(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】水洗処理システム、及び水洗処理システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20240711BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240711BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240711BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20240711BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20240711BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
B01D21/01 A
B01D21/30 A
B09B3/00 ZAB
B09B3/70
(21)【出願番号】P 2020170360
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 政登
(72)【発明者】
【氏名】中河 久典
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-062191(JP,A)
【文献】特開平10-137540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/00
B01D 21/01
B01D 21/30
B09B 3/00
B09B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性塩素含有化合物を含む粉体の水洗処理システムであって、
前記粉体と水とを混合してスラリーを調製する水洗槽と、
前記スラリーと凝集剤とを混合する混和槽と、
前記スラリー中に形成される分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する第一沈殿槽と、
前記上澄み部の少なくとも一部を前記第一沈殿槽から抜き出す第一抜出ラインと、
前記第一抜出ラインによって抜き出された前記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する測定部と、
前記濃縮部の少なくとも一部を前記第一沈殿槽から抜き出す第二抜出ラインと、
前記第二抜出ラインによって抜き出された前記濃縮部の懸濁物質濃度を測定する測定部と、を備え、
前記上澄み部の懸濁物質濃度に基づいて、前記混和槽に供給される前記スラリーの濃度及び前記凝集剤の供給量の少なくとも一方が調整され
、
前記上澄み部の懸濁物質濃度及び前記濃縮部の懸濁物質に基づいて、前記混和槽に供給される前記スラリーの濃度及び前記凝集剤の供給量の少なくとも一方が調整される、水洗処理システム。
【請求項2】
前記第一抜出ラインは、前記水洗槽、前記混和槽及び前記第一沈殿槽の少なくとも一種に前記上澄み部を返送する第一返送ライン、及び前記上澄み部を排出する第一排出ラインと接続しており、
前記上澄み部の懸濁物質濃度に基づいて、前記第一返送ライン及び前記第一排出ラインのいずれに前記上澄み部の流路を切り替える、請求項1に記載の水洗処理システム。
【請求項3】
前記第一排出ラインによって排出された前記上澄み部と、pH調整剤、還元剤、凝集剤及び吸着剤からなる群より選択される少なくとも一種とを混合した混合液を調製する収容槽と、
前記混合液中に形成される分散体を沈殿させ上澄み部と濃縮部とを形成する第二沈殿槽と、を更に備える、請求項2に記載の水洗処理システム。
【請求項4】
前記第二抜出ラインは、前記第一沈殿槽に濃縮部を返送する第二返送ライン、及び前記濃縮部を外部へと排出する第二排出ラインと接続しており、
前記濃縮部の懸濁物質濃度に基づいて、前記第二返送ライン及び前記第二排出ラインのいずれに前記濃縮部の流路を切り替える、請求項
1~3のいずれか一項に記載の水洗処理システム。
【請求項5】
前記第二返送ラインは前記濃縮部を前記第一沈殿槽内に排出する側の端部の位置を変更可能な伸縮機構を有し、
前記濃縮部の懸濁物質濃度に基づいて前記端部の位置が調整される、請求項
4に記載の水洗処理システム。
【請求項6】
水溶性塩素含有化合物を含む粉体と水とを混合してスラリーを調製する工程と、
前記スラリー中の分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する工程と、
前記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する工程と、
前記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、前記スラリーを調製するための前記粉体の配合量及び組成、並びに前記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、
前記濃縮部の懸濁物質濃度を測定する工程と、
前記濃縮部の懸濁物質濃度の値に応じて、前記スラリーを調製するための前記粉体の配合量及び組成、並びに前記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、
を有する、水洗処理システムの制御方法。
【請求項7】
前記スラリーと凝集剤とを混合する工程と、
前記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、前記凝集剤の混合量を調整する工程を更に有する、請求項
6に記載の水洗処理システムの制御方法。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の水洗処理システムを制御する方法である、請求項
6又は7に記載の水洗処理システムの制御方法。
【請求項9】
前記粉体が、セメントキルンの排ガスから抽出されたダスト、及びゴミ焼却灰からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項
6~8のいずれか一項に記載の水洗処理システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水溶性塩素化合物を含む粉体の水洗処理システム、及び水洗処理システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石の製錬工程、廃棄物の処理工程及びセメントキルン抽気ダストの処理工程等において処理対象物の洗浄が行われており、この過程で大量のスラリーが生成する。当該スラリーを効率的に処理するために、有力な方法として、スラリー中の分散体を、沈殿槽を含むシックナー等で凝縮処理し、濃縮部を除去する方法が広く採用されている。
【0003】
スラリーの処理を効率的に行うためには、分散体を十分に沈降させ、濃縮部の懸濁物質濃度を高めてから濃縮部を装置外へ排出し処理することが望ましい。この際、上澄み部は別途排出され処理される。分散体が十分に沈降しない場合、又はシックナー中に溜まる濃縮部の量が増えすぎた場合は、上澄み部に懸濁物質が流出し得る。従来、管理者による目視観察及び経験則によって、排出される上澄み部への懸濁物質の流出の有無が管理されている。これに対して、固液分離槽の次の処理水槽に濁度を測定する装置を設け、処理水の濁度を計測し、計測された濁度の値に基づいて凝集剤の添加量を制御する技術について検討がなされている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術の場合、固液分離槽から排出された上澄み水と処理水槽の処理水とが混合された状態で濁度が測定され、上澄み水自体の濁度を測定するわけではないため、上澄み部に流出した懸濁物質の検知が遅れ、後工程に影響を与え得る。
【0006】
また、スラリーを調製する際の処理対象物である粉体の組成が必ずしも一定でない。このため、沈殿槽における濃縮部の濃縮度合いがシックナーを運転する間に亘って変動し得る。このような場合にも、シックナーの運転が不安定化し、上澄み部への懸濁物質の流出が生じ得る。
【0007】
本開示は、従来のスラリー処理方法よりも上澄み部に伴って懸濁物質が流出することを低減可能な水洗処理システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、水溶性塩素含有化合物を含む粉体の水洗処理システムであって、上記粉体と水とを混合してスラリーを調製する水洗槽と、上記スラリーと凝集剤とを混合する混和槽と、上記スラリー中に形成される分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する第一沈殿槽と、上記上澄み部の少なくとも一部を上記第一沈殿槽から抜き出す第一抜出ラインと、上記第一抜出ラインによって抜き出された上記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する測定部と、を備え、上記上澄み部の懸濁物質濃度に基づいて、上記混和槽に供給される上記スラリーの濃度及び上記凝集剤の供給量の少なくとも一方が調整される、水洗処理システムを提供する。
【0009】
上記水洗処理システムは、第一沈殿槽から抜き出される上澄み部の懸濁物質濃度に着目し、この濃度を指標として、スラリーの濃度及び凝集剤の濃度を調整することを可能とし、スラリー中に形成される分散体の生成量を容易に制御できる。このような水洗処理システムによれば、上澄み部に伴って懸濁物質が流出することを低減できる。
【0010】
上記第一抜出ラインは、上記水洗槽、上記混和槽及び上記第一沈殿槽の少なくとも一種に上記上澄み部を返送する第一返送ライン、及び上記上澄み部を排出する第一排出ラインと接続しており、上記上澄み部の懸濁物質濃度に基づいて、上記第一返送ライン及び上記第一排出ラインのいずれに上記上澄み部の流路を切り替えてもよい。水洗処理システムが上述のような第一返送ラインを備えることによって、懸濁物質濃度が所定の値以上になった場合に、上澄み部を排出せず、上記水洗槽、上記混和槽及び上記第一沈殿槽に戻すことを可能となり、上澄み部に伴って懸濁物質が流出することをより一層低減できる。
【0011】
上記水洗処理システムは、上記第一排出ラインによって排出された上記上澄み部と、pH調整剤、還元剤、凝集剤及び吸着剤からなる群より選択される少なくとも一種とを混合した混合液を調製する収容槽と、上記混合液中に形成される分散体を沈殿させ上澄み部と濃縮部とを形成する第二沈殿槽と、を更に備えてもよい。水洗処理システムが上述の構成を有することで、上澄み部に伴って懸濁物質が流出することをより確実に防止することができる。
【0012】
上記濃縮部の少なくとも一部を上記第一沈殿槽から抜き出す第二抜出ラインと、上記第二抜出ラインによって抜き出された上記濃縮部の懸濁物質濃度を測定する測定部と、を更に備え、上記上澄み部の懸濁物質濃度及び上記濃縮部の懸濁物質に基づいて、上記混和槽に供給される上記スラリーの濃度及び上記凝集剤の供給量の少なくとも一方が調整されてもよい。濃縮部の懸濁物質濃度を、上記混和槽に供給される上記スラリーの濃度及び上記凝集剤の供給量の調整するための情報として組み入れることによって、より安定したシステムの運転を行い得る。例えば、上澄み部の懸濁物質濃度のみに基づく場合、上澄み部への懸濁物質の流出を防ぐ観点から凝集剤の添加量が過剰となり、スラリー中の分散体の形成が過剰となり得、このような場合、上記第一沈殿槽からの濃縮部の抜出不全を招く等が起こり得る。換言すれば、上述のような構成を有することで、上記抜出不全をも抑制し得る。
【0013】
上記第二抜出ラインは、上記第一沈殿槽に濃縮部を返送する第二返送ライン、及び上記濃縮部を外部へと排出する第二排出ラインと接続しており、上記濃縮部の懸濁物質濃度に基づいて、上記第二返送ライン及び上記第二排出ラインのいずれに上記濃縮部の流路を切り替えてもよい。上述のような構成を有することによって、第一沈殿槽の濃縮部が適切な懸濁物質濃度になってから排出する、又は懸濁物質濃度が高くなりすぎる前に排出することが可能となる。
【0014】
上記第二返送ラインは上記濃縮部を上記沈殿槽内に排出する側の端部の位置を変更可能な伸縮機構を有し、上記濃縮部の懸濁物質濃度に基づいて上記端部の位置が調整されてもよい。濃縮部を第一沈殿槽内に返送する際、返送位置によっては、上澄み部へ懸濁物質を拡散したり、濃縮が十分でない濃縮部を沈殿部の底に供給して濃縮部を巻き上げたりといったことが生じ得る。第二返送ラインが濃縮部の返送位置を適切な位置に調整可能な機構を有することで、上述のような問題を低減できる。
【0015】
本開示の一側面は、水溶性塩素含有化合物を含む粉体と水とを混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリー中の分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記スラリーを調製するための上記粉体の配合量及び組成、並びに前記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、を有する、水洗処理システムの制御方法を提供する。
【0016】
上記水洗処理システムの制御方法は、上澄み部の懸濁物質濃度に着目し、この濃度を指標としてスラリーを調製する際の粉体の配合量及び組成の少なくとも一方を調整する工程を有することから、上澄み部への懸濁物質の流出をより確実に防止しつつ、水洗処理システムを安定して運転することができる。
【0017】
上記スラリーと凝集剤とを混合する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記凝集剤の混合量を調整する工程を更に有してもよい。
【0018】
上記濃縮部の懸濁物質濃度を測定する工程と、上記濃縮部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記スラリーを調製するための上記粉体の配合量及び組成、並びに上記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、を更に有してもよい。
【0019】
上記水洗処理システムの制御方法は、上述の水洗処理システムを制御する方法であってよい。
【0020】
上記粉体が、セメントキルンの排ガスから抽出されたダスト、及びゴミ焼却灰からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、従来のスラリー処理方法よりも上澄み部に伴って懸濁物質が流出することを低減可能な水洗処理システム及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、水洗処理システムの一例を示す構成図である。
【
図2】
図2は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
【
図4】
図4は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
[水洗処理システム]
水溶性塩素含有化合物を含む粉体の水洗処理システムの一実施形態は、水溶性塩素含有化合物を含む粉体と水とを混合してスラリーを調製する水洗槽と、上記スラリーと凝集剤とを混合する混和槽と、上記スラリー中に形成される分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する第一沈殿槽と、上記上澄み部の少なくとも一部を上記第一沈殿槽から抜き出す第一抜出ラインと、上記第一抜出ラインによって抜き出された上記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する測定部と、を備える。当該システムにおいては、上記上澄み部の懸濁物質濃度に基づいて、上記混和槽に供給される上記スラリーの濃度及び上記凝集剤の供給量の少なくとも一方が調整される。
【0025】
図1は、水洗処理システムの一例を示す構成図である。水洗処理システム100は、貯蔵部10、供給量調節部20、水洗槽30、混和槽40、及び第一沈殿槽50がこの順で接続した構成を備える。各構成は、それぞれ搬送ライン等によって接続されている。より具体的には、貯蔵部10は第一搬送ライン2aによって供給量調節部20と接続し、供給量調節部20は第二搬送ライン2bによって水洗槽30と接続し、水洗槽30は第三搬送ライン2cによって第一沈殿槽50と接続し、第一沈殿槽50は第一抜出ライン4a及び第一排出ライン8aと接続している。第一沈殿槽50は沈殿槽の上澄み部を抜き出すことが可能であるように接続された第一抜出ライン4aと、第一抜出ライン4aに接続された第一排出ライン8aとを備えている。第一抜出ライン4a上には第一測定部60が設けられ、第一抜出ライン4a、及び第一排出ライン8aと接続している。各種ラインは、上澄み部を搬送できる形態であればよく、例えば、管状等であってもよい。なお、本開示に係る水洗処理システムは、水洗槽に粉体を供給できればよく、必ずしも貯蔵部及び第一制御部に相当する構成を有していなくてもよい。
【0026】
本明細書における水溶性塩素含有化合物とは、塩素を含み、水溶性である化合物をいう。水溶性塩素含有化合物は、セメントキルンの排ガスから抽出されたダスト、及びゴミ焼却灰からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。水溶性塩素含有化合物の含有量が大きい粉体を用いてスラリーを調製した場合には、スラリー中で分散体となる量が少なく、沈殿槽における上澄み部中の懸濁物質濃度が低くなる傾向にある。一方、水溶性塩素含有化合物の含有量が小さい粉体を用いてスラリーを調製した場合には、スラリー中で分散体となる量が多く、沈殿槽における上澄み部中の懸濁物質濃度が高くなる傾向にある。また、混和槽40において配合する凝集剤がスラリー中の分散体の量に対して不足した場合も上澄み部中の懸濁物質濃度が高くなる。
【0027】
上述のような傾向を考慮して、第一沈殿槽50から抜き出される上澄み部の懸濁物質濃度が低い場合には上記粉体の水洗槽30への供給量を増加させ、すなわち、混和槽40に供給されるスラリーの濃度を上昇させ、反対に、上澄み部の懸濁物質濃度が高い場合には上記粉体の水洗槽30への供給量を減少させ、すなわち、混和槽40に供給されるスラリーの濃度を低下させるように、供給量調節部20において粉体の供給量を調整するか、又は水洗槽30に供給する水の配合量を調整する。このような粉体及び水の供給量は、供給量調節部20及び水供給調節部を制御する制御部(不図示)によって行われてもよい。この場合、供給量調節部20及び水供給調節部は制御部からの動作指示に基づいて動作する。上記制御部は、例えば、あらかじめ調整された制御プログラムに従って、懸濁物質濃度の測定結果に基づき、供給量調節部20及び水供給調節部を制御する。
【0028】
水洗槽30では、供給量調節部20において供給量が調整された粉体に水を加えてスラリーが調製される。水洗槽30は、pH調整剤を添加する手段を有していてもよい。pH調整剤を添加することによってスラリーの溶媒である水中に溶解している成分を不溶化させ沈殿を発生させたり、分散体の凝集を促進させたりすることができる。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ、並びに、硫酸及び塩酸等の酸などであってよい。
【0029】
混和槽40では、第二搬送ライン2bから供給されるスラリーに更に凝集剤等が添加される。混和槽40は、凝集剤添加手段を更に有し、凝集剤添加手段と、第一測定部60による上記上澄み部の懸濁物質濃度の測定結果に基づいて、上記凝集剤添加手段を制御する添加量調節部(不図示)、を更に有してもよい。このような凝集剤等の添加剤の添加量は、添加量調節部を制御する制御部(不図示)によって行われてもよい。この場合、添加量調節部は制御部からの動作指示に基づいて動作する。上記制御部は、例えば、あらかじめ調整された制御プログラムに従って、懸濁物質濃度の測定結果に基づき、添加量調節部を制御する。スラリーに添加する凝集剤は、例えば、無機凝集剤、無機高分子凝集剤及び有機高分子凝集剤等であってよい。
【0030】
第一沈殿槽50は、例えば、有底円筒状の外壁部を有する。第一沈殿槽50の内側には、外壁部と同心となるように設けられた有底円筒状の内壁を有し、その底部は、底面に向かって凸な円錐状の形状を有してもよい。第一沈殿槽50の内側が上述のような形状を有することで、スラリー中の分散体を沈降させた後、濃縮部をより効率よく抜き出すことができる。第一沈殿槽50は、底部に向かって凸な円錐状の底面に沿って駆動可能なレーキ等が配置されていてもよい。
【0031】
第一沈殿槽50では、スラリー中の分散体を沈降させる。凝集状態は、例えば、第一沈殿槽50に供給されるスラリーの性状(例えば、濃度、pH及び凝集剤の添加量)などによって制御することができる。第一沈殿槽50がレーキを有する場合、第一沈殿槽50の底部付近で、レーキをゆっくりと回転させることによって、スラリー中の濃縮を促進し、濃縮部をより均一な状態とすることができる。
【0032】
第一沈殿槽50の上部に形成された上澄み部は、第一沈殿槽50の側面又は上面に接続された第一抜出ライン4aから抜き出される。第一抜出ライン4a中を流れる上澄み部における懸濁物質濃度(SS濃度)は第一測定部60によって測定される。第一測定部60は、測定結果を供給量調節部20及び水供給調節部を制御する制御部、並びに添加量調節部を制御する制御部の少なくとも一つの制御部に送信する送信機を備えていてもよい。
【0033】
図1において、第一抜出ライン4aは第一沈殿槽50の側面に接続しているが、第一沈殿槽50の上部付近に形成される濃縮部を抜出可能であれば、第一沈殿槽50の側面に接続されている必要はなく、例えば、抜出口が第一沈殿槽50の内側底部に位置するように配置されていれば、第一沈殿槽50の底部付近の側面に接続していてもよい。第一抜出ライン4aは後述する第一測定部60による、第一抜出ライン4a中を流れる上澄み部における懸濁物質濃度を測定が可能であるように、少なくとも一部が、光又は超音波が透過可能な素材で構成されていることが好ましく、測定部に対面する位置に光が透過可能なガラス等の窓が設けられていることがより好ましい。
【0034】
第一測定部60は、第一沈殿槽50と第一抜出ライン4aの接続部よりも下流に位置することが好ましい。第一測定部60は第一抜出ライン4aの外壁上に設けられていてもよい。第一測定部60における懸濁物質濃度の測定方法は、例えば、透過光測定法又は散乱光測定法等であってよい。水洗処理システム100は、第一測定部60による濃縮部の懸濁物質濃度の測定結果が所定値を超えた場合に、外部の警報装置に信号を送る信号発信器を更に備えてもよい。
【0035】
水洗処理システム100が、懸濁物質濃度の第一測定部60を備えることによって、第一沈殿槽50から抜き出された上澄み部の懸濁物質濃度を確認しつつ、運転することが可能であり、第一沈殿槽50からの上澄み部に懸濁物質が混入することを抑制することができる。水洗処理システム100は上述のように上澄み部の懸濁物質の濃度を確認することによって、スラリー中の分散体の沈殿槽での沈降が不十分、若しくは濃縮したスラリーが溜まりすぎることを間接的に確認することにもなり、システムの安定運転をも可能となり得る。
【0036】
水洗処理システム100は、例えば、上記第一排出ライン8aによって排出された上記上澄み部と、pH調整剤、還元剤、凝集剤及び吸着剤からなる群より選択される少なくとも一種とを混合した混合液を調製する収容槽と、上記混合液中に形成される分散体を沈殿させ上澄み部と濃縮部とを形成する第二沈殿槽と、を更に備えてもよい。水洗処理システムが上述の構成を有することで、上澄み部に伴って懸濁物質が流出することをより確実に防止することができる。
【0037】
図2は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
図2に示される水洗処理システム110では、
図1の内容に加えて第一切り替え部70と第一返送ライン6aが追加された点で上述の水洗処理システム100とは異なる。その他構成は共通する。第一切り替え部70は第一抜出ライン4a、第一返送ライン6a、及び第一排出ライン8aと接続している。第一返送ライン6aは、第一切り替え部70と水洗槽30に接続され、水洗槽30に第一沈殿槽50の上澄み部の一部又は全部を返送することができる。水洗処理システム110では、第一返送ライン6aによる上澄み部の返送先は、水洗槽30とする例で示したが、第一返送ライン6aによる上澄み部の返送先は、上記水洗槽30、上記混和槽40及び上記第一沈殿槽50の少なくとも一種であってよく、上記水洗槽30、及び上記混和槽40の少なくとも一方であってよい。
【0038】
第一切り替え部70は、第一抜出ライン4a中を流れる上澄み部の流路を第一返送ライン6a及び第一排出ライン8aのいずれかに切り替えられるものであればよい。第一切り替え部70は、例えば、第一抜出ライン4a、第一排出ライン8a及び第一返送ライン6aのそれぞれの端部と直接接続し、上述の端部と第一切り替え部70との接続部のそれぞれに上述のライン中の流れを止めることが可能なストップバルブを有するような形態であってもよい。第一切り替え部70はまた、例えば、三方弁等であってよい。第一切り替え部70は、第一測定部60における懸濁物質濃度の測定結果に応じて、人が切り替えを行ってもよいが、例えば、上記上澄み部の懸濁物質濃度の測定結果に基づいて、第一切り替え部を制御する制御部によって切り替えてもよい。この場合、水洗処理システム110は、第一切り替え部を制御する制御部を更に備える。上記制御部は、例えば、あらかじめ調整された制御プログラムに従って、懸濁物質濃度の測定結果に基づき、第一切り替え部を制御する。
【0039】
水洗処理システム110が、第一切り替え部70と第一返送ライン6aを備えることによって、第一沈殿槽50から抜き出された上澄み部の懸濁物質濃度が上昇した場合、水洗槽30に上澄み部を返送することで、懸濁物質を後工程又は外部に排出してしまうことをより十分に抑制することができる。
【0040】
図3は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
図3に示される水洗処理システム120では、
図2の内容に加えて第二抜出ライン4b、第二切り替え部71、第二排出ライン8bと第二返送ライン6bが追加された点で上述の水洗処理システム110とは異なる。その他構成は共通する。
【0041】
第一沈殿槽50の底部には、第一沈殿槽50の濃縮部を抜き出すことが可能なように、第二抜出ライン4bが接続され、第二抜出ライン4b上には第二測定部61が設けられている。第二切り替え部71は第二抜出ライン4b、第二返送ライン6b、及び第二排出ライン8bと接続している。第二返送ライン6bは、第一沈殿槽50に接続され、第一沈殿槽50に沈殿槽の濃縮部の一部又は全部を返送することができる。第二排出ライン8bは、濃縮部に更に脱水等の処理を行う濃縮部処理部(不図示)と接続していてもよい。第二測定部61は、測定結果を供給量調節部20及び水供給調節部を制御する制御部、並びに添加量調節部を制御する制御部の少なくとも一つの制御部に送信する送信機を更に備えていてもよい。
【0042】
第一沈殿槽50の底部に形成された濃縮部は、第一沈殿槽50の底部に接続された第二抜出ライン4bから抜き出される。第二抜出ライン4b中を流れる濃縮部における懸濁物質濃度(SS濃度)が第二測定部61によって測定される。この際、第二抜出ライン4b中を流れる濃縮部の懸濁物質濃度が所定値(管理者が設定することができる値)よりも高く、充分な濃縮状態にある場合には、当該濃縮部は、第二排出ライン8b中へ供給されてよい。一方、第二抜出ライン4b中を流れる濃縮部の懸濁物質濃度が所定値よりも低い場合には、第二切り替え部71の動作によって、濃縮部の流れる流路が第二排出ライン8bから第二返送ライン6bへと切り替えられ、当該濃縮部は、第二返送ライン6b中へと供給され第一沈殿槽50へ再び供給される。第一沈殿槽50よりも上流においてスラリーの性状を精度よく調製することが可能であれば、第二返送ライン6b及び第二切り替え部71は省略することができる。
【0043】
図3において、第二抜出ライン4bは第一沈殿槽50の底部に接続しているが、第一沈殿槽50の底部付近に形成される濃縮部を抜出可能であれば、第一沈殿槽50の底部に接続されている必要はなく、例えば、抜出口が第一沈殿槽50の内側底部に位置するように配置されていれば、第一沈殿槽50の底部付近の側面に接続していてもよい。第二抜出ライン4bは後述する第二測定部61による、第二抜出ライン4b中を流れる濃縮部における懸濁物質濃度を測定が可能であるように、少なくとも一部が、光又は超音波が透過可能な素材で構成されていることが好ましく、測定部に対面する位置に光が透過可能なガラス等の窓が設けられていることがより好ましい。
【0044】
第二切り替え部71は、第二抜出ライン4b中を流れる濃縮部の流路を第二返送ライン6b及び第二排出ライン8bのいずれかに切り替えられるものであればよい。第二切り替え部71は、例えば、第二抜出ライン4b、第二返送ライン6b及び第二排出ライン8bのそれぞれの端部と直接接続し、上述の端部と第二切り替え部71との接続部のそれぞれに上述のライン中の流れを止めることが可能なストップバルブを有するような形態であってもよい。第二切り替え部71はまた、例えば、三方弁等であってよい。第二切り替え部71は、第二測定部61における懸濁物質濃度の測定結果に応じて、人が切り替えを行ってもよいが、例えば、上記濃縮部の懸濁物質濃度の測定結果に基づいて、第二切り替え部71を制御する制御部によって切り替えてもよい。この場合、水洗処理システム120は、第二切り替え部を制御する制御部を更に備える。上記制御部は、例えば、あらかじめ調整された制御プログラムに従って、懸濁物質濃度の測定結果に基づき、第二切り替え部を制御する。
【0045】
水洗処理システム120が、懸濁物質濃度の第二測定部61を備えることによって、第一沈殿槽50から抜き出された濃縮部の濃縮の度合いを確認しつつ、運転することが可能であり、濃縮度合いが不十分なまま脱水処理する濃縮部処理部へと濃縮部が第一沈殿槽50から排出されたり、濃縮度合いが高すぎることで第一沈殿槽50からの抜出不良が発生したりすることを抑制できる。水洗処理システム100であれば、第二排出ライン8bによって排出される濃縮部は、所望の懸濁物質濃度に設定可能であることから、第二排出ライン8bに接続する濃縮部処理部における処理作業を及び運転間隔を一定に制御することもできる。
【0046】
上述の水洗処理システム120において、濃縮部処理部は、例えば、脱水機及び乾燥機などであってよい。濃縮部処理部における処理後に得られる処理物は、スラリーに含まれる成分等によって、各種用途に用いられる原料とすることもできる。例えば、セメントキルンの排ガスから抽出されたダスト(例えば、塩素バイパスダスト等)のみを含むスラリーを上述のスラリー処理システムにおいて処理することで得られる処理物は、セメント製造の仕上げ工程における粉砕機(仕上げミルともいう)にクリンカと共に供給する原料として使用することができる。またセメントキルンの排ガスから抽出されたダスト(例えば、塩素バイパスダスト等)、及びゴミ焼却灰等の石灰分を含むスラリーを上述のスラリー処理システムにおいて処理することで得られる処理物は、セメント製造の焼成前の原料粉砕機(原料ミルともいう)に供給する原料として使用することができる。
【0047】
水溶性塩素含有化合物は、水に溶解可能である。したがって、水溶性塩素含有化合物の含有量が大きい粉体を用いてスラリーを調製した場合には、スラリー中で分散体となる量が少なく、沈殿槽における濃縮部中の懸濁物質濃度が低くなる傾向にある。また水溶性塩素含有化合物の含有量が小さい粉体を用いてスラリーを調製した場合には、スラリー中で分散体となる量が多く、沈殿槽における濃縮部中の懸濁物質濃度が高くなる傾向にある。上述のような傾向を利用して、第一沈殿槽50から抜き出される濃縮部の懸濁物質濃度が低い場合には上記粉体の水洗槽30への供給量を増加させ、上記懸濁物質濃度が高い場合には上記粉体の水洗槽30への供給量を減少させるように、供給量調節部20において粉体の供給量を調整してもよい。また、前述の第二制御部において凝集剤の供給量を調整してもよい。
【0048】
水洗処理システム120において、上記第二返送ライン6bは上記濃縮部を上記第一沈殿槽50内に排出する側の端部の位置を変更可能な伸縮機構を有してもよく、上記濃縮部の懸濁物質濃度に基づいて上記端部の位置が調整されてもよい。濃縮部を沈殿槽内に返送する際、返送位置によっては、上澄み部へ懸濁物質を拡散したり、濃縮が十分でない濃縮部を沈殿部の底に供給して濃縮部を巻き上げたりといったことが生じ得る。第二返送ライン6bが濃縮部の返送位置を適切な位置に調整可能な機構を有することで、上述のような問題を低減できる。上記伸縮機構は、例えば、蛇腹、テレスコピックパイプ等であってよい。第二返送ライン6bの排出する側の端部の位置は、第一沈殿槽50内の濃縮部と上澄み部との界面の位置に合わせることが好ましい。上記界面の位置は、濃縮部の懸濁物質濃度に対応し位置を予測することができる。したがって、上記端部の位置は、濃縮部の懸濁物質濃度、すなわち第二測定部の測定結果に応じて調整することができる。
【0049】
図4は、水洗処理システムの別の例を示す構成図である。
図4に示される水洗処理システム130では、第一貯蔵部(貯蔵部10)及び第二貯蔵部11の二つになっており、それぞれの搬送ライン上に供給量調節部20,21が設けられており、第一貯蔵部及び第二貯蔵部11のそれぞれからの粉体供給量を独立して制御できる点で上述の水洗処理システム100とは異なる。その他構成は水洗処理システム100と共通する。換言すれば、水洗処理システム130は、水溶性塩素化合物を含む第一の粉体を貯蔵する第一貯蔵部と、上記第一貯蔵部における第一の粉体よりも水溶性塩素化合物の含有量が大きな第二の粉体を貯蔵する第二貯蔵部11とを有する。
【0050】
水洗処理システム130では、第一測定部60によって測定される、第一沈殿槽50から抜き出された濃縮部の懸濁物質濃度の測定結果に基づいて、供給量調節部20,21において第一貯蔵部(貯蔵部10)及び第二貯蔵部11からの粉体供給量を調整し、水洗槽30に導入される粉体の組成を調整することができる。例えば、濃縮部の懸濁物質濃度が所定値よりも低い場合には、分散体の含有量を増加させ、水洗槽30に導入する水溶性塩素含有化合物の割合を低下させるため、第一貯蔵部からの粉体の供給量の割合を、第二貯蔵部からの粉体の供給量の割合よりも多くなるように調整する。また濃縮部の懸濁物質濃度が所定値よりも高い場合には、分散体の含有量を低下させ、水洗槽30に導入する水溶性塩素含有化合物の割合を増加させるため、第一貯蔵部からの粉体の供給量の割合を、第二貯蔵部からの粉体の供給量の割合よりも少なくなるように調整する。
【0051】
上述の水洗処理システム100,110,120,130は、第一沈殿槽50で形成される上澄み部を処理する手段を更に備えてもよい。上述の水洗処理システム100,110,120,130は、例えば、第一沈殿槽50から上記上澄み部を排水する第一排出ライン8aと、第一排出ライン8aに接続され、上記上澄み部を有用する収容槽と、上記収容槽と接続し、上記沈殿槽とは異なる第二沈殿槽と、を更に備えてもよい。
【0052】
鉱石の製錬工程、廃棄物の処理工程及びセメントキルン抽気ダストの処理工程等において処理対象物中には、各種有用な成分が含有され得る。特にセメントキルン抽気ダストには、塩素、アルカリ、硫黄、タリウム、鉛、カドミウム、クロム、マンガン、鉄、セレン等の有用な成分が含まれる。これらの成分は有用であると同時に、水質汚濁防止法などによって規制される有害物質にも該当しており、上記処理対象物の洗浄液の排水からは、これらの成分を除去することが求められる。そこで、水洗処理システム100,110,120,130を用いたスラリーの処理では、第一沈殿槽50等から排出される上澄み部を含む排水に更に処理を加え、水溶性の成分や有用な成分を回収、除去することが望ましい。上記排水の処理のためには、処理前に事前にスラリーを構成する分散体の含有量を極力低減し、処理しやすい排水としておくことが望ましい。上述の水洗処理システム100,110,120,130においては、スラリー調整のために供給する粉体の供給量及び組成を調整しつつ、スラリーの性状を調整し、沈殿槽を介すことで、上述のような排水を効率的に生成することができる。
【0053】
収容槽は、例えば、pH調整剤、還元剤、凝集剤及び吸着剤からなる群より選択される少なくとも一種を上澄み部(第一沈殿槽50から第一排出ラインを介して供給される上澄み部)に添加する手段を備えてもよい。このような手段を設けることによって、上澄み部中の可溶成分を不溶化させたり、凝集体を形成させたりすることによって沈殿を生ぜしめたり、吸着剤等に可溶成分の少なくとも一部を吸着させることによって溶媒と分離させたりすることができる。pH調整剤及び凝集剤は、上述のスラリーの処理方法においてpH調整剤及び凝集剤として例示したものを用いることができる。還元剤としては、例えば、第一鉄塩化合物等を用いることができる。第一鉄塩化合物は、例えば、塩化第一鉄、塩化第一鉄・二水和物、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄・四水和物、硫酸第一鉄・五水和物、硫酸第一鉄・七水和物、及びポリ硫酸第一鉄等が挙げられる。吸着剤としては、例えば、希土類化合物を含む吸着剤を用いることができる。希土類化合物は、例えば、イットリウム、ランタン、セリウム、及びイッテルビウムからなる群より選択される一種以上の元素の酸化物、並びに水酸化物等が挙げられる。
【0054】
上述の水洗処理システム100,110,120,130は、その他、例えば、第二の沈殿槽において、重金属等の有効成分等を除去した後の上澄み部を電気分解する電気分解槽を更に備えてもよい。上記上澄み部を電気分解することによって、上澄み部中に溶解していた溶存金属を更に回収することができる。
【0055】
[水洗処理システムの制御方法]
水洗処理システムの制御方法の一実施形態は、水溶性塩素含有化合物を含む粉体と水とを混合してスラリーを調製する工程と、上記スラリー中の分散体を沈降させ上澄み部と濃縮部とを形成する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度を測定する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記スラリーを調製するための上記粉体の配合量及び組成、並びに前記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、を有する。
【0056】
上述の水洗処理システムの制御方法においては、沈殿槽から抜き出される上澄み部における懸濁物質濃度に着目し、この濃度を指標として、スラリーを調製する際の粉体の供給量及び組成等を調整し、分散体の生成量及び沈降速度を調整することによって、水洗処理システムを安定して運転することができる。
【0057】
上記スラリーと凝集剤とを混合する工程と、上記上澄み部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記凝集剤の混合量を調整する工程を更に有してもよい。
【0058】
上記濃縮部の懸濁物質濃度を測定する工程と、上記濃縮部の懸濁物質濃度の値に応じて、上記スラリーを調製するための上記粉体の配合量及び組成、並びに上記水の配合量からなる群より選択される少なくとも一つを調整する工程と、を更に有してもよい。
【0059】
上述の水洗処理システム100,110,120,130は、上記制御方法を行うために適するように第一抜出ライン4a中を流れる上澄み部の懸濁物質濃度を測定可能なように第一測定部60を備え、更には、第一測定部60の測定結果に基づいて、粉体の供給量及び組成の少なくとも一方を調整可能なように供給量調節部20,21を備えている、また、場合によって、混和槽40における凝集剤を添加する手段も調整可能である。換言すれば、上述の制御方法は、水洗処理システム100,110,120,130の制御方法にも適用できる。
【0060】
以上、水洗処理システム及び水洗処理システムの制御方法について、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示によれば、従来のスラリー処理方法よりも上澄み部への懸濁物質の流出をより確実に防止することが可能な水洗処理システム及びその制御方法を提供できる。
【符号の説明】
【0062】
2a…第一搬送ライン、2b…第二搬送ライン、2c…第三搬送ライン、4a…第一抜出ライン、4b…第二抜出ライン、6a…第一返送ライン、6b…第二返送ライン、8a…第一排出ライン、8b…第二排出ライン、10…貯蔵部(第一貯蔵部)、11…第二貯蔵部、20,21…供給量調節部、30…水洗槽、40…混和槽、50…第一沈殿槽、60…第一測定部、70…第一切り替え部、71…第二切り替え部、100,110,120,130…水洗処理システム。