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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】検査装置及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20240712BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240712BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240712BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B23Q17/24 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020040367
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137943
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】下田 誠
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-113461(JP,A)
【文献】特開2013-122956(JP,A)
【文献】特開2018-074054(JP,A)
【文献】特開2000-114329(JP,A)
【文献】米国特許第07751609(US,B1)
【文献】特開2016-096169(JP,A)
【文献】特開平05-018908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B41/00-51/00
B23Q17/09;17/24
B24B7/00-7/08
H01L21/304;21/463
G01N21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工中のワークに対して欠陥検査を行う検査装置であって、
記ワークが回転している状態で、前記ワークの被加工面を撮影する撮影手段と、
前記ワークが所定時間回転している間に撮影された前記撮影手段の撮影画像に基づいて判定用画像を生成する生成手段と、
前記判定用画像に前記被加工面内に形成された非円環状の欠陥が前記ワークの回転方向に回転して成る略円環状の軌跡が表れる場合に、前記被加工面内に前記欠陥が発生したと判定する判定手段と、
予め記憶された欠陥の数に応じた前記軌跡の濃さと前記判定用画像に表れた前記軌跡の濃さとを比較して、前記欠陥の数を推定する推定手段と、
を備えていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記軌跡の径方向寸法に基づいて、前記欠陥が発生したか再判定することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の検査装置と、
前記ワークを吸着保持して、回転可能なチャックテーブルと、
前記ワークを加工する加工手段と、
を備えていることを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工中のワークに対して欠陥検査を行う検査装置及び該検査装置を備えた加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く平坦に研削するものとして、回転する研削砥石の研削面をワークに押し当て、ワークの研削を行う研削装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、粗研削加工及び精研削加工の順にワークを加工する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-117648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークに対して研削加工又は研磨加工を行う際に、ワークの表面(被加工面)に亀裂や欠け等の欠陥が生じることがある。特に、ワークの仕上がり厚みが薄くなるにしたがって、欠陥が生じやすい傾向にある。また、欠陥は、ワークの中心から外周に向かうにつれて生じる頻度が増し、ワークの周縁が最も生じ易い。また、一般的に、ワークの欠陥は、ワーク内に生じた小さな亀裂が進展して欠けに至る。
【0006】
従来では、加工後のワークに対してカメラの視野を移動させて、ワーク全体の静止画像を撮影し、この画像に欠陥に相当する小さな点群(例えば、50μm×5μm)が表れているか否かにより欠陥検査を行っており、欠陥の発生を事後的に確認しており、さらに、欠陥が何れのタイミングで形成されたかが定かではないため、欠陥発生の原因究明に時間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、欠陥を速やかに検出するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る検査装置は、加工中のワークに対して欠陥検査を行う検査装置であって、記ワークが回転している状態で、前記ワークの被加工面を撮影する撮影手段と、前記ワークが所定時間回転している間に撮影された前記撮影手段の撮影画像に基づいて判定用画像を生成する生成手段と、前記判定用画像に前記被加工面内に形成された非円環状の欠陥が前記ワークの回転方向に回転して成る略円環状の軌跡が表れる場合に、前記被加工面内に前記欠陥が発生したと判定する判定手段と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、ワークの被加工面に欠陥が生じた場合には、ワークの回転中心を中心とした略円環状の軌跡が判定用画像に写るため、ワークに生じた欠陥を直ちに検出することができる。
【0010】
また、本発明に係る検査装置は、前記判定手段は、前記軌跡の径方向寸法に基づいて、前記欠陥が発生したか再判定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ワークの検収条件をクリアできない深刻な欠陥を効率的に検出することができる。
【0012】
また、本発明に係る検査装置は、予め記憶された欠陥の数に応じた前記軌跡の濃さと前記判定用画像に表れた前記軌跡の濃さとを比較して、前記欠陥の数を推定する推定手段をさらに備えていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ワークの径方向に重なって生じた欠陥の数を推定することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、上述した検査装置と、前記ワークを吸着保持して、回転可能なチャックテーブルと、前記ワークを加工する加工手段と、を備えている。
【0015】
この構成によれば、ワークの被加工面に欠陥が生じた場合には、ワークの回転中心を中心とした略円環状の軌跡が判定用画像に写るため、ワークに生じた欠陥を直ちに検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ワークの加工中に、ワークに生じた欠陥を直ちに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置を示す正面図。
図2】欠陥とその欠陥が回転して写る軌跡とを示す模式図。
図3】ワークの径方向に重なるように形成された複数の欠陥とそれら欠陥が回転して写る軌跡とを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0019】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0020】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0021】
研削装置1は、ワークWを薄く平坦に研削加工するものである。ワークWは、シリコンウェハ等の半導体ウェハである。研削装置1は、研削手段2と、チャックテーブル3と、を備えている。
【0022】
研削手段2は、研削砥石21と、砥石スピンドル22と、スピンドル送り機構23と、を備えている。
【0023】
研削砥石21は、例えば#600のカップ型砥石であり、下面がワークWを研削する研削面21aを構成している。研削砥石21は、砥石スピンドル22の下端に取り付けられている。
【0024】
砥石スピンドル22は、研削砥石21を回転軸2a回りに図1中の矢印A方向に回転駆動するように構成されている。なお、砥石スピンドル22の回転方向は、図1中の矢印Aの向きに限定されず、反対向きであっても構わない。
【0025】
スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22を上下方向に昇降させる。スピンドル送り機構23は、公知の構成であり、例えば、砥石スピンドル22の移動方向を案内する複数のリニアガイドと、砥石スピンドル22を昇降させるボールネジスライダ機構と、で構成されている。スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22とコラム24との間に介装されている。
【0026】
チャックテーブル3は、チャックスピンドル31を備えている。チャックスピンドル31は、回転軸3a回りに図1中の矢印B方向に回転駆動するように構成されている。なお、チャックテーブル31の回転方向は、図1中の矢印Bの向きに限定されず、反対向きであっても構わない。
【0027】
チャックテーブル3は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャックテーブル3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャックテーブル3に載置されたワークWがチャックテーブル3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワークWとチャックテーブル3との吸着が解除される。
【0028】
研削装置1は、検査装置4を備えている。検査装置4は、カメラ41と、生成手段42と、判定手段43と、を備えている。
【0029】
カメラ41は、ワークWの被加工面を撮影する。カメラ41が撮影する画像は、静止画又は動画の何れであっても構わない。カメラ41は、例えば株式会社キーエンス社製のCA-H2100M等である。カメラ41の露光時間は、チャックテーブル3の回転速度に応じて調整可能である。
【0030】
ワークW全面に対して欠陥検査を行う場合には、カメラ41の視野は、少なくともワークWの四分円をカバーするように設定される。また、ワークWが大型でカメラ41の画素数が足りない等の理由により、ワークW全面の欠陥検査が難しい場合には、カメラ41の視野を欠陥が生じやすい箇所(ワークWの外周部等)をカバーするように設定することも考えらえる。
【0031】
また、カメラ41の設置台数は、1台に限定されず、2台以上であっても構わないし、カメラ41の視野を機械的又は光学的に走査させるように構成しても構わない。
【0032】
生成手段42は、カメラ41が撮影した撮影画像から判定用画像を生成する。判定用画像は、予め設定された時間(例えば2秒)分の撮影画像に基づいて生成される。なお、判定用画像の基になる撮影画像の枚数は特に限定されず、例えば、2秒分の撮影画像に基づいて判定用画像を生成する場合、露光時間2秒の撮影画像1枚に基づいて判定用画像が生成されても構わないし、露光時間0.1秒の撮影画像20枚に基づいて判定用画像が生成されても構わない。
【0033】
判定用画像の基になる撮影画像の露光時間及び撮影画像の枚数は、任意に変更可能であるが、判定用画像の基になる撮影画像の枚数は少ない方が、生成手段42の画像処理の負担は小さくなるので好ましい。
【0034】
判定手段43は、判定用画像に基づいてワークWの被加工面に欠陥(亀裂や欠け)が生じているか否かを判定する。判定手段43による判定の具体的手順は後述する。
【0035】
研削装置1の動作は、制御装置5によって制御される。制御装置5は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置5は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置5の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0036】
次に、研削装置1でワークWを研削加工する手順について説明する。
【0037】
まず、ワークWをチャックテーブル3に吸着保持する。次に、スピンドル送り機構23のスライダによって研削砥石21をワークWの上方に移動させる。そして、研削砥石21及びチャックテーブル3をそれぞれ回転させながら、研削砥石21の研削面21aがワークWに押し当てられることにより、ワークWが研削される。例えば、研削砥石21の回転数は2000rpm、ワークWの回転数は300rpmにそれぞれ設定される。
【0038】
ワークWの研削加工と並行して、カメラ41は、回転中のワークWの四分円を定点で撮影する。カメラ41の露光時間は、例えば0.1秒に設定されている。そして、生成手段42は、カメラ41の撮影画像を所定枚数(例えば、20枚)合成して判定用画像を生成する。
【0039】
判定手段43は、判定用画像に基づいて、ワークWの被加工面内に欠陥が生じているか否かを判定する。
【0040】
具体的には、ワークWの被加工面内に欠陥が生じた場合、判定用画像には、ワークWの回転中心Oを中心とする略円環状の軌跡Tが写る。なお、ワークWの回転数、カメラ41の露光時間及び判定用画像の基となる撮影画像の枚数によっては、軌跡Tは、必ずしも円状に形成されたものには限定されず、一部が切り欠かれた部分円環状であっても構わない。
【0041】
図2(a)は、ワークWの径方向の内周側に欠陥が生じた場合であり、図2(b)は、図2(a)に示すワークWの判定用画像を示す模式図である。図2(c)は、ワークWの径方向の外周側に欠陥が生じた場合であり、図2(d)は、図2(c)に示すワークWの判定用画像を示す模式図である。
【0042】
一方、研削時に供給される冷却水や研削時に生じたスラッジは、回転するワークWの遠心力により飛散するため、判定用画像では、これらは不規則な方向に延びる直線状の軌跡として写る。また、カメラ41のレンズ面に付着した汚れ等は、移動せずに定在する。
【0043】
このようにして、判定手段43は、判定用画像にワークWの回転中心Oを中心とする略円環状の軌跡Tが写っているか否かによって欠陥の有無を判定する。特に、判定用画像の設定時間を十分に長く確保することにより、冷却水がスラッジの不規則な軌跡は均質化されて、判定用画像に写り込まなくなるため、欠陥判別をさらに容易に行うことができる。
【0044】
また、判定手段43は、軌跡Tが生じたワークWの径方向の位置に応じて、軌跡Tの径方向寸法が所定長さ(例えば、5~50μm)以上であるか否かにより、欠陥の有無を再判定するのが好ましい。
【0045】
これにより、ワークWの検収条件(例えば、ワークWの最外周部分では、小さな亀裂は許容される一方、50μm以上の大きな欠けに伸展すると検査不合格になる等)をクリアできない深刻な欠陥を効率的に抽出することができる。
【0046】
また、ワークWの加工中にカメラ41がワークWの四分円の範囲を定点で撮影することにより、カメラ41の視野を移動させることなくワークW全体を撮影できるため、カメラ41に要求されるスペックを下げて、装置コストを低減することができる。
【0047】
また、従来のようなワークW全面の静止画像から欠陥に相当する点群を検出する場合に比べて、判定手段43が判定用画像から軌跡Tを検出することにより、カメラ41に要求される空間分解能を抑えられ、装置コストをさらに低減できる。
【0048】
さらに、検査装置4は、判定用画像から欠陥の数を推定する推定手段44をさらに備えているのが好ましい。欠陥がワークWの径方向に重ならないようにオフセットして形成されている場合には、判定用画像上では、各欠陥が回転して成る複数の軌跡Tが重ならないため、推定手段44は、軌跡Tの数に応じて欠陥の数を推定することができる。
【0049】
一方、図3(a)に示すように、欠陥がワークWの径方向で重なって形成されている場合には、推定手段44は、図3(b)に示すように複数の欠陥が回転して成る軌跡Tが重なり、軌跡Tの数に基づいて欠陥の数を推定できないため、軌跡Tの濃淡に応じて欠陥の数を推定する。
【0050】
具体的には、予め径方向に重なるように複数の欠陥が形成されたサンプルのワークWを欠陥の数毎に用意し、各ワークWをカメラ41で撮影して、生成手段42が、カメラ41の撮影画像から判定用画像を生成する。そして、この判定用画像から、径方向に重なる欠陥の数に応じた軌跡T’の濃さを推定手段44が記憶する。なお、ワークWの径方向に重なる欠陥の数が多くなるにしたがって、判定用画像に写る軌跡Tは濃くなる。
【0051】
そして、推定手段44が、加工中のワークWに関する判定用画像に写る軌跡Tの濃さと、予め記憶されたサンプルのワークWに関する判定用画像に写る軌跡T’の濃さとを比較して、加工中のワークWに関する判定用画像に写る軌跡Tの濃さに最も近似する濃さの軌跡T’を構成する欠陥の数から、加工中のワークWに存在する欠陥の数を推測することができる。
【0052】
このようにして、検査装置4は、ワークWの研削加工中に、ワークWの被加工面に形成された欠陥を直ちに検出する。
【0053】
そして、ワークWが所望の厚みまで研削されると、研削砥石21及びチャックテーブル3の回転を停止させ、スピンドル送り機構23のスライダが起動して、研削砥石21をワークWから離間させる。そして、チャックテーブル3によるワークWの吸着保持を解除して、研削装置1によるワークWの研削加工が終了する。
【0054】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0055】
なお、本実施形態は、検査装置4を適用した研削装置1を例に説明したが、ワークWを研磨パッドで研磨する研磨装置に検査装置4を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 :研削装置(加工装置)
2 :研削手段(加工手段)
21 :研削砥石
21a:研削面
22 :砥石スピンドル
23 :スピンドル送り機構
24 :コラム
3 :チャックテーブル
3a :回転軸
31 :チャックスピンドル
4 :検査装置
41 :カメラ(撮影手段)
42 :生成手段
43 :判定手段
44 :推定手段
5 :制御装置
L :軌跡
W :ワーク
図1
図2
図3