
【0006】
無溶媒の硬化性組成物(量子ドットインク組成物)の場合、重合性化合物が過剰含まれる特性であるがゆえ、揮発性によるノズル乾燥に伴う詰まりおよび吐出不良、パターンの隔壁ピクセル内に吐出されたインク組成物の揮発による単膜の厚さの減少などが問題になる。したがって、無溶媒の硬化性組成物の粘度を最大限に低下させるのがよい。そこで、重合性単量体の分子量を増加させたり、ヒドロキシ基を含む化学構造を導入したりするなど、重合性化合物の構造を変えて無溶媒の硬化性組成物の粘度を低下させようとする努力があった。しかし、未だに、所望する水準の低い粘度を有する無溶媒の硬化性組成物は開発されておらず、これによってインクジェット性に劣る硬化性組成物を提供するほかないというのが、現在までの問題の1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2017-0028306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐光性に優れた硬化性組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、上記硬化膜を含むカラーフィルタを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、上記カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(A)表面改質物質で表面改質された量子ドット;および(B)重合性化合物を含み、前記表面改質物質は、下記の化学式1で表される第1表面改質物質、および前記第1表面改質物質と異なる構造を有する第2表面改質物質を含む、硬化性組成物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
上記化学式1中、
およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
は、下記の化学式R-1で表される基であり、
【0015】
【化2】
【0016】
上記化学式R-1中、
Xは、CR(Rは水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である)またはNであり、
およびLは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
n1は、0~20の整数である。
【0017】
上記量子ドットの表面改質物質の総質量に対して、上記第1表面改質物質は、上記第2表面改質物質の含有量と同じ量であるか、より少ない含有量で含まれることが好ましい。
【0018】
上記量子ドットの表面改質物質の総質量に対して、前記第1表面改質物質および第2表面改質物質は、1:9~5:5の質量比で含まれる。
【0019】
上記第1表面改質物質は、下記の化学式1-1または化学式1-2で表される化合物であり得る。
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
上記化学式1-1および化学式1-2中、
、L、LおよびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n1は、それぞれ独立して、0~20の整数である。
【0023】
上記第2表面改質物質は、下記の化学式2で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
【化5】
【0025】
上記化学式2中、
およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n2は、0~20の整数である。
【0026】
上記第1表面改質物質は、下記の化学式1Aまたは化学式1Bで表される化合物であることが好ましい。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
上記第2表面改質物質は、下記の化学式2Aまたは化学式2Bで表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
上記硬化性組成物は、無溶媒の硬化性組成物であってもよい。
【0033】
上記無溶媒の硬化性組成物は、無溶媒の硬化性組成物の総質量に対して、量子ドット5質量%~60質量%;および重合性化合物40質量%~95質量%を含むことができる。
【0034】
上記硬化性組成物は、重合開始剤、光拡散剤、重合禁止剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0035】
上記光拡散剤は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ジルコニア、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0036】
上記硬化性組成物は、溶媒をさらに含むことができる。
【0037】
上記硬化性組成物は、上記硬化性組成物の全質量を基準として、量子ドット 1質量%~40質量%;重合性化合物 1質量%~20質量%;および溶媒 40質量%~80質量%を含むことができる。
【0038】
上記硬化性組成物は、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シランカップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0039】
本発明の他の実施形態は、上記硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜を提供する。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態は、上記硬化膜を含むカラーフィルタを提供する。
【0041】
本発明のさらに他の実施形態は、上記カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【0042】
その他、本発明の側面の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、耐光性に優れた硬化性組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例1、比較例1、および比較例2による硬化性組成物から製造された単膜の青色光の露光時間に伴う耐光性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0046】
本明細書において、特別な言及がない限り、「アルキル基」とは、炭素数1~20のアルキル基を意味し、「アルケニル基」とは、炭素数2~20のアルケニル基を意味し、「シクロアルケニル基」とは、炭素数3~20のシクロアルケニル基を意味し、「ヘテロシクロアルケニル基」とは、炭素数3~20のヘテロシクロアルケニル基を意味し、「アリール基」とは、炭素数6~20のアリール基を意味し、「アリールアルキル基」とは、炭素数7~20のアリールアルキル基を意味し、「アルキレン基」とは、炭素数1~20のアルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、炭素数6~20のアリーレン基を意味し、「アルキルアリーレン基」とは、炭素数7~20のアルキルアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」とは、炭素数3~20のヘテロアリーレン基を意味し、「アルコキシレン基」とは、炭素数1~20のアルコキシレン基(オキシアルキレン基)を意味する。
【0047】
本明細書において、特別な言及がない限り、「置換」とは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基もしくはその塩の基、スルホン酸基もしくはその塩の基、リン酸基もしくはその塩の基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキニル基、炭素数3~20のヘテロアリール基、またはこれらの組み合わせの置換基で置換されていることを意味する。
【0048】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、化学式中にN(窒素原子)、O(酸素原子)、S(硫黄原子)、およびPのうちの少なくとも1つのヘテロ原子が少なくとも1つ含まれていることを意味する。
【0049】
さらに、本明細書において、特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方とも可能であることを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方とも可能であることを意味する。
【0050】
本明細書において、特別な言及がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。
【0051】
本明細書内の化学式で別途の定義がない限り、化学結合が描かれるべき位置に化学結合が描かれていない場合は、その位置に水素原子が結合していることを意味する。
【0052】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「*」は、同一または異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0053】
本発明による硬化性組成物は、2種以上の表面改質物質を用いて量子ドットを表面改質し、量子ドットの表面改質物質の構造と、2種以上の表面改質物質の質量比を特定することによって、硬化性組成物の粘度を低く維持しつつ、既存の量子ドットを含有する硬化性組成物に比べて高い耐光性を達成することができる。
【0054】
一般に、量子ドットを含有する硬化性組成物の分散性向上のために、表面改質物質の長さを調節し、量子ドットを含有する硬化性組成物の耐熱性向上のために、チオール系添加剤や高分子バインダーなどを追加的に使用し、量子ドットを含有する硬化性組成物の硬化率向上のために高感度開始剤や多官能モノマーなどを追加的に使用していた。しかし、このような従来技術は、いずれも特定の構成を取捨選択することによって、量子ドットを含有する硬化性組成物の分散性、耐熱性および硬化率のいずれかの特性を改善させることはできたものの、取捨選択された構成によって、改善された特性以外の他の特性に劣る問題があった。つまり、今のところ、量子ドットを含有する硬化性組成物の特性に関連して、低い粘度を維持しつつ、高い耐光性を実現できる量子ドットを含有する硬化性組成物についての技術は知られていない。
【0055】
具体的には、量子ドットディスプレイ(QD display)関連のアプリケーションにおいて、量子ドットが有するべき主な物性は様々であるが、なかでも製品の面で最も重要な物性は、ディスプレイ上での量子ドットの高い輝度とその輝度を維持する信頼性であると考えられる。輝度の面では量子ドット粒子自体の特性がそのまま発現する可能性が高いが、特に信頼性の部分ではまだ乗り越えるべきハードルが多いのが事実である。
【0056】
信頼性は大きく耐熱性/耐光性に分けられるが、過去の多くの研究において、多様なアプローチ方法により、これらを改善するための研究者らの努力があった。
【0057】
例えば、これまで知られた技術は、量子ドットの表面を、耐熱性官能基が含まれている高分子やシロキサン(or TEOSなど)系有機材料などで覆う方法や、アルミニウム、チタンまたはその酸化物で量子ドットの表面を無機カプセル化するなどの方法がある。また、最近は、量子ドットの合成段階で、遷移金属(Cu、Mgなど)成分を少量ドーピングすることによって、輝度と耐久性とを同時に高めようとする試みもあった。
【0058】
しかし、以上の方法は、いずれも学術研究レベルに留まっており、実際的なディスプレイのアプリケーションにはまだ適用が難しい状況である。
【0059】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねて、(A)表面改質物質で表面改質された量子ドット;および(B)重合性化合物を含み、上記表面改質物質は、下記の化学式1で表される第1表面改質物質、および上記第1表面改質物質と異なる構造を有する第2表面改質物質を含む硬化性組成物を完成させるに至った。
【0060】
【化10】
【0061】
上記化学式1中、
およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
は、下記の化学式R-1で表される基であり、
【0062】
【化11】
【0063】
上記化学式R-1中、
Xは、CR(Rは水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である)またはNであり、
およびLは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
n1は、0~20の整数であり、
*は、連結地点である。
【0064】
それぞれ異なる特性を有する表面改質物質を、1つの量子ドットの表面に適切で効率的な比率(質量比)で共存させることは決して容易ではなく、これを達成するために、数年間の研究実験データを蓄積して、構造変更および効果的な質量比に関する研究を重ねて実施しており、結局、数年間にわたる努力の結実として本発明を完成させることができた。
【0065】
以下、本発明による硬化性組成物を構成するそれぞれの成分について具体的に説明する。
【0066】
(量子ドット)
量子ドットの表面を有機物リガンドで表面改質可能な、現存する最も効率的なリガンド構造は、すでによく知られているように、チオール基を有しているリガンドである。カルボン酸型リガンドは、量子ドットの表面との相互作用が相対的に弱い方であり、リン酸型リガンドは、量子ドットの分散性は良いものの、効率を低下させるという欠点(色変現象の誘発)を有している。
【0067】
過去のLCDに始まって、OLED、NED、そして最近のマイクロLEDに至るまで、現在のディスプレイ技術が開発されてきたが、ますます青色光の強度が増加しているので、これによって量子ドットもその耐久性が現在の水準に比べてはるかに改善される必要がある。
【0068】
そこで、本発明は、量子ドット表面の効果的な表面改質のために、チオール構造を有する二座配位子、具体的には、第1表面改質物質を、異なる構造の第2表面改質物質とともに適用して、最終的に得られる量子ドットを含有する硬化性組成物が、単膜状態でディスプレイパネルに搭載された際、強い青色光に長時間露出した時にも初期の光効率を維持する、耐光特性の良い量子ドットおよびこれを含む硬化性組成物に関する。
【0069】
本発明による硬化性組成物中の量子ドットは、上記化学式1で表される第1表面改質物質、および上記第1表面改質物質と異なる構造を有する第2表面改質物質を含む表面改質物質で表面改質されている。
【0070】
上記第1表面改質物質および第2表面改質物質で同時に表面改質された量子ドットの場合、高濃度あるいは高濃縮量子ドット分散液の製造が非常に容易になり(後述する重合性単量体に対する量子ドットの分散性向上)、低い粘度および耐光性の改善に大きな影響を与えることができ、特に無溶媒の硬化性組成物の実現に有利であり得る。さらに、上記第1表面改質物質および第2表面改質物質の混合質量比を制御することによって、耐光性をさらに向上させることができる。
【0071】
例えば、量子ドットの表面改質物質の総質量に対して、上記第1表面改質物質の含有量は、第2表面改質物質の含有量と同じであるか、より少ない含有量であることが好ましい。
【0072】
例えば、上記第1表面改質物質と上記第2表面改質物質とは、1:9~5:5の質量比、例えば、1:9~3:7の質量比、例えば、1:9~2:8の質量比で含まれる。上記第1表面改質物質および上記第2表面改質物質がこのような質量比を有する場合、本発明による硬化性組成物の低い粘度、例えば、30mPa・s以下、例えば、29mPa・s以下の低い粘度を維持しつつ、高い耐光性を有することができる。
【0073】
例えば、上記第1表面改質物質は、下記の化学式1-1または化学式1-2で表される化合物であり得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
上記化学式1-1および化学式1-2中、
、L、L、およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n1は、それぞれ独立して、0~20の整数である。
【0077】
例えば、上記第2表面改質物質は、下記の化学式2で表される化合物であり得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
【化14】
【0079】
上記化学式2中、
およびLは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
n2は、0~20の整数である。
【0080】
例えば、上記化学式2で表される第2表面改質物質は、チオール基を1つのみ有することができる。
【0081】
例えば、上記第1表面改質物質は、下記の化学式1Aまたは化学式1Bで表される化合物であり得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
例えば、上記第2表面改質物質は、下記の化学式2Aまたは化学式2Bで表される化合物であり得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化17】
【0086】
【化18】
【0087】
上記第1表面改質物質および第2表面改質物質で表面改質された量子ドットを、後述する重合性化合物に投入して撹拌すると、非常に透明な分散液を得ることができ、これは量子ドットの表面改質が非常に良くなされたことを確認する尺度となる。
【0088】
なお、上記表面改質物質は、従来公知の合成方法を適宜参照して合成することができる。より具体的には、実施例に記載の合成方法を参照しながら、当業者であれば容易に合成することができる。
【0089】
例えば、量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長を有することができる。
【0090】
例えば、本発明による硬化性組成物が無溶媒の硬化性組成物の場合、量子ドットは、5質量%~60質量%、例えば、10質量%~60質量%、例えば、20質量%~60質量%、例えば、30質量%~50質量%の含有量で含まれ得る。量子ドットの含有量が上記範囲内である場合、硬化後にも高い光維持率および光効率を達成することができる。
【0091】
例えば、本発明による硬化性組成物が溶媒を含む硬化性組成物の場合、量子ドットは、硬化性組成物の総質量に対して1質量%~40質量%、例えば、3質量%~30質量%の含有量で含まれ得る。量子ドットの含有量が上記範囲内である場合、光変換率に優れ、パターン特性と現像特性とを阻害せず、優れた工程性を有することができる。
【0092】
現在までの量子ドットを含有する硬化性組成物(インク)は、量子ドットとの相溶性が良いチオール系バインダーまたはモノマーを特化させる方に開発がなされており、さらに製品化までなされている。
【0093】
例えば、量子ドットは、360nm~780nmの波長領域、例えば、400nm~780nmの波長領域の光を吸収して、500nm~700nmの波長領域、例えば、500nm~580nmの波長領域で蛍光を放出するか、600nm~680nmの波長領域で蛍光を放出することができる。つまり、量子ドットは、500nm~680nmの波長領域で最大蛍光発光波長(fluorescence λem)を有することができる。
【0094】
量子ドットの発光スペクトルは、それぞれ独立して、20nm~100nm、例えば、20nm~50nmの半値幅(Full width at half maximum;FWHM)を有することができる。量子ドットが上記範囲の半値幅を有する場合、色純度が高いことによって、カラーフィルタ内の色材として使用する際、色再現率が高くなる効果がある。
【0095】
量子ドットは、それぞれ独立して、有機物であるか、無機物、または有機物と無機物とのハイブリッド(混成物)であってもよい。
【0096】
量子ドットは、それぞれ独立して、コアと、コアを囲むシェルとから構成され得る。コアおよびシェルは、それぞれ独立して、II-IV族、III-V族などからなるコア、コア/シェル、コア/第1シェル/第2シェル、合金、合金/シェルなどの構造を有することができ、これらに限定されるものではない。
【0097】
例えば、コアは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAs、およびこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含むことができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。コアを囲むシェルは、CdSe、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdTe、PbS、TiO、SrSe、HgSe、およびこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含むことができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0098】
最近、全世界的に環境への関心が大きく増加し、有毒性物質に対する規制が強化されているので、カドミウム系コアを有する発光物質の代わりに、量子効率(quantum yield)はやや低いものの、環境にやさしい非カドミウム系発光物質(InP/ZnS、InP/ZeSe/ZnSなど)を使用することができる。しかし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0099】
コア/シェル構造の量子ドットの場合、シェルを含む全体の量子ドットの大きさ(平均粒径)は、1nm~15nm、例えば、5nm~15nmであってもよい。
【0100】
例えば、量子ドットはそれぞれ独立して、赤色量子ドット、緑色量子ドット、またはこれらの組み合わせを含むことができる。赤色量子ドットは、それぞれ独立して、10nm~15nmの平均粒径を有することができる。緑色量子ドットは、それぞれ独立して、5nm~8nmの平均粒径を有することができる。
【0101】
一方、量子ドットの分散安定性のために、本発明による硬化性組成物は、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤は、量子ドットのような光変換物質が硬化性組成物中で均一に分散するように補助するが、非イオン性、陰イオン性または陽イオン性の分散剤をすべて使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールまたはそのエステル類、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。分散剤の含有量は、量子ドットのような光変換物質の固形分に対して、0.1質量%~100質量%、例えば、10質量%~20質量%の含有量で使用することができる。
【0102】
(重合性化合物)
本発明による硬化性組成物は、重合性化合物を含み、該重合性化合物は、末端に炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0103】
末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物は、無溶媒の硬化性組成物の場合、組成物の総質量に対して40質量%~95質量%、例えば、50質量%~90質量%含まれ得る。末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物の含有量が上記範囲内である場合、インクジェットが可能な粘度を有する無溶媒の硬化性組成物の製造が可能であり、また、製造された無溶媒の硬化性組成物中で量子ドットが優れた分散性を有することが可能となり、光特性も向上させることができる。
【0104】
例えば、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物は、170g/mol~1,000g/molの分子量を有することができる。末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物の分子量が上記範囲内である場合、量子ドットの光特性を阻害することなく、組成物の粘度が高くなることも抑制できるので、インクジェットに有利であり得る。
【0105】
例えば、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物は、下記の化学式6で表される化合物であり得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
【化19】
【0107】
上記化学式6中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、またはエーテル基(*-O-*)である。
【0108】
例えば、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物は、下記の化学式6-1または6-2で表される化合物であり得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0109】
【化20】
【0110】
【化21】
【0111】
例えば、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物は、上記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物以外にも、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ノボラックエポキシアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0112】
また、末端に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物とともに、従来の熱硬化性または光硬化性組成物に一般に使用される単量体をさらに含むことができる。例えば、当該単量体は、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどのオキセタン系化合物などをさらに含むことができる。
【0113】
さらに、硬化性組成物が溶媒を含む場合、重合性化合物は、硬化性組成物の総質量に対して1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、例えば、5質量%~15質量%の含有量で含まれ得る。重合性化合物の含有量が上記範囲内である場合、量子ドットの光特性の向上を図ることができる。
【0114】
(光拡散剤)
本発明による硬化性組成物は、光拡散剤をさらに含むことができる。
【0115】
例えば、光拡散剤は、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、ジルコニア(ZrO)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0116】
光拡散剤は、前述した量子ドットに吸収されない光を反射させ、反射した光を量子ドットが再び吸収できるようにする。つまり、光拡散剤は、量子ドットに吸収される光の量を増加させて、硬化性組成物の光変換効率を増加させることができる。
【0117】
光拡散剤は、平均粒径(D50)が150nm~250nmであってもよいし、具体的には180nm~230nmであってもよい。光拡散剤の平均粒径が上記範囲内である場合、より優れた光拡散効果を有することができ、光変換効率を増加させることができる。
【0118】
光拡散剤は、硬化性組成物の総質量に対して1質量%~20質量%、例えば、2質量%~15質量%、例えば、3質量%~10質量%の含有量で含まれ得る。光拡散剤の含有量が硬化性組成物の総質量に対して1質量%未満である場合、光拡散剤を使用することによる光変換効率の向上効果を期待しにくく、20質量%を超えて含む場合には、量子ドット沈降の問題が発生する恐れがある。
【0119】
(重合開始剤)
本発明による硬化性組成物は、重合開始剤をさらに含むことができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0120】
光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に一般に使用される開始剤を使用することができ、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、アミノケトン系化合物などを使用することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0121】
アセトフェノン系化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0122】
ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0123】
チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0124】
ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0125】
トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0126】
前記オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。O-アシルオキシム系化合物の具体例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテートおよび1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0127】
アミノケトン系化合物の例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-Benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)などが挙げられる。
【0128】
光重合開始剤としては、上記の化合物以外にも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物などを使用することができる。
【0129】
光重合開始剤は、光を吸収して励起した状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増感剤とともに使用されてもよい。
【0130】
光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0131】
熱重合開始剤の例としては、パーオキサイド、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ヒドロパーオキサイド(例えば、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、t-ブチルパーベンゾエート、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオニトリルなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業界にて広く知られたものであればいずれも使用可能である。
【0132】
重合開始剤は、硬化性組成物の総質量に対して0.1質量%~5質量%、例えば、1質量%~4質量%の含有量で含まれ得る。重合開始剤の含有量が上記範囲内である場合、露光または熱硬化の際に硬化が十分に起こって、優れた信頼性を得ることができ、未反応の開始剤による透過率の低下を防止して、量子ドットの光特性の低下を防止することができる。
【0133】
(バインダー樹脂)
本発明による硬化性組成物は、バインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0134】
バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、カルド系樹脂、エポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0135】
アクリル系樹脂は、第1エチレン性不飽和単量体およびこれと共重合可能な第2エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、1つ以上のアクリル系繰り返し単位を含む樹脂であってもよい。
【0136】
アクリル系バインダー樹脂の具体例としては、ポリベンジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを単独または2種以上配合して使用してもよい。
【0137】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、5,000g/mol~15,000g/molであってもよい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内である場合、基板との密着性に優れ、物理的、化学的物性が良く、粘度が適切である。
【0138】
アクリル系樹脂の酸価は、80mgKOH/g~130mgKOH/gであってもよい。アクリル系樹脂の酸価が上記範囲内である場合、ピクセルパターンの解像度に優れている。
【0139】
カルド系樹脂は、通常の硬化性樹脂(または感光性樹脂)組成物に使用されるものを使用することができ、例えば、韓国公開特許第10-2018-0067243号公報で例示されたものを使用することができるが、これに限定されない。
【0140】
カルド系樹脂は、例えば、9,9-ビス(4-オキシラニルメトキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン含有化合物;ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などの酸無水物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール化合物;プロピレングリコールメチルエチルアセテート、N-メチルピロリドンなどの化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;およびテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどのアミンまたはアンモニウム塩化合物のうちの2種以上を混合して製造することができる。
【0141】
カルド系樹脂の重量平均分子量は、500g/mol~50,000g/mol、例えば、1,000g/mol~30,000g/molであってもよい。カルド系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内である場合、硬化膜の製造の際、残渣が発生せずパターン形成性が良くなり、溶媒を含む硬化性組成物の現像の際、膜厚の損失がなく、良好なパターンを得ることができる。
【0142】
バインダー樹脂がカルド系樹脂の場合、これを含む硬化性組成物、特に感光性樹脂組成物の現像性に優れ、光硬化の際に感度が良く、微細パターンの形成性に優れている。
【0143】
エポキシ樹脂は、熱によって重合可能なモノマー(monomer)またはオリゴマー(oligomer)として、炭素-炭素不飽和結合および炭素-炭素環状結合を有する化合物などを含むことができる。
【0144】
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂および脂肪族ポリグリシジルエーテルなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0145】
このような化合物の市販品として、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)YX4000、YX4000H、YL6121H、YL6640、YL6677;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN-102、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1027、および三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)180S75;ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010および828;ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)807および834;フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)152、154、157H65、および日本化薬株式会社製のEPPN201、202;その他の環状脂肪族エポキシ樹脂としては、CIBA-GEIGY A.G社製のCY175、CY177およびCY179、U.C.C社製のERL-4234、ERL-4299、ERL-4221およびERL-4206、昭和電工株式会社製のショーダイン509、CIBA-GEIGY A.G社製のアラルダイト(登録商標)CY-182、CY-192およびCY-184、DIC株式会社製のエピクロン(登録商標)200および400、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)871、872およびEP1032H60、セラニーズ社製のED-5661およびED-5662;脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)190Pおよび191P、共栄社化学株式会社製のエポライト100MF、日油株式会社製のエピオール(登録商標)TMPなどが挙げられる。
【0146】
例えば、本発明による硬化性組成物が無溶媒の硬化性組成物の場合、バインダー樹脂は、硬化性組成物の総質量に対して0.5質量%~10質量%、例えば、1質量%~5質量%の含有量で含まれ得る。この場合、無溶媒の硬化性組成物の耐熱性および耐薬品性を向上させることができ、組成物の保存安定性も改善することができる。
【0147】
例えば、本発明による硬化性組成物が溶媒を含む硬化性組成物の場合、バインダー樹脂は、硬化性組成物の総質量に対して1質量%~30質量%、例えば、3質量%~20質量%の含有量で含まれ得る。この場合、パターン特性、耐熱性、および耐薬品性を向上させることができる。
【0148】
(その他の添加剤)
量子ドットの安定性および分散性向上のために、本発明による硬化性組成物は、重合禁止剤をさらに含むことができる。
【0149】
重合禁止剤は、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。一実施形態による硬化性組成物が前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含むことによって、硬化性組成物を印刷(コーティング)後、露光する間に常温架橋を防止することができる。
【0150】
例えば、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、ピロガロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-ナフトール、トリス(N-ヒドロキシ-N-ニトロソフェニルアミナト-O,O’)アルミニウム(Tris(N-hydroxy-N-nitrosophenylaminato-O,O’)aluminium)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0151】
ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせは、分散液の形態で使用可能であり、分散液形態の重合禁止剤は、硬化性組成物の総質量に対して0.001質量%~3質量%、例えば、0.01質量%~2質量%の含有量で含まれる。重合禁止剤の含有量が上記範囲内である場合、常温での経時変化の問題を解決すると同時に、感度低下および表面剥離現象を防止することができる。
【0152】
また、本発明による硬化性組成物は、耐熱性および信頼性向上のために、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シランカップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0153】
例えば、本発明による硬化性組成物は、基板との密着性などを改善するために、ビニル基、カルボキシル基、メタクロイリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0154】
シランカップリング剤の例としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0155】
シラン系カップリング剤は、硬化性組成物100質量部に対して0.01質量部~10質量部の含有量で含まれ得る。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内である場合、密着性、保存性などに優れている。
【0156】
また、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、コーティング性の向上および欠陥発生防止効果のために、つまり、レベリング(leveling)性能を改善させるために、界面活性剤、例えば、フッ素系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0157】
フッ素系界面活性剤は、4,000g/mol~10,000g/molの重量平均分子量を有することができ、具体的には、6,000g/mol~10,000g/molの重量平均分子量を有することができる。また、フッ素系界面活性剤は、表面張力が18mN/m~23mN/m(0.1質量% プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液で測定)であってもよい。フッ素系界面活性剤の重量平均分子量および表面張力が上記範囲内である場合、レベリング性能をさらに改善することができ、高速コーティング時にシミの発生を防止することができる。よって、気泡の発生が少なく膜欠陥が少ないため、高速コーティング法であるスリットコーティングに優れた特性を付与する。
【0158】
フッ素系界面活性剤としては、BM Chemie社製のBM-1000、BM-1100など;DIC株式会社製のメガファック(登録商標)F142D、同F172、同F173、同F183など;3M社製のフロラードFC-135、同FC-170C、同FC-430、同FC-431など;AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)S-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145など;東レ株式会社製のSH-28PA、同-190、同-193、SZ-6032、SF-8428など;DIC株式会社製のF-482、F-484、F-478、F-554などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0159】
また、本発明による硬化性組成物は、上述のフッ素系界面活性剤とともに、シリコーン系界面活性剤を使用してもよい。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTSF400、TSF401、TSF410、TSF4440などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
フッ素系界面活性剤などを含む界面活性剤は、硬化性組成物100質量部に対して0.01質量部~5質量部、例えば、0.1質量部~2質量部の含有量で含まれ得る。界面活性剤の含有量が上記範囲内である場合、噴射された組成物中に異物が発生する現象が減少する。
【0161】
また、本発明による硬化性組成物は、物性を阻害しない範囲内で、酸化防止剤などのその他の添加剤が一定量さらに添加されてもよい。
【0162】
(溶媒)
一方、本発明による硬化性組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0163】
溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;メチルラクテート、エチルラクテートなどの乳酸アルキルエステル類;メチルヒドロキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、ブチルヒドロキシアセテートなどのヒドロキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシメチルアセテート、メトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシメチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどの酢酸アルコキシアルキルエステル類;メチル3-ヒドロキシプロピオネート、エチル3-ヒドロキシプロピオネートなどの3-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネートなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、プロピル2-ヒドロキシプロピオネートなどの2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-エトキシプロピオネート、メチル2-エトキシプロピオネートなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-エトキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチルプロピオネート、2-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピオネート、ヒドロキシエチルアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエートなどのエステル類;またはピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類の化合物が挙げられる。また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
例えば、溶媒は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;エタノールなどのアルコール類、またはこれらの組み合わせを使用することが好ましい。
【0165】
例えば、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-ブトキシエタノール、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、またはこれらの組み合わせを含む極性溶媒であってもよい。
【0166】
溶媒は、硬化性組成物の総質量に対して40質量%~80質量%、例えば、45質量%~80質量%の含有量で含まれ得る。溶媒の含有量が上記範囲内である場合、硬化性組成物が適切な粘度を有することによって、スピンコーティングおよび/またはスリットコーティングを用いた大面積コーティングの際に、優れたコーティング性を有することができる。
【0167】
本発明の他の実施形態は、上記硬化性組成物の硬化物を含む硬化膜、該硬化膜を含むカラーフィルタ、および該カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【0168】
硬化膜の製造方法の一実施形態によれば、硬化性組成物を基板上にインクジェット法で塗布してパターンを形成する段階(S1);およびパターンを硬化する段階(S2)を含む。
【0169】
(S1)パターンを形成する段階
硬化性組成物は、インクジェット法を用いて、0.5~20μmの厚さで基板上に塗布することが好ましい。インクジェット法は、各ノズルあたり単一のカラーのみを噴射して、必要な色の数に応じて繰り返し噴射することによってパターンを形成することができ、工程を低減するために、必要な色の数を、各インクジェットノズルを通して同時に噴射する方式でパターンを形成することもできる。
【0170】
(S2)パターンを硬化する段階
上記で得られたパターンを硬化させて画素を得ることができる。この際、硬化させる方法としては、熱硬化の工程または光硬化の工程をすべて適用することができる。熱硬化工程においては、100℃以上の温度に加熱して硬化させることが好ましく、より好ましくは100℃~300℃に加熱して硬化させることができ、さらに好ましくは160℃~250℃に加熱して硬化させることができる。光硬化工程においては、波長190nm~450nm、例えば、波長200nm~500nmのUV光などの活性線を照射する。照射に用いられる光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを用いることができ、場合によっては、X線、電子線なども用いることができる。
【0171】
硬化膜の製造方法の他の実施形態は、硬化性組成物を用いて、リソグラフィ法を利用して硬化膜を製造するもので、製造方法は次の通りである。
【0172】
(1)塗布および塗膜形成段階
硬化性組成物を所定の前処理をした基板上に、スピンコーティング、スリットコーティング、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケータ法などの方法を用いて所望の厚さ、例えば、2μm~10μmの厚さに塗布した後、70℃~90℃の温度で1分~10分間加熱して溶媒を除去することによって塗膜を形成する。
【0173】
(2)露光段階
上記得られた塗膜に、必要なパターン形成のために所定形態のマスクを介在させた後、波長190nm~450nm、例えば、波長200nm~500nmのUV光などの活性線を照射する。照射に用いられる光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを用いることができ、場合によっては、X線、電子線なども用いることができる。
【0174】
露光量(積算光量)は、硬化性組成物の各成分の種類、配合量および乾燥膜の厚さに応じて異なるが、例えば、高圧水銀灯を用いる場合、500mJ/cm以下(365nmのセンサによる)である。
【0175】
(3)現像段階
露光段階に続き、アルカリ性水溶液を現像液として用いて、不必要な部分を溶解、除去することによって、露光部分だけを残存させて画像パターンを形成させる。つまり、アルカリ現像液で現像する場合、非露光部は溶解し、イメージカラーフィルタパターンが形成される。
【0176】
(4)後処理段階
現像によって得られた画像パターンを、耐熱性、耐光性、密着性、耐クラック性、耐薬品性、高強度、保存安定性などの面で優れたパターンを得るために、再び加熱するか、活性線照射などを行って硬化させることができる。
【実施例
【0177】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0178】
(表面改質された量子ドットの製造)
3口丸底フラスコに撹拌子を入れ、緑色量子ドット分散溶液(InP/ZnSe/ZnS、ハンソルケミカル社製;量子ドットの固形分23質量%)を投入した。これに対して、下記表1の組成に従って表面改質物質を投入し、80℃の温度で、窒素雰囲気下で撹拌した。反応終了後、常温(23℃)に冷却し、シクロヘキサンに反応液を入れ、沈澱を生成させた。遠心分離により、沈殿物とシクロヘキサンとを分離し、沈殿物は、真空オーブンで1日間十分に乾燥して、表面改質された緑色量子ドットを得た。なお、表1中のカッコ内の数値は、第1表面改質物質と第2表面改質物質との質量比を表すことになる。
【0179】
【表1】
【0180】
-化学式1Aで表される化合物(第1表面改質物質)の合成:
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)10g、臭化アリル(東京化成工業株式会社製)11gをフラスコに入れて、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)100mLに溶かした。フラスコを冷却した後、これに、60質量%NaH 3gを少しずつ加え、10時間撹拌した。これに50mLの水を入れて反応を終了させた後、分液ロートに移した。300mLの酢酸エチルを入れて、炭酸水素ナトリウム飽和溶液を50mL入れて、抽出を3回繰り返した。有機層を分離し、これにMgSOを投入した後、1時間撹拌した。ろ過を行った後に濃縮し、24時間乾燥オーブンで追加乾燥した。得られた中間物うちの8gを再びフラスコに入れて、塩化メチレン100mLに溶かしたす。m-クロロ過安息香酸(m-CPBA、Sigma Aldrich社製)10gを入れて、50℃で10時間撹拌した。溶媒を除去した後、水100mLに再分散した後、硫酸1滴を入れて、60℃で6時間撹拌する。吸引ろ過で水分と分離した混合物を、カラム精製(エタノール3%/塩化メチレン混合溶媒)した。溶媒を除去し、トリエチレングリコールモノメチルエーテル-ジオールを得た。得られた生成物を、THF/脱イオン水(5/5体積比)溶媒に再分散させ、氷浴下で、NaOH2.2当量を入れて、10分間撹拌した。2.2当量のp-トルエンスルホニルクロリド(サムチョン化学社製、30%THF溶液)を液滴で投入し、常温(23℃)で12時間撹拌した。300mLの塩化メチレンに溶かした後、希塩酸水溶液を入れて、3回抽出および中和を行った。水分および溶媒を除去した後、24時間真空乾燥した。乾燥物をフラスコに入れて、アセトン300mLに溶かし、これに2.2当量のチオ酢酸カリウム(東京化成工業株式会社製)を入れて、60℃で12時間撹拌した。300mLの塩化メチレン、および200mLの水を入れて、3回抽出し、水分および溶媒を除去した後、24時間真空乾燥した。得られた生成物をエタノール300mLに溶かし、これに塩酸2.5当量を入れて、100℃で12時間撹拌した。過剰の塩化メチレンおよび水を入れて、5回抽出し、中和および溶媒除去を行った後、24時間真空乾燥して、下記の化学式1Aで表される化合物を得た。
【0181】
【化22】
【0182】
-化学式1Bで表される化合物(第1表面改質物質)の合成:
ジエタノールアミン(Alfa社製)、1当量のPH-4(ハンノン化成社製)、および1当量のNaOHをフラスコに入れて、THF/脱イオン水(5/5体積比)に溶かした後、60℃で12時間撹拌した。酢酸エチル300mL、および希塩酸水溶液を入れて、3回抽出し、中和および溶媒除去を行った後、24時間真空乾燥した。乾燥物をTHF/脱イオン水(5/5体積比)に再溶解し、3当量のNaOHを入れて撹拌した。これに、氷浴下でp-トルエンスルホニルクロリド(サムチョン化学社製)2.2当量を少しずつ加えた。常温で12時間撹拌した後、塩化メチレンと水を入れて、3回抽出し、中和および溶媒除去を順次に進行させた後、24時間真空乾燥した。乾燥物をアセトン300mLに再溶解した後、2.2当量のチオ酢酸カリウム(東京化成工業株式会社製)を入れて、60℃で12時間撹拌した。過剰の水と塩化メチレンを入れて抽出し、水分および溶媒を除去した後、真空乾燥を行った。乾燥物を300mLエタノールに溶かした後、塩酸2.5当量を入れて、100℃で12時間撹拌した。過剰の水と塩化メチレンを入れて、抽出、中和、ならびに水分および溶媒の除去を順次に進行させた。24時間真空乾燥して、下記の化学式1Bで表される化合物を得た。
【0183】
【化23】
【0184】
-化学式1Cで表される化合物(第1表面改質物質)の合成:
2,3-ジクロロ-1-プロパノール(Sigma Aldrich社製)、1当量の2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(Sigma Aldrich社製)、0.2当量のp-トルエンスルホン酸(サムチョン化学社製)、および触媒量のメチルヒドロキノン(Alfa社製)をフラスコに入れ、シクロヘキサン中で撹拌した。ディーンスターク装置をつなげたした後、90℃の温度で、空気流下で12時間撹拌し、反応終了後、常温に冷却した。酢酸エチル300mL、および100mLの水を入れて、3回抽出し、水分および溶媒を除去した。24時間真空乾燥後、乾燥物をアセトン300mLに再溶解した。これに、2.5当量のチオ酢酸カリウム(東京化成工業株式会社製)を入れ、60℃で12時間撹拌した。塩化メチレン500mL、および水200mLで3回抽出し、中和、ならびに水分および溶媒の除去を順次に進行させ、24時間真空乾燥した。乾燥物をエタノール300mLに再溶解して、これに2.5当量の塩酸を入れて、100℃で12時間撹拌した。過剰の塩化メチレンと水を入れて5回抽出し、水分除去を行い、濃縮後に24時間真空乾燥して、下記の化学式1Cで表される化合物を得た。
【0185】
【化24】
【0186】
-化学式2Aで表される化合物(第2表面改質物質)の合成:
PH-4(ハンノン化成社製)100gを2口丸底フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(THF)300mLに十分に溶解させたる。これに、0℃でNaOH 15.4g、および水100mLを投入した後、透明な溶液になるまで十分に溶解させた。p-トルエンスルホニルクロリド 73gをTHF 100mLに溶かした溶液を、0℃でゆっくり滴下した。滴下は1時間行い、その後、常温で12時間撹拌した。反応終了後、過剰の塩化メチレンを入れて撹拌し、NaHCO飽和水溶液を入れ、抽出、滴定、および水分除去を進行させた。溶媒を除去した後、真空オーブンで24時間乾燥した。得られた乾燥物50gを2口丸底フラスコに入れ、さらにエタノール300mLを入れ十分に撹拌した。次に、チオウレア 27gを入れて分散させた後、80℃で12時間還流した。その後、NaOH 4.4gを20mLの水に溶かした水溶液を滴下し、5時間さらに撹拌しながら、過剰の塩化メチレンを入れて撹拌した。さらに、塩酸水溶液を入れて、抽出、滴定、水分除去、および溶媒除去を順次に進行させた。その後、真空オーブンで24時間乾燥して、下記の化学式2Aで表される化合物を得た。
【0187】
【化25】
【0188】
-化学式2Bで表される化合物(第2表面改質物質)の合成:
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 100gを2口丸底フラスコに入れ、THF 300mLに十分に溶解させた。これに、0℃でNaOH 36.6g、および水100mLを投入した後、透明な溶液になるまで十分に溶解させた。p-トルエンスルホニルクロリド 127gをTHF 100mLに溶かした溶液を、0℃でゆっくり滴下した。滴下は1時間行い、その後、常温で12時間撹拌した。反応終了後、過剰の塩化メチレンを入れて撹拌し、NaHCO飽和水溶液を入れて、抽出、滴定、および水分除去を進行させた。溶媒を除去した後、真空オーブンで24時間乾燥した。得られた乾燥物50gを2口丸底フラスコに入れ、さらにエタノール300mLを入れ十分に撹拌した。次に、チオウレア 58gを入れて分散させた後、80℃で12時間還流した。その後、NaOH 18.5gを20mLの水に溶かした水溶液を滴下し、5時間さらに撹拌しながら、過剰の塩化メチレンを入れて撹拌した。さらに、塩酸水溶液を入れて、抽出、滴定、水分除去、および溶媒除去を順次に進行させた。その後、真空オーブンで24時間乾燥して、下記の化学式2Bで表される化合物を得た。
【0189】
【化26】
【0190】
(硬化性組成物の製造)
下記の各構成成分に基づいて、実施例1~実施例7および比較例1~比較例4による硬化性組成物を製造した。
【0191】
(A)量子ドット
(A-1)製造例1で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-2)製造例2で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-3)製造例3で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-4)製造例4で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-5)製造例5で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-6)製造例6で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-7)製造例7で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-8)比較製造例1で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-9)比較製造例2で製造した表面改質された緑色量子ドット
(A-10)比較製造例3で製造した表面改質された緑色量子ドット
(B)重合性化合物
下記の化学式6-2で表される化合物(M200、ミウォンケミカル社製)
【0192】
【化27】
【0193】
(C)光重合開始剤
TPO-L(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスホン酸エステル、ポリネトロン社製)
(D)光拡散剤
二酸化チタン分散液(ルチル型 TiO;D50(180nm)、固形分50質量%、イリドス社製)
(E)重合禁止剤
メチルヒドロキノン(東京化成工業株式会社製)。
【0194】
(実施例1~実施例7および比較例1~比較例3)
表面改質された緑色量子ドットおよび重合性化合物を混合し、12時間撹拌した。これに重合禁止剤を入れ、5分間撹拌した。次に、必要な場合、光重合開始剤を投入した後、光拡散剤を入れ、硬化性組成物を調製した。
【0195】
実施例1の場合を例に挙げると、表面改質された緑色量子ドット41gと、重合性化合物として前記化学式6-2で表される化合物41gとを混合、撹拌して緑色量子ドット分散液を製造した。その後、これに上記化学式6-2で表される他の硬化性モノマー 10.95g、および重合禁止剤 0.05gを入れ、5分間撹拌した。次に、光重合開始剤 3gおよび光拡散剤 4gを入れて撹拌して、硬化性組成物(インク)を製造した。
【0196】
具体的な組成を、下記表2に示す。
【0197】
【表2】
【0198】
(評価:硬化性組成物の粘度および耐光特性評価)
実施例1~実施例7および比較例1~比較例3による硬化性組成物それぞれに対して、粘度および耐光特性を評価して、その結果を下記表3に示した。
【0199】
(粘度評価)
粘度計(Brookfield社製のDV-II、RV-2スピンドル、23rpm)を用いて、25℃での粘度を測定した。
【0200】
(耐光特性評価)
製造した硬化性組成物を2mL用いて、ガラス基板上に1,500rpmでスピンコーティングした後、窒素UV露光機を用いて、積算光量5J/cmで露光して形成された量子ドットフィルム(厚さ9μm)に対して、量子効率測定システム(QE-2100、大塚電子株式会社製)を用いて、初期青色光変換率を測定した。
【0201】
その後、量子ドットフィルムが形成された基板を180℃のホットプレートを用いて、窒素雰囲気下で30分および1時間ベーキングした後、常温(23℃)で3時間冷却した。その後、上記の量子効率測定システムを用いて、青色光変換率を再び測定し、下記の計算式により熱工程維持率(%)を計算した。
【0202】
【数1】
【0203】
【表3】
【0204】
上記表3から明らかなように、実施例1~実施例7による硬化性組成物は、比較例1~比較例3による硬化性組成物と比較して、29mPa・s以下の低い粘度を維持しつつ、熱工程維持率の低下が抑制されて耐光性に優れていることを確認することができた。
【0205】
(青色光露出時間別QDフィルムの耐光特性)
実施例1、比較例1および比較例2で製造した硬化性組成物を2mL用いて、ガラス基板上に1,500rpmでスピンコーティングした。窒素UV露光機を用いて、積算光量5J/cmで露光して形成した量子ドットフィルム(厚さ9μm)に対して、量子効率測定システム(QE-2100、大塚電子株式会社)を用いて、初期青色光変換率を測定し、その値を100%で計算した。
【0206】
この後、量子ドットフィルムが形成された基板を、青色光を用いて、1時間および3時間追加露光させた後、上記の量子効率測定システムを用いて青色光変換率を再び測定した後、下記の計算式により熱工程維持率(%)を計算して、その結果を図1に示した。
【0207】
【数2】
【0208】
図1から明らかなように、実施例1による硬化性組成物は、比較例1および比較例2による硬化性組成物と比較して、青色光の露光時間が長くなっても、熱工程維持率の低下が抑制されて耐光性に優れていることを確認することができた。
【0209】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1