IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図1
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図2
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図3
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図4
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図5
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図6
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図7
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図8
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図9
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図10
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図11
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図12
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図13
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図14
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図15
  • 特許-シリコンウェーハの製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240712BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20240712BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20240712BHJP
   C30B 25/16 20060101ALI20240712BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20240712BHJP
   C23C 16/01 20060101ALI20240712BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
C30B29/06 504F
C30B25/20
C30B25/12
C30B25/16
C30B29/06 504L
C23C16/24
C23C16/01
H01L21/205
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020026333
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130578
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】仙田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】成松 真吾
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213232(JP,A)
【文献】特開2019-142733(JP,A)
【文献】特開2017-088460(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175120(WO,A1)
【文献】特開2010-205866(JP,A)
【文献】特開2019-186449(JP,A)
【文献】特開2009-200503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 25/20
C30B 25/12
C30B 25/16
C23C 16/24
C23C 16/01
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法により育成されたSi単結晶インゴットから製造された基板が、ドーパントがリン(P)であり、抵抗率が1.05mΩcm以下で調整され、結晶中にPが凝集して形成される欠陥の実体がSi-P結晶欠陥である欠陥を含み、
前記Si-P結晶欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつ密度が1×10 12 /cm 未満であり、
前記基板の裏面に、厚さ300nm以上700nm以下のSi酸化膜を形成する工程と、
前記基板のおもて面を鏡面加工する鏡面加工工程と、
前記鏡面加工工程後、
表面にSi酸化膜が形成された、SiもしくはSiCからなる基板保持部材であって、前記基板保持部材のおもて面のSi酸化膜の膜厚が200nm以上500nm以下、かつ前記基板保持部材のおもて面のSi酸化膜の膜厚Xと、前記基板裏面のSi酸化膜の膜厚Yが、Y=C-X,尚、Cは800~1000の定数の関係式の範囲にある基板保持部材に、前記基板を搭載し、
前記基板から距離5mm以内の およびArからなるプロセスガス流速を、0.1m/秒以上、1m/秒以下として、
前記基板を、700℃以上850℃以下の一定温度で、30分以上120分以下保持し、その後、前記プロセスガス流速を維持しつつ、昇温した後に、1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持する熱処理工程と、
前記熱処理工程の後、前記基板の裏面Si酸化膜を、前記基板外周からの距離0.1~1.0mmを外周加工で除去する工程と、
前記熱処理工程の後、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜するエピタキシャル膜成膜工程と、を備えることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記基板保持部材が、基板を保持する保持面を有し、
前記保持面の垂線と、保持される基板表面の垂線とのなす角度を0.5°以上5°以下とすることを特徴とする、請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記基板保持部材が、複数の基板を保持し、かつ保持される基板の間隔を10mm以上、15mm以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記基板保持部材の表面のSi酸化膜は、1000℃以上の温度で、酸素と窒素の2種のソースガスを用いて形成することを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項5】
熱処理工程におけるプロセスガスを、700℃以上850℃未満はH分圧80~50%のAr希釈ガスとし、700℃未満および850℃以上はH分圧0.01~20%のAr希釈ガスとすることを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項6】
エピタキシャル膜成膜工程前の基板に対して、表面清浄化処理を行う表面清浄化処理工程を含み、
前記表面清浄化処理工程では、H(水素)およびHCl(塩化水素)の混合ガスで、表面Siを50nm以上150nm以下エッチングで除去することを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記エピタキシャル膜成膜工程において、
Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上6.0μm/分以下の成膜速度で成膜することを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコンウェーハの製造方法に関し、特に、ドーパントがリン(P)であり、抵抗率が1.05mΩcm以下で調整された基板上に、Si単結晶エピタキシャル膜を成膜するリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOS用エピウェーハの基板抵抗率は、最も進んだウェーハでは1mΩcm以下である。この基板抵抗率を低下させるためには、ドーパント濃度を増加させる必要がある。そのため、nタイプドーパント種は砒素やアンチモンから比較的揮発性の低い燐(P)へと移行しており、その濃度は約1×1020atoms/cc程度となっている。
【0003】
このように、ドーパント濃度を増加してエピタキシャル膜を成長させると、特許文献1、2に記載されているように、積層欠陥(スタッキングフォルト、以下、SFともいう)がエピタキシャル膜に発生する。特に、抵抗率1.1mΩcm以下の基板において、SFが発生しやすかった。
このSF原因となる結晶欠陥は、特許文献1~3において、Pと酸素(O)のクラスター欠陥と推察されると報告されており、熱処理やエピタキシャル成長での抑制技術が報告されている。
【0004】
具体的には、リンがドープされたシリコンウェーハを加熱すると、リンと酸素のクラスター(微小析出物)が形成される。この後、シリコンウェーハ表面に存在する自然酸化膜除去を目的に、水素ガス雰囲気下で熱処理(以下、「水素ベーク処理」という)が施されると、水素ガスによるエッチング作用と、シリコンウェーハの最表層とクラスターとのエッチング速度の違いとから、クラスターが選択的にエッチングされ微小ピットとなる。
この微小ピットが形成されたシリコンウェーハに対してエピタキシャル成長を行うと、微小ピットが起源となってエピタキシャル膜内にSFとなって発生すると推察されることが報告されている。
【0005】
そして、特許文献1には、CZ法により製造された単結晶インゴットから切り出されたシリコンウェーハの裏面に酸化膜を形成する裏面酸化膜形成工程と、前記シリコンウェーハの外周部に存在する前記酸化膜を除去する裏面酸化膜除去工程と、前記裏面酸化膜除去工程後の前記シリコンウェーハに対し、アルゴンガス雰囲気下において1200℃以上1220℃以下の温度で熱処理を行うアルゴンアニール工程と、前記アルゴンアニール工程後の前記シリコンウェーハに対し、水素ガス雰囲気下において1050℃以上1200℃以下の温度で30秒以上300秒以下の熱処理を行う水素ベーク工程と、前記水素ベーク工程後の前記シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を成長させるエピタキシャル膜成長工程とを有するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法が示され、エピタキシャル膜のSFを抑制できることが示されている。
【0006】
また、特許文献2においても、特許文献1と同様に、エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法が示され、エピタキシャル膜のSFを抑制できることが示されている。
【0007】
そして、前記特許文献1、2に示された熱処理は、生産性を考慮し、一般的には複数の基板を基板保持部材に搭載して、一度に処理が行われる(バッチ処理)で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5845143号公報
【文献】特許第6477210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1、2に示された対策では、充分なSF低減が困難であることが、本発明者らの実験を通じて明確となった。実験では、リンがドープされ、抵抗率が0.8mΩcmで、酸素濃度が0.8×1018/cmのチョクラルスキー法で育成した単結晶シリコンウェーハにおいて、アルゴンガス雰囲気下、1200℃で1時間の熱処理を行った。続いて、水素ガス雰囲気下、1180℃で60秒の水素ベーク処理を行った後、ウェーハ表面に3μm厚のエピタキシャル膜を成長させた。その後、KLA-Tencor社製SP-1のDCNモードで測定される90nmサイズ以上のLPD数を評価したところ、SFに起因するLPD密度は少なくとも10ケ/cm以上(ウェーハ1枚あたり3140ケ以上)観察された。
このようにアルゴンガス雰囲気下の熱処理で表層の固溶酸素濃度を充分低減しても、SFの抑制が困難であった。
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、エピタキシャル膜におけるSFの抑制を鋭意、研究した。その結果、本発明者らは、エピタキシャル膜におけるSFの原因がPおよびSiから形成される、Si-P凝集欠陥(Si-P欠陥)であることを見出した。
また、P凝集欠陥(Si-P欠陥)は、その内部に内在的な余剰Si面(SF)を有し(参考文献4および参考文献5)、これがエピタキシャル膜の成膜前の基板表面での結晶歪みとなり、その後のエピタキシャル膜の成膜で、エピタキシャル膜(エピ層)を伝播するSFになることが判明した。
このSi-P欠陥とは、参考文献4および5に示す通り、Siと数atomic%のPを含有する板状欠陥である。Pは原子位置ではなく格子間に存在し、また余剰Si(外部SF)も含まれる。欠陥周囲の抵抗率から推定されるP濃度は0.2atomic%程度であり、局所的にPが凝集し、かつ結晶歪みを有する。
そしてまた、本発明者らは、P凝集欠陥(Si-P欠陥)起因のSFを抑制するためには、特許文献1、2に記載された技術では困難であり、熱処理、エピタキシャル膜の成長等、全てのプロセスを適正化する必要があることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記参考文献4、5、は下記の通りである。
参考文献4:29th International Conference on Defectsin Semiconductors, Atomic structures of grown-in Si-P precipitates inred-phosphorus heavily doped CZ-Si crystals (TuP-16)
参考文献5:第78回 応用物理学会秋季学術講演会 赤燐高ドープCZ-Si結晶における Si-P析出物の構造解析 (7p-PB6-6)
【0012】
更に、本発明者らは、P凝集欠陥(Si-P欠陥)起因のSFを抑制する、熱処理、エピタキシャル膜の成長等プロセスにおいて、リン(P)がドープされた基板からドープ剤であるリン(P)が外方拡散し、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動を引き起こす技術的課題を鋭意、研究した。
【0013】
一般的に、パワーMOSFETでは、ウェーハ裏面にSi酸化膜が形成される。このウェーハ裏面に形成されるSi酸化膜は、エピタキシャル膜の成膜時におけるオートドープを抑制するためのものである。
一方、熱処理中、このSi酸化膜には、炉内ガスによるエッチングが発生する。特に、基板保持部材によって保持される基板の被保持位置におけるSi酸化膜は、基板保持部材に直接的に還元され、Si酸化膜の膜厚がより減少し、Si酸化膜の膜厚が極薄膜化、あるいは基板面が露出する虞があった。
その結果、高濃度のリン(P)がドープされた基板からドープ剤であるリン(P)が外方拡散し、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動を引き起こす虞があった。
【0014】
本発明者らの鋭意研究の結果、P凝集欠陥(Si-P欠陥)起因のSFを抑制する、熱処理、エピタキシャル膜の成長等プロセスにおいて、ウェーハ裏面に形成されるSi酸化膜の膜厚と、基板保持部材に形成されるSi酸化膜の膜厚が特定の寸法関係にある場合には、リン(P)がドープされた基板からドープ剤であるリン(P)の外方拡散が抑制され、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動が抑制されることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、上記情況のもとなされたものであり、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制し、エピタキシャル膜におけるSFを抑制すると共に、抵抗率の変動を抑制できる、シリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するためになされた、本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法により育成されたSi単結晶インゴットから製造された基板が、ドーパントがリン(P)であり、抵抗率が1.05mΩcm以下で調整され、結晶中にPが凝集して形成される欠陥の実体がSi-P結晶欠陥である欠陥を含み、前記Si-P結晶欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつ密度が1×10 12 /cm 未満であり、前記基板の裏面に、厚さ300nm以上700nm以下のSi酸化膜を形成する工程と、前記基板のおもて面を鏡面加工する鏡面加工工程と、前記鏡面加工工程後、表面にSi酸化膜が形成された、SiもしくはSiCからなる基板保持部材であって、前記基板保持部材のおもて面のSi酸化膜の膜厚が200nm以上500nm以下、かつ前記基板保持部材のおもて面のSi酸化膜の膜厚Xと、前記基板裏面のSi酸化膜の膜厚Yが、Y=C-X,尚、Cは800~1000の定数の関係式の範囲にある基板保持部材に、前記基板を搭載し、前記基板から距離5mm以内の およびArからなるプロセスガス流速を、0.1m/秒以上、1m/秒以下として、前記基板を、700℃以上850℃以下の一定温度で、30分以上120分以下保持し、その後、前記プロセスガス流速を維持しつつ、昇温した後に、1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持する熱処理工程と、前記熱処理工程の後、前記基板の裏面Si酸化膜を、前記基板外周からの距離0.1~1.0mmを外周加工で除去する工程と、前記熱処理工程の後、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜するエピタキシャル膜成膜工程と、を備えることを特徴としている。
【0017】
このように、本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法は、熱処理のプロセスにおいて、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制できるため、エピタキシャル膜におけるSFを抑制できる。具体的には、本発明に用いられる基板は、ドーパントがリン(P)であり、抵抗率が1.05mΩcm以下で調整された基板であり、結晶中にPが凝集して形成される欠陥の実体はSi-P結晶欠陥である。
【0018】
尚、Si-P結晶欠陥の最大辺長さ100nm未満、かつその密度1×1012/cm未満である。
Si-P欠陥の最大辺長さが100nm以上の場合に、Si-P欠陥がエピタキシャル膜成膜工程の後、SF(LPD:Light Point Defect(ライト・ポイント・デフェクト))として顕在化する。しかもSi-P欠陥の密度が1×1012/cm以上の場合には、SF個数が著しく増加するため、好ましくない。
【0019】
また、基板の裏面に厚さ300nm以上700nm以下のSi酸化膜が形成され、かつ特定の厚さ寸法を有するSi酸化膜が形成された基板保持部材に、前記基板を搭載して熱処理が施されるため、基板からドープ剤であるリン(P)の外方への拡散が抑制され、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動を抑制できる。
【0020】
そして、前記基板から距離5mm以内のプロセスガス流速を、0.1m/秒以上、1m/秒以下として、前記基板を、700℃以上850℃以下の一定温度で、30分以上120分以下保持する。
700℃以上で熱処理を行うと、ウェーハ裏面に形成されるSi酸化膜から不純物、水分や酸素が離脱する。一方、Si基板表面は850℃以上の温度で反応する。そのため、850℃以上の温度で熱処理すると、Si酸化膜から離脱した不純物等により、ウェーハ表面粗さが悪化する。
【0021】
本発明では、700℃以上850℃以下の温度範囲で一定時間保持することで、Si酸化膜からの不純物等の離脱による、ウェーハ表面粗さの悪化を抑制する。また、P凝集欠陥(Si-P欠陥)の成長温度は700℃未満、これを消滅させる温度領域は700℃以上であるため、700℃以上850℃以下の温度範囲で一定時間保持することで、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を減少させることができる。
また、前記温度範囲での基板の保持時間は、30分以上120分以下である。
尚、この保持時間が30分未満の場合には、酸化膜の密度が不十分となり、またP凝集欠陥(Si-P欠陥)を消滅させることができず、好ましくなく、また保持時間が120分を越える場合には、生産性低下となり、好ましくない。
【0022】
また、前記基板から距離5mm以内のプロセスガス流速を、0.1m/秒以上、1m/秒以下としたのは、裏面酸化膜のエッチングを考慮した理由による。
プロセスガス流速を、0.1m/秒未満の場合には、炉内のガス流れが整流とならず汚染の原因となるため好ましくなく、1m/秒を超える場合には、裏面酸化膜のエッチングが促進されるため好ましくない。
尚、基板から距離5mm以内とは、基板裏面からの距離が5mm以内であることを意味し、5mm以内としたのは、前記裏面酸化膜エッチングの量を決めるのがこの距離である理由による。
【0023】
本発明では、前記基板を700℃以上850℃以下の一定温度で、30分以上120分以下保持した後、更に、プロセスガス流速を維持しつつ、昇温し、1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持する。
このように、1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持するのはSi-P欠陥の歪みを修正するためであり、Si-P欠陥の歪みの修正により、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制できる。
【0024】
尚、その後、前記基板を降温し、700℃以下450℃以上のウェーハの体験時間を10分未満するのが好ましい。このように、700℃以下450℃以上の温度範囲の通過時間を短くすることにより、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができる。
【0025】
また、上記した熱処理におけるプロセスガスを、HおよびArからなる混合ガスとしている。
このように、HおよびArからなる混合ガスを用いて、シリコンウェーハの熱処理が行われるため、H分圧80-50%で850℃未満では、酸化膜内水分などの不純物が還元される。そのためこの緻密化が促進される。また、H分圧0.01-20%で850℃以上では、Hによる酸化膜(SiO)の還元が抑制され減少を抑えることができ、好ましい。
【0026】
また、前記熱処理工程の後、基板の裏面Si酸化膜における、基板外周から距離0.1~1.0mmを加工で除去する。ここで、基板外周から距離0.1~1.0mmとは、基板外周縁から、内方に距離0.1mm以上1.0mm以下の範囲を意味している。
【0027】
このように、基板の裏面Si酸化膜を、基板外周縁から距離0.1mm~1.0mm範囲内の特定寸法の距離まで、加工で除去するのは、その後の長時間熱処理でPが外方拡散する位置となり、この結果、同位置からのエピタキシャル膜成膜工程でのP外方拡散が抑制され、オートドープの対策となるためである。(なお除去面積は僅かであり、長時間熱処理でのウェーハへの内方拡散量は無視できる程度のものである。)
そして、基板外周から距離0.1mm未満のSi酸化膜の除去では、上記効果が得られず、基板外周からの距離1.0mmを越えるSi酸化膜の除去では、酸化膜が存在しない面積が増加することで、長時間熱処理やエピタキシャル膜成膜工程での保持部材からの機械的ダメージが増加するため好ましくない。
【0028】
更に、前記熱処理工程の後、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜される。
Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm未満では、デバイスでの電気制御が困難であり、また10.0μmを越える場合には、生産性やコストの観点から、好ましくない。
【0029】
以上のように、本発明にあっては、熱処理のプロセスにおいて、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することによって、最終的にエピタキシャル膜におけるSFを抑制することができる。また、基板からドープ剤であるリン(P)の外方への拡散が抑制され、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動を抑制できる。
【0030】
ここで、前記基板保持部材が、基板を保持する保持面を有し、前記保持面の垂線と、保持される基板表面の垂線とのなす角度を0.5°以上5°以下とすることが望ましい。
保持面の垂線と、保持される基板表面の垂線とのなす角度が0.5°未満の場合には、ウェーハ裏面と基板保持部材との接触面積増加による両者の酸化膜厚の減少が顕著となり、好ましくない。
一方、保持面の垂線と、保持される基板表面の垂線とのなす角度が5°を越える場合には、保持位置がウェーハベベル部分となり、ベベル部分にダメージが受けるため、好ましくない。
【0031】
前記基板保持部材が、複数の基板を保持し、かつ保持される基板の間隔を10mm以上、15mm以下とすることが好ましい。
基板の間隔が10mm未満の場合には、気相で分解した酸化膜が対抗するウェーハ表面を連続的に酸化かつ気相エッチングされるので、表面粗さ増加の原因となり、好ましくない。基板の間隔が15mmを超える場合には、処理枚数減少により生産性低下となり、好ましくない。
【0032】
また、前記基板保持部材の表面のSi酸化膜は、1000℃以上の温度で、酸素と窒素の2種のソースガスを用いて形成することが望ましい。
酸素と窒素の2種のソースガスを使用するのは、形成する膜を酸窒化とすることで反応による分解を抑制するためである。
【0033】
また、熱処理工程におけるプロセスガスを、700℃以上850℃未満はH分圧80~50%のAr希釈ガスとし、700℃未満および850℃以上はH分圧0.01~20%のAr希釈ガスとすることが望ましい。
700℃以上850℃未満は、H分圧80~50%のAr希釈ガスとしたのは、H分圧80-50%の850℃未満では酸化膜内水分などの不純物が還元されるため、酸化膜の緻密化を促進させるためであり、また700℃未満および850℃以上はH分圧0.01~20%のAr希釈ガスとしたのは、Hによる酸化膜(SiO)の還元を抑制するためである。
【0034】
また、エピタキシャル膜成膜工程前の基板に対して、表面清浄化処理を行う工程を含み、
前記表面清浄化処理工程では、H(水素)およびHCl(塩化水素)の混合ガスで、表面Siを50nm以上150nm以下エッチングで除去することが望ましい。
このように、基板の表面清浄化処理を行うことにより、エピタキシャル膜成膜工程後のSFをより低減することができる。
このとき、HCl(塩化水素)ガスでの欠陥除去が有効であり、H(水素)およびHCl(塩化水素)の混合ガスによる、欠陥除去が好ましい。
ただし、欠陥残存深さは概ね100nm以下であり、その生産性などを考慮すると、表面Siを50nm以上150nm以下のエッチングが適切である。
【0035】
また、Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上6.0μm/分以下の成膜速度で成膜することが望ましい。
Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上、6.0μm/分以下とすることによって、LPDを抑制することができることが判明した。
尚、エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜するのは、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm未満では、デバイスプロセスでの電気耐圧を維持できず、また10.0μmを越える場合には、エピウェーハのコスト増加となるため好ましくないためである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制し、エピタキシャル膜におけるSFを抑制できると共に、抵抗率の変動を抑制できる、シリコンウェーハの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
図2図2は、図1に続く、本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
図3図3は、図2に続く、本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
図4図4は、基板裏面に形成されるSi酸化膜と、基板保持部材のSi酸化膜の化学反応を模式的に示した図である。
図5図5は、基板裏面に形成されるSi酸化膜の膜厚と、基板保持部材のSi酸化膜の膜厚の関係を示した図である。
図6図6は、縦型の基板保持部材を示す図である。
図7図7は、図6に示した基板保持部材の一部拡大図である。
図8図8は、LPDのSi成膜温度および成長速度依存性を示す図である。
図9図9は、水冷体を備える引上げ装置の概略構成図である。
図10図10は実験1の結果を示す図である。
図11図11は実験2の結果を示す図である。
図12図12は実験3の結果を示す図である。
図13図13は実験5の結果を示す図である。
図14図14は実験6の結果を示す図である。
図15図15は実験7の結果を示す図である。
図16図16は実験8の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明にかかるシリコンウェーハの製造方法の実施形態について、図1図3に基づいて説明する。尚、以下に示す実施形態は一例を示すものであって、本発明はこの実施形態に制限されるものではない。
図1に示すように、チョクラルスキー法によりSi単結晶を成長させ、Si単結晶インゴットを製作する(ステップS1)。このSi単結晶成長において、ドーパントはリン(P)であり、引上速度を0.5以上1.0mm/min以下とし、さらに2000以上4000Gauss以下の磁場を印加して、Si単結晶の引上げが行われる。
【0039】
引上速度を0.5以上1.0mm/min以下としたのは以下の理由による。
低抵抗領域での結晶が、セル成長する組成的過冷却現象を抑制するためには、G(融液温度勾配)/V(引上速度)を大きくする必要がある。
即ち、V(引上速度)を小さくすることにより、組成的過冷却現象を抑制することができるが、引上速度を減少させた場合、700℃以下(600℃~700℃以下の温度範囲)の通過時間が長くなり、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができない。
このため、引き上げ炉内に水冷体を設置して結晶を強制的に冷却し、かつ引上速度を0.5以上1.0mm/min以下とし、さらに磁場印加を2000以上4000Gauss以下で行うことで、温度勾配Gを大きくし、組成的過冷却現象を抑制すると共に、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制する。この製造条件は、結晶成長においては、600℃以上700℃以下の通過時間がSi-P欠陥の成長を促進する温度領域となるため、この通過時間を短縮するための条件となる。
【0040】
具体的には、引上速度を0.5mm/min未満の場合には、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができず、引上速度が1.0mm/minを越える場合には、組成的過冷却現象を抑制することができないため、好ましくない。
【0041】
そして、引上げ炉内に水冷体を設置して、成長したSi単結晶を強制的に冷却して形成する。例えば、図9に示すように、引上げ装置11の引上げ炉12の上部と遮蔽板14との間に円筒状の水冷体13を設置することにより、引上げ中のシリコン単結晶15を強制的に冷却することで、700℃以下600℃以上の滞在時間を短縮することができる。 尚、図中、符号16は石英ガラスルツボ、符号17はヒータ、符号18は磁場印加部、符号19はシリコン単結晶15を引上げるワイヤーである。
このように、水冷体によって、成長したSi単結晶を強制的に冷却して、600℃未満の温度に冷却する。即ち、700℃以下600℃以上のウェーハの体験時間を短くすることにより、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができる。
【0042】
そして、Si単結晶インゴットを、スライス角度が主表面方位に対して0.1°以上0.4°以下の範囲となるようにスライスし、基板を製作する(ステップS2)。
前記基板のスライス角度は、エピタキシャル膜の成膜時のSFの成長と消滅に影響を与える。主表面方位はSi(100)であり、スライス角度は前記主表面方位に対して0.1°以上0.4°以下の範囲である。
即ち、スライス角度は前記主表面方位に対して0.1°以上0.4°以下の範囲とすることにより、SFの欠陥消滅にはエピタキシャル膜の成膜中にSi原子が移動をおこなうパスとなるSiステップ幅が形成される。このSiステップ幅が形成されることにより、Si原子が移動することができ、Si原子歪みが除去され、SFを消滅させることができる。
【0043】
そして、このようにして製作された基板は、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、結晶中にPが凝集して形成される欠陥の実体がSi-P結晶欠陥である欠陥を含んでいる(ステップS3)。
抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下の基板は、社会的に求められている基板である。しかも、上記した基板の製作方法(ステップS1、S2)によっても、Si-P結晶欠陥は抑制されるものの、残存し、Si-P結晶欠陥を含んでいる。
尚、前記抵抗率、前記固溶酸素濃度は、ドーパント濃度、引上速度、磁場強度を調整することによって得ることができる。また、所定の抵抗率、所定の固溶酸素濃度を得るために、変更しても良い。
【0044】
このようにして製作された基板のSi-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満であることが望ましい。
Si-P欠陥の最大辺長さが100nm以上の場合に、Si-P欠陥がエピタキシャル膜成膜工程の後、SF(LPD)として顕在化する。またSi-P欠陥の密度が1×1012/cm以上の場合においてもSF(LPD)が残存することとなる。
よって、Si-P欠陥の最大辺長さが100nm未満であることが好ましく、またSi-P欠陥の密度が1×1012/cm未満であることが望ましく、このように調整された結晶成長をおこなうことが好ましい。
【0045】
次に、基板の裏面にSi酸化膜を形成する(ステップS4)。
パワーMOSFETでは、一般的にウェーハ裏面にSi酸化膜が形成される。このSi酸化膜は、例えば500℃未満の低温CVDにより形成される。
この基板の裏面Si酸化膜は、エピタキシャル膜の成膜時におけるオートドープを抑制するためのものであり、一般的には、減圧下、および400~500℃の範囲で、300~700nmの厚さで成膜される。
【0046】
そしてまた、この基板の裏面に形成されるSi酸化膜の膜厚Yと、後述する基板保持部材に形成されるSi酸化膜の膜厚Xとは、Y=C-Xの関係式の範囲内にある。尚、Cは800~1000の定数である。
この基板の裏面に形成されるSi酸化膜の膜厚Yと、後述する基板保持部材に形成されるSi酸化膜の膜厚Xとが、上記した特定の範囲内にあるため、基板保持部材に、前記基板を搭載して熱処理が施した際、基板からドープ剤であるリン(P)の外方への拡散が抑制され、エピタキシャル膜(層)及びここに形成されるデバイス活性層の抵抗率の変動を抑制できる。
【0047】
具体的に説明すると、図4に示すように、基板裏面に形成されたSi酸化膜(LTO)よりSiOが脱離する。
Si+SiO⇒ 2SiO(gas)
そして、この脱離2SiO(gas)が、表面にSi酸化膜が形成されたSiもしくはSiCからなる基板保持部材(Siボート)のSi酸化膜(熱酸化膜)を酸化し、Siを放出する。
2SiO(gas)+SiO⇒ 2SiO+Si
尚、基板保持部材(Siボート)のSi酸化膜(熱酸化膜)からもSiO(gas)が脱離するが、基板裏面に形成されたSi酸化膜(LTO)の1/100なので無視できる。
【0048】
このように、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)が酸化されると常に同じ状態で、基板を保持(載置)することが困難になる。
そのため、基板裏面に形成されるSi酸化膜と、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)の両方の酸化膜の厚さを規定する必要がある。
まず、Siの膜中拡散を抑制するために、そしてその後のドーパント外方拡散を抑制するために、基板裏面に形成されるSi酸化膜(LTO)の膜厚は、300nm以上、700nm以下、基板保持部材(Siボート)のSi酸化膜(熱酸化膜)の膜厚は、200nm以上、500nm以下が必要である。
【0049】
基板裏面に形成されるSi酸化膜の膜厚が、300nm未満の場合には、酸化膜を通過するPが原因で基板からのオートドープが顕著となり、700nmを超える場合には、生産性低下およびコスト増加となるので好ましくない。
また、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)の膜厚が、200nm未満の場合には、裏面酸化膜の減少が顕著であり、500nm以下を越える場合には、生産性低下およびコスト増加となるので好ましくない。
【0050】
そして、基板裏面に形成されたSi酸化膜からの供給されるSiO(gas)による、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)の膜厚の増加量と、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)の酸化による膜厚の減少量が等しくなれば、基板保持部材のSi酸化膜(熱酸化膜)の膜厚変化が少なくなる。ただしむやみに厚くすると、コスト高となる。
【0051】
図4に示すように、基板裏面に形成されたSi酸化膜(LTO)よりSiOが脱離し、この脱離SiOが熱酸化膜を拡散し、酸化SiおよびSi原子を放出する。基板保持部材の熱酸化膜が酸化されると常に同じ状態でウェーハを保持することが困難になるため、LTOと基板保持部材の熱酸化膜の厚さを考慮する必要がある。LTOと基板保持部材の酸化膜中拡散速度はその厚さに依存するので、一方が厚い場合は一方が薄いことで、両者の膜厚変化のバランスがたもたれる。これを図に示すと図5にようになり、斜線部分が適正な範囲となる。
【0052】
続いて、前記基板裏面のSi酸化膜の形成工程の後、前記基板のおもて面に、鏡面加工が施される(ステップS5)。
この鏡面研磨は、研磨布等による機械的な効果、そしてスラリー等での化学的な効果でなされるのが一般的である。尚、この鏡面研磨で、直接的にSi-P欠陥が減少することはない。しかしながら、鏡面研磨でより表面粗さを低減することで、その後の熱処理でSi-P欠陥を消滅しやすい状態にすることができる。
【0053】
次に、図2に示すように、前記おもて面が鏡面加工された基板に対し、酸溶液もしくは酸雰囲気でそのおもて面酸化膜を除去する(ステップS6)。
Si表面の清浄化はもちろん、Si-Pの欠陥消滅にもおもて面の自然酸化膜を除去する必要があるため、酸化膜除去工程を含むことが望ましい。薬液でこれをおこなう場合の一例を挙げれば、使用薬液HF、純水で希釈されたHF濃度は0.1~5%、処理時間は30~120秒が好ましい。
【0054】
次に、表面にSi酸化膜が形成された、SiもしくはSiCからなる基板保持部材に、基板を搭載する(ステップS7)。
基板保持部材としては、例えば、図6に示すような縦型ウエハボート1を用いることができる。この縦型ウエハボート1は、底板2と、天板3と、4つの支柱4とから概略構成されて、シリコン(Si)または炭化珪素(SiC)から構成され、その表面にはSi酸化膜4a1が形成されている。
【0055】
この4つの支柱4の下端部には底板2が取り付けられ、また支柱4の上端部には天板3が、上記底板21と平行をなすように固定されている。また前記支柱4の縦方向に、複数の棚部4aが形成され、前記棚部4aに基板が搭載されるように構成されている。
また、図7に示すように、前記縦型ウエハボート1が、複数の基板Wを保持し、かつ保持される基板Wの間隔tを10mm以上、15mm以下とする。基板Wの間隔tが10mm未満の場合には、酸化膜からの脱離ガスのウェーハ表面への影響を抑制するためである。
基板Wの間隔tが15mmを越えると、生産性が落ち好ましくない。
【0056】
また、図7に示すように、基板を保持する棚部4aの保持面の垂線L1と、保持される基板表面の垂線L2とのなす角度θを0.5°以上5°以下に形成されている。
この保持面の垂線L1と、保持される基板表面の垂線L2とのなす角度を0.5°以上5°以下とするのは、基板の裏面に形成されたSi酸化膜と基板保持部材(縦型ウエハボート1の棚部4a)との接触面積をより減少、かつ最小とできる範囲である。
尚、最大値5°は一般的な半導体Si基板のベベル部テーパ角度を考慮したものである。
【0057】
この基板保持部材は、例えば、図7に示すような縦型のウエハボート1であって、その表面にSi酸化膜4a1の膜厚Xが200nm以上500nm以下形成されている。
また、この基板保持部材のSi酸化膜の膜厚Xと、前記基板裏面のSi酸化膜の膜厚Yが、Y=C-X,尚、Cは800~1000の定数の関係式の範囲になるように、予め基板保持部材にSi酸化膜に形成する。
【0058】
前記基板保持部材の表面のSi酸化膜は1000℃以上の温度で、酸素と窒素の2種のソースガスを使用することによって、形成される。1000℃以上が必要なのは、これ以上の温度であればSi酸化膜の密度がほぼ一定値になるためである。また部材の強度を保持するため、その上限は1200℃が好ましい。
ソースガスとして窒素ガスを使用することによって、Si酸化膜中に、Siが含まれ、Si酸化膜の強度が強化される。これは、形成する膜を酸窒化とすることで反応による分解を抑制するためである。
【0059】
続いて、図2に示すように、前記基板を700℃以上850℃以下の一定温度で、30分以上120分以下保持する、熱処理を行う(ステップS8)。
前記したSi酸化膜は、約700℃以上で緻密化がなされる。その際、Si酸化膜から脱離する不純物、水分や酸素が存在する。一方、Si基板表面は850℃以上で反応し、
この850℃以上で前記脱離があると、ウェーハ表面粗さが増加する。尚、700℃以上850℃未満の温度において、Si-P欠陥内のPの分解および拡散促進もなされるが、温度帯が低いため、Si-P欠陥の増大や密度増加は起きない。
そのため、前記脱離反応を前記温度範囲、即ち、700℃以上850℃未満の一定温度とすることにより、Si酸化膜から不純物、水分や酸素を外方拡散できると共に、ウェーハ表面粗さの増大を抑制できる。
【0060】
また、前記温度範囲での基板の保持時間は、30分以上120分以下である。
尚、この保持時間が30分未満の場合には、外方拡散が促進できず好ましくなく、また保持時間が120分を越える場合には、生産性低下となり、好ましくない。
【0061】
また、この熱処理の炉内雰囲気を、HおよびArからなる混合ガス(プロセスガス)で行う。H分圧80~50%のAr希釈ガスとしたのは、Si-P欠陥消滅を促進しつつ、同様にHによる物理的なSi酸化膜エッチングを抑制するためである。
【0062】
更に、前記基板から距離5mm以内のHおよびArからなる混合ガス(プロセスガス)流速を、0.1m/秒以上、1m/秒以下とする。
基板からの距離5mm以内のプロセスガス流速が1m/秒以下とされるのは、基板裏面の酸化膜から離脱するガスの抑制するためである。また、SiOガスなどが高密度となることで、繰り返しの反応を抑制するためである。
したがって、プロセスガス流速を、0.1m/秒未満の場合には、炉内のガス流れが整流とならず汚染の原因となるので好ましくなく、1m/秒を超える場合には、裏面酸化膜のエッチングが促進されるため好ましくない。
尚、基板から距離5mm以内とは、基板裏面からの距離5mm以内であり、5mm以内としたのは、酸化膜のエッチングを決める流速の影響範囲を考慮したものである。
【0063】
続いて、昇温した後に、基板を1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持する(ステップS9)。尚、この熱処理の炉内雰囲気も、ステップS8と同様に、HおよびArからなる混合ガスであり、流速も維持される。
このように、1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持することにより、Si-P欠陥の歪みを修正することができる。その結果、エピタキシャル膜のSF欠陥が抑制される。
尚、1100℃未満、また30分未満では、Si-P欠陥の歪みを修正することができず、1250℃を越える温度、また120分を超える時間では、基板が変形するため、好ましくない。
【0064】
更に、この後、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を10分未満とするように、降温する(ステップS10)。
尚、この熱処理の炉内雰囲気も、ステップS8と同様に、HおよびArからなる混合ガスであり、流速も維持される。
このように、450℃以上700℃未満の通過時間を短くすることにより、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができる。
【0065】
また、上記熱処理工程における炉内雰囲気(HおよびArからなる混合ガス(プロセスガス))を、700℃以上850℃未満の場合には、H分圧80~50%のAr希釈ガスとし、700℃未満および850℃以上の場合には、H分圧0.01~20%のAr希釈ガスとすることが望ましい。
700℃以上850℃未満において、H分圧80~50%のAr希釈ガスとしたのは、H分圧80-50%の850℃未満では酸化膜内水分などの不純物が還元されるため、酸化膜の緻密化を促進させるためである。
また700℃未満および850℃以上において、H分圧0.01~20%のAr希釈ガスとしたのは、Hによる酸化膜(SiO)の還元を抑制するためである。
【0066】
図3に示すように、前記熱処理工程の後、基板の裏面Si酸化膜を、基板外周縁からの距離0.1~1.0mmを外周加工で除去する(ステップS11)。
熱処理により部分的エッチングされた酸化膜外周部を除去することで、その後にプロセスでの基板裏面Si酸化膜の剥離を抑制するためである。ただし、オートドープに影響ない程度であるウェーハ外周からの距離0.1mm~1.0mmとする。
【0067】
このように、基板の裏面Si酸化膜を、基板外周縁から距離0.1mm~1.0mm範囲内の特定寸法の距離まで、加工で除去するのは、その後の長時間熱処理でPが外方拡散する位置となり、この結果、同位置からのエピタキシャル膜成膜工程でのP外方拡散が抑制され、オートドープの対策となるためである。(なお除去面積は僅かであり、長時間熱処理でのウェーハへの内方拡散量は無視できる程度のものである。)
そして、基板外周から距離0.1mm未満のSi酸化膜の除去では、上記効果が得られず、基板外周からの距離1.0mmを越えるSi酸化膜の除去では、酸化膜が存在しない面積が増加することで、長時間熱処理やエピタキシャル膜成膜工程での保持部材からの機械的ダメージが増加するため好ましくない。
【0068】
次に、図3に示すように、エピタキシャル膜成膜工程前の基板に対して、表面清浄化処理を行う(ステップS12)。
この表面清浄化処理工程では、H(水素)およびHCl(塩化水素)の混合ガスで、表面Siを50nm以上150nm以下エッチングで除去する。
このように、基板の表面清浄化処理を行うことにより、エピタキシャル膜成膜工程後のSFをより低減することができる。このとき、HCl(塩化水素)ガスでの欠陥除去が有効であり、H(水素)およびHCl(塩化水素)の混合ガスによる、欠陥除去がより好ましい。
ただし、欠陥残存深さは概ね100nm以下であり、その生産性などを考慮すると、表面Siを50nm以上150nm以下のエッチングが適切である。
【0069】
続いて、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜する。Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上6.0μm/分以下の成膜速度で成膜する(ステップS13)。
【0070】
研究の結果、SF低減に適切な、Si単結晶エピタキシャル膜の成長速度および温度の組み合わせがあることが判明した。
図8に示すように、Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上、6.0μm/分以下とすることによって、LPDを抑制することができることが判明した。
尚、Si単結晶エピタキシャル膜を1.3μm未満では、デバイスでの電気制御が困難であり、また10.0μmを越える場合には、生産性やコストの観点から、好ましくない。
【0071】
Si成膜は、表面の原子ステップ上をSi原子が移動することにより、Si成膜なされる。この過程で、Si-P欠陥起因のSi原子の配列の乱れを、このSi原子移動で修正することにより、SFを抑制することができる。
したがって、Si成膜とこの修正とを両立するためには、Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上、6.0μm/分以下の条件が必要である。
【実施例
【0072】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により制限されるものではない。
【0073】
(実験1)
Si単結晶の引上げ速度の変化、磁場強度の変化、水冷体の強制冷却の有無によって、基板に生じるSi-P欠陥のサイズ、密度を検証した。
まず、ドーパントがリン(P)であり、抵抗率が1.05mΩcm以下で調整され、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下になるようにSi単結晶を引き上げた。
この単結晶成長において、引上速度を0.3mm/min~1.4mm/minと変えた。また磁場印加を3000Gaussとした。また、引き上げ炉内に水冷体を設置した場合と、設置しない場合で、Si-P欠陥の最大辺長さを調べるとともに、Si-P欠陥密度を調べた。この結果を図10に示す。
尚、Si-P欠陥サイズは透過電子顕微鏡により測定し、また密度は、透過電子顕微鏡での欠陥観察とし、その観察領域からSi-P欠陥密度を算出した。
【0074】
その結果、水冷体を設置した場合と、設置しない場合のいずれの場合についても、Si-P欠陥の最大辺長さは100nm未満であった。
また、水冷体を設置しない場合、引上げ速度を増大させることで、密度は減少する傾向で、約0.7mm/min以上で、1×1012/cm以下となる。ただし、そこからの減少率は非常に小さい。
一方、水冷体を設置した場合、引上げ速度を0.5mm/min以上とすることで、密度は1×1012cm 以下となった。引上げ速度を1mm/minより大きくしても、その速度の増大につれて、密度は減少傾向だが、効果が小さく、また生産性の低下になるため、1mm/min以下の引き上げ速度が好ましい。
【0075】
(実験2)
この実験2は、図2のステップS7に示される、Y=C-X,尚、Cは800~1000の定数の関係式の範囲にある場合には、スリップ累積長が10mm未満となることを検証した。
ドーパントは赤燐、引上げ速度は、0.7mm/min、磁場強度を3000Gaussとした。そして、抵抗率は0.80Ωcm、酸素濃度は0.8×1018atoms/cc、スライス角度は0.3°とした基板を得た。
そして、裏面酸化膜成膜を430℃および厚さ500nmの条件下で形成し、基板のおもて面を、研磨布およびコロイダルシリカ含有スラリーの機械的かつ化学的条件下の条件下で鏡面加工した。
【0076】
また、基板の熱処理時間を変えて、その裏面酸化膜(LTO)の厚さを変更した。また、処理をおこなうSiボートに形成される熱酸化膜の厚さを変更した。
そして、両者を組み合わせ、基板を1200℃および60分で処理し、各ウェーハのスリップ累積長を、X線トポグラフィーで測定した。その結果を図11に示す。図11では、〇はスリップ累積長が10mm未満、△はスリップ累積長が10mm以上50mm以下、×はスリップ累積長が50mmを超えることを示ししている。
【0077】
そして、Siボートに形成される熱酸化膜の膜厚が200nm以上500nm以下、かつ熱酸化膜の膜厚Xと、前記基板裏面のSi酸化膜(LTO)の膜厚Yが、Y=C-X,尚、Cは800~1000の定数の関係式の範囲にある場合には、スリップ累積長が10mm未満となり、良好な結果を得ることができた。
【0078】
(実験3)
この実験3は、図2のステップS8に示される、基板を700℃以上850℃未満の一定温度で30分以上120分以下保持することによって、ウェーハ表面粗さ増加を低減し、これにより発生するウェーハ表面ピット(LPD)も抑制、そしてSi-P欠陥消滅促進に関して、検証実験を行った。
【0079】
抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。
続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。このおもて面が鏡面加工された基板に対し、1200℃および60分の処理を縦型拡散炉にておこなった。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、HおよびArからなる混合ガス(H分圧1%のAr希釈ガス)とした。
【0080】
前記1200℃および60分の熱処理の昇温時に、基板を650℃、700℃、800℃、850℃、900℃の温度で、15分、30分、120分、180分保持する、熱処理を行った。
尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、HおよびArからなる混合ガス(H分圧60%のAr希釈ガス)とした。このときの基板から距離5mm以内のプロセスガス流速を、
0.7m/秒とした。
そして、この基板に対して、Si単結晶エピタキシャル膜を、膜厚4.0μm、成膜速度4.0μm/分および1150℃で成膜した。尚、この成膜前のHClでのSi表層除去量を、100nmとした。この際のHCl分圧は0.5%とした。
【0081】
検証手法はKLA-Tencor社製のSurfScan SP1によるLPD数とした。その結果を図12に示す。図12に示されるように、LPD数は30分で概ね一定値になることが分かった。生産性を考慮すると、保持時間は、30分から120分が好ましいことが確認された。
また、650℃、または900℃で保持した場合のLPD数の悪化は、この温度で保持したために、ウェーハ裏面のSi酸化膜から不純物、水分、酸素が脱離して、ウェーハ表面粗さを増加させ、またこれによるピットが発生し、エピ後にもLPDとして残存したためと考えられる。したがって、基板の熱処理温度は、700℃~850℃の温度が好ましい。
【0082】
(実験4)
実験3において、前記1200℃および60分の熱処理の昇温時に、基板を800℃の温度で、120分保持し、基板から距離5mm以内のプロセスガス流速を、0.05m/秒、0.1m/秒、0.5m/秒、1.0m/秒、および1.5m/秒と変えて実験した。
以上のウェーハの目視での外観検査をおこなった結果、0.05m/秒ではウェーハおもて側での明確な白濁が、1.5m/秒では裏面酸化膜のエッチングによるピンホールが、双方で確認され、0.1m/秒、0.5m/秒、1.0m/秒、ではこれらが確認されなかった。
【0083】
(実験5)
この実験5は、図2のステップS9に示される、基板を1100℃以上1250℃以下の一定温度で30分以上120分以下保持することにより、Si-P欠陥の歪みを修正することができることが認められることを、検証実験した。
まず、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。
【0084】
そして、このおもて面が鏡面加工された基板に対し、1050℃、1100℃、1200℃、1250℃、1270℃での処理を15分、30分、120分、180分縦型拡散炉にて行った。尚、この処理前の昇温時に、基板を800℃および120分保持する、熱処理を行った。また、この際の熱処理の炉内雰囲気を、HおよびArからなる混合ガス(H分圧1%のAr希釈ガス)とした。
そして、この基板に対して、Si単結晶エピタキシャル膜の成膜前に、HClでSi表層を100nm除去した。この際のHCl分圧は0.5%とした。この際の温度は1180℃とした。
その後、Si単結晶エピタキシャル膜を、膜厚4.0μm、成膜速度4.0μm/分および1150℃で成膜した。
【0085】
検証手法はKLA-Tencor社製のSurfscan SP1によるLPD数とした。その結果を図13に示す。図13に示されるように、LPD数は30分で概ね一定値になることが分かった。生産性を考慮すると、保持時間は、30分から120分が好ましいことが確認された。また、図13に示されるように、温度増加でLPD減少するが、スリップや生産性の問題があり、好ましくは1100~1250℃である。
【0086】
(実験6)
この実験6は、図2のステップS10に示される、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を10分未満とするように降温し、450℃以上700℃未満の通過時間を短くすることにより、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができることが認められることを、検証実験した。
まず、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。
【0087】
続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。
続いて、このおもて面が鏡面加工された基板に対し、1200の温度で、60分保持する熱処理をおこなった。尚、熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧1%のAr希釈ガス)とした。
【0088】
この1200の温度で、60分保持する熱処理前の昇温時に、基板を800℃および120分保持する、熱処理を行った。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧60%のAr希釈ガス)とした。
上記熱処理終了後の、炉出し温度を700℃に設定し、ここからの炉出し時速度を変化させた。一般大気に露出したSiウェーハをサーモグラフィーで温度測定し、700℃保持された時間と足しあわせ、体験時間を算出した。
【0089】
これにより、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を3分、5分、8分、10分、12分、15分、20分と変えた。
そして、この基板に対して、Si単結晶エピタキシャル膜の成膜前に、HClでSi表層を100nm除去した。この際のHCl分圧は0.5%とした。この際の温度は1180とした。
【0090】
その後、Si単結晶エピタキシャル膜を、膜厚4.0μm、成膜速度4.0μm/分および1150℃で成膜した。その結果を図14に示す。図14に示すように、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を10分未満とするように降温することにより、LPD数が100個以下になり、Pの再凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができることが認められた。
【0091】
(実験7)
この実験7は、図3のステップS11に示される、基板の裏面Si酸化膜を、基板外周縁からの距離0.1~1.0mmを外周加工で除去する効果を検証した。
まず、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。
【0092】
続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。
続いて、このおもて面が鏡面加工された基板に対し、1200の温度で、60分保持する熱処理をおこなった。尚、熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧1%のAr希釈ガス)とした。
この1200の温度で、60分保持する熱処理前の昇温時に、基板を800℃および120分保持する、熱処理を行った。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧60%のAr希釈ガス)とした。
【0093】
上記熱処理終了後の、炉出し温度を700℃に設定し、ここからの炉出し時速度を変化させた。一般大気に露出したSiウェーハをサーモグラフィーで温度測定し、700℃保持された時間と足しあわせ、体験時間を算出した。
これにより、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を8分とした。
【0094】
そして、基板の裏面Si酸化膜を、基板外周縁から距離0.1mm、0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mmの範囲まで、除去範囲を変えた。
そして、この基板に対して、Si単結晶エピタキシャル膜の成膜前に、HClでSi表層を100nm除去した。この際のHCl分圧は0.5%とした。この際の温度は1180とした。
【0095】
その後、Si単結晶エピタキシャル膜を、膜厚4.0μm、成膜速度4.0μm/分、および1150℃で成膜した。
図15に示す通り、外周加工幅が0.1mm未満では、被覆された部分における長時間処理時のリンの外方拡散が不十分であるため、エピ時にこの部分の酸化膜がエッチングされることで、この部分からのリンの外方拡散が抵抗バラツキを悪化させる。外周加工幅が1mm以上では非被覆面積が大きいため、長時間処理時でもリンの外方拡散が不十分となり、この結果、エピ時にこの部分からのリンの外方拡散が抵抗バラツキを悪化させる。好ましい加工幅は、0.1mmから1.0mmの範囲である。
【0096】
(実験8)
この実験8は、図3のステップS12に示される、基板の表面のSi除去量と、Si-P欠陥によるSF(LPD)について検証した。検証手法はKLA-Tencor社製のSurfScan SP1によるLPD数とした。
まず、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。
【0097】
続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。このおもて面が鏡面加工された基板に対し、800℃で120分、1200℃で60分の処理を縦型拡散炉にておこなった。また、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間8分とした。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、HおよびArからなる混合ガス(H分圧60%のAr希釈ガス)とした。
そして、この基板に対して、Si単結晶エピタキシャル膜を、膜厚4.0μm、成膜速度4.0μm/分、および1150℃で成膜した。この成膜前のHClでのSi表層除去量を、最大500nmまで変化させた。この際のHCl分圧は0.5%とした。 そして、この基板の上のLPD(65nm)の個数を測定した。
【0098】
その結果を、図16に示す。この図16において、縦軸のeaは個数を表している。尚、LPD(65nm)は、主表面に存在する、標準粒子相当サイズで65nm以上の散乱強度を有するLPDを測定することを意味する。
【0099】
図16からわかるように、基板表面のSi除去を行わない場合には、LPD(65nm)の個数が1万個であるのに対して、基板の表面のSi除去量を50nm~200nmとした場合には、LPD(65nm)の個数が100個~200個であることが判明した。基板の表面のSi除去量は、生産性を考慮し、50nm以上150nm以下が好ましい。
【0100】
(実験9)
Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上6.0μm/分以下の成膜速度で成膜し、エピタキシャル膜を1.3μm以上10.0μm以下の厚さで成膜することが、P凝集欠陥(Si-P欠陥)を抑制することができることが認められることを、検証実験した。
まず、抵抗率が1.05mΩcm以下、固溶酸素濃度が0.9×1018atoms/cm以下、Si-P欠陥は、最大辺長さが100nm未満、かつその密度が1×1012/cm未満の基板の裏面にSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、400から450℃の範囲で、500nmの厚さで成膜した。
【0101】
続いて、前記基板のおもて面に、鏡面加工を施した。鏡面加工の除去量は15μmとした。このおもて面が鏡面加工された基板に対し、1200℃および60分の処理を縦型拡散炉にておこなった。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧1%のAr希釈ガス)とした。
この1200および60分の処理前の昇温時に、基板を800℃の温度で、120分保持する、熱処理を行った。尚、この際の熱処理の炉内雰囲気を、 およびArからなる混合ガス( 分圧60%のAr希釈ガス)とした。
そして、この処理の降温について、700℃未満、450℃以上のウェーハの体験時間を8分とした。
【0102】
その後、この基板に対して、エピ成長前に、HClでのSi表層除去量を100nmで行った。この際のHCl分圧は0.5%、温度は1180℃とした。
そして、この基板に対して、成膜温度1100℃,1125℃、1150℃で、成膜速度を変化させて、Si成膜した。その速度は2.4μm/分、3.8μm/分、4μm/分、5μm/分、6.4μm/分と変えて、成膜した。Siエピ成膜膜厚は、4μmとした。
そして、KLA-Tencor社製のSurfScan SP1によるLPD数を測定した。その結果を図8に示す。
【0103】
図8に示すように、Si成膜温度を1100以上1150℃以下、かつその速度を3.5μm/分以上、6.0μm/分以下とすることによって、LPDを抑制することができることが判明した。尚、Si成膜温度が1200℃では、基板にスリップ等の問題が顕在化するため、Si成膜温度を1100℃以上1150℃以下とするのが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16