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特許7519234シートリーク評価システム、シートリーク評価プログラム、及びシートリーク評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】シートリーク評価システム、シートリーク評価プログラム、及びシートリーク評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240711BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20240711BHJP
【FI】
G01M3/26 L
G01F1/00 X
G01F1/00 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020142814
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038355
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】河南 宣之
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087164(JP,A)
【文献】特開2017-090155(JP,A)
【文献】特開2015-152512(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153454(WO,A1)
【文献】特開2006-250785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0042021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 1/30
G01F 1/34- 1/54
G01F 3/00- 9/02
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、
前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、
前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、
前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、
前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、
前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサと、
前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出する容積算出部と、
少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、前記容積算出部により算出された前記閉空間容積とを用いて算出するシートリーク量算出部とを備える、シートリーク評価システム。
【請求項2】
前記第1開閉バルブが、前記流体制御機器の下流側に設けられており、
前記第1開閉バルブの下流側に吸引ポンプが設けられており、
前記シートリーク量算出部が、前記第3圧力の上昇率と、前記流体制御機器における前記流体制御バルブの下流側の前記閉空間容積とを用いて前記シートリーク量を算出する、請求項1記載のシートリーク評価システム。
【請求項3】
前記第1開閉バルブが、前記流体制御機器の上流側に設けられており、
前記第1開閉バルブの上流側に圧送ポンプが設けられており、
前記シートリーク量算出部が、前記第3圧力の減少率と、前記流体制御機器における前記流体制御バルブの上流側の前記閉空間容積とを用いて前記シートリーク量を算出する、請求項1記載のシートリーク評価システム。
【請求項4】
マニホールドブロックの内部流路が前記第1流路及び前記第2流路として形成されており、前記第1開閉バルブ、前記第2開閉バルブ、前記圧力センサ、及び前記タンクが前記マニホールドブロックに設けられている、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のシートリーク評価システム。
【請求項5】
前記第1流路における前記圧力センサから前記第1開閉バルブまで、前記第2流路における前記第2開閉バルブから前記圧力センサまで、又は前記第2流路における前記第2開閉バルブから前記タンクまでの少なくとも一部が、水平方向及び鉛直方向の双方に対して傾いて形成されている、請求項4記載のシートリーク評価システム。
【請求項6】
タンクの既知容積が、前記閉空間容積の0.5倍以上1.5倍以下である、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のシートリーク評価システム。
【請求項7】
流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサとを備えたシートリーク評価システムに用いられるプログラムであり、
前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出する容積算出部と、
少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、前記容積算出部により算出された前記閉空間容積とを用いて算出するシートリーク量算出部としての機能をコンピュータに発揮させる、シートリーク評価プログラム。
【請求項8】
流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサとを用いたシートリーク評価方法であり、
前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出するステップと、
少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、算出された前記閉空間容積とを用いて算出するステップとを備える、シートリーク評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御バルブのシートリークを評価するシートリーク評価システムなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造プロセスにおいて、流体の流量を精度良く測定する方法として、RoR(Rate of Rise)システムと称されるものがある(特許文献1)。これは、マスフローコントローラの二次側を真空状態の閉空間とし、そこに気体を流し込み、その二次側の圧力上昇率を流量に換算するシステムである。
【0003】
このようなシステムにおいて、マスフローコントローラを構成する流体制御バルブに漏れ(以下、シートリークという)があると、そのシートリーク量によっては測定精度を担保することができない。そこで、従来は、例えば流量計を用いてシートリーク量を評価している。なお、このようにシートリーク量の評価が必要であることは、上述したRoRシステムのみならず、RoF(Rate of Fall)システムにおいても共通していえることである。
【0004】
しかしながら、昨今では、シートリークに関する要求がさらに厳しくなっており、要求される極微小領域のシートリーク量を流量計で測定しようとしても、例えば流量計に接続された配管が僅かにでも振動する等といった僅かな外乱でも出力が揺らいでしまい、出力が安定せず、要求に応えられる精度での測定や評価はできない。
【0005】
また、シートリーク量を測定する方法として、例えばヘリウムガスを用いたリークディテクタの使用も考えられるが、マスフローコントローラの内部を所定圧力まで真空引きするのに時間がかかったり、出力が安定するまでに時間がかかったりして、実用的できてはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-96884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、極微小領域のシートリーク量を精度良く測定する方法がない中、本願発明者は、マスフローコントローラの内部流路の容積が極めて小さいことに着目し、この内部流路の一部を含む閉空間にシートリークした気体を流し、その圧力変化率をシートリーク量に換算することを検討した。
【0008】
ところが、この測定方法においては、マスフローコントローラの内部流路の容積(以下、内部流路容積という)を用いることになるが、マスフローコントローラには機械加工のばらつきが生じる為に器差が生じる可能性があるので、この内部流路容積をより厳密に把握しなければシートリーク量を精度良く測定することができない。
【0009】
そこで、本発明は、マスフローコントローラの内部流路容積を利用するといったこれまでにない着想により、極微小領域のシートリーク量の測定を可能にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係るシートリーク評価システムは、流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサと、前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出する容積算出部と、少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、前記容積算出部により算出された前記閉空間容積とを用いて算出するシートリーク量算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成によれば、容積算出部が流体制御機器の内部流路容積を含む閉空間容積を算出するので、流体制御機器の器差を考慮した閉空間容積の算出が可能となり、閉空間容積を精度良く算出することができる。そして、この閉空間容積がシートリーク量算出部によるシートリーク量の算出に用いられるので、シートリーク量が極微小領域であったとしても、精度良く算出することが可能となる。より詳細には、流量計を用いた従来のシートリーク量の評価では5cc以下の測定が困難であったのに対して、上述した本発明に係るシートリーク評価システムによれば、例えば0.01cc以下の極微小領域のシートリーク量を算出することができる。
【0012】
具体的な実施態様としては、前記第1開閉バルブが、前記流体制御機器の下流側に設けられており、前記第1開閉バルブの下流側に吸引ポンプが設けられており、前記シートリーク量算出部が、前記第3圧力の上昇率と、前記流体制御機器における前記流体制御バルブの下流側の前記閉空間容積とを用いて前記シートリーク量を算出する態様を挙げることができる。
このような構成であれば、本発明に係るシートリークの評価を既存のRoRシステムに適用することができる。
【0013】
別の具体的な実施態様としては、前記第1開閉バルブが、前記流体制御機器の上流側に設けられており、前記第1開閉バルブの上流側に圧送ポンプが設けられており、前記シートリーク量算出部が、前記第3圧力の減少率と、前記流体制御機器における前記流体制御バルブの上流側の前記閉空間容積とを用いて前記シートリーク量を算出する態様を挙げることができる。
このような構成であれば、本発明に係るシートリークの評価を既存のRoFシステムに適用することができる。
【0014】
マニホールドブロックの内部流路が前記第1流路及び前記第2流路として形成されており、前記第1開閉バルブ、前記第2開閉バルブ、前記圧力センサ、及び前記タンクが前記マニホールドブロックに設けられていることが好ましい。
このような構成であれば、バルブ等の種々の機器をマニホールドブロックに集積しているので、これらの機器のユニット化を図れるうえ、閉空間容積を可及的に少量にすることができ、シートリーク量が極微小領域であっても第3圧力の変化率を短時間で測定することが可能となる。
さらに、このマニホールドブロックに流体制御機器を接続することで、その流体制御機器を構成する流体制御バルブのシートリークを短時間で測定・評価することができるので、例えば流体制御機器の量産ラインに導入することで、生産性や品質の向上を図れる。
【0015】
前記第1流路における前記圧力センサから前記第1開閉バルブまで、前記第2流路における前記第2開閉バルブから前記圧力センサまで、又は前記第2流路における前記開閉バルブから前記タンクまでの少なくとも一部が、水平方向及び鉛直方向の双方に対して傾いて形成されていることが好ましい。
このような構成であれば、第1流路や第2流路を水平方向及び鉛直方向のみで形成した構成に比べて、閉空間容積をより少量にすることができる。
【0016】
タンクの既知容積が閉空間容積に比べて小さすぎる或いは大きすぎると、第1圧力と第2圧力との差が小さく或いは大きくなりすぎて、閉空間容積を精度良く算出することが難しい。
そこで、閉空間容積を精度良く算出できるようにするためには、タンクの既知容積が、前記閉空間容積の0.5倍以上1.5倍以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るシートリーク評価プログラムは、流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサとを備えたシートリーク評価システムに用いられるプログラムであり、前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出する容積算出部と、少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、前記容積算出部により算出された前記閉空間容積とを用いて算出するシートリーク量算出部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするものである。
【0018】
さらに、本発明に係るシートリーク評価方法は、流体制御バルブを備えた流体制御機器に接続される第1流路と、前記第1流路に設けられた第1開閉バルブと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間から分岐する第2流路と、前記第2流路に設けられた第2開閉バルブと、前記第2流路における前記第2開閉バルブの下流に設けられた既知容積のタンクと、前記第1流路における前記流体制御機器及び前記第1開閉バルブの間の圧力を検出する圧力センサとを用いたシートリーク評価方法であり、前記流体制御バルブ、前記第1開閉バルブ、及び前記第2開閉バルブを閉じた第1状態において前記圧力センサにより検出される第1圧力と、前記第1状態から前記第2開閉バルブを開いた第2状態において前記圧力センサにより検出される第2圧力と、前記タンクの前記既知容積とを用いて、前記第1状態において前記流体制御機器の内部流路容積が含まれる閉空間容積を算出するステップと、少なくとも前記流体制御バルブ及び前記第1開閉バルブを閉じた第3状態において前記第1流路を流れる前記流体制御バルブのシートリーク量を、当該第3状態において前記圧力センサにより検出される第3圧力の変化率と、前記容積算出部により算出された前記閉空間容積とを用いて算出するステップとを備えることを特徴とする方法である。
【0019】
このようなシートリーク評価プログラムやシートリーク評価方法によれば、上述したシートリーク評価システムと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、極微小領域のシートリーク量を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るシートリーク評価システムの構成を示す模式図。
図2】同実施形態におけるマニホールドブロックの外観を示す模式図。
図3】同実施形態におけるマニホールドブロックの内部構造を示すA-A断面図。
図4】同実施形態におけるマニホールドブロックの内部構造を示すB-B断面図。
図5】同実施形態の評価装置の機能を示す機能ブロック図。
図6】同実施形態の評価装置の動作を示すフローチャート図。
図7】同実施形態のマスフローコントローラの内容積を示す図。
図8】その他の実施形態におけるシートリーク評価システムの構成を示す模式図。
図9】その他の実施形態におけるシートリーク評価システムの構成を示す模式図。
図10】その他の実施形態におけるシートリークの算出手順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係るシートリーク評価システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のシートリーク評価システム100は、流体制御機器たるマスフローコントローラMFCを構成する流体制御バルブAのシートリークを評価するためのものであり、ここでは所謂RoRシステムとともに用いられる。なお、マスフローコントローラMFCは、圧力式のものであっても熱式のものであっても良く、流体制御バルブAとしては例えばピエゾ素子を用いたピエゾバルブなどを挙げることができる。
【0024】
具体的にこのシートリーク評価システム100は、図1に示すように、流体が流れる第1流路L1と、第1流路L1に設けられた第1開閉バルブA1と、第1流路L1から分岐する第2流路L2と、第2流路L2に設けられた第2開閉バルブA2及びタンクTKと、第1流路L1に設けられた圧力センサPGと、少なくともこの圧力センサPGの検出値を用いてシートリークを評価する評価装置Cとを備えている。
【0025】
第1流路L1は、マスフローコントローラMFCが流体的に接続される流路である。この実施形態ではマスフローコントローラMFCの二次側の流路として形成されており、上流側端部がマスフローコントローラMFCの流出ポートに接続されるとともに、下流側端部がここでは後述の吸引ポンプPaに接続されている。
【0026】
第1開閉バルブA1は、図示しない弁制御部からの開閉信号を受け付けて開状態又は閉状態に切り替わるものであり、例えばエアバルブ等である。本実施形態の第1開閉バルブA1は、マスフローコントローラMFCの下流側に設けられており、この第1開閉バルブA1よりも下流側には吸引ポンプPaが設けられている。
【0027】
第2流路L2は、第1流路L1におけるマスフローコントローラMFC及び第1開閉バルブA1の間から分岐する流路であり、上流側端部が第1流路L1に接続されるとともに、下流側端部がタンクTKに接続されている。
【0028】
第2開閉バルブA2は、図示しない弁制御部からの開閉信号を受け付けて開状態又は閉状態に切り替わるものであり、例えばエアバルブ等である。
【0029】
タンクTKは、第2流路L2における第2開閉バルブA2の下流に設けられたものであり、容積が既知のもの、すなわち一定容量を有するものである。
【0030】
圧力センサPGは、第1流路L1におけるマスフローコントローラMFC及び第1開閉バルブA1の間の圧力を検出するものであり、この実施形態では第1流路L1における第2流路L2の分岐箇所に設けられている。
【0031】
本実施形態では、図2図4に示すように、上述した第1流路L1及び第2流路L2の少なくとも一部が、マニホールドブロックMの内部流路として形成されており、このマニホールドブロックMに上述した第1開閉バルブA1、第2開閉バルブA2、圧力センサPG、及びタンクTKが設けられている。
【0032】
第1流路L1の一部は、図3に示すように、水平方向及び鉛直方向の双方に対して傾いて形成されている。より具体的には、第1流路L1における圧力センサPGから第1開閉バルブA1までの流路の少なくとも一部が第1傾斜部L1aとして形成されている。なお、ここでの第1傾斜部L1aは、上流側から下流側に向かって斜め上方に傾斜しているが、具体的な態様はこれに限らず適宜変更して構わない。また、ここでは第1傾斜部L1aの容積が可及的に小さくなるようにしてあり、具体的には第1傾斜部L1aの直径は1.5mm程度である。
【0033】
また、第2流路L2の一部は、図4に示すように、水平方向及び鉛直方向の双方に対して傾いて形成されている。より具体的には、第2流路L2における第2開閉バルブA2からタンクTKまでの流路の少なくとも一部が第2傾斜部L2aとして形成されている。なお、ここでの第2傾斜部L2aは、下流側から上流側に向かって斜め下方に傾斜した後、斜め上方に傾斜しているが、具体的な態様はこれに限らず適宜変更して構わない。また、ここでは第2傾斜部L2aの容積が可及的に小さくなるようにしてあり、具体的には第2傾斜部L2aの直径は1.5mm程度である。
【0034】
さらに、ここでは第2流路L2における圧力センサPGから第2開閉バルブA2までの流路に少なくとも一部が第3傾斜部L2bとして形成されている。なお、ここでの第3傾斜部L2bは、下流側から上流側に向かって斜め下方に傾斜した後、斜め上方に傾斜しているが、具体的な態様はこれに限らず適宜変更して構わない。
【0035】
評価装置Cは、CPU、メモリ、入出力インターフェース等を備えた汎用乃至専用のコンピュータである。
【0036】
そして、この評価装置Cは、メモリの所定領域に格納された所定プログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、図5に示すように、容積算出部11、既知容積記憶部12、及びシートリーク量算出部13としての機能を発揮するものである。
【0037】
以下、これらの機能について、評価装置Cの動作説明を兼ねて図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、図示しない弁制御部が、第1開閉バルブA1、第2開閉バルブA2、及び流体制御バルブAを閉じ、これらのバルブに囲まれた閉空間Z(図1参照)に流体を閉じ込める(S1)。この状態を第1状態とする。
【0039】
この閉空間Zには、本実施形態のRoRシステムにおいては、マスフローコントローラMFCの内部流路容積のうち、流体制御バルブAよりも下流側が含まれるが、この流体制御バルブAよりも下流側の内部流路容積(以下、内容積Xという)には器差がある(図7参照)。従って、閉空間Zの容積(以下、閉空間容積Vという)には、器差のあるマスフローコントローラの内容積Xが含まれているので、その器差により一定の容積とならず誤差が生じる。
【0040】
然して、容積算出部11は、少なくともこの閉空間容積Vを算出するものであり、マスフローコントローラMFCの内容積Xをも算出可能なものである。
【0041】
より具体的に説明すると、第1流路L1におけるマスフローコントローラMFCとの接続箇所から第1開閉バルブA1までの流路の容積と、第2流路L2における上流側端部(第1流路L1及び第2流路L2の合流箇所)から第2開閉バルブA2までの容積とは既知であり、ここでは既知容積記憶部12に記憶されている。これらの容積の合計をV1とすると、上述した閉空間容積V=V1+Xとなる。
【0042】
次に、図示しない弁制御部が、第1状態から第2開閉バルブA2を開き、第1状態において閉空間Zに閉じ込めた流体をタンクTKに流し込む。この状態を第2状態とする(S2)。
【0043】
ここで、第2流路L2における第2開閉バルブA2からタンクTKまでの容積と、タンクTKの容積とは既知である。これらの容積は、ここでは既知容積記憶部12に記憶されており、これらの容積の合計をV2とする。なお、この実施形態ではタンクTKの既知容積を閉空間容積Vの0.5倍以上1.5倍以下としてあるが、タンクTKの容積は適宜変更して構わない。
【0044】
さらに、第1状態において圧力センサPGにより検出される圧力を第1圧力P1とし、第2状態において圧力センサPGにより検出された圧力を第2圧力P2とすると、P1×(V1+X)=P2×(V1+V2+X)の関係式1が成り立ち、閉空間容積V=X+V1に鑑みれば、P1×V=P2×(V+V2)の関係式2が成り立つ。
【0045】
そこで、容積算出部11は、少なくとも第1圧力P1、第2圧力P2、及びタンクTKの既知容積を用いて、閉空間容積Vを算出するように構成されており、ここでは上述した既知容積記憶部12に記憶されている既知容積(具体的には、第2流路L2における第2開閉バルブA2からタンクTKまでの容積と、タンクTKの容積との合計)を用いるように構成されている。より具体的には、容積算出部11は、圧力センサPGにより検出された第1圧力P1及び第2圧力P2や、既知容積記憶部12に記憶された種々の既知容積を取得し、上述した関係式1に基づいて閉空間容積Vを算出する(S3)。なお、この容積算出部11としては、上述した関係式2に基づいて、マスフローコントローラMFCの内容積Xをも算出するように構成されていても良い。
【0046】
次に、シートリーク量算出部13が、流体制御バルブAのシートリーク量、すなわち流体バルブを閉じた状態において、この流体制御バルブAからリークする流体の流量を算出する。
【0047】
具体的には、吸引ポンプPaを稼働させた状態において、図示しない弁制御部が、少なくとも流体制御バルブA及び第1開閉バルブA1を閉じる(S4)。この状態を第3状態とする。
【0048】
ここでの第3状態においては、図示しない弁制御部が、第2開閉バルブA2を閉じている。これにより、流体制御バルブAからリークした流体は、上述した第1状態において説明した閉空間Zに引き込まれることになる。このことから、第3状態において圧力センサPGにより検出される圧力を第3圧力P3とすると、この第3圧力P3は、流体制御バルブAにシートリークがある場合、時間の経過とともに上昇する。そして、このときのシートリーク量は、第3圧力P3の圧力上昇率から気体の状態方程式を用いて換算することができる。
【0049】
そこで、シートリーク量算出部13は、少なくとも圧力センサPGにより検出された第3圧力P3の変化率と、容積算出部11により算出された閉空間容積Vとを用いてシートリーク量を算出する(S5)。
【0050】
より具体的に説明すると、Q∝(ΔP3/Δt)・V/T・1/Zの関係式3が成り立つので、シートリーク量算出部13は、この関係式3に基づいてシートリーク量を算出する。なお、Qはシートリーク量、ΔP3は上昇圧力、Δtは上昇時間、Vは閉空間容積、Tは流体の温度、Zは圧縮係数である。なお、流体の温度Tとしては、図3に示すように、マニホールドブロックMに設けた温度センサTSからの出力値を用いており、シートリーク量算出部13は、この温度センサTSからの出力値を受け付けてシートリーク量を算出するように構成されている。
【0051】
このように構成されたシートリーク評価システム100によれば、容積算出部11がマスフローコントローラMFCの内容積を含む閉空間容積Vを算出するので、マスフローコントローラMFCの器差を考慮した閉空間容積Vの算出が可能となり、閉空間容積Vを精度良く算出することができる。そして、この閉空間容積Vがシートリーク量算出部13によるシートリーク量の算出に用いられるので、シートリーク量が極微小領域であったとしても、精度良く算出することが可能となる。
【0052】
また、マニホールドブロックMに第1開閉バルブA1、第2開閉バルブA2、圧力センサPG、及びタンクTKを集積しているので、これらの機器のユニット化を図れるうえ、閉空間容積Vを可及的に少量にすることができ、シートリークが極微小領域であっても第3圧力の変化率を短時間で測定することが可能となる。
【0053】
さらに、このマニホールドブロックMにマスフローコントローラMFCを接続することで、そのマスフローコントローラMFCを構成する流体制御バルブAのシートリークを短時間で測定・評価することができるので、例えばマスフローコントローラMFCの量産ラインに導入することで、生産性や品質の向上を図れる。
【0054】
加えて、第1流路L1の一部や第2流路L2の一部を水平方向及び鉛直方向の双方に対して傾いて形成してあるので、第1流路L1や第2流路L2を水平方向及び鉛直方向のみで形成した場合に比べて、閉空間容積Vをより少量にすることができ、極微小領域のシートリーク量の算出に資する。さらに、第1流路L1の一部や第2流路L2の一部が傾斜しているので、これらを例えばエンドミルやドリルで加工することができ、溶接を不要にすることができる。
【0055】
そのうえ、タンクTKの既知容積が閉空間容積Vに比べて小さすぎる或いは大きすぎると、第1圧力と第2圧力との差が小さく或いは大きくなりすぎて、閉空間容積Vを精度良く算出することが難しい。これに対して、本実施形態のタンクTKの既知容積は、閉空間容積Vの0.5倍以上1.5倍以下であるので、閉空間容積Vを精度良く算出することができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、本発明に係るシートリーク評価システム100は、前記実施形態では第1流路L1の上流側からマスフローコントローラMFC、第1開閉バルブA1、吸引ポンプPaがこの順で設けられたRoRシステムに用いられていたが、図8に示すように、第1流路L1の上流側から圧送ポンプPb、第1開閉バルブA1、マスフローコントローラMFCがこの順で設けられたRoFシステムに用いられても良い。この場合のシートリーク量算出部13としては、第3圧力P3の減少率と、マスフローコントローラMFCの内部容積のうち流体制御バルブAの上流側を含む閉空間容積Vとを用いてシートリーク量を算出する態様が挙げられる。なお、RoFシステムにおいては、閉空間容積Vには、マスフローコントローラMFCの内部流路容積のうち、流体制御バルブAよりも上流側が含まれることになる。
【0058】
また、マスフローコントローラMFCとしては、複数の流体制御バルブAを備えたものであっても良く、この場合はそれぞれの流体制御バルブAのシートリーク量を算出することができる。具体的には、図9に示すように、例えば直列に設けられた2つの流体制御バルブAを備える構成について考える。
【0059】
この場合、図10に示すように、まず一方の流体制御バルブA(例えば上流側)を閉じるとともに、他方の流体制御バルブAを開いておき、第1開閉バルブA1、及び第2開閉バルブA2を閉じる(T1)。これにより、マスフローコントローラMFCの内部流路のうち、この一方の流体制御バルブAの下流側の内部流路容積を含む第1閉空間Z1が形成される。そして、第2開閉バルブA2を開いて(T2)、第1閉空間容積を算出する(T3)。なお、第1閉空間容積の具体的な算出方法は前記実施形態の閉空間容積Vの算出と同様であり、詳細は省略する。
【0060】
次いで、他方の流体制御バルブA(例えば下流側)を閉じるとともに、一方の流体制御バルブAを開いておき、第1開閉バルブA1、及び第2開閉バルブA2を閉じる(T4)。これにより、マスフローコントローラMFCの内部流路のうち、この他方の流体制御バルブAの下流側の内部流路容積を含む第2閉空間Z2が形成される。そして、第2開閉バルブA2を開いて(T5)、第2閉空間容積を算出する(T6)。なお、第2閉空間容積の具体的な算出方法は前記実施形態の閉空間容積Vの算出と同様であり、詳細は省略する。
【0061】
そして、吸引ポンプPaを稼働させながら、再び一方の流体制御バルブAを閉じるとともに、他方の流体制御バルブAを開いておき、少なくとも第2開閉バルブA2を閉じる(T7)。この状態において、一方の流体制御バルブAにリークがあれば、圧力センサPGにより検出された圧力値が上昇するので、前記実施形態と同様、この圧力上昇率を用いて一方の流体制御バルブAのシートリーク量を算出することができる(T8)。
【0062】
また、吸引ポンプPaを稼働させながら、再び他方の流体制御バルブAを閉じるとともに、一方の流体制御バルブAを開いておき、少なくとも第2開閉バルブA2を閉じる(T9)。この状態において、他方の流体制御バルブAにリークがあれば、圧力センサPGにより検出された圧力値が上昇するので、前記実施形態と同様、この圧力上昇率を用いて他方の流体制御バルブAのシートリーク量を算出することができる(T10)。
【0063】
なお、各流体制御バルブAのシートリーク量を算出する手順は上述したものに限らず、例えば第2閉空間容積の算出工程(T4~T6)の前に、一方の流体制御バルブAのシートリーク量の算出工程(T7、T8)を行い、その後、第2閉空間容積の算出工程(T4~T6)と、他方の流体制御バルブAのシートリーク量の算出工程(T9、T10)を行っても良い。
【0064】
さらに、前記実施形態では、圧力センサPGが第1流路L1における第2流路L2の分岐箇所に設けられていたが、配置はこれに限らず、第1流路L1における分岐箇所の上流側や下流側或いは第2流路L2における分岐箇所よりも下流側など、閉空間Zの圧力を測定可能な位置であれば適宜変更して構わない。
【0065】
前記実施形態では、第1流路L1及び第2流路L2がマニホールドブロックMの内部流路として形成されていたが、第1流路L1及び第2流路L2の一方又は両方は例えば配管部材の内部流路として形成されていても良い。この場合、前記実施形態においてマニホールドブロックMに設けられていた機器、すなわち第1開閉バルブA1、第2開閉バルブA2、圧力センサPG、及びタンクTKの一部又は全部は、配管部材に設けられていても良い。
【0066】
前記実施形態では、図示しない弁制御部が第1開閉バルブA1や第2開閉バルブA2を開状態又は閉状態に切り替える態様を説明したが、オペレータが手動で第1開閉バルブA1や第2開閉バルブA2を開状態又は閉状態に切り替えても構わない。
【0067】
前記実施形態では、第3状態において第2開閉バルブA2を閉じていたが、第3状態において第2開閉バルブA2を開いても良い。この場合のシートリーク量算出部13としては、第3圧力の変化率と、閉空間容積VとタンクTKの既知容積等とを合計したV+V2とを用いてシートリーク量を算出する態様を挙げることができる。
【0068】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な実施形態の変形や、実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0069】
100・・・シートリーク評価システム
MFC・・・マスフローコントローラ
A ・・・流体制御バルブ
L1 ・・・第1流路
A1 ・・・第1開閉バルブ
L2 ・・・第2流路
A2 ・・・第2開閉バルブ
TK ・・・タンク
PG ・・・圧力センサ
C ・・・評価装置
P1 ・・・吸引ポンプ
M ・・・マニホールドブロック
L1a・・・第1傾斜部
L2a・・・第2傾斜部
L2b・・・第3傾斜部
11 ・・・容積算出部
12 ・・・既知容積記憶部
13 ・・・シートリーク量算出部
Z ・・・閉空間
Z1 ・・・第1閉空間
Z2 ・・・第2閉空間
P2 ・・・圧送ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10