(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】吸収性物品用の不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20240712BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240712BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20240712BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240712BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240712BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H3/16
D04H3/147
A61F13/51
A61F13/511 300
A61F13/514 400
A61F13/514 100
(21)【出願番号】P 2023526829
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022399
(87)【国際公開番号】W WO2022259551
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】光野 聡
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509786(JP,A)
【文献】特開2015-113548(JP,A)
【文献】特開2008-025082(JP,A)
【文献】特開2003-268667(JP,A)
【文献】特開2013-224500(JP,A)
【文献】特開2008-025084(JP,A)
【文献】特開2013-231249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0203162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有し、連続繊維からなる吸収性物品用の
スパンボンド不織布であって、
前記第1方向へ沿って延びている複数の畝部と、
前記第1方向へ沿って延びており、前記複数の畝部より坪量が低い、複数の溝部と、
を備え、
前記複数の畝部のそれぞれと、前記複数の溝部のそれぞれとは、前記第2方向に交互に設けられており、
前記複数の畝部のそれぞれ及び前記複数の溝部のそれぞれが、前記連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有
し、
前記複数の畝部のそれぞれは、前記厚さ方向に窪んだ複数の凹部を有し、前記複数の凹部のそれぞれの底に前記連続繊維からなる基部を有し、
前記複数の接合部は、圧着されていない、
不織布。
【請求項2】
前記不織布は、前記吸収性物品の液透過性シート用である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記不織布は、前記吸収性物品の外装シート用である、請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記複数の畝部のそれぞれは、前記複数の凹部の少なくとも一部の前記第2方向の一方に、前記連続繊維が前記第1方向に沿って配向した状態で前記複数の接合部で接合された束状部を有する、請求項
1~3のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項5】
前記複数の溝部のそれぞれの厚さは、前記基部の厚さより薄い、請求項
4に記載の不織布。
【請求項6】
前記連続繊維は、オレフィン系樹脂を含む複合繊維である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項7】
前記連続繊維の平均繊維径が15μm以上30μm以下、前記不織布の平均坪量が10g/m
2以上40g/m
2以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項8】
前記第1方向が、吸収性物品の長手方向に配置される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項9】
前記第1方向が、吸収性物品の幅方向に配置される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項10】
前記複数の畝部のそれぞれは、
隣接する前記複数の溝部のそれぞれに向かって突出し、前記第1方向に沿って間隔を開けて並んだ複数の突出部を有する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項11】
前記複数の畝部のそれぞれの前記第1方向に沿った繊維配向性が、前記複数の溝部のそれぞれの前記第1方向に沿った繊維配向性よりも高い、請求項1~
10のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の不織布を製造する製造方法であって、
互いに直交する搬送方向、横断方向及び高さ方向を有するワイヤーメッシュの下側から吸引しながら前記ワイヤーメッシュの上に
スパンボンド法によって前記連続繊維を堆積する工程と、
前記ワイヤーメッシュの上に堆積された前記連続繊維同士を
エアスルー法によって熱接合する工程と、
を備え、
前記ワイヤーメッシュは、
メッシュ本体と、
前記搬送方向へ沿って延び、前記横断方向へ所定の間隔で前記メッシュ本体の上に配置され、前記高さ方向へ突出した複数の突条と、
を有する、不織布の製造方法。
【請求項13】
前記突条の高さが1.0mm以上である、請求項
12に記載の不織布の製造方法。
【請求項14】
前記メッシュ本体の前記横断方向の長さに対する、前記複数の突条のそれぞれの前記横断方向長さの合計長さが、50%以下である、請求項
12又は
13に記載の不織布の製造方法。
【請求項15】
前記複数の突条のそれぞれは、前記横断方向へ膨出した膨出部を複数有する、請求項
12~
14のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項16】
前記ワイヤーメッシュを形成するワイヤーの外径が前記突条の高さより小さい、請求項
12~
15のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項17】
前記連続繊維は、1000m/min以上4500m/min以下の繊維速度で前記ワイヤーメッシュの上に堆積される、請求項
12~
16のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用の不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に複数の凹凸を有する不織布が知られている。上記不織布は、例えば使い捨ておむつの表面シート等に用いられる。
【0003】
特許文献1には、主に気体からなる流体を繊維集合体に噴きあてることにより形成される、縦方向と横方向とを有する不織布であって、前記縦方向に沿って形成された複数の低目付部と、前記複数の低目付部それぞれに沿って隣接するように形成された複数の高目付部と、を有し、前記複数の低目付部それぞれにおける目付は、前記複数の高目付部それぞれにおける目付より低い、不織布が開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、所定の通気性支持部材により下面側から支持される繊維ウェブに、上面側から気体を噴きあてて該繊維ウェブを構成する繊維を移動させることにより、少なくとも目付を調整することができ、液体を透過させやすい不織布を提供することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の不織布は、例えば、使い捨ておむつの表面シートに適用した場合、排泄された体液が低目付部を透過しやすく、また、低目付部を透過して吸収体に吸収された体液を、低目付部を通して視認することができる。しかしながら、当該不織布は、短繊維からなるため、厚さ方向に変形しやすい。厚さ方向に変形しやすい不織布は、着用時において厚さ方向の荷重が加えられた場合、薄くなりやすい。このように薄くなりやすい不織布は、使い捨ておむつの表面シートに適用された場合、厚さ方向の荷重を受けることによって複数の高目付部の厚さが薄くなると共に面方向へ広がる。複数の高目付部が面方向に広がると、その分だけ坪量が低い低目付部の範囲が狭まるので、結果として視認性が低下しやすい。
【0007】
本発明は、厚さ方向の視認性に優れる不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有し、連続繊維からなる吸収性物品用の不織布であって、前記第1方向へ沿って延びている複数の畝部と、前記第1方向へ沿って延びており、前記複数の畝部より坪量が低い、複数の溝部と、を備え、前記複数の畝部のそれぞれと、前記複数の溝部のそれぞれとは、前記第2方向に交互に設けられており、前記複数の畝部のそれぞれ及び前記複数の溝部のそれぞれが、前記連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有する、不織布である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による不織布は、厚さ方向の視認性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る不織布を模式的に示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る不織布の第1方向に直交する断面図である。
【
図3】実施形態に係る不織布の製造方法に用いるワイヤーメッシュを模式的に示す斜視図である。
【
図4】ワイヤーメッシュのMD方向に直交する断面図である。
【
図5】実施形態に係る吸収性物品を模式的に示す平面図である。
【
図6B】
図6Aの一部を拡大した不織布の顕微鏡写真(100倍)である。
【
図6C】
図6Bの一部を拡大した不織布の顕微鏡写真(300倍)である。
【
図6D】不織布の第1方向に直交する断面の顕微鏡写真(50倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施態様は、以下の態様に関する。
【0012】
[態様1]
互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有し、連続繊維からなる吸収性物品用の不織布であって、
前記第1方向へ沿って延びている複数の畝部と、
前記第1方向へ沿って延びており、前記複数の畝部より坪量が低い、複数の溝部と、
を備え、
前記複数の畝部のそれぞれと、前記複数の溝部のそれぞれとは、前記第2方向に交互に設けられており、
前記複数の畝部のそれぞれ及び前記複数の溝部のそれぞれが、前記連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有する、
不織布。
上記不織布は、連続繊維からなり、複数の畝部のそれぞれ及び複数の溝部のそれぞれが、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有するので、形状を保持しやすく、厚さ方向に荷重が加えられた状態における厚さの変化が、短繊維からなる不織布に比べ、小さい。
上記不織布は、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有するので形状を保持しやすいため、厚さ方向の荷重が加わった場合に、畝部の厚さが変化しにくい。そうすると、畝部の第2方向の長さも変化しにくいので、溝部の第2方向の長さが変化しにくい。すなわち、上記不織布は、畝部及び溝部の構造が変化しにくく、溝部の第2方向の長さが変化しにくいので、視認性が得られる範囲が変化しにくい。したがって溝部は、溝部を通して厚さ方向の視認性に優れる。不織布は、例えば、使い捨ておむつの最外層に適用された場合、着用後において経時的に荷重を受けた場合であっても、溝部を通して厚さ方向の視認性に優れる。
不織布は、畝部と溝部が第2方向へ交互に設けられていることによって、第1方向及び第2方向の広範囲において、溝部を通して視認性に優れる。
因みに、短繊維からなる不織布は、厚さ方向の荷重が加わった場合に、畝部が薄くなりやすい。厚さ方向の荷重を受けて畝部が薄くなると畝部の第2方向の長さが広がり、その分だけ溝部の第2方向の長さが狭くなる。溝部の幅が狭くなると、視認性が得られる範囲が狭まる。したがって短繊維で形成され、畝部及び溝部を有する不織布の溝部は、視認性が悪化しやすい。
【0013】
[態様2]
前記不織布が、前記吸収性物品の液透過性シート用である、態様1に記載の不織布。
上記不織布は、吸収性物品の液透過性シート用である。吸収性物品は、液透過性シート、吸収体、及び液不透過性シートをその順に備えるものが例示される。上記不織布は、例えば、使い捨ておむつの液透過性シートに適用され、着用時において厚さの変化が少ないため、吸収体と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持しやすい。結果として当該不織布は、濡れ感の抑制に優れる。
不織布は、畝部と溝部が第2方向へ交互に設けられていることによって、第1方向及び第2方向の広範囲において、吸収体と使用者の肌との間隔を保持し濡れ感の抑制に優れる。
因みに、短繊維で形成された不織布は、形状が変化しやすく、厚さ方向に荷重が加えられた状態における厚さの変化が大きいため、薄くなりやすい。したがって、短繊維で形成された不織布は、吸収体と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持することが困難であるので、濡れ感を生じさせやすい。
【0014】
[態様3]
前記不織布が、前記吸収性物品の外装シート用である、態様1に記載の不織布。
上記不織布は、吸収性物品の外装シート用である。吸収性物品は、液透過性シート、吸収体、液不透過性シート、及び外装シートをその順に備えるものが例示される。吸収性物品は、インジケーター(好ましくは、吸収体と、液不透過性シートとの間)、及び模様(好ましくは液不透過性シートの内面又は外面)に配置されてもよい。上記不織布は、例えば、使い捨ておむつの外装シートに適用されることができる。上記不織布では、厚さ方向の荷重が加わった場合にも複数の畝部が崩れにくく、坪量が少ない状態で複数の溝部の第2方向の長さが維持されるので、複数の溝部における優れた通気性や視認性が維持される。このため、不織布を外装シートに適用し複数の畝部及び複数の溝部が設けられた面を非肌側に配置した吸収性物品は、着用後において優れた通気性及び視認性が得られる。また、不織布を外装シートに適用し複数の複数の畝部及び複数の溝部が設けられた面を肌側に配置した吸収性物品は、液不透過性シートとの間に空間が形成されるので、湿気を衣類やシーツ等に伝えにくい。
【0015】
[態様4]
前記複数の畝部のそれぞれは、前記厚さ方向に窪んだ複数の凹部を有し、前記複数の凹部のそれぞれの底に前記連続繊維からなる基部を有する、態様1~3のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布では、溝部を有すると共に、畝部に厚さ方向に窪んだ複数の凹部を有するため、使用者の肌が不織布に触れる面積が、凹部を有さない不織布に比べ、少ない。上記不織布では、例えば、使い捨ておむつの液透過性シートに適用された場合、基部が、排泄された体液を吸収すると共に、吸収体に吸収された体液が凹部内へ戻ることをより確実に抑制する。したがって、不織布は、濡れ感の抑制に優れる。また、上記不織布では、例えば、使い捨ておむつの外装シートに適用された場合、複数の畝部及び複数の溝部が設けられた面を非肌側に配置してもよい。この場合、不織布は、凹部を有する分だけ表面の接触面積がさらに低下するため、さらっとした触感を与えることができると共に、布様の複雑な表面形状を呈する。また、上記不織布は、複数の畝部及び複数の溝部が設けられた面を肌側に配置した場合、液不透過性シートとの間に形成される空間が、凹部の分だけさらに増えるので、湿気を衣類やシーツ等により伝えにくい。
【0016】
[態様5]
前記複数の畝部のそれぞれは、前記複数の凹部の少なくとも一部の前記第2方向の一方に、前記連続繊維が前記第1方向に沿って配向した状態で前記複数の接合部で接合された束状部を有する、態様4に記載の不織布。
上記不織布では、複数の畝部のそれぞれは、複数の凹部の少なくとも一部の第2方向の一方に、連続繊維が第1方向に沿って配向した状態で複数の接合部で接合された束状部を有する。束状部は、連続繊維同士の繊維間距離が小さく、荷重を受けた際に変形しにくい。したがって、束状部を有する上記不織布は、着用時において厚さの変化が少ない凹部の形状を保持しやすい。
【0017】
[態様6]
前記複数の溝部のそれぞれの厚さは、前記基部の厚さより薄い、態様4又は5に記載の不織布。
上記不織布では、複数の溝部のそれぞれの厚さは、基部の厚さより薄いため、例えば、使い捨ておむつの液透過性シートや外装シートに適用された場合、溝部は厚さ方向の視認性が優れるため、厚さ方向の視認性がほとんど得られない畝部との差異が際立つ。したがって、上記不織布は、視認性に優れる。
【0018】
[態様7]
前記連続繊維は、オレフィン系樹脂を含む複合繊維である、態様1~6のいずれか1項に記載の不織布。
連続繊維は、オレフィン系樹脂を含む複合繊維であるので、低い熱処理温度でも接合部を形成することができるため、より効率的に不織布全体に接合部を形成することができる。不織布は、全体に接合部が形成されるので、着用後において厚さ方向に荷重が加えられた場合に、形状を保持しやすいため、畝部及び溝部の構造が変化しにくい。
【0019】
[態様8]
前記連続繊維の平均繊維径が15μm以上30μm以下、前記不織布の平均坪量が10g/m2以上40g/m2以下である、態様1~7のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布は、連続繊維の平均繊維径が15μm以上30μm以下、前記不織布の平均坪量が10g/m2以上40g/m2以下であるので、着用後において厚さ方向に荷重が加えられた場合に、形状を保持しやすい畝部及び溝部の構造がより確実に得られる。
【0020】
[態様9]
前記第1方向が、吸収性物品の長手方向に配置される、態様1~8のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布では、溝部及び畝部が吸収性物品の長手方向に沿って配置されるので、長手方向の視認性に優れる。また、使い捨ておむつの液透過性シートに適用された場合、体液が吸収性物品の長手方向へ拡散しやすい。したがって、上記不織布は、体液を長手方向へ拡散することによって、体液が一カ所に滞留することを抑制するので、濡れ感の抑制に優れる。
【0021】
[態様10]
前記第1方向が、吸収性物品の幅方向に配置される、態様1~8のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布では、溝部及び畝部が吸収性物品の幅方向に沿って配置されるので、幅方向の視認性に優れる。また、使い捨ておむつの液透過性シートに適用された場合、体液が吸収性物品の幅方向へ拡散しやすい。したがって、上記不織布は、体液を幅方向へ拡散することによって、体液が一カ所に滞留することを抑制するので、濡れ感の抑制に優れる。
【0022】
[態様11]
前記複数の畝部のそれぞれは、隣接する前記複数の溝部のそれぞれに向かって突出し、前記第1方向に沿って間隔を開けて並んだ複数の突出部を有する、態様1~10のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布では、複数の畝部のそれぞれが隣接する複数の溝部のそれぞれに向かって突出し、第1方向に沿って間隔を開けて並んだ複数の突出部を有するので、厚さ方向に荷重が加えられた場合に畝部が倒れにくい。したがって、当該不織布は、例えば、使い捨ておむつの液透過性シートや外装シートに適用された場合、畝部が形状を保持した状態を維持しやすいので、畝部が溝部を塞がないため視認性に優れる。
【0023】
[態様12]
前記複数の畝部のそれぞれの前記第1方向に沿った繊維配向性が、前記複数の溝部のそれぞれの前記第1方向に沿った繊維配向性よりも高い、態様1~11のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布では、複数の畝部の第1方向に沿った繊維配向性が、複数の溝部の第1方向に沿った繊維配向性よりも高いので、連続繊維同士の交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短い。したがって上記不織布は、複数の畝部の形状が保持されやすい。
【0024】
[態様13]
前記不織布は、スパンボンド不織布である、態様1~12のいずれか1項に記載の不織布。
上記不織布はスパンボンド不織布であるから、製造時において、連続繊維は、気流によって移動する場合、繊維長さが長いため、一定の長さに亘って移動し、さらに隣り合う連続繊維も伴って移動するので、堆積工程における気流の影響を受けやすい。そのため、連続繊維のそれぞれが移動することによって、繊維間距離が小さい部分が形成されやすい。連続繊維は、互いの交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短い。したがって上記不織布は、複数の畝部の形状が保持されやすい。
因みに、短繊維からなる不織布、例えばエアレイド不織布の短繊維は、製造時において、気流によって移動する場合、繊維長さが短いため、短繊維がそれぞれ独立して移動し、他の繊維に与える影響も少ないので、堆積工程における気流の影響を受け難い。そのため、短繊維は、移動する繊維が少ないため、ランダムに堆積された状態が維持されやすいので、繊維間距離が連続繊維の場合に比べ、大きい。短繊維からなる不織布は、繊維間距離が大きいので、荷重を受けた際に変形しやすく、着用時において厚さの変化が大きい。そのため、短繊維からなる不織布は、吸収体と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持することが困難であるので、濡れ感を生じさせやすい。また短繊維からなる不織布は、着用前後において厚さ方向への変化量が大きいため、厚さ方向の荷重を受けた際や、厚さが回復する際、畝部及び溝部の構造が変化しやすい。したがって短繊維からなる不織布は、不織布の厚さ方向の上側と下側が面方向へずれやすいため、溝部の坪量が変化しやすいので、視認性が悪化しやすい。
【0025】
[態様14]
態様1~13のいずれか1項に記載の不織布を製造する製造方法であって、
互いに直交する搬送方向、横断方向及び高さ方向を有するワイヤーメッシュの下側から吸引しながら前記ワイヤーメッシュの上に前記連続繊維を堆積する工程と、
前記ワイヤーメッシュの上に堆積された前記連続繊維同士を熱接合する工程と、
を備え、
前記ワイヤーメッシュは、
メッシュ本体と、
前記搬送方向へ沿って延び、前記横断方向へ所定の間隔で前記メッシュ本体の上に配置され、前記高さ方向へ突出した複数の突条と、
を有する、不織布の製造方法。
上記不織布の製造方法では、連続繊維は、ワイヤーメッシュの下側から吸引されることによってワイヤーメッシュの上に堆積する。連続繊維の一部は、メッシュ本体の突条が形成されていない突条同士の間に優先的に集まる。突条同士の間において、連続繊維の一部が優先的に集まることによって、連続繊維が密となり、坪量の高い畝部が形成される。また、突条上では、連続繊維が疎となり、坪量が低い溝部が形成される。さらに、ワイヤーメッシュの上に堆積された状態で、連続繊維を熱接合することによって、畝部及び溝部の形状が維持される。したがって、上記不織布の製造方法は、連続繊維からなり、複数の畝部及び複数の溝部を備え、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有する不織布を製造することができる。
【0026】
[態様15]
前記突条の高さが1.0mm以上である、態様14に記載の不織布の製造方法。
上記不織布の製造方法では、突条の高さが1.0mm以上であるので、突条上に連続繊維が残りにくくなり、突条同士の間に連続繊維が集積されるので、所定の厚さを有する畝部を形成することができる。したがって、上記不織布の製造方法は、複数の畝部及び複数の溝部を有する不織布をより確実に製造することができる。
【0027】
[態様16]
前記メッシュ本体の前記横断方向の長さに対する、前記複数の突条のそれぞれの前記横断方向長さの合計長さが、50%以下である、態様14又は15に記載の不織布の製造方法。
上記不織布の製造方法では、メッシュ本体の横断方向の長さに対する、複数の突条のそれぞれの横断方向長さの合計長さが、50%以下であるので、十分な通気量の気体が、突条を除くメッシュ本体を通過する。したがって、上記不織布の製造方法は、連続繊維を安定的にワイヤーメッシュ上に堆積させることができるので、複数の畝部及び複数の溝部を有する不織布をより確実に製造することができる。
【0028】
[態様17]
前記複数の突条のそれぞれは、前記横断方向へ膨出した膨出部を複数有する、態様14~16のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
複数の突条のそれぞれが、前記横断方向へ膨出した膨出部を複数有することによって、膨出部は、連続繊維が疎となり、膨出部同士の間が畝部から溝部へ突出した突出部となる。したがって、上記不織布の製造方法は、畝部に突出部を有する不織布を製造することができる。
【0029】
[態様18]
前記ワイヤーメッシュを形成するワイヤーの外径が前記突条の高さより小さい、態様12~15のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
ワイヤーメッシュを形成するワイヤーの外径が突条の高さより小さいので、ワイヤーメッシュのワイヤー同士が重なった部分においてもワイヤーより突条の方が高くなるため、溝部が形成される。したがって、上記不織布の製造方法は、より確実に畝部と溝部を有する不織布を製造することができる。また、ワイヤー同士が重なった部分の方が突条より小さいため、連続繊維がワイヤーメッシュの網目上に堆積されやすくなるため、凹部を有する畝部を形成し得る。
【0030】
[態様19]
前記連続繊維は、1000m/min以上4500m/min以下の繊維速度で前記ワイヤーメッシュの上に堆積される、態様14~18のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
連続繊維は、1000m/min以上の繊維速度であることによって、ワイヤーメッシュの上に堆積されやすく、畝部が形成されやすい。また連続繊維は、4500m/min以下の繊維速度であることによって、ワイヤーメッシュの上で連続繊維の配向が乱れることを抑制できるので、畝部が形成されやすい。したがって、連続繊維が上記範囲内であることによって、複数の畝部及び複数の溝部を有する不織布を効率的に製造することができる。
【0031】
以下、実施形態に係る吸収性物品用の不織布について説明する。本明細書では、対象物に関する「所定の方向に沿って」とは、対象物が、所定の方向(例えば、第1方向、第2方向等)と±90°未満の交差角を有するように延びていることを意味する。また、対象物が所定方向に沿う方向に延びている場合に、対象物は、所定の方向と、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下、そしてさらにいっそう好ましくは20°以下、そしてさらにいっそう好ましくは5°以下の交差角を有する。
適宜、図中に示される直交座標は、x:第1方向、y:第2方向、z:厚さ方向とし、また、MD:搬送方向、CD:横断方向、H:高さ方向とし、さらにL:長手方向、W:幅方向とする。
【0032】
(不織布の構成)
図1に示す吸収性物品用の不織布10は、互いに直交する第1方向x、第2方向y及び厚さ方向zを有し、連続繊維からなる。不織布10は、連続繊維で形成されていれば特に制限はないが、例えばスパンボンド不織布が挙げられる。連続繊維は、加熱により溶融し、熱接合することが可能な繊維であれば、特に制限はない。そのような熱融着性繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールのようなポリオレフィン系の単一繊維や、ポリエチレンテレフタレート(芯部)/ポリエチレン(鞘部)、ポリエチレンテレフタレート(芯部)/ポリプロピレン(鞘部)、ポリプロピレン(芯部)/ポリエチレン(鞘部)のようなオレフィン系樹脂を含む芯鞘型の複合繊維などが挙げられる。複合繊維は、疎水性繊維でもよいし親水性油剤等で親水化処理を施したものでもよい。親水化処理は、例えば、繊維を構成する樹脂に親水化剤を練り込む、繊維の表面に親水化剤を塗布する等により行うことができる。また、複合繊維としては、上記のようなオレフィン系樹脂を含むサイド・バイ・サイド型繊維でもよい。これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。連続繊維は、融点がより低い熱可塑性樹脂繊維を含むことが好ましい。連続繊維の平均繊維径は、15μm以上30μm以下でもよい。不織布10は連続繊維からなるので、不織布10の表面に連続繊維の端部を含まないのが好ましい。
図1及び
図2における細線は、不織布10の繊維を模式的に示しており、繊維の方向、長さ及び径は、不織布10の連続繊維の方向、長さ及び径を意味するものではない。
【0033】
連続繊維の平均繊維径の測定は、次のようにして行うことができる。まず、不織布の10mm×10mmの試料を切り出して、プレパラートの上に配置する。次に、試料にグリセリンを適量滴下して、試料全体がグリセリンで浸された状態にして、その上からカバーガラスを載置する。次に、公知の光学顕微鏡(例えば、KEYENCE製VHC-100 Digital Microscope Lens VH-Z450)を用いて試料を倍率1000倍で観察して、試料の表面に露出している繊維の繊維径を50箇所測定し、平均値を平均繊維径とする。
【0034】
不織布10の外形形状や各種寸法、平均坪量等は、当該不織布10が適用される吸収性物品の各種構成部材に応じた任意の外形形状や各種寸法、平均坪量等を採用することができる。例えば、不織布10の平均坪量は、10g/m2以上40g/m2以下でもよい。
【0035】
平均坪量は以下の方法で測定される。まず、不織布から所定サイズ(例示:100mm×100mm)の5個の試料を切り出す。次いで、切り出された5個の試料の質量を直示天秤(例示:研精工業株式会社製 電子天秤HF-300)で測定する。そして、5個の試料の質量の平均値から不織布の単位面積当たりの質量(g/m2)を算出して、不織布の平均坪量とする。
【0036】
不織布10の平均厚さは、例えば、0.1mm~3mmである。不織布10の平均厚さは、(株)大栄科学精器製作所製のFS-60DS[測定面50.5mm(直径),測定圧3gf/cm2(0.3kPa)]により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)で、不織布の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定した5つの測定値の平均値を指す。
【0037】
不織布10の平均坪量当たりの破断強度は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の柔軟性、強度等に応じた任意の破断強度を採用することができる。不織布10の第1方向xにおける平均坪量当たりの破断強度は、例えば、0.3[(N/50mm)/(g/m2)]以上3.0[(N/50mm)/(g/m2)]以下とすることができる。不織布10の第2方向yにおける平均坪量当たりの破断強度は、例えば、0.2[(N/50mm)/(g/m2)]以上1.2[(N/50mm)/(g/m2)]以下とすることができる。
【0038】
平均坪量当たりの平均破断強度は、測定した平均破断強度を平均坪量で除算した値とした。平均破断強度は(株)島津製作所製のオートグラフ、AG-1を用いて測定する。まず、第1方向xの長さ150mm、第2方向yの長さ50mmのサイズの5個の試料と、第1方向xの長さ50mm、第2方向yの長さ150mmのサイズの5個の試料をそれぞれ用意する。次いでチャック間距離を100mm、引張速度100mm/minで複合シートの第1方向x及び第2方向yの破断強度をそれぞれ測定する。そして、それぞれ5個の試料の破断強度の平均値をそれぞれの平均破断強度とする。「N/50mm」は、幅50mmあたりの破断強度(N)を意味する。なお、破断強度とは最大点荷重時の強度を意味する。
【0039】
不織布10は、複数の畝部12と複数の溝部14とを備える。複数の畝部12と複数の溝部14は、不織布10の厚さ方向zの一方の面、
図1の場合、上側の面に設けられている。複数の畝部12は、不織布10の厚さ方向zの一方の面から突出し、第1方向xに沿って延びている。複数の溝部14は、第1方向xに沿って延びており、複数の畝部12より坪量が低い。複数の畝部12のそれぞれと複数の溝部14のそれぞれとは、第2方向yに交互に設けられている。複数の畝部12は、第2方向yにおいて、所定の間隔で配置されている。
【0040】
複数の畝部12のそれぞれは、複数の溝部14よりも、連続繊維の量が多く、複数の溝部14の厚さより厚い。すなわち複数の溝部14の厚さは、複数の畝部12の厚さより薄い。複数の畝部12の厚さが、上記不織布10の厚さに相当する。複数の畝部12と複数の溝部14は、なだらかな面で接続されている。
図2に示すように、複数の畝部12と複数の溝部14は、不織布10の無負荷状態における厚さTnの、50%の厚さT
50を境界とし、厚さTnの50%以上の厚さを有する領域を畝部12、厚さTnの50%未満の厚さを有する領域を複数の溝部14とする。
【0041】
複数の畝部12のそれぞれと、複数の溝部14のそれぞれは、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部(図示しない)を有する。複数の接合部は、圧着されていないため、フィルム状ではない。不織布10は、連続繊維同士が間隔を保っているので、嵩が高く、しかも交点が熱接合されているので、形状が保持されやすい。したがって、不織布10は、複数の畝部12及び複数の溝部14を備えた形状が保持されやすい。
【0042】
複数の畝部12の第1方向xに沿った繊維配向性が、複数の溝部14の第1方向xに沿った繊維配向性よりも高いことが好ましい。複数の畝部12の第1方向xに沿った繊維配向性がより高いことによって、連続繊維同士の交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短いため、形状が保持されやすい。繊維配向性は、繊維の配向角と配向強度とからなる概念であり、例えば、次の方法により測定することができる。複数の畝部12及び複数の溝部14が形成された面が上側に位置するように不織布10を静置する。顕微鏡(例えば、日本電子(株)社製JCM-5100等の走査型電子顕微鏡)を使用して、不織布10の測定面に対して垂直の方向からの拡大画像を撮影し、印刷し、透明PET性シート上に繊維をなぞる。拡大画像は、繊維が10本以上計測できる倍率に拡大された画像であり、拡大倍率は、例えば、50~300倍である。画像をパソコン内に取り込み、株式会社ネクサス社製のnexusNewQube(スタンドアロン版)画像処理ソフトウエアを使用し、画像を二値化する。繊維配向解析プログラムである、Fiber Orientation Analysis 8.13 Singleを使用して、二値化した画像から、配向角と配向強度を得る。配向角は、繊維が最も配向している角度であり、配向強度は、その配向角における強度である。測定を数回(例えば3~5回)繰り返し、平均値を算出する。
【0043】
複数の畝部12はそれぞれ、複数の凹部16を有してもよい。凹部16は、第2方向yの長さより第1方向xの長さの方が長い細長形状であって、第1方向xに間隔を開けて複数配置されている。複数の凹部16はそれぞれ、厚さ方向zに窪んでおり、それぞれの底に基部18を有する。基部18は、連続繊維からなる。基部18は、複数の畝部12の基部18を除く部分より連続繊維の量が少なく、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部(図示しない)を有する。基部18の厚さTbは、複数の溝部14のそれぞれの厚さTcより厚い。すなわち、複数の溝部14のそれぞれの厚さTcは、基部18の厚さTbより薄い。
【0044】
複数の畝部12は、凹部16の少なくとも一部の第2方向yの一方に束状部20を有してもよい。束状部20は、複数の連続繊維が第1方向xに配向した状態で、複数の接合部で接合された複数の連続繊維を有している。「第1方向xに配向した状態」とは、連続繊維が第1方向xに平行に配向している場合に限らず、第1方向xに対して角度差が30度以下の範囲に配向している場合を含む。束状部20は、連続繊維同士の交点が複数の接合部によって熱接合されている。束状部20は、連続繊維同士の繊維間距離が、連続繊維が特定の方向に配向していない場合に比べ、より小さい。すなわち、束状部20は、接合部同士の間の連続繊維が第1方向xへ配向しているので、接合部同士の間の連続繊維の繊維間距離がより小さい。また、束状部20は、厚さ方向zの荷重が加えられた場合、連続繊維同士が線接触する確率が高いため、厚さ方向zに変形しにくい。束状部20は、凹部16の第2方向yの両側に形成されてもよい。
【0045】
一方、特定の方向に配向していない連続繊維の場合、接合部同士の間の連続繊維は、不特定の方向へ向いているので、厚さ方向zの荷重が加えられた場合、繊維同士が点接触する確率が高く接触していない範囲の繊維が変形する。
【0046】
不織布10の無負荷状態における厚さ、複数の溝部14の厚さ及び基部18の厚さは、2次元レーザー変位計を用いて測定される。2次元レーザー変位計としては、例えば、キーエンス株式会社製の高精度2次元レーザー変位計LJ-Gシリーズ(型式:LJ-G030)が挙げられる。不織布を水平の測定台の上に置き、不織布の対象箇所ごとに異なる5つの部位について、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値を当該不織布のそれぞれの対象箇所の厚さ(mm)とする。
【0047】
複数の畝部12はそれぞれ、隣接する複数の溝部14のそれぞれに向かって突出した複数の突出部22を有してもよい。複数の突出部22はそれぞれ、第2方向yに突出しており、第1方向xに沿って間隔を開けて並んでいる。複数の畝部12のそれぞれの突出部22の間は、第2方向yに窪んでいる。複数の突出部22は、複数の畝部12の両側にそれぞれ設けられており、それぞれの突出部22は、第2方向yに重なる位置に設けられていてもよい。それぞれの突出部22が第2方向yに重なる位置に設けられている場合、複数の畝部12及び複数の溝部14は、幅が広い部分と狭い部分がそれぞれ形成される。また、それぞれの突出部22は、第2方向yに重ならない位置に設けられていてもよい。それぞれの突出部22が第2方向yに重ならない位置に設けられている場合、複数の畝部12及び複数の溝部14はそれぞれ、概ね一定の幅を有する。
【0048】
複数の溝部14のそれぞれの厚さTcは、連続繊維の量が少なく、そのため、基部18の厚さTbより薄いので、厚さ方向zにおいて連続繊維同士の重なりが少ない。すなわち、複数の溝部14は、連続繊維同士の間隔がより大きい。したがって、不織布10は、複数の溝部14における連続繊維同士の間隔を通して、厚さ方向zの一側から他側を見ることができ、すなわち視認性に優れる。
【0049】
視認性の評価は、以下に示す方法によって得られる平均透過率によって評価してもよい。まず100mm×100mmの5個の試料を用意する。黒色紙の上に試料を凹凸面が上になるように配置する。1200万画素のデジタルカメラを、試料全体が撮影できるように試料から高さ約15cm離れた位置から試料全体を撮影する。得られた画像をKEYENCE社製 VHX-7000に取込み、自動面積計測、抽出方法を明るさ(標準)とし、下記設定で画像処理して透過率を算出する。そして、5個の試料の透過率の平均値を不織布の平均透過率とする。
測定面積 50mm×50mm
フィルター設定 テクスチャ除去 10
明るさムラ除去 1
抽出設定 明るさ設定 0-148
穴埋め OFF
小粒子除去 OFF
整形設定 穴埋め オート
【0050】
(不織布の製造方法)
上記実施形態に係る不織布10は、スパンボンド法によって形成し得る。例えば、樹脂組成物を紡糸ノズルから紡出し、紡出された長繊維フィラメントを冷却流体などにより冷却し、延伸空気によって長繊維フィラメントに張力を与えて所定の繊度を有する連続繊維とする。得られた連続繊維を、搬送方向MDに移動するワイヤーメッシュの下側から吸引しながら、ワイヤーメッシュの上に堆積し、ウェブを形成する。得られたウェブに対し、ウェブの一方から熱風を送るエアスルー法によって、連続繊維の交点を熱接合する。以上のようにして不織布10を製造することができる。
【0051】
図3に示すように、ワイヤーメッシュ24は、互いに直交する搬送方向MD、横断方向CD及び高さ方向Hを有し、網状に配置した複数のワイヤー26からなるメッシュ本体28を備える。複数のワイヤー26のそれぞれは、所定の外径を有する。メッシュ本体28は、複数のワイヤー26を縦線と横線とに配置し、一定の間隔を保って一本ずつ相互に交差させて形成してもよい。
【0052】
ワイヤーメッシュ24は、メッシュ本体28の高さ方向Hの一方の面から高さ方向Hへ突出し、搬送方向MDに沿って延びる複数の突条30を有する。突条30は、横断方向CDへ所定の間隔で配置されている。突条30は、メッシュ本体28における、ワイヤー26同士の間の第1方向xに沿って配置される隙間の一部を塞いでいる。
【0053】
図4に示すように、突条30の高さH
Lは、1.0mm以上でもよい。突条30の高さH
Lはワイヤー26の外径より大きい、すなわちワイヤー26の外径は突条30の高さH
Lより小さいことが好ましい。複数の突条30のそれぞれの幅W
L、すなわち横断方向CDの長さの合計長さは、メッシュ本体28の横断方向CDの長さの50%以下であってもよい。それぞれの突条30の幅W
Lは、一定である場合に限らず、部分的に異なる場合を含む。それぞれの突条30の幅W
Lは、搬送方向MDに所定の間隔(例えば100mm)を開けて複数個所(例えば5カ所)、測定した値の平均値としてもよい。突条30の幅W
Lは、メッシュ本体28に接している箇所の横断方向CDの長さとする。
【0054】
複数の突条30のそれぞれは、横断方向CDへ膨出した膨出部32を複数有してもよい。膨出部32は、搬送方向MDに沿って所定の間隔を開けて並んでいる。複数の突条30のそれぞれの膨出部32の間は、横断方向CDに窪んでいる。複数の膨出部32は、突条30の両側にそれぞれ設けられており、それぞれの膨出部32は、横断方向CDに重なる位置に設けられていてもよい。それぞれの膨出部32が横断方向CDに重なる位置に設けられている場合、突条30及び突条30同士の間は、幅が広い部分と狭い部分がそれぞれ形成される。また、それぞれの膨出部32は、横断方向CDに重ならない位置に設けられていてもよい。それぞれの膨出部32が横断方向CDに重ならない位置に設けられている場合、突条30及び突条30同士の間は、一定の幅で形成される。
【0055】
上記のワイヤーメッシュ24を用いると、連続繊維は、ワイヤーメッシュ24の下側から吸引されることによってワイヤーメッシュ24の上に堆積する。連続繊維の一部は、メッシュ本体28の突条30が形成されていない突条30同士の間に優先的に集まる。突条30同士の間において、連続繊維の一部が優先的に集まることによって、連続繊維が密となり、坪量の高い複数の畝部12が形成される。また、突条30上では、連続繊維が疎となり、坪量が低い複数の溝部14が形成される。さらに、ワイヤーメッシュ24の上に堆積された状態で、連続繊維を熱接合することによって、複数の畝部12及び複数の溝部14の形状が維持される。ワイヤーメッシュ24から不織布を取り外し、厚さ方向zの上下を逆にすることによって、
図1に示す不織布10が得られる。したがって、上記不織布10の製造方法は、連続繊維からなり、複数の畝部12及び複数の溝部14を備え、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有する不織布10を製造することができる。
【0056】
突条30の高さが1.0mm以上であるので、突条30上に連続繊維が残りにくくなり、突条30同士の間に連続繊維が集積されるので、所定の厚さを有する複数の畝部12を形成することができる。したがって、上記不織布10の製造方法は、畝部12及び溝部14を有する不織布10をより確実に製造することができる。連続繊維は、突条30を避けるように突条30に沿って突条30同士の間に集積するので、複数の畝部12の第1方向xに沿った繊維配向性が、複数の溝部14の第1方向xに沿った繊維配向性よりも高くなる。
【0057】
メッシュ本体28の横断方向CDの長さに対する、複数の突条30のそれぞれの横断方向CD長さの合計長さが、50%以下であるので、十分な通気量の気体が、突条30を除くメッシュ本体28を通過する。したがって、上記不織布10の製造方法は、連続繊維を安定的にワイヤーメッシュ24上に堆積させることができるので、複数の畝部12及び複数の溝部14を有する不織布10をより確実に製造することができる。
【0058】
複数の突条30のそれぞれが、前記横断方向CDへ膨出した膨出部32を複数有することによって、膨出部32は、連続繊維が疎となる。第1方向xの膨出部32同士の間は、連続繊維が密となり、複数の畝部12から複数の溝部14へ突出した突出部22となる。したがって、上記製造方法は、複数の畝部12に突出部22を有する不織布10を製造することができる。
【0059】
ワイヤーメッシュ24を形成するワイヤー26の外径が突条30の高さより小さいので、ワイヤーメッシュ24のワイヤー26同士が重なった部分においてもワイヤー26より突条30の方が高くなるため、複数の溝部14が形成される。したがって、上記不織布10の製造方法は、より確実に複数の畝部12と複数の溝部14を有する不織布10を製造することができる。また、ワイヤーメッシュ24のワイヤー26同士が重なった部分の方が突条30より小さいため、連続繊維がワイヤーメッシュ24のワイヤー26同士が重なった部分に堆積されにくく、網目に集まることによって、凹部16を有する複数の畝部12を形成し得る。
【0060】
また、連続繊維は、ワイヤーメッシュ24の上の突条30同士の間に集積する際、ワイヤー26同士が重なった部分のうち高さ方向の上方へ凸となる部分を避け、網目に集まることによって、複数の連続繊維が第1方向xにより配向された状態となる。この状態で接合部が形成されることによって、複数の連続繊維が搬送方向MD、すなわち第1方向xに配向した束状部が形成される。
【0061】
連続繊維は、1000m/min以上4500m/min以下の繊維速度で前記ワイヤーメッシュ24の上に堆積されるのが好ましい。連続繊維は、1000m/min以上の繊維速度であることによって、ワイヤーメッシュ24の上に堆積されやすく、複数の畝部12が形成されやすい。また連続繊維は、4500m/min以下の繊維速度であることによって、ワイヤーメッシュ24の上で連続繊維の配向が乱れることを抑制できるので、複数の畝部12が形成されやすい。したがって、連続繊維が上記範囲内であることによって、複数の畝部12及び複数の溝部14を有する不織布10を効率的に製造することができる。
【0062】
(吸収性物品の例)
図5に示す吸収性物品1は、使い捨ておむつの例であり、複数の層を含む。吸収性物品1は、着用者の肌に当接する肌当接シートとしての液透過性シート3と、液不透過性シート5と、液透過性シート3と液不透過性シート5の間に配置された吸収体7とを含む。吸収性物品1は、液不透過性シート5の非肌側に、さらに外装シート(図示しない)を有してもよい。また、吸収性物品が、インジケーター(図示しない)、及び模様(図示しない)を有してもよい。インジケーターは、好ましくは、吸収体7と、液不透過性シート5との間に配置される。模様は、好ましくは液不透過性シート5の内面又は外面に配置される。吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、前胴周り領域FWと、後胴周り領域RWと、前胴周り領域FW及び後胴周り領域RWの間の股部領域Cとの三領域に区画される。吸収性物品1は、弾性部材103を含む一対の防漏壁101と、防漏壁101を液透過性シート3に固定する固定部105と、脚部周りの弾性部材107と、テープファスナ109等をさらに備える。なお、これらは、当技術分野で公知のものであるため、説明を省略する。
【0063】
液透過性シート3は、上記不織布10であってもよい。液透過性シート3に適用される場合の不織布10は、液透過性である。液透過性シート3は、不織布10の複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を肌側に配置している。液透過性シート3は、不織布10の第1方向xを吸収性物品1の長手方向Lに沿って配置してもよい。液透過性シート3は、複数の溝部14及び複数の畝部12が吸収性物品1の長手方向Lに沿って配置されるので、体液が吸収性物品1の長手方向Lへ拡散しやすい。
【0064】
また液透過性シート3は、不織布10の第1方向xを吸収性物品1の幅方向Wに沿って配置してもよい。液透過性シート3は、複数の溝部14及び複数の畝部12が吸収性物品1の幅方向Wに沿って配置されるので、体液が吸収性物品1の幅方向Wへ拡散しやすい。
【0065】
外装シートは、上記不織布10であってもよい。外装シートは、不織布10の複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を非肌側に有してもよいし、肌側に有してもよい。外装シートは、不織布10の第1方向xを吸収性物品1の長手方向Lに沿って配置してもよいし、幅方向Wに沿って配置してもよい。
【0066】
不織布10は、厚さの変化が少ないため、複数の畝部12及び複数の溝部14の形状が保持されやすい。不織布10は、着用後において、厚さ方向zの荷重が加わった場合に、複数の畝部12が薄くなりにくく、坪量が少ない状態で複数の溝部14の第2方向yの長さが維持される。
【0067】
吸収性物品は、使い捨ておむつに限らず、例えば、尿取りパッド、動物用の排尿シート等、経血等を主に吸収する吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナー等に適用できる。
【0068】
(作用及び効果)
不織布10は、連続繊維からなり、複数の畝部12のそれぞれ及び複数の溝部14のそれぞれが、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有する。当該不織布10は、形状を保持しやすく、厚さ方向zに荷重が加えられた状態における厚さの変化が、短繊維からなる不織布10に比べ、小さい。例えば、0.05kPa(0.5gf/cm2)の圧力を受けたときの厚さをT0、4.9kPa(50gf/cm2)の圧力を受けたときの厚さをTmとした場合、上記不織布10の圧縮特性(Tm/T0)は0.3超、又は0.4以上である。したがって当該不織布10は、薄くなりにくく、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3に適用された場合、着用時において厚さの変化が少ないため、吸収体7と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持しやすい。結果として当該不織布10は、濡れ感の抑制に優れる。
厚さT0及び厚さTmは、カトーテック(株)製の自動化圧縮試験器、KES-FB3-Aを用いて、測定する。測定条件は、以下の通りである。
SENS :2
速度 :0.02mm/秒
ストローク:5mm/10V
加圧面積 :2cm2
取込み間隔:0.1秒
上限荷重 :50g/cm2
繰返し回数:1回
【0069】
複数の溝部14は、複数の畝部12より坪量が低く、また、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有するので形状を保持しやすいため、厚さ方向zの荷重が加わった場合に、畝部12の厚さが変化しにくい。そうすると、畝部12の第2方向yの長さも変化しにくいので、溝部14の第2方向yの長さが変化しにくい。すなわち、上記不織布10は、畝部12及び溝部14の構造が変化しにくく、溝部14の第2方向yの長さが変化しにくいので、視認性が得られる範囲が変化しにくい。したがって複数の溝部14は、複数の溝部14を通して厚さ方向zの視認性に優れる。当該不織布10は、複数の溝部14を有するので、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3に適用された場合、吸収体7に吸収された体液の視認性に優れる。
【0070】
不織布10は、複数の畝部12と複数の溝部14が第2方向yへ交互に設けられていることによって、第1方向x及び第2方向yの広範囲において、吸収体7と使用者の肌との間隔を保持し濡れ感の抑制に優れると共に、複数の溝部14を通して吸収体7に吸収された体液の視認性に優れる。
【0071】
不織布10は、着用後において、厚さ方向zに荷重が加わった場合に、複数の畝部12が崩れにくく、坪量が少ない状態で複数の溝部14の第2方向yの長さが維持される。当該不織布10は、例えば、使い捨ておむつの外装シートに適用し複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を非肌側に配置した場合、着用後において経時的に荷重を受けた場合であっても、複数の溝部14における優れた通気性や視認性が維持される。このため、吸収性物品1は、着用後において優れた通気性が得られると共に、上記インジケーターや液不透過性シート5に設けられた模様を外装シート側から良好に視認できる。また、不織布10は、外装シートに適用し複数の複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を肌側に配置した場合、液不透過性シート5との間に空間が形成されるので、湿気を衣類やシーツ等に伝えにくい。
【0072】
上記不織布10では、複数の溝部14を有すると共に、複数の畝部12に厚さ方向zに窪んだ複数の凹部16を有するため、使用者の肌が湿った不織布10に触れる面積が、凹部16を有さない不織布10に比べ、少ない。上記不織布10では、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3に適用された場合、基部18が、排泄された体液を吸収すると共に、吸収体7に吸収された体液が凹部16内へ戻ることをより確実に抑制する。したがって、不織布10は、濡れ感の抑制に優れる。また、上記不織布10では、例えば、使い捨ておむつの外装シートに適用された場合、複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を非肌側に配置してもよい。この場合、不織布10は、凹部16を有する分だけ表面の接触面積が低下するため、さらっとした触感を与えることができると共に、布様の複雑な表面形状を有する。また、上記不織布10は、複数の畝部12及び複数の溝部14が設けられた面を肌側に配置してもよく、この場合、液不透過性シート5との間に形成される空間が凹部の分だけさらに増えるので、湿気を衣類やシーツ等により伝えにくい。
【0073】
上記不織布10では、複数の畝部12のそれぞれは、複数の凹部16の少なくとも一部の第2方向yの一方に、連続繊維が第1方向xに沿って配向した状態で複数の接合部で接合された束状部20を有する。束状部20は、連続繊維同士の繊維間距離が小さく、荷重を受けた際に変形しにくい。したがって、束状部20を有する上記不織布10は、着用時において厚さの変化が少ない凹部の形状を保持しやすい。上記不織布10では、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3に適用された場合、吸収体7と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持しやすく、また凹部16の形状を保持しやすいため、不織布10に触れる面積が少ない状態を維持しやすい。
【0074】
上記不織布10では、複数の溝部14のそれぞれの厚さは、基部18の厚さより薄いため、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3や外装シートに適用された場合、複数の溝部14は厚さ方向zの視認性が優れるため、厚さ方向zの視認性がほとんど得られない複数の畝部12との差異が際立つ。したがって、上記不織布10は、視認性に優れる。また、上記不織布10は、連続繊維からなり、所定の平均坪量当たりの平均破断強度を有するので、視認性に優れる液透過性シート3及び外装シートとして吸収性物品1に適用することができる。
【0075】
連続繊維は、オレフィン系樹脂を含む複合繊維であるので、低い熱処理温度でも接合部を形成することができるため、より効率的に不織布10全体に接合部を形成することができる。不織布10は、全体に接合部が形成されるので、着用後において厚さ方向zに荷重が加えられた場合に、形状を保持しやすいため、畝部12及び溝部14の構造が変化しにくい。全体に接合部が形成された不織布10は、溝部14の形状が保持されるため視認性に優れると共に、排泄物によって複数の溝部14及び複数の畝部12が変形することを抑制でき、濡れ感の抑制に優れる。
【0076】
上記不織布10は、連続繊維の平均繊維径が15μm以上30μm以下、前記不織布10の平均坪量が10g/m2以上40g/m2以下であるので、着用後において厚さ方向zに荷重が加えられた場合に、形状を保持しやすい畝部12及び溝部14の構造がより確実に得られる。また、排泄された体液を吸収した後において連続繊維同士が間隔を維持し得る。したがって、当該不織布10は、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3に適用された場合、吸収体7と使用者の肌との間隔を保持し濡れ感の抑制に優れると共に、吸収体7に吸収された体液の視認性に優れる。
【0077】
上記不織布10では、複数の溝部14及び複数の畝部12が吸収性物品1の長手方向Lに沿って配置されるので、長手方向Lの視認性に優れる。また、上記不織布10は、体液が吸収性物品1の長手方向Lへ拡散しやすい。したがって、上記不織布10は、液透過性シート3に適用された場合、体液を長手方向Lへ拡散することによって、体液が一カ所に滞留することを抑制するので、濡れ感の抑制に優れる。
【0078】
上記不織布10では、複数の溝部14及び複数の畝部12が吸収性物品1の幅方向Wに沿って配置されるので、幅方向Wの視認性に優れる。また、上記不織布10は、体液が吸収性物品1の幅方向Wへ拡散しやすい。したがって、上記不織布10は、液透過性シート3に適用された場合、体液を幅方向Wへ拡散することによって、体液が一カ所に滞留することを抑制するので、濡れ感の抑制に優れる。
【0079】
上記不織布10では、複数の畝部12のそれぞれが隣接する複数の溝部14のそれぞれに向かって突出し、第1方向xに沿って間隔を開けて並んだ複数の突出部22を有するので、厚さ方向zに荷重が加えられた場合に複数の畝部12が倒れにくい。したがって、当該不織布10は、例えば、使い捨ておむつの液透過性シート3や外装シートに適用された場合、複数の畝部12が形状を保持した状態を維持しやすいので、複数の畝部12が溝部14を塞がないため視認性に優れる。
【0080】
上記不織布10では、複数の畝部12の第1方向xに沿った繊維配向性が、複数の溝部14の第1方向xに沿った繊維配向性よりも高いので、連続繊維同士の交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短い。したがって上記不織布10は、複数の畝部12の形状が保持されやすい。また、複数の畝部12に沿って第1方向xへ体液を拡散させることができる。したがって、上記不織布10は、体液を第1方向Lx拡散することによって、体液が一カ所に滞留することを抑制するので、濡れ感の抑制に優れる。また、上記不織布10は、複数の畝部12の第1方向xに沿った繊維配向性がより高いことによって、連続繊維同士の交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短いため、形状が保持されやすい。したがって、上記不織布10は、厚さ方向zに変形しにくい。
【0081】
上記不織布10はスパンボンド不織布であるから、連続繊維は、気流によって移動する場合、繊維長さが長いため、一定の長さに亘って移動し、さらに隣り合う連続繊維も伴って移動するので、堆積工程における気流の影響を受けやすい。そのため、連続繊維のそれぞれが移動することによって、繊維間距離が小さい部分が形成されやすい。連続繊維は、互いの交点間の距離が短く、複数の接合部同士の距離が短い。したがって上記不織布10は、複数の畝部12の形状が保持されやすい。
【0082】
不織布10は、荷重を受けた際に変形しにくく、荷重を除いた後でも厚みの変化が少ない。荷重を加えた前後の厚みの変化は、以下のようにして測定する。
まず、不織布10の巻取ロールを作成する。その巻取ロールから不織布10を切り出す。切り出した直後の0.3kPa(3gf/cm2)の荷重を受けたときの厚さをT1とする。切り出した不織布10を温度23度、湿度60%の環境下に1日静置し、その後の0.3kPa(3gf/cm2)の荷重を受けたときの厚さをT2とする。不織布10の厚さ回復性(T2/T1)は1.1未満で、ほぼ厚さの変化がない。したがって、荷重を除いた後でも厚みの変化が少ないため、不織布10の厚さ方向zの上側と下側が面方向へずれにくく、良好な視認性が維持される。
【実施例】
【0083】
実際に上記実施形態に対応した不織布を作製し、評価を行った。以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0084】
(1)試料
(実施例1~3)
上記「不織布の製造方法」の記載にしたがって、スパンボンド法によって連続繊維からなる実施例1~3の不織布を作製した。実施例1~3の不織布は、いずれも、複数の畝部、複数の溝部、複数の凹部、及び複数の突出部を備えていた。実施例1の不織布の写真を
図6A、6B、6C、6Dに示す。
図6A及び
図6Bには楕円が示されているが、上記楕円は特定の箇所を示すものであって不織布を構成するものではない。
図6A及び
図6Bに示すように、複数の畝部に複数の凹部が形成されており、凹部に隣接して束状部が形成されていた。
図6Cに示すように、束状部は、複数の連続繊維が第1方向に沿って配向しており、複数の接合部で接合されていた。
図6Dに示すように、複数の溝部の厚さは、基部の厚さより薄かった。
【0085】
(比較例1,2)
カード法によって、短繊維からなる比較例1及び2の不織布を作製した。比較例1の不織布には、上記特許文献1に記載の方法にしたがって高目付部と低目付部を形成した。比較例2の不織布には、熱エンボス加工によって複数の溝部を形成した。比較例2の複数の溝部と、複数の溝部間の畝部は、坪量が同じである。比較例1及び比較例2の不織布は、凹部及び突出部を有さない。
【0086】
(評価結果)
実施例及び比較例の不織布の特性は、表1に示す通りである。
0.3kPa(3gf/cm2)の荷重を受けたときの厚さT1は、実施例1~3の方が、平均坪量が同程度の比較例1及び2より大きい。実施例1~3の厚さ回復性(T2/T1)は、いずれも1.0であるのに対し、比較例1及び2は、1.1以上であった。実施例の不織布は、荷重を加えた前後の厚みの変化が少ないことが確認された。実施例の不織布は、荷重を加えた前後の厚みの変化が少ないため、不織布の厚さ方向の上側と下側が面方向へずれにくく、良好な視認性が維持されやすいといえる。
【0087】
実施例1~3の圧縮特性(Tm/T0)は、0.4以上であるのに対し、比較例1及び2は0.3であった。実施例の不織布は、厚さ方向に荷重が加えられた状態における厚さの変化が、短繊維からなる不織布に比べ、小さい。したがって、実施例の不織布は、薄くなりにくく、使い捨ておむつの液透過性シートに適用された場合、着用時において厚さの変化が少ないため、吸収体と使用者の肌との間隔を保持した状態を維持しやすいので、濡れ感の抑制に優れるといえる。
【0088】
実施例の不織布の平均透過率は、比較例に比べ、優れた結果が得られた。実施例の不織布は、連続繊維同士の交点を熱接合した複数の接合部を有するので形状を保持しやすいため、溝部の第2方向の長さが保持されやすいので、不織布の平均透過率が高い、すなわち視認性に優れる状態を維持しやすいといえる。
【0089】
【符号の説明】
【0090】
1 吸収性物品
3 液透過性シート
7 吸収体
10 不織布
12 畝部
16 凹部
18 基部
20 束状部
22 突出部
24 ワイヤーメッシュ
26 ワイヤー
28 メッシュ本体
30 突条
32 膨出部