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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】キサンテン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
C09B11/28 B CSP
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020571150
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003567
(87)【国際公開番号】W WO2020162335
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019018485
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光裕
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057235(JP,A)
【文献】国際公開第2005/098437(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0254498(US,A1)
【文献】特表2010-508295(JP,A)
【文献】SORENSEN, Thomas Just et al.,Tetramethoxy-Aminorhodamine (TMARh): A Bichromophore, an Improved Fluorophore, and a pH Switch,Chemistry - A European Journal,2016年,Vol.22, No.21,pp.7046-7049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるキサンテン化合物。
【化1】
式中、R、R、R、R、R、R 、R 、R 10は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、メタロセニル基、炭素数1~30の炭化水素基、又は該炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、ただし、2つ以上のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられている場合、該二価の基は隣り合わず、
上記炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、スルファモイル基、イソシアナト基、複素環基で置換されている場合があり、
及びR は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し、
11 及びR 13 は、それぞれ独立に、カルボキシ基で置換された炭素数1~30の炭化水素基を表し、
12 、R 14、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1~30の無置換の炭化水素基を表し
は、1~3の整数を表し、
q-は、q価の陰イオンを表し、qは1~3の整数を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。
群I:-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-OCS-、-SO-、-SO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-SONH-、-NH-SO-又は-N=CH-。
【請求項2】
nが1であり、qが1であり、Aq-がハロゲン化物イオン、イミドイオン又はスルホン酸イオンである、請求項1に記載のキサンテン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキサンテン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
キサンテン化合物は、光吸収剤、増感剤、染料等として、感光写真材料、染物、塗料、インク、電子写真感光体、トナー、感熱記録紙、転写リボン、光学記録色素、太陽電池、光電変換素子、半導体材料、臨床検査試薬、レーザー治療用色素、染色等に広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、特定の構造を有するキサンテン化合物が開示されている。該キサンテン化合物は、耐熱性に優れ、着色組成物の色素として有用なものであると同文献には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-053154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでキサンテン化合物を染料として用いる場合、クロロホルム、アセトン及びトルエン等の有機溶媒に対して0.5質量%を超えて溶解しないことが要求されている。換言すれば有機溶媒に対する高い耐性がキサンテン化合物に要求されている。しかし、本発明者が追試したところ、特許文献1に記載のキサンテン化合物は有機溶媒に対する耐性が十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するキサンテン化合物が上記課題を解決しうることを知見し、本発明に到達した。
本発明は、下記〔1〕~〔16〕を提供するものである。
【0007】
[1]
式(I)で表されるキサンテン化合物。
【0008】
【化1】
【0009】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、メタロセニル基、炭素数1~30の炭化水素基、又は該炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、ただし、2つ以上のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられている場合、該二価の基は隣り合わず、
上記炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、スルファモイル基、イソシアナト基、複素環基で置換されている場合があり、
11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、複素環基、炭素数1~30の炭化水素基、又は該炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、ただし、2つ以上のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられている場合、該二価の基は隣り合わず、
上記炭化水素基に含まれる水素原子は、複素環基又は極性基で置換されている場合があり、
11、R12、R13、R14、R15及びR16のうちの1つ以上が、置換基として極性基を有する基であり、
nは、1~3の整数を表し、
q-は、q価の陰イオンを表し、qは1~3の整数を表し、pは電荷を中性に保つ係数を表す。
群I:-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-COS-、-OCS-、-SO-、-SO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-SONH-、-NH-SO-又は-N=CH-。
【0010】
[2]
及びRからなる群から選ばれる少なくとも1つの基が、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、炭素数1~30の炭化水素基又はメタロセニル基である、[1]に記載のキサンテン化合物。
【0011】
[3]
及びRからなる群から選ばれる少なくとも1つの基が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である、[1]又は[2]に記載のキサンテン化合物。
【0012】
[4]
又はRがハロゲン原子である、[1]~[3]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0013】
[5]
及びRがハロゲン原子である、[1]~[4]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0014】
[6]
11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち1つ以上が、カルボキシ基で置換された炭素数1~30の炭化水素基である、[1]~[5]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0015】
[7]
11、R12、R13、R14、R15及びR16のうちの2つ以上が、極性基を有する基である、[1]~[6]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0016】
[8]
11又はR12が極性基を有する基であり、且つR13又はR14が極性基を有する基である、[1]~[7]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0017】
[9]
11及びR13が極性基を有する基であり、R12、R14、R15及びR16が炭素数1~30である無置換の炭化水素基である、[8]に記載のキサンテン化合物。
【0018】
[10]
15及びR16が極性基を有する基である、[1]~[8]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0019】
[11]
11、R12、R13及びR14が炭素数1~30である無置換の炭化水素基である、[10]に記載のキサンテン化合物。
【0020】
[12]
11、R12、R13及びR14のうちの2つ以上が極性基を有する基であり、且つR15及びR16が無置換の炭素数1~30の炭化水素基である、[1]~[7]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0021】
[13]
11、R12、R13及びR14が無置換の炭素数1~30の炭化水素基であり、且つR15及びR16が極性基を有する基である、[1]~[7]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0022】
[14]
11、R12、R13、R14、R15及びR16が、それぞれ独立に、極性基を有する又は極性基を有さない炭素数1~10のアルキル基である、[1]~[13]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0023】
[15]
nが1であり、qが1であり、Aq-がハロゲン化物イオン、イミドイオン又はスルホン酸イオンである、[1]~[14]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【0024】
[16]
極性基がカルボキシ基である、[1]~[15]の何れか一に記載のキサンテン化合物。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有機溶媒に対する耐性が高いキサンテン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のキサンテン化合物について、好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のキサンテン化合物は、上記式(I)で表される構造を有する。
【0027】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10で表されるハロゲン原子並びにR、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10で表される炭化水素基に含まれる水素原子を置換する場合があるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R及びR10で表されるハロゲン原子は同一であってもよく、異なっていてもよい。本発明においては、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなるため、ハロゲン原子は塩素であることが好ましい。
【0028】
本発明において炭化水素基等の基が置換基を有する場合、本発明において定義する基の炭素数は、特に断りがない限り、置換基の炭素数を含めたものとする。
【0029】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される炭素数1~30の炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、炭素数8~30のアリールアルケニル基が挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R及びR10で表される炭素数1~30の炭化水素基は同一であってもよく、異なっていてもよい。本発明においては、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなり、且つ化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数1~30の炭化水素基は炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。
【0030】
上記炭素数1~20のアルキル基は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。直鎖のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びイコシルが挙げられる。分岐のアルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソアミル、t-アミル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、イソノニル及びイソデシル等が挙げられる。本発明においては、化合物の合成がより容易になることから、直鎖のものが好ましい。また、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0031】
上記炭素数2~20のアルケニル基は、鎖状であってもよく、環状であってもよい。該アルケニル基が鎖状である場合、末端に不飽和結合を有する末端アルケニル基であってもよく、内部に不飽和結合を有する内部アルケニル基であってもよい。炭素数が2~20である末端アルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル及び5-ヘキセニル等が挙げられる。内部アルケニル基としては、例えば、2-ブテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル及び4-ドデセニル等が挙げられる。環状アルケニル基としては、3-シクロヘキセニル、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。本発明においては、化合物の合成がより容易になることから、炭素数2~10のアルケニル基が好ましい。また、アルケニル基の-C=C-の位置は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、末端部であることが好ましい。-C=C-の数は、異性体の生成の観点から、1~2が好ましい。
【0032】
上記炭素数3~20のシクロアルキル基とは、全体で3~20個の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。飽和多環式アルキル基としては、例えば、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル及びテトラデカヒドロアントラセニル等が挙げられる。本発明においては、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましい。また、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、単環式アルキル基が好ましい。
【0033】
上記炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子がシクロアルキル基で置換され、且つ全体で4~20個の炭素原子を有する基を意味する。該シクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は単環であってもよく、多環であってもよい。また、シクロアルキルアルキル基中のアルキル基のメチレン基は-CH=CH-で置き換わっていてもよい。
シクロアルキル基が単環である炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル及びシクロデシルメチル等のシクロアルキルメチル;2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、2-シクロノニルエチル及び2-シクロデシルエチル等のシクロアルキルエチル;3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、3-シクロオクチルプロピル、3-シクロノニルプロピル及び3-シクロデシルプロピル等のシクロアルキルプロピル;4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル、4-シクロヘキシルブチル、4-シクロヘプチルブチル、4-シクロオクチルブチル、4-シクロノニルブチル、4-シクロデシルブチル等のシクロアルキルブチルが挙げられる。シクロアルキル基が多環である炭素数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[5.1.0]オクチル、ビシクロ[4.2.0]オクチル、ビシクロ[4.1.1]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、スピロ〔4,4〕ノナニル、スピロ〔4,5〕デカニル、デカリン、トリシクロデカニル、テトラシクロドデカニル及びセドロール、シクロドデカニル3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
本発明においては、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数4~10のシクロアルキルアルキル基が好ましい。該炭素数4~10のシクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は、化合物の合成がより容易になることから、単環であることが好ましい。
【0034】
上記炭素数6~30のアリール基は、単環構造を有するものであってもよく、縮環構造を有するものであってもよい。更に、上記アリール基は、単環構造のアリール基と単環構造のアリール基とを連結したものであってもよく、単環構造のアリール基と縮合構造のアリール基とを連結したものであってもよく、或いは縮合構造のアリール基と縮合構造のアリール基とを連結したものであってもよい。単環構造を有するアリール基としては、例えば、フェニル、及びビフェニリル等が挙げられる。縮環構造を有するアリール基としては、例えば、ナフチル、アンスリル及びフェナントレニル等が挙げられる。炭素数6~30のアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、上記アルキル基、上記アルケニル基、カルボキシ基及びハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有する炭素数6~30のアリール基としては、例えば、トリル、キシリル、エチルフェニル、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等の単環構造の置換アリール基が挙げられる。本発明においては、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数6~10のアリール基が好ましい。また、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、アリール基は単環構造であることが好ましい。
【0035】
上記炭素数7~30のアリールアルキル基とは、アルキル基の1又は2以上の水素原子が上記アリール基で置換され、且つ全体で7~30個の炭素原子を有する基を意味する。炭素数7~30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル及びトリフェニルプロピル等のフェニルアルキル;並びにナフチルプロピル等のナフチルアルキルが挙げられる。本発明においては、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数7~20のアリールアルキル基が好ましい。また、アリールアルキル基中のアリール基は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、フェニル基及びナフチル基が好ましい。アリールアルキル基中のアリール基の数は、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、1~3が好ましい。アリールアルキル基中のアリール基は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1~4である直鎖のアルキル基が好ましい。アリールアルキル基中のアリール基は、化合物の合成がより容易になることから、アルキル基の末端に位置していることが好ましい。
【0036】
上記炭素数8~30のアリールアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子がアリール基で置換され、且つ全体で8~30個の炭素原子を有する基を意味する。該炭素数8~30のアリールアルケニル基としては、例えば、スチレニル、シンナミル、2-フェニル-2-プロペニル、3-フェニル-2-プロペニル、2-フェニル-4-ペンテニル、2-フェニル-4-ヘキセニル、2,2-ジフェニルエチレニル、3,3-フェニル-2-プロペニル、2-ナフチル-2-プロペニル、3-ナフチル-2-プロペニル、3-ナフチル-2-フェニル-2-プロペニル、5-アントラセニル-2-フェニル-4-ヘキセニル及び5-アントラセニル-2-ナフチル-4-ヘキセニル等が挙げられる。本発明においては、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数8~20のアリールアルケニル基が好ましい。アリールアルケニル基中のアリール基は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、フェニル基及びナフチル基が好ましい。アリールアルケニル基中のアリール基の数は、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、1又は2が好ましい。アリールアルケニル基中のアリール基は、化合物の重量当たりの吸光係数が高くなることから、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。アリールアルケニル基中のアリール基は、化合物の合成がより容易になることから、アルキル基の末端に位置していることが好ましい。アリールアルケニル基中のアルケニル基は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、鎖状であることが好ましい。アルケニル基は鎖状である場合、末端に不飽和結合を有する末端アルケニル基であってもよく、内部に不飽和結合を有する内部アルケニル基であってもよい。
【0037】
11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される複素環基は単環であってもよく、縮環構造であってもよい。更に、上記複素環基は、単環の複素環基と単環の複素環基とを連結したものであってもよく、単環の複素環基と縮合構造の複素環基とを連結したものであってもよく、或いは縮合構造の複素環基と縮合構造の複素環基とを連結したものであってもよい。単環の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、イミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、チエニル、チオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等が挙げられる。縮環構造の複素環基としては、例えば、キノリル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル及びインドリル等の縮環構造の複素環基が挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される炭化水素基中の水素原子と置換可能な複素環基についても同様の説明が適用される。
【0038】
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10で表されるメタロセニル基としては、例えば、フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトニル、フェロセンアルキル、フェロセンアルコキシ等が挙げられる。
【0039】
本発明のキサンテン化合物は、式(I)中のR11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される基の1つ以上が、置換基として極性基を有する基である。本発明において極性基とは、極性のある原子団を意味する。極性基の具体例としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホニル基などが挙げられる。これらのうち、化合物の有機溶媒に対する耐性が高くなることから、カルボキシ基が好ましい。
【0040】
式(I)中のnが1であるキサンテン化合物は、合成のしやすさの点から好ましい。
【0041】
式(I)中のAq-で表される陰イオンは、qの値に応じ、一価、二価又は三価の陰イオンをとり得る。Aq-が一価の陰イオンAである場合、該Aとしては、例えば、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)及びフッ化物イオン(F)等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン(ClO )、塩素酸イオン(ClO )、硝酸イオン(NO )、硝酸イオン(NO )、チオシアン酸イオン(SCN)、六フッ化リン酸イオン(PF )、六フッ化アンチモンイオン(SbF )、四塩化アルミン酸イオン(AlCl )及び四フッ化ホウ素イオン(BF )等の無機系イオン;酢酸イオン(CHCO )及びトリフルオロ酢酸イオン(CFCO )等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸イオン(CHSO )、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及びビニルスルホン酸イオンのスルホン酸イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、ブチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン;メチルリン酸イオン、エチルリン酸イオン、ブチルリン酸イオン等のアルキルリン酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CFSO)、ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドイオン((CSO)及びジシアンイミドイオン((CN))等のイミドイオン等が挙げられる。一価の陰イオンは、特にハロゲン化物イオン、イミドイオン又はスルホン酸イオンであることが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオンが合成のしやすさから好ましい。イミドイオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンが有機溶媒に対する耐性が高くなることから好ましい。スルホン酸イオンとしては、3-スルホ安息香酸イオン等のベンゼンスルホン酸イオンが有機溶媒に対する耐性が高くなることから好ましい。
q-が二価の陰イオンA2-である場合、該A2-としては、タングステン酸イオン、モリブデン酸イオン(MoO 2-)及びクロム酸イオン等が挙げられる。
q-が三価の陰イオンA3-である場合、該A3-としては、例えば、リンモリブデン酸イオン、リンタングステン酸イオン、リンタングストモリブデン酸イオン及びバナジン酸イオン等が挙げられる。
【0042】
本発明のキサンテン化合物は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、式(I)中のR及びRからなる群から選ばれる少なくとも1つの基、特にR及びRが、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、炭素数1~30の炭化水素基又はメタロセニル基であることが好ましく、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基であることがより好ましく、ハロゲン原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。
同様の観点から、R、R、R、R、R、R、R及びR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの基が水素原子であることが好ましく、R、R、R、R、R、R、R及びR10の全てが水素原子であることが好ましい。
【0043】
本発明のキサンテン化合物は、化合物の有機溶媒に対する耐性が高くなることから、式(I)中のR11、R12、R13、R14、R15及びR16のうち1つ以上、好ましくは2以上の水素原子が、カルボキシ基で置換された炭素数1~30の炭化水素基であることが好ましい。
本発明のキサンテン化合物は、化合物の有機溶媒に対する耐性が高くなることから、式(I)中のR11、R12、R13、R14、R15及びR16のうちの2つ以上が極性基を有する基であることが好ましい。
本発明のキサンテン化合物は、化合物の有機溶媒に対する耐性が高くなることから、式(I)中のR11又はR12が極性基を有する基であり、且つR13又はR14が極性基を有する基であることが好ましい。同様の観点から、R15及びR16が極性基を有する基であることが好ましい。
本発明のキサンテン化合物は、化合物の有機溶媒に対する耐性が高くなることから、式(I)中のR11、R12、R13及びR14のうちの2つ以上が極性基を有する基であり、且つR15及びR16が炭素数1~30である無置換の炭化水素基であることが好ましい。同様の観点から、式(I)中のR11及びR13が極性基を有する基であり、且つR12、R14、R15及びR16が炭素数1~30である無置換の炭化水素基であることが好ましい。同様の観点から、式(I)中のR11、R12、R13及びR14が炭素数1~30である無置換の炭化水素基であり、且つR15及びR16が極性基を有する基であることが好ましい。
本発明のキサンテン化合物は、化合物の紫外・可視吸収スペクトルの波長域の幅が狭くなることから、式(I)中のR11、R12、R13、R14、R15及びR16が、それぞれ独立に、炭素数1~30の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが特に好ましい。
【0044】
本発明のキサンテン化合物は、化合物の合成が容易となることから、式(I)中のn及びqが1であること、即ちAq-が一価の陰イオンであることが好ましい。Aq-が一価の陰イオンである場合、Aq-がハロゲン化物イオン、イミドイオン又はスルホン酸イオンであることが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオンが好ましい。イミドイオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンが好ましい。スルホン酸イオンとしては、3-スルホ安息香酸イオン等のベンゼンスルホン酸イオンが好ましい。
【0045】
本発明のキサンテン化合物の具体例としては、例えば、化合物(I-1)~(I-30)が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
【化4】
【0049】
【化5】
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
【化8】
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
本発明のキサンテン化合物は、クロロホルム、アセトン及びトルエン等の有機溶媒へ耐性が高いもの、即ち本発明のキサンテン化合物は有機溶媒に溶けにくいものである。有機溶媒への耐性が高いとは、有機溶媒に実質的に溶解しないか、溶解するとしても溶解量は0.5質量%未満という少量であることを意味する。
特に、本発明のキサンテン化合物はクロロホルムに実質的に溶解しないか、溶解するとしても溶解量は0.5質量%未満であることが好ましく、0~0.4質量%であることがより好ましい。
また、本発明のキサンテン化合物はアセトンに実質的に溶解しないか、溶解するとしても溶解量は0.5質量%未満であることが好ましく、0~0.2質量%であることがより好ましく、0~0.1質量%であることが更に好ましい。
また、本発明のキサンテン化合物はトルエンに実質的に溶解しないか、溶解するとしても溶解量は0.5質量%未満であることが好ましく、0~0.2質量%であることがより好ましく、トルエンに不溶であることが更に好ましい。本明細書において有機溶媒に不溶とは、有機溶媒に対する溶解量が0.01質量%以下のことを意味する。
有機溶媒に対するキサンテン化合物の溶解度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0057】
上記式(I)で表されるキサンテン化合物は、例えば、下記の方法で好適に製造することができる。
【0058】
まず極性基を有するアニリン誘導体をホルミル化し、その後、アミノフェノール誘導体と脱水縮合を行い、ロイコ体を得る。得られたロイコ体を酸化反応し、種々のアニオンと塩交換することで目的とするキサンテン化合物を得ることができる。反応条件等は公知の条件を採用することができる。
【0059】
本発明のキサンテン化合物は、光吸収剤、増感剤等として、感光写真材料、染物、塗料、インク、電子写真感光体、トナー、感熱記録紙、転写リボン、光学記録色素、太陽電池、光電変換素子、半導体材料、臨床検査試薬、レーザー治療用色素、染色等の用途に用いることができる。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。特に断らない限り、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0061】
[実施例1]キサンテン化合物(I-1)の合成
15.0部の3-アミノフェノールと、187部のメタノールとを混合し、-5℃で攪拌し、反応液を得た。得られた反応液に8.8部のプロピルアルデヒドを加え10分間攪拌した後、11.4部の水素化ホウ素ナトリウムを少しずつ加え、4時間攪拌した。2N塩酸をpHが4になるまで反応液に加えた後、析出した固体を濾別した。ろ液のメタノールを溶媒溜去し、残渣に酢酸エチルを加え3回水洗した後、有機層から溶媒を溜去した。得られた液体を60℃減圧オーブンで乾燥し、化合物S-2を11.24部(54%)得た。LC/MS:150[M]。
【0062】
【化12】
【0063】
10.0部の化合物S-2、19.4部の4-ブロモ酪酸エチル、及び66.2部のテトラブチルアンモニウムブロミドを混合し、95℃で2時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応物をトルエンで抽出した後、抽出した反応物を50部の水で3回水洗した。有機層を溶媒溜去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム:ヘキサン=1:1)で精製し、化合物S-3を8.1部(収率23%)得た。LC/MS:264[M+]。
【0064】
【化13】
【0065】
4.3部の化合物S-3と、2.0部の化合物S-1と、49.1部のトリフルオロスルホン酸とを混合し、100℃で3時間攪拌し、反応液を得た。化合物S-1は下記式で表されるものである。反応液を室温まで冷却した後、反応液に水100部を加えた後、クロロホルム及び酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水洗した。水洗した各有機層を合わせて溶媒溜去した。残渣に3.5部のp-クロラニル、及び100部のアセトニトリルを加え、室温で12時間攪拌した。反応液を溶媒溜去後、クロロホルム100部を加え析出した固体を濾別した。ろ液を濃縮後、4%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え室温で12時間攪拌した。2N塩酸で液をpH4まで中和し、析出した固体をろ取した。得られた固体を酢酸エチル-ヘキサン(3:1)混合溶液で3時間分散洗浄し、その後、乾燥させた。乾燥させた固体を濃塩酸20部に溶解させ、溶解液を得た。得られた溶解液をフィルタろ過し、ろ液を20%食塩水にて晶析し、pH4になるまで25%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。析出固体をろ取し、60℃減圧オーブンにて乾燥し、式(I-1)で表されるキサンテン化合物2.3部(収率39%)を得た。LC/MS:683[M+]。
【0066】
【化14】
【0067】
【化15】
【0068】
[実施例2]キサンテン化合物(I-2)の合成
0.44部のキサンテン化合物(I-1)と、0.35部のビス(トリフルオロメタンスルホニル)リチウムと、6.7部のN,N-ジメチルスルホキシドとを混合し、50℃で3時間攪拌し、反応液を得た。得られた反応液を40部の20%食塩水に滴下し、析出した固体をろ取した。固体をクロロホルムに溶解させ、有機層を水で洗浄したのち硫酸ナトリウムを加えて乾燥後溶媒留去し、60℃減圧オーブンにて乾燥し、式(I-2)で表されるキサンテン化合物0.43部(収率74%)を得た。
【0069】
【化16】
【0070】
[実施例3]キサンテン化合物(I-3)の合成
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)リチウムを3-スルホ安息香酸ナトリウムに変更した以外は実施例2と同様にして、式(I-3)で表されるキサンテン化合物0.50部(収率72%)を得た。
【0071】
【化17】
【0072】
[実施例4]キサンテン化合物(I-4)の合成
0.4部のN,N-ジエチルアミノ-3-フェノール、0.5部の化合物S-X、及び7.4部のトリフルオロスルホン酸を混合し、100℃で3時間攪拌して反応液を得た。化合物S-Xは下記式で表されるものである。反応液を室温まで冷却後、反応液を50部の水に加え、クロロホルム及び酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層を水洗した。水洗した各有機層を合わせて溶媒溜去した。残渣に0.9部のp-クロラニル、50部のアセトニトリルを加え、室温で12時間攪拌した。反応液を溶媒溜去後、50部のクロロホルムを加え、析出した固体を濾別した。ろ液を濃縮後、濃縮したろ液に50部の4%水酸化ナトリウム水溶液を加え室温で12時間攪拌した。2N塩酸で反応液をpH4まで中和し、析出した固体をろ取した。得られた固体を酢酸エチル-ヘキサン(3:1)混合溶液で3時間分散洗浄し、乾燥後、5部の濃塩酸に溶解させ、溶解液を得た。得られた溶解液をフィルタろ過し、ろ液を20%食塩水にて晶析し、25%水酸化ナトリウム水溶液でpHが4になるまで中和した。析出固体をろ取し、60℃減圧オーブンにて乾燥し、式(I-4)で表されるキサンテン化合物0.21部(収率24%)を得た。LC/MS:655[M+]。
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
[実施例5]キサンテン化合物(I-5)の合成
キサンテン化合物(I-1)をキサンテン化合物(I-4)に変更した以外は実施例2と同様にして、式(I-5)で表されるキサンテン化合物0.55部(収率67%)を得た。
【0076】
【化20】
【0077】
[実施例6]キサンテン化合物(I-6)の合成
キサンテン化合物(I-1)をキサンテン化合物(I-4)に変更した以外は実施例3と同様にして、式(I-6)で表されるキサンテン化合物0.51部(収率76%)を得た。
【0078】
【化21】
【0079】
[比較例1]比較キサンテン化合物1
比較キサンテン化合物1として、下記の化合物を用いた。
【0080】
【化22】
【0081】
実施例1のキサンテン化合物(I-1)及び比較例1の比較キサンテン化合物1の有機溶媒に対する溶解性を下記の方法により測定した。
50mLのサンプル管にキサンテン化合物(I-1)及び比較キサンテン化合物1をそれぞれ0.10g測り取った。該サンプル管にクロロホルムを加え、3分間振盪後、1分間静置し、結晶が析出しない濃度を求め、クロロホルムに対するキサンテン化合物の溶解度とした。キサンテン化合物の含有量が10質量%の溶液に対して結晶が析出しなくなるまでクロロホルムの添加を続けることによって測定を行った。測定は、常温(23℃)で行った。結果を表1に示す。
同様の手順により、アセトン及びトルエンに対するキサンテン化合物の溶解度を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1のキサンテン化合物(I-1)はクロロホルム、アセトン及びトルエン等の有機溶媒に対する溶解度が0.5%以下であり、有機溶媒に対する耐性が向上していることから、染料として好適に使用できることが判る。これに対し、比較キサンテン化合物1は有機溶媒に対する溶解度が0.5%超であり、実施例1のキサンテン化合物(I-1)に比べて染料として不適であることが判る。