(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240716BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20240716BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20240716BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08F8/00
C08F20/06
C08F2/24
(21)【出願番号】P 2023514145
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2021019246
(87)【国際公開番号】W WO2022131836
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178432
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180292
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンキ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヒュク・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】クァンイン・シン
(72)【発明者】
【氏名】テビン・アン
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117541(WO,A1)
【文献】特開2004-261796(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0075196(KR,A)
【文献】国際公開第2020/101287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08F 8/00
C08F 20/06
C08F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);
疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成して高吸水性樹脂を製造する段階(段階4)を含み、
前記疎水性粒子水分散液は疎水性粒子が界面活性剤によって分散しているコロイド溶液であり、
前記疎水性粒子は炭素数7~24の脂肪酸の金属塩を含み、
前記高吸水性樹脂は下記1)および2)を満たす、
高吸水性樹脂の製造方法:
1)24.0℃での吸収速度(vortex time)が40秒以下;および
2)前記高吸水性樹脂1gを水道水2Lに浸漬させて1分間膨潤させたとき1分間前記高吸水性樹脂に吸収される水の重量で定義される1分水道水吸収能が90g以上。
【請求項2】
前記疎水性粒子はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムで構成される群より選ばれる1種以上のステアリン酸の金属塩である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性粒子は0.5μm~20μmの平均粒径を有する、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~0.5重量部で使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸塩系発泡剤は炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesium bicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:0.1~1:1の重量比で使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記段階2で、前記炭酸塩系発泡剤とともにアルキルスルフェート系化合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物で構成される群より選ばれる1種以上の気泡安定剤をさらに添加する、請求項1から7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記炭酸塩系発泡剤および前記気泡安定剤は1:0.01~1:0.5の重量比で使用される、請求項8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記表面架橋剤は前記内部架橋剤と同じものを使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は下記式1で計算される有効吸収能(EFFC)が23g/g以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[式1]
有効吸収能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸収能(AUP)}/2
前記式1において、
前記保水能(CRC)はEDANA法WSP 241.3の方法により測定した高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)を意味し、前記0.7psi加圧吸収能(AUP)はEDANA法WSP 242.3の方法により測定した高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸収能(AUP)を意味する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年12月18日付韓国特許出願第10-2020-0178432号および第10-2021-0180292号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は高吸水性樹脂の製造方法に関する。より具体的には、疎水性粒子水分散液の存在下で単量体の重合反応を行う場合、発生する二酸化炭素気泡を効果的に捕集することができ、吸収物性が低下することなく高い表面張力および向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂を製造できる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。前記のような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始めて、現在は園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は主におむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されている。前記衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に拡がった状態で含まれることが一般的である。ところで、最近では、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続けられており、その一環としてパルプの含有量が減少するか、延いてはパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少するか、パルプが使用されていない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い割合で含まれ、高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避的に多層で含まれる。このように多層で含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に多量の小便などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸収性能だけでなく、速い吸収速度を示す必要がある。
【0006】
このような吸収速度が向上した高吸水性樹脂の製造のために、重合段階で発泡剤を使用して気孔を生成することによって比表面積を増加させる方法が主に用いられる。特に、価格的な側面および入手容易性の側面から炭酸塩系発泡剤が通常使用され、このような炭酸塩系発泡剤の存在下で重合段階が行われる場合、二酸化炭素気泡が発生して架橋重合体内の比表面積が増加する。また、発生する二酸化炭素気泡が架橋重合体ネットワークの外に抜けていくことを最小化するために気泡安定剤が使用されるが、このような気泡安定剤の使用により高吸水性樹脂の諸般物性が低下する問題が発生した。
【0007】
そのため、高吸水性樹脂の基本的な吸収力および保水力を示す物性である保水能(CRC)と外部の圧力にも吸収された液体をよく保持する特性を示す加圧吸収能(AUP)を維持しながらも、速い吸収速度を示す高吸水性樹脂の開発が継続して要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、単量体の重合段階で疎水性粒子水分散液を添加して発泡剤によって発生する気泡を効果的に捕集することにより向上した吸収速度を示すことができる高吸水性樹脂の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、
酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);
疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成して高吸水性樹脂を製造する段階(段階4)を含み、
前記疎水性粒子水分散液は疎水性粒子が界面活性剤によって分散しているコロイド溶液であり、
前記疎水性粒子は炭素数7~24の脂肪酸の金属塩を含み、
前記高吸水性樹脂は下記1)および2)を満たす、
高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
1)24.0℃での吸収速度(vortex time)が40秒以下;および
2)前記高吸水性樹脂1gを水道水2Lに浸漬させて1分間膨潤させたとき1分間前記高吸水性樹脂に吸収される水の重量で定義される1分水道水吸収能が90g以上。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で単量体を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する場合、生成される二酸化炭素を効果的に捕集することができ、高吸水性樹脂の比表面積を増加させることができ、そのため、生成される高吸水性樹脂の吸収速度が速くなることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例6の高吸水性樹脂に対するFE-SEMイメージである。
【
図2】比較例2の高吸水性樹脂に対するFE-SEMイメージである。
【
図3】比較例3の高吸水性樹脂に対するFE-SEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0013】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0014】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0015】
本発明の明細書に使用される用語の「重合体」、または「高分子」は水溶性エチレン系不飽和単量体であるアクリル酸系単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体中の、重合後乾燥前状態のものとして含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体といい、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体という。
【0016】
また、用語の「高吸水性樹脂粒子」は酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合されて内部架橋剤によって架橋した架橋重合体を含む粒子状の物質を指す。
【0017】
また、用語の「高吸水性樹脂」は文脈によって酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。したがって、用語の「高吸水性樹脂」は、すなわち、複数の高吸水性樹脂粒子を含むと解釈されることができる。
【0018】
速い吸収速度を有する高吸水性樹脂を製造するためには高吸水性樹脂粒子内の比表面積が増加しなければならない。このような高吸水性樹脂粒子の比表面積を増加させるための方法として通常発泡剤が使用され、このような発泡剤によって生成される気泡が比表面積増加に寄与するためには気泡が発生するとすぐに架橋重合体の外部に抜けていかないように重合体の内部に捕集されなければならない。このために通常発泡剤と気泡安定剤がともに投入されるが、気泡安定剤として主に使用されるアニオン性界面活性剤は気泡を効果的に捕集するためには発泡剤を過量使用しなければならなかった。しかし、このようなアニオン性界面活性剤を過量使用すると、高吸水性樹脂の表面張力が低下し、高吸水性樹脂内の気孔が均一でかつ等しく形成されることができず、製造および移送中に微粉が多量発生するという問題があった。
【0019】
そこで、本発明者らは通常使用されるアニオン性界面活性剤のような気泡安定剤の他に疎水性粒子が含まれている水分散液を気泡安定剤として使用して高吸水性樹脂を製造する場合、発泡剤によって気泡が生成されるときにシード(seed)の役割をして気泡を効果的に生成および捕集して大きさが小さくて均一な形態の気泡を架橋重合体全領域に均一に分布させ得ることを確認して本発明を完成した。
【0020】
特に、前記高吸水性樹脂の製造方法では、疎水性粒子を粉末形態で使用せず、水分散液に分散している形態で単量体組成物に投入することにその特徴がある。言い換えると、前記疎水性粒子は「疎水性粒子水分散液」の形態で、すなわち、疎水性粒子が界面活性剤によって沈殿したり凝集せず安定して分散しているコロイド溶液の形態で単量体組成物に投入される。これは疎水性粒子を粉末形態で単量体組成物に投入して重合工程を行う場合、水溶液形態である単量体組成物に疎水性粒子が分散せずに凝集して発泡剤によって発生する気泡を効果的に安定化させることができないからである。
【0021】
また、前記疎水性粒子は前記水分散液内で界面活性剤によって粒子間の凝縮なしに安定するように分散する。具体的には、前記界面活性剤は前記疎水性粒子の表面に電気二重層(electric double layer)を形成して粒子間の静電気的な反発力(electrostatic repulsive force)を誘導して前記疎水性粒子を安定化させることもでき、または前記疎水性粒子の表面に吸着して粒子間の立体反発力(steric repulsive force)を誘導して粒子が互いに凝集することを防止することもできる。したがって、前記疎水性粒子水分散液に界面活性剤が含まれていない場合、前記疎水性粒子が互いに凝集するか、または重力により沈む現象が引き起こされて疎水性粒子の分散安定化がなされない。そのため、重合段階で界面活性剤を含まない疎水性粒子水分散液を発泡剤とともに使用しても気泡を効果的に捕集することができず高吸水性樹脂内に均一な大きさの気孔形成が不可能であるので、高吸水性樹脂の吸収速度が改善されにくいという問題がある。
【0022】
さらに、前記高吸水性樹脂の製造時にエポキシ系化合物を内部架橋剤として使用する場合、アクリレート系化合物を内部架橋剤として使用した場合に比べてゲル化時間(Gelation time)が遅く、架橋構造が形成される前に発泡剤によって生成された気泡が気体で飛び気体を効果的に捕集できない問題があった。そのため、エポキシ系化合物を内部架橋剤として使用して製造した高吸水性樹脂の比表面積の増加のためには過量の発泡剤を使用しなければならなかった。しかし、前記疎水性粒子水分散液を発泡剤とともに使用する場合、少量の発泡剤のみを使用しても疎水性粒子がシード(seed)の役割をして気泡を効果的に生成および捕集するので、過量の発泡剤を使用しなくとも所望の気孔構造の形成が可能である。
【0023】
そのため、一実施形態により製造された高吸水性樹脂は、後述する測定方法で測定した1分水道水吸収能が90g/g以上で吸収性能に優れ、同時に24.0℃での吸収速度(vortex time)が40秒以下であり得る。
【0024】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法について各段階別により詳細に説明する。
【0025】
(段階1)
一実施形態による製造方法で、段階1は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階である。
【0026】
前記アクリル酸系単量体は下記化学式1で表される化合物である:
【0027】
[化学式1]
R1-COOM1
【0028】
前記化学式1において、
R1は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M1は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0029】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体はアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0030】
ここで、前記アクリル酸系単量体は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。この時、前記アクリル酸系単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性によって調節されることができる。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示し得る。
【0031】
前記アクリル酸系単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にすることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に濃度が過度に高くなると単量体の一部が析出されるか重合された含水ゲル重合体の粉砕時の粉砕効率が低く現れるなど工程上問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0032】
また、本明細書で使用する用語の「内部架橋剤」は後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別するために使用する用語であって、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割をする。前記段階での架橋は表面または内部を区別せずに行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋した構造で形成されており、内部は前記内部架橋剤によって架橋した構造からなっている。
【0033】
前記内部架橋剤としては前記アクリル酸系不飽和単量体の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであれば、いかなる化合物を使用してもよい。具体的には、前記内部架橋剤としては前記アクリル酸系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有し、かつエチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0034】
非制限的な例として、前記内部架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートなどのアクリレート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどのエポキシ系化合物;トリアリールアミン;プロピレングリコール;グリセリン;またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独で使用または2以上を併用することができるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
一実施形態によれば、前記内部架橋剤としては前記エポキシ系化合物を使用することができる。例えば、前記内部架橋剤としては2価以上の多価エポキシ化合物、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルを使用できるが、この場合にも疎水性粒子によって発泡剤による発泡が安定的に行われることができる。
【0036】
前記単量体組成物で、このような内部架橋剤は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~5重量部で使用することができる。例えば、前記内部架橋剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部、または0.15重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.7重量部以下で使用することができる。前記内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が難しく、前記内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなり所望の保水能の実現が難しい。
【0037】
また、前記単量体組成物は前記単量体の重合反応を開始するための重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては高吸水性樹脂の製造に一般的に使用されるものであれば、特に限定されない。
【0038】
具体的には、前記重合開始剤は重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0039】
前記光重合開始剤は紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用することができる。
【0040】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p.115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0041】
前記光重合開始剤は前記単量体組成物に対して約0.01~約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0042】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」,p.203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0043】
前記熱重合開始剤は前記単量体組成物について約0.001~約0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず熱重合開始剤の追加による効果がわずかであり、熱重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0044】
このような重合開始剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して2重量部以下で使用することができる。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存する単量体が多量抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0045】
前記単量体組成物は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0046】
そして、前記単量体を含む単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であり得、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、すなわち単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は重合時間および反応条件などを考慮して適宜調節することができる。例えば、前記単量体組成物内の固形分含有量は10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であり得る。
【0047】
前記単量体組成物が前記のような範囲の固形分含有量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応に現れるゲル効果現象を用いて重合後に未反応単量体を除去する必要が無いようにしながらも、後述する重合体の粉砕時の粉砕効率の調節に有利である。
【0048】
この時使用できる溶媒は上述した成分を溶解できれば、その構成の限定なく使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどより選ばれた1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
(段階2)
次に、疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階が行われる。前記段階で炭酸塩系発泡剤から二酸化炭素気泡が発生し、このような気泡を水分散された疎水性粒子が効果的に捕集して製造された含水ゲル重合体の比表面積が増加することができる。
【0050】
前記疎水性粒子は炭素数7~24の脂肪酸の金属塩を含む。ここで、炭素数7~24の脂肪酸の金属塩とは、分子内の炭素数が7~24個であり、線状構造を有する不飽和または飽和脂肪酸末端のカルボキシル基の水素イオンの代わりに金属陽イオンが結合された化合物を指すものであり、この時、金属塩は1価金属塩または2価以上の多価金属塩であり得る。この時、前記疎水性粒子が炭素数7未満の脂肪酸の金属塩である場合、水溶液状態でイオン化されて発生する気泡を捕集できず、前記疎水性粒子が炭素数24超過の脂肪酸の金属塩である場合、脂肪酸の鎖が長くなって分散が難しい。
【0051】
具体的には、前記脂肪酸の金属塩が1価金属塩である場合は、1価の金属陽イオンであるアルカリイオンに1個の脂肪酸カルボキシレート陰イオンが結合されている構造を有する。また、前記脂肪酸の金属塩が2価以上の多価金属塩である場合は、金属陽イオンに金属陽イオンの原子価(valance)個数の脂肪酸カルボキシレート陰イオンが結合された構造を有する。
【0052】
一実施形態で、前記疎水性粒子は炭素数12~20の飽和脂肪酸の金属塩であり得る。例えば、前記疎水性粒子は分子内の炭素数12個を含むラウリン酸の金属塩;分子内の炭素数13個を含むトリデシル酸の金属塩;分子内の炭素数14個を含むミリスチン酸の金属塩;分子内の炭素数15個を含むペンタデカン酸の金属塩;分子内の炭素数16個を含むパルミチン酸の金属塩;分子内の炭素数17個を含むマルガリン酸の金属塩;分子内の炭素数18個を含むステアリン酸の金属塩;分子内の炭素数19個を含むノナデシル酸の金属塩;および分子内の炭素数20個を含むアラキジン酸の金属塩で構成される群より選ばれる1種以上の飽和脂肪酸の金属塩であり得る。
【0053】
好ましくは、前記疎水性粒子はステアリン酸の金属塩であり得るが、例えば、前記疎水性粒子はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムで構成される群より選ばれる1種以上のステアリン酸の金属塩であり得る。
【0054】
また、前記水分散液内に分散している疎水性粒子は前述したように、0.5μm~20μmの平均粒径を有することができる。前記疎水性粒子が0.5μm未満の平均粒径を有する場合、発生する気泡を効果的に捕集しにくくて均一な気孔が作られないという問題があり、前記疎水性粒子が20μm超過の平均粒径を有する場合、作られる気孔の大きさが過度に大きくなって高吸水性樹脂の吸収速度を向上させることが難しい。具体的には、例えば、前記疎水性粒子は平均粒径(μm)が0.5以上、1以上、2以上、または3以上であり、かつ20以下、15以下または10以下であり得る。
【0055】
ここで、前記疎水性粒子の平均粒径はD50を意味し、前記「粒径Dn」は、粒径による粒子個数累積分布のn%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は粒径による粒子個数累積分布の50%地点での粒径であり、D90は粒径による粒子個数累積分布の90%地点での粒径を、D10は粒径による粒子個数累積分布の10%地点での粒径である。前記Dnはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えばMicrotrac S3500)に導入して粒子がレーザビームを通過する時の粒子の大きさによる回折パターン差異を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数累積分布の10%、50%および90%になる地点での粒子直径を算出することによって、D10、D50およびD90を測定することができる。
【0056】
また、前記疎水性粒子は前記水分散液内に前記水分散液総重量を基準として10~70重量%で含まれている。前記疎水性水分散液内に前記疎水性粒子の含有量が過度に低いか、過度に高い場合は、疎水性粒子が分散安定化(dispersion stabilization)できず、粒子相互間に互いに凝集するかあるいは重力によって沈降する問題が発生し得る。
【0057】
また、前記疎水性粒子水分散液で疎水性粒子を分散させる役割をする界面活性剤としては前記疎水性粒子の分散を安定化させることができると当該技術分野に知られている界面活性剤を制限なく使用することができる。例えば、前記界面活性剤としてカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤で構成される群より選ばれる1種以上の界面活性剤を使用することができる。好ましくは、前記疎水性粒子の分散安定化の側面から2種以上の界面活性剤を使用することができる。より具体的には、前記疎水性粒子の形態、例えば、飽和脂肪酸の金属塩形態などを考慮して、このような疎水性粒子をより効果的に水分散させるために、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤、例えば、炭素数10以上の長鎖炭化水素が結合された非イオン性界面活性剤および硫酸塩系アニオン性界面活性剤を共に使用することができる。
【0058】
一例として、前記カチオン性界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩などが挙げられ、前記アニオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウムまたはラウレス硫酸ナトリウムなどの長鎖炭化水素またはその塩含有官能基を有する硫酸塩などが挙げられ、前記両性界面活性剤としてはアルキルスルホベタイン、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられ、前記非イオン性界面活性剤としてはポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリソルベート、脂肪酸ソルビタンエステル、またはグリセリンモノステアレートなどの脂肪酸エステル、アルキルモノグリセリルエーテル、アルカノールアミド、アルキルポリグルコシドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
そして、前記疎水性粒子水分散液はpHが7以上であり得る。前記疎水性粒子水分散液のpHが7未満の場合は酸性を示すので、脂肪酸の金属塩である疎水性粒子を安定化させることが難しいため適しない。
【0060】
一方、前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01~0.5重量部で使用することができる。前記疎水性粒子の含有量が過度に低い場合、気泡安定効果が充分でなく吸収速度が遅くなり、前記疎水性粒子の含有量が過度に高い場合、疎水性粒子水分散液内に疎水性粒子を安定させるために使用された界面活性剤の量が増加して表面張力が低下する恐れがある。例えば、前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.01以上、0.03以上、0.05以上、または0.08以上であり、かつ0.5重量部以下、0.4重量部以下、0.3重量部以下、または0.2重量部以下で使用することができる。
【0061】
また、前記炭酸塩系発泡剤は重合時に発泡が起こり含水ゲル重合体内の気孔を形成して表面積を増やす役割をし、一例として炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesiumbicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)で構成される群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0062】
前記炭酸塩系発泡剤は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.005~1重量部で使用することができる。前記発泡剤の含有量が0.005重量部未満の場合は発泡剤としての役割がわずかであり、前記発泡剤の含有量が1重量部を超える場合は架橋重合体内の気孔が過度に多くて製造される高吸水性樹脂のゲル強度が落ち、密度が小さくなって流通と保管に問題を招く。
【0063】
また、このような炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:0.1~1:1の重量比で使用することができる。前記疎水性粒子水分散液が前記炭酸塩系発泡剤に比べて過度に低い含有量で使用される場合、発生する気泡を効果的に捕集することが難しく、発泡剤に比べて過度に高い含有量で使用される場合、保水能および吸収速度などの諸般物性が低下し得る。例えば、前記疎水性粒子は前記炭酸塩系発泡剤の重量に対して0.2倍以上、0.3倍以上、0.5倍以上であり、かつ0.9倍以下、または0.8倍以下の重量比で使用することができる。
【0064】
また、前記段階2で前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子水分散液と共に通常気泡安定剤として使用される界面活性剤をさらに添加することができる。この時、使用可能な界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate)、またはミレス硫酸ナトリウム(sodium myreth sulfate)などのアルキルスルフェート系化合物などのアニオン性界面活性剤;またはポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのアルキルエーテルスルフェート系化合物などの非イオン性界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
より具体的には、前記段階2で、カプセル化された発泡剤および前記疎水性粒子水分散液と共にアルキルスルフェート系化合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物で構成される群より選ばれる1種以上の気泡安定剤をさらに添加することができる。前記気泡安定剤を追加で投入する場合、カプセル化された発泡剤および前記疎水性粒子水分散液の分散性を向上させて気泡の発生および捕集が均一に起こり、製造される高吸水性樹脂の吸収速度がより速くなる。
【0066】
この時、前記炭酸塩系発泡剤および前記気泡安定剤は1:0.01~1:0.5の重量比で使用することができる。ただし、前記気泡安定剤が過度に多く使用される場合、高吸水性樹脂の表面張力が低下し得るので適しない。例えば、前記気泡安定剤は前記炭酸塩系発泡剤の重量に対して0.02倍以上、0.04倍以上、0.06倍以上であり、かつ0.4倍以下、0.35倍以下、または0.3倍以下の重量比で使用することができる。
【0067】
一方、このような疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下での単量体組成物の重合は、通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0068】
具体的には、重合方法は重合エネルギ源によって大きく熱重合および光重合に分かれ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われるが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0069】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合をして得られた含水ゲル重合体は反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器の排出口に排出される含水ゲル重合体は数センチメートルないし数ミリメートル形態であり得る。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様に現れるが、通常重量平均粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られることができる。
【0070】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度の単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合は、過度に厚い厚さによって重合反応が全厚さにわたって均一に起こらない。
【0071】
この時、このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は約40~約80重量%であり得る。なお、本明細書全体における「含水率」は、全体重合体重量に対して占める水分の含有量であり、重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含む20分に設定して含水率を測定する。
【0072】
(段階3)
次に、前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階が行われる。必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0073】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0074】
この時、粉砕段階は前記重合体の粒径が約2~約10mmになるように粉砕することができる。
【0075】
粒径を2mm未満に粉砕するのは前記含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果はわずかである。
【0076】
上記のように粉砕されるか、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面のみ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは前記乾燥は約150~約200℃の温度で、より好ましくは約160~約180℃の温度で行われることができる。
【0077】
一方、乾燥時間は工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0078】
前記乾燥段階の乾燥方法は含水ゲル重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は約5~約10重量%であり得る。
【0079】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0080】
粉砕段階後に得られる重合体粉末であるベース樹脂は粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0081】
そして、このような粉砕段階の後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られるベース樹脂を粒径によって分級する。好ましくは粒径が約150~約850μmである重合体を分級し、このような粒径を有するベース樹脂に対してのみ表面架橋反応段階を経ることができる。
【0082】
(段階4)
次に、表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階が行われる。前記段階により、前記ベース樹脂の表面に、より具体的にはベース樹脂粒子それぞれの表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂が製造される。
【0083】
表面架橋は粒子内部の架橋結合密度と関連して高吸水性高分子粒子の表面近くの架橋結合密度を増加させる段階である。一般に、表面架橋剤は高吸水性樹脂粒子の表面に塗布される。したがって,この反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を及ぼさず、かつ粒子の表面上での架橋結合性は改善される。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂粒子は内部でより表面付近でより高い架橋結合度を有する。
【0084】
前記表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用することができる。例えば、前記表面架橋剤はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選ばれた1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選ばれた1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。
【0085】
一実施形態によれば、前記表面架橋剤は前記内部架橋剤と同じものを使用することができる。例えば、前記表面架橋剤は2価以上の多価エポキシ化合物、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含むことができる。または前記表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルのみを単独で使用することができる。前記エチレングリコールジグリシジルエーテルは、水溶性が高くて二つのエポキシ基を有しており、比較的低い温度でも簡単に表面反応が行われることができる。
【0086】
前記表面架橋剤の含有量は具体的に追加される表面架橋剤の種類や反応条件によって適宜選択できるが、ベース樹脂100重量部に対して、約0.001~約5重量部、好ましくは約0.01~約3重量部、より好ましくは約0.05~約2重量部を使用することができる。表面架橋剤の含有量が過度に少ないと、表面架橋反応がほとんど起こらず、ベース樹脂100重量部に対して、5重量部を超える場合、過度な表面架橋反応の進行により保水能などの吸収特性低下が現れ得る。
【0087】
前記表面架橋剤をベース樹脂に混合する方法についてはその構成の限定はない。表面架橋剤とベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転するミキサーにベース樹脂と表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0088】
前記表面架橋剤の添加時、水を共に混合して表面架橋溶液の形態で添加することができる。水を添加する場合、表面架橋剤が重合体に均一に分散できる利点がある。この時、追加される水の含有量は表面架橋剤の均一な分散を誘導して重合体粉末の固まる現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化するための目的で、前記ベース樹脂100重量部に対して、約1~約10重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、水に加えてプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートを溶媒として含む。また、メタノールなどのアルコール系溶媒を含まない。
【0090】
前記プロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートは表面架橋反応に参加せず溶媒の役割をする。そのため、表面架橋液がベース樹脂にゆっくり吸収されて塗布が均一になる効果を達成することができる。通常表面架橋溶液の溶媒として使用されるメタノールなどのアルコール系溶媒の場合、良くない臭いを誘発する短所がある。しかし、本発明の一実施形態によれば、表面架橋溶液の溶媒としてプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートを含み、アルコール系溶媒を排除することによって特有の臭いなしで前記のような効果を達成することができる。
【0091】
また、アルコール系溶媒の代わりにプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートを溶媒として含む場合、保水能と加圧吸収能がいずれも高い水準で維持されて再湿潤現象も改善できることを確認した。
【0092】
この時、追加されるプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートの含有量は表面架橋剤の均一な分散を誘導して重合体粉末の固まる現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透の深さを最適化するための目的で、前記ベース樹脂100重量部に対して、約0.1重量部以上、または約0.2重量部以上、または約0.3重量部以上であり、かつ、約5重量部以下、または約4重量部以下、または約3重量部以下で添加されることが好ましい。
【0093】
前記表面架橋剤および溶媒を含む表面架橋溶液が添加されたベース樹脂を約100~約150℃、好ましくは約110~約140℃の温度で約15~約80分、好ましくは約20~約70分間加熱させることによって表面架橋結合反応が行われる。架橋反応温度が100℃未満の場合、表面架橋反応が十分に起こらず、150℃を超える場合、溶媒として含まれたプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートが表面架橋反応に参加してこれらの化合物による付加的な表面架橋反応が行われることができる。このようにプロピレングリコールまたはプロピレンカーボネートによる表面架橋反応が行われる場合、表面架橋密度が高くなって吸収能が顕著に低下し得る。
【0094】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用できるが、本発明はこれに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に本発明が限定されるものではない。
【0095】
上記のように前記ベース樹脂の表面に表面架橋層を形成した後に、追加的に無機物をさらに混合することができる。
【0096】
前記無機物は例えば、シリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、およびチタニアからなる群より選ばれた1種以上を使用することができ、好ましくはシリカを使用することができる。
【0097】
このような無機物は前記高吸水性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ、5重量部以下、または3重量部以下、または1重量部以下の含有量で使用することができる。
【0098】
一方、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、表面架橋反応段階後に得られる高吸水性樹脂を粒径によって分級する段階を追加でさらに行うことができる。好ましくは粒径が約150~約850μmの重合体を分級し、このような粒径を有する高吸水性樹脂のみ最終製品にすることができる。
【0099】
前記のような製造方法によって得られた高吸水性樹脂は、吸収速度および吸収物性がバランスをなして、下記物性を満たすことができる。
【0100】
1)24.0℃での吸収速度(vortex time)が40秒以下;および
2)前記高吸水性樹脂1gを水道水2Lに浸漬させて1分間膨潤させたとき1分間前記高吸水性樹脂に吸収される水の重量で定義される1分水道水吸収能が90g以上。
3)EDANA法WSP 241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が30~35g/g;
4)EDANA法WSP 242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が15~22g/g;および
5)下記式1で計算される有効吸収能(EFFC)が23g/g以上:
[式1]
有効吸収能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸収能(AUP)}/2
前記式1において、
前記保水能(CRC)はEDANA法WSP 241.3の方法により測定した高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)を意味し、
前記0.7psi加圧吸収能(AUP)はEDANA法WSP 242.3の方法により測定した高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸収能(AUP)を意味する。
【0101】
より具体的には、前記製造方法によって製造される高吸水性樹脂は24.0℃での吸収速度(vortex time)が40秒以下、38秒以下、37秒以下、36秒以下、または35秒以下であり得る。また、前記吸収速度はその値が小さいほど優れ、前記吸収速度の下限は理論上0秒であるが、一例として10秒以上、または20秒以上、25秒以上、または30秒以上であり得る。この時、前記高吸水性樹脂の吸収速度を測定する方法は後述する実施例でより具体的に説明する。
【0102】
また、前記高吸水性樹脂は前記高吸水性樹脂1gを水道水2Lに浸漬させて1分間膨潤させたとき1分間前記高吸水性樹脂に吸収される水の重量で定義される1分水道水吸収能が90g以上、95g以上、または100g以上であり、かつ140g以下、135g以下、または130g以下であり得る。
【0103】
さらに、前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP 241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が30g/g以上、または31g/g以上であり、かつ35g/g以下、または33g/g以下であり得る。
【0104】
また、前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP 242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が15g/g以上、18g/g以上、または19g/g以上であり、かつ22g/g以下、または20g/g以下であり得る。
【0105】
また、前記高吸水性樹脂は前記式1で計算される有効吸収能(EFFC)が23g/g以上、24g/g以上、または25g/g以上であり、かつ28.5g/g以下、27g/g以下、または26g/g以下であり得る。
【0106】
本発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0107】
<製造例>
以下の実施例で使用された疎水性粒子水分散液は下記のような方法で製造された。
【0108】
製造例1:ステアリン酸カルシウム水分散液Ca-stの製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤と、硫酸塩系アニオン性界面活性剤を含む)が含有された水50gを入れて165℃まで昇温させた後ステアリン酸カルシウム粉末50gを投入した。次に、ステアリン酸カルシウムが十分に粉砕されるように常圧で4000rpmで30分間攪拌して、平均粒径が5μmであるステアリン酸カルシウムが50重量%分散した水分散液Ca-stを得た。この時、前記水分散液のpHは9.5であった。また、前記Ca-stの製造後、その平均粒径(D50)はレーザ回折粒度測定装置(Microtrac S3500)を用いて、粒子個数累積分布の50%地点の粒径で測定/算出した。
【0109】
製造例2:ステアリン酸亜鉛水分散液Zn-stの製造
先に、高剪断ミキサー(high shear mixer)に2種以上の界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤と、硫酸塩系アニオン性界面活性剤を含む)が含有された水70gを入れて140℃まで昇温させた後ステアリン酸亜鉛粉末30gを投入した。次に、ステアリン酸亜鉛が十分に粉砕されるように常圧で4000rpmで30分間攪拌して、平均粒径が1μmであるステアリン酸亜鉛が30重量%分散した水分散液Zn-stを得た。この時、前記水分散液のpHは9.5であり、Zn-stの平均粒径は製造例1と同様の方法で測定/算出した。
【0110】
<実施例>
実施例1
(段階1)攪拌機、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸100g、内部架橋剤であるPEGDA400(ポリエチレングリコールジアクリレート400)0.001g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EJ1030s)0.20g、光開始剤であるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(I-819)0.008gおよび熱開始剤である過硫酸ナトリウム0.15gを添加して溶解させた後、22%水酸化ナトリウム溶液188gを添加して単量体組成物を製造した(中和度:75モル%;固形分含有量:41重量%)。
【0111】
(段階2)前記単量体組成物にステアリン酸カルシウムがアクリル酸100gに対して0.09g添加されるように前記製造例1で製造したステアリン酸カルシウム水分散液Ca-st 0.18gを添加し、また、炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウム(SBC)0.12gを添加した。その後、前記単量体組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cm2の強度を有する紫外線を照射して60秒間重合反応を行い、含水率が55重量%であるシート状の含水ゲル重合体を得た。
【0112】
(段階3)の次にシート状の含水ゲル重合体を約5cm×5cmの大きさに切った後、ミートチョッパー(meat chopper)に投入して重合体を粉砕して1mm~10mm大きさを有する含水ゲル粒子粉(crumb)を得た。その後、前記粉(crumb)を上下に風量転移が可能なオーブンで乾燥させた。185℃以上のホットエア(hot air)を15分間下方から上方に、再び15分間上方から下方に流れるようにして均一に乾燥させ、乾燥後の乾燥体の含水量は2%以下になるようにした。乾燥後、粉砕機で粉砕した後に分級して150~850μmの大きさを選別してベース樹脂を準備した。
【0113】
(段階4)前記ベース樹脂100gに対して水4g、プロピレングリコール1.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(Ethylene Glycol Diglycidyl Ether)0.08g、ポリカルボン酸系共重合体(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートおよびメタクリル酸の共重合体、Mw=40,000)0.05gを混合した表面架橋溶液を製造した。前記得られたベース樹脂粉末100gに、前記表面架橋溶液を噴射して混合し、これを攪拌機と二重ジャケットからなる容器に入れて140℃で35分間表面架橋反応を行った。その後、表面処理された粉末をASTM規格の標準網ふるいで分級して150~850μmの粒子の大きさを有する高吸水性樹脂粉末を得た。その後得られた樹脂粉末100gに対してヒュームドシリカ(AEROSIL 200)0.1gを追加混合した。
【0114】
実施例2
実施例1の段階2で、単量体組成物に疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウムとともに気泡安定剤である28%のドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate;SDS)水溶液(ELOTANTETM SL130 LG生活健康社製)0.03g(SDS0.0084g)をさらに投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0115】
実施例3
実施例1の段階2で、単量体組成物に疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウムとともに気泡安定剤である28%のドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate;SDS)水溶液(ELOTANTETM SL130 LG生活健康社製)0.05g(SDS 0.014g)をさらに投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0116】
実施例4
実施例1の段階2で、単量体組成物に疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウムとともに気泡安定剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(LE-6,ハンノンファソン社製)0.01gをさらに投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0117】
実施例5
実施例1の段階2で、単量体組成物に疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウムとともに気泡安定剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(LE-6,ハンノンファソン社製)0.03gをさらに投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0118】
実施例6
実施例1の段階2で、疎水性粒子水分散液としてCa-stの代わりにステアリン酸亜鉛がアクリル酸100gに対して0.09g添加されるように前記製造例2で製造したステアリン酸亜鉛水分散液Zn-st 0.3gを使用して、疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤炭酸水素ナトリウムとともに気泡安定剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(LE-6,ハンノンファソン社製)0.03gをさらに投入したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0119】
比較例1
実施例2で疎水性粒子水分散液を使用しなかったことを除いては、実施例2と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0120】
比較例2
実施例3で疎水性粒子水分散液を使用しなかったことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0121】
比較例3
実施例5で疎水性粒子水分散液を使用しなかったことを除いては、実施例5と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0122】
比較例4
実施例1で疎水性粒子水分散液形態のCa-stの代わりに、粉末形態の平均粒径5μmを有するステアリン酸カルシウム(Duksan科学社製)をアクリル酸100gに対して0.09g使用したことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。ただし、粉末形態のステアリン酸カルシウムは単量体組成物に分散できず凝集したまま中和液上に浮いていて、均一な気孔構造が分布した高吸水性樹脂が製造されなかった。
【0123】
実験例1:高吸水性樹脂のイメージ観察
前記実施例6、比較例2および比較例3で製造した高吸水性樹脂粒子の外部表面イメージをVersatile Benchtop SEM(JCM-6000,JEOL社製)機器を用いて高吸水性樹脂粒子の外部表面イメージをx24倍率で撮影し、撮影したイメージをそれぞれ
図1、
図2および
図3に示した。
【0124】
図1~
図3を参照すると、重合時に発泡剤とともに疎水性粒子水分散液を使用して製造した実施例6の高吸水性樹脂はこのような疎水性粒子水分散液を使用せずに製造した比較例2および3の高吸水性樹脂とは異なり、均一なサイズの気孔が深くて均一に形成されていることを確認することができる。
【0125】
実験例2:高吸水性樹脂の物性測定
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂について、次のような方法で物性を評価して下記表1に示した。特記しない限り、下記物性評価はすべての過程を恒温恒湿室(23±0.5℃、相対湿度45±0.5%)で行い、測定誤差を防止するために3回測定平均値を測定データとした。また、下記物性評価で使用した生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0126】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3により測定した。
【0127】
具体的には、高吸水性樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を用いず同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0128】
[数式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0129】
(2)加圧吸収能(AUP:Absorbtion Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸収能を、EDANA法WSP 242.3により測定した。
【0130】
具体的には、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400 mesh金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W0(g)(0.90g)を均一に散布し、その上に0.3psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径60mmより若干小さくて円筒の内壁との間隙がなく上下動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0131】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間の間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W4(g)を測定した。
【0132】
得られた各質量を用いて次の式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0133】
[数式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
【0134】
(3)吸収速度(Vortex time)
前記実施例および比較例の高吸水性樹脂の吸収速度(vortex time)を下記のような方法で測定した。
【0135】
(i)先に、平底の100mLのビーカーに100mLのメスシリンダー(Mass Cylinder)を用いて50mLの0.9%塩水を入れた。
(ii)次に、前記ビーカーがマグネチック攪拌機の中央にくるように置いた後、前記ビーカーの中にマグネチックバー(直径8mm、長さ30mm)を入れた。
(iii)その後、前記マグネチックバーが600rpmで攪拌するように攪拌機を作動させて、攪拌によってできた渦流(vortex)の最下部分が前記マグネチックバーの上に当たるようにした。
(iv)ビーカー内の塩水の温度が24.0℃になったことを確認した後2±0.01gの高吸水性樹脂試料を投入しながら同時にストップウォッチを作動させて、渦流が消えて液表面が完全水平になるまでの時間を秒単位で測定し、これを吸収速度とした。
【0136】
(4)1分水道水吸収能
実施例および比較例の高吸水性樹脂の1分水道水吸収能を下記のような方法で測定した。
【0137】
(i)先に、横15cm、縦30cmのティーバッグに1gの高吸水性樹脂を入れて前記ティーバッグを水道水(tap water)2Lに浸漬させた後1分間膨潤させた。
(ii)その後に膨潤された高吸水性樹脂が入っているティーバッグを水道水の外に持ち上げて1分が経過した後水道水が抜けたティーバッグと高吸水性樹脂の重量を共に測定した後、空のティーバッグの重量を引いた値を1分水道水吸収能とした。
【0138】
この時、水道水はOrion Star A222(会社:Thermo Scientific)を用いて測定した時、電気伝導度が170~180μS/cmであるものを使用した。
【0139】
(5)有効吸収能(EFFC)
前記で測定された遠心分離保水能(CRC)および0.7psi加圧吸収能(AUP)に基づいて前記式1により有効吸収能(EFFC)を計算した。
【0140】
【0141】
前記表1に示すように、疎水性粒子水分散液の存在下で単量体の重合反応を行った実施例の高吸水性樹脂の場合、比較例の高吸水性樹脂に比べて有効吸収能が低下することなく速い吸収速度および向上した1分水道水吸収能を示すことを確認することができる。特に、前記実施例2の高吸水性樹脂は、同量のカプセル化された発泡剤を使用して疎水性粒子を粉末形態で使用した比較例6の高吸水性樹脂に比べて顕著に向上した吸収速度および1分水道水吸収能を示すことがわかる、
【0142】
また、疎水性粒子水分散液と気泡安定剤を同時に使用する場合、吸収速度および1分水道水吸収能をより向上させ得ることを確認することができる。
【0143】
これにより、疎水性粒子水分散液の存在下で単量体を架橋重合する場合、発泡剤によって生成される二酸化炭素を効果的に捕集して均一なサイズの気孔が深くて均一に形成されて吸収速度が顕著に増加した高吸水性樹脂の製造が可能であることがわかる。