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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】定電圧回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G05F1/56 310D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020215440
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101065
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-067394(JP,A)
【文献】特開2014-071717(JP,A)
【文献】特開2019-200579(JP,A)
【文献】特開2009-069964(JP,A)
【文献】特開2006-301869(JP,A)
【文献】特開2006-301946(JP,A)
【文献】特開2004-234619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧から一定の出力電圧を得るための定電圧回路であって、
ソース又はエミッタに前記電源電圧が入力され、ドレイン又はコレクタから前記出力電圧を得るためのトランジスタである第1トランジスタと、
基準電圧と、前記出力電圧を分圧して得られる帰還電圧との差分を増幅した出力を前記第1トランジスタのゲート電圧又はベース電圧として供給可能な誤差増幅器と、
ゲート又はベース及びソース又はエミッタが前記第1トランジスタのゲート又はベース及びソース又はエミッタにそれぞれ接続されたトランジスタである第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのドレイン又はコレクタと接地点との間に設けられた第1抵抗器と、
ソース又はエミッタが前記電源電圧が入力される電源端子に接続され、且つ、ドレイン又はコレクタが前記第1トランジスタのゲート又はベースに接続されたトランジスタである第3トランジスタと、
前記基準電圧と、前記第2トランジスタのドレイン電圧又はコレクタ電圧との比較結果に基づく出力を、前記第3トランジスタのゲート電圧又はベース電圧として供給可能なコンパレータと、
を備える、定電圧回路。
【請求項2】
前記第2トランジスタのドレイン又はコレクタと前記第1抵抗器との間に設けられたノードと、前記コンパレータの前記ドレイン電圧又はコレクタ電圧の入力端子との間に設けられた静電容量を更に備える、請求項1に記載の定電圧回路。
【請求項3】
前記出力電圧の分圧が入力されるゲート又はベースと、第2抵抗器を介して前記コンパレータの前記ドレイン電圧又はコレクタ電圧の入力端子に接続されるソース又はエミッタと、接地点に接続されるドレイン又はコレクタとを有するトランジスタである第4トランジスタを更に備える、請求項2に記載の定電圧回路。
【請求項4】
前記電源端子と前記第3トランジスタのソース又はエミッタとの間に設けられた第3抵抗器と、
ゲート又はベース及びソース又はエミッタが前記第1トランジスタのゲート又はベース及びソース又はエミッタにそれぞれ接続され、ドレイン又はコレクタが前記第3トランジスタのソース又はエミッタに接続された第5トランジスタと、
を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の定電圧回路。
【請求項5】
ソース又はエミッタが前記第1トランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、ゲート又はベース及びドレイン又はコレクタが電流源を介してそれぞれ接地点に接続されたトランジスタである第6トランジスタと、
ゲート又はベースが前記第6トランジスタのゲート又はベースに接続され、ソース又はエミッタが前記第2トランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、ドレイン又はコレクタが前記第1抵抗器に接続されるトランジスタである第7トランジスタと、
を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の定電圧回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
低消費電流の回路に搭載される定電圧回路として、例えば、低飽和動作が可能な安定化電源回路(以下、適宜「LDO(Low Drop-Out)レギュレータ回路」と称する)が知られている。LDOレギュレータ回路は、例えば、バッテリを電源に用いるバッテリ駆動機器等に採用されている。
【0003】
ここで図6は、従来技術に係るLDOレギュレータ回路1´の構成を示す回路図であり、図7図6のLDOレギュレータ回路1´の入力電圧Vin、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間電圧Vgs(<0)及び出力電圧Voutの時間変化を示すタイムチャートである。LDOレギュレータ回路1´は、出力端子OUTの出力電圧Voutを抵抗r1、r2で分圧した帰還電圧を、基準電圧Vrefと比較して差分を増幅する誤差増幅器AMPと、誤差増幅器AMPの出力をゲートに入力し、このゲートの入力電圧により出力電圧Voutを調整するためのPチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)である出力用トランジスタMP1とを備える。
【0004】
LDOレギュレータ回路1´では、図7に示すように、一定の出力電圧Voutを出力している状態で電源端子VDDに入力される入力電圧Vinが急激に上昇すると、出力電流を制御するための素子である出力用トランジスタMP1のゲート-ドレイン間の電位差が増加することに伴い、出力用トランジスタMP1のゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを介してゲート電流が流れ、出力用トランジスタMP1のゲート電圧Vgが引き下げられる。その結果、出力端子OUTからの出力電流が負荷に供給する以上に流れ、LDOレギュレータ回路1´の出力電圧Voutが増加し、一時的に出力電圧Voutの設定値(制御上の目標値)VOLDOを超過する現象(オーバーシュート)が生じることがある。
【0005】
このような入力電圧Vinの急激な上昇による出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制するための技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1では、図8に示すように、図6に比べて、電源端子VDDと接地点GNDとの間に設けられた静電容量c1と、当該静電容量c1に流れ込む電流Idetを検出して電流出力として得るためのカレントミラー回路CM1とを備える。この回路では、入力電圧Vinが増加すると、静電容量c1に電流Idetに対応する電流Ifbが流れ込むことにより、出力用トランジスタMP1のゲート電圧Vgが引き上げられることにより、オーバーシュートの抑制が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-65836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1で用いられる技術には、次のような課題がある。第1に、静電容量c1には、電源端子VDDと接地点GNDとの間の電位差に相当する電圧が印加されるため、静電容量c1に求められる耐電圧性能が高いことがある。一般的に、静電容量は単位面積当たりの容量値が小さいため、十分な耐電性能を得るためには、静電容量c1のレイアウトサイズが大きくなってしまう。第2に、LDOレギュレータ回路1´の電源投入時等では、電源端子VDDに印加される入力電圧Vinの上昇に伴って出力電圧Voutの立ち上げが行われる。このような状況では、前述の静電容量c1を含む回路は、LDOレギュレータ回路1´´の出力電流を減少させる方向で動作するため、LDOレギュレータ1´´の起動完了までに要する時間が長くなってしまうおそれがある。このことから、LDOレギュレータ回路1´´の出力電圧Voutが設定値VOLDOを超えたことを条件としたオーバーシュートの抑制が望まれる。
【0008】
このような特許文献1に関する課題を解決するための手段について、図9を参照して説明する。図9は従来技術に係るLDOレギュレータ回路1´´´の構成を示す回路図である。LDOレギュレータ回路1´´´は、基本的に図6に示す回路構成をベースにしているが、誤差増幅器AMPは、出力電圧Voutを抵抗r4、r5、r6で分圧した帰還電圧を、基準電圧源14の出力である基準電圧Vrefと比較して差分を増幅しており、その出力を出力用トランジスタMP1のゲートに入力することで、出力電圧Voutを調整する。またLDOレギュレータ回路1´´´は、更に、出力電圧Voutを抵抗r4、r5、r6で分圧した分圧成分を基準電圧Vrefと比較するコンパレータCOMPと、コンパレータCOMPの出力がゲートに入力され、ソース及びドレインがそれぞれ電源端子VDD及び出力用トランジスタMP1のゲートに接続されるトランジスタMP3とを備える。
【0009】
このようなLDOレギュレータ回路1´´´では、コンパレータCOMPにおいて出力電圧Voutの分圧成分が閾値電圧VOCOMPを超えた場合に、コンパレータCOMPの出力によってトランジスタMP3がオン駆動されることにより、出力用トランジスタMP1のゲートが電源端子VDDに接続され、出力用トランジスタMP1のゲート電圧Vgを引き上げることができる。LDOレギュレータ回路1´´´における出力電圧Voutの設定値VOLDOは、次式で表される。
またコンパレータCOMPの閾値VOCOMPは、以下の式で表される。
【0010】
出力電圧Voutの設定値VOLDOと、コンパレータCOMPの閾値電圧VOCOMPとは、互いに近い値を有すると、入力電圧Vinが一定に安定している場合であっても、負荷電流の急激な減少や出力電圧Voutの立ち上がり時のオーバーシュート等によってもコンパレータCOMPが動作することで出力電流が停止してしまい、その結果、一時的な出力電圧Voutの低下等の不具合を引き起こすおそれがある。このような不具合を回避するため、出力電圧Voutの設定値VOLDOとコンパレータCOMPの閾値電圧VOCOMPとは、ある程度離して設定する必要がある。その一方で、両者を離し過ぎると、オーバーシュート電圧が増加してしまう。またコンパレータCOMPの出力によってトランジスタMP3が駆動されることによって出力用トランジスタMP1がOFFするまでゲート電圧を引き上げて出力電流を停止させるためには少なからず時間が必要であるため、入力電圧Vinが急激に上昇する場合には、この遅れ時間のためにオーバーシュート電圧が更に増加してしまうおそれがある。
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、出力電圧が制御目標値を超えた状態で出力電圧にオーバーシュートが生じた場合に、電圧上昇を早期且つ効果的に抑制可能な定電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態に係る定電圧回路は上記課題を解決するために、
電源電圧から一定の出力電圧を得るための定電圧回路であって、
ソース又はエミッタに前記電源電圧が入力され、ドレイン又はコレクタから前記出力電圧を得るためのトランジスタである第1トランジスタと、
基準電圧と、前記出力電圧を分圧して得られる帰還電圧との差分を増幅した出力を前記第1トランジスタのゲート電圧又はベース電圧として供給可能な誤差増幅器と、
ゲート又はベース及びソース又はエミッタが前記第1トランジスタのゲート又はベース及びソース又はエミッタにそれぞれ接続されたトランジスタである第2トランジスタと、
ソース又はエミッタが前記電源電圧が入力される電源端子に接続され、且つ、ドレイン又はコレクタが前記第1トランジスタのゲート又はベースに接続されたトランジスタである第3トランジスタと、
前記基準電圧と、前記第2トランジスタのドレイン電圧又はコレクタ電圧との比較結果に基づく出力を、前記第3トランジスタのゲート電圧又はベース電圧として供給可能なコンパレータと、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、出力電圧が制御目標値を超えた状態で出力電圧にオーバーシュートが生じた場合に、電圧上昇を早期且つ効果的に抑制可能な定電圧回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る定電圧回路の構成を示す回路図である。
図2図1の定電圧回路において入力電圧が急激に上昇した場合の各部の電圧又は電流の変化を示すタイムチャートである。
図3】第二実施形態に係る定電圧回路の構成を示す回路図である。
図4図2の定電圧回路において入力電圧が急激に上昇した場合の各部の電圧又は電流の変化を示すタイムチャートである。
図5】第三実施形態に係る定電圧回路の構成を示す回路図である。
図6】従来技術に係るLDOレギュレータ回路の構成を示す回路図である。
図7図6のLDOレギュレータ回路の各部の電圧の変化を示すタイムチャートである。
図8】従来技術に係るLDOレギュレータ回路の構成を示す回路図である。
図9】従来技術に係るLDOレギュレータ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
図1は第一実施形態に係る定電圧回路1Aの構成を示す回路図である。定電圧回路1Aは、LDOレギュレータ回路であり、出力電圧Voutを得るためのPチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)である出力用トランジスタ(第1トランジスタ)MP1と、出力電圧Voutに比例する帰還電圧と所定の基準電圧Vrefとの差分を増幅した出力をゲート電圧として出力用トランジスタMP1のゲートに供給可能な誤差増幅器AMPとを備える。
【0017】
出力用トランジスタMP1のソースは、入力電圧Vinが入力される電源端子VDDに接続される。出力用トランジスタMP1のドレインは、出力端子OUTに接続されるとともに、互いに直列接続された抵抗R4、R5、R6の一端(抵抗R4の一端)に接続される。直列に接続された抵抗R4、R5、R6の他端(抵抗R6の一端)は接地点GNDに接続される。抵抗R4、R5、R6は、出力端子OUTから出力される出力電圧Voutを抵抗比により分圧するための分圧回路を構成する。抵抗R4及び抵抗R5の間に設けられたノードは、誤差増幅器AMPの非反転入力端子に接続され、帰還電圧が誤差増幅器AMPに帰還される。誤差増幅器AMPの反転入力端子には、参照用の基準電圧Vrefが入力される。誤差増幅器AMPの出力端子は出力用トランジスタMP1のゲートに接続され、誤差増幅器AMPは、帰還電圧と基準電圧Vrefとを比較して差分を増幅し、出力用トランジスタMP1のゲートに入力する。出力用トランジスタMP1は、ゲートの入力電圧により出力電圧Voutを調整する。出力端子OUTには、負荷回路である負荷抵抗RLが接続される。また出力端子OUTと接地点GNDとの間には、出力電圧Voutの安定化用のコンデンサCLが接続される。
【0018】
尚、図1では、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の寄生容量CGSと、ゲート-ドレイン間の寄生容量CGDが示されている。
【0019】
また本実施形態では、各トランジスタとしてMOSトランジスタ(MOSFET)を採用した場合を例示しているが、同様の機能を達成可能な範囲において、それぞれバイポーラトランジスタを採用してもよい。その場合は、Pチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)をPNP型バイポーラトランジスタに、Nチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)をNPN型バイポーラトランジスタに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタに、ゲートをベースに読み替えればよい。
【0020】
誤差増幅器AMPの出力端子は、出力用トランジスタMP1のゲートに対してシンク及びソースの電流制限を有しており、誤差増幅器AMPはトランスコンダクタンスアンプとして構成される。誤差増幅器AMPの出力端子は、出力用トランジスタMP1のゲートノードであり、当該ノードへのシンク及びソース電流は、誤差増幅器AMPを構成するNチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)であるトランジスタMN1及びMN2のソースに接続される電流源I1によって制限される。尚、本実施形態では誤差増幅器AMPがトランスコンダクタンスアンプとして構成された場合を例示するが、他の構成を有してもよい。
【0021】
定電圧回路1Aは、出力用トランジスタMP1と並列に、電圧検出用のトランジスタとして、ゲート及びソースがそれぞれ共通のノードに相互に接続されたPチャンネル型のMOSトランジスタ(MOSFET)である第2トランジスタMP2を備える。第2トランジスタMP2のドレインは、抵抗R1を介して接地点GNDに接続される。
【0022】
第2トランジスタMP2のドレインと抵抗R1との間に設けられたノードは、静電容量C1を介して、コンパレータCOMPの反転入力端子に接続される。またコンパレータCOMPの反転入力端子は、抵抗R2を介してトランジスタMP5のソースに接続される。このトランジスタMP5のソースはまた、電流源I4を介して電源端子VDDに接続される。またトランジスタMP5のゲートは、抵抗R5及びR6の間に設けられたノードに接続される。
【0023】
コンパレータCOMPの非反転入力端子には、バッファ回路として機能するトランジスタMP4のソースが接続される。トランジスタMP4のゲートには基準電圧Vrefが入力され、ドレインは接地点GNDに接続される。またトランジスタMP4のソースは、電流源I3を介して電源端子VDDに接続される。
【0024】
ここで図2図1の定電圧回路1Aにおいて入力電圧Vinが急激に上昇した場合の各部の電圧又は電流の変化を示すタイムチャートである。時刻t1からt2にかけて入力電圧Vinが急激に上昇すると、出力用トランジスタMP1のゲートと出力端子OUTとの間における電位差が増加することで、出力用トランジスタMP1のゲート-ドレイン間の寄生容量CGDを介して、出力用トランジスタMP1のゲートから出力端子OUTに電流が流れる。当該電流が誤差増幅器AMPの出力ソース電流を超えると、出力用トランジスタMP1のゲート電圧が引き下げられる。このとき、出力用トランジスタMP1と並列に接続されたトランジスタMP2では、ドレイン電流が増加することで抵抗R1に発生する電圧も増加する。
【0025】
抵抗R1における電圧増加により、静電容量C1を通じてトランジスタMP2のドレインから抵抗R2に電流が流れ、コンパレータCOMPの反転入力端子であるMN4のゲート電圧が引き上げられる。これによりコンパレータCOMPの出力端子に接続されたトランジスタMP3のゲート電圧が引き下げられ、トランジスタMP3がON駆動される。その結果、出力用トランジスタMP1のゲート電圧が引き上げられ、出力用トランジスタMP1の出力電流を急激に減少させることで、出力電圧Voutのオーバーシュートが抑制される。
【0026】
また前述のように、トランジスタMP2のドレインとコンパレータCOMPの反転入力端子との間に静電容量C1が設けられることで、入力電圧Vinの立ち上がりが早く、出力用トランジスタMP1の出力電流の増加が急激なほど、静電容量C1に流れる電流が増加するため、トランジスタMP3のON駆動をより素早く行うことができる。これにより、出力電圧Voutの設定値VOLDOと、コンパレータCOMPの閾値VOCOMPとの差を大きく確保した場合であっても、入力電圧Vinが急激に上昇した際には、トランジスタMP3が迅速に動作することで、オーバーシュートによる電圧上昇を小さく抑えることができる。
【0027】
一方、入力電圧Vinに電圧変動がなく一定に安定している場合、仮に負荷抵抗RLが減少変化することで、誤差増幅器AMPによるフィードバックによって出力用トランジスタMP1の出力電流が増加する場合を想定する。このとき出力用トランジスタMP1のゲート電圧は、誤差増幅器AMPのシンク電流により引き下げられる。しかし誤差増幅器AMPは電流源I1以上の電流をシンクすることができないため、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の電位差の変化も、入力電圧Vinが急激に変動した場合に比べて緩やかになる。そのためトランジスタMP2のドレイン電圧の立ち上がりも遅く、静電容量C1に流れる電流も小さくなる。その結果、コンパレータCOMPの反転入力端子への入力電圧も小さくなるため、トランジスタMP3はON駆動されず、出力用トランジスタMP1のゲート電圧の引き上げは行われない。このように入力電圧Vinが安定している場合には、負荷電流の増減による過電圧保護回路の誤動作を効果的に防止することができる。
【0028】
尚、トランジスタMP5は抵抗R5及びR6の間に設けられたノードの電圧を、PチャンネルMOSトランジスタのゲート-ソース間電位差だけシフトさせるレベルシフト回路であるが、電圧をシフトさせることが目的ではなく、バッファすることを目的としている。トランジスタMP5を設けず静電容量C1を抵抗R5及びR6間のノードに直接的に接続したとしても、前述のトランジスタMP3による過電圧保護機能を得ることはできる。しかしながら、入力電圧Vinが一定に安定している状態で単に負荷電流が変動した場合であっても、静電容量C1を介して電流が流れ、誤差増幅器AMPの入力電圧を変動させるため、出力電圧Voutが不安定になってしまう。トランジスタMP5は、このような点を解消するために効果的である。
【0029】
ここで第一実施形態に係る定原電回路1Aは、前述のように、入力電圧Vinが急激に上昇した際にトランジスタMP3をON駆動し、出力用トランジスタMP1のゲート電圧を引き上げることにより、負荷抵抗RLへの出力電流を停止させる。このとき、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の電圧が略0Vになるまで引き上げてしまう場合がある。この場合、その後、入力電圧Vinの上昇が停止して、誤差増幅器AMPが出力用トランジスタMP1のゲート電圧を引き下げるが、誤差増幅器AMPのシンク電流には制限がある。そのため、出力用トランジスタMP1のゲート電圧を引き下げ、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の電位差が出力用トランジスタMP1の閾値Vthに達して電流を流し始めるまでに時間がかかる。その結果、負荷抵抗RLの抵抗値が小さいことで負荷電流が大きい場合、図2に示すように、一時的に出力電圧Voutが制御目標値よりも下がる、アンダーシュートを引き起こすことがある。
【0030】
このような課題は、以下に示す第二実施形態に係る定電圧回路1Bによって好適に解消可能である。図3は第二実施形態に係る定電圧回路1Bの構成を示す回路図であり、図4図3の定電圧回路1Bにおいて入力電圧Vinが急激に上昇した場合の各部の電圧又は電流の変化を示すタイムチャートである。
【0031】
定電圧回路1Bは、前述の定電圧回路1Aに比べて、抵抗R3(第3抵抗器)と、トランジスタMP10(第5トランジスタ)とを更に備える。抵抗R3は、電源端子VDDとトランジスタMP3のソースとの間に設けられる。またトランジスタMP10は、ゲート及びソースが出力用トランジスタMP1のゲート及びソースにそれぞれ接続され、ドレインがトランジスタMP3のソースに接続される。
【0032】
定電圧回路1Bでは、電源端子VDDに入力される入力電圧Vinが急激に上昇すると、前述の定電圧回路1Aと同様に、トランジスタMP3がON駆動される。ここでトランジスタMP3がON駆動されることで、出力用トランジスタMP1のゲート端子電圧が引き上げられるが、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の電位差が、トランジスタMP1の閾値Vth付近になると、トランジスタMP3がOFFとなる。その結果トランジスタMP3のソース抵抗である抵抗R3によってトランジスタMP3のドレイン電流が制限される。特にトランジスタMP10と出力用トランジスタMP1を同じ閾値Vthを有する素子で構成することで、出力用トランジスタMP1のゲート-ソース間の電位差が閾値Vth以下に低下しにくくなり、過電圧保護回路が動作した後の出力電流が停止している時間を短縮することで、アンダーシュートを効果的に抑制できる。
【0033】
ここで前述の定電圧回路1A及び1Bでは、電源端子VCCに入力される入力電圧Vinが出力電圧Vout以下である場合、出力用トランジスタMP1及びトランジスタMP2のゲート電圧は、接地電位(0V)付近まで引き下げられる。この場合、出力用トランジスタMP1はドレイン-ソース間の電位差が小さくMOSトランジスタの非飽和領域で動作することに対して、トランジスタMP2には、このような制限が無いため、入力電圧Vinが十分にある場合に比べて、大きなドレイン電流を流す。このため、抵抗R4の値によっては、トランジスタMP2のドレイン電圧が電源端子VDDの入力電圧Vin付近まで引き上げられる場合がある。この状態で、入力電圧Vinが急激に増加しても、すでにトランジスタMP2のドレイン電圧が入力電圧Vin付近まで上がっているため、そのドレイン電圧の変化が小さく、静電容量C1に十分な電流が流れない。このため前述の過電圧保護回路としての動作が遅れ、オーバーシュート電圧が増加するおそれがある。
【0034】
このような課題は、以下に示す第三実施形態に係る定電圧回路1Cによって好適に解消可能である。図5は第三実施形態に係る定電圧回路1Cの構成を示す回路図である。
【0035】
定電圧回路1Cは、前述の定電圧回路1Bに比べて、トランジスタMP11(第6トランジスタ)と、トランジスタP12(第7トランジスタ)とを更に備える。トランジスタMP11は、ソースが出力用トランジスタMP1のドレインに接続され、ゲート及びドレインが電流源I5を介してそれぞれ接地点に接続される。トランジスタMP12は、ゲートがトランジスタMP11のゲートに接続され、ソースがトランジスタMP2のドレインに接続され、ドレインが抵抗R1に接続される。
【0036】
定電圧回路1Cでは、トランジスタMP2のドレイン電圧は、出力端子OUTの出力電圧Voutに近くなり、入力電圧Vinが出力電圧Voutに近い状態においては、トランジスタMP2のドレイン-ソース間の電位差が減少し、トランジスタMP2のドレイン電流が減少する。この状態から入力電圧Vinが急激に上昇すると、トランジスタMP2のドレイン電流も急激に上昇するため、入力電圧Vinと出力電圧Voutが十分に確保できている場合と同様に、過電圧保護回路が動作可能となる。
【0037】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)一態様に係る定電圧回路は、
電源電圧(例えば上記実施形態の入力電圧Vin)から一定の出力電圧(例えば上記実施形態の出力電圧Vout)を得るための定電圧回路(例えば上記実施形態の定電圧回路1A、1B、1C)であって、
ソースに前記電源電圧が入力され、ドレインから前記出力電圧を得るためのMOSトランジスタである第1トランジスタ(例えば上記実施形態の出力用トランジスタMP1)と、
基準電圧(例えば上記実施形態の基準電圧Vref)と、前記出力電圧を分圧して得られる帰還電圧との差分を増幅した出力を前記第1トランジスタのゲート電圧として供給可能な誤差増幅器(例えば上記実施形態の誤差増幅器AMP)と、
ゲート及びソースが前記第1トランジスタのゲート及びソースにそれぞれ接続されたMOSトランジスタである第2トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP2)と、
前記第2トランジスタのドレインと接地点との間に設けられた第1抵抗器(例えば上記実施形態の抵抗R1)と、
ソースが前記電源電圧が入力される電源端子(例えば上記実施形態の電源端子VDD)に接続され、且つ、ドレインが前記第1トランジスタのゲートに接続されたMOSトランジスタである第3トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP3)と、
前記基準電圧と、前記第2トランジスタのドレイン電圧との比較結果に基づく出力を、前記第3トランジスタのゲート電圧として供給可能なコンパレータ(例えば上記実施形態のコンパレータCOMP)と、
を備える。
【0039】
上記(1)の態様によれば、定電圧回路に入力される電源電圧が上昇した場合、第1トランジスタのゲート-ドレイン間の寄生容量を介してゲートから出力端子に電流が流れることにより、第1トランジスタのゲート電圧が引き下げられる。このとき、第1トランジスタとゲート及びソースを共通にする第2トランジスタのドレイン電流が増加することで、コンパレータで基準電圧と比較される入力電圧が引き上げられ、コンパレータの出力側に接続された第3トランジスタがON駆動される。その結果、第1トランジスタのゲート電圧が引き上げられ、第1トランジスタの出力電流を減少させることで、出力電圧のオーバーシュートが効果的に抑制される。
【0040】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第2トランジスタのドレインと前記第1抵抗器との間に設けられたノードと、前記コンパレータの前記ドレイン電圧の入力端子との間に設けられた静電容量(例えば上記実施形態の静電容量C1)を更に備える。
【0041】
上記(2)の態様によれば、第2トランジスタMP2のドレインとコンパレータとの間に静電容量が設けられる。これにより、定電圧回路に入力される電源電圧の立ち上がりが早く、第1トランジスタの出力電流の増加が急激なほど、静電容量に流れる電流が増加するため、第3トランジスタのON駆動をより素早く行うことができる。これにより、定電圧回路の出力電圧の設定値と、コンパレータの閾値との差を大きく確保した場合であっても、電源電圧が急激に上昇した際に第3トランジスタが迅速に動作することで、オーバーシュートによる電圧上昇を小さく抑えることができる。
【0042】
(3)他の態様では、上記(2)の態様において、
前記出力電圧の分圧が入力されるゲートと、第2抵抗器(例えば上記実施形態の抵抗R2)を介して前記コンパレータの前記ドレイン電圧の入力端子に接続されるソースと、接地点に接続されるドレインとを有するMOSトランジスタである第4トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP5)を更に備える。
【0043】
上記(3)の態様によれば、定電圧回路には、第2抵抗器と第4トランジスタとを有するバッファ回路が設けられる。これにより、定電圧回路に入力される電源電圧が一定に安定している状態で単に負荷電流が変動した場合であっても、静電容量を介して電流が流れて誤差増幅器の入力電圧を変動させることで出力電圧が不安定になることを効果的に防止できる。
【0044】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記電源端子と前記第3トランジスタのソースとの間に設けられた第3抵抗器(例えば上記実施形態の抵抗R3)と、
ゲート及びソースが前記第1トランジスタのゲート及びソースにそれぞれ接続され、ドレインが前記第3トランジスタのソースに接続された第5トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP10)と、
を更に備える。
【0045】
上記(4)の態様によれば、定電圧回路に入力される電源電圧が上昇することで第3トランジスタがON駆動された際に、第1トランジスタのゲート-ソース間の電位差が第1トランジスタの閾値付近になると、第3トランジスタがOFFとなることによって出力電圧にアンダーシュートが生じることを効果的に防止できる。
【0046】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
ソースが前記第1トランジスタのドレインに接続され、ゲート及びドレインが電流源を介してそれぞれ接地点に接続されたMOSトランジスタである第6トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP11)と、
ゲートが前記第6トランジスタのゲートに接続され、ソースが前記第2トランジスタのドレインに接続され、ドレインが前記第1抵抗器に接続されるMOトランジスタである第7トランジスタ(例えば上記実施形態のトランジスタMP12)と、
を更に備える。
【0047】
定電圧回路に入力される電源電圧が出力電圧以下である場合、第1トランジスタ及び第2トランジスタのゲート電圧は、接地電位(0V)付近まで引き下げられるが、この際、第1トランジスタはドレイン-ソース間の電位差が小さくMOSトランジスタの非飽和領域で動作することに対して、第2トランジスタには、このような制限が無いため、電源電圧が十分にある場合に比べて、大きなドレイン電流が流れる。このため、第2トランジスタのドレイン電圧が電源電圧付近まで引き上げられる場合があるが、この状態で、電源電圧が増加しても、すでに第2トランジスタのドレイン電圧が電源電圧付近まで上がっているため、前述の過電圧保護回路としての動作が遅れ、オーバーシュート電圧が増加するおそれがある。上記(5)の態様では、第2トランジスタのドレイン電圧が出力電圧に近くなることで電源電圧が出力電圧に近い状態において、第2トランジスタのドレイン-ソース間の電位差が減少し、第2トランジスタのドレイン電流が減少する。この状態から電源電圧が上昇すると、第2トランジスタのドレイン電流も上昇するため、電源電圧と出力電圧が十分に確保できている場合と同様に、過電圧保護回路が動作可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1A,1B,1C 定電圧回路
AMP 誤差増幅器
COMP コンパレータ
GND 接地点
RL 負荷抵抗
VDD 電源端子
OUT 出力端子
図1
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