(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】保険契約料金算出装置及び保険契約料金算出方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20240712BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240712BHJP
【FI】
G06Q40/08
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2019063491
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 徹
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】松田 直也
【審判官】古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-73155(JP,A)
【文献】特開2006-155008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、
を備え、
前記稼働データは、前記水処理設備の被処理水の水質のデータを含み、
前記制御部は、該被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、
運転状況の運転実績値である該被処理水の水質が所定水質範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置。
【請求項2】
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、特定の運転条件が所定条件範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、特定の運転条件が所定条件範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出す
る保険契約料金算出装置。
【請求項3】
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データと、前記水処理設備が設置されている場所の地域の特性データとを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置。
【請求項4】
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記水処理ユニットの
構成、被処理水特性又は処理水特性のいずれかが類似する類似水処理設備を探索し、前記類似水処理設備の運転状況に応じて前記水処理設備の未来の所定時期の運転状況を予測し、予測結果に基づいて前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記予測結果として前記水処理設備の被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪化する場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、水質が所定水質範囲に近く良好になる場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する、請求項4に記載の保険契約料金算出装置。
【請求項6】
コンピュータシステムが、
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、
を有し、
前記稼働データは、前記水処理設備の被処理水の水質のデータを含み、
前記保険契約料金算出ステップにおいて、該被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、
運転状況の運転実績値である該被処理水の水質が所定水質範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法。
【請求項7】
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、
を有し、
前記保険契約料金算出ステップにおいて、特定の運転条件が所定条件範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、特定の運転条件が所定条件範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法。
【請求項8】
コンピュータシステムが、
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データと、前記水処理設備が設置されている場所の地域の特性データとを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、
を有し、
前記保険契約料金算出ステップにおいて、運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法。
【請求項9】
コンピュータシステムが、
水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、
受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、
を有し、
前記保険契約料金算出ステップにおいて、前記水処理ユニットの
構成、被処理水特性又は処理水特性のいずれかが類似する類似水処理設備を探索し、前記類似水処理設備の運転状況に応じて前記水処理設備の未来の所定時期の運転状況を予測し、予測結果に基づいて前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保険契約料金算出装置及び保険契約料金算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理設備において水処理設備内の水処理ユニットが故障した場合には、水処理設備業者等に修理を依頼し、水処理ユニットの修理や交換が行われている。一般的に、水処理ユニットが故障した場合、顧客から水処理設備業者等へ修理の見積を依頼し、水処理設備業者等が見積を作成して顧客に送付し、顧客内で予算を決裁し、顧客から水処理設備業者等へ修理を依頼することによって水処理ユニットの修理や交換が行われる。このように、故障発生から水処理ユニットの復旧までには、顧客と水処理設備業者等との間で手続きに関するやり取りが繰り返し行われる。そのため、故障発生から水処理ユニットの復旧までに時間を要する。
【0003】
また、機器の故障発生確率等を用いて、保守点検頻度を増減することによって水処理施設の維持管理を支援する管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、故障は突発的に発生するものであり、故障内容によって修理費用や修理期間が大きく異なる。そのため、事前に修理の予算を立てて管理することが困難であるという問題があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、水処理設備内のユニットの故障に対応することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、を備え、前記稼働データは、前記水処理設備の被処理水の水質のデータを含み、前記制御部は、該被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転状況の運転実績値である該被処理水の水質が所定水質範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置である。
【0009】
本発明の一態様は、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、特定の運転条件が所定条件範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、特定の運転条件が所定条件範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置である。
【0010】
本発明の一態様は、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データと、前記水処理設備が設置されている場所の地域の特性データとを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する。
【0011】
本発明の一態様は、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信部と、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水処理ユニットの構成、被処理水特性又は処理水特性のいずれかが類似する類似水処理設備を探索し、前記類似水処理設備の運転状況に応じて前記水処理設備の未来の所定時期の運転状況を予測し、予測結果に基づいて前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出装置である。
【0012】
本発明の一態様は、上記の保険契約料金算出装置であって、前記制御部は、前記予測結果として前記水処理設備の被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪化する場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、水質が所定水質範囲に近く良好になる場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する。
【0013】
本発明の一態様は、コンピュータシステムが、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、を有し、前記稼働データは、前記水処理設備の被処理水の水質のデータを含み、前記保険契約料金算出ステップにおいて、該被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転状況の運転実績値である該被処理水の水質が所定水質範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法である。
本発明の一態様は、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、を有し、前記保険契約料金算出ステップにおいて、特定の運転条件が所定条件範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、特定の運転条件が所定条件範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法である。
本発明の一態様は、コンピュータシステムが、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データと、前記水処理設備が設置されている場所の地域の特性データとを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、を有し、前記保険契約料金算出ステップにおいて、運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように前記保険契約料金を算出し、運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法である。
本発明の一態様は、コンピュータシステムが、水処理設備を構成する水処理ユニットの稼働データを前記水処理設備から受信する通信ステップと、受信された前記稼働データのうち過去の稼働データを用いて前記水処理設備の運転状況を導出し、導出した運転状況に基づいて前記水処理設備の保険契約料金を算出する保険契約料金算出ステップと、を有し、前記保険契約料金算出ステップにおいて、前記水処理ユニットの構成、被処理水特性又は処理水特性のいずれかが類似する類似水処理設備を探索し、前記類似水処理設備の運転状況に応じて前記水処理設備の未来の所定時期の運転状況を予測し、予測結果に基づいて前記保険契約料金を算出する保険契約料金算出方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、水処理設備内の装置のユニットに対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における保険契約料金算出システムのシステム構成を表す構成図である。
【
図2】第1の実施形態における水処理設備の機能構成を表す概略ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における保険契約料金算出装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【
図4】顧客情報データベースの一例を示す図である。
【
図5】水処理構成データベースの一例を示す図である。
【
図6】契約範囲データベースの一例を示す図である。
【
図7】契約管理データベースの一例を示す図である。
【
図8】設計条件データベースの一例を示す図である。
【
図9】装置運転データベースの一例を示す図である。
【
図10】地域特性データベースの一例を示す図である。
【
図11】運転状況判定データベースの一例を示す図である。
【
図12】保険契約料金データベースの一例を示す図である。
【
図13】第1の実施形態における保険契約料金算出装置による保険契約料金算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】水処理設備に備えられるユニットの運転状況を示す概念図である。
【
図15】水処理設備に備えられるユニットの運転状況を示す概念図である。
【
図16】第3の実施形態における保険契約料金算出装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【
図17】類似顧客データベースの一例を示す図である。
【
図18】適正率補正データベースの一例を示す図である。
【
図19】第3の実施形態における保険契約料金算出装置による保険契約料金算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】水処理設備に備えられるユニットの運転状況の予測を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における保険契約料金算出システム100のシステム構成を表す構成図である。保険契約料金算出システム100は、水処理設備の運転状況を踏まえて、保険の契約料金を算出するシステムである。保険契約料金算出システム100は、単数又は複数の水処理設備10及び保険契約料金算出装置20を備える。保険契約料金算出システム100では、保険対象となっている水処理設備10内の水処理ユニットに故障が生じた場合、保険会社30による資金負担により、故障した水処理ユニットの修理が行われる。水処理設備10、保険契約料金算出装置20及び保険会社30は、ネットワーク40を介して通信可能な状態に接続される。ネットワーク40は、どのように構成されたネットワークでもよい。例えば、ネットワーク40はインターネットを用いて構成されてもよい。
【0017】
水処理設備10は、被処理水を使用目的に合わせた水質にするための用水処理、又は、被処理水を周辺環境に影響を与えない水質にして排出するための排水処理又は被処理水を回収して再利用するための回収処理を行う設備である。例えば、用水処理には、河川水などから上水をつくる浄水処理や工業用純水をつくる処理などが含まれる。また、例えば、排水処理には、被処理水を排水できるレベルにまできれいにする下水処理や工場排水の処理、汚泥処理などが含まれる。水処理設備10は、顧客の工場や浄水場などの施設に設置される。
【0018】
保険契約料金算出装置20は、水処理設備10の運転状況に基づいて保険契約料金を算出する。ここで、保険契約料金算出装置20が算出する保険契約料金は、例えば水処理設備10を構成する水処理ユニットを対象とした故障保険の契約料金である。保険契約料金算出装置20は、例えばノートパソコン、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末等の情報処理装置を用いて構成される。
保険会社30は、故障保険に締結している水処理設備10を構成する水処理ユニットに故障が生じた場合に、故障に応じた保険料金を修理業者に支払う。なお、保険契約料金算出装置20と保険会社30とは、一体の企業体系であってもよい。
以下、本発明における保険契約料金算出システム100の具体的な構成例(第1の実施形態~第3の実施形態)について説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における水処理設備10の機能構成を表す概略ブロック図である。
水処理設備10は、被処理水を順次水処理して処理水を得る複数のユニット11(11-1~11-3)、制御部12、観測計器13及び通信部14を備える。
図2では、水処理設備10が3台のユニット11-1~11-3を直列多段の一過式で備える構成を示しているが、これに限定されない。ユニット11の数は水処理設備10の用途に応じて異なる。そのため、水処理設備10は、ユニット11を何台備えていてもよい。また、観測計器13の数も、水処理設備10の用途に応じて異なるため、水処理設備10は観測計器13を何台備えていてもよい。
【0020】
ユニット11は、用水処理及び排水処理等の水処理を行う水処理ユニットである。一般的に、ユニット11は、一台で一部の水処理を行い、複数台で一連の水処理を行う。ユニット11は、例えば圧力ろ過装置、活性炭装置、RO給水槽、RO装置、調整槽、凝集沈殿槽、曝気槽、沈殿槽、汚泥脱水機、水処理薬品注入装置等である。なお、ここで示したユニット11は、一例であり、水処理やその付帯処理を行う装置であればどのような装置でもよい。
【0021】
制御部12は、水処理設備10が備える各ユニットを制御する。例えば、制御部12は、ユニット11-1~11-3の動作を制御して一連の水処理を実行させる。また、制御部12は、通信部14を制御して、観測計器13による計測結果を保険契約料金算出装置20に送信させる。
【0022】
観測計器13は、ユニット11で処理する被処理水に関する情報の計測を行うセンサである。被処理水に関する情報は、例えばユニット11内に流れる被処理水の水質、流量及び水温などの情報である。観測計器13は、例えば流量計、水質計、温度計等の計器である。
通信部14は、ネットワーク40を介して保険契約料金算出装置20との間で通信を行う。通信部14は、観測計器13による計測結果にユニット11の運転時間を含めて稼働データとして保険契約料金算出装置20に送信する。
【0023】
図3は、第1の実施形態における保険契約料金算出装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。
保険契約料金算出装置20は、通信部21、入力部22、表示部23、制御部24及び記憶部25を備える。
通信部21は、水処理設備10が備える通信部14と通信を行う。通信部21は、水処理設備10から稼働データを受信する。
【0024】
入力部22は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部22は、ユーザの指示を保険契約料金算出装置20に入力する際にユーザによって操作される。入力部22は、ユーザの指示の入力を受け付ける。また、入力部22は、入力装置を保険契約料金算出装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部22は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号を保険契約料金算出装置20に入力する。
【0025】
表示部23は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部23は、各種情報を表示する。表示部23は、画像表示装置を保険契約料金算出装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部23は、情報を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0026】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部24は、プログラムを実行することによって機能する。第1の実施形態における制御部24は、被処理水の水質に基づいて保険契約料金を算出する。
【0027】
記憶部25は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部25は、保険契約料金算出プログラム251、適正運転シミュレーションプログラム252、適正状況シミュレーションプログラム253、顧客情報データベース254、水処理構成データベース255、契約範囲データベース256、契約管理データベース257、設計条件データベース258、装置運転データベース259、地域特性データベース260、運転状況判定データベース261及び保険契約料金データベース262を記憶している。
【0028】
保険契約料金算出プログラム251は、保険契約料金を算出するために用いられるプログラムである。保険契約料金算出プログラム251は、制御部24によって実行される。
適正運転シミュレーションプログラム252は、水処理設備10の設備構成と各ユニット11の設計値とに基づいて、水処理設備10の運転で正常な運転の範囲であると認められる運転範囲をユニット11毎に導出するために用いられるプログラムある。適正運転シミュレーションプログラム252は、制御部24によって実行される。
【0029】
適正状況シミュレーションプログラム253は、観測計器13によって取得された稼働データと、水処理設備10が設置されている地域の特性とに基づいて、ユニット11の所定の期間の運転状況を導出するために用いられるプログラムある。適正状況シミュレーションプログラム253は、制御部24によって実行される。所定の期間は、例えば契約開始日から現時点(例えば、運転状況の導出がなされた時点)までの期間である。
【0030】
次に、
図4~
図12を用いて、各データベースについて説明する。
まず顧客情報データベース254について説明する。顧客情報データベース254は、顧客に関する情報が登録されたデータベースである。
図4は、顧客情報データベース254の一例を示す図である。顧客情報データベース254は、顧客に関する情報を表すレコード(以下「顧客情報レコード」という。)を複数有する。顧客情報レコードは、顧客ID、企業名、事業所名、生産品目及び位置情報の各値を有する。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。企業名は、顧客の企業の名称を表す。事業所名は、顧客の企業の事業所を表す。生産品目は、顧客の企業の事業所で生産されている品目を表す。位置情報は、顧客の企業が位置している場所を表す。位置情報は、緯度経度で表されてもよい。
【0031】
次に、水処理構成データベース255について説明する。
水処理構成データベース255は、顧客が備える水処理設備10に関する情報が登録されたデータベースである。
図5は、水処理構成データベース255の一例を示す図である。水処理構成データベース255は、顧客が備える水処理設備10に関する情報を表すレコード(以下「水処理設備レコード」という。)を複数有する。水処理設備レコードは、顧客ID、区分及びユニットの各値を有する。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。区分は、水処理設備10の用途の区分を表す。水処理設備10の用途の区分としては、例えば用水又は排水がある。ユニットは、用途に応じた水処理設備10を構成するユニット11を表す。
【0032】
例えば、
図5に示す例では、顧客ID“5332523”で識別される顧客が“用水”処理のために使用している水処理設備10が“圧力ろ過装置”、“活性炭装置”、“RO給水槽”及び“RO装置”の4つのユニット11で構成されていることが示されている。また、例えば、
図5に示す例では、顧客ID“5332523”で識別される顧客が“排水”処理のために使用している水処理設備10が“調整槽”、“凝集沈殿槽”、“曝気槽”及び“沈殿槽”の4つのユニット11で構成されていることが示されている。
【0033】
次に、契約範囲データベース256について説明する。
契約範囲データベース256は、顧客が備える水処理設備10のユニット11のうち、契約範囲に含まれるユニット11に関する情報が登録されたデータベースである。
図6は、契約範囲データベース256の一例を示す図である。契約範囲データベース256は、顧客が備える水処理設備10のユニット11のうち、契約範囲に含まれるユニット11に関する情報を表すレコード(以下「契約ユニットレコード」という。)を複数有する。契約ユニットは、顧客ID、契約No、区分及び対象ユニットの各値を有する。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。契約Noは、顧客と締結した契約を一意に識別するための情報(例えば、契約番号)を表す。区分は、水処理設備10の用途の区分を表す。対象ユニットは、顧客が備える水処理設備10のユニット11のうち、契約範囲に含まれるユニット11を表す。契約範囲に含まれるユニット11が保険契約料金の算出に関係する。
【0034】
例えば、
図6に示す例では、顧客ID“5332523”で識別される顧客が“用水”処理のために使用している水処理設備10が備えるユニット11のうち“RO給水槽”及び“RO装置”の2つのユニット11が契約範囲に含まれることが示されている。また、例えば、
図6に示す例では、顧客ID“5332523”で識別される顧客が“排水”処理のために使用している水処理設備10が備えるユニット11のうち“凝集沈殿槽”、“曝気槽”及び“沈殿槽”の3つのユニット11が契約範囲に含まれることが示されている。
【0035】
次に、契約管理データベース257について説明する。
契約管理データベース257は、顧客の契約期間に関する情報が登録されたデータベースである。
図7は、契約管理データベース257の一例を示す図である。契約管理データベース257は、顧客の契約期間に関する情報を表すレコード(以下「契約期間レコード」という。)を複数有する。契約期間レコードは、顧客ID、契約No、契約期間及び保険契約料金の各値を有する。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。契約Noは、顧客と締結した契約を一意に識別するための情報を表す。契約期間は、顧客と締結した契約の期間を表す。保険契約料金は、保険契約の料金を表す。保険契約料金は、期間に応じて変動するため、同一の契約Noであっても期間毎に料金が設定される。
【0036】
次に、設計条件データベース258について説明する。
設計条件データベース258は、ユニット11の設計条件に関する情報が登録されたデータベースである。例えば、設計条件データベース258には、顧客への納品時または水供給契約開始時のユニット11の設計値が登録される。
図8は、設計条件データベース258の一例を示す図である。設計条件データベース258は、ユニット11の設計条件に関する情報を表すレコード(以下「設計条件レコード」という。)を複数有する。設計条件レコードは、項目、値及び単位の各値を有する。
【0037】
項目は、ユニット11の設計条件に関する各項目を表す。項目は、例えばユニット名、水量、運転時間、被処理水水温、被処理水水質(電気伝導率)、被処理水水質(pH)、被処理水水質(全硬度)、処理水水質(電気伝導率)、処理水水質(pH)、処理水水質(全硬度)及び回収率等がある。値は、項目に応じた内容を表す。なお、値の項目には、顧客納品時または水供給契約開始時のユニット11の設計値が登録される。単位は、各値の単位を表す。なお、単位がない項目(例えば、設備名)については、単位の項目には“-”が登録される。なお、
図8には、1つのユニット11の設計条件のみが示されているが、設計条件データベース258には全てのユニット11の設計条件が登録されている。
【0038】
次に、装置運転データベース259について説明する。
装置運転データベース259は、ユニット11の稼働データに関する情報が登録されたデータベースである。
図9は、装置運転データベース259の一例を示す図である。装置運転データベース259は、ユニット11の稼働データに関する情報を表すレコード(以下「稼働データレコード」という。)を複数有する。稼働データレコードは、番号、顧客ID、ユニット、日時及びCH1~CH7の各値を有する。番号は、稼働データを一意に識別するための情報を表す。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。ユニットは、稼働データの取得元のユニット11を表す。日時は、稼働データが観測計器13によって取得された日時を表す。CH1~CH7は、ユニット11内で計測された被処理水の水質データや運転データを表す。なお、
図9には、1つのユニット11の稼働データのみが示されているが、装置運転データベース259には必要な全てのユニット11の稼働データが登録される。ユニット11の稼働データは、通信部21で受信される度に装置運転データベース259に登録される。また、装置運転データベース259には、契約期間以前の被処理水の水質データや運転データが予め登録されていてもよい。
【0039】
次に、地域特性データベース260について説明する。
地域特性データベース260は、地域特性に関する情報が登録されたデータベースである。
図10は、地域特性データベース260の一例を示す図である。地域特性データベース260は、地域特性に関する情報を表すレコード(以下「地域特性レコード」という。)を複数有する。地域特性レコードは、年月日、顧客ID、位置情報、平均気温、降雨量、工業用水水質(pH)、工業用水水質(濁度)及び上水道水質(pH)等の各値を有する。
【0040】
年月日は、位置情報、平均気温、降雨量、工業用水水質(pH)、工業用水水質(濁度)及び上水道水質(pH)等の各値が取得された年月日を表す。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。位置情報は、顧客の企業が位置している場所を表す。平均気温は、位置情報で示される場所の平均気温を表す。降雨量は、位置情報で示される場所の降雨量を表す。工業用水水質(pH)は、位置情報で示される場所の工業用水のpHを表す。工業用水水質(濁度)は、位置情報で示される場所の工業用水の濁度を表す。上水道水質(pH)は、位置情報で示される場所の上水道のpHを表す。地域特性に関する情報は、予め取得されて地域特性データベース260に登録されている。ただし、ウェブ上で公開されている情報を自動取得するようにしてもよい。
【0041】
次に、運転状況判定データベース261について説明する。
運転状況判定データベース261は、ユニット11の運転状況の判定に関する情報が登録されたデータベースである。
図11は、運転状況判定データベース261の一例を示す図である。運転状況判定データベース261は、ユニット11の運転状況の判定に関する情報を表すレコード(以下「運転状況判定レコード」という。)を複数有する。運転状況判定レコードは、判定期間、適正範囲値(所定水質範囲)、運転実績値、地域特性補正係数及び適正率の各値を有する。
【0042】
判定期間は、ユニット11の運転状況を判定する期間を表す。判定期間は、契約期間のうち一定期間毎に設定される。適正範囲値は、適正運転シミュレーションプログラム252によって算出されるユニット11の適正な運転範囲を表す。運転実績値は、適正状況シミュレーションプログラム253によって算出されるユニット11の運転状況の実測値を表す。地域特性補正係数は、地域特性に応じて実測値を補正するための補正係数を表す。地域特性補正係数は、予め設定されている。適正率は、ユニット11が適切な運転をしている割合を表す。例えば、適正率は、運転実績値に地域特性補正係数を乗算した乗算結果が、適正範囲値に含まれる割合で算出される。すなわち、乗算結果の全てが適正範囲値に含まれる場合には、適正率は100%となる。
【0043】
次に、保険契約料金データベース262について説明する。
保険契約料金データベース262は、保険契約料金に関する情報が登録されたデータベースである。
図12は、保険契約料金データベース262の一例を示す図である。保険契約料金データベース262は、保険契約料金に関する情報を表すレコード(以下「保険契約料金レコード」という。)を複数有する。保険契約料金レコードは、契約No、顧客ID、契約期間、基準保険契約料金、適正率及び期間別保険契約料金の各値を有する。契約Noは、顧客と締結した契約を一意に識別するための情報(例えば、契約番号)を表す。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。契約期間は、顧客と締結した契約の期間を表す。基準保険契約料金は、設備のユニット構成等から算出された標準的な運転を前提とした期間別保険料金を表す。適正率は、ユニット11が適切な運転をしている割合を表す。適正率補正係数は、予め設定されている。期間別保険契約料金は、契約期間毎に定められた保険契約料金を表す。期間別保険契約料金は、適正率Rを用いて基準保険契約料金Sを補正して(例えば、S/R)算出される。
【0044】
図13は、第1の実施形態における保険契約料金算出装置20による保険契約料金算出処理の流れを示すフローチャートである。
制御部24は、顧客情報データベース254を用いて、保険契約料金の算出対象となる顧客の情報を取得する(ステップS101)。例えば、制御部24は、顧客情報データベース254の情報を表示部23に表示させ、入力部22を介して選択された顧客を、保険契約料金の算出対象となる顧客と判定する。なお、制御部24は、その他の情報(例えば、企業名)から保険契約料金の算出対象となる顧客と判定してもよい。制御部24は、保険契約料金の算出対象となる顧客の顧客IDを顧客情報データベース254から取得する。
【0045】
制御部24は、水処理構成データベース255を用いて、顧客IDで識別される顧客の水処理設備10の構成を確認する(ステップS102)。具体的には、まず制御部24は、水処理構成データベース255を参照し、取得した顧客IDに対応する水処理設備レコードを取得する。この際、制御部24は、区分が異なっても顧客IDが同じであれば顧客IDが同じ水処理設備レコードを全て取得する。そして、制御部24は、取得した水処理設備レコードのユニットの項目を参照し、ユニットの項目に登録されているユニット11を水処理設備10の構成として区分毎に確認する。
【0046】
一例として、ステップS101の処理で取得された顧客IDが“3251235”である場合、制御部24は水処理構成データベース255を参照し、取得した顧客ID“3251235”に対応する水処理設備レコードのユニットの項目に登録されているユニット11“冷却装置”、“UV酸化装置”、“イオン交換樹脂装置”、“UF膜ろ過装置”を、顧客ID“3251235”で識別される顧客の水処理設備10の構成として確認する。
【0047】
制御部24は、契約範囲データベース256を用いて、顧客IDで識別される顧客の水処理設備10の契約範囲となるユニット11を確認する(ステップS103)。具体的には、まず制御部24は、契約範囲データベース256を参照し、取得した顧客IDに対応する契約ユニットレコードを取得する。この際、制御部24は、区分が異なっても顧客IDが同じであれば顧客IDが同じ契約ユニットレコードを全て取得する。そして、制御部24は、取得した契約ユニットレコードの対象ユニットの項目を参照し、対象ユニットの項目に登録されているユニット11を水処理設備10の契約範囲となるユニット11として区分毎に確認する。
【0048】
制御部24は、契約管理データベース257を用いて、顧客IDで識別される顧客の水処理設備10の契約開始時点から現時点までの運転期間を取得する(ステップS104)。具体的には、まず制御部24は、契約管理データベース257を参照し、取得した顧客IDに対応する契約期間レコードを取得する。この際、制御部24は、契約Noが異なっても顧客IDが同じであれば顧客IDが同じ契約期間レコードを全て取得する。そして、制御部24は、取得した契約期間レコードの契約期間の項目を参照し、契約期間の項目に登録されている期間のうち契約開始時点から現時点までの期間を運転期間として取得する。
【0049】
制御部24は、設計条件データベース258を用いて、ステップS102の処理で確認した水処理設備10を構成するユニット11の設計値を確認する(ステップS105)。制御部24は、顧客の水処理設備10の設備構成と、水処理設備10を構成するユニット11の設計値とを入力として、適正運転シミュレーションプログラム252を実行することによって水処理設備10の適正な運転範囲をユニット11毎に導出する(ステップS106)。
【0050】
制御部24は、装置運転データベース259を用いて、水処理設備10に備えられるユニット11の稼働データを取得する(ステップS107)。
制御部24は、地域特性データベース260を用いて、顧客IDで識別される顧客の水処理設備10が設置されている場所の地域の特性データを取得する(ステップS108)。
【0051】
制御部24は、ユニット11の稼働データと、地域の特性データとを入力として、適正状況シミュレーションプログラム253を実行することによって水処理設備10に備えられるユニット11毎の契約開始時点から現時点までの運転状況を導出する(ステップS109)。ただし、制御部24は、契約期間より前の被処理水の水質データや運転データが取得されている場合はシミュレーションの精度が向上するためそのデータも活用して運転状況を算出する。
図14は、水処理設備10に備えられるユニット11の運転状況を示す概念図である。
図14では、一例として、1つのユニット11の運転状況を示している。
図14において、横軸は時間を表し、縦軸は水質指標を表す。ここで、水質指標とは、水処理設備10の被処理水の水質の良し悪しを表す指標である。水質指標は、個別の水質項目の指標であってもよいし、複数の水質の項目(例えば、pH、濁度、電気伝導率及び硬度等)を含む指標であってもよい。また、水質指標のIは、水質の良し悪しの中間を表す。
図14(A)は水質の良し悪しの変動が大きい場合の例を示す図であり、
図14(B)は水質の良し悪しの変動が小さい場合の例を示す図である。
【0052】
図14(A)及び
図14(B)に示す適正範囲値は、適正運転シミュレーションプログラム252を実行することによって得られた適正範囲値を表す。また、
図14(A)に示す線41及び
図14(B)に示す線42は、適正状況シミュレーションプログラム253を実行することによって得られた運転状況の遷移線を表す。
図14(A)に示すように、線41では、被処理水の水質が適正範囲値を逸脱して悪い期間がみられる。
一方、
図14(B)に示すように、線42では、被処理水の水質が適正範囲値を逸脱せず、適正範囲値の中間Iに近い期間がみられる。適正範囲値の中間Iに近いということは、被処理水の水質が良いことを表す。被処理水の水質が適正範囲値を逸脱して悪い場合には、ユニット11で過度な処理を行う必要がある。この場合、被処理水の水質が適正範囲値に近い場合と比べて、ユニット11に処理負荷がかかるためメンテナンスや部品の交換期間が早まることが想定される。そのため、制御部24は、被処理水の水質が適正範囲値を逸脱して悪い場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出する。また、制御部24は、適正範囲値に近い状態、特に適正範囲値の中間Iに近い状態で運転がなされているほど保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。
【0053】
制御部24は、運転状況判定データベース261を用いて、ユニット11毎の契約開始時点から現時点までの運転状況を診断する(ステップS110)。具体的には、まず制御部24は、運転実績値に地域特性補正係数を乗算する。次に、制御部24は、乗算結果と適正範囲値とに基づいて適正率を算出する。そして、制御部24は、これらの処理を判定期間毎に行うことによって、ユニット11毎の契約開始時点から現時点までの運転状況を診断する。このような処理を行うことによって、運転実績値が適正範囲値内に収まる期間や運転実績値が適正範囲値内に収まっていない期間などを確認することができる。
【0054】
そして、制御部24は、保険契約料金データベース262を用いて、保険契約料金を算出する(ステップS111)。具体的には、制御部24は、適正率に応じて基準保険契約料金を基準として期間別保険契約料金を契約期間毎に算出する。そして、制御部24は、期間別保険契約料金を全て加算することによって保険契約料金を算出する。
【0055】
以上のように構成された保険契約料金算出システム100によれば、水処理設備10内の各ユニット11で処理している被処理水の水質に基づいて保険契約料金を算出する。例えば、被処理水の水質が適正範囲値を逸脱して悪い場合には、ユニット11で過度な処理を行う必要がある。この場合、被処理水の水質が良い場合と比べて、ユニット11に処理負荷がかかるためメンテナンスや部品の交換期間が早まることが想定される。そのため、保険契約料金算出装置20は、被処理水の水質が適正範囲値を逸脱して悪い場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出する。逆に、被処理水の水質が所定水質範囲に近いほど処理負荷は低いので、基準保険契約料金とするか、著しく水質が良い場合には保険契約料金が基準保険契約料金よりも低くなるように保険契約料金を算出する。このように、本発明では、水処理設備10を対象に故障保険の契約料金を算出し、故障保険を提供することにより、突発的な故障が生じた際にも保険会社による資金負担により水処理設備10の修理を行うことができる。そのため、水処理設備内のユニットの故障に対応することが可能になる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、保険契約料金算出装置が、ユニットの特定の運転条件に基づいて、保険契約料金を顧客毎に算出する。
第2の実施形態における保険契約料金算出装置20が、第1の実施形態における保険契約料金算出装置20と異なる点は、制御部24による保険契約料金の算出方法である。それ以外の点については、第1の実施形態と同様であるため、以下相違点についてのみ説明する。
【0057】
第2の実施形態における制御部24は、水処理設備10内の各ユニット11の特定の運転条件が所定条件範囲から逸脱して悪いほど保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、水処理設備10内の各ユニット11の特定の運転条件が所定条件範囲に近いほど保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。ここで、特定とは、ユニット11の負荷に影響し、メンテナンスの時期が変わるような項目を表す。特定の運転条件は、各ユニット11の運転時間で定められてもよいし、運転と停止との繰り返しの時間比率で定められてもよい。例えば、制御部24は、水処理設備10が常時運転されている場合又は運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出する。また、制御部24は、水処理設備10の運転時間が第2の閾値未満又は運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。
【0058】
図15は、水処理設備10に備えられるユニット11の運転状況を示す概念図である。
図15では、一例として、1つのユニット11の運転状況を示している。
図15において、横軸は時間を表し、縦軸は水質指標を表す。また、水質指標のIは、水質の良し悪しの中間を表す。
図15(A)は常時運転しているユニット11の運転状況の例を示す図であり、
図15(B)は運転と停止とを繰り返しているユニット11の運転状況の例を示す図である。
【0059】
図15(A)及び
図15(B)に示す適正範囲値は、適正運転シミュレーションプログラム252を実行することによって得られた適正範囲値を表す。また、
図15(A)に示す線43及び
図15(B)に示す線44は、適正状況シミュレーションプログラム253を実行することによって得られた運転状況の遷移線を表す。
図15(A)に示すように、線43では、停止の期間がなく常時稼働状態であることがみられる。
【0060】
一方、
図15(B)に示すように、線44では、運転期間と停止期間との状態を繰り返していることがみられる。常時運転されている場合には、ユニット11の劣化が、運転時間が短いユニット11に比べて早いことが想定される。また、常時運転されていない場合であっても、運転の総時間が長い場合には、ユニット11の劣化が、運転の総時間が短いユニット11に比べて早いことが想定される。そのため、保険契約料金算出装置20は、常時運転されている場合又は運転の総時間と停止の総時間の比率が第1の閾値以上である場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、水処理設備10の運転時間が第2の閾値未満又は運転の総時間と停止の総時間の比率が第3の閾値未満(第1の閾値≧第3の閾値)である場合には保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。
【0061】
以上のように構成された第2の実施形態における保険契約料金算出システム100によれば、水処理設備10内の各ユニット11の運転条件に基づいて保険契約料金を算出する。このように、本発明では、水処理設備10を対象に故障保険の契約料金を算出し、故障保険を提供することにより、突発的な故障が生じた際にも保険会社による資金負担により水処理設備10の修理を行うことができる。そのため、水処理設備内のユニットの故障に対応することが可能になる。
【0062】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、保険契約料金算出装置が、水処理設備の構成が類似する水処理設備の状況に基づいて、保険契約料金を顧客毎に算出する。
【0063】
図16は、第3の実施形態における保険契約料金算出装置20aの機能構成を表す概略ブロック図である。
保険契約料金算出装置20aは、通信部21、入力部22、表示部23、制御部24a及び記憶部25aを備える。
保険契約料金算出装置20aは、
図3において制御部24及び記憶部25に代えて制御部24a及び記憶部25aを備える点で保険契約料金算出装置20と構成が異なる。保険契約料金算出装置20aは、他の構成については保険契約料金算出装置20と同様である。そのため、保険契約料金算出装置20a全体の説明は省略し、制御部24a及び記憶部25aについて説明する。
【0064】
制御部24aは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部24aは、プログラムを実行することによって機能する。第3の実施形態における制御部24aは、ユニット11の稼働データに基づいて水処理設備10の構成が類似する水処理設備10を探索し、類似する水処理設備10の運転状況に応じて水処理設備10の未来の所定時期の運転状況を予測し、予測結果に基づいて保険契約料金を顧客毎に算出する。例えば、制御部24aは、予測結果として、被処理水の水質が所定水質範囲から逸脱して悪化すると予測される場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、被処理水の水質が所定水質範囲に近く良好になると予測される場合には保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。
【0065】
記憶部25aは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部25は、保険契約料金算出プログラム251、適正運転シミュレーションプログラム252、適正状況シミュレーションプログラム253、顧客情報データベース254、水処理構成データベース255、契約範囲データベース256、契約管理データベース257、設計条件データベース258、装置運転データベース259、地域特性データベース260、運転状況判定データベース261、保険契約料金データベース262、類似顧客データベース263及び適正率補正データベース264を記憶している。
類似顧客データベース263及び適正率補正データベース264以外のプログラムやデータベースについては、
図3と同様である。そこで、類似顧客データベース263及び適正率補正データベース264についてのみ説明する。
【0066】
類似顧客データベース263は、保険契約料金の算出対象となる顧客に類似する顧客(以下「類似顧客」という。)に関する情報が登録されたデータベースである。類似顧客とは、例えば、契約期間、生産品目、区分及び水処理設備10を構成するユニット11の構成のいずれか2つ以上が類似している顧客を表す。
図17は、類似顧客データベース263の一例を示す図である。類似顧客データベース263は、類似顧客に関する情報を表すレコード(以下「類似顧客レコード」という。)を複数有する。類似顧客レコードは、顧客ID、類似顧客A及び類似顧客Bの各値を有する。顧客IDは、顧客を一意に識別するための情報を表す。類似顧客A及びBは、類似顧客を表す。なお、類似顧客の数は特に限定されない。また、類似顧客毎に、顧客ID及び保険契約料金の算出対象となる顧客との類似度が類似顧客データベース263には登録される。
【0067】
適正率補正データベース264は、適正率の補正に関する情報が登録されたデータベースである。
図18は、適正率補正データベース264の一例を示す図である。適正率補正データベース264は、適正率を補正するための補正係数に関する情報を表すレコードを複数有する。当該レコードは、年月日、適正率、適正率補正係数及び補正後の適正率を表す。
年月日は、適正率が取得された年月日を表す。適正率は、ユニット11が適切な運転をしている割合を表す。
図18では、顧客の適正率R、類似顧客Aの適正率RA及び類似顧客Bの適正率RBが登録されている。適正率補正係数Kは、適正率を補正するための補正係数を表す。適正率補正係数は、類似案件の運転の適正率から算出される係数であり、例えば同日における適正率RA,RBを用いて(RA+RB)/2で算出することができる。補正後の適正率は、今回の顧客における適正率Rと適正率補正係数Kを用いて、例えば、R×Kで算出することができる。算出された補正後の適正率を用いて保険契約料金が算出される。
【0068】
図19は、第3の実施形態における保険契約料金算出装置20aによる保険契約料金算出処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図19において、
図13と同様の処理については
図13と同様の符号を付して説明を省略する。
制御部24aは、水処理構成データベース255及び装置運転データベース259を用いて、類似水処理設備の情報を抽出する(ステップS201)。類似水処理設備とは、顧客の水処理設備10と水処理設備構成、被処理水特性及び処理水特性が類似(例えば、所定の割合以上一致)する他の水処理設備10である。なお、必ずしも水処理設備構成、被処理水特性及び処理水特性の全てが類似する必要はなく、水処理設備構成のみが類似している水処理設備10でもよいし、水処理設備構成に加えて被処理水特性及び処理水特性のいずれかが類似している水処理設備10でもよい。
【0069】
制御部24aは、装置運転データベース259、類似顧客データベース263及び運転適性率補正データベース264を用いて、顧客の水処理設備10の運転状況と、類似水処理設備の運転状況とを比較する(ステップS202)。制御部24aは、地域特性データベース260と、類似水処理設備の運転状況とに基づいて、顧客の水処理設備10の今後の運転状況を予測する(ステップS203)。
【0070】
図20は、水処理設備10に備えられるユニット11の運転状況の予測を示す概念図である。
図20では、一例として、1つの共通のユニットの運転状況を示している。
図20において、横軸は季節を表し、縦軸は水質指標を表す。また、水質指標のIは、水質の良し悪しの中間を表す。
図20(A)は類似水処理設備に備えられるある共通のユニットの運転状況を示す図であり、
図20(B)は水処理設備10に備えられる共通のユニット11の運転状況を示す図である。
【0071】
図20(A)に示す線45は、類似水処理設備の稼働データから得られた類似水処理設備の運転状況の遷移線を表す。点線囲み451に示すように、類似水処理設備では、秋から冬にかけて被処理水の水質が適正範囲値から逸脱して悪化していることがわかる。
図20(B)に示す線46は、適正状況シミュレーションプログラム253を実行することによって得られた運転状況の遷移線を表す。なお、ここで点線47は、水処理設備10の稼働データからは得られていない線である。制御部24aは、類似水処理設備の運転状況を踏まえて点線47で示す動きを予測する。つまり、制御部24aは、
図20(A)の点線囲み451の傾向を踏まえて秋から冬にかけて被処理水の水質が適正範囲値から逸脱して悪化するような動きを予測する。
【0072】
制御部24aは、予測結果として、被処理水の水質が適正範囲値から逸脱して悪化する場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、水質が適正範囲値に近く良好になる場合には保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する(ステップS204)。具体的には、制御部24aは、第1の実施形態と同様に、期間別の保険契約料金を契約期間毎に算出する。この際、制御部24aは、予測結果として被処理水の水質が適正範囲値から逸脱して悪化する期間については保険契約料金が高くなるように期間別の保険契約料金を算出し、水質が適正範囲値に近く良好になる期間については保険契約料金が低くなるように期間別の保険契約料金を算出する。その後、制御部24aは、期間別保険契約料金を全て加算することによって保険契約料金を算出する。
【0073】
以上のように構成された第3の実施形態における保険契約料金算出システム100によれば、保険契約料金の算出対象となる顧客の水処理設備10と類似する類似水処理設備の運転状況を踏まえて水処理設備10の今後の運転状況を予測する。そして、保険契約料金算出装置20aは、予測結果として被処理水の水質が適正範囲値から逸脱して悪化する場合には保険契約料金が高くなるように保険契約料金を算出し、水質が適正範囲値に近く良好になる場合には保険契約料金が低くなるように保険契約料金を算出する。このように、本発明では、水処理設備10を対象に故障保険の契約料金を算出し、故障保険を提供することにより、突発的な故障が生じた際にも保険会社による資金負担により水処理設備10の修理を行うことができる。そのため、水処理設備内のユニットの故障に対応することが可能になる。
【0074】
<変形例>
保険契約料金算出装置20aは、類似水処理設備の保険契約料金を、顧客の保険契約料金として算出してもよい。
【0075】
<第1の実施形態~第3の実施形態に共通する変形例>
保険契約料金算出装置20,20aが備える機能部又はデータベースは、別の筐体に備えられてもよい。例えば、保険契約料金算出システム100が備える不図示の情報処理装置内に、保険契約料金算出装置20,20aが備える機能部又はデータベースの一部が備えられてもよい。
【0076】
上述した実施形態における保険契約料金算出装置20及び20aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10…水処理設備, 11-1~11-3…ユニット, 12…制御部, 13…観測計器, 14…通信部, 20,20a…保険契約料金算出装置, 21…通信部, 22…入力部, 23…表示部, 24,24a…制御部, 25,25a…記憶部