(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】ウェーハチャック及びウェーハ保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2022186989
(22)【出願日】2022-11-24
(62)【分割の表示】P 2019005257の分割
【原出願日】2019-01-16
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】石本 隆
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-124844(JP,A)
【文献】特開2008-78424(JP,A)
【文献】特開2014-11378(JP,A)
【文献】特開2013-191781(JP,A)
【文献】特開昭63-312035(JP,A)
【文献】特開2005-205507(JP,A)
【文献】特開昭61-33831(JP,A)
【文献】特開平9-66429(JP,A)
【文献】特開2011-159655(JP,A)
【文献】特開平7-302832(JP,A)
【文献】特開2012-135838(JP,A)
【文献】特開2016-225337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料で形成され且つウェーハを保持する保持面を有する吸着板と、
前記吸着板の前記保持面とは反対面側が接合される接合面であって且つ複数の第1溝が形成された接合面を有するベース部材と、
前記ベース部材の内部に形成されたエア流路であって、前記第1溝と吸引源とを連通するエア流路と、
前記接合面の外周部に形成され且つ前記吸着板の外周面に外嵌された環状の外嵌枠と、
前記外嵌枠に形成され、一端が前記保持面
と同一平面上で且つ、前記吸着板の外周面よりも外側の位置で開口し、他端が
前記エア流路を介して前記吸引源に連通している第1抜け穴と、
を備えるウェーハチャック。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハチャックと、
吸引源と、
前記エア流路と前記吸引源とを接続する接続路と、
前記接続路の途中に設けられた圧力センサ又は流量センサと、
前記圧力センサ又は前記流量センサの検出結果に基づき、前記保持面による前記ウェーハの保持の有無を判定する判定部と、
を備えるウェーハ保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを保持するウェーハチャック及びウェーハ保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ(以下、ウェーハという)の表面には、同一の電気素子回路を有する複数の半導体チップが形成されている。各半導体チップは、ダイシング装置で個々に切断されるダイシング加工の前後において、プローバ及びテスタにより電気的特性が検査(ウェーハテスト)される。
【0003】
プローバは、ウェーハがマウント(固定)されているダイシングフレームをウェーハチャック上に保持した状態で、プローブ針を有するプローブカードとウェーハチャックとを相対移動させることにより、半導体チップの電極パッドにプローブ針を電気的に接触させる。テスタは、プローブ針に接続された端子を介して、半導体チップの電極パッドに各種の試験信号を供給すると共に、半導体チップの電極パッドから出力される信号を受信及び解析して半導体チップが正常に動作するか否かをテストする。
【0004】
プローバで用いられるウェーハチャックとして、ポーラス板(吸着板)とベース部材とにより構成されるものが良く知られている(特許文献1及び2参照)。ポーラス板は、多孔質状の金属材料及びセラミック材料、すなわち多孔質材料で形成されており、ダイシングフレームを保持する保持面を有している。
【0005】
ベース部材は、ポーラス板の保持面とは反対面が接合する接合面と、接合面上に同心円状に形成された複数の溝と、ベース部材の内部に形成されたエア流路と、を有する。エア流路は、その一端側が接続路を介して真空源(吸引源)に接続され且つその他端側が接合面上の溝に連通している。このため、ウェーハチャックは、真空源の吸引力を利用してポーラス板の保持面にダイシングフレームを吸着保持する。
【0006】
このようなウェーハチャックでは、上述の接続路の途中に配置されたバキュームセンサ(圧力センサ)を用いて、保持面上でのダイシングフレームの保持の有無(吸着又は空吸着)の判定を行っている。具体的には、バキュームセンサで検出された圧力値が予め定められた閾値をよりも大きくなるか否かに基づき、保持面上でのダイシングフレームの保持の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許3670200号公報
【文献】特開2008-254132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ウェーハチャックの保持面上にダイシングフレームを保持させる場合に、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のようにウェーハの種類によってはウェーハに対して力が加わることを避ける必要がある。この場合には、保持面によるダイシングフレームの吸着力を分散させるため、ポーラス板の多孔質の目を細かくする必要がある。例えば、ポーラス板で使用される多孔質材料の細孔径は、平均25μmであるが目の細かいものでは1μm以下となる。
【0009】
このような目の細かいポーラス板を用いると、保持面上にダイシングフレームが保持されている場合のバキュームセンサの圧力値と、保持面上にダイシングフレームが保持されていない場合のバキュームセンサの圧力値との差が小さくなる。その結果、保持面上でのダイシングフレームの保持の有無の判定を誤認するおそれがある。
【0010】
そこで、例えばポーラス板にダイシングフレームの保持の有無を検出する検出センサを設ける方法が考えられるが、その分だけコストが上昇してしまう。また、ウェーハチャックは、その温度を調整するヒータを内蔵している場合があり、この場合にはウェーハチャック(ポーラス板)の温度が150°Cになる。このため、検出センサとして耐熱仕様等の特別なものを用いる必要があり、コストが上昇してしまう。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吸着板の保持面上でのダイシングフレームの保持の有無を低コスト且つ正確に判定可能なウェーハチャック及びウェーハ保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するためのウェーハチャックは、多孔質材料で形成され且つウェーハを保持する保持面を有する吸着板と、吸着板の保持面とは反対面側が接合される接合面であって且つ複数の第1溝が形成された接合面を有するベース部材と、ベース部材の内部に形成されたエア流路であって、第1溝と吸引源とを連通するエア流路と、接合面の外周部に形成され且つ吸着板の外周面に外嵌された環状の外嵌枠と、外嵌枠の内周面側に形成され且つ吸着板の厚み方向に対して平行な方向に延びた第1抜け穴であって、エア流路に連通している第1抜け穴と、を備える。
【0013】
このウェーハチャックによれば、吸着板の保持面にウェーハが保持されていない場合には、第1抜け穴を通してエアの吸引を行うことができるので、エア流路内の圧力を低くすることができる。これにより、保持面上でのウェーハの保持の有無に応じたエア流路内の圧力差を大きくすることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、保持面が、ダイシングテープを介してウェーハがマウントされているダイシングフレームを保持し、保持面にダイシングフレームが保持されている場合に、第1抜け穴がダイシングテープにより覆われる。これにより、吸着板の保持面にウェーハが保持されている場合にはエア流路内の圧力を高くすることができる。その結果、保持面上でのウェーハの保持の有無に応じたエア流路内の圧力差を大きくすることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、外嵌枠の内周面側において第1抜け穴とは異なる位置に形成され且つ厚み方向に対して平行な方向な延びた1又は複数の第2抜け穴と、接合面に形成され且つ第1抜け穴と第2抜け穴とを連通する第2溝と、を備える。これにより、吸着板の保持面にウェーハが保持されていない場合には、第2抜け穴を通してエアの吸引を行うことができるので、エア流路内の圧力をより低くすることができる。その結果、保持面上でのウェーハの保持の有無に応じたエア流路内の圧力差を大きくすることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、保持面が、ダイシングテープを介してウェーハがマウントされているダイシングフレームを保持し、保持面にダイシングフレームが保持されている場合、第2抜け穴がダイシングテープにより覆われる。これにより、吸着板の保持面にウェーハが保持されている場合には、エア流路内の圧力を高くすることができる。その結果、保持面上でのウェーハの保持の有無に応じたエア流路内の圧力差を大きくすることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、第1抜け穴及び第2抜け穴がセミシリンドリカル形状に形成されている。これにより、第1抜け穴及び第2抜け穴を簡単に形成することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、第2溝が、接合面において吸着板の外周面と外嵌枠の内周面との境界線に沿った形状を有する。これにより、第1抜け穴と第2抜け穴とを連通させることができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックは、エア流路が、少なくとも圧力センサ又は流量センサを備える接続路を介して、吸引源に接続されている。
【0020】
本発明の目的を達成するためのウェーハ保持装置は、上述のウェーハチャックと、吸引源と、エア流路と吸引源とを接続する接続路と、接続路の途中に設けられた圧力センサ又は流量センサと、圧力センサ又は流量センサの検出結果に基づき、保持面によるウェーハの保持の有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、吸着板の保持面上でのダイシングフレームの保持の有無を低コスト且つ正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】プローバによる検査対象のウェーハの概略図である。
【
図8】第1抜け穴及び1つの第2抜け穴の拡大斜視図である。
【
図9】外嵌枠に第1抜け穴及び各第2抜け穴を形成することで得られる効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[プローバの構成]
図1は、本発明のウェーハ保持装置として機能するプローバ10の概略図である。なお、図中のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は互いに直交している。
【0024】
図1に示すように、プローバ10は、不図示のダイシング装置によるウェーハWのダイシング加工の前後において、ウェーハWに形成された複数の半導体チップの電気的特性を検査するウェハテストを行う。
【0025】
図2は、プローバ10による検査対象のウェーハWの概略図である。
図2に示すように、プローバ10による検査対象のウェーハWは、ダイシングテープTを介してダイシングフレームFにマウント(固定)されている。ダイシングフレームFは、枠状に形成され、その内部にダイシングテープTが貼り付けられる。ウェーハWは、その裏面側がダイシングテープTに貼着されることで、ダイシングフレームFにマウントされる。
【0026】
図1に戻って、プローバ10は、ベース12と、Yステージ14と、Y移動部16と、Xステージ18と、X移動部20と、Zθステージ22と、Zθ移動部24と、ウェーハチャック26と、カードホルダ28と、プローブカード30と、を備える。
【0027】
ベース12は略平板状である。このベース12のZ軸方向上面(以下、単に上面という)には、Y移動部16を介して略平板状のYステージ14がY軸方向に移動自在に支持されている。
【0028】
Y移動部16は、例えば、ベース12の上面に設けられ且つY軸に平行なガイドレールと、Yステージ14のZ軸方向下面(以下、単に下面という)に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Yステージ14をY軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このY移動部16は、ベース12上でYステージ14をY軸方向に移動させる。
【0029】
Yステージ14の上面には、X移動部20を介して略平板状のXステージ18がX軸方向に移動自在に支持されている。
【0030】
X移動部20は、例えば、Yステージ14の上面に設けられ且つX軸に平行なガイドレールと、Xステージ18の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Xステージ18をX軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このX移動部20は、Yステージ14上でXステージ18をX軸方向に移動させる。
【0031】
Xステージ18の上面には、Zθステージ22が設けられている。Zθステージ22にはZθ移動部24が設けられている。また、Zθステージ22の上面には、Zθ移動部24を介してウェーハチャック26が保持されている。
【0032】
Zθ移動部24は、例えば、Zθステージ22の上面をZ軸方向(上下方向)に移動自在な昇降機構と、この上面をZ軸の軸周りに回転させる回転機構とを有する。このため、Zθ移動部24は、Zθステージ22の上面に保持されているウェーハチャック26をZ軸方向に移動させると共に、Z軸周りに回転させる。
【0033】
ウェーハチャック26の上面には、ダイシングテープTを介してウェーハW及びダイシングフレームFが真空吸着により吸着される。また、ウェーハチャック26には、ウェーハWの温度調整を行うための不図示の温度調整部が設けられている。
【0034】
ウェーハチャック26は、既述のYステージ14とY移動部16とXステージ18とX移動部20とZθステージ22とZθ移動部24とを介して、XYZ軸方向に移動自在に支持されている共に、Z軸の軸周りに回転自在に支持されている。これにより、ウェーハチャック26に保持されているダイシングフレームF及びこのダイシングフレームFにマウントされているウェーハW(以下、ダイシングフレームF等と略す)と、後述のプローブ針32とを相対移動させることができる。
【0035】
カードホルダ28は、不図示の支柱及びヘッドステージ等を介して、ベース12上に保持されている。カードホルダ28にはプローブカード30の外周を保持する保持穴28aが形成され、この保持穴28aにプローブカード30が保持される。プローブカード30は、検査する半導体チップの電極パッドの配置に応じて配置されたプローブ針32を有している。これらカードホルダ28及びプローブカード30は、検査する半導体チップの種類に応じて交換される。
【0036】
プローブカード30には、プローブ針32に電気的に接続された不図示の接続端子が設けられており、この接続端子には不図示のテスタが接続される。テスタは、プローブ針32等を介して、半導体チップの電極パッドに各種の試験信号を供給すると共に、半導体チップの電極パッドから出力される信号を受信及び解析して半導体チップが正常に動作するか否かをテストする。なお、テスタの構成及びテスト方法は公知技術であるので詳細な説明は省略する。
【0037】
[ウェーハチャックの構成]
図3はウェーハチャック26の外観斜視図である。
図4はウェーハチャック26の上面図である。
図5はウェーハチャック26の分解斜視図である。
図3から
図5に示すように、ウェーハチャック26は、ポーラス板40と、このポーラス板40が接合されるベース部材42(基台ともいう)とを備える。
【0038】
ポーラス板40は本発明の吸着板に相当するものであり、このポーラス板40の上面はダイシングフレームF等を保持する保持面40aとなる。ポーラス板40は、多孔質状の金属材料及びセラミック材料等の各種の多孔質材料で円板形状に形成されている。ここで、既述のMEMSのように強い力を加えられないウェーハWの保持を行う場合、ポーラス板40の多孔質材料として、例えば細孔径が1μm以下(通常は25μm程度)ものを選択している。このような目の細かいポーラス板40を用いることで、ポーラス板40によるウェーハWの吸着力を分散させることができる。その結果、ウェーハWに強い力が加えられることが防止される。なお、ポーラス板40の直径は1μm以下に限定されるものではない。
【0039】
ベース部材42は、Z軸方向に延びた円柱形状に形成されている。このベース部材42の上面は、ポーラス板40の保持面40aとは反対面側、すなわちポーラス板40の下面が接合(接着固定)される円形状の接合面46となる。また、ベース部材42の側面には詳しくは後述する継手58が設けられている。
【0040】
接合面46はポーラス板40を保持する。この接合面46の直径は、ポーラス板40の直径よりも大径に形成されている。そして、接合面46の外周部には、ポーラス板40の外周面(外側面)に外嵌される環状の外嵌枠48が一体形成(突設)されている。換言すると、ポーラス板40は、接合面46と外嵌枠48の内周面とにより構成される収納凹部に嵌合する(
図5参照)。
【0041】
外嵌枠48の内周面は、ポーラス板40の外周面に気密に接触している。また、外嵌枠48の内周面側には、詳しくは後述する第1抜け穴74及び複数の第2抜け穴76が形成されている。また、外嵌枠48の上面は、保持面40aと同一平面を構成する。この外嵌枠48の上面は、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持された場合に、ダイシングテープT(ダイシングフレームFでも可)で覆われる被覆面となる。なお、外嵌枠48の上面と保持面40aとを同一平面とすることで、ダイシングテープTに痕が付くことが防止される。
【0042】
図6は、ベース部材42の接合面46の上面図である。
図6及び既述の
図5に示すように、接合面46には複数の第1溝50が同心円状に形成されている。各第1溝50には、吸引孔52が1個ずつ(複数個でも可)形成されている。各吸引孔52は、ベース部材42内に設けられている後述のエア流路56に沿って直線状に配列されている。なお、各第1溝50の形成パターンは同心円状に限定されるものではなく、放射状等の任意のパターンであってもよい。
【0043】
また、接合面46上で且つ最外周の第1溝50よりも外側の領域には、詳しくは後述する第2溝82(
図8参照)が形成されている。
【0044】
図7は、ウェーハチャック26の断面図である。
図7及び既述の
図6に示すように、ベース部材42の内部には、ベース部材42の中心部からベース部材42の半径方向に延びたエア流路56が形成されている。
【0045】
エア流路56は、ベース部材42の内部において各吸引孔52に連通し、さらに各吸引孔52を介して各第1溝50に連通している。また、エア流路56の一端部は継手58に接続している。この継手58には、接続路60を介して、ウェーハチャック26の外部に配置された真空源62(本発明の吸引源に相当)が接続されている。これにより、エア流路56は、継手58及び接続路60を介して、各第1溝50(各吸引孔52)と真空源62とを連通させる。
【0046】
真空源62は、エアを常時吸引する。この真空源62によるエアの吸引によって、接続路60、継手58、及びエア流路56の内部が負圧になる。そして、エア流路56の内部が負圧になることで、各吸引孔52が各第1溝50及びポーラス板40を通してエアを吸引する。その結果、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持(吸着保持)される。
【0047】
接続路60の途中には、電磁弁66及びバキュームセンサ68が設けられている。
【0048】
電磁弁66は、エア流路56(各第1溝50及び各吸引孔52)と真空源62との連通(接続)及び遮断を切り替える。電磁弁66がオン(開)されている場合には、エア流路56と真空源62とが連通する。その結果、各吸引孔52が各第1溝50及びポーラス板40を通してエアを吸引するので、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持される。また逆に、電磁弁66がオン(開)されている場合には、エア流路56と真空源62とが遮断されるので、各吸引孔52によるエアの吸引が停止する。その結果、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持が解除される。
【0049】
バキュームセンサ68は、本発明の圧力センサに相当するものであり、接続路60内(エア流路56内)のエアの圧力を検出して、接続路60内の圧力値を制御装置70へ出力する。保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されている場合には、エア流路56、継手58、及び接続路60の各部が略閉空間となり、真空源62の吸引によってエア流路56内及び接続路60内の圧力(負圧)が上昇する。このため、バキュームセンサ68で検出される圧力値が高くなる。また逆に、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されていない場合、接続路60等が閉空間にならないのでエア流路56内及び接続路60内の圧力もあまり上昇せず、バキュームセンサ68で検出される圧力値が低くなる。
【0050】
制御装置70は、プローバ10の各部の動作を統括制御する。この制御装置70は、既述のウェーハチャック26、接続路60、及び真空源62と共に本発明のウェーハ保持装置を構成する。なお、制御装置70によるプローバ10のウェーハチャック26以外の各部の動作制御については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0051】
制御装置70は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプ
ロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置70の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0052】
制御装置70には、真空源62、電磁弁66、及びバキュームセンサ68等が接続されている。制御装置70は、真空源62を常時作動させる。また、制御装置70は、不図示の操作部に対するユーザの入力操作に応じて、保持面40a上にダイシングフレームF等を保持させる場合には電磁弁66をオンし、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持を解除させる場合には電磁弁66をオフさせる。
【0053】
さらに制御装置70は、バキュームセンサ68で検出された圧力値に基づき、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されているか否かを判定する判定部として機能する。具体的には、制御装置70は、バキュームセンサ68で検出された圧力値が予め定められた閾値以上である場合には保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されている保持状態(吸着状態)と判定し、逆に圧力値が閾値未満である場合には保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されていない非保持状態(空吸着状態)と判定する。
【0054】
制御装置70が保持状態と非保持状態とを正確に判定するためには、ダイシングフレームF等の保持の有無でバキュームセンサ68により検出される圧力値の差を大きくする必要がある。そこで、本実施形態では、目の細かいポーラス板40を使用している場合であっても、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無でバキュームセンサ68により検出される圧力値の差が大きくなるように、外嵌枠48の内周面に第1抜け穴74及び複数の第2抜け穴76を形成している。
【0055】
図3から
図6に示すように、第1抜け穴74は、保持面40aに対向する位置から見た場合に、外嵌枠48の内周面のうちのエア流路56と交差する位置(エア流路56のZ軸方向上方側の位置)に形成されている。また、第2抜け穴76は、第1抜け穴74を基準として、外嵌枠48の内周面に沿って等間隔で形成されている。従って、外嵌枠48にはその内周面に沿って第1抜け穴74及び各第2抜け穴76が等間隔で形成されている。
【0056】
図8は、第1抜け穴74及び1つの第2抜け穴76の拡大斜視図である。
図8及び既述の
図7に示すように、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76は、Z軸方向(ポーラス板40の厚み方向)に延びた形状、より具体的にはセミシリンドリカル形状(半円柱形状又は蒲鉾形状ともいう)に形成されている。そして、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76は、保持面40a上にダイシングフレームF等に保持されている場合にはダイシングテープT(ダイシングフレームFでも可)で覆われ、逆に保持面40a上にダイシングフレームF等に保持されていない場合には外部に露呈される。
【0057】
第1抜け穴74の底面を構成している接合面46の領域には、吸引孔80が形成されている。この吸引孔80は既述の吸引孔52と同様にエア流路56に連通している。従って吸引孔80は、既述の接続路60等を介して真空源62と連通している。その結果、真空源62によるエアの吸引により、吸引孔80が第1抜け穴74を通してエアを吸引する。
【0058】
各第2抜け穴76は、接合面46上に形成された第2溝82を介して、第1抜け穴74(吸引孔80)と連通している。第2溝82は、例えば、ポーラス板40の外周面と外嵌枠48の内周面との境界線に沿った形状(円環状)に形成されている。このため、真空源62によるエアの吸引により、吸引孔80は、第1抜け穴74の他に、第2溝82及び各第2抜け穴76を通してエアを吸引する。
【0059】
図9は、外嵌枠48に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成することで得られる効果を説明するための説明図である。なお、
図9の符号9Aは、外嵌枠48に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成していない比較例のウェーハチャック26の断面図であり、
図9の符号9Bは、外嵌枠48に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成した本実施形態のウェーハチャック26の断面図である。
【0060】
図9に示すように、本実施形態では外嵌枠48に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成することで、保持面40a上にダイシングフレームF等に保持されていない非保持状態において、吸引孔80により第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を通してエアを吸引することができる。すなわち、本実施形態では、比較例とは異なり目の細かいポーラス板40を通さずに第1抜け穴74及び各第2抜け穴76(吸引孔80)からエアを吸引することができる。
【0061】
このため、本実施形態では、下記の[表1]に示すように、非保持状態でバキュームセンサ68が検出する圧力値を「比較例」よりも低くする(より大気圧に近づける)ことができる。さらに本実施形態では、上述の圧力値を、目の粗いポーラス板40(例えば多孔質材料の細孔径が25μm)を使用している「従来例」に近づけることができる。
【0062】
【0063】
さらにまた、本実施形態では、保持面40a上にダイシングフレームF等が保持されている保持状態では、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76がダイシングテープTで覆われるので、バキュームセンサ68により検出される圧力値を、「比較例」及び「従来例」と同等の値にすることができる。
【0064】
このように本実施形態では、「従来例」と同様に、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無でバキュームセンサ68により検出される圧力値の差を大きくすることができる。その結果、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無を判定するための閾値の設定することができる。
【0065】
また、保持面40a上でダイシングフレームF等を保持している状態からその保持を解除した状態に切り替える場合、すなわち電磁弁66をオンからオフに切り替えた場合に、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を真空破壊の起点とすることができる。その結果、本実施形態では、比較例のように目の細かいポーラス板40だけで真空破壊を行う場合と比較して、真空破壊に要する時間を短縮することができる。これにより、プローバ10のスループットの低下が防止される。
【0066】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、外嵌枠48の内周面に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成することにより、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無に応じてバキュームセンサ68により検出される圧力値の差を大きくすることができる。これにより、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無を正確に判定することができる。また、外嵌枠48の内周面に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を形成するだけでよく、ポーラス板40に耐熱仕様等の特別な検出センサを設ける必要がなくなるので、ウェーハチャック26のコスト上昇が防止される。その結果、目の細かいポーラス板40の保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無を低コスト且つ正確に判定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持を解除する場合に、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76を真空破壊の起点とすることができるので、プローバ10のスループットの低下が防止される。
【0068】
[その他]
上記実施形態では、外嵌枠48に第2抜け穴76を複数形成しているが、第2抜け穴76の数は特に限定されるものではなく、例えば1個であってよい。また、外嵌枠48に第2抜け穴76を形成することなく第1抜け穴74のみを形成してもよい。ただし、既述のバキュームセンサ68により検出される圧力値の差を大きくしたり、或いはプローバ10のスループットの低下を防止したりという効果をより高めるためには、外嵌枠48に第2抜け穴76を形成することが好ましい。
【0069】
上記実施形態では、ウェーハWがマウントされたダイシングフレームFをポーラス板40の保持面40a上に保持させているが、ウェーハWを保持面40a上に直接保持させてもよい。この場合に第1抜け穴74及び各第2抜け穴76は、保持面40a上に保持されているウェーハWの外周部により覆われる。
【0070】
上記実施形態では、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76がセミシリンドリカル形状に形成されているが、第1抜け穴74及び各第2抜け穴76の形状は特に限定されず、例えば、四角柱形状及び三角柱形状等の任意の形状であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、接続路60にバキュームセンサ68が設けられているが、この接続路60にバキュームセンサ68の代わりにエアの流量を検出する流量センサを設けてもよい。この場合、制御装置70は、流量センサの検出結果に基づき、保持面40a上でのダイシングフレームF等の保持の有無を判定する。
【0072】
上記実施形態では、各第2抜け穴76が第1抜け穴74を介してエア流路56に連通しているが、エア流路56が複数設けられている場合には各第2抜け穴76がそれぞれエア流路56に直接連通していてもよい。換言すると、第1抜け穴74及びエア流路56が複数組設けられていてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ウェーハWの電気的検査を行うプローバ10のウェーハチャック26を例に挙げて説明したが、例えば、ウェーハWに対するダイシング加工或いはレーザ加工を行う加工装置に用いられるウェーハチャック26等のような各種装置のウェーハチャック26に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…プローバ,
26…ウェーハチャック,
40…ポーラス板,
40a…保持面,
42…ベース部材,
46…接合面,
48…外嵌枠,
50…第1溝,
52…吸引孔,
56…エア流路,
60…接続路,
62…真空源,
66…電磁弁,
68…バキュームセンサ,
70…制御装置,
74…第1抜け穴,
76…第2抜け穴,
80…吸引孔,
82…第2溝