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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーンポッティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/05 20060101AFI20240711BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240711BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240711BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240711BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/22
C08K5/54
C08K5/00
C09K5/14 E
C09J183/07
C09J11/04
H05K7/20 F
H01L23/36 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021559946
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2019082001
(87)【国際公開番号】W WO2020206626
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イージェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チウ,シュエユー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,シンユー
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021826(WO,A1)
【文献】特開2016-084378(JP,A)
【文献】特開2019-011406(JP,A)
【文献】特許第5345340(JP,B2)
【文献】特開2004-244491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/05
C08L 83/07
C08K 3/22
C08K 5/54
C08K 5/00
C09K 5/14
C09J 183/07
C09J 11/04
H05K 7/20
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ビニルオルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(f)触媒、
を含む第1部材、および
(b)水素化物オルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー
を含む第2部材
を含み、25℃及び10S -1 の速度で測定した粘度は3~20Pa.sの範囲である、熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項2】
成分(a)は、下記一般式(1)
[式中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、ビニル基またはフェニル基を指定し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含むことを条件とし;M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M+D+T+Qは1である]
で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項3】
成分(a)の含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%である、請求項1または2に記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項4】
成分(b)は、下記一般式(2)
[式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含み;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、M’+D’+T’+Q’は1であることを条件とする]
で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項5】
成分(b)の含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%である、請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項6】
成分(c)、(d)および(e)の合計含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準として、80重量%以上98重量%以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項7】
成分(c)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、4重量%~65重量%である、請求項1~6のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項8】
成分(d)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、3重量%~45重量%である、請求項1~7のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項9】
成分(d)は、3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラーであることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項10】
成分(e)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、25重量%~70重量%である、請求項1~9のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項11】
さらに、(g)シランカップリング剤またはチタン系カップリング剤を含む、請求項1~10のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を含む熱伝導性ポッティング接着剤。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物の、電子部品における使用。
【請求項14】
請求項1~11のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を用いてポッティングされた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物に関する。特に、本発明は、2液型の熱伝導性シリコーンポッティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電子技術や集積・組立技術の急速な発展に伴い、人々の生活に密着した電子部品やロジックゲートは小型化の傾向にあり、それに伴い大量の熱が発生している。電子機器の発熱量が大きいと、火災安全上の事故や電子製品の破損につながりやすくなる。サーマルポッティング接着剤は、熱を速やかに伝導・拡散させ、外光、湿気、埃、放射線、衝撃などのダメージから脆弱な部品を守るために、流動性、熱伝導性、保存安定性などの総合的な性能が求められる。
【0003】
しかし、先行技術のサーマルポッティング用接着剤は、良好な熱伝導性を示すものの、室温での流動性が満足できるものではなかった。さらに、先行技術のサーマルポッティング用接着剤は、フィラーの凝集が激しく、均質な相に再分散させることが非常に困難であった。
【0004】
そのため、流動性、熱伝導性、保存安定性のバランスがとれた熱伝導性シリコーンポッティング組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、流動性、熱伝導性、保存安定性のバランスが良好な熱伝導性シリコーンポッティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)ビニルオルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(f)触媒、
を含む第1部材、および
(b)水素化物オルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー
を含む第2部材
を含む熱伝導性シリコーンポッティング組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を含む熱伝導性ポッティング接着剤を提供する。
【0008】
さらに本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物の、電子部品、特に自動車の基板充電器、インバータ、またはコンバータへの使用を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を用いてポッティングされた電子部品を提供する。
【0010】
本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、流動性、熱伝導性、保存安定性のバランスが良い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本考察は、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明のより広範な側面を限定するものではないことは、当業者により理解されるべきである。このように説明された各側面は、明確に反対の指示がない限り、他の側面と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の特徴または特徴と組み合わせることができる。
【0012】
特に指定のない限り、本発明の文脈では、使用される用語は以下の定義に従って解釈されるものとする。
【0013】
特に断りのない限り、ここに記載されている重量%の値は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準とした重量%である。
【0014】
特に明記しない限り、本明細書では、単数形の「a」、「an」、「the」には、単数形と複数形の両方の参照先が含まれる。
【0015】
特に断りのない限り,本明細書では,平均粒径の値はすべて,HORIBA LA-950v2粒度分布計を用いた光散乱法による体積基準の粒度分布の積算値50%における粒径を指称する。
【0016】
メジアン値とは、母集団の半分がこのポイントより上に、半分がこのポイントより下に存在する値と定義される。粒子径分布の場合、メジアン値はD50と呼ばれる。D50は、この直径より上と下に半分ずつ分布が分かれるミクロン単位のサイズである。
【0017】
本明細書で使用されている「comprising」および「comprises」という用語は、「including」、「include」または「containing」、「contains」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の非記載メンバー、要素、またはプロセスステップを除外するものではない。
【0018】
特に明記しない限り、数値的な終点の記載には、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲に含まれるすべての数字と分数が含まれる。
【0019】
特に定義されていない限り、技術的および科学的な用語を含め、本発明の開示で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解される意味を持つ。
【0020】
本発明によれば、熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、以下を含んでなる:
以下を含む第1部材:
(a)ビニルオルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(f)触媒、および
以下を含む第2の部材:
(b)水素化物オルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー。
【0021】
(a)ビニルオルガノポリシロキサン
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、ビニルオルガノポリシロキサンを含む。
【0022】
ビニルオルガノポリシロキサンは、付加反応硬化型シロキサン樹脂組成物に用いられるオルガノポリシロキサンであればどのようなものでもよく、特に限定されるものではない。特に、1分子内にケイ素原子に結合したビニル基を2個以上含むオルガノポリシロキサンであることが望ましい。オルガノポリシロキサンの構造は、主鎖にジオルガノポリシロキサンの繰り返し単位を含む直鎖構造、分岐鎖を含む構造、または環状構造のいずれかであり得る。中でも、直鎖状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0023】
ビニル基以外のシリコーン原子に結合している基は、無置換または置換されている一価の炭化水素基であれば何でもよく、脂肪族不飽和結合を持たないものである。一価の炭化水素基は、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子を有し得る。一価の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどのアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルベンジルなどのアラルキル基であり得る。中でも、炭素原子数1~3の無置換または置換のアルキル基、無置換または置換のフェニル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、クロロメチル、ブロモエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、シアノエチル、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニルがより好ましい。さらに、ビニル基以外のシリコーン原子に結合している基は、同一のものであっても、上述の基を2つ組み合わせたものであってもよい。
【0024】
オルガノポリシロキサンは、25℃における動的粘度が10mm/s~100,000mm/s、特に500mm/s~50,000mm/sであることが好ましい。動的粘度が10mm/sよりも低いと、硬化性シリコーン組成物の保存安定性が悪くなる。動的粘度が100,000mm/sよりも高いと、硬化性シリコーン組成物の粘度が高くなりすぎることがある。動的粘度は、Cannon-Fenske粘度計で測定できる。
【0025】
例えば、ビニルオルガノポリシロキサンは、以下の一般式(1)で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAである。
【0026】
式中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の一価の炭化水素基またはビニル基を示し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含む;および、M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の範囲の数を示し、ただし、M+D+T+Qは1である。
【0027】
好ましくは、ビニルオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることができる。
【0028】
式中、ここで、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアルキル基、ビニル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含み;およびM、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の数を示し、ただし、M+D+T+Qは1である。
【0029】
より好ましくは、ビニルオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることができる。
【0030】
式中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルキル基、ビニル基、または6~12個、好ましくは6~10個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアリール基を示し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含んでいる;および、M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の範囲の数を示し、ただし、M+D+T+Qは1である。
【0031】
好ましい実施形態では、ビニルオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることができる。
【0032】
式中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のメチル基、ビニル基、または置換もしくは無置換のフェニル基を指し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含んでいる;および、M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M+D+T+Qは1である。
【0033】
より好ましい実施形態では、ビニルオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることができる。
【0034】
式中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、ビニル基またはフェニル基を指し、ただし、各分子が少なくとも2つのビニル基を含むことを条件とし、M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M+D+T+Qは1である。
【0035】
別の態様では、ビニルオルガノポリシロキサンにおいて、好ましくは、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基を指し、および/または、T=0である。より好ましくは、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基を指し、T=0である。
【0036】
ビニルオルガノポリシロキサンの例としては、例えば、以下のものが挙げられる。[Vi(CHSiO1/20.091[(CHSiO2/20.909、[Vi(CHSiO1/20.060[(CHSiO2/20.940、[Vi(CHSiO1/20.028[(CHSiO2/20.972、[Vi(CHSiO1/20.075[(CHSiO2/20.425[SiO4/20.5、および[Vi(CHSiO1/20.019[(CHSiO2/20.981
【0037】
市販のビニルオルガノポリシロキサンの例としては、例えば、AB Specialty Silicone Companyから発売されているVS20、VS50、VS100、VQM2050、VS200などがある。
【0038】
本発明において、ビニルオルガノポリシロキサンは、上述したビニルオルガノポリシロキサンの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
ビニルオルガノポリシロキサンは、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~8重量%の量で存在する。ビニルオルガノポリシロキサンの含有量が1重量%未満の場合、ポリマーが少なすぎると粘度が高くなりすぎてしまう。ビニルオルガノポリシロキサンの含有量が20重量%超の場合、ポリマーが多すぎると熱伝導率が低下する。
【0040】
(b)水素化物オルガノポリシロキサン
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、水素化物オルガノポリシロキサンを含む。
【0041】
水素化物オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり2個以上、好ましくは3個以上含む架橋剤である。水素化オルガノポリシロキサンの構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれも可能である。水素化物オルガノポリシロキサンは、25℃での粘度が1mPa・s~5,000mPa・s、より好ましくは5mPa・s~500mPa・sであることが好ましい。粘度はBM型の回転粘度計で測定できる。水素化物オルガノポリシロキサンは、周知の水素化物オルガノポリシロキサンであれば何でもよい。
【0042】
水素以外のシリコーン原子に結合している基は、無置換または置換されている一価の炭化水素基であれば何でもよい。一価の炭化水素基は、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子を有し得る。例えば、一価の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルなどのアルキル基;ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどのアルケニル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどのアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、メチルベンジルなどのアラルキル基が挙げられる。中でも、炭素原子数1~3の無置換もしくは置換のアルキル基、炭素原子数2~3の無置換もしくは置換のアルケニル基、無置換もしくは置換のフェニル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、クロロメチル、ブロモエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、シアノエチル、ビニル、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニルがより好ましい。さらに、水素以外のシリコーン原子に結合している基は、同一のものであっても、上述の基を2つ組み合わせたものであってもよい。
【0043】
例えば、水素化物オルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであり得る。
【0044】
式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の一価の炭化水素基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含んでいる;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、M’+D’+T’+Q’は1であることを条件とする。
【0045】
好ましくは、水素化物オルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることができる。
【0046】
式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含んでいる;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M’+D’+T’+Q’は1である。
【0047】
より好ましくは、水素化物オルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることができる。
【0048】
式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルキル基、2~12個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアルケニル基、6~12個、好ましくは6~10個、より好ましくは6個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のアリール基、または水素を示し、ただし、各分子はケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含んでいる;およびM’、D’、T’、Q’は、それぞれ0から1未満の数を表し、M’+D’+T’+Q’は1であることを条件とする。
【0049】
好ましい実施形態では、水素化物オルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることができる。
【0050】
式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のメチル基、置換もしくは無置換のエチル基、置換もしくは無置換のビニル基、置換もしくは無置換のフェニル基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含んでいる;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M’+D’+T’+Q’は1である。
【0051】
より好ましい実施形態では、水素化物オルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることができる。
【0052】
式中、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含む;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、M’+D’+T’+Q’は1であることを条件とする。
【0053】
別の態様では、水素化物オルガノポリシロキサンにおいて、好ましくは、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、メチル基および/または水素を示す。さらなる側面では、水素化物オルガノポリシロキサンにおいて、好ましくは、T’=0、Q’=0である。より好ましくは、R,R,R,R10,R11およびR12は、それぞれ独立して、メチル基および/または水素を示し、T’=0、およびQ’=0である。
【0054】
水素化物オルガノポリシロキサンの例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
[H(CHSiO1/20.117[(CHSiO2/20.883、[(CHSiO1/20.017[H(CH)SiO2/20.069[(CHSiO2/20.914、および[H(CHSiO1/20.012[(CHSiO2/20.988
より好ましくは、水素化物オルガノポリシランは、[(CHSiO1/20.017[H(CH)SiO2/20.069[(CHSiO2/20.914および[H(CHSiO1/20.012[(CHSiO2/20.988の組み合わせ、または[H(CHSiO1/20.117[(CHSiO2/20.883、[(CHSiO1/20.017[H(CH)SiO2/20.069[(CHSiO2/20.914および[H(CHSiO1/20.012[(CHSiO2/20.988の組み合わせである。
【0055】
市販の水素化物オルガノポリシロキサンの例としては、例えば、AB Specialty Silicone Companyから入手可能なCE13、XL1B、CE500などが挙げられる。より好ましくは、水素化物オルガノポリシロキサンは、XL1BとCE500の組み合わせ、またはCE13とXL1BとCE500の組み合わせである。
【0056】
本発明において、水素化物オルガノポリシロキサンは、上述の水素化物オルガノポリシロキサンを2種類以上組み合わせたものであってもよい。好ましくは、水素化物オルガノポリシロキサンは、上述の水素化物オルガノポリシロキサンのうちの2つまたは3つの組み合わせである。
【0057】
水素化物オルガノポリシロキサンは、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~10重量%の量で存在する。水素化物オルガノポリシロキサンの含有量が1重量%未満の場合、ポリマーが少なすぎると粘度が高くなりすぎる。水素化物オルガノポリシロキサンの含有量が20重量%超の場合、ポリマーが多すぎると熱伝導率が低下する。
【0058】
本発明において、成分(a)と成分(b)の重量比は、好ましくは10:1~1:10の範囲、より好ましくは5:1~1:5の範囲、特に好ましくは3:1~1:3の範囲、具体的には2:1~1:3の範囲であることが好ましい。
【0059】
アルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー
【0060】
本発明によれば、熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラーと、3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラーと、15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラーとを含む。
【0061】
本発明では、アルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラーの形状に特に制限はない。本発明のアルミナおよび/または水酸化アルミニウムフィラーの形状は、規則的または不規則的な形状であってもよく、多角形、立方体、楕円形、球体、針状、フレーク状、板状、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、アルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラーは、球形および/または非球形である。
【0062】
成分(c)、(d)および(e)の合計含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、80重量%超98重量%未満、好ましくは85重量%超91重量%未満である。成分(c)、(d)、(e)の合計含有量が80重量%未満の場合、フィラーの充填量が少なすぎると熱伝導率が低くなりすぎる。成分(c)、(d)、(e)の合計含有量が98重量%を超えると、フィラーの充填量が多すぎて粘度が高くなりすぎる。
【0063】
成分(c)の平均粒径は、好ましくは0.2μmから2.5μmの範囲であり、より好ましくは0.5μmから2μmの範囲である。
【0064】
市販されている成分(c)の例としては、例えば、新日鐵化学株式会社のD50=0.7μmの球状アルミナ「AX1M」、株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズのD50=0.5μmの非球状アルミナ「NASR-05」、株式会社デンカのD50=2μmの球状アルミナ「DAW-01」などが挙げられる。
【0065】
成分(c)は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、4重量%~65重量%、好ましくは8重量%~50重量%の量で存在する。
【0066】
第1部材の成分(c)と第2部材の成分(c)の重量比は、1:10~10:1、好ましくは2:8~8:2、より好ましくは4:6~6:4、最も好ましくは5:5~5:5である。
【0067】
成分(d)の平均粒径は、好ましくは4μm~12μm、より好ましくは5μm~10μmの範囲である。
【0068】
好ましくは、成分(d)は、3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラーである。
【0069】
市販の成分(d)の例としては、例えば、株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズから入手可能なD50=10μmの球状アルミナであるBAK 10;株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズから入手可能なD50=7μmの球状アルミナであるBAK 7;株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズから入手可能なD50=5μmの球状アルミナであるBAK 5;およびHuber Fire Retardant Additives(Qingdao)Co.,Ltd.から入手可能なD50=8μmの非球状水酸化アルミニウムフィラーであるMartinal(登録商標)ON-908が挙げられる。
【0070】
成分(d)は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、3重量%~45重量%、好ましくは4重量%~35重量%の量で存在する。
【0071】
第1部材の成分(d)と第2部材の成分(d)の重量比は、1:10~10:1、好ましくは2:8~8:2、より好ましくは4:6~6:4、最も好ましくは5:5~5:5である。
【0072】
成分(e)の平均粒径は、好ましくは20μm~90μmの範囲であり、より好ましくは20μm~70μmの範囲である。
【0073】
市販の成分(e)の例としては,例えば,株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズから入手可能なD50=70μmの球状アルミナであるBAK70;Shanghai Yurui New Material Co,Ltd.から入手可能なD50=40μmの非球状アルミナであるYR40;株式会社ベストリ・パフォーマンス・マテリアルズから入手可能なD50=30μmの球状アルミナであるBAK30;およびデンカ株式会社から入手可能なD50=20μmの球状アルミナであるDAW20が挙げられる。
【0074】
成分(e)は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、25重量%~70重量%、好ましくは30重量%~65重量%の量で存在する。
【0075】
第1部材の成分(e)と第2部材の成分(e)の重量比は、1:10~10:1、好ましくは2:8~8:2、より好ましくは4:6~6:4、最も好ましくは5:5~5:5である。
【0076】
本発明の一実施形態では、成分(c)と成分(d)の合計重量比は、好ましくは10:1~1:10の範囲であり、より好ましくは5:1~1:5の範囲であり、特に5:1~1:3の範囲である。本発明の一実施形態では、成分(c)と成分(e)の合計重量比は、好ましくは10:1~1:15の範囲であり、より好ましくは5:1~1:10の範囲であり、特に5:3~1:8の範囲である。本発明の一実施形態では、成分(d)と成分(e)の合計重量比は、好ましくは1:20~5:1の範囲、より好ましくは1:15~1:1の範囲、特に1:12~0.6:1の範囲である。
【0077】
(f)触媒
本発明によれば、熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、触媒を含む。
【0078】
本発明の触媒は、前述の成分の付加反応を促進するために用いられる任意の触媒であってよい。このような触媒としては、付加反応に使用される公知の触媒を使用できる。本発明に採用できる触媒としては、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケル、レニウム、ルテニウム、オスミウム、銅、コバルト、鉄、およびこれらの組み合わせからなる触媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明の触媒は、白金を含む触媒である。例えば、元素状の白金、白金黒、クロロ白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金の配位化合物などが挙げられる。本発明では、このような白金を含む触媒を1種類だけでなく、2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0079】
市販の触媒の例としては、例えば、Gelest Companyから入手可能なシクロメチルビニルシロキサンに2%のPtを含有させたSIP 6832.2が挙げられる。
【0080】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物に存在する触媒の量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物全体の重量に対して1~1000ppmの白金、好ましくは熱伝導性シリコーンポッティング組成物全体の重量に対して5~800ppmの白金、より好ましくは熱伝導性シリコーンポッティング組成物全体の重量に対して10~500ppmの白金、最も好ましくは熱伝導性シリコーンポッティング組成物全体の重量に対して100~350ppmの白金の範囲である。
【0081】
(g)シランカップリング剤またはチタン系カップリング剤
本発明によれば、好ましくは、熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、(g)シランカップリング剤またはチタン系カップリング剤をさらに含む。
【0082】
本発明で有用な成分(g)には、アミノアルキルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、アルコキシシラン、エポキシシラン、メルカプトアルキルシラン、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。成分(g)は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物に採用されている触媒を失活させてはならない。好ましくは、成分(g)はシランカップリング剤である。より好ましくは、成分(g)はC-C16シランカップリング剤である。
【0083】
別の態様では、成分(g)は、好ましくはアルコキシシランである。より好ましくは、成分(g)はヘキシルトリメトキシシランまたはヘキサデシルトリメトキシシランである。市販の成分(g)の例としては、J&K Scientific Companyから入手可能なヘキシルトリメトキシシラン(CAS番号3069-19-0)およびヘキサデシルトリメトキシシラン(CAS番号16415-12-6)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
成分(g)は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の第1部材および/または第2部材に存在できる。成分(g)が第1部材と第2部材の両方に存在する場合、第1部材の成分(g)と第2部材の成分(g)の重量比は特に限定されない。
【0085】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物に存在する成分(g)の量は、0.001~5重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、最も好ましくは0.08~0.2重量%の範囲である。
【0086】
オプション成分
本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、上述した成分以外に、1つ以上の追加の成分や添加物を含むように配合できる。例えば、熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、触媒抑制剤、メチルポリシロキサンなどの非反応性オルガノ(ポリ)シロキサン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどの公知の酸化防止剤、染料、顔料、難燃剤、沈降防止剤、チキソトロピー改良剤のうち少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。好ましくは、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、さらに触媒抑制剤を含んでいてもよい。
【0087】
本発明の実施に有用な触媒抑制剤には、マレイン酸塩、アルキン、ホスファイト、アルキノール、フマレート、スクシネート、シアヌレート、イソシアヌレート、アルキニルシラン、ビニル含有シロキサン、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。また、マレイン酸のエステル(ジアリルマレエート、ジメチルマレエートなど)、アセチレン系アルコール(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オールなど)、アミン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの触媒抑制剤やそれらの混合物も採用できる。好ましくは、本発明の触媒抑制剤はアセチレン系アルコールであり、より好ましくは、触媒抑制剤は、J&K Scientific Companyから市販されている3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール(CAS番号107-54-0)である。触媒抑制剤は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の第1部材および/または第2部材に存在できる。触媒抑制剤が第1部材と第2部材の両方に存在する場合、第1部材の触媒抑制剤と第2部材の触媒抑制剤の重量比は特に限定されない。
【0088】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物に含まれる触媒抑制剤の量は、0.001~1重量%、好ましくは0.002~0.6重量%、より好ましくは0.005~0.4重量%、最も好ましくは0.006~0.2重量%である。
【0089】
熱伝導性シリコーンポッティング組成物の製造ステップ
本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、任意の適切な方法で製造できる。例えば、第1部材のすべての成分を単純に混ぜ合わせ、第2部材のすべての成分を単純に混ぜ合わせることで、組成物を作ることができる。
【0090】
実際、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物の製造方法は、従来の2液型熱伝導性シリコーンポッティング組成物の製造方法に準拠していれば、特に制限はない。例えば、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、成分(a)、(c)、(d)、(e)、(f)および必要に応じてその他の成分を混合する工程と、成分(b)、(c)、(d)、(e)および必要に応じてその他の成分を混合する工程を含む方法で製造でき、その際、すべての混合は、トリミックス、ツインミックス、プラネタリーミキサー(いずれも、株式会社井上製作所のミキサーの登録商標である)、ウルトラミキサー(みずほ工業株式会社のミキサーの登録商標)、ハイビスディスパーミックス(株式会社プライミクスのミキサーの登録商標)などを用いて、すべての混合を行うことができる。本発明で用いるミキサーは、PC Laborsystem Co.Ltd.製のプラネタリーミキサーであってもよい。
【0091】
本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、流動性、熱伝導性、保存安定性のバランスが良い。
【0092】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、良好な流動性を示す。好ましくは、本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物の粘度は、25℃で測定した場合、3~20Pa.sの範囲であり、より好ましくは4~19Pa.sである。ここでいう粘度とは、PP25コーンプレート付き粘度計(商品名:MCR301、アントンパール社製)を用いて10s-1の速度で25℃にて測定した値を指す。
【0093】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、高い熱伝導性を有する。好ましくは、本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物の熱伝導率は1.2W/m.kよりも高く、より好ましくは1.7W/m.kよりも高い。本明細書では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA-447」(NETZSCHグループ製)を用いたパルス加熱法により、熱伝導率を測定している。
【0094】
本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、良好な保存安定性を示す。好ましくは、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、25℃で3ヶ月、さらには4~5ヶ月保存しても、硬い凝集物を含まない。
【0095】
また、本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を含む熱伝導性ポッティング接着剤を提供する。
【0096】
さらに本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物の、電子部品、特に自動車の基板充電器、インバータ、またはコンバータへの使用を提供する。
【0097】
さらに、本発明は、本発明の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を用いてポッティングされた電子部品を提供する。
【0098】
以下の実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実施するのに役立つことを意図している。本発明の範囲は、実施例によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される。すべての部とパーセンテージは、特に明記されていない限り、重量に基づいている。
【実施例
【0099】
実施例
実施例では、以下の原材料を使用した。

成分(a)
(a-1):VS 20、[Vi(CHSiO1/20.091[(CHSiO2/20.909、の構造を持つビニル末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0100】
(a-2):VS 50、[Vi(CHSiO1/20.060[(CHSiO2/20.940、の構造を持つビニル末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0101】
(a-3):VS 100、[Vi(CHSiO1/20.028[(CHSiO2/20.972、の構造を持つビニル末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0102】
(a-4):VQM2050、[Vi(CHSiO1/20.075[(CHSiO2/20.425[SiO4/20.5、の構造を持つビニル含有ポリシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0103】
(a-5):VS 200、[Vi(CHSiO1/20.019[(CHSiO2/20.981、の構造を持つビニル末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0104】
成分(b)
(b-1):CE 13、[H(CHSiO1/20.117[(CHSiO2/20.883、の構造を持つ無水ケイ酸末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0105】
(b-2):XL1B、[(CHSiO1/20.017[H(CH)SiO2/20.069[(CHSiO2/20.914、の構造を持つ無水ケイ酸含有ポリシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0106】
(b-3):CE500,[H(CHSiO1/20.012[(CHSiO2/20.988、の構造を持つ無水ケイ酸末端ポリジメチルシロキサン、AB Specialty Silicone社製であった。
【0107】
成分(c)
(c-1):AX1M、球状アルミナ(D50=0.7μm)、新日鐵化学株式会社製であった。
【0108】
(c-2):NASR-05、非球状アルミナ(D50=0.5μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0109】
(c-3):DAW-01、球状アルミナ(D50=2μm)、デンカ株式会社製であった。
【0110】
成分(d)
(d-1):BAK 10、球状アルミナ(D50=10μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0111】
(d-2):BA 7、非球状アルミナ(D50=7μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0112】
(d-3):BAK 5、球状アルミナ(D50=5μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0113】
(d-4):Martinal(登録商標)ON-908、Huber Fire Retardant Additives (Qingdao) Co,Ltd.から入手したD50=8μmの非球状水酸化アルミニウムフィラー。
【0114】
成分(e)
(e-1):BAK 70、球状アルミナ(D50=70μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0115】
(e-2):SJR 20、結晶性シリカ(D50=20μm)、AnHui Estone Materials Technology Co.,Ltd.製であった。
【0116】
(e-3):YR 40、非球状アルミナ(D50=40μm)、上海油井新材料有限公司製であった。
【0117】
(e-4):BAK 30、球状アルミナ(D50=30μm)、ベストリー・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製であった。
【0118】
(e-5):DAW 20、球状アルミナ(D50=20μm)、デンカ株式会社製であった。
【0119】
成分(f)
(f-1):SIP 6832.2、シクロメチルビニルシロキサン中2%Pt、Gelest社製であった。
【0120】
成分(g)
(g-1):ヘキシルトリメトキシシラン、CAS番号3069-19-0、J&K Scientific社製であった。
【0121】
(g-2):ヘキサデシルトリメトキシシラン、CAS番号16415-12-6、J&K Scientific社製であった。
【0122】
成分(h)
(h-1):3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、CAS番号107-54-0、J&K Scientific Company. 製であった。
【0123】
シリコーン組成物の調製

第1部材:
成分(a)、成分(c)の半量、成分(d)の半量、成分(e)の半量、成分(f)、成分(h)、および成分(g)の半量(存在する場合)を、以下に示す重量部で混合することにより、本発明による実施例1~11、および比較例1~4の組成物の第1部材を形成した。すなわち、成分(a)、成分(c)の半量、成分(d)の半量、成分(e)の半量、成分(f)、成分(h)、および成分(g)の半量(存在する場合)を、2リットルのプラネタリーミキサー(PC Laborsystem Co, Ltd.製)を用い、表1、表2、表3に示す比率(重量部)で混合し、それぞれ得られた混合物を25℃で2時間混合した。その後、混合物を室温まで冷却した。
【0124】
第2部材:
成分(b)、成分(c)の半分、成分(d)の半分、成分(e)の半分、および成分(g)が存在する場合はその半分を、以下に示す重量部で混合し、これにより本発明による実施例1~11、および比較例1~4の組成物の第2部材を形成した。すなわち、成分(b)、成分(c)の半分、成分(d)の半分、成分(e)の半分、および成分(g)が存在する場合はその半分を、2リットルのプラネタリーミキサー(PC Laborsystem Co, Ltd.製)で、表1、表2、表3に示す比率(重量部)で混合し、それぞれ得られた混合物を25℃で2時間混合した。その後、混合物を室温まで冷却した。
【0125】
こうして得られた第1部材と第2部材を別々に保存した組成物について、以下の方法で粘度、熱伝導率、保存安定性を評価した。その結果を表1、2、3に示す。
【0126】
[粘度の測定]
調製した組成物の第1部材と第2部材を2000rpmの下で2分間混合した。その後、PP25コーンプレート付き粘度計(商品名:MCR301、アントンパール株式会社製)を用いて、25℃で10S-1の速度で粘度を測定した。
【0127】
[熱伝導率の測定]
調製した組成物の第1部材と第2部材を2000rpmの下で2分間混合した。その後、得られた混合物を80℃で2時間硬化させた。硬化したサンプルは、厚さ2mm、直径12.7mmの円形にカットした。
【0128】
熱伝導率は、キセノンフラッシュアナライザー「LFA-447」(NETZSCHグループ製)を用いて、パルス加熱法で測定した。
【0129】
[保存安定性の測定]
第1部材と第2部材を別々に保存した調製組成物を、25℃の恒温槽に保存し、1ヶ月ごとに確認した。底部に硬い凝集物が見られた場合は、サンプルを取り出し、良好な保存状態での時間を記録する。組成物の場合は、第1部材の記録時間と第2部材の記録時間のうち、短い方を組成物の記録時間として記録する。
【0130】
記録時間が1ヶ月の場合は、組成物の保存安定性が悪い。記録期間が2ヶ月の場合、組成物の保存安定性は中間となる。記録期間が3ヶ月であれば、組成物の保存安定性は良好である。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
表1、表2、表3に示すように、成分(a)~(f)および(h)の組み合わせ、特に成分(c)~(e)の組み合わせを含んでなる本発明による実施例1~11の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、比較例1~4のものに比べて、流動性、熱伝導性、保存安定性のバランスが良好であることが明らかとなった。特に、本発明による実施例9及び10(本発明による成分(g)を含有する)の熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、4ヶ月又は5ヶ月の保存安定性を示し、本発明による実施例1~8(本発明による成分(g)を含有しない)の熱伝導性シリコーンポッティング組成物よりも良好であったことがわかる。
【0135】
一方、本発明による実施例5~8の組成物と比較して、本発明による成分(d)を含有しない比較例1の組成物は、粘度が50Pa・sであり、組成物の流動性が悪いことがわかった。
【0136】
さらに、本発明による実施例5~8の組成物と比較して、本発明による成分(c)を含まない比較例2の組成物は保存安定性が1ヶ月であり、組成物の保存安定性が悪いことがわかった。
【0137】
さらに、本発明による実施例5~8の組成物と比較して、本発明による成分(e)を含有しない比較例3の組成物は、粘度が60Pa・sであり、組成物の流動性が悪いことがわかった。
【0138】
さらに、本発明による実施例1の組成物と比較して、本発明による成分(e)の代わりに結晶性シリカを配合した比較例4の組成物は、粘度が30Pa・sであり、組成物の流動性が悪く、熱伝導率が1.1W/m・kであり、組成物の熱伝導性が悪いことがわかった。
【0139】
要約すると、本発明による熱伝導性シリコーンポッティング組成物は、流動性、熱伝導性、および保存安定性の良好なバランスを示す。
【0140】
いくつかの好ましい実施形態を説明してきたが、上記の教示に照らし合わせて、多くの修正や変形を行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されている以外の方法で実施できることが理解される。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕(a)ビニルオルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(f)触媒、
を含む第1部材、および
(b)水素化物オルガノポリシロキサン、
(c)0.1μm以上3μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラー、
(d)3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナおよび/または水酸化アルミニウムのフィラー、
(e)15μm以上100μm以下の平均粒径を有するアルミナフィラー
を含む第2部材
を含む、熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔2〕成分(a)は、下記一般式(1)
[式中、R ,R ,R ,R ,R およびR は、それぞれ独立して、メチル基、ビニル基またはフェニル基を指定し、ただし、各分子は少なくとも2つのビニル基を含むことを条件とし;M、D、TおよびQは、それぞれ0から1未満の数を表し、ただし、M+D+T+Qは1である]
で表される少なくとも1つのオルガノシロキサンAであることを特徴とする、〔1〕に記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔3〕成分(a)の含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%である、〔1〕または〔2〕に記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔4〕成分(b)は、下記一般式(2)
[式中、R ,R ,R ,R 10 ,R 11 およびR 12 は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、または水素を示し、ただし、各分子は、ケイ素に直接結合した少なくとも2個の水素原子を含み;およびM’、D’、T’およびQ’は、それぞれ0から1未満の数を表し、M’+D’+T’+Q’は1であることを条件とする]
で表される少なくとも1つのオルガノポリシロキサンBであることを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔5〕成分(b)の含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~15重量%である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔6〕成分(c)、(d)および(e)の合計含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準として、80重量%以上98重量%以下、好ましくは85重量%以上91重量%以下であることを特徴とする、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔7〕成分(c)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、4重量%~65重量%、好ましくは8重量%~50重量%である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔8〕成分(d)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、3重量%~45重量%、好ましくは4重量%~35重量%である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔9〕成分(d)は、3μm以上15μm未満の平均粒径を有するアルミナフィラーであることを特徴とする、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔10〕成分(e)の総含有量は、熱伝導性シリコーンポッティング組成物の総重量を基準にして、25重量%~70重量%、好ましくは30重量%~65重量%である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔11〕さらに、(g)シランカップリング剤またはチタン系カップリング剤を含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物。
〔12〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を含む熱伝導性ポッティング接着剤。
〔13〕請求項1~11のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物の、電子部品、特に自動車のボードチャージャー、インバータまたはコンバータにおける使用。
〔14〕請求項1~11のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンポッティング組成物を用いてポッティングされた電子部品。