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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】保護膜剤及び被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 S
H01L21/78 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021148611
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041313
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】大澤 祥
(72)【発明者】
【氏名】梁 仙一
(72)【発明者】
【氏名】大浦 幸伸
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-61668(JP,A)
【文献】特開2021-61317(JP,A)
【文献】特開2021-27254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する際に該被加工物に被覆される保護膜剤であって、
水溶性の樹脂と、
フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤と、
該樹脂と該光吸収剤とを溶解する溶媒と、を含み、
該光吸収剤は、糖転移体を含み、該溶媒は、水を含み、
該糖転移体は、糖転移ルチン、又は糖転移ヘスペリジンである保護膜剤。
【請求項2】
該樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、又はポリオキサゾリンである請求項1に記載の保護膜剤。
【請求項3】
355nmの波長における吸光度が、水で200倍に希釈された状態に換算し且つ1cmの厚さで測定した場合に5.0以上となる量の該光吸収剤を含む請求項1又は請求項に記載の保護膜剤。
【請求項4】
被加工物を加工する際に該被加工物に被覆される保護膜剤であって、
水溶性の樹脂と、
フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤と、
該樹脂と該光吸収剤とを溶解する溶媒と、を含み、
355nmの波長における吸光度が、水で200倍に希釈された状態に換算し且つ1cmの厚さで測定した場合に5.0以上となる量の該光吸収剤を含む保護膜剤。
【請求項5】
該光吸収剤は、糖転移体を含み、該溶媒は、水を含む請求項4に記載の保護膜剤。
【請求項6】
該樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、又はポリオキサゾリンである請求項4又は請求項5に記載の保護膜剤。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれかに記載の保護膜剤を該被加工物の表面に被覆して保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該被加工物の該表面に設定された加工予定ラインに沿って該保護膜に吸収される波長のレーザービームを照射することで、該保護膜の該加工予定ラインに重なる部分を除去してマスクを形成するマスク形成ステップと、
該被加工物の該マスクから露出している部分にプラズマを作用させることで、該被加工物の該マスクから露出している部分を除去するプラズマエッチングステップと、を含む被加工物の加工方法。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の保護膜剤を該被加工物の表面に被覆して保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該被加工物の該表面に設定された加工予定ラインに沿って該保護膜及び該被加工物に吸収される波長のレーザービームを照射することで、該保護膜の該加工予定ラインに重なる部分、及び該被加工物の該加工予定ラインに重なる部分を除去するレーザーアブレーションステップと、を含む被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に被覆される保護膜剤、及びこの保護膜剤を使用する被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン(Si)等の半導体でなるウェーハの表面側をストリートと呼ばれる加工予定ラインで複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この加工予定ラインに沿ってウェーハを分割することで得られる。
【0003】
ウェーハをデバイスチップ等の小片へと分割する際には、例えば、切削ブレードと呼ばれる環状の工具をスピンドルに装着した切削装置が使用される。切削ブレードを高速に回転させて、純水等の液体を供給しながら加工予定ラインに沿ってウェーハに切り込ませることで、このウェーハを切削加工して複数の小片へと分割できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年では、高い反応性を持つプラズマを利用してウェーハを分割する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、プラズマによってウェーハの全体を一度に加工できるので、ウェーハが大型化されたりデバイスが小型化されたりして加工予定ラインの総距離が延びても、ウェーハの分割に要する時間は延びずに済む。また、ウェーハを機械的に加工する切削ブレード等の工具を使用しないので、この工具との接触に起因するウェーハの欠け等の問題も発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-198363号公報
【文献】特開2016-207737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ウェーハをプラズマに曝す前には、このウェーハに設けられているデバイス等をプラズマから保護するために、プラズマに対して耐性を持つマスクがウェーハに形成される。具体的には、例えば、液状の保護膜剤をウェーハの表面に塗布して保護膜を形成し、その後、保護膜に吸収される波長のレーザービームを加工予定ラインに沿って照射する。これにより、保護膜の加工予定ラインと重なる部分を除去して、加工予定ラインが露出したマスクを形成できる。
【0007】
しかしながら、これまでの保護膜剤を使用して上述のようなマスクを形成すると、レーザービームが照射された部分の周縁部(マスクの縁の部分)の厚みが均一にならないことが多い。場合によっては、保護膜のレーザービームが照射された部分が適切に除去されないこともあった。そして、このような品質が十分ではないマスクを使用すると、ウェーハの全体で加工の精度を維持することが困難になってしまう。
【0008】
よって、本発明の目的は、レーザービームでの加工に適した保護膜を形成できる保護膜剤、及び、この保護膜剤を使用する被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、被加工物を加工する際に該被加工物に被覆される保護膜剤であって、水溶性の樹脂と、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤と、該樹脂及び該光吸収剤を溶解する溶媒と、を含み、該光吸収剤は、糖転移体を含み、該溶媒は、水を含み、該糖転移体は、糖転移ルチン、又は糖転移ヘスペリジンである保護膜剤が提供される。好ましくは、該樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、又はポリオキサゾリンである。好ましくは、355nmの波長における吸光度が、水で200倍に希釈された状態に換算し且つ1cmの厚さで測定した場合に5.0以上となる量の該光吸収剤を含む。
【0010】
本発明の別の一側面によれば、被加工物を加工する際に該被加工物に被覆される保護膜剤であって、水溶性の樹脂と、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤と、該樹脂と該光吸収剤とを溶解する溶媒と、を含み、355nmの波長における吸光度が、水で200倍に希釈された状態に換算し且つ1cmの厚さで測定した場合に5.0以上となる量の該光吸収剤を含む保護膜剤が提供される。好ましくは、該光吸収剤は、糖転移体を含み、該溶媒は、水を含む。好ましくは、該樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、又はポリオキサゾリンである。
【0011】
本発明の更に別の一側面によれば、上述した保護膜剤を該被加工物の表面に被覆して保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該被加工物の該表面に設定された加工予定ラインに沿って該保護膜に吸収される波長のレーザービームを照射することで、該保護膜の該加工予定ラインに重なる部分を除去してマスクを形成するマスク形成ステップと、該被加工物の該マスクから露出している部分にプラズマを作用させることで、該被加工物の該マスクから露出している部分を除去するプラズマエッチングステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0012】
本発明の更に別の一側面によれば、上述した保護膜剤を該被加工物の表面に被覆して保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該被加工物の該表面に設定された加工予定ラインに沿って該保護膜及び該被加工物に吸収される波長のレーザービームを照射することで、該保護膜の該加工予定ラインに重なる部分、及び該被加工物の該加工予定ラインに重なる部分を除去するレーザーアブレーションステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面にかかる保護膜剤は、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤を含むので、従来の保護膜剤に比べて、例えば、紫外領域の波長における吸光度を高め易い。そのため、この保護膜剤を用いて保護膜を形成すれば、紫外領域の波長を持つレーザービームで保護膜を確実に加工できるようになる。このように、本発明の一側面によれば、レーザービームでの加工に適した保護膜を形成できる保護膜剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、保護膜剤が被覆される被加工物の例を示す斜視図である。
図2図2は、被加工物に保護膜剤が被覆される様子を示す断面図である。
図3図3は、被加工物に保護膜が形成された状態を示す断面図である。
図4図4は、保護膜にレーザービームが照射される様子を示す断面図である。
図5図5は、被加工物にマスクが形成された状態を示す断面図である。
図6図6は、プラズマエッチング装置の例を示す断面図である。
図7図7は、プラズマによって被加工物が加工される様子を示す断面図である。
図8図8は、加工予定ラインで分割された被加工物を示す断面図である。
図9図9(A)は、実施例1の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(B)は、実施例2の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(C)は、実施例3の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(D)は、実施例4の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(E)は、実施例5の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(F)は、比較例1の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真である。
図10図10(A)は、実施例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(B)は、実施例2の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(C)は、実施例3の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(D)は、実施例4の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(E)は、実施例5の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(F)は、比較例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真である。
図11図11(A)は、実施例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(B)は、実施例2の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(C)は、実施例3の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(D)は、実施例4の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(E)は、実施例5の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(F)は、比較例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真である。
図12図12は、レーザービームによって被加工物が加工される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本実施形態にかかる保護膜剤は、例えば、被加工物を加工する際に、被加工物に被覆して使用される。図1は、本実施形態にかかる保護膜剤が被覆される被加工物11の例を示す斜視図である。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態の被加工物11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、円形状の表面11aと、表面11aとは反対側の円形状の裏面11bと、を有している。この被加工物11の表面11a側は、互いに交差する複数の加工予定ライン(ストリート)13で複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。
【0017】
被加工物11の裏面11b側には、裏面11bの全体を覆うことができる大きさのテープ(ダイシングテープ)17が貼付される。また、テープ17の周縁部には、被加工物11を囲む環状のフレーム19が固定される。このように、本実施形態では、被加工物11と、環状のフレーム19と、がテープ17を介して一体化されている。ただし、被加工物11に保護膜剤を被覆する際に、必ずしもテープ17やフレーム19が使用されなくて良い。
【0018】
このような被加工物11に被覆される本実施形態の保護膜剤は、代表的には、水溶性の樹脂と、少なくとも紫外領域の波長(好ましくは、250nm~400nm)の光を吸収できる光吸収剤と、樹脂及び光吸収剤を溶解する溶媒と、を含んでいる。
【0019】
水溶性の樹脂は、例えば、25℃の水100gに対して、0.5g以上を溶解させることができる高分子化合物である。このような高分子化合物としては、代表的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリグリセリン、ポリオキサゾリン(例えば、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-プロピル-2-オキサゾリン)等)、ポリパラヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、スチレンマレイン酸、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0020】
なお、水溶性の樹脂としては、これらの高分子化合物のいずれかが単独で使用されても良いし、これらの高分子化合物の複数が任意に組み合わせて使用されても良い。つまり、保護膜剤には、1種類の水溶性の樹脂が単独で使用されても良いし、2種類以上の水溶性の樹脂が組み合わせて使用されても良い。更に、水溶性の樹脂として、これらの高分子化合物の共重合体(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール共重合体等)が使用されることもある。ただし、保護膜剤には、その他の高分子化合物が水溶性の樹脂として使用されても良い。
【0021】
光吸収剤は、例えば、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する水溶性の化合物である。このような化合物は、紫外領域の波長の光を良く吸収するので、例えば、355nmの波長のレーザービームを使用して所定のパターンへと加工(レーザーアブレーション加工)される保護膜の材料(保護膜剤)に適している。なお、水溶性の化合物とは、例えば、25℃の水100gに対して、0.5g以上を溶解させることができる化合物を言う。
【0022】
すなわち、本実施形態にかかる光吸収剤は、例えば、以下の化学式(1)で表されるフラボン構造を有している。なお、化学式(1)において、Rは水素原子、置換基、又は糖鎖を表している。
【化1】
【0023】
又は、本実施形態にかかる光吸収剤は、例えば、以下の化学式(2)で表されるフラボノール構造を有している。なお、化学式(2)において、Rは水素原子、置換基、又は糖鎖を表している。
【化2】
【0024】
又は、本実施形態にかかる光吸収剤は、例えば、以下の化学式(3)で表されるイソフラボン構造を有している。なお、化学式(3)において、Rは水素原子、置換基、又は糖鎖を表している。
【化3】
【0025】
このような化合物としては、代表的には、イソラムネチン、フラボノール、4’-ヒドロキシフラボン、5-ヒドロキシフラボン、アカセチン、ウォゴノシド、3-ヒドロキシ-4’-メトキシフラボン、7,8-ジヒドロキシフラボン、エピメジンC、ケルセチン、バイカリン、ノビレチン、フィセチン、ルチン、イカリイン、イカリチン、7-ヒドロキシフラボン、モリン、ケンペリド、ヘスペリジン、6-ヒドロキシフラボン、ケンフェロール、ウォゴニン、イソオリエンチン、5-メトキシフラボン、ルテオリン、ミリシトリン、3-メチルフラボン-8-カルボン酸、6-メチルフラボン、アピゲニン、3-メトキシフラボン、バイカレイン、3,4’-ジヒドロキシフラボン、オリエンチン、3’,4’-ジヒドロキシフラボン、メチルヘスペリジン、クリシン、6-メトキシフラボン、タンゲレチン、ジオスメチン、ガランギン、フラボン、ユーパチリン、ジオスミン、ネオジオスミン、トロキセルチン、2-(2-アミノ-3-メトキシフェニル)クロモン、フラボノール-2’-スルホン酸、フラボキサート、ゲニステイン、テクトリジン、オノニン、デメチルテキサシン、イプリフラビン、ネオババイソフラボン、ソフォリコシド、イリスフロレンチン、プエラリン、ビオカニンA、ホルモノネチン、テクトリゲニン、7-メトキシ-5-メチルイソフラボン、4’,6,7-トリメトキシイソフラボン、ダイゼイン、ゲニスチン、ジヒドロダイゼイン、ダイジンが挙げられる。ただし、保護膜剤には、他の光吸収剤が使用されても良い。
【0026】
光吸収剤の高い水溶性を実現できるように、光吸収剤として使用される上述した化合物は、糖転移体であることが望ましい。糖転移体を光吸収剤として使用することで、保護膜剤における光吸収剤の濃度を高めて高い吸光度を実現し易くなる。もちろん、光吸収剤として他の化合物が使用されても良い。
【0027】
ここで、糖転移体は、糖鎖が結合した化合物であり、配糖体とも呼ばれる。糖鎖は、上述した化合物(基質)に対して水溶性を付与できる状態にあれば、単糖でも良いし、オリゴ糖(オリゴマー)でも良い。このような糖鎖としては、代表的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アルトロース、アロース、タロース、グロース、イドース、キシロース、アラビノース、リボース、リキソース、アピオース、エリトロース、トレオース、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、リブロース、キシルロース、エリトルロース、セドヘプツロース、コリオース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、トレハロース、イソトレハロース、コージビオース、ソホロース、ニゲロース、ラミナリビオース、マルトース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、デオキシリボース、フコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、グルクロン酸、ガラクツロン酸、アスコルビン酸、グルクロノラクトン、グルコノラクトン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖が挙げられる。また、糖鎖は、これらの化合物の誘導体等でも良い。
【0028】
本実施形態の光吸収剤として特に好ましい糖転移体(つまり、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する糖転移体)は、例えば、糖転移ルチンや糖転移ヘスペリジン等である。
【0029】
なお、この糖転移体には、天然に存在する天然化合物の他に、合成反応によって得られる化合物がある。糖転移体を得るための合成反応には、例えば、人工の反応試薬を用いる化学合成と、天然の糖転移酵素(タンパク質)を利用する酵素合成とがあり、これらが目的に応じて選択される。糖転移を実現する糖転移酵素は、グリコシルトランスフェラーゼと呼ばれ、糖の種類に応じて、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、グルカノトランスフェラーゼ等が使用される。
【0030】
例えば、フラボノールの一種であるケルセチンに2つのルチノースが付与された天然のルチンに対して、更に、酵素反応により糖鎖が追加で付与された化合物も、上述した糖転移ルチンに含まれる。糖転移ヘスペリジンや他の糖転移体(フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する糖転移体)についても同様である。
【0031】
このように、糖転移酵素によって水酸基を多く持つ糖鎖を化合物(基質)に付与することで、化合物の水への溶解度を高めることができる。そして、糖転移体のような高い水溶性を持つ化合物を光吸収剤として使用することで、保護膜剤における光吸収剤の濃度を高めて高い吸光度を実現できる。
【0032】
同様に、光吸収剤として使用される上述した化合物は、より高い水溶性が実現されるように、極性基(水酸基、エーテル、アミン、カルボキシ基、アミド基等)を置換基として有することが望ましい。このような化合物を光吸収剤として使用することで、保護膜剤における光吸収剤の濃度を高めて高い吸光度を実現できる。もちろん、光吸収剤として他の置換基を有する化合物が使用されても良い。
【0033】
なお、光吸収剤としては、上述した化合物のいずれかが単独で使用されても良いし、これらの化合物の複数が任意に組み合わせて使用されても良い。つまり、保護膜剤には、1種類の光吸収剤が単独で使用されても良いし、2種類以上の光吸収剤が組み合わせて使用されても良い。更に、これらの光吸収剤に対して、フェルラ酸、カフェイン酸、クロロゲン酸等の桂皮酸誘導体や、ポリヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸等のベンゾフェノン誘導体、等の光吸収剤を混合することもできる。
【0034】
溶媒は、例えば、水である。ただし、保護膜剤には、水とともに、水と混和する有機溶剤に代表される他の溶媒が使用されても良い。このような有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。なお、保護膜剤には、1種類の有機溶剤が単独で使用されても良いし、2種類以上の有機溶剤が組み合わせて使用されても良い。一方で、本実施形態では、高い水溶性を持つ化合物を光吸収剤として使用するので、溶媒として多くの有機溶剤を使用しなくとも、保護膜剤における光吸収剤の濃度を高めて高い吸光度を実現できる。
【0035】
なお、本実施形態の保護膜剤には、その経時的な劣化を抑制する目的で、酸化防止剤が添加されても良い。この酸化防止剤としては、代表的には、L-アスコルビン酸(すなわち、ビタミンC)、D-アラボアスコルビン酸、エチルアスコルビン酸、アスコルビン酸2-グルコシドが挙げられる。保護膜剤には、これらのいずれかが単独で添加されても良いし、これらの複数が任意に組み合わせて添加されても良い。
【0036】
また、本実施形態の保護膜剤には、その腐食を抑制する目的で、防腐剤が添加されても良い。この防腐剤としては、代表的には、4-ヒドロキシ安息香酸メチルが挙げられる。
【0037】
保護膜剤における水溶性の樹脂、光吸収剤、及び溶媒の含有量は、目的とする保護膜剤の性能が適切に実現される範囲で任意に設定される。保護膜剤における水溶性の樹脂の含有量を多くすると、この保護膜剤で形成される保護膜の厚みを大きくし易くなる。また、同様の構造を持つ水溶性の樹脂であれば、一般的に、水溶性の樹脂の分子量が小さくなるほど溶媒に溶解させ易く、同じ濃度を実現する場合に粘度を低くして送液し易い。
【0038】
上述した保護膜の厚みと送液の容易さの観点から、水溶性の樹脂の重量平均分子量は、250000以下であることが望ましく、100000以下であるとより望ましい。光吸収剤は、目的とする保護膜剤の性能を損なわない範囲で、その溶解度を上限として任意の含有量で含有させることができる。なお、東洋精糖社製の糖転移ルチン(αGルチン)では、水に対して50質量部の糖転移ルチンを溶解させることができた。
【0039】
代表的には、保護膜剤の全体を100質量部として、水溶性の樹脂の含有量が5質量部~35質量部であり、光吸収剤の含有量が1質量部~25質量部である。
【0040】
なお、保護膜剤には、この保護膜剤が水で200倍に希釈された状態に換算して、355nmの波長における吸光度が1cmの厚さ(光路に沿った長さ)当たりで5.0以上となる量の光吸収剤を含有させることが望ましい。言い換えれば、保護膜剤は、355nmの波長における吸光度が、水で200倍に希釈された状態に換算し且つ1cmの厚さ(光路に沿った長さ)で測定した場合に5.0以上となる量の光吸収剤を含むことが望ましい。これにより、355nmの波長を持つレーザービームでの加工に適した保護膜を形成できる保護膜剤が得られる。
【0041】
また、上述のような保護膜剤は、更に、イオン交換樹脂に通液されることが望ましい。これにより、保護膜剤から金属イオン等の不純物を取り除くことができる。なお、このイオン交換に伴い、保護膜剤のpHが4以下になる。防腐の観点から、pHが4以下になることは好ましいが、トリエタノールアミン等の塩基を添加して、保護膜剤のpHが4以上となるように調製しても良い。
【0042】
上述した本実施形態の保護膜剤は、例えば、高い反応性を持つプラズマに被加工物11を曝して加工するプラズマエッチングの際のマスクを形成するために使用される。このような被加工物の加工方法では、まず、被加工物11の表面11aに保護膜剤を被覆して保護膜を形成する(保護膜形成ステップ)。
【0043】
図2は、被加工物11に保護膜剤21が被覆される様子を示す断面図であり、図3は、被加工物11に保護膜23が形成された状態を示す断面図である。なお、図2及び図3では、説明の便宜上、一部の要素の側面が示されている。被加工物11に保護膜剤21を被覆する際には、例えば、図2及び図3に示されるスピンコーター2が使用される。
【0044】
スピンコーター2は、被加工物11を保持するためのスピンナテーブル(保持テーブル)4を備えている。スピンナテーブル4は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。スピンナテーブル4の上面の一部は、被加工物11を保持するための保持面4aとなる。
【0045】
この保持面4aは、スピンナテーブル4の内部に形成された流路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。スピンナテーブル4の上方には、保護膜23の材料である保護膜剤21を滴下するためのノズル6が配置されている。また、スピンナテーブル4の周囲には、環状のフレーム19を固定するための複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0046】
被加工物11に保護膜剤21を被覆して保護膜23を形成する際には、まず、被加工物11の裏面11b側に貼付されているテープ17をスピンナテーブル4の保持面4aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプでフレーム19を固定する。これにより、被加工物11は、表面11a側が上方に露出した状態で保持される。
【0047】
続いて、図2に示されるように、ノズル6から保護膜剤21を滴下するとともに、スピンナテーブル4を回転させて、被加工物11の表面11a側に保護膜剤21を塗布する。保護膜剤21を被覆する際の条件に特段の制限はないが、代表的には、被加工物11の直径が200mmの場合に、滴下される保護膜剤21の量が、20ml~50mlであり、スピンナテーブル4の回転数(回転の速度)が、200rpm~3000rpmであり、スピンナテーブル4を回転させる時間が、30秒~360秒である。
【0048】
その後、表面11a側に塗布された保護膜剤21を乾燥等させることで、図3に示されるような保護膜23が完成する。なお、乾燥の方法には、自然乾燥の他に、ベーク、キセノンパルスの照射、赤外線の照射等がある。ベーク、キセノンパルスの照射、赤外線の照射等の方法を用いることで、保護膜剤21を素早く乾燥させて保護膜23を形成できる。
【0049】
なお、本実施形態では、スピンコーター2を使用するスピンコートで被加工物11に保護膜剤21を被覆しているが、スプレーコート等の他の方法を用いて被加工物11に保護膜剤21を被覆しても良い。なお、スプレーコートには、二流体によるスプレー、超音波霧化によるスプレー、静電スプレー等がある。スピンコートを用いることで、被加工物11の全体に均一な保護膜23を簡単に形成でき、スプレーコートを用いることで、表面11aの凹凸が大きい場合等にも良好な保護膜23を形成できる。
【0050】
被加工物11の表面11aに保護膜23を形成した後には、被加工物11の表面11aに設定された加工予定ライン13に沿って保護膜23に吸収される波長のレーザービームを照射することで、保護膜23の加工予定ライン13に重なる部分を除去してマスクを形成する(マスク形成ステップ)。
【0051】
図4は、保護膜23にレーザービーム25が照射される様子を示す断面図であり、図5は、被加工物11にマスク27が形成された状態を示す断面図である。なお、図4及び図5でも、説明の便宜上、一部の要素の側面が示されている。保護膜23にレーザービーム25を照射する際には、例えば、図4及び図5に示されるレーザー加工装置12が使用される。
【0052】
レーザー加工装置12は、被加工物11を保持するためのチャックテーブル(保持テーブル)14を備えている。チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14の下方には、テーブル移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル14は、このテーブル移動機構によって加工送り方向(第1水平方向)及び割り出し送り方向(第2水平方向)に移動する。
【0053】
チャックテーブル14の上面の一部は、被加工物11を保持するための保持面14aとなる。この保持面14aは、チャックテーブル14の内部に形成された流路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。チャックテーブル14の周囲には、環状のフレーム19を固定するための複数のクランプ(不図示)が設けられている。
【0054】
また、チャックテーブル14の上方には、レーザー照射ユニットの加工ヘッド16が配置されている。レーザー照射ユニットは、レーザー発振器(不図示)のレーザー発振により生成されるパルス状のレーザービーム25を、加工ヘッド16で所定の位置に集光させる。
【0055】
レーザー発振器は、保護膜剤21を用いて形成された保護膜23に吸収される波長のレーザービーム25を生成できるように構成されている。レーザー発振器が生成するレーザービーム25の波長は、例えば、紫外領域(好ましくは、250nm~400nm)の波長であり、代表的には、355nmである。ただし、レーザー発振器が生成するレーザービーム25の波長に特段の制限はない。
【0056】
保護膜23にレーザービーム25を照射してマスク27を形成する際には、まず、被加工物11の裏面11b側に貼付されているテープ17をチャックテーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプでフレーム19を固定する。これにより、被加工物11は、表面11a側を被覆する保護膜23が上方に露出した状態で保持される。
【0057】
次に、チャックテーブル14を回転させて、対象の加工予定ライン13の延びる方向をレーザー加工装置12の加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル14を移動させて、例えば、対象の加工予定ライン13の延長線の上方に、レーザー照射ユニットの加工ヘッド16の位置を合わせる。
【0058】
そして、図3に示されるように、レーザー照射ユニットの加工ヘッド16から被加工物11の表面11a側に向けてレーザービーム25を照射しながら、チャックテーブル14を加工送り方向に移動させる。ここでは、例えば、保護膜23の表面又は内部にレーザービーム25を集光させる。
【0059】
レーザービーム25のパワーは、例えば、0.1W~100W、代表的には、0.5Wに設定され、対象(保護膜23)の表面でのスポット径は、例えば、1μm~100μm、代表的には、5μm~15μm程度に調整され、繰り返し周波数は、例えば、100kHz~50000kHz、代表的には、100kHz~1000kHzに設定され、パルス幅は、例えば、10フェムト秒~500ナノ秒、代表的には、3ピコ秒~30ピコ秒に設定され、チャックテーブル14の移動の速度は、20mm/s~5000mm/s、代表的には、20mm/s~1000mm/sに設定される。ただし、レーザービーム25を照射する際の条件に特段の制限はない。また、本実施形態では、被加工物11が殆ど加工されない条件でレーザービーム25を照射するが、このレーザービーム25によって被加工物11が部分的に加工されても良い。
【0060】
これにより、対象の加工予定ライン13に沿ってレーザービーム25を照射し、保護膜23の加工予定ライン13に重なる部分を除去できる。このような動作を繰り返し、保護膜23の全ての加工予定ライン13に重なる部分を除去することで、被加工物11のデバイス15に相当する領域を覆う、図5に示されるようなマスク27が得られる。
【0061】
本実施形態では、上述のように、紫外領域の波長における高い吸光度の実現に適した光吸収剤を含む保護膜剤21を使用して、保護膜23が形成されている。そのため、保護膜23にレーザービーム25を十分に吸収させて、保護膜23の対象の一部を適切に除去できる。また、レーザービーム25が照射された部分の周縁部(マスク27の縁の部分)の厚みのばらつきも小さくなる。
【0062】
被加工物11を覆うマスク27が形成された後には、このマスク27を介して被加工物11にプラズマを作用させることで、被加工物11のマスク27から露出している部分を加工する(プラズマエッチングステップ)。図6は、プラズマエッチング装置22を示す断面図であり、図7は、プラズマ29によって被加工物11が加工される様子を示す断面図である。なお、図6では、説明の便宜上、プラズマエッチング装置22の一部の要素が記号や機能ブロックで表現されており、図7では、一部の要素の側面が示されている。
【0063】
被加工物11をプラズマ29で加工する際には、例えば、図6に示されるプラズマエッチング装置22が使用される。プラズマエッチング装置22は、内部に処理用の空間が設けられた真空チャンバ24を備えている。真空チャンバ24の側壁には、被加工物11やフレーム19が通る大きさの開口24aが形成されている。開口24aの外部には、この開口24aを覆うことができる大きさのカバー26が設けられている。
【0064】
カバー26には、開閉機構(不図示)が連結されており、この開閉機構によってカバー26は開閉される。カバー26を開いて開口24aを露出させることで、開口24aを通じて被加工物11を真空チャンバ24の内部の空間に搬入し、又は、被加工物11を真空チャンバ24の内部の空間から搬出できる。
【0065】
真空チャンバ24の底壁には、排気口24bが形成されている。この排気口24bは、真空ポンプ等の排気ユニット28に接続されている。真空チャンバ24の空間内には、下部電極30が配置されている。下部電極30は、導電性の材料を用いて円盤状に形成されており、真空チャンバ24の外部で高周波電源32に接続されている。
【0066】
下部電極30の上面には、静電チャック34が配置されている。静電チャック34は、例えば、互いに絶縁された電極36a及び電極36bを備え、電極36a及び電極36bと被加工物11との間に作用する電気的な力によって被加工物11を保持する。例えば、電極36aには、直流電源38aの正極を接続できるように構成され、電極36bには、直流電源38bの負極を接続できるように構成される。なお、直流電源38aと直流電源38bとは、同じ1つの直流電源でも良い。
【0067】
真空チャンバ24の天井壁には、導電性の材料を用いて円盤状に形成された上部電極40が絶縁部材42を介して取り付けられている。上部電極40の下面側には、複数のガス噴出孔40aが形成されており、このガス噴出孔40aは、上部電極40の上面側に設けられたガス供給孔40b等を介してガス供給源44に接続されている。これにより、ガス供給源44からプラズマエッチング用のガスを真空チャンバ24の空間内に供給できる。この上部電極40も、真空チャンバ24の外部で高周波電源46に接続されている。
【0068】
被加工物11をプラズマ29で加工する際には、まず、開閉機構によってカバー26を開く。次に、開口24aを通じて被加工物11を真空チャンバ24の空間内に搬入し、静電チャック34に載せる。具体的には、被加工物11の裏面11b側に貼付されているテープ17を静電チャック34の上面に接触させる。その後、静電チャック34を作動させれば、被加工物11は、表面11a側に設けられたマスク27が上方に露出した状態で保持される。
【0069】
静電チャック34で被加工物11を保持した後には、マスク27を介して被加工物11にプラズマ29を作用させることで、加工予定ライン13に沿って被加工物11を加工する。具体的には、まず、開閉機構によってカバー26を閉じ、真空チャンバ24の空間を密閉する。
【0070】
また、排気ユニット28を作動させて、真空チャンバ24の空間内を減圧する。この状態で、ガス供給源44からプラズマエッチング用のガスを所定の流量で供給しつつ、高周波電源32及び高周波電源46で下部電極30及び上部電極40に適切な高周波電力を供給すると、下部電極30と上部電極40との間には、図7に示されるように、ラジカルやイオン等を含むプラズマ29が発生する。
【0071】
これにより、マスク27で覆われていない被加工物11の表面11a側(すなわち、加工予定ライン13)をプラズマ29に曝して、被加工物11を加工できる。なお、ガス供給源44から供給されるプラズマエッチング用のガスは、被加工物11の材質等に応じて適切に選択される。
【0072】
例えば、加工予定ライン13に沿って被加工物11を分割する場合のように、被加工物11を厚みの方向に沿って深く加工したい場合には、溝形成、膜形成、部分的膜除去の3つのステップを繰り返すと良い。シリコンを用いて形成されたウェーハを被加工物11とする場合には、次のようになる。
【0073】
溝形成のステップでは、例えば、真空チャンバ24の空間内の圧力を一定に保ちながら、ガス供給源44からSFを所定の流量で供給し、下部電極30及び上部電極40に所定の高周波電力を供給する。これにより、例えば、SFを原料とするラジカルやイオン等のプラズマ29を発生させて、被加工物11の表面11a側のマスク27に覆われていない部分を加工できる。その結果、図7に示されるように、被加工物11の加工予定ライン13に浅い溝31が形成される。
【0074】
膜形成のステップでは、例えば、真空チャンバ24の内部の空間の圧力を一定に保ちながら、ガス供給源44からCを所定の流量で供給し、下部電極30及び上部電極40に所定の高周波電力を供給する。これにより、上述した溝形成のステップで形成された溝31の内側にフッ素系の材料を堆積させて、溝31の内面を覆う薄い膜(不図示)を形成できる。このフッ素系の材料でなる膜は、SFを原料として生成されるプラズマ29に対して所定の耐性を有している。
【0075】
部分的膜除去のステップでは、例えば、真空チャンバ24の内部の空間の圧力を一定に保ちながら、ガス供給源44からSFを所定の流量で供給し、下部電極30及び上部電極40に所定の高周波電力を供給する。なお、この部分的膜除去のステップでは、下部電極30に供給される電力を溝形成のステップに比べて大きくする。
【0076】
下部電極30に供給される電力を大きくすると、プラズマ29によるエッチングの異方性が高まる。具体的には、溝31を覆う膜の下部電極30側(すなわち、溝31の底面側)の部分が優先的に加工される。つまり、SFを原料として生成されるプラズマ29により、溝31を覆う膜の溝31の底面を覆う部分だけを除去できる。
【0077】
上述のような溝形成、膜形成、部分的膜除去の3つのステップを繰り返し行うことで、溝31を徐々に深くして、最終的には、被加工物11を加工予定ライン13に沿って分割できる。図8は、加工予定ライン13で分割された被加工物11を模式的に示す断面図である。なお、図8でも、説明の便宜上、一部の要素の側面が示されている。図8に示されるように、被加工物11を加工予定ライン13で分割すると、複数のチップ33が得られる。
【0078】
なお、被加工物11をプラズマ29で加工した後には、水と空気とを混合して噴射する二流体洗浄等の方法で保護膜23を除去すると良い。上述のように、高い水溶性を持つ光吸収剤を保護膜剤21に用いることで、水を使用する二流体洗浄等の方法で保護膜23を簡単かつ確実に除去できるようになる。つまり、有機溶剤に親和性の高い光吸収剤を用いる場合等に比べて、光吸収剤に起因する残渣が残り難くなる。
【0079】
保護膜23を除去する際の方法には、二流体洗浄の他に、高圧洗浄、蒸気二流体洗浄、マイクロ・ナノバブル水洗浄等がある。そして、これらの洗浄方法では、常温の水(洗浄水)が使用されても良いし、加温された水が使用されても良い。また、水のみで保護膜を除去するのが困難な場合には、プラズマによる処理、紫外線(例えば、185nm及び/又は254nmの波長)の照射、エキシマ光(例えば、172nmの波長)の照射、又はオゾン水等を利用する洗浄によって、被加工物から保護膜を除去しても良い。
【0080】
以上のように、本実施形態にかかる保護膜剤21は、フラボン構造、フラボノール構造、又はイソフラボン構造を有する光吸収剤を含むので、従来の保護膜剤に比べて、例えば、紫外領域の波長における吸光度を高め易い。そのため、この保護膜剤21を用いて保護膜23を形成すれば、紫外領域の波長を持つレーザービーム25で保護膜23を確実に加工できるようになる。
【0081】
また、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、この保護膜23を加工してプラズマエッチング用のマスク27を形成するので、マスク27から被加工物11の加工予定ライン13が適切に露出し、また、マスク27の縁の部分の厚みのばらつきも小さくなる。よって、プラズマエッチングによる加工の精度を被加工物11の全体で高く維持できる。
【0082】
次に、上述した保護膜剤の効果を確認するために行われた実験及びその結果について説明する。まず、水溶性の樹脂の種類や光吸収剤の含有量が異なる複数の保護膜剤(実施例1~5)を用意した。併せて、本実施形態の光吸収剤を含有しない従来の保護膜剤(比較例1)を用意した。
【0083】
[実施例1]
溶媒となる78質量部の水(純水)に、光吸収剤として3質量部のαGルチン(東洋精糖社製)を徐々に加え、これが溶解するまで攪拌した。その後、水溶性の樹脂として19質量部のヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPC)を徐々に加え、これが溶解するまで攪拌することで実施例1の保護膜剤を得た。なお、このHPCの分子量は、40000であった。
【0084】
[実施例2]
実施例1の保護膜剤を作製する手順において、αGルチンを6質量部に変え、HPCを16質量部に変えて、同様の手順で実施例2の保護膜剤を得た。
【0085】
[実施例3]
実施例1の保護膜剤を作製する手順において、水を75質量部に変え、αGルチンを12.5質量部に変え、HPCを12.5質量部に変えて、同様の手順で実施例3の保護膜剤を得た。
【0086】
[実施例4]
溶媒となる78質量部の水に、光吸収剤として6質量部のαGルチンを徐々に加え、これが溶解するまで攪拌した。その後、水溶性の樹脂として16質量部のポリビニルアルコール(以下、PVA)を徐々に加え、これが溶解するまで攪拌することで実施例4の保護膜剤を得た。なお、このPVAの重合度は、300であり、けん化度は、78.5%~81.5mol%であった。
【0087】
[実施例5]
溶媒となる78質量部の水に、光吸収剤として6質量部のαGルチンを徐々に加え、これが溶解するまで攪拌した。その後、水溶性の樹脂として16質量部のポリビニルピロリドン(以下、PVP)を徐々に加え、これが溶解するまで攪拌することで実施例5の保護膜剤を得た。なお、このPVPのK値は、48~52(K-50)であった。
【0088】
[比較例1]
64.35質量部の水に、20.56質量部のPVPを徐々に加え、これが溶解するまで攪拌することで第1溶液を得た。また、14.79質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGME)に、光吸収剤として0.3質量部のフェルラ酸を溶解させることで第2溶液を得た。その後、第1溶液と第2溶液とを混合し、更に、0.0012質量部のアスコルビン酸を加えることで比較例1の保護膜剤を得た。
【0089】
各保護膜剤(実施例1~5及び比較例1)の組成比(質量比)を、表1及び表2に示す。なお、表1及び表2の括弧内は、具体的な材料を表している。
【表1】
【表2】
【0090】
[吸光度の測定]
上述した保護膜剤を用意した後には、紫外可視分光光度計(島津製作所製UV-2700)を使用して各保護膜剤の355nmの波長における1cmの厚さ当たりの吸光度を測定した。具体的には、各実施例及び比較例の保護膜剤を水(純水)で希釈し、得られた溶液を、それぞれ、石英製の角柱型のセルに封入した。その後、セルに封入された状態で、各保護膜剤の吸収スペクトルを測定した。セルの厚さ(光路に沿った長さ)は、1cmであった。
【0091】
なお、分光光度計の測定限界等との関係で、実施例1及び比較例1の保護膜剤については、水(純水)で200倍に希釈された状態での吸光度を、実施例2、実施例4、及び実施例5の保護膜剤については、水で400倍に希釈された状態での吸光度を、実施例3の保護膜剤については、水で800倍に希釈された状態での吸光度を、それぞれ測定した。
【0092】
上述した吸光度の測定の結果を、表3に示す。なお、表3には、水で200倍に希釈された状態に換算した各保護膜剤の吸光度が示されている。
【表3】
【0093】
[保護膜の形成]
上述した保護膜剤を使用して、スピンコートによる保護膜を被加工物に形成した。スピンナテーブルの回転数を、実施例4では、1000rpmに、それ以外では、2000rpmに設定し、スピンナテーブルの回転の時間を90秒に設定した。また、得られた各保護膜の膜厚を、膜厚測定器(フィルメトリクス社製F50)を使用して測定した。測定の結果を、表4に示す。
【表4】
【0094】
[マスクの形成]
保護膜剤を使用して得られた保護膜を355nmの波長のレーザービームで加工し、被加工物の加工予定ラインが露出するマスクを形成した。ここでは、レーザービームのパワーを0.5Wに設定し、保護膜の表面でのスポット径を5μm~10μm程度に調整し、繰り返し周波数を200kHzに設定し、パルス幅を9ピコ秒に設定し、チャックテーブルの移動の速度を600mm/sに設定した。
【0095】
その後、各マスクを上方から撮影した。図9(A)は、実施例1の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(B)は、実施例2の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(C)は、実施例3の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(D)は、実施例4の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(E)は、実施例5の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真であり、図9(F)は、比較例1の保護膜剤が使用されたマスクを上方から撮影して得られた写真である。
【0096】
図9(A)、図9(B)、図9(C)、図9(D)、及び図9(E)と、図9(F)との比較から分かるように、実施例1~5の保護膜剤が使用されたマスク(図9(A)、図9(B)、図9(C)、図9(D)、及び図9(E))では、比較例1の保護膜剤が使用されたマスク(図9(F))に比べて、マスクの縁の部分の盛り上がりが小さくなっている。つまり、マスクの縁の部分の厚みのばらつきが小さくなっている。
【0097】
また、図9(A)と、図9(B)と、図9(C)との比較から分かるように、実施例1~3の保護膜剤が使用されたマスク((図9(A)、図9(B)、及び図9(C))では、光吸収剤の含有量が増えるにつれて、マスクの縁の部分の盛り上がりが小さくなっている。つまり、光吸収剤の含有量が増えるにつれて、マスクの縁の部分の厚みのばらつきが小さくなっている。
【0098】
[被加工物の加工]
上述のようにして得られたマスクを使用して、被加工物のマスクから露出している部分をプラズマで加工した。なお、被加工物には、シリコンを用いて形成されたウェーハが使用された。また、被加工物をプラズマに曝す際には、上述した溝形成、膜形成、部分的膜除去の3つのステップを繰り返す方法が適用された。
【0099】
その後、加工後の被加工物を、表面にマスクが残留している状態で斜め上方から撮影した。図10(A)は、実施例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(B)は、実施例2の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(C)は、実施例3の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(D)は、実施例4の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(E)は、実施例5の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真であり、図10(F)は、比較例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を斜め上方から撮影して得られた写真である。
【0100】
また、加工後の被加工物を、表面にマスクが残留している状態で側方から撮影した。つまり、プラズマによって加工された被加工物の側面を撮影した。図11(A)は、実施例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(B)は、実施例2の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(C)は、実施例3の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(D)は、実施例4の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(E)は、実施例5の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真であり、図11(F)は、比較例1の保護膜剤でなるマスクを用いて加工された被加工物を側方から撮影して得られた写真である。
【0101】
図10(A)、図10(B)、図10(C)、図10(D)、及び図10(E)と、図10(F)との比較から分かるように、比較例1の保護膜剤でなるマスク(図10(F))には、被加工物を加工した後にも、マスクの縁の部分に大きな盛り上がりが残っている。つまり、プラズマによる処理の間は常に、マスクの縁の部分の厚みのばらつきが被加工物の加工の精度に影響を与え続ける。
【0102】
また、図11(A)、図11(B)、図11(C)、図11(D)、及び図11(E)と、図11(F)との比較から分かるように、比較例1の保護膜剤でなるマスクを使用して加工された被加工物の側面(図11(F))には、マスクの縁の部分の厚みのばらつきに起因して、被加工物の厚み方向に延びる線状の不良(加工の不均一)が生じている。一方で、実施例1~5の保護膜剤でなるマスクを使用して加工された被加工物の側面(図11(A)、図11(B)、図11(C)、図11(D)、及び図11(E))には、このような線状の不良は生じていない。
【0103】
以上のように、本実施形態にかかる保護膜剤を用いることで、レーザービームでの加工に適した保護膜を形成し、被加工物の加工の精度を高く維持できることが確認された。
【0104】
ところで、本実施形態の光吸収剤を使用しない従来の保護膜剤でも、有機溶剤の含有量を増やした場合には、水で200倍に希釈された状態に換算して355nmの波長における吸光度を1cmの厚さ当たりで4.0程度まで高められることが確認されている。例えば、次のようにして得られる比較例2の保護膜剤では、水で200倍に希釈された状態に換算して355nmの波長における1cmの厚さ当たりの吸光度が4.048であった。
【0105】
[比較例2]
57質量部の水に、21質量部のPVPを徐々に加え、これが溶解するまで攪拌することで第1溶液を得た。また、20質量部のPGMEに、光吸収剤として2質量部の2,2‘,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンを溶解させることで第2溶液を得た。その後、第1溶液と第2溶液とを混合し、比較例2の保護膜剤を得た。
【0106】
よって、従来の保護膜剤に比べて高い吸光度を実現するという観点では、水で200倍に希釈された状態に換算して355nmの波長における吸光度が1cmの厚さ当たりで5.0以上となる量の光吸収剤を保護膜剤に含有させることが望ましい。また、水で200倍に希釈された状態に換算して355nmの波長における吸光度が1cmの厚さ当たりで10以上となる量の光吸収剤を保護膜剤に含有させると、より望ましい。
【0107】
ただし、光吸収剤の含有量を増やすために、有機溶剤の含有量を増やすと、上述のように、光吸収剤に起因する残渣が残り易くなる。また、有機溶剤の含有量を増やすと、安全性の低下、ダイシングテープの粘着層の劣化等の問題が生じ易い。これら問題を解決するという観点では、少なくとも、本実施形態の光吸収剤が保護膜剤に含有されていれば良い。すなわち、本実施形態の保護膜剤を構成する光吸収剤の含有量の下限及び上限には、何ら制限がない。
【0108】
なお、本発明は、上述した実施形態及び実施例の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態にかかる被加工物の加工方法では、保護膜剤21を使用してプラズマエッチング用のマスク27を形成しているが、レーザーアブレーションを利用する被加工物の加工方法等にも保護膜剤21を使用できる。
【0109】
この変形例にかかる被加工物の加工方法でも、まず、被加工物11の表面11aに保護膜剤21を被覆して保護膜23を形成する(保護膜形成ステップ)。保護膜23を形成する際の具体的な手順等は、上述した実施形態にかかる被加工物の加工方法で保護膜23を形成する際の手順等と同様である。
【0110】
被加工物11の表面11aに保護膜23を形成した後には、被加工物11の表面11aに設定された加工予定ライン13に沿って保護膜23及び被加工物11の両方に吸収される波長のレーザービームを照射することで、保護膜23の加工予定ライン13に重なる部分、及び被加工物11の加工予定ライン13に重なる部分を除去する(レーザーアブレーションステップ)。
【0111】
図12は、レーザービーム35によって被加工物11が加工される様子を示す断面図である。なお、図12でも、説明の便宜上、一部の要素の側面が示されている。保護膜23及び被加工物11にレーザービーム35を照射する際にも、上述したレーザー加工装置12を使用できる。
【0112】
ただし、本変形例では、保護膜23と被加工物11との両方に吸収される紫外領域の波長のレーザービーム35を生成できるレーザー発振器(不図示)が使用される。つまり、このレーザー発振器が生成するレーザービーム35の波長は、紫外領域(好ましくは、250nm~400nm)の波長であり、代表的には、355nmである。
【0113】
レーザービーム35を照射して保護膜23及び被加工物11を加工する際の手順等も、保護膜23にレーザービーム25を照射してマスク27を形成する際の手順等と同様である。なお、本変形例では、被加工物11の表面11a又は内部にレーザービーム35を集光させると良い。
【0114】
レーザービーム35のパワーは、例えば、0.1W~100W、代表的には、0.5W~15Wに設定され、対象(例えば、保護膜23)の表面でのスポット径は、例えば、1μm~100μm、代表的には、30μm~60μm程度に調整され、パルス幅は、例えば、10フェムト秒~500ナノ秒に設定され、繰り返し周波数は、例えば、20kHz~50000kHz、代表的には、20kHz~2000kHzに設定され、チャックテーブル14の移動の速度は、20mm/s~5000mm/s、代表的には、100mm/s~1000mm/sに設定される。なお、本変形例では、保護膜23及び被加工物11の両方が加工される条件でレーザービーム35を照射する必要がある。これにより、保護膜23の加工予定ライン13に重なる部分、及び被加工物11の加工予定ライン13に重なる部分を除去できる。
【0115】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0116】
2 :スピンコーター
4 :スピンナテーブル(保持テーブル)
4a :保持面
6 :ノズル
12 :レーザー加工装置
14 :チャックテーブル(保持テーブル)
14a :保持面
16 :加工ヘッド
22 :プラズマエッチング装置
24 :真空チャンバ
24a :開口
24b :排気口
26 :カバー
28 :排気ユニット
30 :下部電極
32 :高周波電源
34 :静電チャック
36a :電極
36b :電極
38a :直流電源
38b :直流電源
40 :上部電極
40a :ガス噴出孔
40b :ガス供給孔
42 :絶縁部材
44 :ガス供給源
46 :高周波電源
11 :被加工物
11a :表面
11b :裏面
13 :加工予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
17 :テープ(ダイシングテープ)
19 :フレーム
21 :保護膜剤
23 :保護膜
25 :レーザービーム
27 :マスク
29 :プラズマ
31 :溝
33 :チップ
35 :レーザービーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12