(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20240711BHJP
G01N 21/952 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B23K31/00 K
G01N21/952
(21)【出願番号】P 2022053135
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 則和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶
(72)【発明者】
【氏名】大貫 正明
(72)【発明者】
【氏名】永井 航平
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-175088(JP,A)
【文献】米国特許第05936725(US,A)
【文献】特開2014-066591(JP,A)
【文献】特開平05-087539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
G01N 21/952
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部同士が突合せ溶接された配管における溶接部の外観を全周に亘って検査する溶接外観判定支援システムであって、
前記配管における前記溶接部を撮像する撮像検査装置と、
前記撮像検査装置で撮像された撮像データを読み込み、前記配管に予め刻印されたケガキ線及び前記溶接部を表示する表示装置と、を有し、
前記表示装置は、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、スケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部の溶接状態を画像表示
し、
前記表示装置は、撮像検査装置で撮像された撮像データを、前記スケールバーと同時に表示する表示部と、前記撮像データを保存可能な撮像データ記録部と、前記撮像データに基づく判定結果を入力して保存することが可能な判定結果記録部と、を備え、
前記撮像検査装置は、
前記配管の前記溶接部を撮像するカメラと、
前記配管の前記溶接部を挟んで前記カメラとは反対側に配置された一対のミラーとを備え、
前記一対のミラーは、前記配管の中心軸を挟んだ両側に位置して、互いに逆向きに傾斜した状態で配置され、
前記カメラは、前記溶接部の正面側画像と、前記一対のミラーに各々映し出された前記溶接部の背面側画像とを同時に撮像することを特徴とする溶接外観判定支援システム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、前記配管の軸方向に沿って配列された目盛を有するスケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部のビード幅、並びに、前記ケガキ線の位置と前記溶接部の位置との間の狙いズレの有無及び狙いズレ寸法を画像表示することを特徴とする請求項1に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、前記配管の軸方向に直交する方向で配列された目盛を有するスケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部のビード高さを画像表示することを特徴とする請求項1に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項4】
前記撮像検査装置は、
前記配管を径方向に挟み込んだ状態で脱着自在に保持する保持具
を有し、
前記配管の前記溶接部を撮像するカメラが、前記保持具に保持されていることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項5】
前記保持具は、前記配管の前記溶接部を挟んだ軸方向の両側又は片側を保持することを特徴とする請求項4に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項6】
前記撮像検査装置は、前記保持具が前記配管を保持した状態で、前記配管に取り付けられることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項7】
前記表示装置がタブレット端末であることを特徴とする請求項1~請求項
6の何れか一項に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項8】
前記スケールバーが、配管の溶接部の正面側画像及び背面側画像におけるそれぞれの寸法に合わせて、正面側画像及び背面側画像に重ね合わされて表示される請求項1~請求項7の何れか一項に記載の溶接外観判定支援システム。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の溶接外観判定支援システムを用いて、端部同士が突合せ溶接された配管の溶接部の溶接状態を合否判定することを特徴とする溶接外観判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場のような超高純度ガスを使用する工場においては、一般に、電解研磨を施したステンレス配管を用いたガス供給配管で工場が構成されている。また、配管の端部同士を突合せて接合する方法としては、自動TIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)が採用されている。
【0003】
ここで、自動TIG溶接は、溶接部の形成予定位置に対して実際の形成位置がずれてしまうという、所謂狙いズレが発生することがある。このため、溶接部の狙いズレを溶接施工後に確認できるように、予め、配管の端面から数mm又は数十mm程度の位置にケガキ線を刻印している。そして、予め刻印したケガキ線を基準として、溶接部の形成位置に狙いズレが発生していないかどうか、また、溶接部の凹み等の溶接欠陥が発生していないかどうか、目視による検査を実施している。
【0004】
工場等の設備として施工・設置された配管の溶接部を検査する方法としては、例えば、X線検査装置を用いた検査方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された検査方法によれば、X線透過画像を用いることで溶接結果の有無を判定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような、半導体製造工場において半導体ガスの供給に用いられる配管は、配管径が小さいことから溶接部のビード幅も非常に小さく、また、溶接部の狙いズレを確認するためのケガキ線も非常に細いため、目視によって検査することは難しい。このため、目視のみで検査した場合には、検査に時間がかかってしまうことから、より簡便に検査できる方法が求められている。さらに、半導体製造工場でガスの供給に用いられる配管は、天井裏等の高所、暗所又は狭所に施工・設置されることも多いことから、検査時の判断ミスが発生することのみならず、溶接施工後の検査作業が高所における難しい体勢での作業となるため、検査員の転落等をまねくおそれもある。
【0007】
また、従来は、上記のような作業現場における溶接外観検査の後に、検査員が事務所等に戻って検査成績書等を作成しているが、このような作業は、検査員にとって非常に手間や時間がかかるものとなっている。また、溶接外観検査時の写真が存在しないケースもあり、撮像データが記録として残らないことも多い。
【0008】
ここで、半導体製造工場でガスの供給に用いられる配管の検査に、特許文献1に開示されたようなX線検査装置を適用することも考えられる。また、特許文献1に開示されたようなX線検査装置を用いて配管の溶接部を検査することで、当該装置に保存された撮像データなどを用いて検査成績書等を作成できるので、検査員の負担を軽減することも可能になると考えられる。さらに、X線検査装置を用いて配管の溶接部を検査することで、X線による非破壊検査によって溶接部の健全性を確認・評価することも可能となる。
【0009】
しかしながら、X線検査装置は全体的に大がかりな装置なので、上述した半導体製造工場のような、高所、暗所又は狭所に施工された配管の近傍に配置することは、スペース面で難しいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部であっても適切な検査が可能であり、且つ、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能な溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等が、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。この結果、撮像検査装置と表示装置とを備え、表示装置が、ケガキ線及び溶接部に重ね合わせるように、スケールバーを同時に表示することで、溶接部の溶接状態を画像表示する構成を採用することを知見した。これにより、例えば、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部を詳細に検査することが可能となり、且つ、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0012】
請求項1に係る発明は、端部同士が突合せ溶接された配管における溶接部の外観を全周に亘って検査する溶接外観判定支援システムであって、前記配管における前記溶接部を撮像する撮像検査装置と、前記撮像検査装置で撮像された撮像データを読み込み、前記配管に予め刻印されたケガキ線及び前記溶接部を表示する表示装置と、を有し、前記表示装置は、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、スケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部の溶接状態を画像表示することを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の溶接外観判定支援システムであって、前記表示装置が、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、前記配管の軸方向に沿って配列された目盛を有するスケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部のビード幅、並びに、前記ケガキ線の位置と前記溶接部の位置との間の狙いズレの有無及び狙いズレ寸法を画像表示することを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の溶接外観判定支援システムであって、前記表示装置は、前記ケガキ線及び前記溶接部に重ね合わせるように、前記配管の軸方向に直交する方向で配列された目盛を有するスケールバーを同時に表示することにより、前記溶接部のビード高さを画像表示することを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、請求項1~請求項3の何れかに記載の溶接外観判定支援システムであって、前記撮像検査装置が、前記配管を保持する保持具と、前記保持具に保持された前記配管の前記溶接部を撮像するカメラと、前記配管の前記溶接部を挟んで前記カメラとは反対側に配置された一対のミラーとを備え、前記一対のミラーは、前記配管の中心軸を挟んだ両側に位置して、互いに逆向きに傾斜した状態で配置され、前記カメラは、前記溶接部の正面側画像と、前記一対のミラーに各々映し出された前記溶接部の背面側画像と、を同時に撮像することを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の溶接外観判定支援システムであって、前記保持具が、前記配管の前記溶接部を挟んだ軸方向の両側又は片側を保持することを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載の溶接外観判定支援システムであって、前記撮像検査装置が、前記保持具が前記配管を保持した状態で、前記配管に取り付けられることを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、請求項1~請求項6の何れかに記載の溶接外観判定支援システムであって、前記表示装置は、撮像検査装置で撮像された撮像データを、前記スケールバーと同時に表示する表示部と、前記撮像データを保存可能な撮像データ記録部と、前記撮像データに基づく判定結果を入力して保存することが可能な判定結果記録部と、を備えることを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、請求項1~請求項7の何れかに記載の溶接外観判定支援システムであって、前記表示装置がタブレット端末であることを特徴とする溶接外観判定支援システムである。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項1~請求項8の何れか一項に記載の溶接外観判定支援システムを用いて、端部同士が突合せ溶接された配管の溶接部の溶接状態を合否判定することを特徴とする溶接外観判定方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の溶接外観判定支援システムによれば、上記のような撮像検査装置及び表示装置を備えることにより、例えば、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部を、配管の全周にわたって適切に検査することが可能となるので、検査品質が安定する。また、表示装置において溶接部の撮像データを拡大表示できるので、より適切な検査が可能となる。
さらに、高所、暗所又は狭所のような危険な場所に検査員が入ることなく検査することができるので、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能になる。
【0022】
また、本発明の溶接外観判定方法によれば、本発明の溶接外観判定支援システムを用いて、端部同士が突合せ溶接された配管の溶接部の溶接状態を合否判定する方法なので、上記同様、例えば、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部を詳細に検査できるとともに、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法について模式的に説明する図であり、接外観判定支援システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法について模式的に説明する図であり、接外観判定支援システムを用いた処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、配管の溶接部を撮像する撮像検査装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、
図3に示した撮像検査装置の構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、
図3に示した撮像検査装置の構成を示す側面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、
図3に示した撮像検査装置において、ミラーを設置した状態を示す斜視図である。
【
図6B】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、
図3に示した撮像検査装置において、ミラーの設置を解除した状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、撮像検査装置に備えられる保持具の変形例を示す斜視図である。
【
図8A】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、撮像検査装置に備えられる保持具の変形例を示す図で、配管を保持させたときの保持具の状態を示す斜視図である。
【
図8B】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて模式的に説明する図であり、撮像検査装置に備えられる保持具の変形例を示す図で、
図8Aに示した撮像検査装置を操作することで各クランプ部の間を離間させ、配管の保持を解除した状態を示す斜視図である。
【
図9A】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて説明する図であり、
図3に示す撮像検査装置を用いて配管の溶接部を撮像し、この撮像データを用いて、配管の溶接部の直写画像及び反射画像を表示装置に表示させた状態を示す写真図である。
【
図9B】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて説明する図であり、
図3に示す撮像検査装置を用いて配管の溶接部を撮像し、この撮像データを用いて、配管の溶接部の直写画像及び反射画像を、スケールバーが重ね合わせられるように表示装置に表示させた状態を示す写真図である。
【
図9C】本発明の一実施形態である溶接外観判定支援システムについて説明する図であり、
図3に示す撮像検査装置を用いて配管の溶接部を撮像し、この撮像データを用いて、配管の溶接部の直写画像及び反射画像を、スケールバーが重ね合わせられるように表示装置に表示させた状態を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した一実施形態である溶接外観判定支援システム及び溶接外観判定方法について、
図1~
図9A、
図9B及び
図9Cの各図を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0025】
<溶接外観判定支援システム>
本実施形態の溶接外観判定支援システム(以下、単に「支援システム」と略称する場合がある。)の構成について、以下に詳述する。
図1は、本実施形態の支援システム10の全体構成の一例を示すブロック図であり、
図2は、支援システム10を用いた処理手順を示すフローチャートである。
図3は、本実施形態の支援システム10に備えられる、配管Tの溶接部Wを撮像する撮像検査装置1の構成を示す斜視図であり、
図4は撮像検査装置1の平面図、
図5は撮像検査装置1の側面図である。
図6Aは、
図3に示した撮像検査装置1において、ミラー4を設置した状態を示す斜視図であり、
図6Bは、ミラー4の設置を解除した状態を示す斜視図である。
図7は、
図3に示した撮像検査装置1に備えられる保持具2の変形例を示す側面図である。
図8Aは、撮像検査装置に備えられる保持具の変形例を示す図で、配管を保持させたときの保持具2Aの状態を示す斜視図である。
図8Bは、
図8Aに示した撮像検査装置10Aを操作することで第1クランプ部61と第2クランプ部62との間を離間させ、配管の保持を解除した状態を示す斜視図である。
図9Aは、
図3に示した撮像検査装置1を用いて配管Tの溶接部Wを撮像し、この撮像データを用いて、配管Tの溶接部Wの直写画像及び反射画像を表示装置9に表示させた状態を示す写真図である。
図9Bは、
図3に示した撮像検査装置1を用いて配管Tの溶接部Wを撮像し、この撮像データを用いて、配管Tの溶接部Wの直写画像及び反射画像を、配管Tの軸方向に沿って配列された目盛を有するスケールバー95Aが重ね合わせられるように表示装置9に表示させることで、ケガキ線Rの位置と溶接部Wの位置との間の狙いズレの有無及び狙いズレ寸法を画像表示させた状態を示す写真図である。
図9Cは、
図3に示した撮像検査装置1を用いて配管Tの溶接部Wを撮像し、この撮像データを用いて、配管Tの溶接部Wの直写画像及び反射画像を、配管Tの軸方向に直交する方向で配列された目盛を有するスケールバー95Bが重ね合わせられるように表示装置9に表示させることで、溶接部Wのビード高さを画像表示させた状態を示す写真図である。
【0026】
本実施形態の支援システム10は、
図3中に示したような、端部T1,T2同士が突合せ溶接された配管Tにおける溶接部Wの外観を全周に亘って検査するものである。具体的には、本実施形態の支援システム10は、
図1のブロック図中に示すように、配管Tにおける溶接部Wを撮像する撮像検査装置1と、撮像検査装置1で撮像された撮像データを読み込み、配管Tに予め刻印されたケガキ線R及び溶接部Wを表示する表示装置9(
図9A~
図9Cも参照)と、を有して概略構成される。
そして、本実施形態の支援システム10は、表示装置9が、ケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、スケールバー95A,95Bを同時に表示することにより、溶接部Wの溶接状態を画像表示する。
【0027】
[配管(端部同士が突合せ溶接された配管)]
図3等に示す配管Tは、端部T1,T2同士が突合せ溶接された溶接部Wを有し、複数で連結されてなるものである。本実施形態において検査対象となる溶接部Wを有した配管Tは、例えば、鉄鋼材料等の各種の金属材料から構成される。
【0028】
また、本実施形態で検査対象となる溶接部Wを有した配管Tは、例えば、半導体製造工場等のような、超高純度ガスを使用する工場において、天井裏等の高所、暗所又は狭所に施工・設置されるものである。このような配管Tは、一般に、配管径が小さいことから溶接部のビード幅も非常に小さく、また、溶接部の狙いズレを確認するためのケガキ線も非常に細いため、目視によって検査することは難しいという傾向がある。本実施形態の支援システム10は、このような配管Tにおける溶接部Wの溶接状態の検査を、コンパクト且つ簡便な設備で実施でき、溶接外観の検査品質も高められるものである。
【0029】
[撮像検査装置]
本実施形態の支援システム10に備えられる撮像検査装置1は、
図3、
図4、
図5及び
図6A~
図6Cに示す例のように、配管Tの溶接部Wを全周に亘って撮像して検査するために用いられるものであり、図示例では、保持具2と、カメラ3と、一対のミラー4と、照明ランプ5とを備えて構成されている。
【0030】
保持具2は、配管Tを保持するものであり、配管Tの溶接部Wを挟んだ軸方向の両側又は片側(図示例においては両側)を保持する一対のクランプ機構6を有している。一対のクランプ機構6は、配管Tを径方向に挟み込んだ状態で着脱自在に保持する。
【0031】
カメラ3は、保持具2に保持された配管Tの溶接部Wを撮像するものであり、CCDやCMOSセンサ等の撮像素子を有してなり、この撮像素子が受像した光を光電変換して電気信号として出力する。これにより、カメラ3は、表示装置9に備えられる表示部91(
図9A等を参照)に撮像した画像を表示したり、外部の記憶装置に画像を記録したりすることが可能とされている。
【0032】
カメラ3は、配管Tの溶接部Wを撮像する素子からなり、例えば、ワイドダイナミックレンジで撮像する機能(ワイドダイナミックレンジ機能)を有している。このようなワイドダイナミックレンジ機能を有することにより、例えば、電子シャッターのシャッター速度を変えながら、被写体(本実施形態では溶接部W)の明部に対応した画像と暗部に対応した画像とを撮像した後、これらの画像をデジタル信号処理で合成することにより、被写体の明部と暗部とを鮮明に映し出した画像データを得ることが可能となる。
【0033】
一対のミラー4は、カメラ3に対して溶接部Wの背面側を各々映し出すためのものであり、配管Tの溶接部Wを挟んでカメラ3とは反対側に配置されている。一対のミラー4は、配管Tの中心軸を挟んだ両側に位置して、互いに逆向きに傾斜した状態でミラーケース7の内側に配置されている。
【0034】
一対のミラー4の間における開き角θは、80~140°であることが好ましく、より好ましく100~130°である。また、一対のミラー4の境界から配管Tまでの距離Dは、10~30mmであることが好ましい。上記の距離Dがこの範囲であることにより、一対のミラー4に映し出された溶接部Wの背面側画像をカメラ3によって撮像することが可能となる。
【0035】
ミラーケース7は、保持具2に対して回動自在に取り付けられている。これにより、撮像検査装置1においては、
図6Aに示すカメラ3に対して一対のミラー4が対向する設置位置と、
図6Bに示すカメラ3に対して一対のミラー4が離間する解除位置との間で、ミラーケース7の位置を切り替えることが可能である。
【0036】
また、保持具2及びミラーケース7には、ミラー4に対する溶接部W以外の不要な映り込みを防止するため、例えば、金属や樹脂、ゴム等からなる遮蔽板8a,8bが取り付けられている。このうち、一方の遮蔽板8aは、保持具2に取り付けられ、カメラ3とミラー4との間における配管Tを挟んだ一方側を遮蔽する。他方の遮蔽板8bは、ミラーケース7に回動自在に取り付けられ、カメラ3とミラー4との間における配管Tを挟んだ他方側を遮蔽する。
【0037】
照明ランプ5は、配管Tの溶接部Wに向けて照明光Lを照射するものであり、例えば、白色光(可視光)を発するLEDランプ等からなる。照明ランプ5は、配管Tの軸方向におけるカメラ3を挟んだ両側又は片側(本実施形態では両側)に各々配置されている。そして、照明ランプ5は、各々の位置から配管Tの溶接部Wに向けて照明光Lを照射する。また、配管Tの軸方向に対する照明光Lの照射角度ωは、0~80°であることが好ましく、より好ましく0~70°である。
【0038】
上記構成を有する、本実施形態の支援システム10に備えられる撮像検査装置1は、保持具2が配管Tを保持することにより、この撮像検査装置1を配管Tに取り付けることが可能とされている。また、撮像検査装置1は、この撮像検査装置1の配管Tに対する取り付け位置を変えながら、各溶接部Wを検査することが可能とされている。
【0039】
上記構成の撮像検査装置1は、保持具2に配管Tが保持された状態で、溶接部Wの正面側画像(直写画像)と、一対のミラー4に各々映し出された溶接部Wの背面側画像(反射画像)とを、カメラ3によって同時に撮像することが可能である。即ち、この撮像検査装置1は、1つのカメラ3で配管Tの溶接部Wの周囲を囲む3面を同時に撮像することが可能である。具体的には、
図9中に示す表示装置9に映し出された配管Tの溶接部Wの画像の例のように、溶接部Wの正面側画像(直写画像)と、背面側画像(溶接部Wの左側面及び背面の反射画像、並びに、溶接部Wの右側面及び背面の反射画像)を全周撮像することが可能となる。
【0040】
また、撮像検査装置1は、上述したカメラ3のワイドダイナミックレンジ機能によって配管Tの溶接部Wを撮像することで、この溶接部Wに施されたケガキ線Rを含む溶接部Wの鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0041】
また、撮像検査装置1は、上述した配管Tの軸方向におけるカメラ3を挟んだ両側又は片側(本実施形態では両側)に位置する照明ランプ5から配管Tの溶接部Wに向けて照明光Lを照射することで、溶接部Wの鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0042】
上記のように、撮像検査装置1は、得られた溶接部Wの正面側画像及び背面側画像に基づいて、配管Tの溶接部Wを全周に亘って検査する。即ち、撮像データを後述の表示装置9で表示することで、ケガキ線Rを基として、溶接部Wの狙いズレが発生していないか、溶接部Wの凹みのような欠陥が生じていないか等の目視による検査(外観検査)を行う。本実施形態の支援システム10においては、上記構成の撮像検査装置1を用いることで、配管Tの溶接部Wを全周に亘って適切に検査することが可能である。
【0043】
[表示装置]
本実施形態の支援システム10に備えられる表示装置9は、撮像検査装置1で撮像された撮像データを読み込み、配管Tに予め刻印されたケガキ線R及び溶接部Wを表示する。
図9A~
図9Cに示すように、本実施形態で例示する表示装置9は、撮像検査装置1で撮像された撮像データを表示するための表示部91と、支援システム10全体の操作を行うための操作部92とを有して構成される。
【0044】
表示装置9としては、例えば、表示部91及び操作部92が同一のタッチパネル(液晶パネル)上に設けられている構成を採用できる。具体的には、表示装置9としては、撮像検査装置1で撮像された撮像データをネットワーク11上で受信し、このデータを読み込んで表示することが可能な、市販のタブレット端末等を用いることができる。
【0045】
図9A~
図9Cに示す例の表示装置9は、タブレット端末のタッチパネル上において、配管Tの溶接部Wの直写画像及び反射画像を表示する表示部91に加え、後述する各スケールバー95A,95Bの表示モードを選択したり、あるいは、検査による判定結果の記録操作等を選択したりする、複数のラジオボタンからなる操作部92が表示されている。
【0046】
また、表示装置9は、
図1のブロック図に示すように、撮像検査装置1で撮像された撮像データの表示処理や操作部92における各種操作に伴い、表示装置9全体を制御するためのCPU等からなる演算部96と、判定結果データに基づく検査成績書等を、電子データや紙媒体等で出力するための出力部97を備える。
【0047】
表示部91は、上述したように、配管Tに予め刻印されたケガキ線R及び溶接部Wを表示するものであり、
図9A~
図9Cに示す例では、タブレット端末等に備えられるタッチパネル上において、
図9A~
図9Cにおける紙面左上側の領域に配置されている。
【0048】
本実施形態においては、表示部91に、配管Tの表面のケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、スケールバー95A及び/又はスケールバー95Bを同時表示することにより、溶接部Wの溶接状態を画像表示して目視確認することができる。
【0049】
具体的には、表示部91は、
図9B中に示す例のように、例えば、ケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、配管Tの軸方向に沿って配列された目盛を有するスケールバー95Aを同時に表示する。これにより、表示部91に、溶接部Wのビード幅、並びに、ケガキ線Rの位置と溶接部Wの位置との間の狙いズレの有無及び狙いズレ寸法を画像表示することができ、検査員が上記各検査項目を詳細に目視確認することが可能となる。
【0050】
あるいは、表示部91は、
図9C中に示す例のように、例えば、ケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、配管Tの軸方向に直交する方向で配列された目盛を有するスケールバー95Bを同時に表示する。これにより、表示部91に、溶接部Wのビード高さを画像表示することができ、検査員がビード高さを詳細に目視確認することが可能となる。
【0051】
なお、
図9B及び
図9Cでは、スケールバー95A又はスケールバー95Bの一方のみを表示している例を示しているが、本実施形態においては、このような表示形態には限定されず、例えば、スケールバー95A及びスケールバー95Bを同時に表示してもよい。
【0052】
操作部92は、上述したように、例えばタッチパネル上に配列された複数のラジオボタンから構成される。
図9A~
図9Cでは詳細な図示を省略しているが、各ラジオボタンには各種の機能が割り当てられている。即ち、操作部92には、上述したスケールバー95A,95Bの表示モードの選択や判定結果の記録操作の他、例えば、溶接部Wのビードの拡大表示モードの選択等の機能を割り当てることが可能である。また、上述した表示装置9における操作部92の各機能は、例えば、タブレット端末にインストールした専用アプリケーションによって実行することが可能である。
【0053】
図9Bに示すように、表示装置9に備えられる表示部91において、撮像検査装置10から読み込んで適宜保存した、配管Tの溶接部Wの撮像データに重ね合わせるようにスケールバー95Aを表示することで、溶接部Wのビードの幅が管理許容値以内の寸法であるか否かを、検査員が詳細に目視確認することができる。
また、表示部91において、配管Tの溶接部Wの撮像データに重ね合わせるようにスケールバー95Aを表示することで、ケガキ線Rの位置と溶接部Wのビードの位置とを比較し、溶接部Wの狙いズレの有無を詳細に目視確認することができる。
【0054】
また、
図9Cに示すように、撮像検査装置10から読み込んで適宜保存した、配管Tの溶接部Wの撮像データに重ね合わせるようにスケールバー95Bを表示することで、溶接部Wのビードの高さが管理許容値以内の寸法であるか否かを、検査員が目視確認することができる。
【0055】
本実施形態においては、上記のように、表示部91において、配管Tの溶接部Wの撮像データ、及び、スケールバー95A,95Bを同時に表示することで、詳細で正確な目視検査を実施することが可能になるので、検査品質が顕著に向上する効果が得られる。
【0056】
また、表示部91に表示されるスケールバー95A,95Bは、例えば、配管Tの溶接部Wの直写画像及び反射画像毎に、表示及び非表示を操作部92のラジオボタン上で切り替えることができるように、上記の専用アプリケーションを構築することが好ましい。
【0057】
さらに、本実施形態においては、表示装置9が、上記の表示部91及び操作部92に加え、さらに、撮像検査装置1で撮像された撮像データを保存可能な撮像データ記録部93と、撮像データに基づく判定結果を入力して保存することが可能な判定結果記録部94と、を備えることがより好ましい。このような構成の表示装置9としても、上記のような、市販のタブレット端末等を用いることが可能である。
【0058】
ここで、上記の撮像データ記録部93としては、例えば、タブレット端末に内蔵されたメモリ等を利用することができる。同様に、上記の判定結果記録部94としても、タブレット端末に備えられるタッチパネル及びメモリ等を利用することができる。
【0059】
なお、表示装置9を用いた目視検査において不合格となった項目、即ち、ケガキ線Rに対する溶接部Wのビードの狙いズレ、ビード幅、目違、仮付溶接、クレータ処理、アークストライク、アンダーカット、割れ、及びビード高さ等の何れかで不合格項目が存在する場合には、操作部92で適宜割り当てられたラジオボタンを操作することで、上記の不合格項目情報を判定結果記録部94に記録することができる。
【0060】
また、表示装置9においては、上記の専用アプリケーションを用いることにより、例えば、検査対象物、検査年月日、検査員、合否、及び検査不合格項目等が記載された検査記録の一覧表を、検査成績書として電子データ又は紙媒体の何れかで簡単に出力することが可能になる(
図1のブロック図中における出力部97を参照)。
【0061】
ここで、配管Tの溶接部Wの健全性の確認・評価は、一般に、X線を用いた非破壊検査によって実施されるが、半導体製造工場等のように、天井裏等の高所、暗所又は狭所に配管Tが施工・設置されているケースでは、X線による非破壊検査の実施は困難である。本実施形態においては、支援システム10を用いた配管Tの外観検査により、ビードの溶接品質を判定することで、非破壊検査の代替とすることが可能である。
【0062】
上述したように、本実施形態の支援システム10によれば、配管Tにおける溶接部Wの溶接状態が適正か否かを検査するのにあたり、撮像検査装置1で撮像された配管Tの溶接部Wの撮像データを表示装置9に読み込み、溶接部Wの狙いズレの有無やビードの凹みなどの欠陥の有無を確認したうえで、撮像データ及び判定結果を保存し、各データに基づいて検査成績書等を作成することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態の支援システム10によれば、カメラ3を備える撮像検査装置1を使用したものなので、例えば、ビードやケガキ線Rの幅が細い小径の配管Tの溶接部Wを検査するケース等においても、鮮明な撮像データを用いた目視検査が可能となり、検査品質が安定する。
また、溶接品質等の検査データを画像(撮像)データとして保存することも可能なので、必要に応じて時間や場所を問わず閲覧することができる。
また、必要に応じて撮像データを拡大しながら溶接部の確認を行うことができるので、詳細且つ正確な検査を行うことが可能となる。
また、検査員による目視検査を撮像データによって行うことで、溶接施工後の検査を、危険な高所、暗所又は狭所で行う必要がなくなるので、検査員の安全性も確保できる。
また、表示装置9を用いて入力した検査結果の内容を検査成績書として出力することにより、例えば、これまで検査員が事務所に戻ってから実施していたデスクワークによる作業を省略できる。
【0064】
<溶接外観判定方法>
本実施形態の溶接外観判定方法(以下、単に「判定方法」と略称する場合がある。)の手順について、以下に詳述する。
なお、以下の説明においては、上述した本実施形態の溶接外観判定支援システムの説明を同じ図面(
図1~
図9A、
図9B及び
図9C)を適宜参照して説明するとともに、既に詳述した各構成の説明は省略する場合がある。
【0065】
本実施形態の判定方法は、上述した本実施形態の支援システム10を用いて、端部T1,T2同士が突合せ溶接された配管Tの溶接部Wの溶接状態を合否判定する方法であり、例えば、
図2中に示すフローチャートにおけるステップ1~ステップ9(S1~S9)の手順で実施することができる。
【0066】
まず、
図2のフローチャート中に示すS1(ステップ1)において、撮像検査装置1を用いて配管Tの溶接部Wの撮像を実施する。
次いで、S2(ステップ2)において、撮像検査装置1が、撮像した配管Tの溶接部Wの撮像データを、ネットワーク96(
図1のブロック図を参照)を介して、タブレット端末等からなる表示装置9に向けて送信し、表示装置9は、上記の撮像データを取り込む。この際、撮像データ記録部93に撮像データを記録する。
次いで、S3(ステップ3)において、検査員が、表示装置9に撮像データの書誌情報(例えば、検査員の氏名、溶接作業者の氏名、作業エリア等)を入力する。
【0067】
次いで、S4(ステップ4)において、表示装置9の表示部91に表示された配管Tの溶接部W、及び、スケールバー95Aに基づき、溶接部Wのビード幅、及び、ケガキ線Rの位置に対する溶接部Wの位置を検査員が目視して確認する(
図9Bも参照)。具体的には、表示部91において、ケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、配管Tの軸方向に沿って配列された目盛を有するスケールバー95Aを同時に表示することにより、溶接部Wのビード幅、並びに、ケガキ線Rの位置と溶接部Wの位置との間の狙いズレの有無及び狙いズレ寸法を目視確認する。
【0068】
次いで、S5(ステップ5)において、表示装置9の表示部91に表示された配管Tの溶接部W、及び、スケールバー95Bに基づき、溶接部Wのビード高さを検査員が目視して確認する(
図9Cも参照)。具体的には、表示部91において、ケガキ線R及び溶接部Wに重ね合わせるように、配管Tの軸方向に直交する方向で配列された目盛を有するスケールバー95Bを同時に表示することにより、溶接部Wのビード高さを目視確認する。
【0069】
次いで、S6(ステップ6)において、S5及びS6における検査結果を判定結果記録部94に記録する(
図1のブロック図も参照)。具体的には、操作部92において、判定結果の記録操作が割り当てられた各ラジオボタンを操作することにより、ケガキ線Rに対する溶接部Wのビードの狙いズレ、ビード幅、目違、仮付溶接、クレータ処理、アークストライク、アンダーカット、割れ、及びビード高さ等の検査結果を判定結果記録部94に記録する。
【0070】
次いで、S7(ステップ7)において、S6で判定結果記録部94に記録した検査結果に基づいて検査員が合否判定を行い、操作部92で適宜割り当てられたラジオボタンを操作することにより、判定結果記録部94に、さらに合否判定を記録することができる(
図2のフローチャートにおけるS8を参照)。
【0071】
また、検査員が、操作部92で適宜割り当てられたラジオボタンを操作することにより、例えば、検査対象物、検査年月日、検査員、合否、及び検査不合格項目等が記載された検査記録の一覧表を検査成績書として出力することができる(
図2のフローチャートにおけるS9、及び、
図1のブロック図中における出力部97を参照)。
【0072】
本実施形態の溶接外観判定支援システム10を用いた判定方法によれば、上記のような手順により、配管Tの溶接部Wの外観検査を行うことができる。
【0073】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の溶接外観判定支援システム10によれば、上記のような撮像検査装置1及び表示装置9を備えることにより、例えば、高所、暗所又は狭所に施工された配管Tの溶接部Wや、ビードやケガキ線Wの幅が細い小径の配管Tの溶接部Wであっても詳細に検査することが可能となるので、検査品質が安定する。また、表示装置9において溶接部Wの撮像データを拡大表示できるので、より適切な検査が可能となる。さらに、高所、暗所又は狭所のような危険な場所に検査員が入ることなく検査することができるので、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能になる。
【0074】
また、本実施形態の溶接外観判定方法によれば、本実施形態の支援システム10を用いた判定方法なので、上記同様、例えば、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部を詳細に検査できるとともに、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能になる。
【0075】
<その他の形態>
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明には、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0076】
例えば、本実施形態の支援システム10に備えられる撮像検査装置1の保持具2については、
図7に示すように、配管Tの溶接部Wを挟んだ軸方向の片側を保持するクランプ機構6により保持する構成であってよい。
【0077】
さらに、本実施形態の支援システム10に備えられる撮像検査装置の保持具については、
図8A及び
図8Bに示す例のような、スライド操作によって配管T(
図3等を参照)を保持するクランプ機構6Aを有した保持具2Aであってもよい。
図8A及び
図8Bに例示した撮像検査装置1Aは、該撮像検査装置1Aの長手方向に沿ってスライド移動可能な可動部材からなる第1クランプ部61と、スライド動作しない固定部材からなる第2クランプ部62とを有している。また、第1クランプ部61には、この第1クランプ部61をスライド移動させる操作を実施するための操作レバー63が接続されている。
【0078】
図8Aに示すように、クランプ機構6Aは、操作レバー63の操作を実施していないときは、第1クランプ部61と第2クランプ部62とが近接した状態である。
一方、使用者が操作レバー63を操作することで、
図8Bに示すように、第1クランプ部61と第2クランプ部62とが離間する。このような状態で、
図8A及び
図8B中では図示を省略している配管T(
図3等を参照)を、第1クランプ部61に設けられる第1クランプ溝61aと、第2クランプ部62に設けられる第2クランプ溝62aとの間に挿入した後、操作レバー63を
図8A中に示した定位置に戻す。この際、図示略のばね機構等により、第1クランプ部61が第2クランプ部62側に移動して近接した状態となる。これにより、配管T(
図3等を参照)が、第1クランプ部61に設けられる第1クランプ溝61aと、第2クランプ部62に設けられる第2クランプ溝62aとの間で保持される。
【0079】
また、クランプ機構6Aによって保持された配管T(
図3等を参照)は、撮像検査装置1Aを用いた検査が終了した後、使用者が操作レバー63を再び操作することで第1クランプ部61をスライド移動させ、
図8Bに示すように、第1クランプ部61と第2クランプ部62とを離間させた状態にすることで取り外すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の溶接外観判定支援システムは、高所、暗所又は狭所に施工された配管の溶接部や、ビードやケガキ線の幅が細い小径の配管の溶接部であっても適切な検査が可能であり、且つ、検査員の負担を軽減しながら安全に検査を行うことが可能なものである。従って、本発明の溶接外観判定支援システムは、特に、半導体製造工場等のような、高所、暗所又は狭所に配管が施工・設置される工場で、配管の溶接部を検査する用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…溶接外観判定支援システム(支援システム)
1,1A…撮像検査装置
2,2A…保持具
3…カメラ
4…ミラー
5…照明ランプ
6,6A…クランプ機構
61…第1クランプ部
61a…第1クランプ溝
62…第2クランプ部
62a…第2クランプ溝
63…クランク機構
64…操作レバー
7…ミラーケース
8…遮蔽板
9…表示装置
91…表示部
92…操作部
93…撮像データ記録部
94…判定結果記録部
95A,95B…スケールバー
96…演算部
97…出力部
T…配管
W…溶接部
R…ケガキ線