(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】貯留タンク管理システム及び貯留タンク管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20240712BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20240712BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20240712BHJP
G06Q 50/12 20120101ALI20240712BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06Q30/06
G06Q10/0631
G06Q50/12
(21)【出願番号】P 2021556003
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2020040601
(87)【国際公開番号】W WO2021095543
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019205584
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豪
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
(72)【発明者】
【氏名】袴田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健市
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519982(JP,A)
【文献】特開2016-161969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売する揚げ物の調理を行う施設の付帯設備として設置されて、前記揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理システムであって、
前記貯留タンク内の前記フライ油の残量を認識する残量認識部と、
前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度を予測する劣化予測部と、
前記劣化予測部が予測する前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化
度と、前記残量認識部が認識した前記残量とに基づいて、
前記劣化予測部により予測される前記劣化度を許容範囲に維持できるように、前記貯留タンクに補給する前記フライ油の発注タイミングを決定する発注タイミング決定部と、
を備えることを特徴とする貯留タンク管理システム。
【請求項2】
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内のヘッドスペース量を1つの判断要素として前記劣化度を予測し、
前記発注タイミング決定部は、前記劣化度を前記許容範囲に維持するために必要な前記ヘッドスペース量を超えないように、前記発注タイミングを決定することを特徴とする請求項
1に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項3】
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された補給時からの経過時間を1つの判断要素として前記劣化度を予測し、
前記発注タイミング決定部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された補給時からの経過時間が、前記劣化度を前記許容範囲に維持するために必要な時間内に維持されるように、前記発注タイミングを決定することを特徴とする請求項
1又は2に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項4】
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された時の補給量と、補給直前の前記フライ油の残量との比率に基づいて補給時の前記劣化度を補給時劣化度として予測し、補給時からの時間経過後の前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度を前記補給時劣化度と補給時からの経過時間とに基づいて予測することを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項5】
さらに、
前記発注タイミング決定部が決定した前記発注タイミングに基づいて前記フライ油の発注先に発注を行う発注部、
を備えることを特徴とする請求項1
~4のいずれか1項に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項6】
さらに、
前記施設内のフライヤーにおける前記フライ油の交換情報を認識する交換情報認識部、を備え、
前記発注タイミング決定部は、前記交換情報認識部が認識した前記交換情報を加味して、前記発注タイミングを決定することを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項7】
さらに、
前記施設としての店舗の属性、前記店舗の揚げ物の売り上げに影響を与えるイベントに係る情報、種類別の揚げ物の過去の販売数の実績に基づいて予測した将来の予測販売数、揚げ物の種類別の調理時間、現在の日時、前記フライ油の劣化度、及び、天気情報の少なくとも1つをパラメータ情報として認識するパラメータ情報認識部、
を備え、
前記発注タイミング決定部は、前記パラメータ情報認識部が認識した前記パラメータ情報を加味して、前記発注タイミングを決定することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項8】
さらに、
前記発注タイミング決定部が決定した前記発注タイミングに基づいて前記フライ油の発注先に発注を行う発注部と、
前記フライ油の前記発注先としての前記フライ油の製造業者が管理する発注先サーバと、
を備え、
前記発注先サーバは、
前記発注部からの前記発注を受け付ける発注受付部と、
前記発注受付部の受け付けた前記発注に基づいて前記フライ油の生産計画を立案する生産計画立案部と、
を備えることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の貯留タンク管理システム。
【請求項9】
販売する揚げ物の調理を行う施設の付帯設備として設置されて、前記揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理方法であって、
残量認識部が、前記貯留タンク内の前記フライ油の残量を認識する残量認識ステップと、
劣化予測部が前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度を予測する劣化予測ステップと、
発注タイミング決定部が、
前記劣化予測ステップにおいて予測する前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化
度と、前記残量認識ステップにおいて認識した前記残量とに基づいて、
前記劣化予測ステップにおいて予測される前記劣化度を許容範囲に維持できるように、前記貯留タンクに補給する前記フライ油の発注タイミングを決定する発注タイミング決定ステップと、
を備えることを特徴とする貯留タンク管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物を販売する施設に付帯設備として設置されて、揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理システム及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物を店内で揚げて販売する店舗では、揚げ物は、店舗の陳列部に陳列され、顧客は、陳列部に陳列されている揚げ物から好みの種類の揚げ物を購入している。したがって、店舗では、揚げ物が陳列部に過不足なく陳列されるように、あらかじめ店舗内のフライヤーで揚げて対応しておく必要がある。
【0003】
フライヤーの油槽のフライ油は、揚げ物を調理することにより、劣化していく。したがって、調理品の揚げ物の品質を維持するためには、油槽のフライ油は、劣化度が所定の上限を超えないように、適宜、交換する必要がある。
【0004】
このため、揚げ物を販売する施設では、付帯設備としてフライ油を貯留する貯留タンクが設置され、油槽のフライ油が劣化したときは、油槽の劣化したフライ油を廃棄するとともに、油槽を清掃してから、貯留タンクから新しいフライ油を油槽に補給している。
【0005】
一方、貯留タンクのフライ油は、各施設が、所定の業者に発注して、配送及び補給を受けることになっている。したがって、施設は、フライヤーにおける揚げ物の調理に支障が生じないように、発注タイミングを適切に管理する必要がある。
【0006】
貯留タンクにおける燃料の残量を管理する手法としては、特許文献1、2に記載のような手法がある。特許文献1,2のLPガスのタンクの残量管理装置は、タンクのLPガスの現在の残量と、これからのLPガスの予測消費量とに基づいて、タンクの将来の残量を予測する。そして、予測に応じてガス供給事業者が、タンク設置場所を回って、LPガスの補給を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-20830号公報
【文献】特開2019-20831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
施設の揚げ物の調理に使用するフライ油の貯留タンクの補給は、フライ油の残量を検出した貯留タンクへの補給である。
【0009】
これに対し、特許文献1,2におけるLPガスの補給は、タンクを丸ごと交換するようになっている。すなわち、タンクの各設置場所でのLPガスの補給は、空になったタンクを、LPガスが最大量詰め込まれているタンクと交換することにより行われている。
【0010】
しかし、貯留タンクのフライ油の発注タイミングは、残量だけでなく、フライ油特有の性質も加味して決定しなければならない。貯留タンク内のフライ油は、残量に変化がなくても、劣化が進む。また、フライ油の将来の残量は、施設内のフライヤーにおけるフライ油の交換や施設における揚げ物の将来の販売数から大きな影響を受ける。
【0011】
そのため、特許文献1,2におけるLPガスの補給の仕方を、店舗等に設置されているフライ油の貯留タンクへのフライ油の補給にそのまま適用することはできなかった。
【0012】
本発明の目的は、揚げ物を販売する店舗の付帯設備として設置されて、揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理を適切に行うことができる貯留タンク管理システム及び貯留タンク管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の貯留タンク管理システムは、
販売する揚げ物の調理を行う施設の付帯設備として設置されて、前記揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理システムであって、
前記貯留タンク内の前記フライ油の残量を認識する残量認識部と、
前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度、前記施設内のフライヤーにおける前記フライ油の交換情報、及び前記揚げ物の将来の販売数に影響を与えるパラメータについてのパラメータ情報のうちの少なくとも1つと、前記残量認識部が認識した前記残量とに基づいて、前記貯留タンクに補給する前記フライ油の発注タイミングを決定する発注タイミング決定部と、
を備える。
【0014】
本発明の貯留タンク管理システムによれば、貯留タンクのフライ油の残量の他に、貯留タンク内のフライ油の劣化度、施設内のフライヤーにおけるフライ油の交換情報、及び施設における揚げ物の将来の販売数に影響を与えるパラメータについてのパラメータ情報のうちの少なくとも1つを加味して、フライ油の発注タイミングを決定している。
【0015】
すなわち、この管理システムでは、フライ油の劣化度、店舗状況といった、フライ油の発注タイミングの決定には重要となる要素を加味して、フライ油の発注タイミングを決定する。これにより、貯留タンクのフライ油の残量を適切に管理して、店舗における揚げ物の調理に支障が生じない貯留タンクの管理を適切に行うことができる。
【0016】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムは、
さらに、
前記発注タイミング決定部が決定した前記発注タイミングに基づいて前記フライ油の発注先に発注を行う発注部、
を備える。
【0017】
この構成によれば、発注タイミング決定部とは別に発注部が設けられる。これにより、発注部は、発注タイミング決定部が決定した発注タイミングとは別の要素(例:施設のスケジュール上、都合の良い納品日)を勘案して、発注を行うことができる。なお、発注部による発注は、自動的に行ってもよい。その場合には、管理者等が発注を個別に行わずとも、的確なタイミングで発注を行うことができる。
【0018】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムは、
さらに、
前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度を予測する劣化予測部、
を備え、
前記発注タイミング決定部は、前記劣化予測部により予測される前記劣化度を許容範囲に維持できるように、前記発注タイミングを決定する。
【0019】
貯留タンク内のフライ油は、貯留タンク内の空気との接触などによって、時間が経過するに伴って、油脂酸化などの劣化が進行する。そして、そのような劣化が進行したフライ油は、交換しても既に劣化が進行しているため、調理物の味、色等に影響を与えてしまい、短期間で再び交換が必要となることになる。
【0020】
そこで、この構成によれば、貯留タンク内のフライ油の劣化度を予測し、劣化度を許容範囲に維持できるように、発注タイミングを決定する。これにより、交換されたフライ油によって調理される調理物は、味、色等を好適なものに維持できる。
【0021】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムにおいて、
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内のヘッドスペース量を1つの判断要素として前記劣化度を予測し、
前記発注タイミング決定部は、前記劣化度を前記許容範囲に維持するために必要な前記ヘッドスペース量を超えないように、前記発注タイミングを決定する。
【0022】
貯留タンクのフライ油は、ヘッドスペースの空気との接触により劣化が進行する。ヘッドスペース量が多いほど貯留タンク内の空気量が多いので、ヘッドスペース量が多いときほど、貯留タンク内のフライ油の劣化速度が速くなって、揚げ物の風味の低下が早くなる。
【0023】
この構成では、劣化度を許容範囲に維持するために必要なヘッドスペース量を超えないように、発注タイミングを決定することにより、貯留タンク内のフライ油で調理した揚げ物が風味低下を起こさないように、貯留タンク内のフライ油を管理することができる。
【0024】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムにおいて、
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された補給時からの経過時間を1つの判断要素として前記劣化度を予測し、
前記発注タイミング決定部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された補給時からの経過時間が、前記劣化度を前記許容範囲に維持するために必要な時間内に維持されるように、前記発注タイミングを決定する。
【0025】
貯留タンク内のフライ油は、ヘッドスペースの空気との接触時間の増大に連れて、劣化が進行する。この構成によれば、貯留タンク内のフライ油が貯留タンク内に補給された補給時からの経過時間が発注タイミングの決定に関与することにより、劣化度を許容範囲に維持するための発注タイミングの決定精度を高めることができる。
【0026】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムにおいて、
前記劣化予測部は、前記貯留タンク内の前記フライ油が前記貯留タンク内に補給された時の補給量と、補給直前の前記フライ油の残量との比率に基づいて補給時の前記劣化度を補給時劣化度として予測し、補給時からの時間経過後の前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度を前記補給時劣化度と補給時からの経過時間とに基づいて予測する。
【0027】
貯留タンクにフライ油を補給する時は、補給前の古いフライ油と、補給した新しいフライ油とが混ざることになる。したがって、補給直後の貯留タンクのフライ油の劣化度は、補給直前のフライ油の残量とフライ油の補給量との比率に関係する。さらに、貯留タンク内のフライ油は、補給後は、時間の経過と共に劣化が進行する。
【0028】
この構成によれば、補給時からの時間経過後の貯留タンク内のフライ油の劣化度を補給時劣化度と補給時からの経過時間とに基づいて予測することにより、補給後のフライ油の劣化度を適切に予測することができる。これにより、発注タイミングを適切にすることができる。
【0029】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムは、
さらに、
前記店舗内のフライヤーにおける前記フライ油の交換情報を認識する交換情報認識部、を備え、
前記発注タイミング決定部は、前記交換情報認識部が認識した前記交換情報を加味して、前記発注タイミングを決定する。
【0030】
貯留タンク内のフライ油は、店舗のフライヤーにおける揚げ物の調理に使用されるので、貯留タンクのフライ油の将来の残量は、フライヤーにおけるフライ油の交換頻度によって影響を受ける。
【0031】
この構成によれば、発注タイミングがフライヤーにおけるフライ油の交換情報を加味して決定されるので、フライヤーでのフライ油の消費に整合した発注タイミングを決定することができる。
【0032】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムは、
さらに、
前記施設としての店舗の属性、前記店舗の揚げ物の売り上げに影響を与えるイベントに係る情報、種類別の揚げ物の過去の販売数の実績に基づいて予測した将来の予測販売数、揚げ物の種類別の調理時間、現在の日時、前記フライ油の劣化度、及び、天気情報の少なくとも1つをパラメータ情報として認識するパラメータ情報認識部、
を備え、
前記発注タイミング決定部は、前記パラメータ情報認識部が認識した前記パラメータ情報を加味して、前記発注タイミングを決定する。
【0033】
貯留タンク内のフライ油は、施設の揚げ物の売り上げに応じて消費されるので、貯留タンクのフライ油の将来の残量は、施設の揚げ物の売り上げに関係する上記パラメータ情報から影響を受ける。
【0034】
この構成によれば、発注タイミングがパラメータ情報を加味して決定されるので、店舗の揚げ物の将来の売り上げに整合した発注タイミングを決定することができる。
【0035】
好ましくは、本発明の貯留タンク管理システムは、
さらに、
前記発注タイミング決定部が決定した前記発注タイミングに基づいて前記フライ油の発注先に発注を行う発注部と、
前記フライ油の前記発注先としての前記フライ油の製造業者が管理する発注先サーバと、
を備え、
前記発注先サーバは、
前記発注部からの前記発注を受け付ける発注受付部と、
前記発注受付部の受け付けた前記発注に基づいて前記フライ油の生産計画を立案する生産計画立案部と、
を備える。
【0036】
この構成によれば、発注先サーバが、施設からのフライ油の発注に基づいてフライ油の生産計画を立案することにより、製造業者は、施設のフライ油の需要に対応するフライ油の生産を行うことができる。
【0037】
本発明の貯留タンク管理方法は、
販売する揚げ物の調理を行う施設の付帯設備として設置されて、前記揚げ物に使用するフライ油を貯留する貯留タンクの管理方法であって、
残量認識部が、前記貯留タンク内の前記フライ油の残量を認識する残量認識ステップと、
発注タイミング決定部が、前記貯留タンク内の前記フライ油の劣化度、前記施設内のフライヤーにおける前記フライ油の交換情報、及び前記揚げ物の将来の販売数に影響を与えるパラメータについてのパラメータ情報のうちの少なくとも1つと、前記残量認識ステップにおいて認識した前記残量とに基づいて、前記貯留タンクに補給する前記フライ油の発注タイミングを決定する発注タイミング決定ステップと、
を含む。
【0038】
本発明の貯留タンク管理方法によれば、貯留タンクのフライ油の残量の他に、貯留タンク内のフライ油の劣化度、施設内のフライヤーにおけるフライ油の交換情報、及び施設における揚げ物の将来の販売数に影響を与えるパラメータについてのパラメータ情報のうちの少なくとも1つを加味して、フライ油の発注タイミングを決定している。
【0039】
すなわち、この管理システムでは、フライ油の劣化度、店舗状況といった、フライ油の発注タイミングの決定には重要となる要素を加味して、フライ油の発注タイミングを決定する。これにより、貯留タンクのフライ油の残量を適切に管理して、店舗における揚げ物の調理に支障が生じない貯留タンクの管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】顧客に販売する揚げ物を調理する調理場を示す図である。
【
図3】フライ油を貯留する貯留タンクの正面図である。
【
図4】インターネットを介してデータや情報の送受を行うネットワークシステムの模式図である。
【
図6】貯留タンク管理システムの機能ブロック図である。
【
図7】貯留タンク管理方法のうちのフライ油発注方法のフローチャートである。
【
図8】貯留タンク管理方法のうちの生産計画方法のフローチャートである。
【
図9】貯留タンク内のヘッドスペース量Hsと貯留タンク内のフライ油の劣化速度Dsとの関係を模式的に示したグラフである。
【
図10】残量が少ないときにフライ油を交換したときの貯留タンク内のフライ油の残量Or(実線)及び劣化度De(破線)の時間変化を模式的に示すグラフである。
【
図11】残量が多いときにフライ油を交換したときの貯留タンク内のフライ油の残量Or(実線)及び劣化度De(破線)の時間変化を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、実質的に同一又は等価な要素及び部分については、共通の参照符号を使用する。また、要素名が同一で、構成が同一である各要素は、符号のうち数字の部分が同一で、アルファベットの部分が相違する符号を使用する。そして、要素名が同一で、構成が同一である複数の要素を総称するときは、アルファベットの部分を省略した数字のみ符号を使用する。
【0042】
(調理場)
図1は、顧客に販売する揚げ物19を調理する調理場10を示す図である。なお、以下には、施設32として、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の店舗を例示している。施設32は、店舗に特定されず、コンビニのベンダーや、チェーン店のセントラルキッチンのような工場も含まれる。
【0043】
調理場10は、施設32内に設けられており、電気式のフライヤー14が設置されている。フライヤー14は、油槽15と、油槽15を収容するハウジング16とを有する。
【0044】
油槽15は、上側が開放され、ハウジング16の上部に設けられる。フライ油17は、油槽15内に所定の高さになるまで張られる。揚げ物19は、柄22付きのフライバスケット21内に投入されてから、油槽15内の加熱状態のフライ油17内に漬けられる。
【0045】
フライバスケット21内に一緒に投入されて、かつフライ油17に一緒に漬ける揚げ物19の種類(例:チキン(鶏の唐揚げ)、ポテト及びコロッケ)は、通常は同一とされることが多い。すなわち、フライ油17の漬け時間(揚げ時間)は、揚げ物19の種類ごとに相違しており、異種の揚げ物19は、漬け時間が異なるので、同時に揚げることが難しいからである。
【0046】
複数のボタンスイッチ23a,23b,・・・,23iが、揚げ物19の種類別に、ハウジング16の外面に設けられており、揚げ物19に対応するボタンスイッチを押すと、その揚げ物19に適した漬け時間が経過した後に、ブザー音がフライヤー14の不図示のスピーカから出力されるか、壁26のディスプレイ25に揚げが終了したことが表示されるようになっている。
【0047】
なお、揚げ物19の種類別に、フライ油17の温度を調整するスイッチが設けられていてもよい。ただし、フライ油17の温度は、揚げ物19の種類によってそれほど変わらないことが多いので、特定の温度に設定できるようになっているだけでもよい。
【0048】
カメラ29は、天井又は壁26に取り付けられている。カメラ29は、ビデオカメラ及びスチルカメラのどちらでもよく、フライヤー14の油槽15内の状態を連続して又は一定時間間隔で撮影する。カメラ29の出力画像からは、フライバスケット21内の揚げ物19の種類や個数等が検出可能である。
【0049】
情報処理機器27(例:パーソナルコンピュータ)は、施設32の屋内又は屋外に配備され、店舗業務ソフトウェア28を実装する。情報処理機器27は、ディスプレイ25及びカメラ29とデータを送受する。
【0050】
カメラ29から情報処理機器27に送られる撮像画像のデータからは、フライバスケット21内の揚げ物19の種類や個数等が検出可能である。さらに、カメラ29の撮像画像から油槽15へのフライバスケット21の出し入れも検出できるので、揚げ物19の種類ごとの揚げ時間も検出可能となる。
【0051】
フライ油17による揚げ調理を行う際には、まず、調理担当の店員である調理者は、揚げ物19をフライバスケット21内に入れた後、フライバスケット21内の揚げ物19の全体がフライ油17に漬かるように、フライバスケット21を油槽15の周壁の上端に掛けるか、フライバスケット21の底が油槽15の底に当たるまで、フライバスケット21を沈める。その後、調理者は、今回、揚げ調理する揚げ物19の種類に対応する1つのボタンスイッチ23を押下する。
【0052】
前述したように、フライヤー14において揚げ物19の種類別に設定された漬け時間が経過すると、ブザー音等の音声や、ディスプレイ25における時間経過の表示が行われる。
【0053】
それによって調理者は、今回の揚げ調理が終了したことを感知し、フライバスケット21を引き上げて揚げ物19を油槽15から取出す。なお、フライバスケット21の上げ下げは、駆動機構を設けて、自動的に行うようにすることもできる。
【0054】
なお、フライヤー14と情報処理機器27とをデータ送受自在に有線又は無線で接続し、フライヤー14における揚げ物19の揚げ時間の終了をディスプレイ25に報知することもできる。さらに、油槽15内のフライ油17の劣化度Deを酸価や粘度等に基づいて測定し、劣化度Deが第1閾値に達すると、ディスプレイ25に例えば「フライ油を交換して下さい。」の表示を行うようにしてもよい。
【0055】
さらに、フライ油17の劣化度Deが第2閾値(>第1閾値)に達すると、情報処理機器27は、フライ油17の劣化度Deが第2閾値になったことを、以降、継続的にディスプレイ25に表示するようにしてもよい。
【0056】
そして、さらに、フライヤー14のボタンスイッチ23の操作を無効にして、フライヤー14の使用を強制的に禁止するようにしてもよい。ディスプレイ25における表示は、調理担当者以外の他の店員、例えば責任者も視認できる位置に取り付けられる。
【0057】
(陳列部)
図2は、施設32内の陳列ケース40を示す図である。陳列部としての陳列ケース40は、複数の揚げ物19a,19b,・・・,19kを縦横に並べた陳列状態で陳列している。揚げ物19は、種類別に同一のトレイ43に収められて、陳列ケース40に陳列される。陳列ケース40における揚げ物19をトレイ43ごと場所移動すれば、陳列ケース40における揚げ物19の種類別の陳列状態が変更されるようになっている。
【0058】
図2には、図示していないが、陳列ケース40の陳列状態を認識するカメラが配備される。該カメラは、
図1のカメラ29のように、天井や壁26に取り付けることができる。ただし、陳列ケース40内に陳列されている揚げ物19の陳列状態が視認できる位置に配置されなければならない。
【0059】
陳列ケース40の陳列状態を認識するために、小型カメラを陳列ケース40の各棚の下面に1つずつ取り付けたり、場合によっては、各トレイ43の真上に1つずつ配備したりすることもできる。各小型カメラの撮影画像は、情報処理機器27に送られて、店舗業務ソフトウェア28により合成されたり、分析されたりする。
【0060】
カメラを利用すること以外の認識方法として、陳列ケース40を管理する担当店員が、陳列ケース40に備え付けの入出力インターフェースや、持ち運び自在のタブレットに手作業で介して入力したデータに基づいて行うこともできる。さらに、感圧センサーや重量センサー等を使って、各トレイ43の重量から各トレイ43に収容されている揚げ物19の個数を検出することもできる。
【0061】
(貯留タンク)
図3は、フライ油17を貯留する貯留タンク33の正面図である。貯留タンク33は、施設32内に外から出入りし易い場所や、施設32外で風雨から遮断されかつ施設32内の調理場に近い場所に設置されている。
【0062】
貯留タンク33には、残量計34及び温度計35が装備される。残量計34は、貯留タンク33内のフライ油17の残量Orを検出する。温度計35は、貯留タンク33内のフライ油17の温度を検出する。残量計34及び温度計35の検出信号は、情報処理機器27に送信される。
【0063】
(ネットワーク)
図4は、インターネット36を介してデータや情報の送受を行うネットワークシステムの模式図である。複数の施設32a,32b,・・・,32jと、本部50と、フライ油製造業者55とは、インターネット36を介してデータや情報を送受するようになっている。
【0064】
施設32は、例えばコンビニエンスストアチェーンや、スーパーマーケットのチェーンを構成し、管轄部としての本部50により管轄される。フライ油製造業者55は、各施設32で使用するフライ油17を製造する。この例では、フライ油製造業者55は、各施設32へのフライ油の供給・配送の業務を兼ねる。
【0065】
各施設32は、フライヤー14及び情報処理機器27(
図2)を装備する。情報処理機器27には、店舗業務ソフトウェア28が実装されている。
【0066】
管理サーバ51は、本部50に配備される。管理サーバ51には、データベース53が接続されている。データベース53は、管理サーバ51の記憶装置としての役割も果たし、データベース以外の情報も適宜、記憶可能になっている。
【0067】
本部業務ソフトウェア52は、管理サーバ51に実装され、売り上げ管理(例:POSシステム)等も実行する。管理サーバ51は、種々のコンピュータソフトウェアの実行主体として、基本的なハードウェア(例:CPU、ROM、RAM及びI/F(インターフェース)など)はすべて備える周知の構造である。
【0068】
製造サーバ56は、フライ油製造業者55により管轄される。製造サーバ56は、基本的なハードウェア構造として、管理サーバ51と同一のハードウェア構造を有する。業務ソフトウェア57は、製造サーバ56に実装されている。データベース58は、製造サーバ56に接続されている。
【0069】
図5は、フライ油発注装置60の機能ブロック図である。フライ油発注装置60は、残量認識部61、発注タイミング決定部62、発注部63、劣化予測部64、交換情報認識部65及びパラメータ情報認識部66を備えている。
【0070】
フライ油発注装置60は、コンピュータソフトウェアとして店舗業務ソフトウェア28に実装されている。残量認識部61、発注タイミング決定部62、発注部63、劣化予測部64、交換情報認識部65及びパラメータ情報認識部66の詳細は、後述する。
【0071】
フライ油発注装置60は、
図6の生産計画装置70と無関係に作動して、所定の処理を実行することができる。後述の
図7で説明するフライ油発注方法は、フライ油発注装置60が、
図6の生産計画装置70と無関係に、単独で実行する処理のみからなる方法の一例である。
【0072】
図6は、貯留タンク管理システム69の機能ブロック図である。貯留タンク管理システム69は、フライ油発注装置60と、生産計画装置70とを備える。フライ油発注装置60と生産計画装置70とは、インターネット36を介してデータを送受することにより相互に連携して貯留タンク管理システム69の機能を果たす。
【0073】
生産計画装置70は、業務ソフトウェア57に含まれる。生産計画装置70は、発注受付部71及び生産計画立案部72を備える。発注受付部71及び生産計画立案部72の詳細は、後述する。
【0074】
図7及び
図8は、貯留タンク管理方法のうち、それぞれフライ油発注方法及び生産計画方法のフローチャートである。本発明の貯留タンク管理方法は、フライ油発注方法単独で構成されてもよいし、フライ油発注方法及び生産計画方法の両方を備えて、構成されてもよい。先に、フライ油発注方法について説明する。
【0075】
STEP101では、残量認識部61は、貯留タンク33内のフライ油17の残量Orを認識する。残量Orの認識は、例えば情報処理機器27が残量計34から受信する検出信号に基づいて行われる。
【0076】
発注タイミング決定部62は、残量認識部61が認識した残量Orに対して施設32がフライ油17を補給する必要性について例えば、次のように判断する。そして、判断した必要性に応じて各施設32の発注タイミングを決定していく。
【0077】
発注タイミング決定部62は、残量Or≧80%のとき、フライ油17の納品(貯留タンク33へのフライ油17の補給)は、現時点では、まったく必要ないと判断する。
【0078】
発注タイミング決定部62は、50%≦残量Or<80%であるとき、貯留タンク33内の残量Orは、現時点では適正量であると判断する。しかしながら、施設32の特殊の事情、例えば、近々、イベントが開催される予定がある等の事情が生じているときは、補給の必要性があると判断する。
【0079】
発注タイミング決定部62は、30%≦残量Or<50%であるとき、補給準備の必要性有りと判断する。
【0080】
発注タイミング決定部62は、残量Or<30%であるとき、速やかに補給しなければならないと判断する。
【0081】
STEP102では、劣化予測部64は、貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを予測する。劣化予測部64が貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを予測する具体的な方法として、例えば、次の(a1)~(a3)が挙げられる。
【0082】
(a1)フライ油17は、空気、詳細には空気中の酸素に接触して劣化するので、貯留タンク33内のヘッドスペース量Hsに基づいて劣化度Deを予測することができる。
【0083】
図9は、貯留タンク33内のヘッドスペース量Hsと貯留タンク33内のフライ油17の劣化速度Dsとの関係を模式的に示したグラフである。横軸のヘッドスペース量Hsは、空間率で示している。空間率とは、〔ヘッドスペース量Hsの体積/貯留タンク33の容積〕で定義される。空間率=100%とは、フライ油17が貯留タンク33内に全くないことを意味する。
【0084】
なお、貯留タンク33の容積と貯留タンク33の最大貯留容量とを区別する。貯留タンク33の最大貯留容量とは、貯留タンク33内に貯留可能であるフライ油17の最大量を意味するものとする。貯留タンク33の容積とは、貯留タンク33内のフライ油17の残量Orとヘッドスペース量Hsとの合計を意味する。
【0085】
フライ油17が貯留タンク33の最大貯留容量だけ貯留タンク33に詰め込まれた状態での空間率は、0%でなく、0%より少し大きいHminとなる。すなわち、残量Or=100%であっても、貯留タンク33内の上部にヘッドスペースが残存し、該ヘッドスペースの空気によりフライ油17の劣化が進む。
【0086】
ヘッドスペース量Hsが大きいときほど、貯留タンク33内のフライ油17の残量は、少なくなる。Hminは、フライ油17が貯留タンク33に最大量貯留されているときのヘッドスペース量Hsを示す。ヘッドスペース量Hs=Hminのときも、貯留タンク33内の上部には、ヘッドスペースが残る。
【0087】
貯留タンク33内のヘッドスペースは、空気により占められている。貯留タンク33内のヘッドスペース量Hsが大きいときほど、貯留タンク33内の空気の量は増大するので、フライ油17と空気との反応は促進される。
【0088】
この結果、
図9に示すように、ヘッドスペース量Hsが増大するに連れて、貯留タンク33内のフライ油17とヘッドスペースの空気との反応が速まり、劣化速度Dsが増大する。したがって、ヘッドスペース量Hsが大きいときほど、貯留タンク33内のフライ油17の劣化が進むことになる。
【0089】
(a2)劣化予測部64は、貯留タンク33内のフライ油17が貯留タンク33内に補給された補給時からの経過時間を1つの判断要素として劣化度Deを予測する。
【0090】
貯留タンク33へのフライ油17の補給により貯留タンク33内では補給前の古いフライ油17と補給による新しいフライ油17とが混ざるので、補給の前と後とで貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deは不連続に変化する。また、(a1)で述べたように、貯留タンク33内のフライ油17は、補給後からヘッドスペースの空気との接触により劣化が進む。
【0091】
したがって、貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを、補給時を起点とする経過時間に基づいて予測すると、予測精度を高めることができる。
【0092】
(a3)劣化予測部64は、貯留タンク33内のフライ油17が貯留タンク33内に補給された時の補給量Spと、補給直前のフライ油17の残量Orとの比率Rn(=Sp/Or)に基づいて補給時の劣化度Deを補給時劣化度Desとして予測し、補給時からの経過時間Te後の貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを補給時劣化度Desと補給時からの経過時間Teとに基づいて予測する。
【0093】
比率Rnが大きいほど、すなわち残量Orが少なく、補給量Spが多いほど、補給時劣化度Desは、補給前の劣化度Deに対して大きく下降する。そして、補給時からの経過時間Teが増大するに連れて、劣化度Deは、徐々に増大して行く。このことを、
図10及び
図11を参照して、概略的に説明する。
【0094】
図10及び
図11は、貯留タンク33内のフライ油17の残量Or(実線)及び劣化度De(破線)の時間変化を模式的に示すグラフである。
【0095】
説明を簡単化するために、
図10及び
図11では、補給周期T1,T2ごとに貯留タンク33へのフライ油17の補給が行われたとする。そして、貯留タンク33の残量Orの減少速度は、
図10及び
図11共に等しいと仮定する。teは、補給時刻を示す。横軸に平行に伸びる一点鎖線は、貯留タンク33の残量Or=100%のレベル、すなわちフライ油17の最大貯留量を示している。
【0096】
T1>T2であるので、劣化度Deの振れ幅は、
図10の方が
図11より大きくなる。そして、
図11の方が劣化度Deの最大値が低く維持される。
【0097】
STEP103では、交換情報認識部65は、フライヤー14の油槽15におけるフライ油17の交換情報を認識する。油槽15の容積は固定されているので、油槽15におけるフライ油17の1回の交換当たりのフライ油17の消費量は固定されている。
【0098】
交換情報は、例えば、フライヤー14のフライ油17を交換した日時の情報となる。該日時は、店員がタブレットに手入力してもよいし、カメラ29の撮像画像から自動検出することもできる。交換情報は、店舗業務ソフトウェア28の記憶装置(図示せず)に書き込まれる。
【0099】
施設32の担当の店員は、フライヤー14の油槽15のフライ油17を使って、揚げ物19を揚げる。油槽15のフライ油17の劣化度Deは、油槽15のフライ油17を新しいフライ油17に交換した後、同一のフライ油17で揚げ物19の揚げた個数が増大するに連れて、上昇する。施設32では、販売する揚げ物19の品質を保証するために、油槽15のフライ油17の劣化度Deが閾値に達する前に、油槽15のフライ油17を交換する。
【0100】
STEP104では、パラメータ情報認識部66は、パラメータ情報を認識する。パラメータ情報には、貯留タンク33の貯留容量、貯留タンク33内のフライ油17の現時点までの保存期間、施設32におけるフライ油17の消費速度、施設32の属性、施設32の揚げ物19の売り上げに影響を与えるイベントに係る情報、種類別の揚げ物19の過去の販売数の実績に基づいて予測した将来の予測販売数についての情報、現在の日時及び、天気情報の少なくとも1つが含まれる。
【0101】
施設32の属性には、施設32の立地環境や施設32の規模(例:店員数及び店舗面積)が含まれる。さらに、補足すると、施設32の立地環境には、例えば、オフィス街、学生街、リゾート地、駅前(顧客が徒歩で来店)、郊外(顧客が車で来店)に分けることができる。
【0102】
イベントには、例えば、道路工事、建設工事、運動会(例:学校の運動会、及び野球やサッカー等のスポーツ大会)、花火大会、入学式、成人式等が含まれる。花火大会では、夕方以降に唐揚げやポテトの揚げ物19のテイクアウトが伸びる傾向がある。
【0103】
過去の販売実績には、例えば、直近1週間、先週の同一曜日、昨年の同一月、及び前回のイベント日の販売実績が含まれる。将来の予測販売数は、現在の日時から本日の閉店時刻までの残り時間、天気予報、現在の気温等を予測パラメータにして算出することができる。例えば、気温18℃以下の雨上がりの日は、種類がクリームコロッケである揚げ物19の売り上げが伸びる。したがって、このような日は、クリームコロッケの揚げ物19の調理個数を増やすことが好ましい。現在の日時には、今日の曜日や、今日が学校や会社の夏休みであるか、又は祝日であるかの情報も含む。
【0104】
貯留タンク33内のフライ油17の現時点までの保存期間は、保存期間開始時刻を例えば貯留タンク33への前回のフライ油17の補給時刻teとする。一般には、貯留タンク33へのフライ油17の補給は、空の貯留タンク33へのフライ油17の補給ではなく、古いフライ油17がいくらか残存する貯留タンク33への新しいフライ油17の補給となる。
【0105】
したがって、古いフライ油17の保存期間の開始時刻は、貯留タンク33への前回のフライ油17の補給時刻teより前になるが、通常、古いフライ油17は、新しいフライ油17に比して少ないので、古いフライ油17の保存期間は無視して、前回の補給時刻teを貯留タンク33のフライ油17の保存期間の起算点とする。
【0106】
保存期間について補足すると、貯留タンク33内でフライ油17が少ない状態だと、貯留タンク33内の空間(ヘッドスペース)の部分の酸素が多くなることから、フライ油17の劣化速度が速くなって、揚げ物の風味の低下が早くなる。
【0107】
これに対処するには、例えば、残量Orが40%以下にならないようするのが適切である。例えば、残量Orが、50%を切ったら自動的にフライ油17が発注され、貯留タンク33内のフライ油17の残量Orが40%以下にならないようにして、保存期間中は、揚げ物の風味低下が起こらないようにする。
【0108】
貯留タンク33の貯留容量とフライ油17の消費速度との関係から貯留タンク33の将来の残量Orを予測する。そして、残りX日で、残量Orが50%になると予測する。フライ油製造業者55は、施設32からこの予測を通知されるか、施設32から受信したデータに基づいて予測し、X日以内に配送体制を整える必要があることを推測することができる。
【0109】
気温も、貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deの変動要因となる。気温が高い時のほうが、低い時より貯留タンク33内のフライ油17の劣化が進む。したがって、フライ油17の風味を維持するために、気温に応じて貯留タンク33の空間率を調整することが好ましい。例えば、低温時の25℃未満では空間率50%以下に保持し、高温寺の25℃以上では、低温時より小さい空間率40%以下に保持して、劣化を抑制する。
【0110】
STEP105では、発注タイミング決定部62は、発注タイミングCtを決定する。
【0111】
発注タイミング決定部62が発注タイミングCtを決定する具体例(b1)及び(b2)について説明する。
【0112】
(b1)発注タイミング決定部62は、劣化予測部64により予測される劣化度Deを許容範囲に維持できるように、発注タイミングCtを決定する。
【0113】
貯留タンク33のフライ油17についての劣化度Deの許容範囲とは、フライヤー14で揚げ物19を調理するときに揚げ物19の品質(風味)を保証する範囲となる。したがって、品質保証のための劣化度Deの閾値を設定し、該閾値が、該許容範囲の閾値となる。
【0114】
(b2)発注タイミング決定部62は、劣化度Deを許容範囲に維持するためにヘッドスペース量Hsが所定値を超えないように、発注タイミングCtを決定する。
【0115】
貯留タンク33内のヘッドスペースの空気は、フライ油17の劣化原因になる。また、ヘッドスペース量Hsが大きい時ほど、貯留タンク33内のフライ油17の劣化速度Dsは増大する。
【0116】
ヘッドスペース量Hsは、フライ油17が貯留タンク33に満量状態であっても、0にはならないので、貯留タンク33内のフライ油17は、貯留容量を維持したまま、全然消費されなくても、劣化度Deは進む。しかしながら、ヘッドスペース量Hsが少ないときほど、劣化速度Dsは小さい。また、発注してからフライ油17が貯留タンク33に届くまで、一定のタイムラグTlが存在する。
【0117】
したがって、発注タイミング決定部62は、貯留タンク33内のフライ油17の所定時点(通常は補給時刻)の補給時劣化度Desを始点として該始点からの一定時間Δごとの劣化速度Dsを、各時点のヘッドスペース量Hsに対応する劣化速度Dsの時間積分により計算することができる。こうして、計算された劣化度Deが閾値になった時点を発注タイミングCtとする。
【0118】
(b3)発注タイミング決定部62は、貯留タンク33内のフライ油17が貯留タンク33内に補給された補給時からの経過時間Teが、劣化度Deを許容範囲に維持するために必要な時間内に維持されるように、発注タイミングCtを決定する。
【0119】
STEP106では、発注部63が、発注タイミング決定部62が決定した発注タイミングCtに基づいてフライ油17の発注先に発注を行う。典型的には、発注部63は、現在時刻が、発注タイミング決定部62の決定した発注タイミングCtになると、発注を行う。
【0120】
図8において、STEP111では、発注受付部71は、発注部63からのフライ油17の発注を受け付ける。
【0121】
STEP112では、生産計画立案部72は、発注受付部71の受け付けた発注に基づいてフライ油17の生産計画を立案する。
【0122】
(実施形態の効果)
【0123】
貯留タンク管理システム69によれば、貯留タンク33のフライ油17の残量Orの他に、貯留タンク33内のフライ油17の劣化度De、施設32内のフライヤーにおけるフライ油17の交換情報、及び店舗施設32における揚げ物19の将来の販売数に影響を与えるパラメータについてのパラメータ情報のうちの少なくとも1つを加味して、フライ油17の発注タイミングCtを決定している。
【0124】
すなわち、劣化度De、店舗状況といったフライ油17の発注タイミングCtの決定には重要となる要素を加味して、フライ油17の発注タイミングCtを決定する。これにより、貯留タンク33のフライ油17の残量Orを適切に管理して、施設32における揚げ物19の調理に支障が生じない貯留タンク33の管理を適切に行うことができる。
【0125】
貯留タンク33内のフライ油17は、貯留タンク33内の空気との接触などによって、時間が経過するに伴い、劣化が進行する。そして、そのような劣化が進行したフライ油17は、交換しても既に劣化が進行しているため、揚げ物19の味、色等に影響を与えてしまい、短期間で再び交換が必要となることになる。
【0126】
そこで、貯留タンク管理システム69によれば、貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを予測し、劣化度Deを許容範囲に維持できるように、発注タイミングCtを決定する。これにより、貯留タンク33内で劣化するフライ油17の劣化度Deを許容範囲に維持することができる。その結果、交換されたフライ油17によって調理される調理物は、味、色等を好適なものに維持できる。
【0127】
貯留タンク33のフライ油17は、ヘッドスペースの空気との接触により劣化が進行する。貯留タンク33内の空気量は、ヘッドスペース量Hsが多いほど、多いので、貯留タンク33内のフライ油17の劣化速度が速くなって、揚げ物の風味の低下が早くなる。
【0128】
これに対処し、貯留タンク管理システム69では、劣化度を許容範囲に維持するために必要なヘッドスペース量Hsを超えないように、発注タイミングCtを決定する。これにより、貯留タンク33内のフライ油17で調理した揚げ物が風味の低下を起こさないように、貯留タンク33内のフライ油17を管理することができる。
【0129】
貯留タンク管理システム69では、劣化度Deを許容範囲に維持するために必要なヘッドスペース量Hsを超えないように、発注タイミングCtを決定することにより、発注タイミングCtの誤差を吸収して、貯留タンク33のフライ油17の劣化度Deを許容範囲に維持することができる。
【0130】
貯留タンク33内のフライ油17は、ヘッドスペースの空気との接触時間の増大に連れて、劣化が進行する。貯留タンク管理システム69によれば、貯留タンク33内のフライ油17が貯留タンク33内に補給された補給時からの経過時間が発注タイミングCtの決定に関与することにより、劣化度Deを許容範囲に維持するための発注タイミングCtの決定精度を高めることができる。
【0131】
貯留タンク33にフライ油17を補給する時は、補給前の古いフライ油17と、補給した新しいフライ油17とが混ざることになる。したがって、補給直後の貯留タンク33のフライ油17の劣化度Deは、補給直前のフライ油17の残量Orとフライ油17の補給量との比率に関係する。さらに、貯留タンク33内のフライ油17は、補給後は、時間の経過と共に劣化が進行する。
【0132】
そこで、貯留タンク管理システム69によれば、補給時からの時間経過後の貯留タンク33内のフライ油17の劣化度Deを補給時劣化度と補給時からの経過時間とに基づいて予測することにより、補給後のフライ油17の劣化度Deを適切に予測することができる。
【0133】
貯留タンク33内のフライ油17は、施設32のフライヤーにおける揚げ物19の調理に使用されるので、貯留タンク33のフライ油17の将来の残量Orは、フライヤーにおけるフライ油17の交換頻度によって影響を受ける。
【0134】
そこで、貯留タンク管理システム69によれば、発注タイミングCtがフライヤーにおけるフライ油17の交換情報を加味して決定されるので、フライヤーでのフライ油17の消費に整合した発注タイミングCtを決定することができる。
【0135】
貯留タンク33内のフライ油17は、施設32の揚げ物19の売り上げに応じて消費されるので、貯留タンク33のフライ油17の将来の残量Orは、施設32の揚げ物19の売り上げに関係する上記パラメータ情報から影響を受ける。
【0136】
貯留タンク管理システム69によれば、発注タイミングCtがパラメータ情報を加味して決定されるので、施設32の揚げ物19の将来の売り上げに整合した発注タイミングCtを決定することができる。
【0137】
貯留タンク管理システム69によれば、製造サーバ56が、施設32からのフライ油17の発注に基づいてフライ油17の生産計画を立案することにより、製造業者は、施設32のフライ油17の需要に対応するフライ油17の生産を行うことができる。
【0138】
(補足説明及び変形例)
実施形態の製造サーバ56は、本発明の発注先サーバを構成する。本発明の発注先サーバは、製造業者が管理又は管轄するサーバに限定されない。製造業者が、親企業が立てた生産計画に従ってフライ油17を製造する下請け企業である場合には、製造サーバ56は、親企業により管理又は管轄されることがあるからである。
【0139】
本発明の貯留タンク管理システムは、
図6の貯留タンク管理システム69のように、フライ油発注装置60及び生産計画装置70の両方を備えることができる。しかしながら、本発明の貯留タンク管理システムは、生産計画装置70を装備することなく、
図5の単独の貯留タンク管理システム69から構成されてもよい。
【0140】
図5及び
図6の実施形態では、発注部63は、施設32に備え付けられている情報処理機器27にコンピュータソフトウェアとして実装されたフライ油発注装置60に含まれている。しかしながら、発注タイミング決定部62は、情報処理機器27に残すものの、発注部63は、本部50の管理サーバ51の本部業務ソフトウェア52に移行させてもよい。
【0141】
その場合、本部50の発注部63は、複数の施設32から発注タイミングCtを受信して、日付の等しい発注タイミングCtをまとめたりする等の処理を行ってから、複数の施設32の発注を統合した発注をフライ油製造業者55の生産計画装置70に送信することになる。
【0142】
実施形態では、フライヤーとして電気式のフライヤー14が用いられている。本発明のフライヤーは、揚げ物をフライ油で揚げる調理容器であるなら、加熱源は任意であり、ガス式や電磁式のフライヤー、鍋等であってもよい。
【0143】
実施形態では、劣化予測部64が貯留タンク33内のフライ油17の現在又は将来の劣化度Deを予測している。また、発注タイミング決定部62は、各種入力や情報に基づいて発注タイミングCtを決定している。劣化予測部64による予測や、発注タイミング決定部62による発注タイミングCtの決定には、AI(artificial intelligence:人工知能)等を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0144】
14・・・フライヤー、15・・・油槽、17・・・フライ油、19・・・揚げ物、27・・・情報処理機器、32・・・施設、33・・・貯留タンク、34・・・残量計、51・・・管理サーバ、55・・・フライ油製造業者、56・・・製造サーバ(発注先サーバ)、60・・・フライ油発注装置、61・・・残量認識部、62・・・発注タイミング決定部、63・・・発注部、64・・・劣化予測部、65・・・交換情報認識部、66・・・パラメータ情報認識部、69・・・貯留タンク管理システム、70・・・生産計画装置、71・・・発注受付部、72・・・生産計画立案部。