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特許7519007位置決め部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】位置決め部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20240711BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G03G21/18 121
G03G15/08 229
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020152338
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046342
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】與五澤 一輝
(72)【発明者】
【氏名】久保 達哉
(72)【発明者】
【氏名】土屋 右騎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-013848(JP,A)
【文献】特開2017-151358(JP,A)
【文献】特開2018-097244(JP,A)
【文献】特開2010-164993(JP,A)
【文献】特開2013-164460(JP,A)
【文献】特開2018-173508(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00672973(EP,A2)
【文献】米国特許第05581328(US,A)
【文献】中国実用新案第209667543(CN,U)
【文献】米国特許第05842100(US,A)
【文献】特開2014-139654(JP,A)
【文献】特開平09-152826(JP,A)
【文献】特開平10-133475(JP,A)
【文献】特開平10-149019(JP,A)
【文献】特開平08-015985(JP,A)
【文献】特開平08-036308(JP,A)
【文献】特開2002-108171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/18
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と第2回転体との対向距離を定める位置決め部材であって、
前記第1回転体の被嵌合部が回転可能に嵌合する嵌合部と、
開口部から突当部まで所定方向に延びるように溝状に形成されて、前記第2回転体の軸部がスライド移動可能な溝部と、
を備え、
前記溝部において前記突当部に突き当たった状態の前記軸部に対して、前記所定方向の移動を制限する制限部材が、着脱可能に設置され、
前記制限部材は、前記軸部を押圧する押圧部を有して、前記軸部を前記被嵌合部の側に付勢する板バネ部材であって、
前記板バネ部材の前記押圧部が弾性変形可能に前記溝部に交差する方向に差込まれる差込穴部を備えたことを特徴とする位置決め部材。
【請求項2】
第1回転体と第2回転体との対向距離を定める位置決め部材であって、
前記第1回転体の被嵌合部が回転可能に嵌合する嵌合部と、
開口部から突当部まで所定方向に延びるように溝状に形成されて、前記第2回転体の軸部がスライド移動可能な溝部と、
を備え、
前記溝部において前記突当部に突き当たった状態の前記軸部に対して、前記所定方向の移動を制限する制限部材が、着脱可能に設置され、
前記制限部材は、略L字状に形成されて、前記軸部を前記被嵌合部の側に付勢する板バネ部材であって、
前記板バネ部材の曲げ部を除く押圧部が弾性変形可能に差込まれて、前記溝部に交差して連通する差込穴部と、
前記溝部を通過した前記板バネ部材の前記押圧部の先端部が挿入され固定される固定部と、
前記板バネ部材の前記曲げ部が面接触可能に突き当てられる平面部と、
を備えたことを特徴とする位置決め部材。
【請求項3】
前記溝部の前記突当部は、前記軸部の外径と略同径の円弧状の面部を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置決め部材。
【請求項4】
前記溝部の前記突当部は、前記嵌合部における回転中心を中心として円弧状に形成された面部を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置決め部材。
【請求項5】
前記溝部の前記突当部は、前記嵌合部の側に向かって互いの対向距離が漸減する2つの面部を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置決め部材。
【請求項6】
前記所定方向は、前記嵌合部の中心と前記突当部の中心とを通る仮想線が延びる方向であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の位置決め部材。
【請求項7】
前記突当部は、前記溝部において前記開口部から離れた前記所定方向の端部に形成され、
前記第1回転体の前記被嵌合部が前記嵌合部に嵌合して前記第2回転体の前記軸部が前記突当部に突き当たった状態において、前記第1回転体の表面と前記第2回転体の表面との間には所定量の隙間が形成されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の位置決め部材。
【請求項8】
前記板バネ部材は、曲げ部を有することを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の位置決め部材。
【請求項9】
前記板バネ部材は、前記突当部に位置する前記軸部に点接触可能な凸部を具備したことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の位置決め部材。
【請求項10】
画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジであって、
前記第1回転体としての像担持体と、
前記第2回転体としての現像剤担持体が回転可能に保持されて、当該プロセスカートリッジに対して着脱可能に設置された現像装置と、
を備え、
請求項1~請求項9のいずれかに記載の位置決め部材が、少なくとも回転軸方向の一端側に着脱可能に設置されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれかに記載の位置決め部材が回転軸方向の一端側に設置され、
回転軸方向の他端側に、像担持体と現像剤担持体との対向距離を定める第2位置決め部材が着脱可能に設置され、
前記第2位置決め部材は、
前記像担持体の前記被嵌合部が回転可能に嵌合する嵌合部と、
前記現像剤担持体の前記軸部が、着脱可能な軸受を介して、嵌合する位置決め穴部と、
を具備したことを特徴とする請求項10に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項12】
前記第2位置決め部材は、前記位置決め穴部から回転軸方向一端側に向けて穴径が漸増するすり鉢状穴部を具備したことを特徴とする請求項11に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項13】
前記位置決め部材の前記制限部材を介して前記現像剤担持体の前記軸部に現像バイアスを印加することを特徴とする請求項10~請求項12のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項1~請求項9のいずれかに記載の位置決め部材、又は、請求項10~請求項13のいずれかに記載のプロセスカートリッジ、が着脱可能に設置されたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つの回転体の対向距離を定める位置決め部材と、画像形成装置本体に対して着脱可能に設置されるプロセスカートリッジと、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置に設置されるプロセスカートリッジにおいて、現像ローラ(現像剤担持体)と感光体ドラム(像担持体)とのギャップ(対向距離)を高精度に設定することを目的として、現像ローラの軸部と感光体ドラムの軸部とをそれぞれ嵌合させる面板(位置決め部材)を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1等における面板(位置決め部材)は、現像装置の現像ローラの軸部に嵌合する穴部と、感光体ドラムの軸部に嵌合する穴部と、が形成されている。そして、面板の2つの穴部に現像ローラの軸部と感光体ドラムの軸部とがそれぞれ嵌合されることで、現像ローラと感光体ドラムとの軸間距離が定まり、現像ローラと感光体ドラムとのギャップが高精度に設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプロセスカートリッジは、現像剤担持体(第2回転体)のメンテナンスや交換などをおこなうときに、プロセスカートリッジに位置決め部材(面板)を固定するための複数のネジを取り外した後に、プロセスカートリッジから位置決め部材を取り外して、位置決め部材に対して像担持体(第1回転体)と現像装置とを分離しなければならなかった。そのため、現像剤担持体のメンテナンスや交換に関わる時間や手間が掛かってしまっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、メンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減される、位置決め部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における位置決め部材は、第1回転体と第2回転体との対向距離を定める位置決め部材であって、前記第1回転体の被嵌合部が回転可能に嵌合する嵌合部と、開口部から突当部まで所定方向に延びるように溝状に形成されて、前記第2回転体の軸部がスライド移動可能な溝部と、を備え、前記溝部において前記突当部に突き当たった状態の前記軸部に対して、前記所定方向の移動を制限する制限部材が、着脱可能に設置され、前記制限部材は、前記軸部を押圧する押圧部を有して、前記軸部を前記被嵌合部の側に付勢する板バネ部材であって、前記板バネ部材の前記押圧部が弾性変形可能に前記溝部に交差する方向に差込まれる差込穴部を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減される、位置決め部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】作像部を示す構成図である。
図3】プロセスカートリッジの要部を長手方向に示す断面図である。
図4】プロセスカートリッジに現像装置が装着された状態を示す図である。
図5】プロセスカートリッジから現像装置が取り外された状態を示す図である。
図6】(A)プロセスカートリッジの面板に現像装置が装着された状態を示す概略図と、(B)プロセスカートリッジの面板から現像装置が取り外された状態を示す概略図と、である。
図7】変形例1としての、プロセスカートリッジにおける位置決め部材を示す拡大図である。
図8】変形例2としての、プロセスカートリッジにおける位置決め部材を示す拡大図である。
図9図8の位置決め部材の要部を示す上面図であって、(A)板バネ部材が設置されていない状態を示す図と、(B)板バネ部材が設置されている状態を示す図と、である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機、3は原稿を原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿の画像情報を読み込む原稿読込部、6は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、を示す。
また、7は用紙等のシートPが収納される給紙装置、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部としてのプロセスカートリッジ、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上に形成されたトナー像をシートPに転写する2次転写ローラ、を示す。
また、20はシートP上の未定着画像を定着する定着装置、28は各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの現像装置に各色のトナーを補給するためのトナー容器、30は廃トナーが回収される廃トナー回収容器、を示す。
【0011】
ここで、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BK(作像部)は、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置13、クリーニング装置15が一体化されたものである(図2参照)。そして、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、寿命に達したときに、新品のものに交換される。
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKにおける感光体ドラム11(像担持体)上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される。
【0012】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部6に送信される。そして、書込み部6からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に向けて照射される。
【0013】
一方、4つの感光体ドラム11は、それぞれ、図1図2の時計方向に回転している。そして、図2を参照して、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電装置12(帯電ローラ)との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11の表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部6において、光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応して射出される。レーザ光Lは、ポリゴンミラーに入射して反射した後に、複数のレンズを透過する。複数のレンズを透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0014】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11の表面に照射される。こうして、帯電ローラ12aにて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
同様に、シアン成分のレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11の表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11の表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ10BKの感光体ドラム11の表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0015】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面は、それぞれ、現像装置13(図2参照)との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、像担持体としての中間転写ベルト17(中間転写体)との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0016】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム11の表面は、それぞれ、クリーニング装置15(図2参照)との対向位置に達する。そして、クリーニング装置15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。なお、クリーニング装置15内に回収された未転写トナーは、搬送スクリュ15b(図2参照)によって搬送管16内を搬送されて、廃トナーとして廃トナー回収容器30内に回収される。
その後、感光体ドラム11の表面は、除電装置の位置を通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0017】
他方、感光体ドラム11上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト17の表面は、図1中の矢印方向に走行して、2次転写ローラ18の位置に達する。そして、2次転写ローラ18の位置で、シートP上に中間転写ベルト17上のフルカラーの画像が2次転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング装置9(クリーニング装置)の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置9に回収されて、中間転写ベルト17上の一連の転写プロセスが完了する。なお、中間転写ベルトクリーニング装置9内に回収された未転写トナーは、搬送スクリュ15b(図2参照)によって搬送管16内を搬送されて、廃トナーとして廃トナー回収容器30内に回収される。
【0018】
ここで、2次転写ローラ18の位置のシートPは、給紙装置7から搬送ガイド、レジストローラ19等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、シートPを収納する給紙装置7から、給紙ローラ8により給送されたシートPが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ19に導かれる。レジストローラ19に達したシートPは、中間転写ベルト17上のトナー像とタイミングを合わせて、2次転写ローラ18の位置に向けて搬送される。
【0019】
その後、フルカラー画像が転写されたシートPは、定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像がシートP上に定着される。
そして、定着工程後のシートPは、排紙ローラ29によって装置本体1外に出力画像として排出された後に、排紙部5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0020】
次に、図2及び図3にて、画像形成装置の作像部について詳述する。
図2は、黒色用のプロセスカートリッジ10BKを示す構成図である。その他の3つのプロセスカートリッジ10Y、10M、10Cは、それぞれ、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる点を除き、黒色用のプロセスカートリッジ10BKとほぼ同じに構成されているため、その図示と説明とを省略する。
【0021】
図2に示すように、プロセスカートリッジ10BKには、主として、像担持体としての感光体ドラム11と、現像装置13と、帯電装置12と、クリーニング装置15と、がカートリッジケース50(筐体)に一体的に収納されている。
クリーニング装置15には、感光体ドラム11に当接するクリーニングブレード15a及び搬送スクリュ15bが設置されている。
【0022】
現像装置13は、主として、感光体ドラム11に対向して現像領域を形成する現像剤担持体としての現像ローラ13a、現像ローラ13aに対向する第1搬送スクリュ13b1(第1搬送部材)、仕切部材13eを介して第1搬送スクリュ13b1に対向する第2搬送スクリュ13b2(第2搬送部材)、現像ローラ13aに対向して現像ローラ13a上に担持された現像剤の量を規制するドクターブレード13c(現像剤規制部材)、等で構成される。
【0023】
現像装置13内には、トナーとキャリアとからなる現像剤(2成分現像剤)が収容されている。
現像ローラ13aは、感光体ドラム11に対して微小なギャップH(図3参照)をあけて対向して現像領域を形成するように構成されている。現像ローラ13aは、図3に示すように、内部に固設されてローラ外周面上に複数の極(磁極)を形成するマグネット13a1と、マグネット13a1の周囲を回転するスリーブ13a2と、で構成される。
【0024】
搬送部材としての搬送スクリュ13b1、13b2は、現像装置13の内部に収容された現像剤を長手方向に搬送して循環経路(図3にて破線矢印で示す循環経路である。)を形成する。すなわち、第1搬送スクリュ13b1による第1搬送経路B1と、第2搬送スクリュ13b2による第2搬送経路B2と、による現像剤の循環経路が形成されている。
第1搬送経路B1と第2搬送経路B2とは仕切部材13e(壁部)によって隔絶されていて、2つの搬送経路B1、B2の長手方向両端部は互いに連通口13f、13gを介して連通している。具体的に、図3を参照して、第1搬送経路B1の搬送方向上流側の端部と、第2搬送経路B2の搬送方向下流側の端部と、が第1連通口13fを介して連通している。また、第1搬送経路B1の搬送方向下流側の端部と、第2搬送経路B2の搬送方向上流側の端部と、が第2連通口13gを介して連通している。すなわち、仕切部材13eは、長手方向両端部を除く位置に配設されている。
第1搬送スクリュ13b1(第1搬送経路B1)は現像ローラ13aに対向するように配設され、第2搬送スクリュ13b2(第2搬送経路B2)は仕切部材13eを介して第1搬送スクリュ13b1(第1搬送経路B1)に対向するように配設されている。第1搬送スクリュ13b1は、現像剤を長手方向に搬送しながら、現像ローラ13aに向けて現像剤を供給するとともに、現像ローラ13aから離脱した現像工程後の現像剤を回収する。第2搬送スクリュ13b2は、第1搬送経路B1から搬送された現像工程後の現像剤と、トナー補給口13dから補給されたフレッシュな現像剤と、を長手方向に搬送しながら撹拌・混合する。
本実施の形態において、2つの搬送スクリュ13b1、13b2(搬送部材)は、水平方向に並設されている。2つの搬送スクリュ13b1、13b2は、いずれも、軸部にスクリュ部が巻装されたものである。
【0025】
先に述べた作像プロセスを、現像工程を中心にしてさらに詳しく説明する。
現像ローラ13aは、図2中の矢印方向に回転している。現像装置13内の現像剤は、図3に示すように、間に仕切部材13eを介在するように配設された第1搬送スクリュ13b1及び第2搬送スクリュ13b2の矢印方向の回転によって、トナー容器70からトナー補給経路27を経てトナー補給口13d(流入口)から補給されたトナーとともに撹拌混合されながら長手方向に循環する(図3中の破線矢印方向の循環である。)。
なお、現像装置13のトナー補給口13dは、画像形成装置本体1に対する現像装置13(プロセスカートリッジ10BK)の着脱動作に連動して、画像形成装置本体1のトナー補給経路27に連通・連通解除されることになる。
【0026】
そして、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、現像ローラ13a上に形成された剤汲上げ極によって、キャリアとともに現像ローラ13a上に汲み上げられる。現像ローラ13a上に担持された現像剤は、図2中の矢印方向に搬送されて、ドクターブレード13cとの対向位置に達する。そして、現像ローラ13a上の現像剤は、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体ドラム11との対向位置(現像領域である。)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体ドラム11上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ13a上に残った現像剤はスリーブの回転にともない第1搬送経路B1の上方に達して、この位置で現像ローラ13aから離脱される。ここで、現像領域における電界は、現像用の電源によって現像ローラ13aに印加される所定の電圧(現像バイアス)と、帯電工程と露光工程とによって感光体ドラム11の表面に形成される表面電位(潜像電位)と、によって形成されるものである。
【0027】
なお、トナー容器70内のトナーは、現像装置13内のトナーの消費にともない、トナー補給口13dから現像装置13内に適宜に補給されるものである。現像装置13内のトナーの消費は、現像装置13内の現像剤のトナー濃度(現像剤中のトナーの割合である。)を磁気的に検知するトナー濃度センサによって検知される。
また、トナー補給口13dは、第2搬送スクリュ13b2の長手方向(図3の左右方向である。)の一端側であって、第2搬送スクリュ13b2(第2搬送経路B2)の上方に設けられている。
【0028】
以下、図3図6等を用いて、本実施の形態におけるプロセスカートリッジ10BKにおいて特徴的な、位置決め部材としての面板40について詳しく説明する。
先に図2図3等を用いて説明したように、プロセスカートリッジ10BKは、画像形成装置本体1に対して着脱可能に設置されるユニットである。そして、プロセスカートリッジ10BKには、回転可能な像担持体としての感光体ドラム11(第1回転体)や、感光体ドラム11に対向する回転可能な現像剤担持体としての現像ローラ13a(第2回転体)などが設置されている。
現像ローラ13a(現像剤担持体)は、現像装置13に回転可能に保持されている。また、現像装置13は、内部に現像剤を収容可能に構成されていて、プロセスカートリッジ10BKに対して着脱可能に設置されている。
【0029】
ここで、図3図4等を参照して、本実施の形態におけるプロセスカートリッジ10BKには、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの対向距離H(現像ギャップ)を定める位置決め部材としての面板40(第1面板)が、回転軸方向(長手方向)の一端側(図3の左側である。)に着脱可能に設置されている。
また、プロセスカートリッジ10BKには、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの対向距離H(現像ギャップ)を定める第2位置決め部材としての面板41(第2面板)が、回転軸方向の他端側(図3の右側である。)に着脱可能に設置されている。
【0030】
このように、本実施の形態におけるプロセスカートリッジ10BKには、回転軸方向の両端部にそれぞれ面板40、41が設置されているが、まず、回転軸方向一端側に設置された位置決め部材としての面板40(第1面板)について説明する。
この面板40は、第1回転体としての感光体ドラム11と、第2回転体としての現像ローラ13aと、の対向距離Hを定める位置決め部材として機能するものである。
【0031】
図4図5等に示すように、面板40(位置決め部材)には、嵌合部としての穴部40aや、切欠き状の溝部40bが形成されている。
穴部40aは、像担持体としての感光体ドラム11(第1回転体)の被嵌合部としてのドラム軸11aが回転可能に嵌合する嵌合部として機能する。穴部40aは、その穴径が、ドラム軸11aの軸径とほぼ同径になるように形成されている。
溝部40bは、開口部40b1(一端側)から突当部40b2(他端側)まで所定方向(図4の仮想線S1が延びる方向である。)に延びるように溝状に形成されていて、第2回転体としての現像ローラ13a(現像剤担持体)の軸部13a10がスライド移動可能に構成されている。溝部40bは、その溝幅が、軸部13a10の軸径にほぼ一致するように形成されている。また、溝部40bの突当部40b2は、軸部13a10の軸径(外径)と略同径の円弧状の面部を有している。また、円弧状の突当部40b2の中心は、溝部40bにおいて軸部13a10を挟むように対向する2つの面部の中心線を、溝部40bが延びる方向に延長した仮想線S1を通るように形成されている。
なお、本実施の形態において、溝部40bが延びる方向(「所定方向」)は、嵌合部としての穴部40aの中心(ドラム軸11aの中心)と、突当部40b2の中心(軸部13a10の中心)と、を通る仮想線S1が延びる方向である。
【0032】
そして、図4図5を参照して、本実施の形態における面板40(位置決め部材)には、溝部40bにおいて開口部40b1から挿入されて突当部40b2に突き当たった状態の軸部13a10に対して、所定方向(仮想線S1が延びる方向である。)の移動を制限する制限部材45が、着脱可能に設置されている。
具体的に、制限部材45は、樹脂材料で形成された略長方体状の部材であって、その先端部にスナップフィットが形成されていて、溝部40bに着脱可能に嵌め込まれる。そして、図4に示すように、制限部材45を溝部40bに嵌め込んで、軸部13a10(現像ローラ13a)が溝部40bから脱落しないように、溝部40bにおける軸部13a10の位置を定める。また、図5に示すように、溝部40bから制限部材45を取り出して、溝部40bにおいて軸部13a10がスライド移動可能な状態にする。
なお、本実施の形態では、制限部材45にスナップフィットを形成して面板40に着脱可能に設置したが、制限部材45の設置方法はこれに限定されず、例えば、制限部材45をネジ締結によって面板40に着脱可能に設置することもできる。
【0033】
このように構成された面板40によって、穴部40aによって感光体ドラム11(ドラム軸11a)の位置が定められ、溝部40bによって現像ローラ13a(軸部13a10)の位置が定められる。特に、現像ローラ13aは、制限部材45によって軸部13a10が突当部40b2に密着するように保持されることになる。これにより、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの軸間距離が定まり、現像ギャップH(図3参照)が狙いの値に精度良く設定されることになる。
特に、現像ローラ13aに担持された現像剤が感光体ドラム11に接触するときに、現像ローラ13aが現像剤による圧力(反力)を受けても、現像ギャップHが変化することはなく、良好な現像工程がおこなわれることになる。
【0034】
そして、本実施の形態において、面板40の溝部40bは、溝部40bへの軸部13a10の挿脱が可能となるように、図5の斜め左下方に開口する開口部40b1が設けられている。
すなわち、溝部40bにおいて、突当部40b2は、軸部13a10の外周面が突き当たる曲面状の壁部(軸部13a10の外周面と略同径の内周面からなる。)が形成されている。これに対して、溝部40bにおいて、開口部40b1には、軸部13a10が突き当たるような壁部が形成されておらず、溝部40bの溝幅のまま斜め下方に開口している。これにより、図5の矢印方向に軸部13a10を移動して溝部40bから離脱したり、その逆方向に軸部13a10を移動して溝部40bに挿入したりすることができる。また、軸部13a10を、溝部40bに沿って移動(スライド移動)することができる。
【0035】
このように面板40に溝部40bを形成することで、溝部40bの代わりに位置決め用の穴部を形成する場合に比べて、現像ローラ13aのメンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減されることになる。
具体的に、現像ローラ13a(現像装置13)のメンテナンスや交換をおこなうときに、感光体ドラム11と面板40との嵌合を解除する手間や時間を掛けることなく、感光体ドラム11が嵌合した状態の面板40に対して、現像ローラ13a(現像装置13)を着脱することができる。
特に、本実施の形態では、プロセスカートリッジ10BKに対する現像ローラ13a(現像装置13)の着脱性を向上するために、溝部40bが仮想線S1(ドラム軸11aの中心と軸部13a10の中心とを結ぶ仮想線)が延びる方向に沿うように形成されている。そのため、メンテナンスをおこなう作業者が現像装置13を取り外すときに、感光体ドラム11から離す方向に移動させることになるため、現像装置13で感光体ドラム11を傷付ける不具合を抑制できる。また、作業者が現像装置13を取り付けるときにも、現像装置13を真っすぐ感光体ドラム11に近づけていくことで、感光体ドラム11と現像装置13の位置関係に注意が注がれるため、不注意によって感光体ドラム11を傷付ける不具合が抑制される。
【0036】
ここで、図3図4を参照して、本実施の形態において、位置決め部材としての面板40は、現像装置13の現像ケース13rと、カートリッジケース50と、にそれぞれ着脱可能に結合(本実施の形態では、ネジ締結である。)されている。
カートリッジケース50は、現像ケース13rとは異なるプロセスカートリッジ10BKの筐体であって、感光体ドラム11の他、帯電装置12とクリーニング装置15とが保持されている。現像ケース13rは、現像ローラ13aの他、2つの搬送スクリュ13b1、13b2やドクターブレード13cが保持されている。
【0037】
詳しくは、面板40には、ネジ60を挿入可能なネジ用穴部が3つ形成されている。また、現像ケース13rの側面には1つの雌ネジ部が形成され、カートリッジケース50の側面には2つの雌ネジ部が形成されている。
そして、面板40のネジ用穴部を介して、現像ケース13rの1つの雌ネジ部にネジ60が螺合され、カートリッジケース50の2つの雌ネジ部にそれぞれネジ60が螺合される。これにより、図3図4等に示すように、プロセスカートリッジ10BKにおいて現像装置13が面板40を介して接合されて、1つのユニットとして一体化されることになる。さらに、面板40によって、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの軸間距離が定まり、現像ギャップH(図3参照)が狙いの値に精度良く設定されることになる。
【0038】
ここで、現像装置13は、現像ケース13rに対する面板40の結合が解除された状態(1つネジ60が外された状態である。)で、現像ローラ13aの軸部13a10を開口部40b1と突当部40b2との間で移動させて、カートリッジケース50に結合された状態(2つのネジ60が螺合した状態である。)の面板40に対して現像ローラ13aとともに着脱可能に形成されている。
【0039】
具体的に、図4に示すように、現像装置13のメンテナンスや交換などをおこなうため、現像装置13が面板40を介してネジ60により結合されたプロセスカートリッジ10BKに対して、現像装置13を取り外す場合には、まず、画像形成装置本体1からプロセスカートリッジ10BKを取り出す。
そして、図5に示すように、取り出したプロセスカートリッジ10BKにおいて、現像装置13を結合するネジ60(両端の2つの面板40、41にそれぞれ1つ設置されている。)を取り外す。このとき、感光体ドラム11は、面板40によってカートリッジケース50にネジ60により結合されたままである。また、図5に示すように、面板40から制限部材45を取り外す。
そして、図5に示すように、面板40(制限部材45が取り外されている。)とのネジ締結が解除された状態の現像装置13を、面板40の溝部40bに沿って斜め下方に移動して、プロセスカートリッジ10BKから現像装置13を取り外す。詳しくは、溝部40bに沿うように現像ローラ13aの軸部13a10を斜め下方に移動して、プロセスカートリッジ10BKから現像装置13を取り外す。このとき、プロセスカートリッジ10BKにおいて、現像装置13以外の構成部材(感光体ドラム11、帯電装置12、クリーニング装置15)は、カートリッジケース50に保持されたままとなる。
なお、プロセスカートリッジ10BKに対して現像装置13を装着するときには、上述した離脱時とは逆の手順で操作がおこなわれることになる。
【0040】
このように、面板40に溝部40bを形成することで、溝部40bの代わりに位置決め用の穴部を形成する場合に比べて、現像装置13のメンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減されることになる。
具体的に、現像装置13のメンテナンスや交換をおこなうときに、感光体ドラム11が嵌合した状態の面板40に対して、感光体ドラム11と面板40との嵌合を解除する手間や時間を掛けることなく、面板40に対して現像装置13を着脱することができる。
【0041】
なお、図3を参照して、2つの面板40、41のうち、一方の面板40(図3の左方の第1面板である。)は、現像ローラ13aにおける非回転の軸部13a10(マグネット13a1の回転方向の姿勢を定めるための軸部である。)を保持するためのものである。これに対して、他方の面板41(図3の右方の第2面板である。)は、現像ローラ13aにおける回転可能な軸部13a20(スリーブ13a2を回転させるための軸部である。)を保持するためのものである。
【0042】
そして、本実施の形態では、第2面板としての面板41が、第1面板としての面板40(位置決め部材)と同様に溝部40bが形成されているのではなく、溝部40bの存在しない第2位置決め部材として構成されている。
詳しくは、図3図6を参照して、第2位置決め部材としての面板41(第2面板)は、嵌合部としての穴部41aと、位置決め穴部41bと、が形成されている。嵌合部としての穴部41aは、第1面板40のものと同様に、感光体ドラム11のドラム軸11a(被嵌合部)が回転可能に嵌合する。これに対して、位置決め穴部41bは、現像ローラ13a(現像剤担持体)の軸部13a20が、着脱可能な軸受65(本実施の形態では、玉軸受である。)を介して、嵌合する。すなわち、第2面板41には、第1面板40の溝部40bの代わりに、位置決め穴部41bが形成されている。
【0043】
このように構成することで、図6(A)、(B)に示すように、第2面板41に装着された軸受65を矢印方向に取り外すことで、現像ローラ13aの他端側の軸部13a20と、位置決め穴部41bと、の間に大きな隙間が形成されて、第2面板41による現像装置13の位置決めが解除されて、現像装置13の上下左右へのある程度の移動が可能になる。
そのため、先に図5を用いて説明したように、第1面板40の溝部40bに沿って現像ローラ13aを移動させながらプロセスカートリッジ10BKから現像装置13を取り外すときに、第2面板41と現像装置13とのネジ締結の解除と、軸受65の離脱と、をおこなうことで、第2面板41をプロセスカートリッジ10BKに装着したままとすることができる。具体的に、軸受65が離脱された状態で現像装置13を回転軸方向や斜め下方に移動しながら、第1面板40の溝部40bに沿って現像ローラ13aを移動させながらプロセスカートリッジ10BKから現像装置13を取り外すことになる。
このように第2面板41を形成することで、現像装置13のメンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減されることになる。具体的に、現像装置13のメンテナンスや交換をおこなうときに、感光体ドラム11が嵌合した状態の2つの面板40、41に対して、感光体ドラム11と2つの面板40、41との嵌合を解除する手間や時間を掛けることなく、2つの面板40、41に対して現像装置13を着脱することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、図6に示すように、第2面板41(第2位置決め部材)に、位置決め穴部41bから回転軸方向一端側(図6の左側である。)に向けて穴径が漸増するすり鉢状穴部41c(テーパ部)を形成している。
これにより、軸受65を第2面板41から取り外したときの、現像ローラ13a(軸部13a20)の可動範囲がさらに広がるため、上述した面板40、41をプロセスカートリッジ10BKに装着したままでの現像装置13の着脱が容易になる。
【0045】
<変形例1>
図7に示すように、変形例1における位置決め部材としての面板40(第1面板)は、溝部40bの突当部40b2の形状が図4図5に示すものと異なる。
詳しくは、図7(A)に示す面板40は、溝部40bの突当部40b2が、穴部40a(嵌合部)における回転中心を中心として円弧状に形成された面部を有するものとなっている。すなわち、突当部40b2は、開口部40b1の側に凸曲面状に形成されている。
このように構成することで、溝部40b(軸部13a10を挟んで対向する2つの面部)と軸部13a10との間に隙間(ガタ)があって、突当部40b2に突き当たる軸部13a10の位置が定まらないような場合であっても、ドラム軸11a(感光体ドラム11)と軸部13a10(現像ローラ13a)との軸間距離がばらつくことなく、現像ギャップH(図3参照)が狙いの値に精度良く設定されることになる。
また、図7(B)に示す面板40は、溝部40bの突当部40b2が、穴部40a(嵌合部)の側に向かって互いの対向距離が漸減する2つの面部を有するものとなっている。すなわち、突当部40b2は、開口部40b1の側に凹状に略「く」の字状に形成されている。
このように構成することで、溝部40b(軸部13a10を挟んで対向する2つの面部)と軸部13a10との間に隙間(ガタ)を設けた場合であっても、軸部13a10を突当部40b2に突き当てて位置を定めることができるため、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの軸間距離が定まり、現像ギャップH(図3参照)が狙いの値に精度良く設定されることになる。
【0046】
<変形例2>
図8に示すように、変形例2における面板40には、溝部40bにおける軸部13a10の移動を制限する制限部材として、軸部13a10をドラム軸11a(被嵌合部)の側に付勢する弾性部材としての板バネ部材46が用いられている。
弾性部材としての板バネ部材46(制限部材)は、略L字状に形成された導電性とバネ性とを有する金属板である。
一方、図8図9を参照して、面板40には、差込穴部40e、固定部40f、平面部40dなどが形成されている。差込穴部40eは、板バネ部材46の押圧部46b(曲げ部46aを除く部分である。)が弾性変形可能に差込まれて、溝部40bに交差して連通する穴部である。固定部40fは、溝部40bを通過した板バネ部材46の押圧部46bの先端部が挿入され固定される部分である。平面部40dは、板バネ部材46の曲げ部46aが面接触可能に突き当てられる部分である。
板バネ部材46は、突当部40b2に軸部13a10が存在しない場合(弾性変形していない状態である。)には、図8の破線で示すように、軸部13a10の設置が予定される範囲(軸部13a10の外径の範囲内)に入り込むことになる。そして、突当部40b2に軸部13a10が設置された状態で、板バネ部材46が図5の実線で示すように弾性変形して、軸部13a10(現像ローラ13a)を感光体ドラム11の側に付勢することになる。
これにより、軸部13a10が突当部40b2に密着するように突き当たって、感光体ドラム11と現像ローラ13aとの軸間距離が定まり、現像ギャップH(図3参照)が狙いの値に精度良く設定されることになる。
特に、変形例2における板バネ部材46は、曲げ部46aが平面部40dで固定され、押圧部46bの先端部が固定部40fで挿脱可能に差し込まれているため、軸部13a10に対する押圧部46bの付勢力が確保されやすくなる。そのため、上述した軸部13a10が突当部40b2に密着するように突き当たることによる効果が発揮されやすくなる。
【0047】
ここで、図8を参照して、変形例2におけるプロセスカートリッジ10BKは、面板40(位置決め部材)の板バネ部材46(制限部材)を介して現像ローラ13aの軸部13a10に現像バイアスを印加するように構成されている。
詳しくは、板バネ部材46は、面板40が設置された現像装置13(プロセスカートリッジ10BK)が画像形成装置本体1に着脱される動作に連動して、画像形成装置本体1に設置された電源90に対して電気的に接続・接続解除されるように構成されている。そして、現像装置13(プロセスカートリッジ10BK)が画像形成装置本体1に装着された状態で、通常の画像形成プロセスにおいて、先に図2を用いて説明したように、電源90から板バネ部材46を介して現像ローラ13aに所定の現像バイアスが印加されて、現像工程がおこなわれることになる。
このように板バネ部材46を現像バイアスを印加するための電極としても機能させることで、そのような電極を専用で設置する場合に比べて、装置が小型化、低コスト化されることになる。
なお、図8に示すように、変形例2における板バネ部材46には、突当部40b2に位置する軸部13a10に点接触可能な凸部46b1が、押圧部46bに形成されている。このように、押圧部46b(凸部46b1)を軸部13a10に点接触させるように構成することで、押圧部46bを軸部13a10に面接触させるように構成する場合に比べて、軸部13a10に対する押圧部46bの接触状態が安定しやすくなるため、現像ローラ13aへの現像バイアスの印加も安定化する。
また、変形例2における軸部13a10は上述したように非回転であるが、軸部13a10が回転するように構成されている場合には、押圧部46b(凸部46b1)を軸部13a10に点接触させるように構成することで、押圧部46bを軸部13a10に面接触させるように構成する場合に比べて、軸部13a10との摺接による押圧部46bの摺動抵抗を軽減することができる。
なお、図9(A)、(B)を参照して、面板40の差込口40e1(板バネ部材46の押圧部46bを差込穴部40eに挿入するための開口である。)に形成した凸形状部40e10は、面板40に板バネ部材46を装着するときに、凸部46b1が干渉しないようにするためのものである。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態における面板40は、感光体ドラム11(第1回転体)と現像ローラ13a(第2回転体)との対向距離Hを定める位置決め部材であって、感光体ドラム11のドラム軸11a(被嵌合部)が回転可能に嵌合する穴部40a(嵌合部)と、開口部40b1から突当部40b2まで所定方向に延びるように溝状に形成されて現像ローラ13aの軸部13a10がスライド移動可能な溝部40bと、が設けられている。そして、溝部40bにおいて突当部40b2に突き当たった状態の軸部13a10に対して、所定方向の移動を制限する制限部材45が、着脱可能に設置されている。
これにより、メンテナンスや交換に関わる時間や手間が低減される。
【0049】
なお、本実施の形態では、感光体ドラム11(像担持体)の被嵌合部としてのドラム軸11aに、面板40(位置決め部材)の嵌合部としての穴部40aが嵌合するように構成した。しかし、像担持体の被嵌合部と位置決め部材の嵌合部との組み合わせはこれに限定されず、例えば、感光体ドラム11(像担持体)の被嵌合部としての凹状のフランジに、面板40(位置決め部材)の嵌合部としての凸状部材が嵌合するように構成することもできる。
また、本実施の形態では、面板40における穴部40aや溝部40bを、それぞれ、ドラム軸11aや軸部13a10、13a20が貫通するように形成した。これに対して、面板40における穴部40aと溝部40bとのうち、少なくとも一方を、ドラム軸11aや軸部13a10、13a20が貫通せずに、回転軸方向の外側が塞がれるように形成することもできる。
また、本実施の形態では、溝部40bが仮想線S1(ドラム軸11aの中心と軸部13a10の中心とを結ぶ仮想線)が延びる方向に沿うように形成されているが、溝部40bが延びる方向はこれに限定されない。また、本実施の形態では、溝部40bが斜め方向に延びるように形成されているが、溝部40bが延びる方向はこれに限定されず、開口部40b1が感光体ドラム11に対向するように配置されていなければ良く、例えば、溝部40bが水平方向に延びるように形成することもできる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、プロセスカートリッジ10BKの一端側に設置される面板40(第1面板)にのみ本発明を適用して、他端側に設置される面板41(第2面板)には本発明(溝部40bや制限部材45)を適用しなかった。しかし、本発明による位置決め部材(面板40)は、少なくとも回転軸方向の一端側に着脱可能に設置されていれば良く、他端側に設置される面板にも本発明(溝部40bや制限部材45)を適用することができる。その場合、回転軸方向両端部にそれぞれ設置される本発明の位置決め部材(面板40)は、回転軸方向に対して互いに左右対称形のものとなる。
また、本実施の形態では、第1回転体としての感光体ドラム11と第2回転体としての現像ローラ13aとの対向距離Hを定める位置決め部材(面板40)に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されず、第1回転体と第2回転体との対向距離を定める位置決め部材であれば、それらのすべてに対して本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、感光体ドラム11(像担持体)と現像装置13と帯電装置12とクリーニング装置15とからなるプロセスカートリッジ10BKに対して本発明を適用したが、本発明が適用されるプロセスカートリッジはこれに限定されず、少なくとも感光体ドラム(像担持体)と現像装置(現像剤担持体)とが設置されたものであれば本発明を適用することができる。
そして、そのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、像担持体上をクリーニングするクリーニング装置と、のうち少なくとも1つと、像担持体と、が一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されたユニットと定義する。
【0052】
なお、これまで述べてきた現像ローラ13aの軸部の位置決めはプロセスカートリッジ10BK内での現像ローラ13aの位置決めであって、言わば、現像装置13の主基準に相当する。一方、従基準(現像ローラ13aの回転方向に対する位置決め)は、カートリッジケース50又は面板40、41の一端側と他端側とのうち少なくとも一方に形成することができる。従基準は、面板40、41の主基準が溝部で形成される場合には、面板40、41と同様に溝部で形成することが望ましい。
特に、従基準の溝部を面板の溝部と平行に形成することにより、現像装置13の着脱時に感光体ドラム11を傷付けるリスクを大幅に低減できる。
一方、従基準の溝部の少なくとも一部に、面板40、41の溝部に対して傾斜した部分を設けることで、あえて現像装置13がスムーズに外れない部分を設けて、制限部材を外した際に現像装置13がプロセスカートリッジ10BKから脱落しにくい構成とすることもできる。
特に望ましくは、従基準の溝部の感光体ドラム側(現像装置13の着脱方向の奥側)の所定の範囲では面板40、41の溝部と平行になるように形成して、感光体ドラム11から離れる側(現像装置13の着脱方向の手前側)の一部に傾斜した部分を設けると良い。
これにより、感光体ドラム11を傷付けることなく現像装置13を感光体ドラム11から離しつつ、プロセスカートリッジ10BKから脱落することを抑制することができる。
【0053】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
10Y、10M、10C、10BK プロセスカートリッジ、
11 感光体ドラム(第1回転体、像担持体)、
11a ドラム軸(被嵌合部)、
13 現像装置、
13a 現像ローラ(第2回転体、現像剤担持体)、
13a10、13a20 軸部、
13r 現像ケース、
40 面板(位置決め部材、第1面板)、
40a 穴部(嵌合部)、
40b 溝部、
40b1 開口部、 40b2 突当部、
40d 平面部、 40e 差込穴部、 40f 固定部、
41 面板(第2位置決め部材、第2面板)、
41a 穴部(嵌合部)、 41b 位置決め穴部、
41c すり鉢状穴部、
45 制限部材、
46 板バネ部材(制限部材)、
46a 曲げ部、
46b 押圧部、
46b1 凸部、
50 カートリッジケース、
60 ネジ、
65 軸受、
H 現像ギャップ(対向距離)、
S1 仮想線。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【文献】特許第6202387号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9