(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】測定データ分析装置、測定データ分析方法、プログラム及び三次元測定機
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
G01B21/00 G
(21)【出願番号】P 2021019651
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭佑
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173836(JP,A)
【文献】特許第4694881(JP,B2)
【文献】特開平11-118466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する前記測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得部と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数から導出される、前記観測変数ごとの重みを取得する重み取得部と、
分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得部と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数の平均値、前記重み及び分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける前記観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出部と、
を備える測定データ分析装置。
【請求項2】
前記影響度導出部は、複数の前記分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値が取得される場合に、複数の前記観測変数のそれぞれについて前記影響度を導出する請求項1に記載の測定データ分析装置。
【請求項3】
前記影響度導出部は、前記観測変数の数をMとし、iを1からMまでの整数とし、前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数ごとの平均値をX
iAveとし、前記分析対象の測定データにおける前記観測変数ごとの平均値をY
iAveとし、前記観測変数ごとの前記重みをa
iとする場合に、a
i×(X
iAve-Y
iAve)/Σ
i=1
M{a
i×(X
iAve-Y
iAve)}を用いて表される前記影響度を導出する請求項2に記載の測定データ分析装置。
【請求項4】
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数に対する、前記分析対象の測定データにおける前記観測変数の違いの程度を表す異常度を導出する異常度導出部と、
前記異常度に基づき、前記分析対象の測定データにおける前記観測変数が正常であるか又は異常であるかを判定する異常度判定部と、
を備え、
前記影響度導出部は、前記異常度判定部において前記分析対象の測定データにおける前記観測変数が異常であると判定される場合に、前記影響度を導出する請求項1から3のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項5】
前記分析対象の測定データにおける前記測定点ごとの測定値の標準偏差を取得する標準偏差取得部を備え、
前記影響度導出部は、前記分析対象の測定データの標準偏差が規定の閾値を超える場合に、前記影響度を導出する請求項1から4のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項6】
前記重み取得部は、前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数に対して主成分分析を実施して得られる主成分軸を前記重みとして取得する請求項1から5のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項7】
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数ごとの平均値及び前記観測変数ごとの前記重みの組を学習データとして記憶する学習データ記憶部を備え、
前記観測変数取得部は、前記学習データ記憶部から前記正常範囲の測定データにおける前記測定点ごとの観測変数の値の平均値を取得し、
前記重み取得部は、前記学習データ記憶部から前記観測変数ごとの前記重みを取得する請求項1から6のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項8】
前記学習データ記憶部へ記憶される前記学習データを更新する学習データ更新部を備える請求項7に記載の測定データ分析装置。
【請求項9】
前記重みを導出する重み導出部を備える請求項1から8のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項10】
前記影響度を表示する表示部を備える請求項1から9のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項11】
前記観測変数は、プロービング速度、プロービング加速度、プロービング方向、プロービング位置、プロービング回数及び基準温度に対する温度変化の少なくともいずれかが含まれる請求項1から10のいずれか一項に記載の測定データ分析装置。
【請求項12】
測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する前記測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得工程と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数から導出される、前記観測変数ごとの重みを取得する重み取得工程と、
分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得工程と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数の平均値、前記重み及び分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける前記観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出工程と、
を含む測定データ分析方法。
【請求項13】
コンピュータに、
測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する前記測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得機能、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数から導出される、前記観測変数ごとの重みを取得する重み取得機能、
分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得機能、及び
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数の平均値、前記重み及び分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける前記観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出機能を実現させるプログラム。
【請求項14】
測定対象物を測定する測定部と、
前記測定対象物の測定データにおける誤差要因を分析する測定データ分析装置と、
を備え、
前記測定データ分析装置は、
測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する前記測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得部と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数から導出される、前記観測変数ごとの重みを取得する重み取得部と、
分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得部
と、
前記正常範囲の測定データにおける前記観測変数の平均値、前記重み及び分析対象の測定データにおける前記観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける前記観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出部と、
を備える三次元測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定データ分析装置、測定データ分析方法、プログラム及び三次元測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元測定機の測定データには誤差が存在する。測定データの誤差は、測定における様々な誤差要因が折り重なった結果として現れる。ユーザは、排除が可能な誤差要因を排除して、純粋なワークの寸法の測定を目指す。
【0003】
特許文献1は、測定機の不確かさの推定を行う方法及びプログラムが記載される。同文献に記載のプログラム等は、コンピュータの中に疑似測定機を作り、疑似測定機に測定をシミュレートさせて疑似測定値を生成し、疑似測定値を統計処理して不確かさの推定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、誤差要因の特定には以下の問題点が存在する。
【0006】
(1)誤差要因の特定は三次元測定機に関する高度な知識が必要であり、三次元測定機に関する高度な知識を有していないユーザは、誤差要因の特定が困難である。
【0007】
(2)誤差要因の特定に関する測定データの定量的な分析が困難である。
【0008】
特許文献1には、誤差要因の特定に関連する記載及び誤差要因を特定する際の測定データの定量的な分析に関する記載はない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、測定データにおける誤差要因の特定の際に定量的な分析が実施され、かつ、測定データにおける誤差要因を自動で特定し得る、測定データ分析装置、測定データ分析方法、プログラム及び三次元測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0011】
本開示に係る測定データ分析装置は、測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得部と、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される、観測変数ごとの重みを取得する重み取得部と、分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得部と、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出部と、を備える測定データ分析装置である。
【0012】
本開示に係る測定データ分析装置によれば、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を用いて、分析対象の測定データへ分析対象の測定データにおける観測変数の影響を表す影響度が算出される。これにより、分析対象の測定データにおける誤差要因に対して定量的な分析が実施され、かつ、分析対象の測定データにおける誤差要因を自動で特定し得る。
【0013】
観測変数取得部は、正常範囲の測定データにおける観測変数を取得し、正常範囲の測定データにおける観測変数に基づき、平均値を導出する態様を適用し得る。
【0014】
分析対象データ取得部は、分析対象の測定データにおける観測変数を取得し、分析対象の測定データにおける観測変数に基づき、平均値を導出する態様を適用し得る。
【0015】
他の態様に係る測定データ分析装置は、影響度導出部は、複数の分析対象の測定データにおける観測変数の平均値が取得される場合に、複数の観測変数のそれぞれについて影響度を導出する。
【0016】
かかる態様によれば、複数の観測変数が規定される場合に、観測変数ごとに影響度が導出される。これにより、観測変数ごとの誤差要因分析を実施し得る。
【0017】
他の態様に係る測定データ分析装置は、影響度導出部は、観測変数の数をMとし、iを1からMまでの整数とし、正常範囲の測定データにおける観測変数ごとの平均値をXiAveとし、分析対象の測定データにおける観測変数ごとの平均値をYiAveとし、観測変数ごとの重みをaiとする場合に、ai×(XiAve-YiAve)/Σi=1
M{ai×(XiAve-YiAve)}を用いて表される影響度を導出する。
【0018】
かかる態様によれば、影響度を表す指標値に基づく誤差要因の定量的な分析を実施し得る。
【0019】
他の態様に係る測定データ分析装置は、正常範囲の測定データにおける観測変数に対する、分析対象の測定データにおける観測変数の違いの程度を表す異常度を導出する異常度導出部と、異常度に基づき、分析対象の測定データにおける観測変数が正常であるか又は異常であるかを判定する異常度判定部と、を備え、影響度導出部は、異常度判定部において分析対象の測定データにおける観測変数が異常であると判定される場合に、影響度を導出する。
【0020】
かかる態様によれば、観測変数が異常の場合に影響度が導出される。
【0021】
他の態様に係る測定データ分析装置は、分析対象の測定データにおける測定点ごとの測定値の標準偏差を取得する標準偏差取得部を備え、影響度導出部は、分析対象の測定データの標準偏差が規定の閾値を超える場合に、影響度を導出する。
【0022】
かかる態様によれば、不良測定が実施される場合に影響度が導出される。
【0023】
他の態様に係る測定データ分析装置は、重み取得部は、正常範囲の測定データにおける観測変数に対して主成分分析を実施して得られる主成分軸を重みとして取得する。
【0024】
かかる態様によれば、一定の信頼性が確保される重みを導出し得る。
【0025】
他の態様に係る測定データ分析装置は、正常範囲の測定データにおける観測変数ごとの平均値及び観測変数ごとの重みの組を学習データとして記憶する学習データ記憶部を備え、観測変数取得部は、学習データ記憶部から正常範囲の測定データにおける測定点ごとの観測変数の値の平均値を取得し、重み取得部は、学習データ記憶部から観測変数ごとの重みを取得する。
【0026】
かかる態様によれば、測定対象の測定データの誤差要因分析に対して、予め学習データ記憶部に記憶される学習データを適用し得る。
【0027】
他の態様に係る測定データ分析装置は、学習データ記憶部へ記憶される学習データを更新する学習データ更新部を備える。
【0028】
かかる態様によれば、測定対象物の測定が実施される度に学習データが更新される。これにより、学習データの信頼性が向上し得る。
【0029】
他の態様に係る測定データ分析装置は、重みを導出する重み導出部を備える。
【0030】
かかる態様によれば、学習データを作成し得る。
【0031】
他の態様に係る測定データ分析装置は、影響度を表示する表示部を備える。
【0032】
かかる態様によれば、ユーザへ影響度が報知される。
【0033】
他の態様に係る測定データ分析装置は、観測変数は、プロービング速度、プロービング加速度、プロービング方向、プロービング位置、プロービング回数及び基準温度に対する温度変化の少なくともいずれかが含まれる。
【0034】
かかる態様によれば、プロービング速度、プロービング加速度、プロービング方向、プロービング位置、プロービング回数及び基準温度に対する温度変化の中から、誤差要因を特定し得る。
【0035】
本開示に係る測定データ分析方法は、測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得工程と、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される、観測変数ごとの重みを取得する重み取得工程と、分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得工程と、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出工程と、を含む測定データ分析方法である。
【0036】
本開示に係る測定データ分析方法によれば、本開示に係る測定データ分析装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定データ分析装置の構成要件は、他の態様に係る測定データ分析方法の構成要件へ適用し得る。
【0037】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得機能、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される、観測変数ごとの重みを取得する重み取得機能、分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を取得する
分析対象データ取得機能、及び正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出機能を実現させるプログラムである。
【0038】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係る測定データ分析装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定データ分析装置の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【0039】
本開示に係る三次元測定機は、測定対象物を測定する測定部と、測定対象物の測定データにおける誤差要因を分析する測定データ分析装置と、を備え、測定データ分析装置は、測定対象物の測定データの誤差要因に対応して規定される観測変数について、正常範囲の測定データにおける測定点ごとの測定値に対応する測定点ごとの観測変数の値の平均値である観測変数の平均値を取得する観測変数取得部と、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される、観測変数ごとの重みを取得する重み取得部と、分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得部と、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を適用して、分析対象の測定データにおける観測変数の影響の程度を表す影響度を導出する影響度導出部と、を備える三次元測定機である。
【0040】
本開示に係る三次元測定機によれば、本開示に係る測定データ分析装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定データ分析装置の構成要件は、他の態様に係る三次元測定機の構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値、正常範囲の測定データにおける観測変数から導出される重み及び分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を用いて、分析対象の測定データにおける観測変数の影響を表す影響度が算出される。これにより、分析対象の測定データにおける誤差要因に対して定量的な分析が実施され、かつ、分析対象の測定データにおける誤差要因を自動で特定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は学習ステップにおけるユーザとソフトウェアとの関係を表すシーケンス図である。
【
図6】
図6は学習ステップの概要を示すブロック図である。
【
図7】
図7は分析ステップにおけるユーザとソフトウェアとの関係を表すシーケンス図である。
【
図8】
図8は分析ステップの概要を示すブロック図である。
【
図9】
図9は学習ステップの遷移を示すアクティビティ図である。
【
図10】
図10は学習データの観測変数、観測変数の平均値及び標準偏差の具体例を示す説明図である。
【
図11】
図11は学習ステップの手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は主成分分析に適用される観測変数Xの具体例を示す表である。
【
図13】
図13は観測変数ごとの具体的な数値例を示す表である。
【
図14】
図14は分析ステップの手順の具体例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は観測変数の具体例を示す観測変数の説明図である。
【
図23】
図23は分析結果がパターン1の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。
【
図24】
図24は分析結果がパターン2の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。
【
図25】
図25は分析結果がパラメータ異常の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。
【
図26】
図26は分析結果がパターン4の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0044】
[三次元測定機の全体構成]
図1は実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。三次元測定機10は、ワークの三次元形状の測定及びワークに含まれる幾何要素の解析を実施する。なお、三次元測定機は、英語表記Coordinate Measuring Machineの省略語を用いてCMMと称されることがある。なお、実施形態に記載のワークは測定対象物の一例である。
【0045】
同図に示す三次元測定機10は、架台12、テーブル14、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、Xガイド18、Xキャリッジ20、Zキャリッジ22及びプローブヘッド24を備える。
【0046】
架台12はテーブル14の下面を支持する支持台である。テーブル14は定盤が適用される。テーブル14は、上面のX軸方向における一方の端部に右Yキャリッジ16Rが立設され、他方の端部に左Yキャリッジ16Lが立設される。
【0047】
テーブル14のX軸方向における両端部の上面及び側面は、Y軸方向に沿って右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lが摺動する摺動面が形成される。また、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備される。すなわち、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14を用いて、Y軸方向について移動自在に支持される。なお、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lに具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0048】
Xガイド18は、右Yキャリッジ16Rを用いてX軸方向の一方の端部が支持され、左Yキャリッジ16Lを用いてX軸方向の他方の端部が支持される。右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びXガイド18は門型フレーム26を構成する。門型フレーム26は、Y軸方向について移動自在に構成される。
【0049】
Xガイド18は、Xキャリッジ20が摺動する摺動面がX軸方向に沿って形成される。Xキャリッジ20は、Xガイド18の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備され
る。Xキャリッジ20は、Xガイド18を用いてX軸方向について移動自在に支持される。なお、Xガイド18の摺動面に対向する位置に具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0050】
Zキャリッジ22は、Xキャリッジ20を用いて、Z軸方向に沿って移動自在に支持される。Xキャリッジ20は、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングが具備される。なお、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングの図示を省略する。
【0051】
プローブヘッド24は、Zキャリッジ22の下端に取り付けられる。プローブヘッド24は、プローブ24Aを備える。プローブ24Aはスライタス24B及び接触子24Cを備える。プローブヘッド24は、プローブ24Aを無段階に位置決めし得る無段階位置決め機構を備える五軸同時制御プローブヘッドを適用し得る。
【0052】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を備える。X駆動部はX軸方向に沿ってXキャリッジ20を移動させる。Y駆動部はY軸方向に沿って門型フレーム26を移動させる。Z駆動部はZ軸方向に沿ってZキャリッジ22を移動させる。
【0053】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を適宜動作させて、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について、任意の位置へプローブヘッド24を移動させ得る。なお、
図1ではX駆動部、Y駆動部及びZ駆動部の図示を省略する。X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部は、駆動部28として
図2に図示する。
【0054】
三次元測定機10は、第一回転軸の回りにプローブ24Aを回転させる第一回転駆動部及び第一回転軸と直交する第二回転軸の回りにプローブ24Aを回転させる第二回転駆動部を備える。第一回転駆動部及び第二回転駆動部は、プローブ24Aの姿勢を任意に回転させ得る。なお、
図1では第一回転駆動部及び第二回転駆動部の図示を省略する。第一回転駆動部及び第二回転駆動部は、駆動部28として
図2に図示する。
【0055】
Xガイド18は、X軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はX軸方向位置検出ヘッドが具備される。X軸方向位置検出ヘッドは、X軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、X軸方向位置検出信号を出力する。
【0056】
テーブル14は、X軸方向における他方の端の側面にY軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、右Yキャリッジ16RはY軸方向位置検出ヘッドが具備される。Y軸方向位置検出ヘッドは、Y軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Y軸方向位置検出信号を出力する。
【0057】
Zキャリッジ22は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はZ軸方向位置検出ヘッドが具備される。Z軸方向位置検出ヘッドは、Z軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Z軸方向位置検出信号を出力する。
【0058】
プローブヘッド24は、プローブ24Aの回転角度を検出するエンコーダが具備される。プローブ24Aの回転角度は、X軸方向と平行の第一回転軸の回りを回転する際の第一回転方向における回転角度θ1及びZ軸方向と平行の第二回転軸の回りを回転する際の第二回転方向における回転角度θ2を適用し得る。
【0059】
プローブヘッド24は、プローブ24Aのワークへの接触を検出する接触センサを備える。接触センサは接触検出信号を出力する。すなわち、三次元測定機10は、接触子24Cのワークの任意のプロービング点への接触を検出した際に、X軸方向、Y軸方向及びZ
軸方向の位置検出信号を取得し、かつ、第一回転方向及び第二回転方向の回転角度検出信号を取得し、接触子24Cの座標値を導出し得る。なお、実施形態に記載のプロービング点は測定点の一例である。
【0060】
三次元測定機10は、コントローラ30及びコンピュータ40を備える。コントローラ30は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、第一回転駆動部及び第二回転駆動部へ制御信号を送信し、プローブ24Aの位置及び姿勢を制御する。
【0061】
コントローラ30は、ジョイスティック等のプローブ操作部を備える。プローブ操作部は、プローブヘッド24を手動操作する際に操作される。なお、
図1ではプローブ操作部の図示を省略する。プローブ操作部は符号32を付して
図2に図示する。
【0062】
コントローラ30は、通信インターフェースを備える。コントローラ30は、通信インターフェースを介して、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等と電気接続される。コントローラ30は、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等が出力する各種の検出信号を取得する。
【0063】
コントローラ30は、通信インターフェースを介して、コンピュータ40と通信可能に接続される。コントローラ30とコンピュータ40との通信プロトコルは、TCP/IPを適用し得る。なお、TCPはTransmission Control Protocolの省略語である。また、IPはInternet Protocolの省略語である。
【0064】
コントローラ30及びコンピュータ40は、三次元測定機10の測定制御装置として機能する。コンピュータ40は、三次元測定機10の各種の機能に対応する命令が含まれるソフトウェア80が記憶される。コンピュータ40は、ソフトウェア80の各種の命令を実行して、三次元測定機10の各種の機能を実現する。
【0065】
コンピュータ40は、測定データとしてワークのパラメータを取得し、取得したワークのパラメータを用いて、ワークの幾何要素判別を実施する。また、コンピュータ40は測定データを分析し、測定データの誤差要因を特定する誤差要因特定機能を実施する測定データ分析装置として機能する。なお、誤差要因特定機能の詳細は後述する。
【0066】
三次元測定機10は、ディスプレイ装置50及びコンピュータ操作部52を備える。ディスプレイ装置50は、コンピュータ40から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。
【0067】
コンピュータ操作部52は、キーボート及びマウス等が含まれる。コンピュータ操作部52はユーザが入力する各種の情報を表す信号をコンピュータ40へ送信する。コンピュータ40は、コンピュータ操作部52から送信される信号に基づき、各種の処理を実施する。ディスプレイ装置50はタッチパネル方式を適用して、操作部と一体に構成してもよい。なお、実施形態に記載のプローブヘッド24は測定部の一例である。
【0068】
[三次元測定機の電気的構成]
図2は
図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。コンピュータ40は、駆動制御部60を備える。ワークの自動測定が実施される場合に、駆動制御部60はコントローラ30へ指令信号を送信する。
【0069】
コントローラ30は、コンピュータ40から送信される指令信号に基づき駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、プローブヘッド24を回転させ、自動測定を実施する。
【0070】
ワークの手動測定が実施される場合に、コントローラ30はプローブ操作部32の操作に応じて駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、プローブヘッド24を回転させる。
【0071】
なお、
図2に示す駆動部28は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、第一回転駆動部及び第二回転駆動部が含まれる。また、キャリッジ29は、
図1に示すXキャリッジ20、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びZキャリッジ22が含まれる。
【0072】
コンピュータ40は、測定データ取得部62を備える。測定データ取得部62は、プローブヘッド24からワークの測定データを取得する。測定データは、プロービング点ごとの座標値等の測定値が含まれる。なお、実施形態に記載のプロービング点ごとの測定値は測定点ごとの測定値の一例である。
【0073】
コンピュータ40は、測定データ取得部62を適用して取得した測定データに基づき、測定要素の幾何要素判別を実施し得る。ここで、測定要素は、ワークを構成する面及びワークに含まれる穴等の構造など、幾何要素の判別対象となり得る測定対象である。ワーク自体の形状が測定要素となる場合もあり得る。
【0074】
ワークを構成する面の例として、平面及び曲面等が挙げられる。ワークの構造の例として、穴、溝、凹部及び凸部等が挙げられる。ワーク自体の形状の例として、球、円筒及び円錐等が挙げられる。
【0075】
コンピュータ40は、学習部64及び分析部65を備える。学習部64はワークを測定して得られる測定データに基づき、測定要素ごとの学習データを作成する。学習部64は、ワークの測定が実施される度に学習データを更新する。
【0076】
分析部65は、学習データを適用して分析対象の測定データを分析し、分析対象の測定データにおける誤差要因を特定する。分析部65は、測定要素ごとに誤差要因を特定し得る。分析部65は、誤差要因分析の結果として、観測変数ごとの誤差に対する影響の程度を示す影響度を導出し得る。なお、学習データの作成及び誤差要因分析の詳細は後述する。
【0077】
コンピュータ40は、入力情報取得部66を備える。入力情報取得部66は、コンピュータ操作部52から送信される入力情報を表す信号を取得する。コンピュータ40は、入力情報に基づき各種の制御を実施する。
【0078】
コンピュータ40は、表示制御部68を備える。表示制御部68は、ディスプレイ装置50へ表示信号を送信する。ディスプレイ装置50は、表示制御部68から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。なお、実施形態に記載のディスプレイ装置50及び表示制御部68は表示部の構成要素の一例である。
【0079】
駆動制御部60等の各種の制御部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを用いて構成される。各種の制御部は、一つのプロセッサが適用されてもよいし、複数のプロセッサが適用されてもよい。また、一つのプロセッサを適用して、複数の制御部が構成されてもよい。複数のプロセッサは、同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0080】
コンピュータ40は、メモリ81を備える。メモリ81は、プログラムメモリ82を備える。プログラムメモリ82は、三次元測定機10の各種の機能に対応する命令が含まれ
る各種のプログラムが記憶される。各種のプログラムは、
図1に示すソフトウェア80に相当する。
【0081】
メモリ81は、学習データ記憶部84及び分析結果記憶部86を備える。学習部64は、作成した学習データを学習データ記憶部84へ記憶する。分析部65は、導出した誤差要因分析の結果を分析結果記憶部86へ記憶する。
【0082】
メモリ81は、各種のプログラムを実行する際に適用される各種のパラメータが記憶されるパラメータ記憶部を備え得る。また、メモリ81は各種のデータが記憶されるデータ記憶部を備え得る。なお、パラメータ記憶部及びデータ記憶部の図示を省略する。
【0083】
メモリ81は、半導体記憶素子、磁気記憶素子及び光学記憶素子など有体物たるコンピュータ可読媒体を含んで構成される。メモリ81は、複数の記憶素子が含まれ得る。複数の記憶素子は、同一の種類でもよいし、異なる種類でもよい。
【0084】
例えば、メモリ81に含まれる各種の記憶部に対して、一つ又は二つ以上の記憶素子を適用し得る。二つ以上の記憶素子は、同一の種類の記憶素子であってもよいし、異なる種類の記憶素子であってもよい。
【0085】
また、二つ以上の記憶部に対して一つの記憶素子を適用してもよい。例えば、一つの記憶素子に二つ以上の領域を設定し、複数の記憶部のそれぞれに対して一つ以上の領域を適用し得る。
【0086】
[学習部の構成例]
図3は
図2に示す学習部の機能ブロック図である。学習部64は、観測変数導出部70を備える。観測変数導出部70は、ワークの測定が実施される度に得られる測定データから、測定要素ごとの一つ以上の観測変数を導出する。
【0087】
観測変数の例としては、プロービング速度、プロービング加速度及び温度変化等が挙げられる。観測変数は、ソフトウェア80の処理を適用して導出し得る情報及びセンサ等を用いて取得される情報など、ソフトウェア80が取り扱い可能な情報が適用される。
【0088】
一つの測定要素について複数のプロービング点が規定される場合、観測変数導出部70は、プロービング点ごとの観測変数の値及びプロービング点ごとの観測変数の値の平均値を導出し得る。なお、観測変数の詳細は後述する。ここで、平均値は、算術平均、相乗平均及び調和平均などを適用し得る。本実施形態では、平均値は算術平均が適用される。
【0089】
観測変数導出部70は、予め導出される観測変数及び観測変数の平均値を取得してもよい。なお、導出は演算が適用される算出の概念を含み得る。
【0090】
観測変数導出部70は、観測変数から観測変数の平均値を導出する観測変数平均値導出部として機能し得る。
【0091】
学習部64は、標準偏差導出部72を備える。標準偏差導出部72は、測定要素の測定が実施される度に得られるプロービング点ごとの測定値に基づき、測定要素ごとの測定値の標準偏差を導出する。標準偏差導出部72は、予め導出される標準偏差を取得してもよい。
【0092】
学習部64は、正常系データ抽出部74を備える。正常系データ抽出部74は、学習対象の測定データのうち、標準偏差が規定の閾値以下となる正常範囲の測定データである正
常系データを抽出する。規定の閾値は、
図2に示すコンピュータ操作部52を用いてユーザが設定し得る。
【0093】
学習部64は、主成分分析部76を備える。主成分分析部76は、正常系データにおける観測変数に対して主成分分析を実施し、観測変数ごとの主成分軸を導出する。観測変数ごとの主成分軸は、観測変数ごとの重みとして機能する。なお、実施形態に記載の主成分分析部76は重み導出部の一例である。
【0094】
学習部64は、学習データ登録部78を備える。学習データ登録部78は、学習データとして、測定要素ごとの主成分軸と観測変数ごとの観測変数平均値との組を学習データ記憶部84へ記憶する。
【0095】
学習データ登録部78は、既に主成分軸が記憶されている場合、既に記憶されている主成分軸と新たに導出される主成分軸との平均を導出し、新たな学習データとして主成分軸の平均を記憶する。なお、実施形態に記載の学習データ登録部78は学習データ更新部の一例である。
【0096】
[分析部の構成例]
図4は
図2に示す分析部の機能ブロック図である。分析部65は、学習データ取得部90を備える。学習データ取得部90は、
図3等に示す学習データ記憶部84から、学習データを取得する。なお、実施形態に記載の学習データ取得部90は観測変数取得部の一例及び重み取得部の一例である。
【0097】
分析部65は、分析対象データ取得部92を備える。分析対象データ取得部92は、
図2に示す測定データ取得部62を用いて取得される分析対象の測定データである分析対象データから、測定要素ごとの観測変数平均値及び測定要素ごとの測定値の標準偏差を取得する。なお、実施形態に記載の分析対象データ取得部92は標準偏差取得部の一例である。
【0098】
分析部65は、異常度導出部94を備える。異常度導出部94は学習データ及び分析対象データに基づき異常度を導出する。異常度は、正常系データの観測変数に対する分析対象データの観測変数の違いの程度を表す指標値である。
【0099】
分析部65は、異常度判定部96を備える。異常度判定部96は、異常度が規定の範囲内であるか否かを判定する。また、異常度判定部96は、分析対象データにおける測定値の標準偏差が規定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0100】
分析部65は、分析結果導出部98を備える。分析結果導出部98は異常度判定部96における判定結果ごとに分析結果を導出する。分析結果導出部98は、分析結果記憶部86へ分析結果を記憶する。例えば、分析結果導出部98は、分析対象データに対する観測変数ごとの影響度を導出する影響度導出部を備え得る。
【0101】
図2等に示すコンピュータ40は、分析部65を用いて導出される分析結果を、ディスプレイ装置50へ表示させる。ユーザは、ディスプレイ装置50へ表示される分析結果を視認し得る。
【0102】
[誤差要因特定機能の詳細な説明]
〔学習ステップ〕
図5は学習ステップにおけるユーザとソフトウェアとの関係を表すシーケンス図である。学習ステップS1は、測定データ収集工程S10及び学習データ作成工程S12が含ま
れる。
【0103】
測定データ収集工程S10では、
図3に示す学習部64は、
図1に示す三次元測定機10が用いられるワークの測定が実施される度に、測定要素ごとの測定データを収集する。
【0104】
学習データ作成工程S12では、学習部64は測定データ収集工程S10において収集される測定データ基づき学習データを生成する。学習部64は学習データ記憶部84へ学習データを記憶する。
【0105】
図6は学習ステップの概要を示すブロック図である。
図6には、N個のワークについて、測定要素Aの測定データが収集される例を示す。なお、Nは1以上の整数である。例えば、測定データ100は一番目のワークにおける測定要素Aの測定データである。
【0106】
測定データ102、測定データ104及び測定データ106は、それぞれ二番目のワークにおける測定要素Aの測定データ、三番目のワークにおける測定要素Aの測定データ及びN番目のワークにおける測定要素Aの測定データである。
【0107】
学習ステップS1には、測定データ100、測定データ102、測定データ104及び測定データ106のそれぞれに基づく、観測変数X及び測定値の標準偏差SDが適用される。
【0108】
図6に示す学習ステップS1では、測定要素Aについて学習が実施され、測定要素Aの学習データ110Aが作成される。学習部64は、測定要素Aの学習データ110Aを学習データ記憶部84へ記憶する。
【0109】
図6には、測定要素Aの学習データ110A、測定要素Bの学習データ110B及び測定要素Cの学習データ110Cを含む複数の学習データ110が記憶される学習データ記憶部84を図示する。学習データ110A、学習データ110B及び学習データ110Cは、観測変数Xごとの観測変数平均値と、観測変数Xごとの主成分軸との組が含まれる。
【0110】
〔分析ステップ〕
図7は分析ステップにおけるユーザとソフトウェアとの関係を表すシーケンス図である。分析ステップS2は、解析対象測定工程S20及び解析対象データ出力工程S22が含まれる。
【0111】
解析対象測定工程S20では、ユーザは
図1に示す三次元測定機10を用いてワークの測定を実施する。解析対象データ出力工程S22では、三次元測定機10はワークの測定データを出力する。
【0112】
分析ステップS2は、解析対象データ判定工程S24、誤差要因分析工程S26、分析結果導出工程S28、影響度算出工程S30及び誤差要因認識工程S32が含まれる。解析対象データ判定工程S24では、解析対象データ出力工程S22において出力されるデータに基づき、ワークの測定が良好であるか不良であるかが判定される。
【0113】
解析対象データ判定工程S24において、ワークの測定が不良である旨の判定結果が得られる場合は、誤差要因分析工程S26へ進み、解析対象データ出力工程S22において出力される測定データを解析対象データとして、解析対象データの誤差要因分析が実行され、分析結果導出工程S28において誤差要因分析の結果が導出される。
【0114】
影響度算出工程S30では、観測変数ごとの影響度が算出される。観測変数ごとの影響
度は、
図1等に示すディスプレイ装置50へ表示される。誤差要因認識工程S32では、ディスプレイ装置50へ表示される観測変数ごとの影響度を視認したユーザが、誤差の原因となり得る観測変数を判断し得る。
図7には、プロービング速度が誤差の主たる原因である例を示す。
【0115】
図8は分析ステップの概要を示すブロック図である。分析ステップS2では、
図4に示す分析部65は、
図7に示す解析対象測定工程S20及び解析対象データ出力工程S22において取得した分析対象データ120及び学習データ110を用いて、誤差要因分析工程S26及び分析結果導出工程S28を実行して、分析結果122を導出する。
【0116】
図8には、分析対象データ120として、測定要素Aの観測変数X及び測定値の標準偏差SDを適用し、かつ、学習データ110として、測定要素Aの学習データ110Aを適用して、分析ステップS2を実行する例を図示する。
【0117】
このようにして、
図5に示す学習ステップS1及び
図7に示す分析ステップS2を組み合わせて、より実態に即した誤差要因と標準偏差との相関関係を学習でき、かつ、学習データを用いる定量的な誤差要因の分析及び誤差要因の特定を実現し得る。
【0118】
[学習ステップの詳細な説明]
図9は学習ステップの遷移を示すアクティビティ図である。
図9には、学習ステップS1の例として、測定データ100に基づく学習データ1101の作成の後に、測定データ102に基づき学習データ1101を学習データ1102へ更新する遷移を模式的に図示する。
【0119】
図9に示す、測定データ100における測定要素Aの誤差要因140及び測定データ102における測定要素Aの誤差要因140のうち、ソフトウェア80が検知可能な誤差要因142が観測変数Xとして定義される。観測変数Xは測定要素ごとに定義される。
【0120】
図9には、観測変数X
1、観測変数X
2及び観測変数
Mを含むM種類の観測変数Xを例示する。以下、iを1からMまでの正の整数として、任意の観測変数をX
iと記載する。
【0121】
測定データ100について、観測変数X1から観測変数XMまでのM種類の観測変数Xと標準偏差SD100との組を用いて学習ステップS1が実行され、学習データ1101が導出される。また、測定データ102について、観測変数X1から観測変数XMまでのM種類の観測変数Xと標準偏差SD102との組を用いて学習ステップS1が実行され、学習データ1101が学習データ1102へ更新される。
【0122】
なお、標準偏差SD100は測定データ100における標準偏差SDを表す。同様に、標準偏差SD102は測定データ102における標準偏差SDを表す。
【0123】
図10は学習データの観測変数、観測変数の平均値及び標準偏差の具体例を示す説明図である。同図に示す観測変数一覧表160には、任意の学習データにおける、観測変数X
iごとの数値例及び観測変数の平均値X
iAveの数値例を図示する。
【0124】
また、標準偏差一覧表162には、学習データにおける測定要素ごとの標準偏差SDの具体例であり、測定要素Aを測定して得られる測定値の標準偏差SDの数値例を示す。
【0125】
図11は学習ステップの手順の具体例を示すフローチャートである。測定工程S50では、ユーザは
図1に示す三次元測定機10を適用して、ワークの測定を実施する。測定工程S50の後に測定データ取得工程S52へ進む。
【0126】
測定データ取得工程S52では、
図3に示す学習部64は、測定工程S50において得られる測定データとして、測定要素ごとの観測変数Xと標準偏差SDとの組のデータを取得する。測定データ取得工程S52の後に正常系データ抽出工程S54へ進む。
【0127】
正常系データ抽出工程S54では、正常系データ抽出部74は、標準偏差SDが規定の閾値α以下となる、観測変数Xと標準偏差SDとの組のデータを正常系データとして抽出する。正常系データ抽出工程S54の後に主成分分析工程S56へ進む。
【0128】
主成分分析工程S56では、主成分分析部76は、任意の主成分分析プログラムを適用して、正常系データの観測変数Xに対する主成分分析を実行する。主成分分析工程S56の後に主成分軸取得工程S58へ進む。なお、主成分軸取得工程S58は主成分分析工程S56の工程として実行されてもよい。
【0129】
以下に、主成分分析工程S56及び主成分軸取得工程S58における、具体的な処理の例を示す。
図12は主成分分析に適用される観測変数Xの具体例を示す表である。
図12に示す観測変数X
1、観測変数X
2、観測変数X
3、観測変数X
4及び観測変数X
5のそれぞれは、プロービング速度、プロービング加速度、プロービング方向、プロービング位置及び温度変化と定義される。
【0130】
プロービング速度は、プロービング点をプロービングする際の接触子24Cの速度であり、単位はミリメートル毎秒が適用される。プロービング加速度は、プロービング点をプロービングする際の接触子24Cの加速度であり、単位はミリメートル毎平方秒が適用される。
【0131】
プロービング方向は、プロービング点をプロービングする際の理想的なプロービング方向とのずれであり、単位はラジアンが適用される。プロービング位置は、プロービング点をプロービングする際の理想的なプロービング位置とのずれであり、単位はミリメートルが適用される。温度変化は、プロービング点をプロービングする際の基準温度からのずれであり、単位は℃が適用される。なお、基準温度は20℃が適用される。
【0132】
図13は観測変数ごとの具体的な数値例を示す表である。
図11に示す主成分分析工程S56では、
図13に示す観測変数X
iごとに標準化処理が実施される。標準化処理では、観測変数X
iの値から観測変数の平均値が減算され、減算値が観測変数X
iの値の標準偏差で除算される。そうすると、観測変数X
iの全てについて、観測変数X
iのそれぞれの値が-1から1までの値へ変換される。
【0133】
標準化処理の後に、共分散行列が作成される。共分散行列は公知の手法を適用して作成される。ここでは、共分散行列の作成の説明を省略する。
【0134】
図11に示す主成分軸取得工程S58では、共分散行列に基づく観測変数X
iのそれぞれについて固有ベクトル及び固有値が算出される。観測変数X
iのそれぞれに対応する固有ベクトルが主成分軸に対応し、固有ベクトルごとの固有値の大きさが観測変数X
iごとの重みに対応する。主成分軸取得工程S58の後に学習データ記憶判定工程S60へ進む。
【0135】
学習データ記憶判定工程S60では、学習データ登録部78は学習データ記憶部84に学習データが記憶されているか否かを判定する。学習データ記憶判定工程S60において、学習データ登録部78が学習データ記憶部84に学習データが記憶されていないと判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は学習データ新規登録工程S62へ進む。
【0136】
学習データ新規登録工程S62では、学習データ登録部78は主成分軸取得工程S58において取得される観測変数Xiごとの主成分軸を重みaiとして、学習データ記憶部84へ新規に登録する。
【0137】
一方、学習データ記憶判定工程S60において、学習データ登録部78が登録済の学習データが記憶されていると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は学習データ更新登録工程S64へ進む。
【0138】
学習データ更新登録工程S64では、学習データ登録部78は既に登録されている重みaiと新たに取得される重みaiとの平均を更新登録する。学習データ新規登録工程S62又は学習データ更新登録工程S64において、学習データが記憶された後に学習ステップS1は終了される。
【0139】
図11に示す測定工程S50及び測定データ取得工程S52は、
図5に示す測定データ収集工程S10に対応する。また、
図11に測定データ取得工程S52から学習データ更新登録工程S64までは、
図5に示す学習データ作成工程S12に対応する。
【0140】
[分析ステップの詳細な説明]
図14は分析ステップの手順の具体例を示すフローチャートである。分析開始工程S100では、
図4に示す分析対象データ取得部92を用いて取得される分析対象データの分析を開始する。分析開始工程S100は、分析対象データの取得及び取得される分析対象データに対する分析要否の判断が含まれる。分析開始工程S100の後に学習データ取得工程S102へ進む。なお、分析開始工程S100は分析対象データ取得工程の一例である。
【0141】
学習データ取得工程S102では、学習データ取得部90は学習データ記憶部84に学習データが存在するか否かを判定する。学習データ取得工程S102において、学習データ取得部90が学習データは存在しないと判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は、分析不可報知工程S104へ進む。
【0142】
分析不可報知工程S104では、学習データ取得部90は学習データが存在せず、分析不可である旨を報知し、分析部65は分析ステップS2を終了させる。分析不可報知工程S104において、
図1に示すディスプレイ装置50へ分析不可である旨の情報を表示させてもよい。
【0143】
一方、学習データ取得工程S102において、学習データ取得部90が学習データは存在すると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、学習データ取得部90が学習データを取得した後に主成分得点導出工程S106へ進む。なお、実施形態に記載の学習データ取得工程S102は観測変数取得工程の一例である。学習データ取得工程S102は重み取得工程の一例である。
【0144】
主成分得点導出工程S106では、異常度導出部94は学習データの主成分得点及び分析対象データの主成分得点を導出する。学習データにおける観測変数Xiごとの平均値XiAve及び観測変数Xiごとの重みaiを用いて、学習データの主成分得点は、式1を用いて表される。
【0145】
(a1×X1Ave)+(a2×X2Ave)+…+(aM×XMAve) …式1
また、分析対象データにおける観測変数Xiごとの平均値YiAve及び観測変数Xiごとの重みaiを用いて、分析対象データの主成分得点は、式2を用いて表される。
【0146】
(a1×Y1Ave)+(a2×Y2Ave)+…+(aM×YMAve) …式2
主成分得点導出工程S106の後に異常度導出工程S108へ進む。
【0147】
異常度導出工程S108では、異常度導出部94は、学習データの主成分得点である正常データの主成分得点に対する分析対象データの主成分得点の比を、異常度として導出する。異常度は式3を用いて表される。
【0148】
{(a1×Y1Ave)+(a2×Y2Ave)+…+(aM×YMAve)}/{(a1×X1Ave)+(a2×X2Ave)+…+(aM×XMAve)} …式3
式3に示す異常度は、学習データの観測変数Xiの平均値XiAveと分析対象データの観測変数Xiごとの平均値YiAveとの違いの程度を表す指標値である。換言すると、式3に示す異常度は、学習データの主成分得点に対する分析対象データの主成分得点の差異(比)を表す。異常度導出工程S108の後に異常度判定工程S110へ進む。
【0149】
異常度判定工程S110では、異常度判定部96は分析対象データの全ての観測変数Xiが、学習データの観測変数Xiからプラスマイナス2.5パーセントの誤差に収まっているか否かを判定する。
【0150】
図15は異常度判定条件の説明図である。同図に示す異常度判定条件一覧表220には、判定条件と判定結果の関係を示す。学習データの主成分得点に対する分析対象データの主成分得点の差異が、プラスマイナス2.5パーセントに収まっている場合は、分析対象データの全ての観測変数X
iは異常なしと判定される。
【0151】
一方、学習データの主成分得点に対する分析対象データの主成分得点の差異が、プラスマイナス2.5パーセントに収まっていない場合は、分析対象データの観測変数Xiに異常があると判定される。
【0152】
図14に示す異常度判定工程S110において、異常度判定部96が異常度の値は0.975未満であるか又は異常度の値は1.025を超えると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は不良測定標準偏差判定工程S112へ進む。
【0153】
一方、異常度判定工程S110において、異常度判定部96が異常度の値は0.975以上1.025以下であると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は良好標準偏差判定工程S114へ進む。
【0154】
不良測定標準偏差判定工程S112及び良好標準偏差判定工程S114において判定処理が実施され、分析結果導出工程S116へ進む。分析結果導出工程S116において、分析結果導出部98は判定結果に応じた分析結果を導出する。
【0155】
不良測定標準偏差判定工程S112では、異常度判定部96は分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値以下であるか否かに応じて、良好な測定が実施されたか又は不良測定が実施されたかを判定する。
【0156】
図16は測定良否判定条件の説明図である。同図に示す測定良否判定条件一覧表230には、判定条件と判定結果の関係を示す。分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値以下の場合は、良好測定が実施されたと判定される。一方、分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値を超える場合は、不良測定が実施されたと判定される。
【0157】
図14に示す不良測定標準偏差判定工程S112において、異常度判定部96が分析対
象データの標準偏差SDが規定の閾値以下と判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は、分析結果導出工程116において分析結果200が導出される。
【0158】
分析結果200は、分析対象データの観測変数Xiに異常があり、かつ、良好測定が実施されたことを表す。分析結果200が導出される場合は、ソフトウェアが検知不可能な誤差要因を含む複数の誤差要因が、測定データへ与える影響を互いに打ち消しあう旨の誤差要因分析結果が導出される。
【0159】
一方、不良測定標準偏差判定工程S112において、異常度判定部96が分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値を超えると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、分析結果導出工程116において分析結果202が導出される。
【0160】
分析結果202は、分析対象データの観測変数Xiに異常があり、かつ、不良測定が実施されたことを表す。分析結果202が導出される場合は、ソフトウェアが検知可能な誤差要因が、測定データへ影響を及ぼす旨の誤差要因分析結果が導出される。
【0161】
良好標準偏差判定工程S114では、異常度判定部96は分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値以下であるか否かに応じて、良好測定が実施されたか又は不良測定が実施されたかを判定する。
【0162】
良好標準偏差判定工程S114には、
図16に示す測定良否判定条件一覧表230に示す測定良否判定条件が適用される。なお、良好標準偏差判定工程S114では、不良測定標準偏差判定工程S112に適用される閾値と同一の閾値を適用しもよいし、異なる閾値を適用してもよい。
【0163】
図14に示す良好標準偏差判定工程S114において、異常度判定部96が分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値以下であると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は、分析結果導出工程116において分析結果204が導出される。
【0164】
分析結果204は、分析対象データの観測変数Xiに異常がなく、かつ、良好な測定が実施されたことを表す。分析結果204が導出される場合は、誤差要因が排除され、良好な測定が実施されている旨の誤差要因分析結果が導出される。
【0165】
一方、良好標準偏差判定工程S114において、異常度判定部96が分析対象データの標準偏差SDが規定の閾値を超えると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、分析結果導出工程116において分析結果206が導出される。
【0166】
分析結果206は、分析対象データの観測変数Xiに異常がなく、かつ、不良測定が実施されたことを表す。分析結果206が導出される場合は、ソフトウェアが検知不可能な誤差要因が、測定データへ影響を及ぼす旨の誤差要因分析結果が導出される。
【0167】
分析結果導出工程116の後に影響度導出工程S118へ進む。影響度導出工程S118では、分析結果導出部98は、分析対象データにおける観測変数Xiごとの、測定誤差に対する影響度を導出する。
【0168】
学習データにおける観測変数Xiごとの平均値XiAve、分析対象データにおける観測変数Xiごとの平均値YiAve及び観測変数Xiごとの重みaiを用いて、影響度は式4を用いて表される。なお、影響度の単位はパーセントである。
【0169】
[ai×(Xi-Yi)]/Σi=1
M{ai×(Xi-Yi)}×100 …式4
影響度導出工程S118において導出される影響度は、分析結果記憶部86へ記憶される。分析部65は、影響度を含む誤差要因分析の結果をディスプレイ装置50へ表示させる。
【0170】
影響度導出工程S118では、分析結果導出工程116において、分析結果202が導出される際に影響度を導出し、分析結果200、分析結果204及び分析結果206が導出される場合は影響度を導出しない態様を適用し得る。なお、
図14に示す分析工程の手順は測定データ分析方法の手順の一例である。
【0171】
図17は影響度の報知例を示す説明図である。影響度の報知の一例として、ディスプレイ装置50へ表示が挙げられる。同図には、円グラフが適用され、観測変数X
1、観測変数X
2及び観測変数X
5のそれぞれの影響度が報知される例を示す。
【0172】
図17に示す円グラフ240は、観測変数X
1の影響度、観測変数X
2の影響度及び観測変数X
5のそれぞれの影響度の相対的な関係が一目で把握し得る。また、円グラフ240は観測変数X
1、観測変数X
2及び観測変数X
5のそれぞれの影響度の値が含まれるので、観測変数X
1、観測変数X
2及び観測変数X
5の影響度の値が一目で把握し得る。
【0173】
以上説明した実施形態に係る誤差要因分析方法は、分析ステップS2において、ワークの測定結果に対する定量的な分析が実施され、観測変数Xiごとの影響度が算出される。また、観測変数Xiごとの影響度に基づき、ワークの測定結果に対する誤差要因の自動特定が可能である。
【0174】
[観測変数の具体例]
図18は観測変数の具体例を示す観測変数の説明図である。
図18には、観測変数Xとして、プロービング速度、プロービング加速度、プロービング方向、プロービング位置、温度変化及びプロービング回数を例示する。なお、
図18に示す1から6までの観測変数Xの識別番号は任意の数値である。
【0175】
観測変数Xは、測定要素に応じて追加及び削除等の変更が可能である。測定要素ごとに規定される観測変数Xは一つ以上であればよい。観測変数Xの追加及び削除などの観測変数Xの変更は、
図1に示すコンピュータ操作部52を用いてユーザが実施し得る。
【0176】
[誤差要因分析における画面遷移]
次に、誤差要因分析が実施される際に、ディスプレイ装置50へ表示される画面の遷移について説明する。以下の説明におけるボタンの選択は、ボタンのクリック等の操作を意味する。
【0177】
〔測定結果表示画面〕
図19は測定結果表示画面の説明図である。同図に示す測定結果表示画面300は、ワークにおける任意のプロービング点がプロービングされた際に、ディスプレイ装置50へ表示される。測定結果表示画面300は、プロービングの進行に応じて遷移する。
【0178】
測定結果表示画面300など、ディスプレイ装置50に表示される各種の画面は、測定結果表示領域302、ファンクションボタン表示領域304、文字情報表示領域306、測定条件表示領域308及び座標値表示領域310が含まれ得る。各種の画面において、ファンクションボタン表示領域304等は、適宜非表示としてもよい。
【0179】
測定結果表示領域302は、測定結果等の各種の情報が表示される。ファンクションボタン表示領域304は、複数のファンクションボタン312が含まれる。複数のファンク
ションボタン312のそれぞれは、校正の実施及び自動測定実施等の機能が割り付けられている。なお、ファンクションボタンを表す符号312は任意のボタンに付されている。
【0180】
文字情報表示領域306は、測定モード及びプロービング点数等の情報を表す文字情報309が表示される。測定条件表示領域308は各種の測定条件が表示される。座標値表示領域310は、
図1に示す接触子24Cの座標値がリアルタイムに表示される。
【0181】
図19に示す測定結果表示画面300における測定結果表示領域302は、一覧表形式が適用され、測定要素として円が測定された場合の各種のパラメータが含まれる測定結果320が表示される。
【0182】
〔機能選択画面〕
図20は機能選択画面の説明図である。同図に示す機能選択画面330は、ファンクションボタン表示領域304及び機能選択ボタン表示領域332を有する。機能選択ボタン表示領域332は、各種の機能に対応する複数の機能選択ボタン334が表示される。
【0183】
誤差要因分析を実施する場合、ユーザは誤差要因分析ボタン334Aを選択する。
図1に示すコンピュータ40は、誤差要因分析ボタン334Aの選択に応じて、誤差要因分析の各種の命令が含まれるプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行する。
【0184】
〔分析対象選択画面〕
図21は分析対象選択画面の説明図である。同図に示す分析対象選択画面340は、分析対象表示領域342、オーケーボタン344及びキャンセルボタン346が表示される。分析対象表示領域342は、分析対象の候補となる測定要素が表示される。同図には、一覧表形式が適用され、分析対象の候補として複数の円が表示される分析対象候補一覧348が表示される例を示す。
【0185】
図21には、分析対象候補一覧348において、円3が選択される場合を示す。オーケーボタン344が選択される場合は、分析対象として円3が確定する。一方、キャンセルボタン346が選択される場合は、円3の選択がキャンセルされ、分析対象の候補の中から一つを選択し得る。
【0186】
〔分析結果表示画面〕
図22は分析結果表示画面の説明図である。同図に示す分析結果表示画面350は、分析結果表示領域352を有する。分析結果表示領域352は、分析結果354が表示される。同図に示す分析結果354は、第一情報356、第二情報358及び第三情報360が含まれる。
【0187】
第一情報356は、分析対象を表す文字情報及び分析結果の分類を表す文字情報が含まれる。第二情報358は影響度を表す円グラフ及び影響度の値が含まれる。第三情報360は分析結果に対して取り得るアクションを意味するヒントを表す文字情報が含まれる。
【0188】
図22に示す分析結果表示画面350は、分類結果がパターンの3の場合に表示される。パターン3は、
図14に示す分析結果202に対応する。
【0189】
図23は分析結果がパターン1の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。同図に示す分析結果表示画面350Aは、分析結果の分類がパターン1の場合に表示される。パターン1は、
図14に示す分析結果206に対応する。
【0190】
分析結果表示画面350Aの第一情報356A及び第三情報360Aは、分析結果に応
じた内容を表す文字情報が適用される。第二情報358Aは、観測変数Xiの一覧表が含まれる。
【0191】
分析結果表示画面350Aが表示される場合は、観測変数Xに異常はないが、測定が不良であるとユーザは認識し得る。分析結果表示画面350Aは、観測変数Xiの一覧表が表示され、測定が良好でない原因の切り分けが補助される。これにより、ユーザは誤差要因に対して効率よく対策を実施し得る。
【0192】
図24は分析結果がパターン2の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。同図に示す分析結果表示画面350Bは、分析結果の分類がパターン2の場合に表示される。パターン2は、
図14に示す分析結果204に対応する。
【0193】
分析結果表示画面350Bの第一情報356B及び第三情報360Bは、分析結果に応じた内容を表す文字情報が適用される。第二情報358Bは、観測変数Xiの一覧表が含まれる。
【0194】
分析結果表示画面350Bが表示される場合は、観測変数Xに異常はなく、測定が良好であるとユーザは認識し得る。分析結果表示画面350Bは、観測変数Xiの一覧表が表示され、測定のフィードバックが補助される。これにより、ユーザは良好測定が実施される観測変数を認識し得る。
【0195】
図25は分析結果がパラメータ異常の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。同図に示す分析結果表示画面350Cは、
図22に示す分析結果表示画面350の他の態様である。
【0196】
図25に示す分析結果表示画面350Cは、
図22に示す分析結果の分類を表す文字情報に代わり、分類結果の内容を表す文字情報を含む第一情報356Cが表示される。
図25に示す第二情報358Cは、
図22に示す第二情報358と同一であり、
図25に示す第三情報360Cは、
図22に示す第三情報360と同一である。
【0197】
分析結果表示画面350Cが表示される場合は、観測変数Xに異常があり、測定が不良であるとユーザは認識し得る。分析結果表示画面350Cは、影響度を表す円グラフ及び影響度の値が表示され、ユーザは排除すべき誤差要因を認識し得る。これにより、ユーザは分析結果に基づく測定に対するフィードバックを実施し得る。
【0198】
図26は分析結果がパターン4の場合の分析結果表示画面を示す説明図である。同図に示す分析結果表示画面350Dは、分析結果の分類がパターン4の場合に表示される。パターン4は、
図14に示す分析結果200に対応する。
【0199】
分析結果表示画面350Dの第一情報356D及び第三情報360Dは、分析結果に応じた内容を表す文字情報が適用される。第二情報358Dは、観測変数Xiの一覧表、影響度を表す円グラフ及び影響度の値が含まれる。
【0200】
分析結果表示画面350Dが表示される場合は、観測変数Xに異常があるが、測定が良好であるとユーザは認識し得る。分析結果表示画面350Dは、観測変数Xiの一覧表、影響度を表す円グラフが表示され、観測変数Xの異常原因の切り分けが補助される。これにより、ユーザは観測変数Xの異常に対して効率よく対策を実施し得る。
【0201】
[実施形態に係る誤差要因分析の作用効果]
実施形態に係る三次元測定機10に適用される誤差要因分析は、以下の作用効果を得る
ことが可能である。
【0202】
〔1〕
ワークの測定データの誤差要因であり、ソフトウェアが検知可能な誤差要因に対応する観測変数Xが測定要素ごとに規定される。正常系データの観測変数Xに基づき、観測変数Xiごとの平均値XiAveが導出され、かつ、観測変数Xiごとの重みaiが導出され、これらを含む学習データが作成される。学習データ及び分析対象データを用いて、分析対象データにおける観測変数Xiごとの分析対象データへの影響度が導出される。これにより、分析対象データの定量的な分析に基づき、誤差要因を特定し得る。
【0203】
〔2〕
測定要素ごとに複数の観測変数Xiが規定される。これにより、複数の誤差要因について誤差要因の分析を実施し得る。
【0204】
〔3〕
観測変数Xiごとの重みaiは、正常系データの観測変数Xに対して主成分分析を実施して得られる、観測変数Xiのそれぞれに対応する主成分軸が適用される。これにより、観測変数Xiごとの正常系データへの寄与率に応じた観測変数Xiごとの重みaiが導出される。
【0205】
〔4〕
分析対象データの異常度に応じて、観測変数Xiが正常であるか又は異常であるかが判定される。分析対象データの標準偏差SDに応じて、良好測定であるか又は不良測定であるかが判定される。これにより、分析結果を分類し得る。
【0206】
〔5〕
分析対象データの観測変数Xiのそれぞれについて影響度が導出される。これにより、ソフトウェアが検知可能な誤差要因が、分析対象データに対して影響を及ぼす旨の判断をし得る。観測変数Xiごとの影響度は、観測変数Xiが異常であり、分析対象データの測定が不良測定の場合に導出されればよい。
【0207】
〔6〕
ディスプレイ装置50へ誤差要因分析の結果が表示される。誤差要因分析の結果が表示される分析結果表示画面350は、観測変数Xiごとの影響度の相対的な関係を示す円グラフが表示される。これにより、観測変数Xiごとの分析対象データへの影響の程度を、ユーザが把握し得る。
【0208】
〔7〕
分析結果表示画面350は、分析結果に対して取り得るアクションを表す文字情報が含まれる。これにより、分析結果への対応を補助し得る。
【0209】
[誤差要因分析装置への適用例]
図1から
図4を用いて説明したコンピュータ40は、三次元測定機等の形状測定装置から測定データを取得し、測定データの誤差要因を分析する誤差要因分析装置として機能し得る。また、ディスプレイ装置50は誤差要因分析における各種の情報が表示される表示装置として機能し得る。
【0210】
誤差要因分析装置は、
図3に示す学習部64が分離される態様を適用し得る。すなわち、誤差要因分析装置は、外部装置において作成される学習テータを取得し、形状測定装置から測定データを取得し、測定データの誤差要因を分析する態様を適用し得る。
【0211】
なお、実施形態に記載の誤差要因分析装置は測定データ分析装置の一例であり、実施形態のコンピュータ40は測定データ分析装置の構成要素の一例である。
【0212】
[プログラムへの適用例]
図4に示す分析部65は、各種の機能に対応する命令をコンピュータに実現させるプログラムを適用し得る。かかるプログラムは、
図3に示す学習部64の各種の機能に対応する命令が含まれていてもよい。かかるプログラムの記憶は、非一時的記憶媒体を適用し得る。
【0213】
学習部64の各種の機能の例として、正常範囲の測定データにおける観測変数の平均値を取得する観測変数取得機能、観測変数ごとの重みを取得する重み取得機能、分析対象の測定データにおける観測変数の平均値を取得する分析対象データ取得機能及び影響度を導出する影響度導出機能が挙げられる。
【0214】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要素を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0215】
10…三次元測定機、40…コンピュータ、50…ディスプレイ装置、62…測定データ取得部、64…学習部、65…分析部、66…入力情報取得部、68…表示制御部、70…観測変数導出部、72…標準偏差導出部、76…主成分分析部、78…学習データ登録部、80…ソフトウェア、81…メモリ、82…プログラムメモリ、84…学習データ記憶部、85…分析結果記憶部、90…学習データ取得部、92…分析対象データ取得部、94…異常度導出部、96…異常度判定部、98…分析結果導出部