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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】包装体及び包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240711BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B15/085 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020075952
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021172359
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】府中 純子
(72)【発明者】
【氏名】味戸 恵理美
(72)【発明者】
【氏名】浅野 美穂
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-221539(JP,A)
【文献】特開2002-298796(JP,A)
【文献】特開2005-153980(JP,A)
【文献】特開昭54-013588(JP,A)
【文献】特開2019-199291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 67/00-79/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層を有する積層体からなる包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填してなる包装体であって、
前記積層体は、前記内容物に接するポリオレフィン樹脂層には、前記内容物に含有されるアンモニアが浸透して、前記ポリオレフィン樹脂層と接する前記アルミニウム層の前記内容物に近い側の面にアルミニウム酸化物を含む表面皮膜が形成され、前記表面皮膜は、前記アルミニウム層とは反対側の面で、接着剤アンカー剤使用しないで前記ポリオレフィン樹脂層と接しており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記表面皮膜に接する側の面に、前記ポリオレフィン樹脂層の表面処理による酸素官能基を有することを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、1層又は2層以上に積層されたポリオレフィン樹脂からなり、前記内容物と接していることを特徴とする請求項に記載の包装体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂層が、ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記表面皮膜が、アルミニウム水和酸化物を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
前記表面皮膜が、ベーマイト層からなることを特徴とする請求項に記載の包装体。
【請求項6】
前記内容物が、酸化剤と反応し得る染料を含有する染毛剤であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
アルミニウム層を有する積層体からなる包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填してなる包装体の製造方法であって、
アルミニウム層の前記内容物に近い側の面に、接着剤アンカー剤使用しないで、前記アルミニウム層と接したポリオレフィン樹脂層を有する積層体からなる包装容器を作製する容器作製工程と、
前記容器作製工程で作製した包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物が前記ポリオレフィン樹脂層と接するように、前記内容物を充填する充填工程と、
前記内容物に含有されるアンモニアを前記ポリオレフィン樹脂層に浸透させて、前記アルミニウム層の前記内容物に近い側の面にアルミニウム酸化物を含む表面皮膜を形成する作用工程と、を含み、
前記容器作製工程に先立って、前記ポリオレフィン樹脂層の前記アルミニウム層に接する側の面に、前記ポリオレフィン樹脂層の表面処理により酸素官能基を形成することを特徴とする包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤などの薬剤等にも好適に使用できる包装体及び包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム等の積層体は、軽量かつ柔軟であること、アルミニウム等の異種材料の積層により、水蒸気、酸素ガス等のガスバリア性を付与できること等から、包装材料として広く使用されている。しかし、内容物に含まれる物質の影響から、積層体の内部で剥離が生じる場合がある。特殊な物質を含有する内容物の包装では、内容物の取出しに従って変形が可能な金属チューブなどが使用される場合がある。しかし、金属チューブは、重量や寸法が大きいこと、取出口が硬質で、絞り出しが容易でないこと等から、1回分ずつの小分け包装に適用しにくい等の問題があった。
【0003】
特許文献1には、二剤式染毛剤のうち、少なくとも染料またはアンモニアが配合された第1剤を収容する包装体のシート材において、熱可塑性樹脂フィルムと金属箔とを、溶融された熱可塑性樹脂の押出し層を介して接合することが記載されている。また、特許文献1の段落0018には、染毛剤の成分による剥離(デラミネーション)を防止するため、不飽和カルボン酸でグラフト変性されたポリエチレン、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー等の接着性の熱可塑性樹脂を押し出すことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、樹脂層と金属箔層とが直接積層された積層構造を含む積層体からなる包装袋に、フェノール類を含むアルカリ性の内容物を収納し、アルカリ性条件下で、積層界面にフェノール類を作用させることが記載されている。また、特許文献2の段落0025~0029には、アルカリ性化合物の共存下でフェノール類を積層界面に作用させることで発明の目的が達成されること、アルカリ性化合物は例えば水酸化ナトリウム、アンモニア、芳香族アミン、水酸化カリウム等であること、フェノール類含有アルカリ性溶液が充填物自体であってもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-81285号公報
【文献】特開2006-1609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載の技術は、それぞれ特殊な接着性樹脂あるいはフェノール類を必要とするため、実用化に制約または困難があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、染毛剤などの特殊な物質を含有する内容物の充填包装に適した包装体及び包装体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、アルミニウム層を有する積層体からなる包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填してなる包装体であって、前記積層体は、前記アルミニウム層の前記内容物に近い側の面にアルミニウム酸化物を含む表面皮膜を有し、前記表面皮膜は、前記アルミニウム層とは反対側の面でポリオレフィン樹脂層と接していることを特徴とする包装体を提供する。
【0009】
前記包装体において、前記ポリオレフィン樹脂層には、前記内容物に含有されるアンモニアが浸透していてもよい。
前記ポリオレフィン樹脂層が、1層又は2層以上に積層されたポリオレフィン樹脂からなり、前記内容物と接していてもよい。
前記ポリオレフィン樹脂層が、ポリエチレン樹脂からなってもよい。
【0010】
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記表面皮膜に接する側の面に、前記ポリオレフィン樹脂層の表面処理による酸素官能基を有してもよい。
前記表面皮膜が、アルミニウム水和酸化物を含有してもよい。
前記表面皮膜が、ベーマイト層からなってもよい。
前記内容物が、酸化剤と反応し得る染料を含有する染毛剤であってもよい。
【0011】
また、本発明は、アルミニウム層を有する積層体からなる包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填してなる包装体の製造方法であって、アルミニウム層の前記内容物に近い側の面に接してポリオレフィン樹脂層を有する積層体からなる包装容器を作製する容器作製工程と、前記容器作製工程で作製した包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填する充填工程と、前記内容物に含有されるアンモニアを前記ポリオレフィン樹脂層に浸透させて、前記アルミニウム層の前記内容物に近い側の面にアルミニウム酸化物を含む表面皮膜を形成する作用工程と、を含むことを特徴とする包装体の製造方法を提供する。
【0012】
前記包装体の製造方法において、前記容器作製工程に先立って、前記ポリオレフィン樹脂層の前記アルミニウム層に接する側の面に、前記ポリオレフィン樹脂層の表面処理により酸素官能基を形成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウム層がアルミニウム酸化物を含む表面皮膜を介してポリオレフィン樹脂層と接するため、アルミニウム層とポリオレフィン樹脂層との接合強度が向上し、層間剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の包装体を構成する積層体の一例を示す断面図である。
図2】充填前の包装容器を構成する積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の包装体22は、アルミニウム層13を有する積層体10からなる包装容器20に、内容物21を充填した構成である。積層体10は、アルミニウム層13の内容物21に近い側の面に表面皮膜12を有する。この表面皮膜12は、アルミニウム層13とは反対側の面でポリオレフィン樹脂層11と接している。
【0017】
アルミニウム層13は、積層体10に遮光性、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等を付与することができる。アルミニウム層13としては、アルミニウム蒸着層、アルミニウム箔などが挙げられる。アルミニウム蒸着層は、樹脂フィルム等の他のシート材の表面に、アルミニウムを蒸着して形成することができる。他のシート材が、ポリオレフィン樹脂層11又は基材層14であってもよい。繰り返しの屈曲に対する耐久性の観点では、アルミニウム層13の厚さがより厚い、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔の厚さは、例えば5~200μm程度が挙げられる。包装容器20の柔軟性などの観点からは、アルミニウム箔の厚さが5~20μm又はそれ以下であることが好ましい。
【0018】
アルミニウム層13の表面には、表面皮膜12が形成されている。表面皮膜12は、ベーマイト(AlOOH)等のアルミニウム酸化物、例えばアルミニウム水和酸化物を含む。この表面皮膜12は、内容物21に含有されるアンモニアの作用により生成し得る。このため、包装体22を構成する積層体10において、ポリオレフィン樹脂層11には、内容物21に含有されるアンモニアが浸透成分23として浸透することができる。ポリオレフィン樹脂層11にアンモニアが浸透する範囲は、少なくとも内容物21に接する面から積層体10の厚さ方向に到達し得る領域であればよい。包装容器20がシール部などとして、積層体10が内容物21に接する面を有しない領域を有する場合は、積層体10の面方向にアンモニアが浸透する程度は特に限定されない。
【0019】
アルミニウム層13と内容物21の間には、ポリオレフィン樹脂層11が配置されている。ポリオレフィン樹脂層11は、1層のポリオレフィン樹脂層であってもよく、2層以上に積層されたポリオレフィン樹脂でもよい。ポリオレフィン樹脂層11は、内容物21と接していてもよく、ポリオレフィン樹脂層11と内容物21の間に他の樹脂層(図示せず)が介在してもよい。
【0020】
ポリオレフィン樹脂層11を構成する樹脂層としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
ポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)、エチレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。ポリエチレン樹脂に共重合させる他のオレフィンとしては、プロピレン又は炭素原子数4~18のα-オレフィンから選択される1種以上が挙げられる。ポリエチレン樹脂の具体例としては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン樹脂に共重合させる他のオレフィンとしては、エチレン又は炭素原子数4~18のα-オレフィンから選択される1種以上が挙げられる。炭素原子数4~18のα-オレフィンとしては、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-オクタデセンなどが挙げられる。
【0021】
ポリオレフィン樹脂層11を構成するポリオレフィン樹脂は、極性基を有するコモノマー(極性モノマー)を共重合させてもよい。極性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸系モノマー、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル系モノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、ビニルアルコール(ビニルエステルのケン化物)、グリシジルメタクリレート等のエポキシ系モノマーが挙げられる。アイオノマー樹脂のように、極性モノマーを共重合させたポリオレフィン樹脂に、ナトリウムや亜鉛などの金属イオンを加えてもよい。内容物21に含まれるアンモニアとの関係では、不飽和カルボン酸系モノマー等の酸性モノマーを含有しないポリオレフィン樹脂か、酸性モノマーを中和してなるポリオレフィン樹脂としてもよい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂層11には、公知の添加剤、例えば抗酸化剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、中和剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、顔料、有機充填剤、無機充填剤等を適宜配合しても良い。ポリオレフィン樹脂層11を構成するポリオレフィン樹脂は、浸透成分23となるアンモニアの充分な浸透性を有することが好ましく、そのため、例えば適度な融点又はガラス転位点、密度などを選択してもよい。
【0023】
内容物21を充填した後の積層体10において、ポリオレフィン樹脂層11が、表面皮膜12に接する側の面に、ポリオレフィン樹脂層11の表面処理による酸素官能基を有してもよい。表面処理としては、例えばオゾン処理、コロナ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、酸素共存下で270~310℃程度の樹脂温度による酸化処理などが挙げられる。ポリオレフィン樹脂層11の表面処理は、ポリオレフィン樹脂層11を押出成形する際の溶融フィルムに対して実施してもよく、ポリオレフィン樹脂層11を押出成形した後の、溶融状態より低温のフィルムに対して実施してもよい。
【0024】
表面処理により生成する酸素官能基としては、水酸基(-OH)、カルボニル基(>CO)、カルボキシル基(-COOH)等が挙げられる。水酸基やカルボキシル基のように活性水素を有する酸素官能基を生成する場合は、表面皮膜12に対して水素結合による相互作用が促進される。カルボニル基(>CO)のように活性水素を有しない酸素官能基を生成した場合も、表面皮膜12に含まれる水酸基と水素結合による相互作用が可能である。これにより、ポリオレフィン樹脂層11とアルミニウム層13との間の接着強度をより向上することができる。なお、2層間の接着強度は、前記2層が直接接しているか、前記2層の間に他の層が介在しているかによらず、前記2層の間に剥離力を加えて測定される剥離強度として測定することができる。
【0025】
積層体10は、アルミニウム層13の内容物から遠い側に、基材層14を有してもよい。基材層14としては、特に限定されず、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル等のハロゲン系樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂などの1層または2層以上が挙げられる。積層体10のうち、アルミニウム層13より内容物から遠い側に含まれる各層は、アルミニウム層13の高いバリア性により内容物21の影響を受けにくい。このため、基材層14等の樹脂層のほか、印刷層、接着剤層、アンカー剤層などを積層してもよい。
【0026】
積層体10を製造する方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法、熱ラミネート法などが挙げられる。積層体10のうち、アルミニウム層13より内容物に近い側に含まれる各層は、接着剤やアンカー剤を使用しないで、押出ラミネート法、共押出法、熱ラミネート法などを用いて積層することが好ましい。押出ラミネート法では、溶融樹脂の片面に樹脂層を積層してもよく、溶融樹脂の両面に樹脂層を積層してもよい。積層体10の構成は、特に限定されないが、積層フィルム、積層シート等における構成を適宜採用することも可能である。
【0027】
積層体10から包装容器を製造する方法としては、略平面状の積層体10を対向させ、内容物21が収容される空間の周囲をヒートシール等で接合してもよい。略平面状の積層体10を丸めて筒状とし、ヒートシール等で接合してもよい。積層体10を筒状とした場合は、積層体10からなる筒状体の片端を封止してチューブ状としてもよい。積層体10からなる筒状体の少なくとも片端に、積層体10又は他の材料からなる封止部材を用いて筒状体の開口部を封止してもよい。
【0028】
内容物21は、アルミニウム層13にアンモニアを作用させるため、少なくともアンモニアを含有する。アルミニウム層13で囲まれた内側では、外部から水分等が透過しにくいことから、内容物21がアンモニア及び水を含有してもよい。内容物21の種類としては、食品、飲料、洗剤、薬剤などが挙げられる。具体例として、内容物21が、酸化剤と反応し得る染料を含有する染毛剤であってもよい。内容物21のpHとしては、9.5~10.5等のアルカリ性が挙げられる。
【0029】
この種の染毛剤は、アンモニアと染料を含有する第1剤と、過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤とからなる二剤式である。使用時に第1剤と第2剤とを混合すると、酸化剤がアンモニアで分解されながら酸素(O)を発生させる。第1剤と第2剤との混合液を毛髪に適用すると、酸素により染料が酸化により発色して毛髪に定着する。また、アンモニアには、毛髪のキューティクルを開いて染料が毛髪に浸透することを促進する作用もある。また、酸化剤には、毛髪に含まれるメラニン色素を分解する作用もある。
【0030】
内容物21がアンモニアを含む場合、積層体10の樹脂層を浸透して、アルミニウム層13まで浸透し得る。このため、接着剤やアンカー剤を用いてアルミニウム層13を樹脂層と接着した場合、接着剤やアンカー剤がアンモニアの作用で分解又は劣化して、アルミニウム層13の接着構造が破壊され、層間剥離が発生するおそれがある。アンモニアがアルミニウム層まで浸透しないように、アルミニウム層の内側に特殊な材料からなる層を積層する場合は、材料費や生産コストの増大、包装容器としての適性変化による設計変更等の問題がある。
【0031】
このため、本実施形態では、内容物21を充填する前は、図2に示すように、アルミニウム層13がポリオレフィン樹脂層11と接した積層体10Aを用いて包装容器20Aを製造する。そして、図1に示すように、包装容器20Aに内容物21を充填して、所定の条件下で内容物21に含まれるアンモニアを浸透成分23としてアルミニウム層13に作用させることにより、アルミニウム層13に表面皮膜12を形成する。表面皮膜12が形成された後の積層体10におけるアルミニウム層13の厚さ及び性能を確保するため、積層体10Aに積層されるアルミニウム層13の厚さは、表面皮膜12の厚さよりも十分に大きいことが好ましい。
【0032】
本実施形態の包装体22の製造方法は、アルミニウム層13の内容物21に近い側の面に接してポリオレフィン樹脂層11を有する積層体10Aからなる包装容器20Aを作製する容器作製工程と、容器作製工程で作製した包装容器20Aに内容物21を充填する充填工程と、内容物21に含有されるアンモニアを積層体10Aのポリオレフィン樹脂層11に浸透させて、アルミニウム層13の内容物21に近い側の面に表面皮膜12を形成する作用工程と、を含む。
【0033】
アルミニウム層13の表面皮膜12に接するポリオレフィン樹脂層11が、内容物21に接する層であってもよい。また、アルミニウム層13の表面皮膜12に接するポリオレフィン樹脂層11の内側に、ナイロン、ポリエステル等、他の樹脂層(図示せず)を積層してもよい。他の樹脂層の内側に、第2のポリオレフィン樹脂層(図示せず)を積層してもよい。ポリオレフィン樹脂層11と他の樹脂層と第2のポリオレフィン樹脂層とを共押出法などで積層した構成で多層シーラント材を形成し、多層シーラント材のポリオレフィン樹脂層11をアルミニウム層13と積層してもよい。
【0034】
内容物21を充填する前の積層体10Aにおいて、アルミニウム層13のポリオレフィン樹脂層11と接する面には、公知の化成処理層を施してもよい。アルミニウム層13の化成処理層としては、水和酸化処理、陽極酸化処理、リン酸や有機酸を主成分とする非クロム酸系処理、リン酸クロメートやクロム酸クロメート等のクロム酸系処理、リン酸亜鉛系処理等が挙げられる。
【0035】
積層体10Aにおいて、アルミニウム層13の表面に化成処理層を有せず、自然酸化膜を有するアルミニウム層13を用いてもよい。アルミニウム層13の自然酸化膜としては、厚さが陽極酸化膜等よりも薄く、一般には約2μm以下の酸化膜が挙げられる。アルミニウム層13の少なくともポリオレフィン樹脂層11側の面において、自然酸化膜を除去してもよい。
【0036】
積層体10Aにおいて、ポリオレフィン樹脂層11のアルミニウム層13に接する側の面に、ポリオレフィン樹脂層11の表面処理により酸素官能基を形成してもよい。この表面処理としては、上述した積層体10のポリオレフィン樹脂層11において、表面皮膜12に接する側の面に施される表面処理と同様の処理が挙げられる。酸素官能基の形成は、ポリオレフィン樹脂層11をアルミニウム層13と積層する前に行うことが好ましい。
【0037】
内容物21を充填する前の包装容器20Aに内容物を充填するため、包装容器20Aは充填口を有することが好ましい。これにより、充填口以外の部分では包装容器20Aを構成する積層体10Aの周縁を閉鎖しておくことが可能になるため、アンモニアを含有する内容物21の充填工程の作業性が向上する。積層体10Aの周縁を閉鎖するための構造としては、積層体10Aのシーラント材同士を向かい合わせてヒートシール等により形成したシール部が挙げられる。シーラント材としては、上述したポリオレフィン樹脂層11又は多層シーラント材を用いてもよい。
【0038】
充填口の構造としては、積層体10Aの周縁の一部にシール部を形成することなく、未シール部とした構造や、積層体10Aに筒状の充填口を成形したスパウト部材を接合した構造が挙げられる。充填後に未シール部を閉鎖する構造としては、上述のシール部が挙げられる。充填後にスパウト部材を閉鎖する構造としては、キャップ、栓、蓋材などの閉鎖部材を取り付けた構造が挙げられる。スパウト部材や閉鎖部材は、樹脂、ゴム、金属などからなる成形品を用いてもよい。本実施形態によれば、作用工程に先立って、包装容器20Aを密封することにより、内容物21に含有される成分の漏出等を抑制することができる。
【0039】
作用工程においては、例えば内容物21を充填した包装容器20Aを、例えば温度30~120℃程度で所定の時間放置し、エージングする方法が挙げられる。作用工程は、内容物21の加熱殺菌工程を兼ねてもよい。加熱殺菌工程においては、加熱温度を例えば75℃以上、より好ましくは100℃以上としてもよい。本実施形態においては、作用工程の温度が例えば40℃程度の比較的低温であっても、内容物21に含まれるアンモニアをアルミニウム層13に作用させ、表面皮膜12を形成することができる。内容物21が高温で変質してしまう場合は、40℃程度の温度でエージングすることが望ましい。
【0040】
本実施形態の包装体22によれば、アルミニウム層13がアルミニウム酸化物を含む表面皮膜12を介してポリオレフィン樹脂層11と接している。このため、アルミニウム層13とポリオレフィン樹脂層11との接合強度が向上し、層間剥離を抑制することができる。接合強度が向上する原因は必ずしも明らかではないが、表面皮膜12の粗面化によるアンカー効果、ポリオレフィン樹脂層11の酸素官能基との水素結合による親和力などが挙げられる。
【0041】
また、アルミニウム層13の表面皮膜12が、内容物21に含有されるアンモニアがポリオレフィン樹脂層11に浸透して形成される場合は、アルミニウム層13の外側へのアンモニアの漏出を抑制することができる。このため、アルミニウム層13又は内容物21を充填する前の積層体10Aをアンモニアにさらして表面皮膜12を形成する場合と比べて、表面皮膜12を形成する工程の作業環境を容易に改善することができ、アンモニアの臭気等による影響を抑制することができる。
【0042】
上述したように、本実施形態の包装容器20を、二剤式の染毛剤のうち、アンモニアと染料を含有する第1剤の包装容器に用いた場合には、染毛剤に広く使用されている成分であるアンモニアに着目したことにより、第1剤に含まれる他の成分や割合の違いによらず、幅広い組成に対応することができる。通常であれば、強アルカリ性のアンモニアが包装容器の構成成分を劣化させるために、樹脂を主体とする積層体からなる包装容器を構成することは容易でなかった。上述した特許文献1、2に記載の技術は、それぞれ特殊な接着性樹脂あるいはフェノール類を必要とするため、実用化に制約または困難があった。
【0043】
本実施形態の包装体22によれば、包装容器20のシーラント材に比較的安価なポリエチレン樹脂などを用いることもできるので、安価な包装容器20を容易に提供することができる。包装容器20をキャップ等の再封可能な閉鎖部材で閉鎖する場合は、内容物21の取出しを複数回に分けることができる。包装容器20の容量を小さくして、小分けで使い捨ての包装容器20を提供することができる。
【0044】
包装容器20を構成する積層体10の周縁部に周縁シール部を形成するだけではなく、周縁部の内側で内容物21を収容する収容空間を仕切るように仕切りシール部を形成してもよい。この場合、それぞれの収容空間の周囲が周縁シール部又は仕切りシール部で囲まれるため、仕切りシール部の幅方向の略中央部で切断して、収容空間ごとに個別の包装容器20として製造又は使用することもできる。包装容器20の製造時には、仕切りシール部の幅方向の略中央部に切り取り線、ミシン目、ハーフカット線などの切断補助線を配置し、包装容器20のユーザーが任意に切断補助線を切断できるようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例
【0046】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0047】
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと厚さ7μmのアルミニウム箔(AL)との間を、坪量3.5g/mの接着剤(AD)を介してドライラミネート法により積層した。これにより得られたPET/AD/ALの層構成からなる積層フィルムのアルミニウム箔側の面に、厚さ100μmのポリエチレン(PE)樹脂フィルムを熱ラミネート法により積層して、PET/AD/AL/PEの層構成からなる包装容器用の積層体を作製した。熱ラミネートに先立って、ポリエチレン樹脂フィルムのアルミニウム箔と接する側の面にコロナ処理を施した。
【0048】
得られた包装容器用の積層体を矩形状に2枚裁断し、これら2枚をポリエチレン樹脂フィルム側が対向するように周縁部を揃えて重ね合わせ、周縁部のうち少なくとも3辺をヒートシールして三方シール袋形式の包装容器を作製した。包装容器の寸法は10cm角とした。内容物を充填する前の包装容器において、積層体のポリエチレン樹脂フィルムとアルミニウム箔との間の膜接着強度を測定したところ、約5N/inchであった。なお1inchは25.4mmである。
【0049】
包装容器に内容物を充填した後に開口部を密封して包装体を作製した。実施例1では、二剤式染毛剤(ホーユー株式会社製、商品名:ビューティーン(登録商標)泡立つミルキーヘアカラー ベビーベージュ)の第1剤15gを内容物として充填した。実施例2では、10%アンモニア水15gを内容物として充填し、開口部をヒートシールで閉鎖した。対照例1では、内容物を充填せず、空袋の包装容器のままとした。
【0050】
実施例1、2の包装体及び対照例1の包装容器を、内部環境が40℃dryのオーブンに入れてエージングした。対照例1では、エージングしても、前記膜接着強度は、約5N/inchのまま、ほとんど変化しなかった。実施例1では、3~5日間エージングを経ると、前記膜接着強度が約9~10N/inchに向上した。実施例2では、3~5日間エージングを経ると、前記膜接着強度が約8~9N/inchに向上した。実施例2について、エージング時間をさらに長くすると、10~30日間エージングを経ると、前記膜接着強度が約20~30N/inchに向上することが判明した。
【0051】
対照例2として、前記包装容器用の積層体のシーラント材として用いた厚さ100μmのポリエチレン(PE)樹脂フィルムを単層のまま、2枚の周縁部を揃えて重ね合わせ、周縁部のうち少なくとも3辺をヒートシールして、10cm角の三方シール袋形式の包装容器を作製した。内容物として実施例1に用いた染毛剤の第1剤を充填し、開口部をヒートシールで閉鎖し、対照例2の包装体を作製した。対照例2の包装体を捕集容器に入れ、包装体のポリエチレン樹脂フィルムを透過した成分を捕集した。透過した成分として捕集されたガスを分析したところ、有機成分としてリモネン、イオン成分としてアンモニウムイオン(NH )の存在が確認された。このことから、内容物に含まれる香料成分(リモネン)のほか、アンモニアがポリエチレン樹脂フィルムを透過することが分かった。
【0052】
実施例1、2の包装体を40℃で5日又は12日エージングした後、包装容器を構成する積層体から内容物に接する面のポリエチレン樹脂フィルムを除去し、アルミニウム層の内容物に近い側の面を露出させ、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、表面の写真を撮影した。すると、アルミニウム層の表面に結晶状の物質が存在し、元素分析では酸素(O)の含有量が増加していることが分かった。また、包装容器を構成する積層体を厚さ方向に切断し、断面の写真を撮影した。すると、40℃で5日のエージング後では膜厚が約30~50nm、40℃で12日のエージング後では膜厚が約130~200nmの表面皮膜がアルミニウム層の表面に形成されていることが分かった。
【0053】
以上の結果から、アルミニウム層の内容物に近い側の面にポリオレフィン樹脂層が接する積層体からなる包装容器に、アンモニア及び水を含有する内容物を充填して放置すると、アルミニウム層の内容物に近い側の面にアルミニウム酸化物を含む表面皮膜が形成され、積層体のポリエチレン樹脂フィルムとアルミニウム箔との間の膜接着強度が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0054】
10,10A…積層体、11…ポリオレフィン樹脂層、12…表面皮膜、13…アルミニウム層、14…基材層、20,20A…包装容器、21…内容物、22…包装体、23…浸透成分。
図1
図2