(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】導電パターンを有する構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240710BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/14 G
(21)【出願番号】P 2023201899
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592013174
【氏名又は名称】大英エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】米田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉田 直也
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】北郷 和英
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-170077(JP,A)
【文献】特開2002-334778(JP,A)
【文献】特開2002-016340(JP,A)
【文献】特開2013-187246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及びその裏面である第2の面を有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体と、
前記面状部材で形成され、前記第1の面が凸となった円錐台状の外側面及び上面並びに前記第2の面が凹となった円錐台状の内側面及び天井面を有し、前記上面及び前記天井面の間を貫通する開口を有する
中空の凸状スルーホールと、
前記凸状スルーホールの前記外側面及び前記上面に形成された導電層並びに前記内側面及び前記天井面に形成された導電層が前記開口に形成された導電層で繋がれて構成された接続層と、
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方に形成され、前記接続層と繋がった導電パターンと、
を含む回路基板を2以上備え、
一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記外側面である挿入側外側面及び他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記内側面である被挿入側内側面が同一のテーパ角を有し、
前記挿入側外側面が前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入され、前記接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触した
中空の前記凸状スルーホールどうしの嵌合構造を有する、導電パターンを有する構造体。
【請求項2】
第1の面及びその裏面である第2の面を有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体と、
前記面状部材で形成され、前記第1の面が凸となった円錐台状の外側面及び上面並びに前記第2の面が凹となった円錐台状の内側面及び天井面を有し、前記上面及び前記天井面の間を貫通する開口を有する
中空の凸状スルーホールと、
前記凸状スルーホールの前記外側面及び前記上面に形成された導電層並びに前記内側面及び前記天井面に形成された導電層が前記開口に形成された導電層で繋がれて構成された接続層と、
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方に形成され、前記接続層と繋がった導電パターンと、
を含む回路基板を2以上備え、
一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記外側面である挿入側外側面及び他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記内側面である被挿入側内側面が同一のテーパ角を有し、
前記挿入側外側面が前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入され、前記接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触した
中空の前記凸状スルーホールどうしの嵌合構造を有
し、
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率と前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率とが異なる、導電パターンを有する構造体。
【請求項3】
前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率が、前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率より小さい、請求項
2に記載の構造体。
【請求項4】
第1の面及びその裏面である第2の面を有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体と、
前記面状部材で形成され、前記第1の面が凸となった円錐台状の外側面及び上面並びに前記第2の面が凹となった円錐台状の内側面及び天井面を有し、前記上面及び前記天井面の間を貫通する開口を有する凸状スルーホールと、
前記凸状スルーホールの前記外側面及び前記上面に形成された導電層並びに前記内側面及び前記天井面に形成された導電層が前記開口に形成された導電層で繋がれて構成された接続層と、
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方に形成され、前記接続層と繋がった導電パターンと、
を含む回路基板を2以上備え、
一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記外側面である挿入側外側面及び他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記内側面である被挿入側内側面が同一のテーパ角を有し、
前記挿入側外側面が前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入され、前記接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触した嵌合構造を有
し、
前記接続層が、周方向で分割され、互いに絶縁された複数の分割接続層で構成され、
前記分割接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触するとき、前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面に形成された前記分割接続層が周方向で同じ位置に配置される、導電パターンを有する構造体。
【請求項5】
前記第1の面に形成された前記導電パターンが1つの前記分割接続層と繋がり、前記第2の面に形成された前記導電パターンがその他の前記分割接続層と繋がる、請求項
4に記載の構造体。
【請求項6】
第1の面及びその裏面である第2の面を有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体と、
前記面状部材で形成され、前記第1の面が凸となった円錐台状の外側面及び上面並びに前記第2の面が凹となった円錐台状の内側面及び天井面を有し、前記上面及び前記天井面の間を貫通する開口を有する凸状スルーホールと、
前記凸状スルーホールの前記外側面及び前記上面に形成された導電層並びに前記内側面及び前記天井面に形成された導電層が前記開口に形成された導電層で繋がれて構成された接続層と、
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方に形成され、前記接続層と繋がった導電パターンと、
を含む回路基板を2以上備え、
一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記外側面である挿入側外側面及び他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記内側面である被挿入側内側面が同一のテーパ角を有し、
前記挿入側外側面が前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入され、前記接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触した嵌合構造を有
し、
前記一方の回路基板の前記基板本体の端部と前記他方の回路基板の前記基板本体の端部とを連結する2以上の連結部を備え、
前記連結部の位置における前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板の間の距離が、嵌合した前記凸状スルーホールの位置における前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板の間の距離より短い、構造体。
【請求項7】
前記テーパ角が、円錐台状の前記凸状スルーホールの仮想底面に対する仰角であり、
前記テーパ角が40°以上80°以下の範囲にある、請求項1
から6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの硬度と前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの硬度とが異なる、請求項1
から6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項9】
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの前記内部空間を覆う前記面状部材の厚みと前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの前記内部空間を覆う前記面状部材の厚みとが異なる、請求項1
から6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項10】
他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記天井面の内径が、一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記上面の外径より小さく、
前記挿入側外側面と前記被挿入側内側面とが圧着状態で面接触したとき、前記上面と前記天井面との間にクリアランスを有し、
前記クリアランスの領域よりも挿入方向手前側の前記被挿入側内側面の全域で、前記挿入側外側面と圧着状態で面接触する、請求項1
から6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項11】
前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板が同一形状の前記凸状スルーホールを有し、
前記挿入側外側面が、前記面状部材の厚みにより前記外側面の外径より小さい内径を有する前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入される、請求項
10に記載の構造体。
【請求項12】
1つの前記回路基板に複数の前記凸状スルーホールが形成された、請求項1から
6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項13】
3以上の前記回路基板が前記凸状スルーホールで接続された、請求項1から
6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項14】
前記回路基板が、立体形状を有するMID(Molded Interconnect Device:成形回路部品)である、請求項1から
6の何れか1項に記載の構造体。
【請求項15】
前記挿入側外側面の70%以上の領域が前記被挿入側内側面と圧着状態で面接触する、請求項1から
6の何れか1項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回路基板が接続されて構成された導電パターンを有する構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電パターンが形成された回路基板において、多機能な回路を実現するため、複数の回路基板を電気的に接続することが望まれている。しかし、複数の回路基板を繋ぐため、配線の複雑な取り回しを要する場合がある。これを回避するため、2つの回路基板に設けられた凸状スルーホールに導電性ピンを圧挿して繋ぐ構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構造体では、回路基板と別部材のピンを用いて2つの回路基板を繋げるので、電気的には繋がっても、回路基板を十分な機械的強度で繋げることは困難である。十分な機械的な強度で回路基板を繋げるためには、更なる連結部材も必要となり、省スペースを実現できず、製造コストも上昇する。
特に、MID(Molded Interconnect Device:成形回路部品)と称される立体的な形状を有する回路基板を用いた場合には、ピンや連結部材の配置がより難しくなる。よって、電気的及び機械的に信頼性高く接続されたコンパクトな構造体を得ることは困難である。
【0005】
よって、本発明の目的は、複数の回路基板が確実に電気的に接続されるとともに十分な機械的強度で接続された、省スペースな、導電パターンを有する構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
第1の面及びその裏面である第2の面を有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体と、
前記面状部材で形成され、前記第1の面が凸となった円錐台状の外側面及び上面並びに前記第2の面が凹となった円錐台状の内側面及び天井面を有し、前記上面及び前記天井面の間を貫通する開口を有する凸状スルーホールと、
前記凸状スルーホールの前記外側面及び前記上面に形成された導電層並びに前記内側面及び前記天井面に形成された導電層が前記開口に形成された導電層で繋がれて構成された接続層と、
前記第1の面及び前記第2の面の少なくとも一方に形成され、前記接続層と繋がった導電パターンと、
を含む回路基板を2以上備え、
一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記外側面である挿入側外側面及び他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記内側面である被挿入側内側面が同一のテーパ角を有し、
前記挿入側外側面が前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入され、前記接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触した嵌合構造を有する、導電パターンを有する構造体。
【0007】
[2]
前記テーパ角が、円錐台状の前記凸状スルーホールの仮想底面に対する仰角であり、
前記テーパ角が40°以上80°以下の範囲にある、「1]に記載の構造体。
【0008】
[3]
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率と前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率とが異なる、「1]または[2]に記載の構造体。
【0009】
[4]
前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率が、前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの弾性率より小さい、[3]に記載の構造体。
【0010】
[5]
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの硬度と前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの硬度とが異なる、[1]から[4]の何れかに記載の構造体。
【0011】
[6]
前記一方の回路基板の前記凸状スルーホールの前記内部空間を覆う前記面状部材の厚みと前記他方の回路基板の前記凸状スルーホールの前記内部空間を覆う前記面状部材の厚みとが異なる、[1]から[5]の何れかに記載の構造体。
【0012】
[7]
他方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記天井面の内径が、一方の前記回路基板の前記凸状スルーホールの前記上面の外径より小さく、
前記挿入側外側面と前記被挿入側内側面とが圧着状態で面接触したとき、前記上面と前記天井面との間にクリアランスを有し、
前記クリアランスの領域よりも挿入方向手前側の前記被挿入側内側面の全域で、前記挿入側外側面と圧着状態で面接触する、[1]から[6]の何れかに記載の構造体。
【0013】
[8]
前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板が同一形状の前記凸状スルーホールを有し、
前記挿入側外側面が、前記面状部材の厚みにより前記外側面の外径より小さい内径を有する前記被挿入側内側面で囲まれた内部空間に挿入される、[7]に記載の構造体。
【0014】
[9]
前記接続層が、周方向で分割され、互いに絶縁された複数の分割接続層で構成され、
前記分割接続層が形成された前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面が圧着状態で面接触するとき、前記挿入側外側面及び前記被挿入側内側面に形成された前記分割接続層が周方向で同じ位置に配置される、[1]から[8]の何れかに記載の構造体。
【0015】
[10]
前記第1の面に形成された前記導電パターンが1つの前記分割接続層と繋がり、前記第2の面に形成された前記導電パターンがその他の前記分割接続層と繋がる、[9]に記載の構造体。
【0016】
[11]
前記一方の回路基板の前記基板本体の端部と前記他方の回路基板の前記基板本体の端部とを連結する2以上の連結部を備え、
前記連結部の位置における前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板の間の距離が、嵌合した前記凸状スルーホールの位置における前記一方の回路基板及び前記他方の回路基板の間の距離より短い、[1]から[10]の何れかに記載の構造体。
【0017】
[12]
1つの前記回路基板に複数の前記凸状スルーホールが形成された、[1]から[11]の何れかに記載の構造体。
【0018】
[13]
3以上の前記回路基板が前記凸状スルーホールで接続された、[1]から[12]の何れかに記載の構造体。
【0019】
[14]
前記回路基板が、立体形状を有するMID(Molded Interconnect Device:成形回路部品)である、[1]から[13]の何れか記載の構造体。
【0020】
[15]
前記挿入側外側面の70%以上の領域が前記被挿入側内側面と圧着状態で面接触する、[1]から[14]の何れかに記載の構造体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、複数の回路基板が確実に電気的に接続されるとともに十分な機械的強度で接続された、省スペースな、導電パターンを有する構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明に係る導電パターンを有する構造体を構成する回路基板の一例を模式的に示す斜視図であって、第1の面側を示す図である。
【
図1B】本発明に係る導電パターンを有する構造体を構成する回路基板の一例を模式的に示す斜視図であって、第2の面側を示す図である。
【
図2A】
図1A及び
図1Bの断面A-Aを示す本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第1の面に導電パターンが形成された例を示す図である。
【
図2B】
図1A及び
図1Bの断面B-Bを示す本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第2の面に導電パターンが形成された例を示す図である。
【
図3】一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図4】同一の形状の凸状スルーホールを有する回路基板において、一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図5A】第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第1の例を模式的に示す図である。
【
図5B】第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第2の例を模式的に示す図である。
【
図5C】第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第3の例を模式的に示す図である。
【
図5D】第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第4の例を模式的に示す図である。
【
図5E】第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第5の例を模式的に示す図である。
【
図6A】
図1A及び
図1Bの断面C-Cを示す本発明の第2の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第1及び第2の面に導電パターンが形成された例を示す図である。
【
図6B】第2の実施形態に係る凸状スルーホールを有する一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した状態を模式的に示す、
図6Aの断面D-Dの位置から嵌合状態を見た平面断面図である。
【
図7A】第2の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第1の例を模式的に示す図である。
【
図7B】第2の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された第2の例を模式的に示す図である。
【
図8】一方の回路基板の端部と他方の回路基板の端部とが連結部材で連結された構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図9】3以上の回路基板が凸状スルーホールで接続された導電パターンを有する構造体の例を模式的に示す側面断面図である。
【
図10】立体形状を有する回路基板が凸状スルーホールで接続された導電パターンを有する構造体の例を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。各図面中、同一の機能を有する対応する部材には、同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では前述の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0024】
(回路基板)
本発明では、複数の回路基板が積層されて、導電パターンを有する構造体が形成される。積層される回路基板は、平板形状またはその他の任意の立体形状を有する基板本体を備える。基板本体は、成形により製造可能であるが、一定の形状の部材からレーザ加工等により製造することもできる。
【0025】
はじめに、
図1A及び
図1Bを参照しながら、導電パターンを有する構造体を構成する回路基板について、その概要の説明を行う。以下においては、平板形状を有する基板本体を例にとって説明を行う。
図1A及び
図1Bは、本発明に係る導電パターンを有する構造体を構成する回路基板の一例を模式的に示す斜視図であって、
図1Aは第1の面側を示す図であり、
図1Bは第2の面側を示す図である。第2の面は第1の面の裏面であって、
図1Aの矢印で示す方向に回路基板を180度回転させることにより、
図1Bに示す状態となる。
【0026】
図1A及び
図1Bに示す回路基板4は、第1の面6A及びその裏面である第2の面6Bを有する所定の厚みの面状部材で形成された基板本体6を備える。面状部材とは、第1の面及びその裏面の第2の面の大きさに比べてその間の距離(厚み)が小さい、塊状でない形状を有する。第1の面6A及びその裏面の第2の面6Bは、平面だけでなく、任意の曲面、凹凸面、折れ曲がり部分等を有する場合もあり得る。面状部材の所定の厚みは、一定の厚みには限られず、領域によって厚みが異なる場合もあり得る。
【0027】
以下で説明する基板本体6は、全ての領域が面状部材で形成された平板形状を有するが、これに限られるものでなない。少なくとも後述する凸状スルーホール10が配置される領域に面状部材を有するのであれば、塊状の領域分を含むその他の任意の立体形状を有する基板本体を用いることができる。
【0028】
基板本体6には、面状部材により一体的に形成され凸状スルーホール10を有する。図示された例では、基板本体6に、4つの凸状スルーホール10(10P(10P(1)、10P(2))、10Q、10R)が一体的に形成されている。ここで凸状スルーホールとは、回路基板の両面に形成された導電パターンの間、または積層された複数の回路基板の導電パターンの間を開口部に形成された導電部により電気的に繋げる構造の総称である。導電パターンと導通した凸状スルーホール10を介して、複数の回路基板4を電気的及び機械的に接続することができる。
【0029】
基板本体6の材料として、無機系材料及び有機系材料を用いることができる。無機系材料としては例えばセラミック等、有機系材料としては例えば樹脂等が挙げられる。セラミックとしては、窒化ケイ素焼結体、サイアロン焼結体、炭化ケイ素焼結体、アルミナ焼結体、窒化アルミニウム焼結体等を好適に用いることができる。これらセラミック以外にも、金属を成型し、表面に絶縁加工を施したものを用いてもよい。
【0030】
樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0031】
凸状スルーホール10は、第1の面6Aが凸となった円錐台状の外側面12A及び上面14A並びに第2の面6Bが凹となった円錐台状の内側面12B及び天井面14Bを有し、上面14A及び天井面14Bの間を貫通する開口16を有する。このような凸状スルーホール10のうち、
図1A,1Bに示された回路基板4には、異なるタイプの凸状スルーホール10P、10Q、10Rが形成されている。
【0032】
以下においては、各タイプの凸状スルーホール10P、10Q、10Rについて詳細に説明する。なお、
図3、
図4及び
図8から
図10のような、凸状スルーホールのタイプを問わない凸状スルーホール共通の部分については、凸状スルーホールを参照番号10で示し、各タイプの説明においては、それぞれ10P、10Q、10Rの参照番号で示す。
【0033】
(第1の実施形態に係る凸状スルーホール)
はじめに、
図2A及び
図2Bを参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホール10の説明を行う。
図2Aは、
図1A及び
図1Bの断面A-Aを示す本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第1の面に導電パターンが形成された例を示す図である。
図2Bは、
図1A及び
図1Bの断面B-Bを示す本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第2の面に導電パターンが形成された例を示す図である。何れの図においても、接続層及び導電パターンの厚みを実際よりも厚くて示してある。
【0034】
第1の実施形態に係る凸状スルーホール10P、10Qは、基板本体6と同じ材料で一体成形される。ただし、これに限られるものではなく、二色成形等により基板本体6と異なる材料で成形することもできる。凸状スルーホール10P、10Qは、面状部材により、円錐台の側面を構成する側面部分12と、円錐台の上面を構成する上面部分14とが形成されている。凸状スルーホール10P、10Qでは、角度θのテーパ角を有するように側面部分12が形成されている。ここで、テーパ角θは、円錐台状の凸状スルーホール10の仮想底面に対する仰角である。なお、凸状スルーホール10の外側面を伸ばした仮想の円錐における、仮想底面と垂直な円錐の中心線とのなす角度でテーパ角を示すこことになる。その場合の角度は、90°-θの値となる。
【0035】
凸状スルーホール10P、10Qの上面部分14には、貫通孔である開口16が形成されている。円錐台の底面は開口しており、内部空間Sが形成されている。凸状スルーホール10P、10Qの外面は、側面部分12による外側面12Aと、上面部分14による上面14Aとで構成される。一方、凸状スルーホール10P、10Qの内面は、側面部分12による内側面12Bと、上面部分14による天井面14Bとで構成される。つまり、内側面12B及び天井面14Bで囲まれて、内部空間Sが形成されている。
【0036】
凸状スルーホール10P、10Qには、導電性を有する接続層22が形成されている。更に詳細に述べれば、接続層22として、凸状スルーホール10P、10Qの外側面12Aに外側面側接続層22Aが形成され、内側面12Bに内側面側接続層22Bが形成され、開口16に、外側面側接続層22A及び内側面側接続層22Bを繋ぐ導電層22Cが形成されている。
【0037】
また、凸状スルーホール10Pでは、基板本体6の第1の面6Aに導電パターン20が形成され、導電パターン20は、接続層22を構成する外側面側接続層22Aと繋がっている。一方、凸状スルーホール10Qでは、基板本体6の第2の面6Bに導電パターン20が形成され、導電パターン20は、接続層22を構成する内側面側接続層22Bと繋がっている。何れの導電パターン20においても、回路パターンでだけでなく、回路パターンと電気的に繋がった電子部品が取り付けられている場合もあり得る。なお、基板本体6の第1の面6A及びに第2の面6Bの両方に導電パターン20が形成され、接続層22により両面の導電パターン20が繋がった場合もあり得る。
【0038】
導電パターン20や接続層22は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)等の材料で形成することができ、銅めっき等が施されることが好ましい。
【0039】
基板本体6の厚みとして、0.2mm以上5.0mm以下の範囲を例示できる。凸状スルーホール10P、10Qの側面部分12及び上面部分14の厚みとして、0.2mm以上5.0mm以下の範囲を例示できる。凸状スルーホール10P、10Qの上面部分14の厚みは、側面部分12の厚みと同一である場合も、異なる場合もあり得る。凸状スルーホール10P、10Qの側面部分12及び上面部分14の厚みは、基板本体6の厚みと同一の場合も、異なる場合もあり得る。円錐台状の凸状スルーホール10P、10Qの上面部分14の外径として、0.2mm以上10.0mm以下の範囲を例示でき、高さとして、0.2mm以上10.0mm以下の範囲を例示できる。
【0040】
(凸状スルーホールの勘合構造)
次に、
図3を参照しながら、凸状スルーホール10の勘合構造の説明を行う。
図3は、一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した構造を模式的に示す側面断面図である。凸状スルーホール10の外側面に形成された接続層の厚みは非常に薄いので、図面では省略して示している。なお、
図3では、矢印等を明確に示すため、一方の回路基板4Aをハッチングでなく薄い着色で示している。
【0041】
図3では、凸状スルーホール10の嵌合により一方の回路基板4Aと他方の回路基板4Bとが接続されて形成された導電パターンを有する構造体2の一部を示す。一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の外側面である挿入側外側面12A(4A)が、他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の内側面である被挿入側内側面12B(4B)で囲まれた内部空間SBに挿入されている。一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10及び他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の形状は、同一の場合も異なる場合もあり得る。なお、
図3は、凸状スルーホール10の形状が異なる場合を示す。何れの場合でも、一方の回路基板4Aの挿入側外側面12A(4A)及び他方の回路基板4Bの被挿入側内側面12B(4B)が同一のテーパ角θを有している。
【0042】
更に、本実施形態では、一方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bの内径D2(4B)が、挿入する一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aの外径D1(4A)より小さくなっている。別の表現をすれば、被挿入側内側面12B(4B)の挿入方向奥側の端部の内径D2(4B)が、挿入側外側面12A(4A)の挿入方向奥側の端部の外径D1(4A)より小さくなっている。これにより、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10を内部空間SBの最も奥まで押し込んだ場合でも、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bとの間に、所定のクリアランスCTを確保することができる。
【0043】
挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が同一のテーパ角θを有しているので、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10を内部空間SBの最も奥まで押し込んだとき、クリアランスCTの領域よりも挿入方向手前側の被挿入側内側面12B(4B)の全域で、挿入側外側面12A(4A)と圧着状態で面接触する。
【0044】
つまり、一方の回路基板4Aの挿入側外側面12A(4A)を他方の回路基板4Bの被挿入側内側面12B(4B)で囲まれた空間SBの奥側へ挿入していくと、挿入方向の位置h(挿入口でh=0)に対応する被挿入側内側面12B(4B)の内径id(h)はテーパに沿って小さくなっていき、被挿入側内側面12B(4B)の内径id(h)が挿入側外側面12A(4A)の上面14Aの外径D1(4A)と一致した位置で、それ以上挿入できない状態となる。このとき、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bとの間クリアランスCTが生じ、挿入側外側面12A(4A)が内部空間SBに挿入された全域において、接続層22が形成された挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が圧着状態で面接触する勘合構造を得ることができる。
【0045】
これにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bは、十分な機械的強度で接続される。更に、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10に形成された接続層22どうしが圧着されているので、電気的に接触抵抗の少ない効率的な接続が実現でき、半田付け等の付加作業を要しない。このため、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bを短い間隔で接続することができるので、コンパクトな構造体2が実現できる。
【0046】
以上のように、他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bの内径D2(4B)が、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aの外径外径D1(4A)より小さく、挿入側外側面12A(4A)と被挿入側内側面12B(4B)とが圧着状態で面接触したとき、上面14A(4A)と天井面14B(4B)との間にクリアランスCTを有し、クリアランスCTの領域よりも挿入方向手前側の被挿入側内側面面12B(4B)の全域で、挿入側外側面12A(4A)と圧着状態で面接触する。
【0047】
これにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bが、確実に電気的に接続されるとともに、十分な機械的強度で接続された嵌合構造を得ることができる。凸状スルーホール10の製造公差を考慮して、確実に挿入側外側面12A(4A)と被挿入側内側面12B(4B)とが圧着状態で面接触する範囲において、クリアランスCTを小さくとることが好ましい。凸状スルーホール10の弾性変形も考慮すると、実際に挿入側外側面12A(4A)と被挿入側内側面12B(4B)とが圧着状態で面接触した状態において、クリアランスが存在せず、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bとが接している場合もあり得る。その場合には、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の上面14Aに形成された導電層22Cと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の天井面14Bに形成された導電層22Cとが電気的に接触して、電気的により効率的な接続が期待できる。
【0048】
<テーパ角>
回路基板4Aの挿入側外側面12A(4A)を内部空間SBの奥側に押し込んで、他方の回路基板4Bの被挿入側内側面12B(4B)を押圧するとき、テーパ角θによる楔効果が生じる。挿入側外側面12A(4A)の内部空間SBの奥側に押し込む力をFとし、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)に垂直な方向の楔効果の力(全周の力)をPとすれば、
P=F/Sin(90°-θ)=F/Cos(θ)
の関係を有する。なお、上式では、簡単のため、摩擦項を省略してある。
上式から明らかなように、テーパ角θが大きい(90°に近い)方が楔効果はより大きくなり、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)の間の面圧を高めることができる。
【0049】
一方、所定のクリアランスをCTとすれば、
D1(4A)=D2(4B)+2×CT/Tan(θ)
の関係を有するので、
CT=(D1(4A)-D2(4B))×Tan(θ)/2
D1(4A)>D2(4B)
となる。
【0050】
また、内側面12Bの内径の変化をΔDとし、内径の変化ΔDに伴う挿入方向の位置変化(円錐台の仮想底面に垂直な方向の位置変化)をΔhとすれば、クリアランスCTの場合と同様に、
Δh=ΔD×Tan(θ)/2
となる。
【0051】
テーパ角θが大きくなる(90°近くなる)とTan(θ)の値が大きくなるので、クリアランスCTが大きくなるとともに、被挿入側内側面12B(4B)の内径の変化ΔDにより、挿入方向の位置変化Δhが大きくなる。樹脂成形体の公差を考えると、テーパ角θが大きい場合、被挿入側内側面12B(4B)の内径が挿入側外側面12A(4A)の上面12Aの外径D1(4A)と一致する挿入方向の位置にばらつきが生じ易くなる。
【0052】
このため、例えば、複数の凸状スルーホール10を有する回路基板4を勘合させる場合、個々の凸状スルーホール10により一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離が異なる虞がある。その場合、回路基板4に撓みが生じて、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bが適切に接続されない虞がある。
【0053】
これらの相反する事象を考慮すると、テーパ角θとして、40°以上80°以下の範囲が好ましく、50°以上70°以下の範囲がより好ましいといえる。凸状スルーホール10が、このような範囲のテーパ角θを有することにより、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)を楔効果で強く面接触させることができるとともに、凸状スルーホール10が嵌合した一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離のばらつきを抑制することができる。
【0054】
以上のような構造により、挿入側外側面12A(4A)の70%以上の領域が被挿入側内側面12B(4B)と圧着状態で面接触することが好ましく、80%以上の領域が被挿入側内側面12B(4B)と圧着状態で面接触することがより好ましい。これにより、回路基板4A及び他方の回路基板4Bを強固に接続できるとともに、回路基板間の距離を小さくしてコンパクトな積層構造が得られる。
【0055】
<凸状スルーホールの弾性率>
挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が圧着状態で面接触する勘合構造では、接続層22に影響を与えない僅かな範囲で、嵌合する凸状スルーホール10が弾性変形すると考えられる。よって、より安定した勘合構造を得るため、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の弾性率と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の弾性率とが異なることが好ましい。これにより、凸状スルーホール10の嵌合時に弾性率が低い凸状スルーホール10が主に弾性変形し、安定した嵌合構造が得られる。
【0056】
具体的な弾性率の数値としては、例えば、何れか一方の引張弾性率を2000~25000MPa程度とし、他方の引張弾性率を1600~22000MPa程度とすることが挙げられる。ただし、これに限られるものではなく、その他の任意の弾性係数を採用することができる。
【0057】
このように、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の弾性率と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の弾性率とが異なる場合には、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)をより安定して圧着状態で面接触させることができる。
【0058】
僅かな弾性変形なので、嵌合する凸状スルーホール10のうち、どちらの弾性率を小さくてもよい。ただし、一般的に広がる方向の変形の方が、縮まる方向の変形に比べて、座屈等の生じないより均一な変形が期待できる。この観点から、広がる方向の弾性変形が生じる他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の弾性率が、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の弾性率より小さい方がより好ましいといえる。これにより、嵌合する凸状スルーホール10でより均一な弾性変形が生じて、より安定して圧着状態で面接触する勘合構造を得ることができる。
【0059】
<凸状スルーホールの硬度>
嵌合する凸状スルーホール10の硬さが異なることによっても、弾性率が異なる場合と同様な効果を得ることができる。一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の硬度と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の硬度が異なることが好ましい。例えば、何れか一方の引張弾性率をロックウエルR65~100程度とし、他方の引張弾性率をロックウエルR80~130程度とすることが挙げられる。ただし、これに限られるものではなく、その他の任意の硬度の樹脂材料を採用することができる。
【0060】
このように、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の硬度と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の硬度とが異なる場合には、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)をより安定して圧着状態で面接触させることができる。
【0061】
また、弾性率の場合と同様に、広がる方向の弾性変形が生じる他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の硬度が、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の硬度より低い方がより好ましいといえる。
【0062】
<凸状スルーホールの内部空間を覆う面状部材の厚み>
更に、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の内部空間SAを覆う面状部材の厚みと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の内部空間SBを覆う面状部材の厚みとが異なることによっても、弾性率が異なる場合と同様な効果を得ることができる。
【0063】
このように、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の内部空間SAを覆う面状部材の厚みと他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の内部空間SBを覆う面状部材の厚みとが異なる場合には、挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)をより安定して圧着状態で面接触させることができる。
【0064】
また、弾性率の場合と同様に、広がる方向の弾性変形が生じる他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の内部空間SBを覆う面状部材の厚みが、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の内部空間SAを覆う面状部材の厚みより薄い方がより好ましいといえる。
【0065】
(同一の形状の凸状スルーホールの勘合構造)
次に、
図4を参照しながら、同一の形状の凸状スルーホール10の勘合により回路基板4が接続された構造の説明を行う。
図4は、同一の形状の凸状スルーホールを有する回路基板において、一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した構造を模式的に示す側面断面図である。
【0066】
図4でも、凸状スルーホール10の嵌合により一方の回路基板4Aと他方の回路基板4Bとが接続されて形成された導電パターンを有する構造体2の一部を示す。
図4では、同一の形状の凸状スルーホール10が勘合して、回路基板4A、4Bが接続されている。よって、凸状スルーホール10の内側面12Bの内径は、内部空間Sを覆う面状部材の厚みtにより、外側面12Aの外径より小さく形成されている。よって、同一の形状の凸状スルーホール10どうしを勘合した場合、所定のクリアランスCTが得られると考えられる。
【0067】
これについて更に詳細に述べれば、他方の回路基板4Bの被挿入側内側面12B(4B)の天井面14Bの内径をD2(4B)とし、一方の回路基板4Aの挿入側外側面12A(4A)の上面14Aの外径をD1(4A)とし、凸状スルーホール10の側面部分12及び上面部分14の厚みをtとすれば、下記の関係を有する。
D2(4B)=D1(4A)+2×t/Tan-2×t/Sin(θ)
【0068】
クリアランスCTを有するには、D2(4B)<D1(4A)の関係を有する必要があり、
D1(4A)+2×t/Tan-2×t/Sin(θ)<D1(4A)
の関係を有する必要がある。上記の式を整理すると、
Cos(θ)<1
となる。テーパ角θは90°となることはないので、同一の形状の凸状スルーホール10が勘合する場合には、常に所定のクリアランスCTを有することができる。上記のようにクリアランスCTを有さない場合もあり得るが、クリアランスCTを有する場合には、意図しない回路間の導通(短絡)を抑制することができ、特にソルダーレジストを有さない場合に有効である。
【0069】
このように、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bが同一形状の凸状スルーホール10を有する場合、挿入側外側面12A(4A)が、面状部材の厚みtにより外側面12A(4B)の外径より小さい内径を有する被挿入側内側面12B(4B)で囲まれた内部空間SBに挿入される。
【0070】
同一の回路基板4を用いて構造体2を形成できるので、構造体2の製造コストを低減できる。それとともに、確実に所定のクリアランスCTを確保することができ、クリアランスCTの領域よりも挿入方向手前側の被挿入側内側面面12B(4B)の全域で、確実に挿入側外側面12A(4A)と圧着状態で面接触させることができる。
【0071】
凸状スルーホール10の上面部分14の厚みが側面部分12の厚みより若干厚い場合もあり得るが、貫通孔である開口16を形成する観点からも、上面部分14を著しく厚くすることは考えにくい。テーパ角θが40°以上80°以下の範囲であれば、常にD2(4B)<D1(4A)の関係を有すると考えられる。なお、
図3及び
図4を参照しながら説明した勘合構造は、上記の第1の実施形態に係る凸状スルーホール10だけでなく、後述の全ての実施形態に係る凸状スルーホール10についても適用される。
【0072】
(回路基板に形成された導電パターンの接続)
次に、
図5Aから
図5Eを参照しながら、第1の実施形態に係る凸状スルーホール10の勘合により、一方の回路基板4Aの導電パターン20と他方の回路基板4Bの導電パターン20とが電気的に接続された様々な態様について説明する。
図5Aから
図5Eは、第1の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された例を模式的に示す図であり、
図5Aは第1の例を示し、
図5Bは第2の例を示し、
図5Cは第3の例を示し、
図5Dは第4の例を示し、
図5Eは第5の例を示す。
【0073】
<第1の例>
図5Aに示す第1の例では、挿入側の一方の回路基板4Aも被挿入側の他方の回路基板4Bも、
図2Aに示すような第1の面6Aに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Pを有する。これにより、一方の回路基板4Aの第1の面6Aに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第1の面6Aに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0074】
<第2の例>
図5Bに示す第2の例では、挿入側の一方の回路基板4Aも被挿入側の他方の回路基板4Bも、
図2Bに示すような第2の面6Bに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Qを有する。これにより、一方の回路基板4Aの第2の面6Bに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第2の面6Bに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0075】
<第3の例>
図5Cに示す第3の例では、挿入側の一方の回路基板4Aが、
図2Bに示すような第2の面6Bに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Qを有し、被挿入側の他方の回路基板4Bが、
図2Aに示すような第1の面6Aに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Pを有する。これにより、一方の回路基板4Aの第2の面6Bに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第1の面6Aに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0076】
<第4の例>
図5Dに示す第4の例では、挿入側の一方の回路基板4Aが、
図2Aに示すような第1の面6Aに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Pを有し、被挿入側の他方の回路基板4Bが、
図2Bに示すような第2の面6Bに導電パターン20が形成された凸状スルーホール10Qを有する。これにより、一方の回路基板4Aの第1の面6Aに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第2の面6Bに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0077】
<第5の例>
図5Eに示す第5の例では、挿入側の一方の回路基板4Aの第1の面6A及びに第2の面6Bの両方に導電パターン20が形成されて、接続層22で繋がれており、被挿入側の他方の回路基板4Bの第1の面6A及びに第2の面6Bの両方に導電パターン20が形成されて、接続層22で繋がれている。よって、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの両面に形成された導電パターン20が、勘合した凸状スルーホール10により電気的に接続された構造体2が得られる。
【0078】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る凸状スルーホール10により、様々な回路パターンを有する構造体2を得ることができる。
【0079】
(第2の実施形態に係る凸状スルーホール)
次に、
図6A及び
図6Bを参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る凸状スルーホールの説明を行う。
図6Aは、
図1A及び
図1Bの断面C-Cを示す本発明の第2の実施形態に係る凸状スルーホールを模式的に示す側面断面図であって、第1及び第2の面に導電パターンが形成された例を示す図である。
図6Bは、第2の実施形態に係る凸状スルーホールを有する一方の回路基板の凸状スルーホールと他方の回路基板の凸状スルーホールとが勘合した状態を模式的に示す、
図6Aの断面D-Dの位置から嵌合状態を見た平面断面図である。何れの図においても、接続層及び導電パターンの厚みを実際よりも厚くて示してある。本実施形態でも、圧着状態で面接触する嵌合構造が得られれば、クリアランスCTが存在する場合も、存在しない場合もあり得る。
【0080】
本実施形態に係る回路基板4に形成された凸状スルーホール10Rは、
図6Bに示すように、接続層が、周方向で2分割され、互いに絶縁された2つの分割接続層24、26で構成されている。2つの分割接続層24、26の間には、十分な絶縁空間が確保されている。更に、絶縁空間に絶縁物を充填することもできる。
【0081】
分割接続層24、26について更に詳細に述べれば、
図6A及び図面6Bの左側の分割接続層24として、凸状スルーホール10Rの外側面12Aに外側面側接続層24Aが形成され、内側面12Bに内側面側接続層24Bが形成され、開口16に、外側面側接続層24A及び内側面側接続層24Bを繋ぐ導電層24Cが形成されている。同様に、
図6A及び
図6Bの右側の分割接続層26として、凸状スルーホール10Rの外側面12Aに外側面側接続層26Aが形成され、内側面12Bに内側面側接続層26Bが形成され、開口16に、外側面側接続層26A及び内側面側接続層26Bを繋ぐ導電層26Cが形成されている。
【0082】
図6Aに示した例では、回路基板4の第1の面6Aに形成された導電パターン20が分割接続層24と繋がり、第2の面6Bに形成された導電パターン20が分割接続層26と繋がっている。ただし、これに限られるものではなく、逆に、回路基板4の第1の面6Aに形成された導電パターン20が分割接続層26と繋がり、第2の面6Bに形成された導電パターン20が分割接続層24と繋がる場合もあり得る。また、回路基板4の第1の面6Aまたは第2の面6Bの一方に、2つの独立した導電パターン20が形成され、それぞれが、分割接続層24及び第2分割接続層26と繋がる場合もあり得る。
【0083】
分割接続層24、26形成された凸状スルーホール10Rを有する一方の回路基板4Aが、分割接続層24、26形成された凸状スルーホール10Rを有する他方の回路基板4Bの内部空間に挿入される。そして、
図6Bに示すように、分割接続層24、26が形成された挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が圧着状態で面接触する。このとき、挿入側外側面12A(4A)に形成された分割接続層24の外側面側接続層24A(4A)と、被挿入側内側面12B(4B)に形成された分割接続層24の内側面側接続層24B(4B)とが周方向で同じ位置に配置される。同様に、挿入側外側面12A(4A)に形成された分割接続層26の外側面側接続層26A(4A)と、被挿入側内側面12B(4B)に形成された分割接続層が26の内側面側接続層26B(4B)とが周方向で同じ位置に配置される。
【0084】
一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bに形成された分割接続層24どうしの接合により、回路基板4A、4Bに形成された導電パターン20を電気的に繋ぐことができ、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bに形成された分割接続層26どうしの接合により、回路基板4A、4Bに形成された導電パターン20を電気的につなぐことができる。このとき、分割接続層24及び分割接続層26は互いに絶縁されている。
【0085】
(回路基板に形成された導電パターンの接続)
次に、
図7A及び
図7Bを参照しながら、第2の実施形態に係る凸状スルーホール10Rの勘合により、一方の回路基板4Aの導電パターン20と他方の回路基板4Bの導電パターン20とが電気的に接続された態様について説明する。
図7A及び
図7Bは、第2の実施形態に係る凸状スルーホールを有する回路基板が積層された導電パターンを有する構造体において、一方の回路基板の導電パターンと他方の回路基板の導電パターンとが電気的に接続された例を模式的に示す図であり、
図7Aは第1の例を示し、
図7Bは第2の例を示す。
【0086】
<第1の例>
図7Aに示す第1の例では、分割接続層24どうしの接合により、挿入側の一方の回路基板4Aの第1の面6Aに形成された導電パターン20と、被挿入側の他方の回路基板4Bの第1の面6Aに形成された導電パターン20とが電気的に接続され、分割接続層26どうしの接合により、一方の回路基板4Aの第2の面6Bに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第2の面6Bに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0087】
<第2の例>
図7Bに示す第2の例では、分割接続層24どうしの接合により、挿入側の一方の回路基板4Aの第1の面6Aに形成された導電パターン20と、被挿入側の他方の回路基板4Bの第2の面6Bに形成された導電パターン20とが電気的に接続され、分割接続層26どうしの接合により、一方の回路基板4Aの第2の面6Bに形成された導電パターン20と、他方の回路基板4Bの第1の面6Aに形成された導電パターン20とが電気的に接続された構造体2が得られる。
【0088】
図1A、1Bに示すように、複数の凸状スルーホール10P、10Q、10Rが平面視で非対称な位置に配置されている場合には、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bは、1つの相対的な位置でのみ複数の凸状スルーホール10P、10Q、10Rどうしが勘合する。このため、凸状スルーホール10Rの嵌合において、嵌合した凸状スルーホール10Rの分割接続層24、26どうしが、常に周方向で同じ位置に配置される。
【0089】
一方、1つの凸状スルーホール10Rのみを備える場合や、複数の凸状スルーホール10P、10Q、10Rが、例えば点対称な位置に配置されている場合には、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bを相対的に異なる回転位置に配置した状態で、凸状スルーホール10Rを勘合させることができる。その場合には、例えば、一方の回路基板4Aの分割接続層24と他方の回路基板4Bの分割接続層26を接合させ、一方の回路基板4Aの分割接続層26と他方の回路基板4Bの分割接続層24を接合させることもできる。
【0090】
また、図示した例では、周方向で2分割された2つの分割接続層24、26を有するが、周方向で3以上に分割して、3つ以上の分割接続層を有する場合もあり得る。各々の分割接続層は、等分割される場合も、異なる中心角を有するように分割される場合もあり得る。例えば、周方向で4分割された4つの分割接続層を有する場合には、第1の面6A及び第2の面6Bのそれぞれに2つの導電パターン20が形成され、それぞれの導電パターン20が異なる分割接続層と繋がる構造も考えられる。
【0091】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る凸状スルーホール10Rでは、接続層が、周方向で分割され、互いに絶縁された複数の分割接続層24、26で構成され、分割接続層24、26が形成された挿入側外側面12A及び被挿入側内側面12Bが圧着状態で面接触するとき、挿入側外側面12A及び被挿入側内側面12Bに形成された分割接続層24、26が周方向で同じ位置に配置されるようになっている。
【0092】
これにより、分割接続層24、26により、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bに形成された導電パターン20を電気的に接続して、様々な回路パターンを有する構造体2を得ることができる。
【0093】
特に、回路基板4の第1の面6Aに形成された導電パターン20が1つの分割接続層24(26)と繋がり、第2の面6Bに形成された導電パターン20がその他の分割接続層26(24)と繋がることにより、バラエティに富んだ回路パターンを有する構造体2を実現することができる。
【0094】
上記のように、1つの回路基板4に複数の凸状スルーホール10P、10Q、10Rが形成される場合には、接続層22または分割接続層24、26により、様々な導電パターンが回路基板4の間で繋がれた構造体2を実願できる。
【0095】
(連結部材)
上記のように、回路基板4に形成された凸状スルーホール10の嵌合により、他の部材を用いることなく、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bを電気的及び機械的に確実に接続することができる。ただし、
図8を参照しながら説明する下記の実施形態では、連結部材を用いることにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの接続を更に強化することができる。
図8は、一方の回路基板の端部と他方の回路基板の端部とが連結部材で連結された構造を模式的に示す側面断面図である。
【0096】
図8に示す実施形態では、一方の回路基板4Aの基板本体6の両端部と他方の回路基板4Bの基板本体6の両端部とを連結する2つの連結部30を有する。連結部30は、樹脂材料または金属材料で形成することができ、コの字形の側面断面形状を有することが好ましい。このような構造により、一方の回路基板4Aの第1の面6A及び他方の回路基板4Bの第2の面6Bを外側から拘束して、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間が距離CEとなるようにしている。この距離CEは、嵌合した凸状スルーホール10の位置における一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離CBより小さくなるように設定されていることが好ましい。
【0097】
なお、回路基板4A及び他方の回路基板4Bが平板形状を有している場合には、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離を、一方の回路基板4Aの第1の面6A及び他方の回路基板4Bの第2の面6B間の距離と称することもできる。
【0098】
これにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの基板本体6には曲げモーメントが生じることがある。この場合、嵌合した凸状スルーホール10の位置における一方の回路基板4Aの第1の面6A及び他方の回路基板4Bの第2の面6Bの間の距離CBを狭めるような力が加わる。この力により、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10との嵌合を更に強めることができる。
【0099】
なお、回路基板4A及び他方の回路基板4Bに取り付ける連結部30の数は2に限られるものではなく、3以上の任意の数の連結部30を配置することもできる。更に、連結部30の構造も図示したものに限られるものではない。一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bを拘束して、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離CBを画定できるものであれば、その他の任意の構造を採用することができる。
【0100】
以上のように、本実施形態では、一方の回路基板4Aの基板本体6の端部と他方の回路基板4Bの基板本体6の端部とを連結する2以上の連結部30を備え、連結部30の位置における一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離CEが、嵌合した凸状スルーホール10の位置における一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bの間の距離CBより短くなっていることが好ましい。
【0101】
これにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bに生じる曲げモーメントを用いて、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10と他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10との嵌合を効果的に強めることができる。
【0102】
上記では、平板形状を有する回路基板4に連結部30を適用しているが、これに限られるものではない。その他の立体形状を有する回路基板に連結部を適用することが可能であり、連結部の位置における2つの回路基板の間の距離CEが、嵌合した凸状スルーホール10の位置における2つの回路基板の間の距離CBより短くすることができる。
【0103】
(3以上の回路基板が積層された構造体)
上記の実施形態では、基本的に2つの回路基板4A、4Bが積層された構造体2を示すが、これに限られるものではない。3以上の任意の数の2つの回路基板4が積層された構造体2を実現することもできる。
図9は、3以上の回路基板が凸状スルーホールで接続された導電パターンを有する構造体の例を模式的に示す側面断面図である。
【0104】
図9では、凸状スルーホール10の嵌合により、4つの回路基板4が積層された構造体2が例示されている。凸状スルーホール10の嵌合のみで接続可能であり、積層する回路基板4の間の距離を短くして、コンパクトな構造体2を得ることができる。このように、3以上の回路基板4が凸状スルーホール10で接続された積層構造により、様々な回路パターンを備えたコンパクトな構造体2を実現できる。
【0105】
例えば、中間の位置に積層された回路基板4の凸状スルーホール10が複数の分割接続層を有し、一部の分割接続層は、この回路基板4に形成された導電パターン20とは繋がっておらず、第1の面6A側に接続された他の回路基板4の凸状スルーホール10の分割接続層と、第2の面6B側に接続された他の回路基板4の凸状スルーホール10の分割接続層とを電気的に繋ぐために機能する場合もあり得る。その場合、例えば、
図9で示された構造体2の一番下側の回路基板4の導電パターンと一番上側の回路基板4の導電パターンとが、他の導電パターンとは繋がることなく、複数段で繋がった分割接続層を介して電気的に繋がる場合もあり得る。
【0106】
(立体形状を有する回路基板が積層された構造体)
上記の実施形態では、平板状の回路基板4A、4Bが積層された構造体2を示すが、これに限られるものではない。
図10に示すような立体形状を有する回路基板が積層された構造体2を形成することもできる。
図10は、立体形状を有する回路基板が凸状スルーホールで接続された導電パターンを有する構造体の例を模式的に示す側面断面図である。
図10では、凸状スルーホール10の嵌合により、3つの立体形状を有する回路基板4が積層された構造体2が例示されている。
【0107】
立体形状を有する回路基板は、MID(Molded Interconnect Device:成形回路部品)とも称される。立体形状を有する回路基板4の基板本体6は、樹脂成型品からなるのが好ましい。樹脂成型品に用いる樹脂材料としては、エンジニアプラスチックを用いることができる。エンジニアリングプラスチックとしては、耐熱性に優れるものが好ましく、例えばフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマーを用いることができる。
【0108】
立体形状を有する回路基板4では、例えば、基板本体6の材料である成形用樹脂に非導電性金属錯体を分散させ、この成形用樹脂を用いて立体基板を成形した後に、レーザ光線を回路パターンに合わせて照射して金属核を生じさせ、その後、めっきを施して回路を形成することができる。
【0109】
このように、回路基板4が立体形状を有するMIDである場合には、MIDである回路基板4を積層することにより、様々な用途に利用可能なバリエーションに富んだコンパクトな構造体2を実現できる。
【0110】
以上のように、本発明の上記の実施形態に係る導電パターン20を有する構造体2は、第1の面6A及びその裏面である第2の面6Bを有する所定の厚みの面状部材で形成された領域を有する基板本体6と、面状部材で形成され、第1の面6Aが凸となった円錐台状の外側面12A及び上面14A並びに第2の面6Bが凹となった円錐台状の内側面12B及び天井面14Bを有し、上面14A及び天井面14Bの間を貫通する開口16を有する凸状スルーホール10と、凸状スルーホール10の外側面12A及び上面14Aに形成された導電層22A並びに内側面12B及び天井面14Bに形成された導電層22Bが開口16に形成された導電層2Cで繋がれて構成された接続層22と、第1の面6A及び第2の面6Bの少なくとも一方に形成され、接続層22と繋がった導電パターン20と、を含む回路基板4を2以上備え、一方の回路基板4Aの凸状スルーホール10の外側面12Aである挿入側外側面12A(4A)及び他方の回路基板4Bの凸状スルーホール10の内側面12Bである被挿入側内側面12B(4B)が同一のテーパ角θを有し、挿入側外側面12A(4A)が被挿入側内側面12B(4B)で囲まれた内部空間SBに挿入され、接続層22が形成された挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が圧着状態で面接触した嵌合構造を有する。
【0111】
上記のような構造体2では、円錐台状の凸状スルーホール10の挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)が同一のテーパ角θを有するので、接続層22が形成された挿入側外側面12A(4A)及び被挿入側内側面12B(4B)を圧着状態で面接触させることができる。よって、凸状スルーホール10の嵌合のみで回路基板4A、4Bを接続可能であり、積層する回路基板4A、4Bの間の距離を短くして、コンパクトな構造体2を得ることができる。これにより、一方の回路基板4A及び他方の回路基板4Bが、確実に電気的に接続され、十分な機械的強度で接続された、省スペースな、導電パターン20を有する構造体2を提供することができる。
【0112】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0113】
2 構造体
4 回路基板
4A 一方の回路基板
4B 他方の回路基板
6 基板本体
6A 第1の面
6B 第2の面
10 凸状スルーホール
12 側面部分
12A 外側面
12B 内側面
14 上面部分
14A 上面
14B 天井面
16 開口
20 導電パターン
22 接続層
22A 外側面側接続層
22B 内側面側接続層
22C 導電層
24 分割接続層
24A 外側面側接続層
24B 内側面側接続層
24C 導電層
26 分割接続層
26A 外側面側接続層
26B 内側面側接続層
26C 導電層
30 連結部
S、SA、SB 内部空間
【要約】 (修正有)
【課題】複数の回路基板が確実に電気的に接続されるとともに十分な機械的強度で接続された、省スペースな、導電パターンを有する構造体を提供する。
【解決手段】構造体2は、第1の面6A及びその裏面である第2の面6Bを有する基板本体6と、第1の面6Aが凸となった円錐台状の外側面12A及び上面14A並びに第2の面6Bが凹となった円錐台状の内側面12B及び天井面14Bを有し、上面14A及び天井面14Bの間を貫通する開口16を有する凸状スルーホール10Qと、開口16に形成された導電層22Cで繋がれて構成された接続層22と、第1の面6A及び第2の面6Bの少なくとも一方に形成され、接続層22と繋がった導電パターン20と、を含む回路基板を2以上備え、接続層22が形成された挿入側外側面12A及び被挿入側内側面12Bが圧着状態で面接触した嵌合構造を有する、導電パターン20を有する。
【選択図】
図2B