(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】香味油の製造方法、香味油混合油の製造方法、及び食品への香ばしさ風味の付与方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240712BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240712BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20240712BHJP
【FI】
A23D7/00
A23D7/00 510
A23D9/00 504
A23L7/10 E
(21)【出願番号】P 2020548476
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036181
(87)【国際公開番号】W WO2020066710
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018179689
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淑子
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】藤井 九達
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-030663(JP,A)
【文献】特開2000-116326(JP,A)
【文献】特開平03-183441(JP,A)
【文献】特開平10-262595(JP,A)
【文献】特開2016-198092(JP,A)
【文献】特開昭54-062339(JP,A)
【文献】米国特許第05320862(US,A)
【文献】国際公開第2007/004682(WO,A1)
【文献】特開昭60-256344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00 - 9/00
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と、糖と、アミノ酸と、水と、植物乾燥粉末とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を撹拌しながら150℃以上190℃以下に達温させる工程と、前記達温した混合物を固液分離し、液体画分を回収する工程とを含む香味油の製造方法であって、
前記水を、前記食用油脂1質量部に対して、0.05質量部以上0.2質量部以下混合し、
前記食用油脂を、前記糖及び前記アミノ酸の合計量の1質量部に対して、20質量部以上200質量部以下混合し、
前記植物乾燥粉末を、前記糖及び前記アミノ酸の合計量の1質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下混合して前記混合物を得る、該香味油の製造方法。
【請求項2】
前記植物乾燥粉末が、ニンジン乾燥粉末及びカボチャ乾燥粉末からなる群から選ばれた1種又は2種以上である、請求項1記載の香味油の製造方法。
【請求項3】
前記アミノ酸は、アラニンを含む、請求項1又は2記載の香味油の製造方法。
【請求項4】
前記混合物を撹拌しながら達温させる工程において、該混合物を160℃以上180℃以下に達温させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の香味油の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた香味油と、他の食用油脂とを混合する工程を含む、香味油混合油の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた香味油、又は請求項5記載の製造方法で得られた香味油混合油を食品に付与する、該食品への香ばしさ風味の付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品への風味付与に有用な香味油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用油脂中に糖とアミノ酸を混合して加熱処理することにより、糖とアミノ酸とのメイラード反応に由来する独特の香ばしさ風味が食用油脂に付与されるので、これを食品の風味付与に用いることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アミノ酸と単糖又はアミノ酸とオリゴサッカライド又はオリゴペプチドと単糖を植物又は動物油脂と加熱し、若しくはこれらに植物乾燥粉末を加えて加熱することからなる香気と風味を豊富に含有するロースト油が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、少なくとも常温で固形を呈し、ベタツキのない食用油脂と、糖類と、アミノ酸および水とを加熱混合処理することを特徴とする固形香味油の製造法が記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、糖とアミノ酸由来の褐変反応物、及び水不溶性物が一体となった粉粒体とペプタイドを含む香味油脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-30663号公報
【文献】特開平3-183441号公報
【文献】特開平10-262595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの研究によると、食用油脂に糖とアミノ酸を含有せしめ、これらを加熱して香味油を調製する際、凝集物が生じやすいことが判明した。生じた凝集物が撹拌機と接触した際に油ハネを起こしたり、凝集物が大きくなった場合には攪拌できなくなるおそれがあるとともに、その凝集物によって食用油脂に風味が充分に付与されない、という問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決して品質の良好な香味油が得られるようにした、香味油の製造方法、並びに、該方法により得られた香味油を含有してなる香味油混合油の製造方法、及び該方法により得られた香味油を利用した食品への香ばしさ風味の付与方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その第1の観点においては、食用油脂と、糖と、アミノ酸と、水と、植物乾燥粉末とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物を撹拌しながら150℃以上190℃以下に達温させる工程と、前記達温した混合物を固液分離し、液体画分を回収する工程とを含むことを特徴とする香味油の製造方法を提供するものである。
【0010】
上記の香味油の製造方法においては、前記植物乾燥粉末が、ニンジン乾燥粉末及びカボチャ乾燥粉末からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0011】
また、上記の香味油の製造方法においては、前記アミノ酸は、アラニンを含むことが好ましい。
【0012】
また、上記の香味油の製造方法においては、前記混合物を撹拌しながら達温させる工程において、該混合物を160℃以上180℃以下に達温させることが好ましい。
【0013】
また、上記の香味油の製造方法においては、前記植物乾燥粉末を、前記糖及び前記アミノ酸の合計量の1質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下混合して前記混合物を得ることが好ましい。
【0014】
また、上記の香味油の製造方法においては、前記水を、前記食用油脂1質量部に対して、0.05質量部以上0.2質量部以下混合して前記混合物を得ることが好ましい。
【0015】
また、上記の香味油の製造方法においては、前記食用油脂を、前記糖及び前記アミノ酸の合計量の1質量部に対して、20質量部以上200質量部以下混合して前記混合物を得ることが好ましい。
【0016】
一方、本発明は、その第2の観点においては、上記の製造方法で得られた香味油と、他の食用油脂とを混合する工程を含む、香味油混合油の製造方法を提供するものである。
【0017】
更に、本発明は、その第3の観点においては、上記の製造方法で得られた香味油、又は上記の製造方法で得られた香味油混合油を食品に付与する、該食品への香ばしさ風味の付与方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、食用油脂に糖とアミノ酸を含有せしめ、更に水と植物乾燥粉末を含有せしめたうえ、所定温度に達温させて香味油を得るので、その調製の際には凝集物の生成が抑えられ、食用油脂に風味が良好に付与される。これにより、品質の良好な香味油が生産性よく得られる。また、得られた香味油を他の食用油脂と混合することにより、香味油混合油が得られる。更に、得られた香味油及び/又は香味油混合油を利用して、各種食品に香ばしさ風味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いる食用油脂としては、特に制限はなく、当業者に周知の原料油脂を適宜採用し得る。例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。食用油脂は、1種類の原料油脂を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上の原料油脂が混合されたものを用いてもよい。なかでも、製造時の作業性等の点で、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油等の10℃における固体脂含量が0%以上5%以下の原料油脂から選ばれる1種又は2種以上を60質量%以上100質量%以下配合した食用油脂が好ましく、80質量%以上100質量%以下配合した食用油脂がより好ましい。食用油脂もしくは原料油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd 16b-93 に記載のMethod Iの方法に従って測定できる。
【0020】
本発明に用いる糖としては、アミノ酸との反応により風味を生じさせることができる糖であればよく、例えば単糖類、二糖類、オリゴ糖類等に分類される糖であってよい。より具体的には、例えば単糖類として、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、マンノース等であってよく、二糖類として、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等であってよい。なかでも、風味付与、特に香ばしさ風味を付与する点からは、単糖類、二糖類が好ましく用いられ、フルクトース、キシロース、スクロースがより好ましく用いられ、フルクトースがさらに好ましく用いられる。あるいは、例えばデンプン加水分解シラップ、蜂蜜、異性化糖等であって、上記糖を含有する糖含有組成物を用いてもよい。糖は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0021】
本発明に用いるアミノ酸としては、糖との反応により風味を生じさせることができるアミノ酸であればよく、例えば塩基性アミノ酸類、中性アミノ酸類、酸性アミノ酸類、芳香族アミノ酸類、ペプチド類等に分類されるアミノ酸であってよい。より具体的には、例えば塩基性アミノ酸類として、リジン、アルギニン、ヒスチジン等であってよく、中性アミノ酸類として、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン等であってよく、酸性アミノ酸類として、アスパラギン酸、グルタミン酸等であってよく、芳香族アミノ酸類として、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等であってもよい。なかでも、風味付与、特に香ばしさ風味を付与する点からは、塩基性アミノ酸類、中性アミノ酸類、酸性アミノ酸類、芳香族アミノ酸類が好ましく用いられ、アラニン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファンがより好ましく用いられ、アラニン、システイン、リジンがさらに好ましく用いられ、アラニンがさらにより好ましく用いられる。あるいは、例えば蛋白質の酸分解生成物、熱分解生成物、酵素分解生成物等であって、上記アミノ酸を含有するアミノ酸含有組成物を用いてもよい。アミノ酸は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0022】
本発明に用いる植物乾燥粉末としては、食用油脂に糖とアミノ酸を含有せしめ所定温度に達温させて香味油を得る際に、凝集物が生成するのを抑制する機能性を発揮し得るものであればよく、例えば野菜類、イモ類、果実類、茸類、海藻類等に分類される植物の乾燥粉末であってよい。より具体的には、例えば野菜類として、ニンジン、カボチャ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等であってよく、イモ類として、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、長イモ等であってもよく、果実類として、ミカン、リンゴ、カキ、イチゴ、ブドウ等であってよく、茸類として、椎茸、しめじ、マツタケ、マイタケ等であってよく、海藻類として、昆布、ワカメ、ヒジキ等であってよい。なかでも、上記凝集物の生成を抑制し、更に香味油の風味を高める点からは、野菜類、イモ類、果実類が好ましく用いられ、野菜類、イモ類がより好ましく用いられ、野菜類がさらに好ましく用いられ、ニンジン、カボチャがさらにより好ましく用いられる。植物乾燥粉末は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。植物乾燥粉末の形態に特に制限はないが、食用油脂等への混合のし易さの点から、JIS-Z8801-1規格における目開き0.075mm篩下画分が、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。また、JIS-Z8801-1規格における目開き0.2mm篩下目開き0.075mm篩上画分が、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明においては、糖と、アミノ酸と、水と、植物乾燥粉末とを混合して混合物を得、その混合物を撹拌しながら所定温度に達温させた後に固液分離し、その液体画分として香味油を回収する。その際、混合物を150℃以上190℃以下に達温させることが好ましく、155℃以上185℃以下に達温させることがより好ましく、160℃以上180℃以下に達温させることが更により好ましい。達温温度が上記範囲にあると、香味油に良好な風味を充分付与させやすい。
【0024】
本発明においては、上記混合物を、植物乾燥粉末を、糖及びアミノ酸の合計量の1質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下混合することにより得ることが好ましく、0.1質量部以上0.45質量部以下混合することにより得ることがより好ましく、0.15質量部以上0.4質量部以下混合することにより得ることが更により好ましい。植物乾燥粉末の配合量が上記範囲にあると、上記凝集物の生成を抑制し、香味油に良好な風味を充分付与させやすい。
【0025】
本発明においては、上記混合物を、水を、食用油脂1質量部に対して、0.05質量部以上0.2質量部以下混合することにより得ることが好ましく、0.06質量部以上0.16質量部以下混合することにより得ることがより好ましく、0.07質量部以上0.13質量部以下混合することにより得ることが更により好ましい。水の配合量が上記範囲にあると、上記凝集物の生成を抑制し、香味油に良好な風味を充分付与させやすい。
【0026】
本発明においては、上記混合物を、食用油脂を、糖及びアミノ酸の合計量の1質量部に対して、20質量部以上200質量部以下混合することにより得ることが好ましく、25質量部以上150質量部以下混合することにより得ることがより好ましく、30質量部以上100質量部以下混合することにより得ることが更により好ましい。食用油脂の配合量が上記範囲にあると、香味油に良好な風味を充分付与させやすい。
【0027】
本発明において、上記混合物を撹拌しながら所定温度に達温させるための手段としては、特に制限はなく、当業者に周知の手段を適宜採用し得る。例えば、上記混合物をタンク等の容器に収容し、適当な撹拌手段により撹拌しつつ、そのタンク等の容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式の加熱手段などで加熱すればよい。
【0028】
加熱条件は、用いる食用油脂、糖、アミノ酸、及び植物乾燥粉末の種類等によっても条件が異なり一概には言えないが、典型的には、油温を所定温度に達温させた後、例えば150℃以上に達温させた後に加熱を停止し、冷却することが好ましい。冷却方法は、例えば、放冷、空冷、水冷等の手段が挙げられる。達温させた後の時間を抑えることにより、生産性が高められるとともに、焦げの発生や風味の成分の飛散消失が防がれる。
【0029】
上記混合物中には、本発明による作用効果を害しない範囲であれば、適宜適当な副素材を配合してもよい。例えば、香料、香辛料抽出物、動物エキス、乳化剤、シリコーン等を適宜適当量で配合して、上記混合物をなすようにしてもよい。
【0030】
加熱終了後には、静置分離、遠心分離、ろ別などの適当な固液分離手段で、液体画分を回収する。液体画分を回収することで、良好な風味が充分に付与された香味油を得ることができる。
【0031】
上記のようにして得られた香味油は、他の食用油脂と混合して、その香味油を含有してなる香味油混合油となしてもよい。その香味油混合油の製造のための他の食用油脂としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。他の食用油脂との配合比に特に制限はないが、香味油と他の食用油脂との合計質量に対する前記香味油の含有量が、0.1質量%以上100質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0032】
上記のようにして得られた香味油や、それを配合した香味油混合油には、所望される風味が損なわれない範囲で、適宜適当な添加素材を配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール等の酸化防止剤、香料、香辛料抽出物、動物エキス等の風味付与材、乳化剤、シリコーンなどが挙げられる。
【0033】
上記のようにして得られた香味油や、それを含有してなる香味油混合油は、各種食品に使用でき、それらに良好な風味を付与することができる。すなわち、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油及び炒め油等の調理用油、練りこみ油、インジェクション用油及び仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して当該食品に組み込ませることで、香味油に由来する風味をその食品に付与して、その食品の風味を高めることができる。その食品としては、炒飯、野菜炒め等の炒め物類、お好み焼き、焼そば、焼肉等の焼き物類、麻婆豆腐のソース、パスタソース、味付け肉のたれ等のソース類、ラーメンスープ、コンソメスープ、カレー、シチュー等のスープ類、餃子、肉まんの具、ハンバーグ、ソーセージ等の食肉加工品類、炊き込みご飯、ピラフ等の米飯類、ロールパン、クッキー等の製菓製パン類、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の水産加工品類、唐揚げ粉、チヂミ粉、粉末スープ等の調整粉類、シーズニングソース、ドレッシング、マヨネーズ、ポン酢、中華料理の素、鍋つゆ等の調味料類、マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、フレンチフライ、唐揚げ、イカリング、コロッケ等の油ちょう食品等であってよい。
【0034】
本発明の好ましい態様においては、上記のように食品に良好な風味として、特に香ばしさ風味を付与する。ここで「香ばしさ風味」とは、野菜や肉類などの食材を直火の強い炎で焼いたような好ましい風味を意味する。よって、例えば、炒め物類及び焼き物類に特に好適に使用され得る。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0036】
[試験例1]
表1に示す配合で、各種の香味油を調製した。
【0037】
【0038】
具体的には、香味油の調製は、以下のようにして行った。
【0039】
(香味油の調製)
(1)電気コンロの上に置いた直径15cmの手鍋に、表1に記載の各配合で原料を入れて、撹拌機を手鍋に設置し、200rpmで撹拌することで混合物を調製した。
【0040】
(2)調製した混合物を200rpmで撹拌しながら、300Wに設定した電気コンロで加熱し、表2に記載の達温温度に達したら、加熱を止めた。
【0041】
(3)手鍋を電気コンロから下ろして、200rpmで撹拌しながら60℃になるまで放冷した。
【0042】
(4)濾紙で放冷した混合物の不溶物を濾別して、香味油を得た。
【0043】
香味油の調製時に凝集物が生成するかを確認するとともに、得られた香味油について、香ばしさ風味の評価を行った。香ばしさ風味の評価は、以下のようにして行った。
【0044】
(香ばしさ風味の評価)
香味油を口に含み、下記基準により評価した。評価はパネラー3人で行い、平均点を評価値とした
5点 香ばしさ風味が非常に強い
4点 香ばしさ風味が強い
3点 香ばしさ風味が感じられる
2点 香ばしさ風味が弱い
1点 香ばしさ風味が非常に弱い
【0045】
結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0048】
比較例1の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとL-アラニンを含有せしめた配合1では、180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物が生じた。また、香ばしさ風味も弱かった。
【0049】
比較例2の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとL-アラニンを含有せしめて、更に人参粉末(コーン油200質量部に対して1質量部)を含有せしめた配合2では、180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物が生じた。また、香ばしさ風味も弱かった。
【0050】
比較例3,4の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとL-アラニンと精製水を含有せしめた配合3では、160℃又は180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物が生じた。また、香ばしさ風味も弱かった。
【0051】
比較例5の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとDL-アラニンと精製水を含有せしめた配合4では、180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物が生じた。また、香ばしさ風味も弱かった。
【0052】
実施例1の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとDL-アラニンと精製水を含有せしめて、更に人参粉末(コーン油200質量部に対して0.8質量部)を含有せしめた配合5では、180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物は生じなかった。また、香ばしさ風味は、上記比較例3~5に比べてより強くなり、上記比較例1,2に比べて更により強くなった。
【0053】
実施例2,3の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとDL-アラニンと精製水を含有せしめて、更に人参粉末(コーン油200質量部に対して1質量部)を含有せしめた配合6では、160℃又は180℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物は生じなかった。また、香ばしさ風味は、上記比較例3~5に比べてより強くなり、上記比較例1,2に比べて更により強くなった。
【0054】
実施例4の結果に示されるように、コーン油にD-フルクトースとDL-アラニンと精製水を含有せしめて、更にカボチャ粉末(コーン油200質量部に対して1質量部)を含有せしめた配合7では、160℃に達温させて香味油を調製する際、凝集物は生じなかった。また、香ばしさ風味は、上記比較例3~5に比べてより強くなり、上記比較例1,2に比べて更により強くなった。
【0055】
以上の結果によれば、食用油脂に糖とアミノ酸を含有せしめ、これを加熱して香味油を調製する際には、凝集物が生じて撹拌機への接触による油ハネ等のおそれがあるとともに、凝集物が生じると食用油脂への香ばしさ風味の付与効果にも劣ることが明らかとなった。これに対して、上記香味油を調製する際に、人参粉末やカボチャ粉末等の植物乾燥粉末を水とともに配合することで、凝集物の生成が防がれて、香ばしさ風味も良好に付与されることが明らかとなった。
【0056】
[試験例2]
(炒飯での評価)
<香味油混合油の調製>
試験例1で調製した配合6の香味油1質量部、菜種油(さらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製)99質量部を混合し、香味油混合油を調製した。
【0057】
<炒飯の作製と評価>
フライパンを180℃まで加熱して、菜種油10gを添加し、さらに解いた全卵25gを入れた。全卵を入れたらすぐにご飯(サトウのごはん、電子レンジで2分加熱したもの、佐藤食品工業株式会社製)200gを入れ、加熱しながら2分混ぜた。みじん切りにしたネギ10g、中華調味料(ウェイパァー、株式会社廣記商行製)4gを加え、振り混ぜながら2分炒め、炒飯を得た。得られた炒飯100質量部に2質量部の香味油混合油を掛けたところ、香味油混合油を掛けていない炒飯と比較して、香ばしさ風味が向上していた。
【0058】
<参考例1>
表3~表5に記載の各配合で原料を用いたことと達温温度を180℃に変えたこと以外は試験例1と同じ方法で香味油の調製を行い、その際に凝集物が生じるかどうかを調べた。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
その結果、食用油脂に糖とアミノ酸を含有せしめ、これを加熱して香味油を調製する際には、試験例1で示されたフルクトースとアラニンの組合せだけでなく、各種の糖類やアミノ酸類で、同様に凝集物の生成の問題が生じることが明らかとなった。