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特許7520321AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド含有脂質粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド含有脂質粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/711 20060101AFI20240716BHJP
   A61K 9/133 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240716BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240716BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240716BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240716BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61K31/711
A61K9/133
A61K9/51
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/18
A61K47/14
A61P37/04
A61P35/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020531366
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2019028269
(87)【国際公開番号】W WO2020017590
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2018135787
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) 発行日 2018年3月5日 刊行物 日本薬学会第138年会要旨集 (その2) 開催日 2018年3月25日から2018年3月28日 集会名、開催場所 日本薬学会第138年会 TKP金沢カンファレンスセンター6F(V会場)(住所:石川県金沢市上堤町1-33)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 次世代がん医療創生研究事業「多様ながん種に適応可能な腫瘍環境標的型免疫賦活化療法の開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青枝 大貴
(72)【発明者】
【氏名】小山 正平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103703(WO,A1)
【文献】特開2008-148556(JP,A)
【文献】特表2003-510290(JP,A)
【文献】国際公開第2005/014110(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/193081(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/040308(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy,2017年,Vol.25, No.7,pp.1467-1475
【文献】Advanced Drug Delivery Reviews,2016年,Vol.99,pp.129-137
【文献】Biol. Pharm. Bull.,2013年,Vol.36(6),pp.892-899
【文献】Lipid Nanoparticle Systems for Enabling Gene Therapies,Molecular Therapy,2017年,Vol.25, No.7,pp.1467-1475
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質、カチオン性脂質、及びステロールを含有し、且つ
リン脂質を含む両親媒性脂質を含む外層、及び前記外層内に配置されたAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドとカチオン性脂質とのイオンコンプレックスを含み、前記ステロールが、前記外層に含まれ、及び/又は前記イオンコンプレックスに結合していて、且つ、前記ステロールの含有量が、脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して40質量%以下である、脂質粒子。
【請求項2】
前記外層が、前記両親媒性脂質が親水性部分を外側に向けて並んでいる脂質1分子膜である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項3】
水溶性高分子修飾脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して0~10質量%である、請求項1又は2に記載の脂質粒子。
【請求項4】
前記脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の前記AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する核酸中のリン原子の個数(P)に対する比(N/P)が2.5以上である、請求項1~3のいずれかに記載の脂質粒子。
【請求項5】
前記カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)及び1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれかに記載の脂質粒子。
【請求項6】
脂質を含有するアルコール溶液と、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する水溶液とを混合する工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の脂質粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程がマイクロ流路を用いた反応系で行われる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、医薬。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、試薬。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、免疫賦活剤。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、抗がん剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質粒子、脂質粒子の製造方法、該脂質粒子を含有する医薬、試薬、インターフェロン産生促進剤、抗がん剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)9依存的に自然免疫反応を惹起し、ワクチン抗原と共に投与してワクチンの免疫効果を高めるワクチンアジュバント、またはそれ自身で惹起される自然免疫応答による免疫調節薬として期待されている。CpGオリゴデオキシヌクレオチドには、A/Dタイプ、B/Kタイプ、Cタイプ、Pタイプ等が知られている。
【0003】
B/Kタイプは、生理食塩水に可溶で主にインターロイキン(IL)-6産生を誘導することが知られており、既に有望な核酸医薬品として臨床への適応が進んでいる。Cタイプ及びPタイプは、IL-6に加えてIFN-αを誘導できるものの、Cタイプではその程度は弱い。また、これらの3タイプは、いずれもホスホロチオエート骨格の割合が高く、その毒性が懸念される。
【0004】
一方、A/Dタイプは、生理食塩水に不溶ではあるが、主にインターフェロン(IFN)-α産生を強力に誘導することが知られており、B/Kタイプ、Cタイプ、及びPタイプとは異なる生物活性をもつ。また、A/Dタイプは、ホスホロチオエート骨格の割合が低く、毒性の問題も低いと考えられる。
【0005】
A/Dタイプによる強力なIFN-α誘導は、このタイプのより高次の構造と密接に関係している。A/DタイプのポリGテイルは、塩溶液においてグアニン四重鎖のDNA構造を形成し、ナノ粒子/凝集体の形成をもたらす。凝集体の形成がA/Dタイプによる高いIFN-α産生に必須であることは繰り返し報告されており、このことは、A/DタイプODNの臨床応用の大きな障壁となっている。なぜなら、A/Dタイプ多量体化の自主的な発生は、無制御の凝集および沈降につながり、製品毎の大きな違いや投与の困難さをもたらすからである。このように、A/Dタイプは、その効果を安定して発揮させることが困難である。
【0006】
この問題を解消すべく、特許文献1では、A/Dタイプの末端にポリAを付加する技術が開示されている。しかし、ポリAの付加により核酸の塩基数が増えるので、合成の難化、合成コストの高騰等の問題が生じてしまう。また、このポリAにはホスホロチオエート骨格が採用されているところ、毒性の観点からは、ホスホロチオエート骨格の割合がより低いものが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/103703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドの効果を安定して発揮させることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究を進めた結果、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する脂質粒子であれば、IFN-α産生誘導作用等のAタイプの効果を安定に発揮できることを見出した。そして、驚くべきことに、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを脂質粒子化することにより、その作用が高まることを見出した。これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0011】
項1. AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する、脂質粒子。
【0012】
項2. 前記脂質粒子が、外層、及び前記外層内に配置されたイオンコンプレックスを含む脂質粒子である、項1に記載の脂質粒子。
【0013】
項3. 前記イオンコンプレックスがAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する、項2に記載の脂質粒子。
【0014】
項4. 前記外層が、両親媒性脂質が親水性部分を外側に向けて並んでいる脂質1分子膜である、項2又は3に記載の脂質粒子。
【0015】
項5. 水溶性高分子修飾脂質の含有量が、前記脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して0~10質量%である、項1~4のいずれかに記載の脂質粒子。
【0016】
項6. 前記脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の前記AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する核酸中のリン原子の個数(P)に対する比(N/P)が2.5以上である、項1~5のいずれかに記載の脂質粒子。
【0017】
項7. カチオン性脂質を含有する、項1~6のいずれかに記載の脂質粒子。
【0018】
項8. 前記カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)及び1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)からなる群より選択される少なくとも1種である、項7に記載の脂質粒子。
【0019】
項9. 脂質を含有するアルコール溶液と、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する水溶液とを混合する工程を含む、脂質粒子の製造方法。
【0020】
項10. 前記工程がマイクロ流路を用いた反応系で行われる、項9に記載の製造方法。
【0021】
項11. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、医薬。
【0022】
項12. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、試薬。
【0023】
項13. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、免疫賦活剤。
【0024】
項13A. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子を免疫賦活を必要とする対象に投与することを含む、免疫賦活方法。
【0025】
項13B. 免疫賦活剤としての使用のための、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子。
【0026】
項13C. 免疫賦活剤の製造のための、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子の使用。
【0027】
項13D. 免疫賦活剤としての、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子の使用。
【0028】
項14. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子を含有する、抗がん剤。
【0029】
項14A. 項1~8のいずれかに記載の脂質粒子をがん治療を必要とする対象に投与することを含む、がんの治療方法。
【0030】
項14B. 抗がん剤としての使用のための、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子。
【0031】
項14C. 抗がん剤の製造のための、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子の使用。
【0032】
項14D. 抗がん剤としての、項1~8のいずれかに記載の脂質粒子の使用。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドの効果を安定に且つより強く発揮させることができる技術、具体的にはAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する脂質粒子を提供することができる。該脂質粒子は、医薬、試薬、免疫賦活剤、抗がん剤等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】カチオン脂質(#41: DOTAP、#45: DOTMA、又は#47: DODAP)を含むAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(D35:配列番号1) 含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた結果(試験例1)を示す。縦軸は培養上清中のIFN-α濃度を示す。凡例は、ヒトPBMC培養培地に添加した脂質ナノ粒子の、D35換算量を示す。
図2】N/P比(#41: 3又は#42: 1)を変えたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた結果(試験例2)を示す。縦軸は培養上清中のIFN-α濃度を示す。凡例は、ヒトPBMC培養培地に添加した脂質ナノ粒子の、D35換算量を示す。
図3】pH感受性脂質(DOPE)を添加して(又は添加せずに)透析溶液を変えて得られたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた結果(試験例3)を示す。縦軸は培養上清中のIFN-α濃度を示す。凡例は、ヒトPBMC培養培地に添加した脂質ナノ粒子の、D35換算量を示す。DOPE有無と透析溶液の組合せは次の通りである:#35: DOPE 不含有/リン酸緩衝生理食塩水(PBS) 透析、#36: DOPE 不含有/5%Glucose 透析、#38: DOPE 含有/5%Glucose 透析。
図4】DSPE-PEG-OMe の含有量及びそのPEG 鎖長を変えて得られたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC又はマウス脾臓細胞に対するIFN-α産生誘導を調べた結果(試験例4)を示す。上段はヒトPBMCの結果(縦軸は培養上清中のIFN-α濃度)を示す。下段はマウス脾臓細胞の結果(縦軸は培養上清中のIFN-I濃度)を示す。凡例は、ヒトPBMC培養培地に添加した脂質ナノ粒子の、D35換算の培地終濃度を示す。DSPE-PEG-OMe の含有量とPEG 鎖長の組合せは次の通りである:2kPEG 0.0質量%(048) 、2kPEG 0.5質量%(007)、2kPEG 1.0質量%(008)、2kPEG 3.0質量%(009)、2kPEG 6.0質量%(010)、5kPEG 0.5質量%(011)。
図5】D35含有脂質ナノ粒子のTLR9依存性を調べた結果(試験例5)を示す。上段はIFN-I濃度を調べた結果を示し、下段はIL-6濃度を調べた結果を示す。D35LNPはD35含有脂質ナノ粒子を添加した場合(培地終濃度1ug/mL)を示し、0.5%、3%は、脂質粒子の脂質100質量%に対するDSPE-PEG-OMe含有量を示す。R848及びD35についての数値(1ug/mL、10uM)は培地終濃度を示す。
図6】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例6)を示す。縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示す。凡例は投与した薬剤の有無及び種類を示す。各プロットは平均値(n=5)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。*は薬剤無しの場合(Non-treatment)に対するP値(Dunn’s multiple comparisons test)が0.05未満であることを示す。
図7】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例7)を示す。縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示す。凡例は投与した薬剤及び抗体の有無並びに種類を示す。各プロットは平均値(n=5)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。*は薬剤無しの場合(None)に対するP値(Dunn’s multiple comparisons test)が0.05未満であることを示す。
図8】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例9)を示す。縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示す。凡例は投与した薬剤の有無及び種類を示す。各プロットは平均値(n=5)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。
図9】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例11)を示す。縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示す。凡例は投与した薬剤及び抗体の有無並びに種類を示す。各プロットは平均値(n=5)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。
図10】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例12)を示す。上段のグラフ中、縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示し、凡例は投与した薬剤の有無及び種類を示す。下段のグラフ中、縦軸は腫瘍重量を示し、横軸は薬剤の有無及び種類を示す。combはD35含有脂質ナノ粒子とantiPD-1抗体との組合せを示す。上段のグラフ中、各プロットは平均値(n=8)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。下段のグラフ中、各プロットはそれぞれのサンプルのデータを示し、バーの中央の横線は中央値を示し、両端の横線は標準偏差を示し、**はP値(one-way ANOVA)が0.01未満であることを示す。
図11】D35含有脂質ナノ粒子の抗がん作用を調べた結果(試験例12)を示す。左上のグラフ中、縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示し、凡例は投与した薬剤の有無及び種類を示す。右上のグラフ中、縦軸は腫瘍重量を示し、横軸は薬剤の有無及び種類を示す。下段のグラフ中、縦軸は腫瘍サイズを示し、横軸は腫瘍細胞の皮下移植後の経過日数を示し、グラフ上方に投与した薬剤の有無及び種類を示す。combはD35含有脂質ナノ粒子とantiPD-1抗体との組合せを示す。左上のグラフ中、各プロットは平均値(n=7)を示し、各プロット上のバーは標準偏差を示す。右上のグラフ中、各プロットはそれぞれのサンプルのデータを示し、バーの中央の横線は中央値を示し、両端の横線は標準偏差を示し、*はP値(one-way ANOVA)が0.05未満であることを示し、**は同P値が0.01未満であることを示す。
図12】本発明の脂質粒子の好ましい一態様を表す模式図である。Phospholipid、Cationiclipid及びPEG-lipidを表す図形中、丸部分が親水性部分を示し、二本棒部分が疎水性部分を示す。PEG-lipidを表す図形中、丸部分から伸びる波線棒部分がPEG鎖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0036】
1.脂質粒子
本発明は、その一態様において、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する、脂質粒子(本明細書において、「本発明の脂質粒子」と示すこともある。)に関する。以下にこれについて説明する。
【0037】
AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、形質細胞様樹状細胞からのI型IFN(特に、IFN-α)の産生を誘導する機能を有するODNであり、この限りにおいて特に制限されない。
【0038】
典型的には、AタイプCpG ODNは、中心塩基配列(CG(非メチル化))を中心とした回文配列からなるコア部と、その片側に配置されるGオリゴマー部を含む。
【0039】
コア部の塩基長は、特に制限されないが、例えば5~30、好ましくは7~20、より好ましくは9~15、さらに好ましくは10~14である。
【0040】
コア部の塩基配列としては、中心塩基配列(CG)を中心とした回文配列である限り特に制限されないが、例えば配列番号2で示される塩基配列が挙げられる。
【0041】
コア部のヌクレオシド間の結合は、全てホスホジエステル結合である。
【0042】
Gオリゴマーの塩基長は、特に制限されず、例えば2~10である。該塩基長は、好ましくは3~8、より好ましくは5~7、さらに好ましくは6である。
【0043】
Gオリゴマーは、コア部の3´側に配置されることが好ましい。
【0044】
コア部において、上記Gオリゴマーが配置される側の反対側には、他の塩基が存在しなくともよいし、他の塩基部が配置されていてもよい。他の塩基としては、好ましくはGのみからなる塩基/塩基配列が挙げられる。該塩基/塩基配列の塩基長は、特に制限されず、例えば1~10、好ましくは1~4、より好ましくは2である。
【0045】
コア部以外の部位(Gオリゴマー部、他の塩基部)においては、末端(3´末端、5´末端)から数個(例えば2~5、好ましくは2~3、より好ましくは2)のヌクレオシドが、隣接するヌクレオシドとホスホロチオエート結合していることが好ましい。なお、ホスホロチオエート結合以外の結合部分は、通常、ホスホジエステル結合である。
【0046】
AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、1種単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本発明の脂質粒子は、その構造は特に制限されず、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドと脂質との複合体である限り特に制限されない。本発明の脂質粒子としては、例えば両親媒性脂質を含む脂質が外層を構成し、且つ両親媒性脂質が親水性部分を外側に向けて並んでいる粒子が挙げられる。該粒子としては、例えば外層が脂質1分子膜(脂質一重膜)からなる粒子、外層が脂質2分子膜(脂質二重膜)からなる粒子が挙げられ、好ましくは外層が脂質1分子膜からなる粒子が挙げられ、より好ましくは外層の脂質1分子膜において両親媒性脂質が親水性部分を外側に向けて並んでいる粒子が挙げられる。粒子の内層は、水相又は油相の均一な相からなるものでもよいが、1又は複数のイオンコンプレックスを含むことが好ましい。イオンコンプレックスは、好ましくはAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有し、より好ましくはその内層にAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する。イオンコンプレックスの好ましい態様としては、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドとカチオン性脂質との複合体が挙げられ、より好ましくはさらにコレステロールが疎水結合してなる複合体が挙げられる。本発明の脂質粒子の好ましい一態様においては、本発明の脂質粒子は、外層、及び前記外層内に配置されたイオンコンプレックスを含む脂質粒子である。本発明の脂質粒子の好ましい一態様を図12に示す。
【0048】
本発明の脂質粒子の粒子径は、特に制限されない。該粒子径は、好ましくはナノサイズであり、具体的には例えば10~700 nm、好ましくは10~500 nm、より好ましくは10~250 nm、さらに好ましくは20~200 nm、よりさらに好ましくは20~150 nm、特に好ましくは20~120 nmである。
【0049】
本発明の脂質粒子は、粒子構成脂質として、リン脂質、糖脂質等の両親媒性脂質を含む。粒子構成脂質としては、他の脂質を含み得る。他の脂質の具体例としては、ステロール、飽和又は不飽和の脂肪酸等が例示される。
【0050】
リン脂質の具体例としては、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン、ミリストイルステアロイルホスファチジルコリン、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン等のホスファチジルコリン;ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジリノレオイルホスファチジルグリセロール、ミリストイルパルミトイルホスファチジルグリセロール、ミリストイルステアロイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール等のホスファチジルグリセロール;ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン、ミリストイルパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ミリストイルステアロイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルステアロイルホスファチジルエタノールアミン等のホスファチジルエタノールアミン;1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)、1,2-ジオレオイルオキシ-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)等のカチオン脂質;ホスファチジルセリン;リゾホスファチジルコリン;ホスファチジン酸;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;カルジオリピン;卵黄レシチン;大豆レシチン;及びこれらの水素添加物等が例示される。
【0051】
糖脂質の具体例としては、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等のグリセロ糖脂質;ガラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質;ステアリルグルコシド、エステル化ステアリルグリコシド等が例示される。
【0052】
ステロールの具体例としては、コレステロール、コレステリルヘミスクシネート、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール、フィトステロール、スチグマステロール、チモステロール、エルゴステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、等が例示される。特に、当該ステロールには、リポソーム膜を安定化させたり、リポソーム膜の流動性を調節したりする作用があるため、リポソーム膜の構成脂質として含まれていることが望ましい。
【0053】
飽和又は不飽和の脂肪酸の具体例としては、デカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、ドコサン酸等の炭素数10~22の飽和又は不飽和の脂肪酸が例示される。
【0054】
本発明の脂質粒子を構成する脂質は、1種単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明の脂質粒子は、粒子構成脂質として、好ましくは両親媒性脂質及びステロールを含有する。
【0056】
両親媒性脂質として、好ましくはリン脂質が挙げられ、より好ましくはカチオン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明の脂質粒子は、カチオン脂質を含有し、より好ましくはカチオン脂質及び他のリン脂質(好ましくは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等)を含有する。カチオン脂質としては、好ましくは1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)等が挙げられる。他のリン脂質としては、好ましくは疎水部の炭化水素基の炭素数が例えば10~25、好ましくは12~21、より好ましくは14~18のリン脂質(例えばジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)等)が挙げられる。
【0057】
両親媒性脂質の含有量は、特に制限されないが、本発明の脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して、例えば20~95質量%、好ましくは40~90質量%、より好ましくは50~85質量%、さらに好ましくは60~80質量%、よりさらに好ましくは65~75質量%、特に好ましくは67~73質量%である。
【0058】
両親媒性脂質としてカチオン脂質を含有する場合、カチオン脂質の含有量は、特に制限されないが、例えば10~75質量%、好ましくは20~70質量%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは40~60質量%、よりさらに好ましくは45~55質量%、特に好ましくは47~53質量%である。
【0059】
両親媒性脂質としてカチオン脂質以外の他のリン脂質を含有する場合、他のリン脂質の含有量は、特に制限されないが、例えば5~50質量%、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~25質量%、さらに好ましくは17~23質量%である。
【0060】
ステロールとして、好ましくはコレステロールが挙げられる。
【0061】
ステロールの含有量は、特に制限されないが、本発明の脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して、例えば15~60質量%、好ましくは20~40質量%、より好ましくは25~35質量%、さらに好ましくは27~33質量%である。
【0062】
本発明の脂質粒子は、上記の好ましい粒子構成脂質(両親媒性脂質及びステロール)とは別に、粒子構成脂質として、水溶性高分子修飾脂質を含有することが望ましい。水溶性高分子としては、特に制限されないが、例えばポリエチレングリコール(PEG)鎖が挙げられる。水溶性高分子の分子量は、特に制限されないが、例えば200~10000、好ましくは500~7000、より好ましくは500~4000、さらに好ましくは1000~3000、よりさらに好ましくは1500~2500である。水溶性高分子で修飾される脂質としては、好ましくは両親媒性脂質が挙げられ、より好ましくはリン脂質が挙げられ、さらに好ましくはホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。
【0063】
水溶性高分子修飾脂質の含有量は、特に制限されないが、本発明の脂質粒子を構成する脂質100質量%に対して、例えば0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、さらに好ましくは0~1質量%、よりさらに好ましくは0.2~1質量%、特に好ましくは0.3~0.7質量%である。
【0064】
脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の前記AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する核酸中のリン原子の個数(P)に対する比(N/P)は、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.5~5、さらに好ましくは2.5~4、よりさらに好ましくは2.5~3.5である。
【0065】
本発明の脂質粒子は、上記以外にも他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば膜安定化剤、荷電物質、抗酸化剤、膜タンパク質、ポリエチレングリコール(PEG)、抗体、ペプチド、糖鎖等が挙げられる。
【0066】
抗酸化剤は、膜の酸化防止のために含有させることができ、膜の構成成分として必要に応じて使用される。膜の構成成分として使用される抗酸化剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、酢酸トコフェロール、濃縮混合トコフェロール、ビタミンE、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、パルミチン酸アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、クエン酸等が例示される。
【0067】
膜タンパク質は、膜への機能付加又は膜の構造安定化を目的として含有させることができ、膜構成成分として必要に応じて使用される。膜タンパク質としては、例えば、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質、アルブミン、組換えアルブミン等が挙げられる。
【0068】
他の成分の含有量は、本発明の脂質粒子100質量%に対して、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0069】
本発明の脂質粒子は、脂質粒子の公知の方法に従って又は準じて製造することができる。本発明の脂質粒子は、好適には、脂質を含有するアルコール溶液と、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドを含有する水溶液とを混合する工程(工程1)を含む方法によって、製造することができる。
【0070】
アルコール溶液の溶媒であるアルコールとしては、リン脂質を溶解可能なアルコールである限り特に制限されない。アルコールとしては、エタノールが好ましく挙げられる。
【0071】
水溶液は、水溶性薬物と、溶媒である水の他に、例えば糖(例えばスクロース、トレハロース等)、ポリエチレングリコール等の凍結保護剤が含まれ得る。
【0072】
水溶液とアルコール溶液との混合比(酸性水溶液/アルコール溶液、v/v)は、例えば20/1~1/1、好ましくは4/1~2/1である。
【0073】
混合は、脂質粒子が可能な態様である限り特に制限されないが、通常は、ボルテックス等で激しく撹拌する。或いは、マイクロ流路を用いた反応系で行う場合は、反応系内で混合される。
【0074】
工程1は、通常、室温下又は加温下で実行される。工程1の温度は、例えば15℃~60℃、好ましくは15℃~45℃である。
【0075】
2.用途
本発明の脂質粒子は、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドの効果を安定に且つより強く発揮させることができる。このため、AタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチドの効果(例えば、I型INF産生誘導作用、INF-α産生誘導作用等)を利用した種々の用途、例えば医薬、試薬等(本明細書において、「本発明の薬剤」と示すこともある。)の有効成分として、より具体的には、抗がん剤、免疫賦活剤等の有効成分としての利用が可能である。さらに具体的には、I型INF産生促進剤、INF-α産生促進剤、Th1 関連遺伝子発現促進剤等の有効成分としての利用が可能である。
【0076】
本発明の薬剤は、本発明の脂質粒子を含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではない。他の成分としては、薬理作用を有する成分のほか、添加剤も含まれる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0077】
なお、本発明の脂質粒子は、単独で、上記効果等を発揮し得る。そのため、本発明の薬剤は、これらの効果及び/又は作用を有する他の成分を含まなくとも、その所望の効果を発揮することができるが、薬理作用を有する他の成分が含有されていてもよい。
【0078】
本発明の脂質粒子は、他の抗がん剤と併用することができる。これにより、より向上した効果を発揮することも可能である。他の抗がん剤としては、特に制限されず、各種抗がん剤を用いることができる。抗がん剤としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、抗生物質抗がん剤、トポイソメラーゼ阻害剤、白金製剤、分子標的薬、ホルモン剤、生物製剤などが挙げられ、好ましくは代謝拮抗剤、抗生物質抗がん剤、白金製剤等が挙げられる。アルキル化剤としては、例えばシクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、プロカルバジン、ラニムスチンなどが挙げられる。代謝拮抗剤としては、例えば、エノシタビン、カルモフール、カペシタビン、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、ゲムシタビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、ネララビン、フルオロウラシル、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、メトトレキサート、クラドリビン、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、メルカプトプリンなどが挙げられる。微小管阻害剤としては、例えば、ビンクリスチンなどのアルカロイド系抗がん剤、ドセタキセル、パクリタキセルなどのタキサン系抗がん剤が挙げられる。抗生物質抗がん剤としては、例えば、マイトマイシンC、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、アクラルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ペプロマイシン、ミトキサントロン、アムルビシン、ジノスタチンスチマラマーなどが挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤としてはトポイソメラーゼI阻害作用を有するCPT-11、イリノテカン、ノギテカン、トポイソメラーゼII阻害作用をもつエトポシド、ソブゾキサンが挙げられる。白金製剤としては、例えば、シスプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンなどが挙げられる。ホルモン剤としては、例えば、デキサメタゾン、フィナステリド、タモキシフェン、アストロゾール、エキセメスタン、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、ゴセレリン、ビカルタミド、フルタミド、ブレドニゾロン、リュープロレリン、レトロゾール、エストラムスチン、トレミフェン、ホスフェストロール、ミトタン、メチルテストステロン、メドロキシプロゲステロン、メピチオスタンなどが挙げられる。生物製剤としては、例えば、インターフェロンα、βおよびγ、インターロイキン2、ウベニメクス、乾燥BCGなどが挙げられる。分子標的薬としては、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、テムシロリムス、ベバシズマブ、VEGF trap、スニチニブ、ソラフェニブ、トシツズマブ、ボルテゾミブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タミバロテン、トレチノインなどが挙げられる。ここに特定する分子標的薬以外にも、ヒト上皮性増殖因子受容体2阻害剤、上皮性増殖因子受容体阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、上皮性増殖因子チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、血管内皮増殖因子受容体2阻害剤(α-VEGFR-2抗体)などの血管新生を標的にした阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤などの各種チロシンキナーゼ阻害剤、サイトカインを標的とした阻害剤、プロテアソーム阻害剤、抗体-抗がん剤配合体などの分子標的薬なども含めることができる。これら阻害剤には抗体も含む。
【0079】
本発明の薬剤の使用態様は、特に制限されず、その種類に応じて適切な使用態様を採ることができる。本発明の薬剤は、その用途に応じて、例えばin vitroで使用する(例えば、培養細胞の培地に添加する。)こともできるし、in vivoで使用する(例えば、動物に投与する。)こともできる。
【0080】
本発明の薬剤の適用対象は特に限定されないが、哺乳動物では、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカ等が挙げられる。また、細胞としては、動物細胞等が挙げられる。細胞の種類も特に制限されず、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。
【0081】
本発明の薬剤を抗がん剤として用いる場合、及びがん細胞に用いる場合、対象がんとしては、特に制限されず、例えば肝細胞がん、すい臓がん、腎臓がん、白血病、食道がん、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、乳がん、子宮頚がん等が挙げられる。
【0082】
本発明の薬剤は、任意の剤形、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口製剤形態や、注射用製剤(例えば、点滴注射剤(例えば点滴静注用製剤等)、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等の非経口製剤形態を採ることができる。
【0083】
本発明の薬剤の投与経路としては、所望の効果が得られる限り特に制限されず、経口投与、経管栄養、注腸投与等の経腸投与; 経静脈投与、経動脈投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与等の非経口投与等が挙げられる。
【0084】
本発明の薬剤中の有効成分の含有量は、使用態様、適用対象、適用対象の状態等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
【0085】
本発明の薬剤を動物に投与する場合の投与量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1~1000 mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5~500 mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01~100 mg/kg体重、好ましくは0.05~50 mg/kg体重である。上記投与量は、年齢、病態、症状等により適宜増減することもできる。
【0086】
本発明の脂質粒子は、医薬及び試薬以外にも、例えば食品添加剤、食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、化粧品などの組成物(本明細書において、「本発明の組成物」と示すこともある。)の成分として、用いることができる。より具体的には、抗がん用、免疫賦活用のこれらの組成物として、用いることができる。さらに具体的には、I型INF産生促進剤、INF-α産生促進剤、Th1 関連遺伝子発現促進剤等の有効成分としての利用が可能である。
【0087】
本発明の組成物の形態は、特に限定されず、用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0088】
本発明の組成物の形態としては、用途が食品添加剤、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
【0089】
本発明の組成物の形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、乳製品(例えば、粉末状、液状、ゲル状、固形状等)、パン、菓子(例えば、クッキー等)などが挙げられる。
【0090】
本発明の組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、食品添加剤、食品組成物、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)、化粧品などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0091】
その他、本発明の組成物に関しては、本発明の薬剤と同様である。
【実施例
【0092】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の試験例で製造した脂質粒子の粒径は、マイクロサイズと言及するもの以外は、30~100 nmであった。
【0093】
試験例1. 核酸/カチオン脂質複合体のin vitro 評価
カチオン脂質(#41: DOTAP、#45: DOTMA、又は#47: DODAP)を含むAタイプCpGオリゴデオキシヌクレオチド(D35:配列番号1:G_G_TGCATCGATGCAGGGG_G_G(「_(アンダーライン)」は、その両側のヌクレオシド同士がホスホロチオエート結合していることを示す。アンダーラインを挟まないヌクレオシド同士はホスホジエステル結合である。)) 含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC(末梢血単核細胞)に対するIFN-α産生誘導を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0094】
脂質粒子を構成する脂質100質量%に対する各脂質の含有量は次の通りである:カチオン脂質(#41: DOTAP、#45: DOTMA、又は#47: DODAP) 50質量%、DPPC 19.5質量%、コレステロール 30質量%、DSPE-PEG(2k(PEG鎖長))-OMe 0.5質量%。脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の核酸中のリン原子の個数(D35)(P)に対する比(N/P)は3とした。D35を含有する水溶液と脂質を含有するエタノール溶液とをNanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて混合して脂質ナノ粒子を得て、5%Glucose水溶液で透析した。脂質ナノ粒子(D35換算で50ng、100ng、又は200ng)をヒトPBMC培養培地に加えて、24 時間培養した後、培養上清中のIFN-α量をELISA 法で定量した。
【0095】
結果を図1に示す。IFN-α産生促進能は、カチオン脂質としてDOTAPを用いた場合(#41)が最も高く、次いでDOTMAを用いた場合(#45)、DODAPを用いた場合(#47)の順に高かった。DODAPを用いた場合は、安定性が比較的低く、4℃ 保存3 ヶ月以内に白濁凝集を生じた。
【0096】
試験例2. N/P 比の検討
N/P比を変えたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0097】
脂質粒子を構成する脂質100質量%に対する各脂質の含有量は次の通りである:カチオン脂質(DOTAP) 50質量%、DPPC 19.5質量%、コレステロール 30質量%、DSPE-PEG(2k(PEG鎖長))-OMe 0.5質量%。脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の核酸中のリン原子の個数(D35)(P)に対する比(N/P)は#41: 3又は#42: 1とした。D35を含有する水溶液と脂質を含有するエタノール溶液とをNanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて混合して脂質ナノ粒子を得て、5%Glucose水溶液で透析した。脂質ナノ粒子(D35換算で50ng、100ng、又は200ng)をヒトPBMC培養培地に加えて、24 時間培養した後、培養上清中のIFN-α量をELISA 法で定量した。
【0098】
結果を図2に示す。IFN-α産生促進能は、N/P比が3の場合(#41)の場合の方が、N/P比が1の場合(#42)よりも高かった。また、N/P比が1の場合は、粒子径が比較的大きく、マイクロサイズであった。
【0099】
試験例3. pH 感受性脂質の有無、および透析溶液が及ぼす影響の検討
pH感受性脂質(DOPE)を添加して(又は添加せずに)透析溶液を変えて得られたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0100】
脂質粒子を構成する脂質100質量%に対する各脂質の含有量は次の通りである:カチオン脂質(DOTAP) 50質量%、DOPE又はDPPC 19.5質量%、コレステロール 30質量%、DSPE-PEG(2k(PEG鎖長))-OMe 0.5質量%。脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の核酸中のリン原子の個数(D35)(P)に対する比(N/P)は3とした。DOPE有無と透析溶液の組合せは次の通りである:#35: DOPE 不含有/PBS 透析、#36: DOPE 不含有/5%Glucose 透析、#38: DOPE 含有/5%Glucose 透析。D35を含有する水溶液と脂質を含有するエタノール溶液とをNanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて混合して脂質ナノ粒子を得て、5%Glucose水溶液又はPBSで透析した。脂質ナノ粒子(D35換算で50ng、100ng、又は200ng)をヒトPBMC培養培地に加えて、24 時間培養した後、培養上清中のIFN-α量をELISA 法で定量した。
【0101】
結果を図3に示す。図3より、透析溶液は5%Glucose水溶液が望ましいことが分かった。また、pH感受性脂質を含有しない場合の方が、IFN-α産生促進能が高かった。
【0102】
試験例4. DSPE-PEG-OMe の含有量またそのPEG 鎖長の検討
DSPE-PEG-OMe(N-(Methylpolyoxyethylene oxycarbonyl)-1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine) の含有量及びそのPEG 鎖長を変えて得られたD35含有脂質ナノ粒子のヒトPBMC に対するIFN-α産生誘導を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0103】
脂質粒子を構成する脂質100質量%に対する各脂質の含有量は次の通りである:カチオン脂質(DOTAP) 50質量%、DPPC (含有量は、DSPE-PEG-OMeとの合計が20質量%になるように調整)、コレステロール 30質量%、DSPE-PEG(2k又は5k(PEG鎖長))-OMe 0.0質量%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、又は6.0質量%。脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の核酸中のリン原子の個数(D35)(P)に対する比(N/P)は3とした。DSPE-PEG-OMe の含有量とPEG 鎖長の組合せは次の通りである:2kPEG 0.0質量%(048) 、2kPEG 0.5質量%(007)、2kPEG 1.0質量%(008)、2kPEG 3.0質量%(009)、2kPEG 6.0質量%(010)、5kPEG 0.5質量%(011)。D35を含有する水溶液と脂質を含有するエタノール溶液とをNanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて混合して脂質ナノ粒子を得て、5%Glucose水溶液又はPBSで透析した。脂質ナノ粒子をヒトPBMC培養培地又はBALB/c マウス脾臓細胞培養培地に、D35換算の培地終濃度が1μg/mL、0.5μg/mL、又は0.25μg/mLになるように加えて、24 時間培養した。ヒトPBMC培養培地については、培養上清中のIFN-α量をELISA 法で定量した。マウス脾臓細胞培養培地については、培養上清中のIFN-I量を、Murine Type I IFNsSensor Cells(B16-Blue IFN-α/β Cells)を用いた生物活性測定法で定量した。
【0104】
結果を図4に示す。2kPEG を含む場合は0.5%が最も安定して生物活性が高く、PEG 含有率を増やすに従い生物活性は低下した。3%以上のPEG 含有率では顕著に低下した。2kPEG0.5%(007)と5kPEG0.5%(011)の比較では、2kPEG0.5%が高い生物活性を示した。
【0105】
試験例5. TLR9依存性の解析
D35含有脂質ナノ粒子のTLR9依存性を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【0106】
脂質粒子を構成する脂質100質量%に対する各脂質の含有量は次の通りである: DOTAP 50質量%、DPPC 19.5質量%、コレステロール 30質量%、DSPE-PEG(2k(PEG鎖長))-OMe 0.5質量%又は3.0質量%。脂質粒子を構成する脂質中の窒素原子の個数(N)の核酸中のリン原子の個数(D35)(P)に対する比(N/P)は3とした。D35を含有する水溶液と脂質を含有するエタノール溶液とをNanoAssemblr(Precision NanoSystems社製)を用いて混合して脂質ナノ粒子を得て、5%Glucose水溶液で透析した。本試験例及び以下の試験例では、ここで得られたD35含有脂質ナノ粒子を使用した。
【0107】
WT、TLR7KO、及びTLR9KOマウスそれぞれから骨髄細胞を調製し、R848(TLR7/8 agonist; 培地終濃度1ug/mL)、D35(TLR9 agonist; 培地終濃度10uM=63.4ug/mL)、D35含有脂質ナノ粒子(D35換算の培地終濃度1μg/mL)で刺激し24 時間培養後の培養上清中のIFN-I およびIL-6 量をそれぞれMurine Type I IFNsSensor Cells(B16-Blue IFN-α/β Cells)を用いた生物活性測定法および通常のELISA 法で定量した。
【0108】
結果を図5に示す。R848 刺激によるIL-6 産生はTLR7KO で消失し、TLR9KO では消失しないのに対して、D35(TLR9 agonist)、D35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%及び3.0質量%)はTLR7KO では消失しないのに対してTLR9KO ではほぼ完全に消失した。IFN-I についても、R848 によるIFN-I産生は非常に弱いものの、同様の結果を示した。また、概ね脂質と複合化していないD35(10uM=63.4ug/mL)刺激と、D35含有脂質ナノ粒子(1ug/mL)刺激は、ほぼ同程度のIFN-I産生を示すが、IL-6 については、D35含有脂質ナノ粒子(1ug/mL) はD35(10uM=63.4ug/mL)の約4 分の1 程度であった。このことからは、脂質ナノ粒子化はIL-6 産生よりもIFN-I 産生をより促進することが示された。
【0109】
試験例6. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-1
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目に薬剤(D35、又はD35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%))を計5 回腫瘍内投与し、腫瘍サイズを測定した。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ4.5ug/shot となるように調整した。
【0110】
結果を図6に示す。D35含有脂質ナノ粒子で、17 日目、21 日目に有意な腫瘍サイズの低下を認めた。脂質複合体にしていないD35 投与では効果を認めなかった。
【0111】
試験例7. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-2(腫瘍内投与+depletion)
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目にD35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%)を計5 回腫瘍内投与し、腫瘍サイズを測定した。またCD8T 細胞をdeplete するためにanti-CD8a 抗体(100ug/shot)又はコントロール抗体(100ug/shot)を皮下移植後6日目及び13日目に腹腔内投与した。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ4.5ug/shot となるように調整した。
【0112】
結果を図7に示す。D35含有脂質ナノ粒子で、21 日目に有意な腫瘍サイズの低下を認めた。この低下は、CD8T細胞をdepleteすることで消失した。このことから、D35含有脂質ナノ粒子の抗がん効果はCD8T細胞に依存することが示唆された。
【0113】
試験例8. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-2(免疫関連遺伝子評価)
試験例7の腫瘍(皮下移植後12日目)の凍結切片からmRNAを調製し、各種免疫関連遺伝子発現をqPCR法で測定した。その結果、D35含有脂質ナノ粒子の腫瘍内投与によって、多くの免疫関連遺伝子発現が上昇し、その上昇はCD8T 細胞をdeplete することで消失した。またTh1 関連遺伝子(STAT4, T-bet,IFNg)に顕著な遺伝子発現誘導を認めたことから、D35含有脂質ナノ粒子の腫瘍内投与は、腫瘍内免疫環境をTh1 型にシフトさせることで腫瘍退縮効果を発揮することが示唆された。
【0114】
試験例9. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-3(静脈内投与)
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目に薬剤(D35、又はD35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%))を計5 回静脈内投与し、腫瘍サイズを測定した。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ25ug/shot となるように調整した。
【0115】
結果を図8に示す。D35含有脂質ナノ粒子で腫瘍サイズの顕著な低下を認めた。このことから、D35含有脂質ナノ粒子は静脈内投与でも抗がん作用を発揮できることが分かった。
【0116】
試験例10. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-3(免疫関連遺伝子評価)
試験例9の腫瘍(皮下移植後12日目)の凍結切片からmRNAを調製し、各種免疫関連遺伝子発現をqPCR法で測定した。その結果、腫瘍内の免疫の活性化を示唆するIfng, CXCL9 の発現増強を認めた。このことは静脈内投与でも腫瘍内投与時と同様の免疫的変化が腫瘍内で生じていることを示唆している。
【0117】
試験例11. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-4(腫瘍内投与+depletion)
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目にD35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%)を計5 回静脈内投与し、腫瘍サイズを測定した。またCD8T 細胞をdeplete するためにanti-CD8a 抗体(100ug/shot)又はコントロール抗体(100ug/shot)を皮下移植後6日目及び13日目に腹腔内投与した。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ25ug/shot となるように調整した。
【0118】
結果を図9に示す。D35含有脂質ナノ粒子で、21 日目に有意な腫瘍サイズの低下を認めた。この低下は、CD8T細胞をdepleteすることで消失した。このことから、D35含有脂質ナノ粒子の抗がん効果はCD8T細胞に依存することが示唆された。
【0119】
試験例12. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-5(腫瘍内投与+antiPD-1抗体)
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目に薬剤(D35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%)、antiPD-1抗体、又はこれらの組合せ)を計5 回投与し、腫瘍サイズを測定した。D35含有脂質ナノ粒子は腫瘍内投与とし、antiPD-1抗体は腹腔内投与とした。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ4.5ug/shot となるように調整した。
【0120】
結果を図10に示す。D35含有脂質ナノ粒子とantiPD-1抗体との組合せにより、それぞれ単独治療よりも、強い抗がん作用を示した。
【0121】
試験例13. MC38 マウス大腸癌由来腫瘍モデルでの検討-5(静脈内投与+antiPD-1抗体)
MC38(1x106cells)を皮下移植後9、11、13、15、17 日目に薬剤(D35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%)、antiPD-1抗体、又はこれらの組合せ)を計5 回投与し、腫瘍サイズを測定した。D35含有脂質ナノ粒子は静脈内投与とし、antiPD-1抗体は腹腔内投与とした。1回に投与するD35 核酸量はそれぞれ25ug/shot となるように調整した。
【0122】
結果を図11に示す。D35含有脂質ナノ粒子とantiPD-1抗体との組合せにより、それぞれ単独治療よりも、強い抗がん作用を示した。
【0123】
試験例14. 毒性評価
マウス(C57BL/6J)にD35、又はD35含有脂質ナノ粒子(DSPE-PEG-OMe含有量0.5質量%又は3.0質量%))を静脈内投与した。投与から1日後、血液を採取し、肝臓のパラフィン切片を作製した。血液中のALT及びASTレベルを測定キット(Transaminase CII-test Wako、富士フィルム和光純薬工業社製)で測定した。また、パラフィン切片をHE染色し、赤血球溶血の有無を判定した。
【0124】
その結果、D35含有脂質ナノ粒子投与した場合の血液中のALT及びASTレベルは、投与しない場合と同程度であった。また、赤血球溶血も認められなかった。
図1
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【配列表】
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