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特許7518935原料供給システム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】原料供給システム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240710BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240710BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20240710BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20240710BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
C23C16/448
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023027912
(22)【出願日】2023-02-27
(65)【公開番号】P2023129319
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022033249
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
(72)【発明者】
【氏名】五島 健太郎
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530796(JP,A)
【文献】特開平07-240375(JP,A)
【文献】特開2010-109305(JP,A)
【文献】特開2003-347219(JP,A)
【文献】特開2014-078632(JP,A)
【文献】特開2002-359238(JP,A)
【文献】特開2009-129963(JP,A)
【文献】特開2020-092125(JP,A)
【文献】特開2009-044093(JP,A)
【文献】特開2010-287705(JP,A)
【文献】特開2012-146924(JP,A)
【文献】特開2005-229055(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/455
C23C 16/448
H01L 21/316
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料ガスを処理室に供給可能な原料供給システムであって、第1原料により生成された第1前駆体ガスを流量制御器により流量制御して前記処理室に供給可能に構成される第1ガス供給ラインと、第2原料により生成された第2前駆体ガスを前記処理室に供給可能に構成される第2ガス供給ラインと、を有し、前記第2前駆体ガスの流量は、前記第1ガス供給ラインに設けられる前記流量制御器の一次側圧力と前記第2ガス供給ラインの圧力との差圧に基づき決定されるよう構成されている原料供給システム。
【請求項2】
前記差圧は、前記流量制御器の制御範囲内になるように調整される請求項1記載の原料供給システム。
【請求項3】
更に、前記第2原料を格納する第2原料容器と、前記第2原料容器にキャリアガスを供給する供給管と、を有し、前記第2前駆体ガスの流量は、前記キャリアガスの流量を変化させることにより、一定にすることが可能に構成される請求項1記載の原料供給システム。
【請求項4】
更に、前記複数の原料ガスを前記処理室に供給するための開閉弁を設け、前記第1ガス供給ラインと前記第2ガス供給ラインは、前記開閉弁の直前で接続される請求項1記載の原料供給システム。
【請求項5】
更に、前記第2原料容器の下流に流量監視器を設け、前記流量監視器は、前記第2前駆体ガスと前記キャリアガスの混合ガスの流量を検出する請求項3に記載の原料供給システム。
【請求項6】
前記第1原料および前記第2原料は、それぞれ常温で固体である請求項1記載の原料供給システム。
【請求項7】
前記第1原料が内部に配置される第1原料容器は、前記第1原料を加熱する第1ヒータを有し、前記第1ヒータの加熱により、前記第1原料の昇華温度以上になるように制御可能に構成されている請求項1記載の原料供給システム。
【請求項8】
更に、前記第1原料により生成された第1前駆体ガスを供給する第1の原料供給配管、および前記流量制御器を加熱する第1配管ヒータを有し、前記第1配管ヒータは、前記第1の原料供給配管、前記流量制御器を前記第1原料の昇華温度以上に加熱するように構成されている請求項1記載の原料供給システム。
【請求項9】
前記第2原料が内部に配置される第2原料容器は、前記第2原料を加熱する第2ヒータを有し、前記第2ヒータの加熱により、前記第2原料の昇華温度以上になるように制御可能に構成されている請求項1記載の原料供給システム。
【請求項10】
更に、前記第2原料により生成された第2前駆体ガスを供給する第2の原料供給配管、および前記流量監視器を加熱する第2配管ヒータを有し、前記第2配管ヒータは、前記第2の原料供給配管、前記流量監視器を少なくとも前記第2原料の昇華温度以上に加熱するように構成されている請求項5記載の原料供給システム。
【請求項11】
前記第2原料は、前記第1原料よりも蒸気圧が低い請求項1記載の原料供給システム。
【請求項12】
更に、前記第2原料容器の二次側に希釈ガスを供給する配管を接続し、前記キャリアガスの流量と前記希釈ガスの合計の流量を一定に保ちつつ、前記第2原料容器の温度に基づき、前記第2原料を昇華させるよう構成されている請求項3記載の原料供給システム。
【請求項13】
前記第2原料容器内の前記第2原料を昇華させたガスの流量低下に応じて、前記キャリアガスの流量を増加、および、前記希釈ガスの流量を減少させるよう構成されている請求項12記載の原料供給システム。
【請求項14】
前記希釈ガスの流量がゼロに近づいたとき、または、前記希釈ガスの流量がゼロのときに前記第2原料容器の温度を上昇させるよう構成されている請求項12記載の原料供給システム。
【請求項15】
前記第2原料容器の一部の温度を上昇させるよう構成される請求項14記載の原料供給システム。
【請求項16】
更に、前記流量制御器の制御制限範囲を含む特性データを格納する記憶部を有するよう構成されている請求項1記載の原料供給システム。
【請求項17】
複数の原料ガスを処理室に供給可能な原料供給システムであって、第1原料により生成された第1前駆体ガスを流量制御器により流量制御して、前記処理室に供給可能に構成される第1ガス供給ラインと、第2原料により生成された第2前駆体ガスを前記処理室に供給可能に構成される第2ガス供給ラインと、を有し、前記第2前駆体ガスの流量は、前記第1ガス供給ラインに設けられる前記流量制御器の一次側圧力と前記第2ガス供給ラインの圧力との差圧に基づき決定されるよう構成されている原料供給システムを備えた処理装置。
【請求項18】
複数の原料ガスを処理室に供給可能な原料供給システムであって、第1原料により生成された第1前駆体ガスを流量制御器により流量制御して、前記処理室に供給可能に構成される第1ガス供給ラインと、第2原料により生成された第2前駆体ガスを前記処理室に供給可能に構成される第2ガス供給ラインと、を有し、前記第2前駆体ガスの流量は、前記第1ガス供給ラインに設けられる前記流量制御器の一次側圧力と前記第2ガス供給ラインの圧力との差圧に基づき決定されるよう構成されている原料供給システムにより、少なくとも前記第1前駆体ガスおよび前記第2前駆体ガスを前記処理室に供給し、前記処理室に配置された基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料供給システム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板処理装置の一例として、半導体装置を製造する半導体製造装置が知られている。例えば、処理ガスを反応管内に供給させ、基板(以下、「ウエハ」ともいう)を所定の処理条件で処理する基板処理が行われる。近年、液体を気化させたガス、または固体を昇華させたガス等、種々の処理ガスが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、特性の異なる各原料から生成される処理ガスは、それぞれの異なるシステムで生成及び供給されている。また、同じ供給システム内では、供給バルブの二次側の圧力を考慮して、バルブ切替を行うことにより、複数の処理ガスを供給することが行われている。但し、バルブの二次側圧力の変動よる影響(干渉)で、安定的な一定流量の供給が困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-090834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、複数の原料の供給を一つの原料供給システムで可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、複数の原料を処理室に供給可能な構成であって、
第1原料により生成された第1前駆体ガスを流量制御器により流量制御して、前記処理室に供給可能に構成される第1ガス供給ラインと、
前記第1原料よりも蒸気圧が低い第2原料により生成された第2前駆体ガスを前記処理室に供給可能に構成される第2ガス供給ラインと、を有し、
前記第2前駆体ガスの流量は、前記第1ガス供給ラインに設けられる前記流量制御器の一次側圧力と前記第2ガス供給ラインの二次側圧力との差圧に基づき決定される構成が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、一つの原料供給システムで複数の原料の安定供給をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉の概略構成を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の処理炉の周辺構造の概略図を示す。
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の原料供給システムを示す概略図である。
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図6】本開示の一実施形態に係る流量制御器の一次側圧力とキャリアガス流量との関係を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る流量制御器の特性を示す図である。
図8】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフローチャートである。
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフローチャートの一例である。
図10】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフローチャートの一例である。
図11】本開示の一実施形態に係る第2固定原料供給系の変形例を示す図である。
図12】本開示の一実施形態に係る第2固定原料供給系のガス流量制御の一例を示す図である。
図13】本開示の一実施形態に係る第2固定原料供給系のガス流量制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は耐熱性材料(例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等)からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。このように、反応管203には3本のノズル410,420,430と、3本のガス供給管310,320,330とが設けられており、処理室201へ複数種類のガス(処理ガス)を供給することができるように構成されている。
【0012】
ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。例えば、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、マニホールドの側壁を貫通するように設けてもよい。この場合、マニホールドに、後述する排気管231をさらに設けてもよい。この場合であっても、排気管231を、マニホールドではなく、反応管203の下部に設けてもよい。このように、処理炉202の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けてもよい。
【0013】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、酸素(O)を含む反応ガス(リアクタント)としてのO含有ガスが、ノズル410を介して処理室201に供給される。O含有ガスとしては、金属元素非含有のN含有ガスを用いることができる。
【0014】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、窒素(N)を含む反応ガス(リアクタント)としてのN含有ガスが、ノズル420を介して処理室201に供給される。N含有ガスとしては、金属元素非含有のN含有ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、常温常圧下において固体状態の原料(固体原料)を昇華させて気体状にした原料ガス(以下、単に前駆体ガスともいう)が処理室201に供給される。後述するように、ガス供給管330からは、複数の金属元素を含む固体原料が、処理室201に供給される。例えば、金属元素を含み、かつ炭素(C)非含有の金属原料、すなわち、無機金属系原料(無機金属化合物)であって、ハロゲン系原料(ハロゲン化物原料とも称する)が用いられる。また、後述するように、ガス供給管330からは、第1処理ガスとして、第1の前駆体ガスと共に、第1の固体原料よりも蒸気圧が低い第2固体原料を昇華させた原料ガス(第2の前駆体ガス)が、それぞれ処理室201に供給可能に構成されている。なお、本実施の形態において、ガス供給管330には、複数の金属元素を含む原料を供給することが可能に構成されている後述する原料供給システム100が接続されている。
【0016】
ここで、固体原料の核となる所定元素(例えば、金属)に同じ元素(例えば、ハロゲン元素)を含む材料であれば、一つの原料供給ラインにすることができる。例えば、所定元素が、金属以外(固体原料以外)でも同じ元素(例えば、ハロゲン元素)を含む材料であれば、一つの原料供給ラインに追加することができる。但し、同じ原料供給ラインに構成できる条件は、(1)共通部分の配管温度が,両方の材料の熱分解温度以下であること、(2)それぞれの原料がお互いに反応しないことである。これらの条件を満たす場合には、後述する図4に固体原料以外の元素、例えば、シリコン(Si)元素を含む原料を供給する原料供給ラインを含めることができる。
【0017】
図2に示すように、ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430が連結接続されている。ノズル410,420,430の水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、反応管203の内壁とウエハ200との間に形成される円環状の空間に、反応管203の内壁に沿って上方(ウエハ200の積載方向上方)に向かって立ち上がるように(つまりウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように)設けられている。すなわち、ノズル410,420,430は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
【0018】
ノズル410,420,430の側面にはガスを供給する(噴出させる)ガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。ガス供給孔410a,420a,430aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔410a,420a,430aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、反応管203の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量を均一化することが可能となる。
【0019】
このように、本実施形態では、反応管203の内壁と複数枚のウエハ200の端部とで形成される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430にそれぞれ開口されたガス供給孔410a,420a,430aから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れた反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0020】
反応管203には、処理室201の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、排気装置としての真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0021】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。
【0022】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。
【0023】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0024】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0025】
次に、基板処理装置10の処理炉202の周辺構造について説明する。処理室201には、第1のガス供給管310、第2のガス供給管320、及び第3のガス供給管330が設けられている。
【0026】
第1のガス供給管310は、上流で第1の分岐管82a、82bに分かれている。上流で第1の分岐管82a、82bに分かれている。第1の分岐管82aには、バルブv3及び流量制御器としてのMFC(Mass Flow Controller)84aを介して、第1の原料として、例えば、酸素ガスを供給する酸化ガス供給源86が接続されている。第1の分岐管82bには、バルブv4及びMFC84bを介して、第1の不活性ガスとして窒素(N)等の不活性ガスを供給する第1の不活性ガス供給源88が接続されている。以後、単に第1のガス供給管310から分岐する配管を示す場合には、総称として第1の分岐管82と称し、第2の分岐管82に設けられているMFCを示す場合には、総称としてMFC84と称することがある。以後、本明細書では、同じルールで数字を付加することがある。
【0027】
このように、第1のガス供給管310は、第1反応ガスとしての第1の原料ガス、又は第1の原料ガスとN等の不活性ガスとの混合ガスを処理室201に導入することができる。主に、第1のガス供給管310、第1の分岐管82a、バルブv2、MFC84a、及び第1の原料ガス供給源86により、例えば、第1の原料ガス供給系が構成される。
【0028】
第2のガス供給管320は、上流で第2の分岐管72a、72bに分かれている。第2の分岐管72aには、バルブv1及びMFC74aを介して、第2の原料ガスとして窒化ガスを供給する窒化ガス供給源76が接続されている。第2の分岐管72bには、バルブv2及びMFC74bを介して、第2の不活性ガスとしてN等の不活性ガスを供給する第2の不活性ガス供給源78が接続されている。以後、単に第1のガス供給管310から分岐する配管を示す場合には、第2の分岐管72と称し、第2の分岐管72に設けられているMFCを示す場合には、MFC74と称することがある。
【0029】
このように、第2のガス供給管320は、第2反応ガスとしての第2の原料ガス、又は第2の原料ガスとN等の不活性ガスを処理室201に導入する。主に、第2のガス供給管320、第2の分岐管72a、バルブv1、MFC74a、及び窒化ガス供給源76により窒化ガス供給系が構成される。
【0030】
第1の不活性ガス供給源88及び第2の不活性ガス供給源78から供給される不活性ガスを用いるようにしてもよい。そして、これらは、後述する基板処理工程において、パージガス、希釈ガス、或いは、キャリアガスとして作用する場合がある。なお、第1のガス供給管310、第2のガス供給管320、及び第3のガス供給管330のそれぞれには、ガスを外部へ排出するベント管を設けるようにしてもよい。
【0031】
バルブv1~v4、MFC74、MFC84、APCバルブ243、及び排気装置246等の構成部品には、図示しない制御部121が電気的に接続されている。制御部121は、供給するガスの流量や処理室201の圧力等が所定の値となるよう、これらの構成部品を所望のタイミングにて制御する。ここで、MFC74、MFC84は、それぞれMFC74a,74b、MFC84a,84bの総称である。
【0032】
第3のガス供給管330には、図4に示す原料供給システム100が接続されている。以下、本実施形態に係る第3のガス供給管330に接続される原料供給システム100について、図4を参照して具体的に説明する。
【0033】
原料供給システム100は、第1原料容器60a内に第1固体原料50aが配置され、この第1原料容器60aを加熱することにより第1固体原料50aを昇華させたガス(以後、第1前駆体ガスということがある)を第3のガス供給管330を介して処理室201に供給する第1前駆体ガス供給系100aと、第2原料容器60b内に第2固体原料50bが配置され、この第2原料容器60bを加熱することにより第2固体原料50bを昇華させたガス(以後、第2前駆体ガスということがある)を第3のガス供給管330を介して処理室201に供給する第2前駆体ガス供給系100bと、を有する構成となっている。
【0034】
図4に示すように、第1前駆体ガス供給系100aおよび第2前駆体ガス供給系100bは、開閉部としての開閉弁97(以後、ファイナルバルブFV(Final Valve)ともいう)から処理室201まで共通のガス供給管330およびノズル430を含む構成となっている。言い換えれば、開閉弁97は、ガス供給管330上であって、処理室201に最も近い位置に設けられている部品である。なお、第1原料容器60aから開閉弁97までを第1の固体原料供給ライン(第1前駆体ガス供給ライン)、第2原料容器60bから開閉弁97までを第2の固体原料供給ライン(第2前駆体ガス供給ライン)と称する場合がある。
【0035】
また、本実施形態では、第1固体原料50aと第2固体原料50bでは、蒸気圧特性が異なるため、異なる構成および原料供給方式を採用している。例えば、比較的蒸気圧が高い第1固体原料50aが自己昇華方式、蒸気圧が極めて低い第2固体原料50bがキャリアガスフロー方式を採用するなど供給制御方式を使い分けている。自己昇華方式は、いわゆるベーパドロー方式とも呼ばれ、第1原料容器60aをサブヒータとしてのタンクヒータ(以後、第1サブヒータ)70aによる加熱のみで固体から相変化させて第1前駆体ガスを生成する方式である。図示しないが、この第1前駆体ガスは、第1原料容器60aの出口でキャリアガスと適宜混合することができる。この方式では、第1原料容器60a内には、キャリアガスを供給することはない。キャリアガスフロー方式は、第2原料容器60bをサブヒータとしての第2タンクヒータ(以後、第2サブヒータ)70bにより加熱しつつ、MFC96により流量調整されたキャリアガスを第2導入管350bを介して、第2原料容器60bに供給することにより、固体から相変化させて第2前駆体ガスを生成する方式である。なお、図4に示していないが、このキャリアガスは第2固体原料50bが相変化する温度以上に予め加熱されておいた方が良い。
【0036】
本実施形態では、MFC99により流量調整された状態の第1固体原料50aを昇華させたガスを処理室201に供給可能に構成される第1原料供給ラインと、第2固体原料50bを昇華させたガスを処理室201に供給可能に構成される第2原料供給ラインと、を有し、第2原料供給ラインに供給される第2固体原料50bを昇華させたガスの流量は、第1原料供給ラインに設けられるMFC99の一次側圧力と二次側圧力の差圧により決定される。詳細は後述するが、この場合、第1固体原料50a及び第2固体原料50bをそれぞれ昇華させたガス(第1前駆体ガスおよび第2前駆体ガス)を処理室201に同時に供給することができる。すなわち、第1固体原料50aと第2固体原料50bをそれぞれ昇華させたガスをガス供給管330内で混合させてからノズル430を介して処理室201に供給することができる。
【0037】
(開閉弁97)
第1前駆体ガスおよび第2前駆体ガス(第1固体原料50a及び第2固体原料50bをそれぞれ昇華させたガス)を処理室201に供給するためのバルブであり、第1原料供給ラインと第2原料供給ラインは、開閉弁97の直前で接続される。具体的には、上記「直前」とは、第1原料供給ラインと第2原料供給ラインとに分岐する箇所(配管)が開閉弁97に近接して設けられる。また、可能な限り、開閉弁97は、処理室201に近接して設けられることが好ましい。これにより、第1原料供給ラインと第2原料供給ラインの相互干渉の影響を抑制することができる。
【0038】
(第1固体原料供給ラインの構成)
第1前駆体ガス供給系100aは、第1固体原料供給ラインと、開閉弁97と、該開閉弁97から処理室201までの配管を含む構成であり、以下、図4を用いて第1固体原料供給ラインについて説明する。
【0039】
第1固体原料供給ラインは、開閉弁97から上流に向けて、第1供給バルブ110a、圧力センサとしての圧力計109a、MFC99、バルブv7a、第1原料容器60aが第1原料供給管330aに設けられ、第1サブヒータ70aが、第1原料容器60aを包み込むように設けられ、加熱することが可能に構成される。この第1サブヒータ70aの加熱により、第1原料容器60a内の第1固体原料50aが気体状に変位する温度以上に加熱される。
【0040】
更に、第1固体原料供給ラインは、第1原料供給管330a、MFC99、圧力計109、開閉部97をそれぞれ加熱する配管加熱部としての第1配管ヒータ71aを有し、第1固体原料50aの気化状温度以上になるように温度制御されている。なお、第1配管ヒータ71aは、第1前駆体ガスの気体状からの相変位を抑制するために、第1原料容器60aよりも高い温度に制御されるのが好ましい。
【0041】
また、第1原料容器60aの上流には、第1導入管350aが接続され、第1導入管350aには、導入バルブv5a、一次バルブv6aが設けられている。更に導入管350aの上流には、MFC96が設けられ、不活性ガス源101に接続されている。なお、MFC96および不活性ガス源101は、後述する第2導入管350bと共有になっている。また、バイパスラインにバルブv8aが設けられ、第1原料容器60aを経由することなく、不活性ガスを第1原料供給管330a内に供給することができるので、第1原料供給管330a内をパージすることができる。これら、第1導入管350a、バイパスライン、導入バルブv5a、一次バルブv6a、バイパスバルブv8aも第1前駆体ガス供給系100aに含まれる。
【0042】
(MFC)
本実施形態のMFC99は、例えば、差圧式のMFCである。また、MFC99は、オリフィス上流側の第1原料ソース源としての第1固体原料容器60aからの第1前駆体ガスの供給圧力をP1、オリフィス下流側の圧力P2(圧力センサ109により検出される圧力)としたとき、差圧(圧力P2―圧力P1)が制御可能な範囲であれば、第1固体原料容器60aの圧力変動に対して第1前駆体ガスの流量を一定に保つことが可能である。例えば、圧力P2は、「P1≧2P2」のオリフィス内のチョーク流れ条件式を満たす圧力値に維持される。なお、本実施形態のMFC99は、上述の差圧式のMFCに特に限定されることはなく、例えば、熱式のMFCであってもよいのは言うまでもない。
【0043】
図7にMFC99の特性概念図を示す。図7に示すように、領域Aが、差圧(圧力P2―圧力P1)不足で制御が不可能な領域であり、領域Bが制御可能な領域であり、領域Cが制御可能であるがパーティクル発生の恐れがある領域(気体から固体への変位しやすい領域)である。
【0044】
本実施形態では、MFC99の一次側と二次側の圧力を制御することにより、MFC99の制御限界値を超えないように、MFC99の領域Bの条件に調整することができるため、第1前駆体ガスを相変化(固体原料の場合は固化)させることなく、第1前駆体ガスを処理室201に供給することができる。これにより、ウエハ200の表面に第1前駆体ガスを行き渡らせることができ、単一のウエハ200の面内膜厚均一性及び各ウエハ200間の膜厚均一性を向上させることができる。また、MFC99を並列に複数設けるようにしてもよい。これにより、MFC99より供給できる第1前駆体ガスの流量を多くすることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、図4に示すように、第1前駆体ガスを処理室201に供給している間、導入バルブv5a、一次バルブv6a、バイパスバルブv8aは閉状態のままである。また、不活性ガス源101は、これらのバルブ(v5a、v6a)を介して第1原料容器60aと接続されている。これは、本実施形態が、第1固体原料50aと第1固体原料50bの蒸気圧が異なる場合だけでなく、第1固体原料50aが第1固体原料50bと同等の蒸気圧であってもよいためである。言い換えると、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスを供給する方式が同じであってもよいためである。更に、図4では2つの固体原料を供給するラインが示されているが、2つである理由は全くなく、3つ以上であってもよい。
【0046】
(第1固体原料供給ラインの動作)
第1前駆体ガスを処理室201に供給するときの様子が図4に示されている。このとき、導入バルブv5a、一次バルブv6a、バイパスバルブv8aは閉状態となっており、二次バルブv7a、第1供給バルブ110a及び開閉弁97は開状態となっている。コントローラ121は、第1サブヒータ70aにより第1原料容器60a内の第1固体原料50aを加熱させ、第1固体原料50aを昇華させたガス(第1前駆体ガス)をMFC99により流量制御しつつ処理室201に供給するよう構成されている。二次バルブv7aまたは第1供給バルブ110aを閉状態とすることで第1前駆体ガスの供給を停止させるよう構成されている。
【0047】
(第2固体原料供給ラインの構成)
次に、図4を用いて第2固体原料供給ラインについて説明する。第2前駆体ガス供給系100bは、第2固体原料供給ラインと、開閉弁97と、該開閉弁97から処理室201までの配管を少なくとも含む構成であり、第2固体原料供給ラインは、開閉弁97から上流に向けて、第2供給バルブ110b、圧力センサとしての圧力計109b、流量監視器としての質量流量計(Mass Flow Mator)MFM98、バルブv7b、第2原料容器60bが第2原料供給管330bに設けられる。
【0048】
第2サブヒータ70bが、第2原料容器60bを包み込むように設けられ、加熱することが可能に構成される。この第2サブヒータ70bの加熱により、第2原料容器60b内の第2固体原料50bが気体状に変位する温度以上に加熱される。更に、第2固体原料供給ラインは、第2原料供給管330b、MFM98、圧力センサ109b、開閉部97をそれぞれ加熱する配管加熱部としての第2配管ヒータ71bを有し、第2固体原料50bの気化状温度以上になるように温度制御されている。なお、第2配管ヒータ71bは、第2前駆体ガスの気体状からの相変位を抑制するために、第2原料容器60bよりも高い温度に制御されるのが好ましい。
【0049】
また、第2原料容器60bの上流には、第2導入管350bが接続され、第2導入管350bには、導入バルブv5b、一次バルブv6bが設けられており、更に第2導入管350bの上流には、MFC96が設けられ、不活性ガス源101に接続されている。また、バイパスラインにバルブv8bが設けられ、第2原料容器60bを経由することなく、不活性ガスを第2原料供給管330b内に供給することができるので、第2原料供給管330b内をパージすることができる。これら、第1導入管350a、バイパスライン、導入バルブv5a、一次バルブv6a、バイパスバルブv8aも第2前駆体ガス供給系100bに含まれる。
【0050】
第2固体原料容器60bには、圧送ガス供給管としての第2導入管350bが接続されており、この圧送ガス供給管350bには、上述の導入バルブv5b、一次バルブv6b及びMFC96を介して圧送ガス供給源としての不活性ガス源101が接続されている。圧送ガス供給管350bから圧送ガスが供給されることで、第2固体原料容器60b内で昇華したガス(第2前駆体ガス)が、第3のガス供給管330から処理室201に導入される。キャリアガス(以後、圧送ガスともいう)としては、原料と反応しない不活性ガスを用いることが好ましい。圧送ガスは、第2固体原料50bの昇華を促進するので、圧送ガスの流量を多くすることにより、第2前駆体ガスの流量を増加させることができる。
【0051】
このように、第2固体原料供給ラインは、第2前駆体ガス(実際には、第2前駆体ガスと圧送ガスとの混合ガス)を処理室201に導入する。主に、第3のガス供給管330b、MFM98、第2固体原料容器60b、圧送ガス供給管350b、導入バルブv5b、一次バルブv6b、MFC96、及び不活性ガス源101により第2固体原料供給ラインが構成される。
【0052】
(第2固体原料供給ラインの動作)
第2前駆体ガスを処理室201に供給するときの様子が図4に示されている。このとき、バイパスバルブv8bは閉状態となっており、導入バルブv5b、一次バルブv6b、二次バルブv7b、第2供給バルブ110b及び開閉弁97は開状態となっている。コントローラ121は、第2サブヒータ70bにより第2原料容器60b内の第2固体原料50bを加熱させ、第2固体原料50bを昇華させたガス(第2前駆体ガス)と圧送ガスとの混合ガスの流量をMFM98により監視しつつ処理室201に供給するよう構成されている。また、二次バルブv7bまたは第2供給バルブ110bを閉状態とすることで第2前駆体ガスの供給を停止させるよう構成されている。また、このとき、圧送ガスの供給も停止してもよい。
【0053】
(第2固体原料供給ラインの流量監視)
まず、第2原料容器60bの二次側(下流側)には、流量監視器としてのMFM98はあるが、MFM98単体での流量制御はできない。そこで、第2固体原料50bについては、二次側(下流側)の圧力が変化すると、昇華量が変化する(二次側の圧力が上がると昇華量が減る)ため、MFM98で流量を監視し、キャリアガス(圧送ガス)を変化させることにより流量を適正に制御することが可能である。
【0054】
MFM98では、第2前駆体ガス+キャリアガスの混合ガスをモニタしており、第2前駆体ガスの流量を直接監視することはできない。本実施形態では、一次側にMFC96を設け、MFC96で供給する流量を流量A、MFM98で監視する流量を流量Bとしたとき、次式で与えられる。
第2前駆体ガスの流量=(流量B&#8722;流量A))×Cf
ここで,Cfは第2前駆体ガスのコンバージョンファクターである.ただし,コンバージョンファクターはMFC96の校正ガスのコンバージョンファクターを1.0とした値である.これにより、本実施形態では、第2前駆体ガスの流量が計測できる。
【0055】
図6に第1固体原料供給ラインと第2固体原料供給ラインの圧力の関係を示す。縦軸が圧力、横軸がガス流量であり、具体的には、第2前駆体ガスを処理室201に供給するために、第2固体原料供給ラインに導入されるガスの流量である。なお、キャリアガスの他に供給される後述する希釈ガスの流量を含む流量である。また、第1固体原料を昇華させるだけであれば第1サブヒータ70aにより温度を高くすればよいが、温度が高いほど固化リスク、腐食リスクは高まるため、過剰に高温にすべきではなく、ほぼ昇華温度近傍(飽和蒸気圧近傍)になるように第1サブヒータ70aは制御されている。よって、図6に示すMFC99の一次側圧力は、ほぼ第1固体原料50aの飽和蒸気圧と記載している。
【0056】
図6に示すように、第2固体原料供給ラインの二次側の圧力と第1固体原料供給ラインの一次側の圧力との差が、MFC99の制御限界値に達しないように制御される。上述のようにガスの流量を大きくすることにより、第2前駆体ガスの流量を大きくすることは可能であるが、これにより、第1固体原料供給ラインの二次側圧力が大きくなりすぎると、MFC99の制御限界値に達してしまい、第1前駆体ガスの供給が不可能となってしまう。従い、コントローラ121により差圧監視するよう構成されている。
【0057】
具体的には、コントローラ121は、第1固体原料供給ラインにおいて、第1固体原料を加熱させ、昇華させることにより第1前駆体ガスの供給圧力を取得し、第2ガス供給ラインに供給されるべき第2前駆体ガスの流量を算出し、その時の第2ガス供給ラインの第2固体原料の二次側圧力を取得し、前記第1ガス供給ラインに設けられる流量制御器の一次側圧力(MFC99の一次側圧力)と第2ガス供給ラインに流れる第2前駆体ガスとキャリアガスとの混合ガスの供給圧力(第2ガス供給ラインの二次側圧力)の差圧がMFC99の制御制限値を超えるかどうか確認する。
【0058】
上記コントローラ121による確認は、第1前駆体ガスまたは第2前駆体ガスを処理室201に供給する前に行われる。これにより、第1前駆体ガスまたは第2前駆体ガスの所望の量を同時に処理室201に継続して供給することができる。
【0059】
図5に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0060】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。なお、本実施形態において、記憶装置121c内には、少なくとも図6に示す流量制御器の制御制限範囲と固体原料の一次側圧力(飽和蒸気圧)と二次側圧力との差圧との関係を示すデータ、図7に示す流量制御器の制御制限範囲を含む特性データが保存されている。
【0061】
I/Oポート121dは、上述のMFC96,99、MFM98、バルブv1~v8,110、APCバルブ243、圧力センサ109,245、真空ポンプ246、ヒータ207、 第1サブヒータ70および配管ヒータ71、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0062】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピに従って、各MFCによる各種ガスの流量調整動作、各バルブの開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。また、本実施形態では、開閉弁97、第1固体原料供給ラインや第2固体原料供給ラインをそれぞれ構成するMFC96、MFC99、MFM98、圧力計109、バルブv5-v8、供給バルブ110、サブヒータ70、配管ヒータ71等の動作制御等を行う。
【0063】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態のコントローラ121を構成することができる。但し、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0064】
<基板処理方法>
次に、ウエハ200を処理する例について説明する。半導体デバイスの製造工程の一例として、ウエハ200上で膜を形成する例を説明する。先ず、上述した様にウエハ200をボート217に装填し、処理室201に搬入する(図8中のステップS1)。このとき、ボート217を処理室201に搬入後、処理室201の圧力及び温度を調整する(図8中のステップS2)。次に、成膜工程1~4の4つのステップを順次実行する。
【0065】
本実施形態における処理では、処理室201のウエハ200に対して原料ガスとしての前駆体ガスを供給する工程(成膜工程1:図8中のステップS3)と、処理室201から原料ガス(残留ガス)を除去するパージ工程(成膜工程2:図8中のステップS4)と、処理室201のウエハ200に対して窒素含有ガスを供給する工程(成膜工程3:図8中のステップS5)と、処理室201から窒素含有ガス(残留ガス)を除去するパージ工程(成膜工程4:図8中のステップS6)と、を非同時に行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に膜を形成する。
【0066】
以下、図9を用いて、それぞれのステップを詳細に説明する。
【0067】
(成膜工程1)
成膜工程1では、まず、原料ガスを供給する前に、コントローラ121は、第2ガス供給ラインに供給されるべき第2前駆体ガスの流量を算出し、その時の第2ガス供給ラインの第2固体原料50bの二次側圧力を取得し、前記第1ガス供給ラインに設けられる第1MFC99の一次側圧力と第2固体原料50bの二次側圧力の差圧が第1MFC99の制御制限値を超えていないかを確認する。なお、この確認は、成膜工程1ではなく、図8中のステップS2の間に行われてもよい。
【0068】
上記確認後、ウエハ200の表面上に処理ガスとしての前駆体を吸着させる。具体的には、開閉弁97を開状態にしておき、第1固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7a、供給バルブ110aを開状態で、第1サブヒータ70a,第1配管ヒータ71aを加熱させ第1原料容器60a内の第1固体原料50aで生成された第1前駆体ガスを第1MFC99によって処理室201へ供給すると共に、第2固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7b、供給バルブ110bを開状態で、第2サブヒータ70b,第2配管ヒータ71bを加熱させつつ第2MFC96で流量制御されたキャリアガスを供給させ、第2原料容器60b内の第2固体原料50bで生成された第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスをMFM98で監視しつつ処理室201へ供給する。つまり、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスが処理室201に供給される。
【0069】
(成膜工程2)
成膜工程2では、少なくとも開閉弁97を閉めて、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスとキャリアガスの供給を止める。具体的には、第1固体原料供給ラインおよび第2固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7を閉状態に変更する。また、供給バルブ110を閉状態に変更するよう構成してもよい。なお、サブヒータ70,配管ヒータ71、MFC96,99は基板処理工程が終わるまでは少なくともオン状態が維持される。また、ガス排気管231のバルブ243は開いたままにし、真空ポンプ246により、処理炉202を20Pa以下に排気し、残留混合ガスを処理室201から排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉202に供給すると、更に残留原料ガスを排除する効果が高まる。
【0070】
(成膜工程3)
成膜工程3では、反応ガスとしての酸素含有ガスを流す。具体的には、第1ガス供給管310の分岐管82aに設けたバルブv3を開けると共に、分岐管82bに設けたバルブv4を閉め、第1ガス供給管310からMFC84aにより流量調整された酸素含有ガスを、第1ノズル410の第1ガス供給孔410aから処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。酸素含有ガスの供給により、ウエハ200上の膜と酸素含有ガスとが反応して、ウエハ200上に酸化膜が形成される。
【0071】
なお、反応ガスとして窒素含有ガスを流す場合は、第2ガス供給管320の分岐管72aに設けたバルブv1を開けると共に、分岐管72bに設けたバルブv2を閉め、第2ガス供給管320からMFC74aにより流量調整された窒素含有ガスを、第2ノズル420の第2ガス供給孔420aから処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。窒素含有ガスの供給により、ウエハ200上の膜と窒素含有ガスとが反応して、ウエハ200上に窒化膜が形成される。同様に、酸窒化膜を形成するときは、本工程において、反応ガスとして上述のように第1ノズル410の第1ガス供給孔410aから酸素含有ガス、第2ノズル420の第2ガス供給孔420aから窒化含有ガスをそれぞれ流すようにすればよい。例えば、酸素含有ガスと窒素含有ガスを同時に供給しても良いし、酸素含有ガスと窒素含有ガスをそれぞれ単独で供給してもよい。
【0072】
(成膜工程4)
成膜工程4では、上記酸化膜を形成後、バルブv3を少なくとも閉じ、排気装置としての真空ポンプ246により処理室201を真空排気し、成膜に寄与した後に残留する酸素含有ガスを排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理室201に供給すると、更に残留する酸素含有ガスを処理室201から排除する効果が高まる。
【0073】
そして、上述した成膜工程1~4を1サイクルとし、図8中のステップS7において、成膜工程1~4のサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定の膜厚の酸化膜を形成することができる。本実施形態では、成膜工程1~4は複数回繰返される。
【0074】
上述の成膜処理が完了した後、図8中のステップS8において、処理室201の圧力を常圧(大気圧)に復帰させる。具体的には、例えば、Nガス等の不活性ガスを処理室201へ供給して排気する。これにより、処理室201が不活性ガスでパージされ、処理室201に残留するガス等が処理室201から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201の圧力が常圧(大気圧)に復帰される。そして、図8中のステップS9において、処理室201からウエハ200を搬出すれば、本実施形態に係る基板処理が終了する。
【0075】
本実施形態では、供給管310a内を流れる原料ガスとしての前駆体ガスの量を制御するMFC99と、該MFC99により第1前駆体ガスを処理室201に供給可能に構成される第1ガス供給ラインと、第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスを処理室201に供給可能に構成される第2ガス供給ラインと、を有し、該第2前駆体ガスの流量は、第1ガス供給ラインに設けられるMFC99の一次側圧力(第1前駆体ガスの供給圧力)と第2固体原料容器60bの二次側圧力(第2前駆体ガスとキャリアガスとの混合ガスの供給圧力)との差圧により決定されるよう構成されているコントローラ121を備えた構成を有するため、複数の原料ガス(前駆体ガス)をそれぞれの蒸気圧特性によらず処理室201に同時供給することができる。また、本実施形態では、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスが同時に供給されているが、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスの供給タイミングが一部でも同時であれば、本開示が適用可能であることは言うまでもない。
【0076】
また、本実施形態では、MFC99の一次側圧力と第2固体原料50bの下流側の圧力との差が大きい場合、第1MFC99の二次側に不活性ガスを供給するようにしてもよい。これにより、コントローラ121は、MFC99の制御限界値を超えないよう、差圧(一次側圧力P1-二次側圧力P2)を小さくすることで、熱膨張の影響を抑制することができ、原料ガスの再固化(または再液化)を抑制することが可能になる。
【0077】
なお、第1固体原料50a及び第2固体原料50bはそれぞれ同じ塩化物、炭化物、酸化物、フッ化物が好ましい。これにより、それぞれ固体原料を昇華させて生成される前駆体ガスを混合させて処理室201に供給することができる。
【0078】
次に、図10を用いて、成膜処理(図8中のステップS3からステップS6に該当する処理)の一例について説明する。上述した様にウエハ200をボート217に装填し、処理室201に搬入する。このとき、ボート217を処理室201に搬入後、処理室201の圧力及び温度を調整する。これらの工程は、図8中のステップS1とステップS2と同じである。
【0079】
(成膜工程1)
ウエハ200の表面上に原料ガスとしての前駆体を吸着させる。具体的には、開閉弁97を開状態にしておき、第1固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7a、供給バルブ110aを開状態で、第1サブヒータ70a,第1配管ヒータ71aを加熱させ第1原料容器60a内の第1固体原料50aで生成された第1前駆体ガスをMFC99によって処理室201へ供給する。
【0080】
(成膜工程2)
成膜工程2では、少なくとも開閉弁97を閉めて、第1前駆体ガスの供給を止める。具体的には、第1固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7aを閉状態に変更する。また、供給バルブ110aを閉状態に変更するよう構成してもよい。なお、第1サブヒータ70a,第1配管ヒータ71a、MFC96,99は基板処理工程が終わるまでは少なくともオン状態が維持される。また、ガス排気管231のバルブ243は開いたままにし、真空ポンプ246により、処理炉202を20Pa以下に排気し、残留混合ガスを処理室201から排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉202に供給すると、更に残留原料ガスを排除する効果が高まる。
【0081】
(成膜工程3)
成膜工程3では、反応ガスとしての酸素含有ガスを流す。具体的には、第1ガス供給管310の分岐管82aに設けたバルブv3を開けると共に、分岐管82bに設けたバルブv4を閉め、第1ガス供給管310からMFC84aにより流量調整された酸素含有ガスを、第1ノズル410の第1ガス供給孔410aから処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。酸素含有ガスの供給により、ウエハ200上の膜と酸素含有ガスとが反応して、ウエハ200上に酸化膜が形成される。
【0082】
(成膜工程4)
成膜工程4では、上記窒化膜を形成後、バルブv3を少なくとも閉じ、排気装置としての真空ポンプ246により処理室201を真空排気し、成膜に寄与した後に残留する窒素含有ガスを排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理室201に供給すると、更に残留する窒素含有ガスを処理室201から排除する効果が高まる。
【0083】
(成膜工程5)
ウエハ200の表面上に第2前駆体ガスを吸着させる。具体的には、第2固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7b、供給バルブ110bを開状態で、第2サブヒータ70b,第2配管ヒータ71bを加熱させつつ第2MFC96で流量制御されたキャリアガスを供給させ、第2原料容器60b内の第2固体原料50bで生成された第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスをMFM98で監視しつつ処理室201へ供給する。つまり、第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスが処理室201に供給される。
【0084】
(成膜工程6)
成膜工程6では、少なくとも開閉弁97を閉めて、第2前駆体ガスとキャリアガスの混合ガスの供給を止める。具体的には、第2固体原料供給ラインにおいて、二次側バルブv7bを閉状態に変更する。また、供給バルブ110bを閉状態に変更するよう構成してもよい。なお、第2サブヒータ70b,第2配管ヒータ71b、MFC96、MFM98は基板処理工程が終わるまでは少なくともオン状態が維持される。また、ガス排気管231のバルブ243は開いたままにし、真空ポンプ246により、処理炉202を20Pa以下に排気し、残留混合ガスを処理室201から排除する。又、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉202に供給すると、更に残留原料ガスを排除する効果が高まる。
【0085】
(成膜工程7)(成膜工程8)
それぞれ成膜工程3と成膜工程4と全く同じであるため説明は省略する。
【0086】
そして、上述した成膜工程1~8を1サイクルとし、図8中のステップS7において、成膜工程1~8のサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定の膜厚の膜を形成することができる。本実施形態では、成膜工程1~8は複数回繰返される。また、本実施形態に限定されず、成膜工程1~4のサイクルを所定回数実施し、成膜工程5~8のサイクルを所定回数実施するようにしてもよい。
【0087】
上述の成膜処理が完了した後、図8中のステップS8において、処理室201の圧力を常圧(大気圧)に復帰させる。具体的には、例えば、Nガス等の不活性ガスを処理室201へ供給して排気する。これにより、処理室201が不活性ガスでパージされ、処理室201に残留するガス等が処理室201から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201の圧力が常圧(大気圧)に復帰される。そして、図8中のステップS9において、処理室201からウエハ200を搬出すれば、本実施形態に係る基板処理が終了する。
【0088】
(第2固体原料供給ラインの流量制御)
本実施形態では、第1固体原料50aと第2固体原料50bでは、蒸気圧特性が異なる複数の固体原料を有するシステム構成のため、例えば、比較的蒸気圧が高い第1固体原料50aが、後述するサブヒータによる加熱により、昇華反応が促進され、MFC99による流量制御が可能である一方、蒸気圧が極めて低い第2固体原料50bが後述するサブヒータに加え、昇華を促進するためのキャリアガスを供給しなければならない。
【0089】
例えば、第1固体原料50aは、ある程度、サブヒータの加熱により昇華してしまうまで交換する必要はないが、一方、第2固体原料50bは原料が少なくなると、第2前駆体ガスの流量が確保できずに交換する頻度が高い。コントローラ121は、第2固体原料50bの交換する周期を延伸するために、上述のような基板処理工程を行うにあたり、第2前駆体ガスの流量制御を行っている。
【0090】
図11に第2前駆体ガス供給系100b(第2固定原料供給ライン)の変形例を示す。特に図4に示す第2前駆体ガス供給系100b(第2固定原料供給ライン)と同じ構成ではあるが図11では説明に必要な構成だけを表示し、説明の不要な構成は省略している。そして、図4の第2前駆体ガス供給系100b(第2固定原料供給ライン)との違いは、MFM98と第2固定原料容器60bの間の原料供給管330bに希釈ガスラインを設けたことであり、この希釈ガスはMFC95で流量制御されている。この希釈ガスもキャリアガスと同様に不活性ガスである。なお、第2固定原料50bの昇華温度に加熱されていることが好ましい。これにより、第2希釈ガスの再固化を抑制することができる。
【0091】
図12において、縦軸は、ガス流量であり、上側横軸は、第2固体原料50bの残量、下側横軸が時間である。図12に示すように、第2固定原料供給ラインの変形例における第2前駆体ガスの流量とキャリアガスと希釈ガスの合計流量の推移が分かる。
【0092】
この希釈ガスを供給することにより、図11における第2固定原料供給ラインから第2前駆体ガスとキャリアガスと希釈ガスの混合ガスが処理室201に供給されることになる。このような構成によると、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定にすることにより、第2固体原料50bの出力側の圧力の変動を抑えることができる。具体的には、図12に示すように、第2固体原料50bの昇華によりキャリアガスを増加させる一方で希釈ガス流量を減少させるようにし、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定に保つことにより、第2固体原料50bの減少による第2固定原料供給ラインにおける二次側圧力の不安定さを解消することができる。
【0093】
また、図12に示されるように、このような構成によれば、第2固定原料供給ラインに供給される第2前駆体ガスの流量は一定に保つことができるので、第1固体原料供給ラインに設けられる流量制御器の一次側圧力と第2固体原料供給ラインの二次側圧力の差圧による確認は、第2前駆体ガスを供給する前に一度だけ行うことにより決定すればよい。
【0094】
図12における希釈ガスの流量による一定化は、第2固体原料供給ラインの二次側圧力を一定化による第2前駆体ガスの安定供給にある一定の効果は得られるが、希釈ガスの流量により調整しているので、第2固体原料50bの減少によるキャリアガスの増大に伴い、希釈ガスの流量がゼロになり調整できなくなり、所定流量の第2固体原料50bを供給することができなくなるため、第2固体原料50bの交換ということになる。
【0095】
図13に示すように、第2固体原料50bの交換の延伸の工夫ということで、希釈ガスの流量がゼロになるときに、もしくは流量がゼロになる直前に第2サブヒータ70bの設定温度を上げ、第2固体原料50bの更なる昇華を促し、再度、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定になるように調整しなおすことにした。これにより、図12では第2固体原料50bの残量があっても交換せざるを得なかったが、図13に示す改良により、第2固体原料50bの残量がギリギリまで使用できることが分かる。ここでは、流量がゼロになる「直前」とは、流量がゼロに近づいたときに予め設定されていた流量(閾値)に達したときのことをいう。
【0096】
また、設定温度を上げて温度が安定した後、第1前駆体ガスや第2前駆体ガスを供給する前に、第1固体原料供給ラインに設けられる流量制御器の一次側圧力と第2固体原料供給ラインの二次側圧力の差圧による確認を行うようにしてもよい。これにより、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスを同時に供給することができる。
【0097】
なお、第1固体原料50aにも適用することができる。例えば、第1固体原料50aの残量がどれくらいの熱量でなくなるかを予め把握し、所定の閾値を設定しておき、第1サブヒータ70aの加熱時間、または第1固体原料容器60aの加熱時間等が閾値に到達したら、第1固体原料容器60aの設定温度を上げるようにすればよい。また、例えば、第1固体原料容器60aに重量計を設置し、所定の閾値を設定しておき、第1固体原料容器60a内の第1固体原料50aの残量が閾値に到達したら、第1固体原料容器60aの設定温度を上げるようにすればよい。
【0098】
また、プロレスレシピ実行中、コントローラ121は、予め設定されている第2前駆体ガスの流量に基づき、各圧力計109、MFM98、MFC95,96からの情報により、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量の一定化を、ウエハ200を処理している間(例えば、成膜工程1~4の間)に行うことができる。これにより、第2前駆体ガス(実際は、第2前駆体ガスとキャリアガスと希釈ガスの混合ガス)を一定の流量で安定供給することができるため、ウエハ200の面内膜厚均一性及び各ウエハ200間の膜厚均一性を高めることができ、更に、再現性を向上させることができる。
【0099】
また、希釈ガスの流量がゼロに近い値に閾値を設けておき、この閾値に到達した後、実行中のプロセスレシピ終了後、第2サブヒータ70bの設定温度を上げて第2固体原料容器60bの温度を上昇させる。仮に、プロセスレシピ実行中に希釈ガスの流量がゼロに到達した場合、キャリアガスを上述の一定の流量以上の流量にするように構成される。但し、この場合、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスの同時供給を行っていれば、供給前に予め第1固体原料供給ラインに設けられる流量制御器の一次側圧力と第2固体原料供給ラインの二次側圧力の差圧による確認を行う必要がある。これにより、実行中のプロセスレシピは終了させることができる。
【0100】
そして、次のプロセスレシピの実行前に、第2サブヒータ70bの設定温度を上げて第2固体原料容器60bの温度を上昇させる。これにより、第2固体原料50bの昇華を促進することができ、キャリアガスと希釈ガスの合計流量を再設定させることができ、希釈ガス流量による調整が可能となる。なお、コントローラ121は、第2固体原料容器60bの温度が安定していなければ、第2前駆体ガスの流量が安定して生成されないため、第2固体原料容器60bの温度が設定温度に到達する前に、プロセスレシピが実行できないように構成されている。
【0101】
本実施形態によれば、複数の固体原料を昇華させたガス(前駆体ガス)を処理室201に供給可能な原料供給システムであって、MFC99により第1前駆体ガスを処理室201に供給可能に構成される第1原料供給ラインと、キャリアガス(圧送ガス)を供給しつつ第2前駆体ガスを処理室201に供給可能に構成される第2原料供給ラインを有し、該第2原料供給ラインに供給される第2前駆体ガスの流量は、該第1原料供給ラインに設けられるMFC99の一次側圧力と第2ガス供給ラインから処理室201への第2前駆体ガスの供給圧力の差圧に応じて決められるので、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスを同時に処理室201に供給することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、MFC99の一次側圧力と第2固体原料容器60bの二次側圧力の差圧がMFC99の制御範囲内で、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスをそれぞれ供給することが可能に構成されるので、第1前駆体ガスと第2前駆体ガスのそれぞれの流量を予め設定された流量で安定的に供給することができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定にすることにより、第2前駆体ガスを一定に安定供給することができるので、第1原料供給ラインと第2原料供給ラインの圧力干渉が抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態によれば、MFC99の一次側圧力と第2原料供給ラインの二次側圧力の差圧がMFC99の制御範囲内で、キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定に維持することができなくなる前に、第2固体原料容器60bの設定温度を上げ、第2固体原料50bの昇華を促進することができる。これにより、再度キャリアガスと希釈ガスの合計の流量を一定に維持させられるので、第2前駆体ガスの流量を安定にすることができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、流量制御方式の異なる複数の原料を一つの供給ライン(供給システム)で構成することができる。これにより、例えば、蒸気圧特性の異なる2つの原料(原料A、原料B)を使用するときに、それぞれの原料Aと原料Bで供給ライン(供給システム)を構築する必要があり、改造に要する時間やコストを低減することができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、原料を加熱するだけでは基板処理に使用する流量の確保ができないぐらい蒸気圧の低い原料について、温度を段階的に上げて原料を使用することで、この原料の交換周期を延伸することができる。
【0107】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0108】
また、複数の固体原料が原料供給システム100に設けられた場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。常温で液体や気体の原料が接続されていてもよい。また、MFC99の上流側の原料供給管330aに圧力計を設け、第1固体原料容器60aからの第1前駆体ガスの供給圧力P1を計測するようにしてもよい。また、MFM98は濃度計IRでも代用できる。
【0109】
また、本実施形態によれば、サブヒータ70は、固体原料容器60を覆うように設けられているが、固体原料容器60の一部(例えば、下方側のみ)に設け、固体原料容器60内の温度を上昇させるよう構成してもよく、また、固体原料容器60の上部と下部にそれぞれ設け、固体原料容器60を加熱するようにしてもよい。
【0110】
金属元素を含み、かつ炭素(C)を含まない固体原料として、すなわち、無機金属系原料(無機金属化合物)であって、ハロゲン系原料としての四塩化ハフニウム(HfCl)、または三塩化アルミニウム(AlCl)を用いることができる。また、有機金属系原料であってもよい。また、ハロゲン系原料とはハロゲン基を含む原料である。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。
【0111】
窒素含有ガスとしては、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、アンモニア(NH)ガス等のうち1以上を用いることができる。酸素含有ガスとしては、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス等のうち1以上を用いることができる。
【0112】
また、リアクタントとしては、窒素含有ガスや酸素含有ガスに限らず、ソースと反応して膜処理を行うガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いて成膜処理を行ってもよい。
【0113】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として半導体装置における成膜処理を例にあげたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理の他、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理であってもよい。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも好適に適用できる。
【0114】
さらに、本開示は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも好適に適用できる。また、本開示は、これらの装置が混在していてもよい。
【0115】
また、本実施形態では、半導体製造プロセスについて説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。例えば、液晶デバイスの製造工程、太陽電池の製造工程、発光デバイスの製造工程、ガラス基板の処理工程、セラミック基板の処理工程、導電性基板の処理工程、などの基板処理に対しても本開示を適用できる。
【0116】
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0117】
また、上述の実施形態では、不活性ガスとして、Nガスを用いる例について説明しているが、これに限らず、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。但し、この場合、希ガス源の準備が必要である。また、この希ガス源を第3原料供給管330に繋ぎ、希ガスを導入可能なように構成する必要がある。
【符号の説明】
【0118】
98 流量監視器(MFM)
99 流量制御器(MFC)
121 制御部(コントローラ)
330 第3の原料供給部(第3原料供給管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13