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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】光学積層体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240712BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240712BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020039734
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021140102
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗祐
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185007(JP,A)
【文献】特開2013-033098(JP,A)
【文献】特開2009-175434(JP,A)
【文献】特開2020-024364(JP,A)
【文献】特開2019-091029(JP,A)
【文献】特開2015-021975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0059300(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0076792(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差積層体と、第2貼合層と、光学フィルムとをこの順に有する光学積層体であって、
前記位相差積層体は、第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含み、
前記第1位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層を含み、
前記第2位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層である第2液晶層を含み、
前記第1位相差層の突刺し弾性率E1は、35gf/mm以上であり、
前記突刺し弾性率E1と、前記第2位相差層の突刺し弾性率E2とは、下記式(1)の関係を満たし、
前記第1位相差層の厚みt1と、前記第2位相差層の厚みt2とは、下記式(2’)の関係を満たし、
前記位相差積層体の第1位相差層側に、前記第2貼合層を介して前記光学フィルムが設けられている、光学積層体。
0.7≦E1/E2≦1.3 (1)
0.1≦t1/t2≦0.8 (2’)
【請求項2】
前記突刺し弾性率E2は、55gf/mm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1位相差層は、前記第1液晶層と第1配向層との積層体であり、
前記第1配向層は、前記第1液晶層の前記第1貼合層側とは反対側に設けられる、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第2位相差層は、前記第2液晶層と第2配向層との積層体であり、
前記第2配向層は、前記第2液晶層の前記第1貼合層側とは反対側に設けられる、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
さらに、前記第2位相差層の前記第1貼合層側とは反対側に第2基材層を有し、
前記第2基材層は、当該第2基材層と前記第2液晶層との間で分離可能に設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記光学フィルムは、直線偏光層の片面又は両面に保護層が設けられた偏光板を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
光学フィルム、第2貼合層、第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含む光学積層体の製造方法であって、
第1基材層、第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含む位相差積層体を準備する工程と、
前記位相差積層体から前記第1基材層を分離する工程と、
前記第1基材層を分離することによって露出した露出面と前記光学フィルムとを、前記第2貼合層を介して貼合する工程と、を含み、
前記位相差積層体は、
前記第1基材層と前記第1位相差層とを有する基材層付き第1位相差層、及び、第2基材層と前記第2位相差層とを有する基材層付き第2位相差層を準備する工程と、
前記基材層付き第1位相差層の前記第1位相差層側と前記基材層付き第2位相差層の前記第2位相差層側とを、前記第1貼合層を介して貼合する工程と、を含む製造方法によって製造され、
前記第1位相差層は、前記第1基材層上で重合性液晶化合物を重合して形成した第1液晶層を含み、
前記第2位相差層は、前記第2基材層上で重合性液晶化合物を重合して形成した第2液晶層を含み、
前記第1位相差層の突刺し弾性率E1は、35gf/mm以上であり、
前記突刺し弾性率E1と、前記第2位相差層の突刺し弾性率E2とは、下記式(1)の関係を満たし、
前記第1位相差層の厚みt1と、前記第2位相差層の厚みt2とは、下記式(2’)の関係を満たす、光学積層体の製造方法。
0.7≦E1/E2≦1.3 (1)
0.1≦t1/t2≦0.8 (2’)
【請求項8】
前記基材層付き第1位相差層は、前記第1基材層と前記第1液晶層との間に第1配向層を有する、請求項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項9】
前記基材層付き第2位相差層は、前記第2基材層と前記第2液晶層との間に第2配向層を有する、請求項7又は8に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記第2貼合層を介して貼合する工程よりも後に、前記第2基材層を分離する工程を含む、請求項のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差積層体、光学積層体、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)を用いた有機EL表示装置は、液晶表示装置等に比べて軽量化や薄型化が可能であるだけでなく、幅広い視野角、速い応答速度、高いコントラスト等の高画質を実現できるため、スマートフォンやテレビ、デジタルカメラ等、様々な分野で用いられている。有機EL表示装置では、外光の反射による視認性の低下を抑制するために、円偏光板等を用いて反射防止性能を向上させることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1及び2には、有機EL表示装置等の画像表示パネルに適用される反射防止機能を有する光学積層体として、直線偏光層を含む偏光板に、液晶化合物により形成され互いに接着層を介して積層された2層の位相差層を設けた構造の光学積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-102286号公報
【文献】特開2015-40953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位相差層に用いる液晶化合物が重合性液晶化合物である場合、位相差層の光学耐久性を向上させるために重合度(硬化度)を高くすることが求められている。重合性液晶化合物の重合度が高い位相差層を他の位相差層と積層して位相差積層体を製造し、これを円偏光板等の光学積層体の製造に供した場合に、位相差積層体に発生するカールが発生することがあった。このようなカールは、位相差積層体の取扱い性を低下させ、光学積層体の製造過程での作業性を低下させる原因となり得る。
【0006】
本発明は、光学積層体等の製造に際して取扱い性が良好な位相差積層体、光学積層体、及びこれらの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の位相差積層体、光学積層体、及びこれらの製造方法を提供する。
〔1〕 第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含む位相差積層体であって、
前記第1位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層を含み、
前記第2位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層である第2液晶層を含み、
前記第1位相差層の突刺し弾性率E1は、35g/mm以上であり、
前記突刺し弾性率E1と、前記第2位相差層の突刺し弾性率E2とは、下記式(1)の関係を満たす、位相差積層体。
0.7≦E1/E2≦1.3 (1)
〔2〕 前記突刺し弾性率E2は、55g/mm以下である、〔1〕に記載の位相差積層体。
〔3〕 前記第1位相差層の厚みt1と、前記第2位相差層の厚みt2とは、下記式(2)の関係を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の位相差積層体。
0.1≦t1/t2≦1.3 (2)
〔4〕 前記第1位相差層は、前記第1液晶層と第1配向層との積層体であり、
前記第1配向層は、前記第1液晶層の前記第1貼合層側とは反対側に設けられる、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の位相差積層体。
〔5〕 前記第2位相差層は、前記第2液晶層と第2配向層との積層体であり、
前記第2配向層は、前記第2液晶層の前記第1貼合層側とは反対側に設けられる、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の位相差積層体。
〔6〕 さらに、前記第2位相差層の前記第1貼合層側とは反対側に第2基材層を有し、
前記第2基材層は、当該第2基材層と前記第2液晶層との間で分離可能に設けられている、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の位相差積層体。
〔7〕 さらに、前記第1位相差層の前記第1貼合層側とは反対側に第1基材層を有し、
前記第1基材層は、当該第1基材層と前記第1液晶層との間で分離可能に設けられている、〔6〕に記載の位相差積層体。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の位相差積層体と、第2貼合層と、光学フィルムとをこの順に有する光学積層体であって、
前記位相差積層体の第1位相差層側に、前記第2貼合層を介して前記光学フィルムが設けられている、光学積層体。
〔9〕 前記光学フィルムは、直線偏光層の片面又は両面に保護層が設けられた偏光板を含む、〔8〕に記載の光学積層体。
〔10〕 第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含む位相差積層体の製造方法であって、
第1基材層と前記第1位相差層とを有する基材層付き第1位相差層、及び、第2基材層と前記第2位相差層とを有する基材層付き第2位相差層を準備する工程と、
前記基材層付き第1位相差層の前記第1位相差層側と前記基材層付き第2位相差層の前記第2位相差層側とを、前記第1貼合層を介して貼合する工程と、を含み、
前記第1位相差層は、前記第1基材層上で重合性液晶化合物を重合して形成した第1液晶層を含み、
前記第2位相差層は、前記第2基材層上で重合性液晶化合物を重合して形成した第2液晶層を含み、
前記第1位相差層の突刺し弾性率E1は、35g/mm以上であり、
前記突刺し弾性率E1と、前記第2位相差層の突刺し弾性率E2とは、下記式(1)の関係を満たす、位相差積層体の製造方法。
0.7≦E1/E2≦1.3 (1)
〔11〕 前記第1位相差層の厚みt1と、前記第2位相差層の厚みt2とは、下記式(2)の関係を満たす、〔10〕に記載の位相差積層体の製造方法。
0.1≦t1/t2≦1.3 (2)
〔12〕 前記基材層付き第1位相差層は、前記第1基材層と前記第1液晶層との間に第1配向層を有する、〔10〕又は〔11〕に記載の位相差積層体の製造方法。
〔13〕 前記基材層付き第2位相差層は、前記第2基材層と前記第2液晶層との間に第2配向層を有する、〔10〕~〔12〕のいずれかに記載の位相差積層体の製造方法。
〔14〕 光学フィルム、第2貼合層、第1位相差層、第1貼合層、及び第2位相差層をこの順に含む光学積層体の製造方法であって、
〔7〕に記載の位相差積層体、又は、〔10〕~〔13〕のいずれかに記載の位相差積層体の製造方法によって製造された位相差積層体を準備する工程と、
前記位相差積層体から前記第1基材層を分離する工程と、
前記第1基材層を分離することによって露出した露出面と前記光学フィルムとを、前記第2貼合層を介して貼合する工程と、を含む、光学積層体の製造方法。
〔15〕 さらに、前記第2貼合層を介して貼合する工程よりも後に、第2基材層を分離する工程を含む、〔14〕に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学積層体等の製造に際して取扱い性が良好な位相差積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の位相差積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2】本発明の位相差積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3】本発明の位相差積層体のさらに他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4】本発明の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図5】本発明の光学積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図6】本発明の位相差積層体の製造工程の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の位相差積層体、光学積層体、及びこれらの製造方法について説明する。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0011】
(位相差積層体)
図1~3は、本実施形態の位相差積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。本実施形態の位相差積層体1a,1b,1c(以下、これらをまとめて「位相差積層体1」ということがある。)は、図1及び図2に示すように、第1位相差層10、第1貼合層30、及び第2位相差層20をこの順に含む。第1位相差層10は、重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層12を含む。第2位相差層20は、重合性液晶化合物の硬化物層である第2液晶層22を含む。第1位相差層10の突刺し弾性率E1は、35g/mm以上である。第1位相差層10の突刺し弾性率E1と、第2位相差層20の突刺し弾性率E2とは、下記式(1):
0.7≦E1/E2≦1.3 (1)
の関係を満たす。
【0012】
第1位相差層10は、重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層12そのものであってもよく、第1液晶層12と第1配向層11との積層体であってもよい。第1位相差層10が第1配向層11を有する場合、第1配向層11は、第1液晶層12の第2位相差層20側とは反対側に設けられる。
【0013】
第1位相差層10の突刺し弾性率E1は、35g/mm以上であり、38g/mm以上であってもよく、40g/mm以上であってもよく、42g/mm以上であってもよい。突刺し弾性率E1は、通常60g/mm以下であり、55g/mm以下であってもよく、50g/mm以下であってもよい。突刺し弾性率E1は、温度23℃、相対湿度50%における値であり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。第1位相差層10が、第1液晶層12と第1配向層11との積層体である場合、第1位相差層10の突刺し弾性率E1は第1配向層11側からニードルを突き刺して測定する。第1位相差層10では、突刺し弾性率E1の温度依存性は、23~80℃の範囲では認められない。
【0014】
第1位相差層10の突刺し弾性率E1は、例えば、第1液晶層12を構成する重合性液晶化合物の種類や重合度(硬化度)、第1液晶層12に含まれる重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤、架橋剤等の添加剤の種類や量、第1配向層11を構成する硬化性樹脂組成物中の重合性化合物の種類や重合度(硬化度)、第1位相差層10の厚み等によって調整することができる。通常これらの重合度(硬化度)が大きくなると突刺し弾性率E1の値も大きくなる。また、第1位相差層10の突刺し弾性率E1は、第1液晶層12の架橋密度や第1配向層11の架橋密度によっても調整することができる。例えば、第1液晶層の12の架橋密度を大きくするためには、第1液晶層12を形成するための重合性液晶化合物として、分子内に重合性基を3つ以上有する多官能性重合性液晶化合物を用いればよい。
【0015】
第1位相差層10の突刺し弾性率E1を所定の範囲とするためには、例えば重合性液晶化合物の重合度(硬化度)や第1配向層11の重合度(硬化度)を制御した予備実験を行い、所望の突刺し弾性率E1とすることができる。このような予備実験として、例えば第1液晶層の重合度を制御する場合は次のように行うことができる。まず、第1基材層(第1配向層が設けられていてもよい)上に、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物の塗布層を設け、この塗布層に紫外線等を照射して、第1基材層上に第1液晶層を形成する。上記塗布層に含まれていた重合性液晶化合物の重合性基の量と、上記第1液晶層に含まれる重合性液晶化合物の重合性基の量との比率(相対値)を、赤外線吸収(IR)スペクトル測定等により測定して、重合度(硬化度)を決定する。このとき得られた第1液晶層を含む第1位相差層の突刺し弾性率E1を測定し、上記で決定した重合度と突刺し弾性率E1とを関係付ける。この手順を、重合性液晶化合物の種類や紫外線等の照射量等を変更して行う。このようにして重合度と突刺し弾性率E1との相関関係を得ることにより、所望の突刺し弾性率E1を得るための重合度を決定することができる。
【0016】
第1位相差層10の厚みt1は、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、1.7μm以上であってもよく、2.0μm以上であってもよい。厚みt1は、通常8μm以下であり、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。
【0017】
第2位相差層20は、重合性液晶化合物の硬化物層である第2液晶層22そのものであってもよく、第2液晶層22と第2配向層21との積層体であってもよい。第2位相差層20が第2配向層21を有する場合、第2配向層21は、第2液晶層22の第1位相差層10側とは反対側に設けられる。
【0018】
第2位相差層20の突刺し弾性率E2は、55g/mm以下であることが好ましく、50g/mm以下であってもよく、45g/mm以下であってもよい。突刺し弾性率E2は、通常5g/mm以上であり、8g/mm以上であってもよく、10g/mm以上であってもよく、20g/mm以上であってもよい。突刺し弾性率E2は、温度23℃、相対湿度50%における値であり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。第2位相差層20が、第2液晶層22と第2配向層21との積層体である場合、第2位相差層20の突刺し弾性率E2は第2配向層21側からニードルを突き刺して測定する。第2位相差層20では、突刺し弾性率E2の温度依存性は、23~80℃の範囲では認められない。
【0019】
第2位相差層20の突刺し弾性率E2は、例えば、第2液晶層22を構成する重合性液晶化合物の種類や重合度(硬化度)、第2液晶層22に含まれる重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤、架橋剤等の添加剤の種類や量、第2配向層21を構成する硬化性樹脂組成物中の重合性化合物の種類や重合度(硬化度)、第2位相差層20の厚み等によって調整することができる。通常これらの重合度(硬化度)が大きくなると突刺し弾性率E2の値も大きくなる。また、第2位相差層20の突刺し弾性率E2は、第2液晶層22の架橋密度や第2配向層21の架橋密度によっても調整することができる。例えば、第2液晶層の22の架橋密度を大きくするためには、第2液晶層22を形成するための重合性液晶化合物として、分子内に重合性基を3つ以上有する多官能性重合性液晶化合物を用いればよい。
【0020】
第2位相差層20の突刺し弾性率E2を所定の範囲とするために行う予備実験の方法としては、上記した第1位相差層の突刺し弾性率E1を所望の範囲とするために行う予備実験の方法と同様の方法を挙げることができる。
【0021】
第2位相差層20の厚みt2は、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であってもよく、2.0μm以上であってもよく、2.5μm以上であってもよい。厚みt2は、通常8μm以下であり、5μm以下であってもよく、3.5μm以下であってもよく、3.0μm以下であってもよい。
【0022】
位相差積層体1は、図2及び図3に示す位相差積層体1b,1cのように、第2位相差層20の第1貼合層30側とは反対側に第2基材層25を有していてもよい。第2基材層25は、第2位相差層20に直接接して設けられていることが好ましい。第2基材層25は、第2基材層25と第2液晶層22との間で分離可能に設けられていることが好ましい。第2基材層25と第2液晶層22との間で分離可能とは、第2基材層25が第2液晶層22に対して剥離可能であること、もしくは、第2基材層25と第2液晶層22との間に第2配向層21が存在する場合、第2配向層21に対して剥離可能であること、又は、第2配向層21が第2液晶層22に対して剥離可能であることをいう。したがって、第2基材層25が第2配向層21に対して剥離可能となっている場合には、後述する光学積層体5a(図4)から第2基材層25を分離すると、第2液晶層22上に第2配向層21が残留する。第2配向層21が第2液晶層22に対して剥離可能となっている場合には、光学積層体1aから第2基材層25を分離すると、第2基材層25とともに第2配向層21が剥離される。
【0023】
位相差積層体1は、図3に示す位相差積層体1cのように、第2基材層25に加えて、第1位相差層10の第1貼合層30側とは反対側に第1基材層15を有していてもよい。第1基材層15は、第1位相差層10に直接接して設けられていることが好ましい。第1基材層15は、第1基材層15と第1液晶層12との間で分離可能に設けられていることが好ましい。第1基材層15と第1液晶層12との間で分離可能とは、第1基材層15が第1液晶層12に対して剥離可能であること、もしくは、第1基材層15と第1液晶層12との間に第1配向層11が存在する場合、第1配向層11に対して剥離可能であること、又は、第1配向層11が第1液晶層12に対して剥離可能であることをいう。したがって、第1基材層15が第1配向層11に対して剥離可能となっている場合には、位相差積層体1cから第1基材層15を分離すると、第1液晶層12上に第1配向層11が残留する。第1配向層11が第1液晶層12に対して剥離可能となっている場合には、位相差積層体1cから第1基材層15を分離すると、第1基材層15とともに第1配向層11が剥離される。
【0024】
第1貼合層30は、第1位相差層10と第2位相差層20とを貼合するための層である。第1貼合層30は、第1位相差層10及び第2位相差層20に直接接していることができる。第1貼合層30は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。
【0025】
位相差積層体1において、第1位相差層10の突刺し弾性率E1と第2位相差層20の突刺し弾性率E2とは、上記式(1)の関係を満たす。E1/E2は、0.7以上であり、0.9以上であってもよく、1.0以上であってもよい。E1/E2は、1.3以下であり、1.2以下であってもよく、1.1以下であってもよい。
【0026】
第1液晶層12は、第1基材層15上で第1配向層11を介して又は第1配向層11を介することなく、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布して乾燥し、重合性液晶化合物を重合して硬化することによって形成することがある。同様に、第2液晶層22は、第2基材層25上で第2配向層21を介して又は第2配向層21を介することなく、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布して乾燥し、重合性液晶化合物を重合して硬化することによって形成することがある。この場合、第1液晶層12及び第2液晶層22には、上記乾燥や上記重合に伴う硬化によって生じた収縮応力が残留していると考えられる。また、第1位相差層10が重合性化合物を用いて形成された第1配向層11を含む場合、及び、第2位相差層20が重合性化合物を用いて形成された第2配向層21を含む場合には、それぞれ第1位相差層10及び第2位相差層20にも、重合性化合物の重合に伴う硬化によって生じた収縮応力が残留していると考えられる。
【0027】
第1位相差層10(第1液晶層12、第1配向層11)に残留する収縮応力は、第1位相差層10が第1基材層15上に存在する状態では、第1基材層15によってある程度抑制されている。この収縮応力は、位相差積層体1bの製造工程又は後述する光学積層体5a,5b(図4図5)の製造工程等において、位相差積層体1cから第1基材層15を分離することにより解放される。同様に、第2位相差層20(第2液晶層22、第2配向層21)に残留する収縮応力は、第2位相差層20が第2基材層25上に存在する状態では、第2基材層25によってある程度抑制されている。この収縮応力も、後述する光学積層体5aの製造工程等において、位相差積層体1bに含まれる第2基材層25を分離することにより解放される。そのため、第1基材層15及び/又は第2基材層25の分離により解放される収縮応力により、位相差積層体1a,1bの両面における収縮の程度が大きく異なってくると、位相差積層体1a,1bにカール量の大きいカールが発生すると考えられる。
【0028】
第1位相差層10及び第2位相差層20のような位相差層に残留する収縮応力は、上記した重合性液晶化合物や重合性化合物の重合度(硬化度)が大きいほど大きくなる傾向にある。したがって、第1位相差層10の突刺し弾性率E1及び第2位相差層20の突刺し弾性率E2が大きくなるほど、上記した収縮応力も大きいと考えられる。
【0029】
位相差積層体1では、突刺し弾性率E1,E2を、上記した式(1)の関係を満たすようにしているため、第1位相差層10の収縮応力と第2位相差層20の収縮応力との差が抑制されていると考えられる。そのため、突刺し弾性率E1が上記した範囲にある収縮応力が大きいと考えられる第1位相差層10を用いた場合にも、後述する光学積層体5a,5bの製造工程等において位相差積層体1a,1bに発生するカールを抑制することができる。これにより、位相差積層体1a,1bの取扱い性を良好にし、光学積層体5a,5bの製造時の作業性の低下を抑制することができる。
【0030】
第1位相差層10の厚みt1と第2位相差層20の厚みt2とは、下記式(2):
0.1≦t1/t2≦1.3 (2)
の関係を満たすことが好ましい。t1/t2は、0.3以上であってもよく、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよい。t1/t2は、1.2以下であってもよく、1.0以下であってもよく、0.8以下であってもよい。
【0031】
第1位相差層10の厚みが大きいほど、第1基材層15を分離したときに解放される第1位相差層10の収縮応力が大きいと考えられる。第2位相差層20についても同様に、厚みが大きいほど、第2基材層25を分離したときに解放される収縮応力が大きいと考えられる。そのため、位相差積層体1では、厚みt1,t2を上記した式(2)の関係を満たすようにすることにより、第1位相差層10の収縮応力と第2位相差層20の収縮応力との差をより一層小さくすることができると考えられる。そのため、突刺し弾性率E1が上記した範囲にある第1位相差層10を用いた場合にも、後述する光学積層体5a,5bの製造工程等において位相差積層体1a,1bに発生するカールを抑制することができる。これにより、位相差積層体1a,1bの取扱い性を良好にし、光学積層体5a,5bの製造時の作業性の低下を抑制することができる。
【0032】
図1に示す位相差積層体1aのカール量を表すMDカール値及びTDカール値は、いずれも±20mm以内であることが好ましく、±15mm以内であることがより好ましく、±13mm以内であってもよい。位相差積層体1aのMDカール値及びTDカール値は、少なくとも一方が±13mm以内であってもよく、±10mm以内であってもよい。MDカール値及びTDカール値は、それぞれフィルム搬送方向側のカール値及びフィルム搬送方向に直交する方向側のカール値であり、後述する実施例に記載の方法によって決定することができる。
【0033】
(光学積層体)
図4及び図5は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。本実施形態の光学積層体5a,5b(以下、両者をまとめて「光学積層体5」ということがある。)は、図1に示す位相差積層体1a又は図2に示す位相差積層体1bと、第2貼合層32と、光学フィルム40とをこの順に有する。光学積層体5では、位相差積層体1a,1bの第1位相差層10側に、第2貼合層32を介して光学フィルム40が設けられている。位相差積層体1a,1bは、上記したように、第1配向層11を含んでいても含んでいなくてもよく、また、第2配向層21を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0034】
上記したように、第1位相差層10の突刺し弾性率E1が上記した範囲にある場合であっても、突刺し弾性率E1及び突刺し弾性率E2が上記式(1)の関係にあることにより、位相差積層体1a,1bに発生するカールを抑制することができる。これにより、光学積層体5a,5bに発生するカールを抑制できることも期待できる。
【0035】
光学フィルム40は、直線偏光層;直線偏光層の片面又は両面に保護層が設けられた偏光板;偏光板の片面にプロテクトフィルムが設けられたプロテクトフィルム付き偏光板;反射フィルム;半透過型反射フィルム;輝度向上フィルム;光学補償フィルム;防眩機能付きフィルム等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。光学フィルム40は、少なくとも直線偏光層を含むことが好ましく、偏光板を含むことがより好ましい。光学フィルム40が直線偏光層の片面にのみ保護層を有する偏光板を含む場合、偏光板の直線偏光層側と位相差積層体1a,1bとが貼合されていることが好ましい。光学フィルムがプロテクトフィルム付き偏光板を有する場合、プロテクトフィルム付き偏光板の偏光板側と位相差積層体1a,1bとが貼合されていることが好ましい。
【0036】
第2貼合層32は、位相差積層体1a,1bと光学フィルム40とを貼合するための層である。第2貼合層32は、位相差積層体1a,1bの第1位相差層10及び光学フィルム40に直接接していることができる。第2貼合層32は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。
【0037】
光学積層体5bは、さらに、第2位相差層20側に、第3貼合層及び剥離フィルム(図示せず)をこの順に有していてもよい。第3貼合層は、光学積層体5bを、表示装置の画像表示素子に貼合するために用いることができる。第3貼合層は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。剥離フィルムは、第3貼合層に対して剥離可能なフィルムであり、第3貼合層の使用時まで、第3貼合層の表面を被覆保護することができる。
【0038】
光学積層体5は、円偏光板であってもよい。この場合、光学フィルムは、直線偏光層、偏光板、又はプロテクトフィルム付き偏光板を含み、第1位相差層10及び第2位相差層20のうちの少なくとも一方は、1/4波長位相差層であることが好ましい。光学積層体5が円偏光板である場合、光学積層体5の層構造としては、光学フィルムが偏光板である場合、[i]偏光板、1/2波長位相差層、1/4波長位相差層をこの順に有する、[ii]偏光板、逆波長分散性の1/4波長位相差層、ポジティブCプレートをこの順に有する、又は、[iii]偏光板、ポジティブCプレート、逆波長分散性の1/4波長位相差層をこの順に有するものが挙げられる。
【0039】
光学積層体5は、例えば、液晶表示装置や有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置の画像表示素子に貼合して用いることができる。
【0040】
(位相差積層体の製造方法)
図6は、本実施形態の位相差積層体の製造工程の一例を模式的に示す概略断面図である。位相差積層体1の製造方法は、上記で説明した第1位相差層10及び第2位相差層20を含むものであり、第1位相差層10は上記で説明した突刺し弾性率E1を有し、第1位相差層10及び第2位相差層20は上記で説明した比(E1/E2)の関係を満たす。位相差積層体1の製造方法は、
第1基材層15と第1位相差層10とを有する基材層付き第1位相差層18、及び、第2基材層25と第2位相差層20とを有する基材層付き第2位相差層28を準備する工程と(図6の(a)及び(b))、
基材層付き第1位相差層18の第1位相差層10側と基材層付き第2位相差層28の第2位相差層20側とを、第1貼合層30を介して貼合する工程と(図6の(c))、を含む。
【0041】
第1位相差層10は、第1基材層15上で重合性液晶化合物を重合して形成した第1液晶層12を含み、第2位相差層20は、第2基材層25上で重合性液晶化合物を重合して形成した第2液晶層22を含む。そのため、基材層付き第1位相差層18を準備する工程は、第1基材層15上で重合性液晶化合物を重合して第1液晶層12を形成する工程を含んでいてもよい。また、基材層付き第2位相差層28を準備する工程は、第2基材層25上で重合性液晶化合物を重合して第2液晶層22を形成する工程を含んでいてもよい。
【0042】
第1液晶層12は、第1基材層15に設けられた第1配向層11上で重合性液晶化合物を重合して形成してもよい。同様に、第2液晶層22は、第2基材層25に設けられた第2配向層21上で重合性液晶化合物を重合して形成してもよい。この場合、基材層付き第1位相差層18を準備する工程は、第1基材層15上に第1配向層11を形成する工程を含んでいてもよい。また、基材層付き第2位相差層28を準備する工程は、第2基材層25上に第2配向層21を形成する工程を含んでいてもよい。
【0043】
第1貼合層30を介して貼合する工程は、例えばまず、基材層付き第1位相差層18の第1位相差層10側、及び/又は、基材層付き第2位相差層28の第2位相差層20側に、第1貼合層30を形成するための第1貼合剤組成物層を形成する。次に、第1貼合剤組成物層から第1貼合層30を形成する。第1貼合剤組成物層から第1貼合層30を形成する方法は、第1貼合剤組成物層の種類に応じて選択すればよい。例えば、貼合剤組成物が接着剤組成物である場合は、活性エネルギー線の照射や加熱処理等を行って貼合剤を硬化することにより第1貼合層30を形成してもよく、第1貼合剤組成物が粘着剤組成物である場合は、第1貼合剤組成物層を第1貼合層30としてもよい。これにより、図6の(c)や図3に示すように、第1基材層15、第1位相差層10、第1貼合層30、第2位相差層20、及び第2基材層25がこの順に積層された位相差積層体1cを得ることができる。
【0044】
位相差積層体1の製造方法は、さらに、位相差積層体1cから第1基材層15を分離する工程を含んでいてもよい。これにより、図2に示すように、第1位相差層10、第1貼合層30、第2位相差層20、及び第2基材層25がこの順に積層された位相差積層体1bを得ることができる。
【0045】
上記したように、第1位相差層10の突刺し弾性率E1が上記した範囲にある場合であっても、突刺し弾性率E1及び突刺し弾性率E2が上記式(1)の関係にあることにより、位相差積層体1bに発生するカールを抑制することができる。これにより、後述する光学積層体5の製造時の作業性の低下を抑制することができる。
【0046】
(光学積層体の製造方法)
光学積層体5の製造方法は、
図3に示す位相差積層体1c(第1基材層15、第1位相差層10、第1貼合層30、第2位相差層20、及び第2基材層25がこの順に積層されたもの)を準備する工程と、
位相差積層体1cから第1基材層15を分離する工程と、
第1基材層15を分離することによって露出した第1露出面(露出面)と光学フィルム40とを、第2貼合層32を介して貼合する工程と、を含む。
【0047】
光学積層体5の製造方法は、さらに、第2貼合層32を介して貼合する工程よりも後に、第2基材層25を分離する工程を含んでいてもよい。光学積層体5の製造方法は、さらに、第2基材層25を分離する工程によって露出した第2露出面に、第3貼合層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0048】
位相差積層体1cを準備する工程は、上記した位相差積層体1の製造方法によって位相差積層体1cを製造する工程を含んでいてもよい。
【0049】
第1基材層15を分離する工程は、図3に示す位相差積層体1cから第1基材層15を分離して、図2に示すように第1位相差層10、第1貼合層30、第2位相差層20、及び第2基材層25がこの順に積層された位相差積層体1bを得る工程である。第1基材層15の分離は、第1基材層15のみを剥離するものであってもよく、位相差積層体1cが第1配向層11を含む場合は、第1基材層15とともに第1配向層11を剥離するものであってもよい。これにより、第1基材層15と第1位相差層10に含まれる第1液晶層12とを分離することができる。
【0050】
第2貼合層32を介して貼合する工程は、位相差積層体1cから第1基材層15を分離することによって露出した第1露出面と光学フィルム40とを貼合する工程である。第1露出面は、位相差積層体1cが第1配向層11を含むか否か、また、第1基材層15の分離によって第1配向層11が剥離されるか否かにより、第1液晶層12又は第1配向層11となり得る。
【0051】
第2貼合層32を介して貼合する工程は、例えばまず、第1露出面側及び/又は光学フィルム40側に、第2貼合層32を形成するための第2貼合剤組成物層を形成する。次に、第2貼合剤組成物層から第2貼合層32を形成する。第2貼合剤組成物層から第2貼合層32を形成する方法は、第2貼合剤組成物層の種類に応じて選択すればよい。例えば、第2貼合剤組成物が接着剤組成物である場合は、活性エネルギー線の照射や加熱処理等を行って貼合剤を硬化することにより第2貼合層32を形成してもよく、第2貼合剤組成物が粘着剤組成物である場合は、第2貼合剤組成物層を第2貼合層32としてもよい。これにより、図4に示す光学積層体5aを得ることができる。
【0052】
第2基材層25を分離する工程は、光学積層体5aから第2基材層25を分離する工程である。第2基材層25の分離は、第2基材層25のみが剥離されてもよく、位相差積層体1b,1cが第2配向層21を含む場合は、第2基材層25とともに第2配向層21も剥離されてもよい。
【0053】
第3貼合層を形成する工程は、光学積層体5aから第2基材層25を分離することによって露出した第2露出面に、第3貼合層を形成する工程であり、第3貼合層のみを形成してもよく、第3貼合層及び剥離フィルムがこの順に積層された積層構造を形成してもよい。第2露出面は、光学積層体5aが第2配向層21を含むか否か、また、第2基材層25の分離によって第2配向層21が剥離されるか否かにより、第2液晶層22又は第2配向層21となり得る。
【0054】
第3貼合層は、粘着剤層であることが好ましい。この場合、第3貼合層を形成する工程は、剥離フィルム上に第3貼合層を形成した剥離フィルム付き貼合層の第3貼合層側を、第2露出面に貼合することによって行ってもよい。これにより、第3貼合層の第2位相差層20とは反対側に、第3貼合層を被覆保護する剥離フィルムが設けられた光学積層体1を得ることができる。
【0055】
上記したように、第1位相差層10の突刺し弾性率E1が上記した範囲にある場合であっても、突刺し弾性率E1及び突刺し弾性率E2が上記式(1)の関係にあることにより、位相差積層体1a,1bに発生するカールを抑制することができる。これにより、光学積層体5の製造時の作業性の低下を抑制し、光学積層体5a,5bに発生するカールを抑制できることも期待できる。
【0056】
以下、本実施形態の位相差積層体、光学積層体、及びこれらの製造方法で用いた各部材の詳細について説明する。
【0057】
(第1位相差層、第2位相差層)
第1位相差層及び第2位相差層(以下、両者をまとめて「位相差層」ということがある。)は、位相差特性を有する層であって、それぞれ重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層及び第2液晶層を含む。第1位相差層は、第1液晶層に加えて第1配向層を有していてもよい。第2位相差層も同様に、第2液晶層に加えて第2配向層を有していてもよい。
【0058】
(第1液晶層、第2液晶層)
第1液晶層及び第2液晶層(以下、両者をまとめて「液晶層」ということがある。)は、重合性液晶化合物の硬化物層である。重合性液晶化合物としては、棒状の重合性液晶化合物及び円盤状の重合性液晶化合物を用いることができ、これらのうちの一方を用いてもよく、これらの両方を含む混合物を用いてもよい。棒状の重合性液晶化合物が基材層(第1基材層又は第2基材層)に対して水平配向又は垂直配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の円盤面に対して直交する方向に存在する。棒状の重合性液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報(請求項1等)に記載のものを好適に用いることができる。円盤状の重合性液晶化合物としては、特開2007-108732号公報(段落[0020]~[0067]等)、特開2010-244038号公報(段落[0013]~[0108]等)に記載のものを好適に用いることができる。
【0059】
重合性液晶化合物を重合することによって形成される液晶層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶化合物を適した方向に配向させればよい。重合性液晶化合物が棒状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶化合物が円盤状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸と遅相軸とは直交する。重合性液晶化合物の配向状態は、配向層と重合性液晶化合物との組み合わせによって調整することができる。
【0060】
重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性液晶化合物を2種類以上を併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有することが好ましい。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0061】
液晶層の厚みは特に限定されないが、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であってもよく、通常8μm以下であり、5μm以下であってもよく、3μm以下であることが好ましい。
【0062】
(第1配向層、第2配向層)
第1配向層及び第2配向層(以下、両者をまとめて「配向層」という場合がある。)は、これらの配向層上に形成される液晶層に含まれる重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。後述する液晶層形成用組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有するものが好ましい。
【0063】
配向層は、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して垂直配向した垂直配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して水平配向した水平配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して傾斜配向させる傾斜配向層であってもよい。第1配向層と第2配向層とは、同じ配向層であってもよく、異なる配向層であってもよい。
【0064】
配向層としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができ、第1配向層と第2配向層とは、同じ種類の層であってもよく、異なる種類の層であってもよい。
【0065】
配向性ポリマー層は、配向性ポリマーを溶剤に溶解した組成物を基材層(第1基材層又は第2基材層)に塗布して溶剤を除去し、必要に応じてラビング処理をして形成することができる。この場合、配向規制力は、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層では、配向性ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。
【0066】
光配向性ポリマー層は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物を基材層(第1基材層又は第2基材層)に塗布し、紫外線等の光を照射することで形成することができる。特に水平方向に配向規制力を発現する場合等においては、偏光を照射することによって形成することができる。この場合、配向規制力は、光配向性ポリマー層では、光配向性ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0067】
グルブ配向層は、例えば感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光、現像等を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層を基材層(第1基材層又は第2基材層)に転写して硬化する方法、基材層に活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層に、凹凸を有するロール状の原盤を押し当てる等により凹凸を形成して硬化させる方法等によって形成することができる。
【0068】
配向層は、配向層が基材層と共に剥離除去される場合、配向層を基材層と共に剥離除去しやすいという観点から、重合性化合物が重合した樹脂を含むことが好ましい。上記の重合性化合物は、重合性基を有する化合物であって、通常は、液晶状態とならない非液晶性の重合性非液晶性化合物である。重合性化合物の重合性基同士が反応して重合性化合物が重合することにより、樹脂となる。
【0069】
配向層は、配向層が基材層と共に剥離除去される場合、公知の単官能又は多官能の(メタ)アクリレート系モノマーを重合開始剤下で硬化させた硬化物等である樹脂を含むことが好ましい。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。なお、樹脂としては、これらの1種類であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。このような樹脂を配向層として用いる場合、液晶層を形成した後、得られた積層物を偏光板等の他の層と積層させる工程の前後において、基材層付き位相差層(基材層付き第1位相差層又は基材層付き第2位相差層)から基材層を分離する際に、配向層を基材層とともに剥離除去することができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレート等の「(メタ)」も同様の意味である。
【0070】
配向層は、配向層が基材層と共に剥離除去されず、液晶層側に残る場合、3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマー、イミド系モノマーもしくはビニルエーテル系モノマーを硬化させた硬化物等の樹脂を含むことが好ましく、3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーを硬化させた硬化物を含むことがより好ましい。
【0071】
紫外線照射により配向層形成用組成物中の重合性化合物を硬化させて配向層を形成する場合、紫外線の光照射強度は、特に限定されないが、10~1,000mW/cmであることが好ましく、100~600mW/cmであることがより好ましい。基材層上に塗布された配向層形成用組成物への光照射強度が10mW/cm未満であると、反応時間が長くなりすぎ、1,000mW/cmを超えると、光源から輻射される熱により、基材層にシワが発生することで、位相差ムラが生じる恐れがある。照射強度は、重合開始剤、好ましくは光ラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度であり、より好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度であり、さらに好ましくは波長280~320nmの波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量が10mJ/cm以上、好ましくは100~1,000mJ/cm、より好ましくは400~1,000mJ/cm、さらに好ましくは、600~1,000mJ/cm、ことさら好ましくは600~1,000mJ/cmとなるように設定することが好ましい。基材層上に塗布された配向層形成用組成物への積算光量が10mJ/cm未満であると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、配向層形成用組成物の硬化が不十分となる。また、積算光量が1,000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。基材層の厚みや種類、配向層形成用組成物に含まれる成分の種類、及び、配向層形成用組成物中の成分の組み合わせ等によって、光照射時の波長(UVA(320~390nm)やUVB(280~320nm)等)は異なり、光照射時の波長に応じて必要となる積算光量も変化する。
【0072】
紫外線照射により配向層形成用組成物中の重合性化合物を硬化させる場合、重合度を十分高められるという観点から、紫外線照射時の温度は好ましくは25℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは、80℃以上である。また、温度が高すぎる場合、基材層にシワが生じ、位相差ムラが発生することが懸念されることから、紫外線照射時の温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0073】
配向層の厚みは特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよく、通常5μm以下であり、2.5μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。
【0074】
(基材層付き第1位相差層、基材層付き第2位相差層)
基材層付き第1位相差層及び基材層付き第2位相差層(以下、両者をまとめて「基材層付き位相差層」ということがある。)は、基材層上に、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布、乾燥し、重合性液晶化合物を重合させることによって形成された硬化物層である液晶層を形成することによって得ることができる。液晶層形成用組成物は、基材層上に配向層が形成されている場合は、配向層上に塗布すればよく、液晶層が2層以上の多層構造である場合には、液晶層形成用組成物を順次塗布する等により、多層構造を形成すればよい。配向層の形成方法は、上記した方法を用いることができる。
【0075】
液晶層形成用組成物は、重合性液晶化合物に加えて通常、溶剤を含む。液晶層形成用組成物は、さらに、重合開始剤、反応性添加剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
重合性液晶化合物を含む組成物が含有していてもよい溶剤としては、上記重合性液晶化合物を溶解し得る溶剤であって、且つ、上記重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤が好ましい。
【0077】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリジノン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;等が挙げられる。溶剤は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0078】
重合性液晶組成物における溶剤の含有量は、通常、固形分100質量部に対して、10質量部~10000質量部が好ましく、より好ましくは50質量部~5000質量部である。なお固形分とは、重合性液晶組成物における溶剤以外の成分の合計を意味する。
【0079】
重合性液晶化合物を含む組成物が含有していてもよい重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合性開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、及びスルホニウム塩が挙げられる。光ラジカル重合開始剤として、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
光ラジカル重合開始剤として市販品を用いてもよい。そのような市販品として、具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)、及びTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0081】
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100重量部に対して、通常、0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。この範囲内であると、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向状態を安定化させやすい。
【0082】
重合性液晶化合物を含む組成物が含有していてもよい架橋剤は、分子内に1個以上の光、熱反応性基を有する化合物である。架橋剤を用いる事により、液晶層の架橋密度が変化し、膜強度を調整しやすくなる。架橋剤としては、多官能アクリレート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、塗工膜の均一性及び膜強度調整の観点から、多官能アクリレート化合物が好ましい。架橋剤は、分子内に2個以上8個以下の反応性基を有することが好ましく、より好ましくは2個以上6個以下の重合性基を有することが好ましい。
【0083】
多官能アクリレートとしては、市販品を用いてもよい。そのような市販品として、具体的には、A-DOD-N、A-HD-N、A-NOD-N、APG-100、APG-200、APG-400、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMPT、AD-TMP、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH、HD-N、NOD-N、NPG、TMPT(新中村化学株式会社製)、”ARONIX M-220”、同”M-325”、同”M-240”、同”M-270”同”M-309”同”M-310”、同”M-321”、同”M-350”、同”M-360”、同”M-305”、同”M-306”、同”M-450”、同”M-451”、同”M-408”、同”M-400”、同”M-402”、同”M-403”、同”M-404”、同”M-405”、同”M-406”(東亜合成株式会社製)、”EBECRYL11”、同”145”、同”150”、同”40”、同”140”、同”180”、DPGDA、HDDA、TPGDA、HPNDA、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、DPHA、EBECRYLシリーズ(ダイセル・サイテック株式会社製)等が挙げられる。
【0084】
架橋剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部~30質量部であり、より好ましくは3質量部~20質量部である。架橋剤の含有量が下限値以下であると研磨等の加工時に不具合を生じやすくなり、上限値以上であると液晶化合物の配向状態が不安定になり、配向欠陥が発生しやすくなる。
【0085】
重合性液晶化合物を含む組成物が含有していてもよい反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が分子内に有する、炭素-炭素不飽和結合及び活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0086】
反応性添加剤において、活性水素反応性基は分子内に少なくとも2つ存在することが好ましい。この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0087】
反応性添加剤が分子内に有する炭素-炭素不飽和結合とは、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合のことをいい、炭素-炭素二重結合であることが好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基及び/又は(メタ)アクリル基として炭素-炭素不飽和結合を分子内に含むことが好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。とりわけ炭素-炭素二重結合としてアクリル基と、活性水素反応性基としてイソシアネート基とを有する反応性添加剤が特に好ましい。
【0088】
反応性添加剤としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテル等の、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリン等の、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート及び2-イソシアナトエチルメタクリレート等の、(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを有する化合物、及びこれらモノマーのオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸、ビニル無水マレイン酸等の、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物等が挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、又はこれらモノマーのオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、又は、これらモノマーのオリゴマーが特に好ましい。
【0089】
重合性液晶組成物が反応性添加剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部以上30質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
【0090】
重合性液晶化合物を含む組成物は、組成物を塗布して得られる塗膜をより平坦にするために、レベリング剤を含有していてもよい。レベリング剤としては、例えば、シリコーン系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。
【0091】
レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させることが容易であり、かつ得られる液晶硬化膜(重合性液晶化合物の硬化物層)がより平滑となる傾向にあるため好ましい。
【0092】
液晶層形成用組成物の塗布は、例えば、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法によって行うことができる。液晶層形成用組成物の塗布を行った後には、塗布層中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で溶剤を除去することが好ましい。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥、減圧乾燥法等が挙げられる。
【0093】
塗布層の乾燥後に行う重合性液晶化合物の重合は、重合性官能基を有する化合物を重合させる公知の方法によって行うことができる。重合方法としては、例えば熱重合や光重合等を挙げることができ、重合の容易さの観点から光重合であることが好ましい。光重合により重合性液晶化合物を重合させる場合、液晶層形成用組成物として光重合開始剤を含有するものを用い、この液晶層形成用組成物を塗布、乾燥し、乾燥後の乾燥被膜中に含まれる重合性液晶化合物を液晶配向させ、この液晶配向状態を維持したまま光重合を行うことが好ましい。
【0094】
光重合は、乾燥被膜中の液晶配向させた重合性液晶化合物に対して活性エネルギー線を照射することによって行うことができる。照射する活性エネルギー線としては、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類及びその量、光重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができるが、例えば、可視光線、紫外線、レーザー光、X線、α線、β線及びγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線を挙げることができる。このうち、重合反応の進行を制御しやすく、光重合装置として当分野で広範に用いられているものを使用できるという点から、紫外線が好ましく、紫外線によって光重合可能なように、重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択することが好ましい。光重合にあたっては、適切な冷却手段により、乾燥被膜を冷却しながら活性エネルギー線を照射することで、重合温度を制御することもできる。
【0095】
紫外線照射により液晶層形成用組成物の塗布層を硬化させる場合、紫外線の光照射強度は、特に限定されないが、10~1,000mW/cmであることが好ましく、100~600mW/cmであることがより好ましい。塗布層への光照射強度が10mW/cm未満であると、反応時間が長くなりすぎ、1,000mW/cmを超えると、光源から輻射される熱により、基材層にシワが発生することで、位相差ムラが生じる恐れがある。照射強度は、重合開始剤、好ましくは光ラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度であり、より好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度であり、さらに好ましくは波長280~320nmの波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量が10mJ/cm以上、好ましくは100~1,000mJ/cm、より好ましくは400~1,000mJ/cm、さらに好ましくは、600~1000mJ/cm、ことさら好ましくは600~1,000mJ/cmとなるように設定することが好ましい。塗布層への積算光量が10mJ/cm未満であると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、塗布層の硬化が不十分となる。また、積算光量が1,000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。基材層の厚みや種類、液晶層形成用組成物に含まれる成分の種類、及び、液晶層形成用組成物中の成分の組み合わせ等によって、光照射時の波長(UVA(320~390nm)やUVB(280~320nm)等)は異なり、光照射時の波長に応じて必要となる積算光量も変化する。
【0096】
紫外線照射により液晶層形成用組成物の塗布層を硬化させる場合、重合度を十分高められるという観点から、紫外線照射時の温度は好ましくは25℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは、80℃以上である。また、温度が高すぎる場合、基材層にシワが生じ、位相差ムラが発生する懸念が有ることから、紫外線照射時の温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0097】
(第1基材層、第2基材層)
第1基材層及び第2基材層(以下、両者をまとめて「基材層」ということがある。)は、これらの基材層上に形成される後述する配向層及び液晶層を支持する支持層としての機能を有する。基材層は、樹脂材料で形成されたフィルムであることが好ましい。
【0098】
樹脂材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる樹脂材料が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン系樹脂;PET、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。これらの樹脂のうち、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂及び(メタ)アクリル酸系樹脂のいずれか又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0099】
基材層の厚みは、特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から1~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、30~120μmであることがさらに好ましい。
【0100】
基材層付き第1位相差層が第1配向層を有する場合や、基材層付き第2位相差層が第2配向層を有する場合、第1基材層と第1配向層との密着性、及び、第2基材層と第2配向層との密着性を向上させるために、少なくとも第1基材層の第1配向層が形成される側の表面、及び、少なくとも第2基材層の第2配向層が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよく、プライマー層等を形成してもよい。
【0101】
基材層は、液晶層又は配向層に対して剥離可能であって、基材層と液晶層又は配向層との間の剥離力の大きさは、基材層を剥離する順番を考慮して決定する必要がある。位相差積層体から先に分離する第1基材層の剥離力は、後に分離する第2基材層の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0102】
(第1貼合層、第2貼合層、第3貼合層)
第1貼合層、第2貼合層、及び第3貼合層(以下、これらをまとめて「貼合層」ということがある。)は、粘着剤層又は接着剤硬化層とすることができる。粘着剤層は、粘着剤組成物を用いて形成することができ、接着剤硬化層は、接着剤組成物を用いて形成することができる。
【0103】
(粘着剤層)
粘着剤層は、粘着剤組成物で構成された層をいう。本明細書において「粘着剤」とは、それ自体を偏光板や液晶層等の被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線を照射することにより、架橋度や接着力を調整することができる。
【0104】
粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等のベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(以下、リワーク性ともいう。)、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0105】
粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いて形成してもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、粘着剤組成物に、多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性化エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、光学フィルムや位相差層等の被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する粘着剤である。
【0106】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分として含む。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を配合することもできる。
【0107】
粘着剤層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、粘着剤層の厚みは、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0108】
(接着剤硬化層)
接着剤硬化層は、接着剤組成物中の硬化性成分を硬化させることによって形成される接着剤硬化層をいう。接着剤硬化層を形成するための接着剤組成物としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤が挙げられる。水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化性接着剤が挙げられる。無溶剤型の活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることにより、層間の密着性を向上させることができる。これに対して、活性エネルギー線硬化性接着剤に溶剤(特に有機溶剤)が含まれていると、接着剤中に含まれる硬化性成分が同じであっても、十分な密着性を得ることができず、位相差積層体や光学積層体を所定のサイズに裁断したとき、その端部において剥離する等の不具合を生じやすい。また、溶剤を乾燥する工程が追加されるため、熱による追加の収縮応力がかかり、位相差積層体や光学積層体にカールが発生しやすくなるおそれがある。
【0109】
活性エネルギー線硬化性接着剤としては、良好な接着性を示すことから、カチオン重合性の硬化性化合物、ラジカル重合性の硬化性化合物のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるためのカチオン重合開始剤、又はラジカル重合開始剤をさらに含むことができる。
【0110】
カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えばエポキシ系化合物(分子内に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物)や、オキセタン系化合物(分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有する化合物)、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0111】
ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0112】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて増感剤を含有することができる。増感剤を使用することにより、反応性が向上し、接着剤硬化層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。増感剤としては、公知のものを適宜適用することができる。増感剤を配合する場合、その配合量は、活性エネルギー線硬化性接着剤の総量100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲とすることが好ましい。
【0113】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0114】
接着剤組成物を、基材層付き第1位相差層や基材層付き第2位相差層の接合面に塗布することによって接着剤組成物層を形成してもよい。塗布方法としては、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、エアドクターコーター等を用いた通常のコーティング技術を採用すればよい。
【0115】
水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0116】
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた場合は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線を照射し、接着剤組成物層を硬化させて接着剤硬化層を形成することができる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましく、この場合の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0117】
接着剤硬化層の厚みは、例えば0.01μm以上であり、0.05μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、通常5μm以下であり、3μm以下であってもよく、2μm以下であってもよい。
【0118】
(直線偏光層)
直線偏光層は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。直線偏光層は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略すこともある。)系樹脂フィルムを含むものであってもよく、重合性液晶化合物に二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜であってもよい。
【0119】
PVA系樹脂フィルムを含む直線偏光層としては、例えば、PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。光学特性に優れることから、PVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた直線偏光層を用いることが好ましい。
【0120】
PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0121】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。
【0122】
このようなPVA系樹脂を製膜したものが、直線偏光層の原反フィルムとして用いられる。PVA系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。PVA系樹脂原反フィルムの膜厚は、例えば10~100μm程度、好ましくは10~60μm程度、より好ましくは15~30μm程度である。
【0123】
その他のPVA系樹脂フィルムを含む直線偏光層の製造方法としては、まず基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものを挙げることができる。なお、基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、PET等の樹脂フィルムを使用できる。プライマー層の材料としては、直線偏光層に用いられる親水性樹脂を架橋したPVA樹脂等を挙げることができる。
【0124】
次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及びPVA樹脂層を一軸延伸し、続いて、PVA樹脂層をヨウ素等の二色性色素で染色して二色性色素をPVA樹脂層に吸着配向させる。続いて、必要に応じて二色性色素が吸着配向したPVA樹脂層をホウ酸水溶液で処理し、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行う。これにより、二色性色素が吸着配向されたPVA樹脂層、すなわち、直線偏光層のフィルムが製造される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0125】
基材フィルム及びPVA樹脂層の一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色中に行ってもよいし、染色後のホウ酸処理中に行ってもよく、これら複数の段階においてそれぞれ一軸延伸を行ってもよい。基材フィルム及びPVA樹脂層は、MD方向(フィルム搬送方向)に一軸延伸してもよく、この場合、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、基材フィルム及びPVA樹脂層は、TD方向(フィルム搬送方向に直交する方向)に一軸延伸してもよく、この場合、いわゆるテンター法を使用することができる。また、基材フィルム及びPVA樹脂層の延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にてPVA樹脂層を膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。直線偏光層の性能を発現するためには延伸倍率は4倍以上であり、5倍以上であることが好ましく、特に5.5倍以上が好ましい。延伸倍率の上限は特にないが、破断等を抑制する観点から8倍以下が好ましい。
【0126】
上記方法で作製した直線偏光層は、後述する保護層を積層した後に基材フィルムを剥離することで得ることができる。この方法によれば、直線偏光層の更なる薄膜化が可能となる。
【0127】
重合性液晶化合物に二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜である直線偏光層の製造方法としては、基材フィルム上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を、液晶状態を保持したまま重合して硬化させて直線偏光層を形成する方法を挙げることができる。このようにして得られた直線偏光層は、基材フィルムに積層された状態にあり、基材フィルム付き直線偏光層を後述する偏光板として用いてもよい。
【0128】
二色性色素としては、分子の長軸方向における吸光度と短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を用いることができ、例えば、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λmax)を有する色素が好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素がより好ましい。
【0129】
偏光層形成用組成物は、溶剤、光重合開始剤等の重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤等を含むことができる。偏光層形成用組成物に含まれる、重合性液晶化合物、二色性色素、溶剤、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤等については、公知のものを用いることができ、例えば、特開2017-102479号公報、特開2017-83843号公報に例示されているものを用いることができる。また、重合性液晶化合物は、後述する液晶層(第1液晶層、第2液晶層)を得るために用いた重合性液晶化合物として例示した化合物と同様のものを用いてもよい。偏光層形成用組成物を用いて直線偏光層を形成する方法についても、上記公報に例示された方法を採用することができる。
【0130】
直線偏光層の厚みは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、上記の直線偏光層の厚みは、25μm以下であり、15μm以下であることが好ましく、13μm以下であることがより好ましく、さらに7μm以下であることが好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0131】
(偏光板)
直線偏光層はその片面又は両面に、公知の粘着剤層又は接着剤硬化層を介して保護層を積層して偏光板とすることができる。この偏光板はいわゆる直線偏光板である。直線偏光層の片面又は両面に積層することができる保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;PET、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。直線偏光層の両面に保護層が積層されている場合、二つの保護層の樹脂組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0132】
熱可塑性樹脂から形成されたフィルムは、PVA系樹脂及び二色性物質からなる直線偏光層との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(下塗り層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0133】
保護層は、例えば前述の熱可塑性樹脂を延伸したものであってもよいし、延伸されていないものであってもよい(以下、「未延伸樹脂」ということがある。)。延伸処理としては、一軸延伸や二軸延伸等が挙げられる。
【0134】
保護層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、保護層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0135】
保護層の直線偏光層とは反対側の表面は、表面処理層を有していてもよく、例えばハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、アンチグレア層、拡散層等を有していてもよい。表面処理層は、保護層上に積層される別の層であってもよく、保護層表面に表面処理が施されて形成されたものであってもよい。
【0136】
偏光板の厚みは特に限定されないが、通常2μm以上300μm以下である。偏光板の厚みは、10μm以上であってもよく、また、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0137】
(プロテクトフィルム付き偏光板)
偏光板は、通常その片面に、プロテクトフィルムを積層することにより、プロテクトフィルム付き偏光板とすることができる。プロテクトフィルムは、プロテクトフィルム用樹脂フィルムに粘着剤層が形成されたものであってもよく、自己粘着性フィルムで形成されていてもよい。プロテクトフィルムの厚みは、例えば30~200μmであることができ、好ましくは40~150μmであり、より好ましくは50~120μmである。
【0138】
プロテクトフィルム用樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;PETやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂等を挙げることができる。このうち、PET等のポリエステル系樹脂が好ましい。プロテクトフィルム用樹脂フィルムは、1層構造であってもよいが、2層以上の多層構造を有していてもよい。
【0139】
プロテクトフィルム用粘着剤層を構成する粘着剤としては、上記した粘着剤層を構成する粘着剤と同様のものを用いることができる。また、プロテクトフィルムは、プロテクトフィルム用樹脂フィルム面上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥等することにより粘着剤層を形成して得ることができる。必要に応じて、プロテクトフィルム用樹脂フィルムの粘着剤塗布面には密着性を向上するために、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(下塗り層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。また、必要に応じて、プロテクトフィルム用粘着剤層の、プロテクトフィルム用樹脂フィルム側とは反対側の表面を被覆して保護するための剥離フィルムを有していてもよい。この剥離フィルムは、偏光板と貼り合わせる際の適宜のタイミングで剥離することができる。
【0140】
自己粘着性フィルムは、粘着剤層等の付着のための手段を設けることなくそれ自身で付着し、かつ、その付着状態を維持することが可能なフィルムである。自己粘着性フィルムは、例えばポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等を用いて形成することができる。
【0141】
プロテクトフィルム付き偏光板の厚みは、32μm以上500μm以下であることが好ましい。プロテクトフィルム付き偏光板の厚みは、40μm以上であってもよく、また、350μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0142】
(剥離フィルム)
剥離フィルムは、粘着剤層を被覆保護する、又は、粘着剤層を支持するものであって、粘着剤層に対して剥離可能なセパレータとしての機能を有する。剥離フィルムとしては、基材フィルムの粘着剤層側の表面にシリコーン処理等の離型処理が施されたフィルムを挙げることができる。基材フィルムをなす樹脂材料としては、上記した保護層をなす樹脂材料と同様のものを挙げることができる。樹脂フィルムは1層構造であってもよく、2層以上の多層構造の多層樹脂フィルムであってもよい。
【実施例
【0143】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例、比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0144】
[突刺し弾性率E1,E2の測定]
(測定試料の準備)
実施例及び比較例で用いた基材層付き第1位相差層及び基材層付き第2位相差層をそれぞれ40mm×40mmのサイズに切り出し、それぞれを切出し片とした。また40mm×40mmの糊付き台紙を用意した。この糊付き台紙は、中央部が30mm×30mmの正方形で切り抜かれている。切出し片の第1位相差層の表面又は第2位相差層の表面が糊付き台紙における糊に接するように、該切出し片を糊付き台紙に貼合した。続いて、切出し片から第1基材層又は第2基材層を分離して、突刺し弾性率E1,E2の測定試料を作製した。
【0145】
(突刺し弾性率E1,E2の決定)
ハンディー圧縮試験機(「NDG5 突き刺し試験機 ニードル貫通力測定仕様」、カトーテック株式会社製)に、先端径が1mmφ、0.5Rのニードルを取り付けた。ニードルを測定試料の第1位相差面又は第2位相差面に対して、測定試料の第1位相差層側又は第2位相差層側(糊付き台紙側とは反対側)から垂直に0.33cm/秒の突刺し速度で突刺した。この突刺しにより測定試料が破断する直前の応力F[g]におけるひずみ量S[mm]を算出し、応力F[g]/ひずみ量S[mm]の値を算出した。この操作を、5枚の測定試料に対してそれぞれ行い、その平均値を突刺し弾性率E1,E2[g/mm]として決定した。測定は温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0146】
[カール量の算出]
(粘着剤層付きCOPフィルムの準備)
プロテクトフィルム付き環状ポリオレフィンフィルム(厚み23μm、ZF-14、日本ゼオン株式会社製)(以下、「プロテクトフィルム付きCOP」ということがある。)を、MD方向(フィルム搬送方向)長さ380mm×TD方向(フィルム搬送方向に直交する方向)長さ180mmのサイズで準備した。プロテクトフィルム付きCOPのプロテクトフィルム側とは反対側の面にコロナ処理(800W、10m/min、バー幅700mm、1回(1Pass))を施した。また、後述する両面セパレータ付き粘着層(380mm×180mm)から第1セパレータを剥離した。自動貼合機HALTECを用いて、上記で準備したプロテクトフィルム付きCOPのCOP面と、上記両面セパレータ付き粘着層から第1セパレータを剥離して露出した面とを貼合し、粘着剤層付きCOPフィルムを得た。粘着剤層付きCOPフィルムは、プロテクトフィルム付きCOP(プロテクトフィルム、環状ポリオレフィンフィルム)、粘着剤層、及び第2セパレータをこの順に有するものであった。
【0147】
(COPフィルム付き位相差積層体(試験片(a))のカール値の測定)
粘着剤層付きCOPフィルムから第2セパレータを剥離し、露出した粘着剤層の面と、実施例及び比較例で得た位相差積層体から第1基材層を剥離して露出した露出面とを貼合した。これにより、プロテクトフィルム付きCOP、粘着剤層、第1位相差層、貼合層、第2位相差層、及び第2基材層がこの順に積層された積層体を得、この積層体を、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間保持した。上記積層体を、長辺の長さが150mm、短辺の長さが50mmとなり、長辺と上記積層体のTD方向とのなす角度が45度となるように切り出した切出し片から、プロテクトフィルム付きCOPのプロテクトフィルムを剥離し、第2基材層を分離したものを試験片(a)とした。
【0148】
試験片(a)を十分に除電した後、試験片(a)の凹面を上にして基準面(水平な台)上に置き、試験片(a)の対角線のうち、その延在方向が上記積層体のMD方向に平行な方向に相対的に近い対角線上にある2つの角のそれぞれについて、基準面からの高さを測定し、その平均値を実測MDカール値とした。同様に、その延在方向が上記TD方向に平行な方向に相対的に近い対角線上にある2つの角のそれぞれについて、基準面からの高さを測定し、その平均値を実測TDカール値とした。測定値は、プロテクトフィルムを剥離して露出した環状ポリオレフィンフィルム(以下、「COPフィルム」ということがある。)側が上側となるように試験片(a)を基準面に置くと、試験片(b)の上記2つの角が浮き上がる場合、このカールを正カールとし、基準面からの角の高さを正の数値で表すこととした。一方、COPフィルム側が下側となるように試験片(a)を基準面に置くと、試験片(a)の上記2つの角が浮き上がる場合、このカールを逆カールとし、基準面からの角の高さを負の数値で表すこととした。
【0149】
(粘着剤層付きCOPフィルム(試験片(b))のカール値の測定)
上記で準備した粘着剤層付きCOPフィルムから、プロテクトフィルム付きCOPのプロテクトフィルム及び第2セパレータを剥離すること以外は、上記位相差積層体のカール値の測定と同様にして試験片(b)を得、実測MDカール値及び実測TDカール値を決定した。なお、本実施例において、試験片(b)の実測MDカール値及び実測TDカール値はいずれも0mmであった。
【0150】
(位相差積層体のカール値の決定)
試験片(a)について得られた実測MDカール値から、試験片(b)について得られた実測MDカール値を差し引いた値を、位相差積層体のMDカール値とした。同様に、試験片(a)について得られた実測TDカール値から、試験片(b)について得られた実測TDカール値を差し引いた値を、位相差積層体のTDカール値とした。MDカール値及びTDカール値は、0に近い値であればカールが抑制されていることを示し、絶対値が大きいほどカールが進行していることを示す。
【0151】
[両面セパレータ付き粘着剤層の準備]
撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、及び窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル97.0部、アクリル酸1.0部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5部、酢酸エチル200部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.08部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。得られた溶液の一部の重量平均分子量を測定したところ、180万の(メタ)アクリル酸エステル重合体の生成を確認した。
【0152】
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)0.30部と、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM403」)0.30部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。
【0153】
第1セパレータ(リンテック社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚みが25μmとなるように上記塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥し、粘着剤層を形成した。粘着剤層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚の第2セパレータ(リンテック社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着剤層を得た。
【0154】
[接着剤組成物の準備]
下記[a]~[c]に示すカチオン硬化性成分a1~a3、及び、下記[d]及び[e]に示すカチオン重合開始剤及び増感剤を混合した後、脱泡して、光硬化型の接着剤組成物を調製した。下記に示す部数は、接着剤組成物における各材料の配合量である。
[a]カチオン硬化性成分a1
3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製):70部(固形分量)
[b]カチオン硬化性成分a2
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製):20部(固形分量)
[c]カチオン硬化性成分a3
2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製):10部(固形分量)
[d]カチオン重合開始剤
商品名「CPI-100」(サンアプロ株式会社製)の50%プロピレンカーボネート溶液:2.25部(固形分量)
[e]増感剤
1,4-ジエトキシナフタレン:2部(固形分量)
【0155】
[基材層付き第1位相差層の準備]
(光配向層形成用組成物(1)の調製)
下記の成分を混合し、得られた混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、光配向層形成用組成物(1)を得た。
・光配向性材料(下記式で表される化合物):5部
【化1】

・溶剤(シクロペンタノン):95部
【0156】
(液晶層形成用組成物(A-1)の調製)
下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、液晶層形成用組成物(A-1)を得た。重合性液晶化合物A1及び重合性液晶化合物A2は、特開2010-31223号公報に記載の方法で合成した。
・重合性液晶化合物A1(下記式で表される化合物):80部
【化2】

・重合性液晶化合物A2(下記式で表される化合物):20部
【化3】

・重合開始剤(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製)):6部
・溶剤(シクロペンタノン):400部
【0157】
(基材層付き第1位相差層の作製)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(第1基材層)を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、光配向層形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cmの積算光量で偏光UV露光を実施して、光配向層(第1配向層)を得た。得られた光配向層の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、100nmであった。
【0158】
続いて、光配向層上に液晶層形成用組成物(A-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける照射強度10mW/cm、積算光量:2000mJ/cm)することにより、第1液晶層を形成して、基材層付き第1位相差層を得た。得られた第1液晶層の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、厚みは2.0μmであった。基材層付き第1位相差層からPETフィルム(第1基材層)を分離したときの剥離界面は光配向層と第1液晶層の間となり、第1位相差層(第1液晶層)の厚みは2.0μmであり、第1位相差層の突刺し弾性率E1は39.9g/mmであった。
【0159】
[基材層付き第2位相差層(1)の準備]
(配向層形成用組成物(2)の調製)
市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)に2-ブトキシエタノールを加えて配向層形成用組成物(2)を得た。得られた配向層形成用組成物(2)は、当該組成物の全量に対する固形分の含有割合が1%であり、当該組成物の全量に対する溶剤の含有割合が99%であった。サンエバーSE-610の固形分量は、納品仕様書に記載された濃度から換算した。
【0160】
(液晶層形成用組成物(B-1)の調製)
下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却して液晶層形成用組成物(B-1)を得た。
・重合性液晶化合物(LC242、BASF社製):19.2%
【化4】

・重合開始剤(イルガキュア(登録商標)907、BASFジャパン社製):0.5%:
・反応添加剤(Laromer(登録商標)LR-9000、BASFジャパン社製):1.1%
・溶剤(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート):79.1%
【0161】
(基材層付き第2位相差層(1)の作製)
厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(第2基材層)を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向層形成用組成物(2)をバーコーター塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向層(第2配向層)を得た。得られた配向層の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、2.2μmであった。
【0162】
続いて、配向層上に液晶層形成用組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm)することにより、第2液晶層を形成して、基材層付き第2位相差層(1)を得た。基材層付き第2位相差層(1)における第2液晶層の厚みは0.8μmであった。基材層付き第2位相差層(1)からPETフィルム(第2基材層)を分離したときの剥離界面はPETフィルムと配向層との間となり、第2位相差層(配向層及び第2液晶層)の厚みは3.0μmであり、第2位相差層の突刺し弾性率E2は36.0g/mmであった。
【0163】
[基材層付き第2位相差層(2)の準備]
(液晶層形成用組成物(B-2)の調製)
反応添加剤(Laromer(登録商標)LR-9000)を含まないこと以外は、液晶層形成用組成物(B-1)の調製と同様にして、液晶層形成用組成物(B-2)を調製した。
【0164】
(基材層付き第2位相差層(2)の作製)
配向層上に、液晶層形成用組成物(B-1)に代えて液晶層形成用組成物(B-2)を塗布し、その後の紫外線照射における積算光量を700mJ/cmとしたこと以外は、基材層付き第2位相差層(1)の作製と同様の手順で基材層付き第2位相差層(2)を得た。基材層付き第2位相差層(2)における第2液晶層の厚みは0.8μmであった。基材層付き第2位相差層(2)からPETフィルム(第2基材層)を分離したときの剥離界面は配向層と第2液晶層との間となり、第2位相差層(第2液晶層)の厚みは0.8μmであり、第2位相差層の突刺し弾性率E2は8.2g/mmであった。
【0165】
[基材層付き第2位相差層(3)の準備]
配向層上に液晶層形成用組成物(B-2)を塗布した後の紫外線照射における積算光量を1000mJ/cmとしたこと以外は、基材層付き第2位相差層(2)の作製と同様の手順で基材層付き第2位相差層(3)を得た。基材層付き第2位相差層(3)における第2液晶層の厚みは0.8μmであった。基材層付き第2位相差層(3)からPETフィルム(第2基材層)を分離したときの剥離界面は配向層と第2液晶層との間となり、第2位相差層(第2液晶層)の厚みは0.8μmであり、第2位相差層の突刺し弾性率E2は15.0g/mmであった。
【0166】
[基材層付き第2位相差層(4)の準備]
(液晶層形成用組成物(B-4)の調製)
重合開始剤(イルガキュア(登録商標)907)の配合量を半分(0.25%)としたこと以外は、液晶層形成用組成物(B-1)の調製と同様にして、液晶層形成用組成物(B-4)を調製した。
【0167】
(基材層付き第2位相差層(4)の作製)
液晶層形成用組成物(B-4)を用いたこと以外は、基材層付き第2位相差層(1)の作製と同様の手順で基材層付き第2位相差層(4)を得た。基材層付き第2位相差層(4)において、光配向層(第2配向層)の厚みは2.2μmであり、第2液晶層の厚みは0.8μmであった。基材層付き第2位相差層(1)からPETフィルム(第2基材層)を分離したときの剥離界面はPETフィルムと配向層との間となり、第2位相差層(配向層及び第2液晶層)の厚みは3.0μmであり、第2位相差層の突刺し弾性率E2は23.0g/mmであった。
【0168】
〔実施例1〕
上記で準備した基材層付き第2位相差層(1)(MD方向長さ380mm×TD方向長さ180mm)の第2位相差層側の面に、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.8kW、処理速度10m/分、バー幅700mmの条件で1回処理した。基材層付き第2位相差層(1)のコロナ処理面に、塗工機(第一理化(株)製のバーコーター)を用いて上記で準備した接着剤組成物を、硬化後の厚みが1μmとなるように塗工して接着剤組成物層を形成した。
【0169】
基材層付き第2位相差層(1)上に形成された接着剤組成物層と、上記で準備した基材層付き第1位相差層の第1位相差層側とを、貼付装置(LPA3301、フジプラ(株)社製)を用いて貼合した。その後、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の「Hバルブ」を使用)を用い、UVA領域では照射強度を390mW/cm、積算光量が420mJ/cmとなるように、UVB域では400mW/cm、積算光量が400mJ/cmとなるように、紫外線を照射して接着剤組成物層を硬化させて、位相差積層体を得た。位相差積層体は、第1基材層、第1位相差層、第1貼合層(接着剤硬化層)、第2位相差層、及び第2基材層がこの順に積層されたものであった。得られた位相差積層体のカール値を決定した。結果を表1に示す。
【0170】
〔比較例1~3〕
基材層付き第2位相差層(1)に代えて、基材層付き第2位相差層(2)~(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして位相差積層体を得た。得られた位相差積層体のカール値を決定した。結果を表1に示す。
【0171】
【表1】
【符号の説明】
【0172】
1,1a,1b,1c 位相差積層体、5,5a,5b 光学積層体、10 第1位相差層、11 第1配向層、12 第1位相差層、15 第1基材層、18 基材層付き第1位相差層、20 第2位相差層、21 第2配向層、22 第2位相差層、25 第2基材層、28 基材層付き第2位相差層、30 第1貼合層、32 第2貼合層、40 光学フィルム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6