(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】固体ヒータ及び製造の方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240712BHJP
【FI】
H05B3/14 F
(21)【出願番号】P 2022532723
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020060189
(87)【国際公開番号】W WO2021113051
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-12
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マレル, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スン, ダーウェイ
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-051775(JP,A)
【文献】特表2010-517224(JP,A)
【文献】国際公開第02/041370(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0270053(US,A1)
【文献】特表2018-530504(JP,A)
【文献】特開平08-190982(JP,A)
【文献】特開平03-183612(JP,A)
【文献】特開2015-230766(JP,A)
【文献】特開平02-276182(JP,A)
【文献】特開平11-273835(JP,A)
【文献】特開2001-023759(JP,A)
【文献】特開平04-026576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ヒータを製造する方法であって、
グラファイト部品を機械加工して、薄い部分とより厚い部分とを有する機械加工されたグラファイト部品を生成すること、
前記機械加工されたグラファイト部品を、前記機械加工されたグラファイト部品を含む処理チャンバ中に一酸化ケイ素が導入される化学蒸気変換(CVC)処理に供することであって、前記CVC処理により、グラファイトが炭化ケイ素に転換される第1の部分と、グラファイトがそのまま残る第2の部分とを有する単位部品が生成される、CVC処理に供すること、及び
電気的コンタクトを前記第2の部分に接続すること
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の部分が、前記グラファイト部品の表面からの拡散深さより浅いところにある領域に生成され、前記第2の部分が、前記グラファイト部品のいずれかの表面からの前記拡散深さより深いところにあるグラファイトを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄い部分の厚さが前記拡散深さの2倍以下であり、前記より厚い部分の厚さが前記拡散深さの2倍より大きい、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記単位部品の前面及び/又は背面を研磨することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記単位部品の前記前面及び/又は前記背面は、前記研磨することの後では平面である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記単位部品にコーティングを適用することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングを適用することが、前記単位部品を化学気相堆積(CVD)処理に供することを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
固体ヒータを製造する方法であって、
グラファイト部品の表面に炭化ケイ素コーティングを適用するために、前記グラファイト部品を化学気相堆積(CVD)処理に供すること、
前記表面の複数の部分から前記炭化ケイ素コーティングを選択的に除去して炭化ケイ素マスクを形成すること、
前記炭化ケイ素マスクを備えた前記グラファイト部品を、前記炭化ケイ素マスクを備えた前記グラファイト部品を含む処理チャンバに一酸化ケイ素が導入される化学蒸気変換(CVC)処理に供することであって、前記CVC処理により、グラファイトが炭化ケイ素に転換される第1の部分と、グラファイトがそのまま残る第2の部分とを有する単位部品が生成される、CVC処理に供すること、及び
電気的コンタクトを前記第2の部分に接続すること
を含む方法。
【請求項9】
前記第1の部分が、前記炭化ケイ素マスクによって覆われていない領域に生成され、前記第2の部分が、前記炭化ケイ素マスクの下の領域に形成される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化ケイ素マスクを除去するために、前記単位部品の表面を研磨することをさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記単位部品にコーティングを適用することをさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、固体ヒータと、当該ヒータの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造には、複数の別個で複雑なプロセスが含まれる。一部の処理では、これら処理のうちの1つ又は複数を、高温で実施することが有利でありうる。
【0003】
例えば、イオン源の内部では、異なるガスは異なる温度で最もよくイオン化される。より大きな分子イオンが確実に生成されるように、大きな分子ほど低い温度でイオン化されることが好ましい。他の核種は、より高い温度で最もよくイオン化される。
【0004】
同様に、高温が有利でありうる半導体素子の製造には他の処理がある。このような高温は、ヒータの使用により達成することができる。一部の実施態様では、これらヒータは、ヒートランプといった放射加熱器である。他の実施態様では、これらヒータは抵抗加熱器である。
【0005】
一部の用途では、ヒータの形成が困難である場合がある。例えば、ヒータが利用できるスペースに限界がある場合がある。さらに、ヒータが配置される環境が、アークチャンバ内部のように過酷である場合がある。
【0006】
したがって、耐久性があり、過酷な環境に耐えることができ、且つ複数の異なる形状及びサイズに形成することのできる固体ヒータがあると有利であろう。さらに、このような固体ヒータが比較的製造し易いと有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
固体ヒータ及びヒータを製造する方法が開示される。このヒータは、グラファイトである部分と炭化ケイ素である他の部分とを含む単位部品を含む。2つ以上の末端の間で単位構造のグラファイト部分に電流が流される。炭化ケイ素は、電気を通さないが、単位部品全体に熱を伝導するのに効果的である。一部の実施態様では、固体ヒータを生成するために化学蒸気変換(CVC)が使用される。必要であれば、過酷な環境から単位部品を保護するために、同部品にコーティングを適用することができる。
【0008】
一実施態様により、固体ヒータが開示される。固体ヒータは、炭化ケイ素を含む第1の部分と、グラファイトを含む第2の部分であって、連続導電経路を形成する第2の部分とを有する単位部品、及び連続導電経路と電気的に接続する電気的コンタクトを含む。一部の実施態様では、連続導電経路は蛇行パターンを含む。一部の実施態様では、固体ヒータは、単位部品上に配置されたコーティングを含む。いくつかのさらなる実施態様では、コーティングは炭化ケイ素を含む。一部の実施態様では、単位部品の前面及び背面は平面である。
【0009】
別の実施態様によれば、固体ヒータを製造する方法が開示される。この方法は、グラファイト部品を機械加工して、薄い部分とより厚い部分とを有する機械加工されたグラファイト部品を生成すること;機械加工されたグラファイト部品を、機械加工されたグラファイト部品を含む処理チャンバに一酸化ケイ素が導入される化学蒸気変換(CVC)処理に供することであって、CVC処理により、グラファイトが炭化ケイ素に転換される第1の部分と、グラファイトがそのまま残る第2の部分とを有する単位部品が生成される、CVC処理に供すること;及び電気的コンタクトを第2の部分に接続することを含む。一部の実施態様では、第1の部分は、グラファイト部品の表面からの拡散深さより浅いところにある領域に生成される。一部の実施態様では、第2の部分は、グラファイト部品のいずれの表面からの散深さより深いところにあるグラファイトを含む。いくつかの実施態様では、薄い部分の厚さは、拡散深さの2倍以下である。いくつかの実施態様では、より厚い部分の厚さは、拡散深さの2倍より大きい。一部の実施態様では、方法は、単位部品の前面及び/又は裏面を研磨することを含む。いくつかの実施態様では、単位部品の前面及び/又は裏面は、研磨後平面である。一部の実施態様では、方法は、コーティングを単位部品に適用することをさらに含む。いくつかの実施態様では、コーティングを適用することは、単位部品を化学気相堆積(CVD)処理に供することを含む。
【0010】
別の実施態様によれば、固体ヒータを製造する方法が開示される。この方法は、炭化ケイ素コーティングをグラファイト部品の表面に適用するために、グラファイト部品を化学気相堆積(CVD)処理に供すること;表面の複数の部分から炭化ケイ素コーティングを選択的に除去して炭化ケイ素マスクを形成すること;炭化ケイ素マスクを備えたグラファイト部品を、炭化ケイ素マスクを備えたグラファイト部品を含む処理チャンバに一酸化ケイ素が導入される化学蒸気変換(CVC)処理に供することであって、CVC処理により、グラファイトが炭化ケイ素に転換される第1の部分と、グラファイトがそのまま残る第2の部分とを有する単位部品が生成される、CVC処理に供すること;及び電気的コンタクトを第2の部分に接続することを含む。一部の実施態様では、第1の部分は、炭化ケイ素マスクによって覆われない領域に生成され、第2の部分は、炭化ケイ素マスクの下の領域に形成される。いくつかの実施態様では、方法は、炭化ケイ素マスクを除去するために、単位部品の表面を研磨することをさらに含む。いくつかの実施態様では、方法は、コーティングを単位部品に適用することをさらに含む。一部の実施態様では、第1の部分は、炭化ケイ素マスクによって覆われないグラファイト部品の表面からの拡散深さより浅いところにある領域に生成される。一部の実施態様では、グラファイト部品の厚さは、拡散深さの2倍より小さい。
【0011】
本開示をさらによく理解するために、添付図面を参照する。これら図面は、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施態様による固体ヒータを製造するために使用されうるシーケンスを示している。
【
図2】
図1の実施態様による固体ヒータを生成するために使用されうるグラファイト板を示している。
【
図4】化学蒸気変換処理後のグラファイト板の断面を示している。
【
図5】研磨処理後のグラファイト板の断面を示している。
【
図6】電気的コンタクトが付加された後の固体ヒータを示している。
【
図7】別の実施態様による固体ヒータを製造するために使用されうるシーケンスを示している。
【
図8】化学気相堆積処理後の、SiCコーティングを有するグラファイト板の断面を示している。
【
図9】炭化ケイ素マスクを生成するためにSiCコーティングの複数の部分が除去された後の
図8のグラファイト板の断面を示している。
【
図10】化学蒸気変換処理後の
図9の単位部品の断面を示している。
【
図12】化学気相堆積処理後の
図11の単位部品の断面を示している。
【
図13】固体ヒータのサーマルマップのシミュレーションを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、ヒータは、半導体製造プロセスを通して使用される。本開示は、単位部品として構築される固体ヒータについて記載する。本開示を通して、「単位部品」は、同じ部品中にグラファイト及び炭化ケイ素の両方を含む単一の一体部品と定義される。この定義には、異なる部品をまとめて結合することにより、又は他の方法で2つの異なる部品を互いに対して固定することにより生成される構造は含まれない。
【0014】
図1は、固体ヒータを生成するために使用されうる処理のシーケンスを示している。まず、ボックス100に示されるように、グラファイト部品は、薄い部分とより厚い部分とを生成するために機械加工される。グラファイト部品はどのような形状でもよく、例えば矩形、円形、楕円形、又は別の適切な形状とすることができる。一部の実施態様では、グラファイト部品は、任意の長さと幅を有するグラファイト板でありうる。換言すれば、グラファイト部品のサイズも本開示によって制限されない。さらに、グラファイト部品の厚さも本開示によって制限されない。例えば、一部の実施態様では、グラファイト部品は、2ミリメートル以上の厚さを有するグラファイト板である。本開示において、「板」は、厚さが長さと幅より小さい直角プリズムである。
【0015】
上記のように、グラファイト部品は、薄い部分とより厚い部分とを生成するために機械加工される。一部の実施態様では、薄い部分は、化学蒸気変換(CVC)処理の拡散深さの2倍以下である厚さを有しうる。この拡散深さは、グラファイト部品の多孔性、CVC処理の継続時間及び他の因子の関数である。例えば、一部の実施態様では、拡散深さは、凡そ700マイクロメートルである。この実施態様では、薄い部分の最大厚さは、1.4ミリメートルである。より厚い部分は、拡散深さの2倍より大きな厚さを有するグラファイト部品の部分と定義される。
【0016】
機械加工されたグラファイト部品のより厚い部分は、固体ヒータを通って流れる電流の導電経路となる。一部の実施態様では、グラファイト部品は、より厚い部分が蛇行形状を形成するように機械加工されるが、他の形状も可能である。
【0017】
図2は、グラファイト板の形態のグラファイト部品200を示している。この図では、薄い部分210は、グラファイト部品200の一表面上の浅いチャネルとして生成されたものである。これは、標準的なミーリング加工を使用して行うことができる。他の実施態様では、浅いチャネルは、グラファイト部品の両面に機械加工されうる。機械加工されていないグラファイト部品200の部分は、より厚い部分220と呼んでもよい。この実施態様では、グラファイト部品200のより厚い部分220が蛇行パターンを形成することに注意されたい。この図では、薄い部分210は1.4ミリメートル未満であり、より厚い部分220は2.0ミリメートルである。薄い部分210が拡散深さの2倍未満であり、より厚い部分220が拡散深さの2倍より大きい限り、他の寸法も使用されうることに注意されたい。
【0018】
図1に示すように、グラファイト部品は、機械加工された後、ボックス110に示されるように、化学蒸気変換(CVC)処理に供される。このCVC処理では、機械加工されたグラファイト部品200は、処理チャンバの内部に配置される。一酸化ケイ素(SiO)が処理チャンバに導入される。一酸化ケイ素は、以下の式に示されるように、グラファイト部品と反応する:SiO+2C→SiC+CO。換言すれば、機械加工されたグラファイト部品200中において、1つの一酸化ケイ素分子が2つの炭素原子と反応して1つの炭化ケイ素分子を形成し、1つの一酸化炭素分子を放出する。この処理は、機械加工されたグラファイト部品200中に残る露出炭素がなくなるまで継続される。拡散の深さは、外面から測定された、グラファイト部品が炭化ケイ素に変換された深さを指す。換言すれば、拡散深さより大きな深さでは、グラファイト部品はグラファイトのままである。
図3は、CVC処理の前の、
図2の機械加工されたグラファイト部品200の断面を示している。
図4は、CVC処理後の、
図3の機械加工された部品を示している。機械加工されたグラファイト部品が、炭化ケイ素である第1の部分310と、グラファイトのままである第2の部分320とを有する単位部品300へと変換されたことに注意されたい。ここでも、前面から第2の部分320まで測定された厚さが拡散深さ315と定義される。薄い部分210が拡散深さ315の2倍未満である場合、薄い部分210全体が、炭化ケイ素から構成される第1の部分310となることに注意されたい。しかしながら、より厚い部分220は拡散深さ315の2倍より厚いので、より厚い部分220の内部は、グラファイトから構成される第2の部分320のままである。この図では、第2の部分320は約600マイクロメートルの厚さを有する。
【0019】
浅いチャネルの配置により、2つの第2の部分320を互いから分離する役割を果たす第1の部分310を生成することが可能であることに注意されたい。
【0020】
炭化ケイ素とグラファイトは極めて異なる特徴を有する。炭化ケイ素は、グラファイトの100倍大きい電気抵抗を有する。具体的には、炭化ケイ素は、約102-106ohm-cm(純度に依存)の電気抵抗を有する。グラファイトは、約.01ohm-cmの電気抵抗を有する。グラファイトは、最大約85W/m-Kの熱伝導率を有し、CVC炭化ケイ素は約170W/m-Kの熱伝導率を有する。
【0021】
次に、
図1のボックス120に示されるように、単位部品300は任意で所望の厚さに研磨される。これは
図5にも示される。一部の実施態様では、単位部品300は、第2の部分320が単位部品300の一方又は両方の面に露出するような深さまで研磨される。
図5では、前面が第2の部分320を露出させるために研磨されており、背面はそれより小さい深さまで研磨されている。一部の実施態様では、上面と背面は共に平面となるように研磨される。
【0022】
次に、ボックス130に示されるように、単位部品300を固体ヒータに変換するために、電気的コンタクトが単位部品300に付加される。いくつかの実施態様では、第2の部分320の少なくとも2か所に孔が開けられる。一部の実施態様では、第2の部分320は連続導電経路を形成し、電気的コンタクトはこの連続導電経路の両端に配置される。
図6は、単位部品300を示し、図中の第2の部分320は蛇行した経路を形成している。第1の部分310は、蛇行した経路の隣接する部分の間に配置される。開けられた孔の形態の電気的コンタクト330は、蛇行した経路の両端に生成されている。
【0023】
最後に、ボックス140に示されるように、任意でコーティングが単位部品300に適用される。例えば、一実施態様では、炭化ケイ素の層が、単位部品300の表面上に堆積される。このような堆積は、化学気相堆積(CVD)処理、又は任意の適切な処理を使用して実施することができる。コーティングは、炭化ケイ素に限定されない。他の実施態様では、異なる材料がコーティングとして使用されうる。コーティングを使用して、露出した第2の部分320を外部環境から電気的に隔離することができる。
【0024】
固体ヒータの厚さ全体が拡散深さの2倍より大きいか、又は厚い導電経路が望ましいとき、この方式が有用でありうることに注意されたい。より厚い部分220の厚さがこの方式によって限定されないことに注意されたい。
【0025】
図1-6は固体ヒータを生成するための一方式を示しているが、CVC処理を利用する他の方式が使用されてもよい。
【0026】
例えば、別の実施態様では、グラファイト部品の複数の部分の上にマスクを配置して単位部品を生成する。
図7は、この方式を使用して固体ヒータを製造する処理のシーケンスを示している。まず、ボックス500に示されるように、炭化ケイ素コーティングがグラファイト部品の少なくとも1つの表面に適用される。
グラファイト部品は平面でありうる。例えば、グラファイト部品はグラファイト板である。一部の実施態様では、グラファイト部品600の上に炭化ケイ素コーティングを堆積させるために、化学気相堆積(CVD)処理が使用される。一実施例が
図8に示されており、図中、炭化ケイ素コーティング605は、グラファイト部品600の前面に配置されている。
【0027】
次に、ボックス510に示されるように、次いで炭化ケイ素コーティング605の複数の部分が選択的に除去されて、炭化ケイ素マスク607が生成される。炭化ケイ素コーティング605は、例えば研磨処理を使用して除去することができる。炭化ケイ素マスク607を備えたグラファイト部品600の一実施例が
図9に示される。
【0028】
次いで炭化ケイ素マスク607を備えたグラファイト部品600は、ボックス520に示されるように、CVC処理に供される。CVC処理の完了後、
図10に示すように、炭化ケイ素から構成される第1の部分710とグラファイトのまま残る第2の部分720とを有する単位部品700が生成される。この実施態様では、炭化ケイ素マスク607の下に配置されるグラファイト部品600の領域が第2の部分720となり、グラファイト部品600の露出領域が第1の部分710となることに注意されたい。一部の実施態様では、グラファイト部品600の開始厚さは、第1の部分710が単位部品700の厚さ全体にわたって確実に延びるように、拡散深さの2倍の2倍未満である。
【0029】
次に、ボックス530に示されるように、単位部品700は、前面から炭化ケイ素マスク607を除去するために研磨処理に供される。したがって、研磨処理の後、単位部品700は、
図11に示されるように、1つの表面上に配置された第1の部分710と第2の部分720とを有する平坦な部品になりうる。
【0030】
次に、ボックス540に示されるように、単位部品700を固体ヒータに変換するために、電気的コンタクトが単位部品700に付加される。いくつかの実施態様では、第2の部分720の少なくとも2か所に孔が開けられる。一部の実施態様では、第2の部分720が連続導電経路を形成し、電気的コンタクトがこの連続導電経路の両端に配置される。この連続導電経路は蛇行した経路でありうる。第1の部分710は、蛇行した経路の隣接する部分の間に配置される。開けられた孔の形態でありうる電気的コンタクトは、蛇行した経路の両端に生成される。
【0031】
最後に、ボックス550に示されるように、任意でコーティングが単位部品700に適用される。例えば、一実施態様では、
図12に示されるように、炭化ケイ素の層730が単位部品700の少なくとも1つの表面上に配置される。このような堆積は、化学気相堆積(CVD)処理、又は任意の適切な処理を使用して実施することができる。コーティングは、炭化ケイ素に限定されない。他の実施態様では、異なる材料がコーティングとして使用されうる。コーティングを使用して、露出した第2の部分720を外部環境から電気的に隔離することができる。
【0032】
固体ヒータの厚さ全体が拡散深さの2倍の2倍未満であることが望ましいとき、この処理が有用であることに注意されたい。
【0033】
このようにして、固体ヒータが開示される。この固体ヒータは、炭化ケイ素を含む第1の部分と、グラファイトを含む第2の部分とを有する単位部品を含む。この単位部品は、CVC処理を使用して生成されうる。第2の部分は連続導電経路を形成する。電気的コンタクトが、この連続導電経路の両端に配置される。一部の実施態様では、連続導電経路は、蛇行した経路として形成される。一部の実施態様では、外部環境から単位部品を隔離するために、コーティングが単位部品の外面に適用される。
【0034】
本システムは多くの利点を有している。まず、この方式により、ヒータとして機能しうる単位部品を生成することができる。単位部品中の材料の組み合わせにより、確実に電流がグラファイトを通って流れる。しかしながら、炭化ケイ素の熱伝導率は比較的高いため、熱はヒータ全体に拡散しうる。
図13は、
図6に示される固体ヒータのサーマルマップのシミュレーションを示している。第2の部分は、固体ヒータのより高温の部分として明確に見ることができる;しかしながら、固体ヒータの表面全体の温度変化が45℃未満であるように、熱は第1の部分にも分散されさる。
【0035】
加えて、固体ヒータを生成する処理では、固体ヒータ内に生成される導電経路に何の制約もない。例えば、この導電経路では、必要であれば、高温点とそれより低温のエリアとを生成するように、幅を変化させることができる。加えて、任意の所望の形状を有する経路を生成することが可能である。さらに、同じ固体ヒータに2つ以上の導電経路を生成することが可能である。これら2つ以上の導電経路は、別々の電気的コンタクトで完全に分離されてもよいし、又は電気的コンタクトを共有してもよい。実際、これら導電経路は、異なる長さ及び幅を有し、各導電経路に異なる温度プロファイルを生成することができる。
【0036】
さらに、炭化ケイ素は高い曲げ強さ、高い引張り強さ及び高い弾性率を有するので、単位部品の使用は、固体ヒータの剛性及び構造統合性を高める。したがって、炭化ケイ素は、単位部品に含まれる剛性の低いグラファイトを保護する。
【0037】
本明細書に開示される固体ヒータは、イオン注入システムの様々な位置に用いることができる。例えば、固体ヒータは、アークチャンバ内又はアークチャンバ近傍に配置されうる。代替的に、固体ヒータは、加熱チャンバライナーとして配置されてもよい。
【0038】
加えて、固体ヒータは、他の用途に用いてもよい。固体ヒータが、大気中又は酸化環境内において最大900℃の温度で使用可能であることが予測される。真空又はアルゴンといった不活性環境では、温度は最高2500℃となりうる。これにより、固体ヒータは、高温が使用される他の用途で使用することができる。例えば、固体ヒータは、鋳造及び鍛造といった金属処理に使用することができる。加えて、固体ヒータは、結晶成長及びキルンといった高温を利用する他の用途で使用することができる。
【0039】
本開示は、本明細書に記載される特定の実施態様による範囲に限定されない。実際、本明細書に記載されるものに加えて、本開示の他の様々な実施態様及び修正例が、前述の記載及び添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、そのような他の実施態様及び修正例は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本開示は、特定の目的のための特定の環境内の特定の実装態様の文脈で本明細書に記載されているが、当業者であれば、その有用性がそれらに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境で有利に実施されうることを認識するだろう。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全幅及び主旨を考慮して解釈すべきである。