(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G01W1/00 E
(21)【出願番号】P 2020147794
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】397060072
【氏名又は名称】スカパーJSAT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 章
(72)【発明者】
【氏名】小渕 浩希
(72)【発明者】
【氏名】花田 行弥
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059821(JP,A)
【文献】特表2013-529051(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080373(WO,A1)
【文献】米国特許第06035710(US,A)
【文献】特開2007-184354(JP,A)
【文献】特開2019-015517(JP,A)
【文献】特開2014-048130(JP,A)
【文献】Takashi Y. Nakajima et al.,Theoretical basis of the algorithms and early phase results of the GCOM-C(Shikisai) SGLI cloud products,Progress in Earth and Planetary Science,2019年07月22日,Vol.6,No.52,pp.1-25,doi.org/10.1186/s40645-019-0295-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00~1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天頂方向を中心とした平面の天球画像を撮影するカメラを有する地上センサ及び気象衛星で撮影された衛星画像を配信する気象データ配信システムから受信した、前記天球画像及び前記衛星画像を基に、前記天球画像に映った雲分布と前記衛星画像に映った雲分布との同定を行って画像照合を実行する画像照合部と、
前記画像照合の結果を基に、前記衛星画像の水平方向の距離情報から前記天球画像における水平方向の距離情報を取得する範囲取得部と、
前記天球画像における前記水平方向の距離情報及び前記天球画像における雲の天頂角を基に前記雲の雲底高度を算出する雲底高度算出部と
を備えたことを特徴とする気象情報処理装置。
【請求項2】
前記天球画像又は前記衛星画像のいずれかもしくは双方を用いて画像解析を行い、積雲、積乱雲及び巻雲を含む雲の種類を特定する画像解析部と、
前記天球画像を平面画像に変換する変換部と
前記衛星画像及び地上気温を基に前記雲の雲頂高度を算出する雲頂高度算出部と、
前記雲底高度と前記雲頂高度との差から前記雲の厚さを算出する雲厚算出部と、
前記雲の厚さを基に雲の規模を含む雲の様相を識別する様相識別部とをさらに備え、
画像照合部は、前記画像解析部により特定された前記雲の種類を基に前記画像照合を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の気象情報処理装置。
【請求項3】
前記画像解析部により特定された雲の種類、前記画像照合部による前記画像照合の結果及び前記衛星画像を基に、雲の移動情報を取得する移動情報取得部をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の気象情報処理装置。
【請求項4】
前記雲厚算出部は、前記画像解析部により特定された前記雲の種類から前記雲の厚さの推定を行い、推定結果を用いて算出した前記雲の厚さの検証及び補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の気象情報処理装置。
【請求項5】
前記範囲取得部は、前記画像解析部により特定された前記雲の種類を基に、個々の前記雲の種類に応じた高度に前記雲を分類し、分類毎に前記雲の水平方方向の距離を求めることを特徴とする請求項2~4のいずれか一つに記載の気象情報処理装置。
【請求項6】
前記地上センサは、地上の温度、気圧及び相対湿度を含む地上気象データを取得する気象データ取得部をさらに備え、
前記雲底高度算出部は、前記気象データ取得部により取得された前記地上気象データから持ち上げ凝結高度を求め、求めた前記持ち上げ凝結高度を基に前記雲底高度の推定を行い、推定結果を用いて前記雲底高度の検証及び補正を行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の気象情報処理装置。
【請求項7】
地上センサ、気象データ配信システム及び気象情報処理装置を有する気象情報処理システムであって、
前記地上センサは、
天頂方向を中心とした平面の天球画像を撮影するカメラを備え、
前記気象データ配信システムは、気象衛星で撮影された衛星画像を配信し、
前記気象情報処理装置は、
前記地上センサ及び前記気象データ配信システムから受信した、前記天球画像及び前記衛星画像を基に、前記天球画像に映った雲分布と前記衛星画像に映った雲分布との同定を行って画像照合を実行する画像照合部と、
前記画像照合の結果を基に、前記衛星画像の水平方向の距離情報から前記天球画像における水平方向の距離情報を取得する範囲取得部と、
前記天球画像における前記水平方向の距離情報及び前記天球画像における雲の天頂角を基に前記雲の雲底高度を算出する雲底高度算出部と
を備えた
ことを特徴とする気象情報処理システム。
【請求項8】
前記気象情報処理装置は、
前記天球画像又は前記衛星画像のいずれかもしくは双方を用いて画像解析を行い、積雲、積乱雲及び巻雲を含む雲の種類を特定する画像解析部と、
前記天球画像を平面画像に変換する変換部と
前記衛星画像及び地上気温を基に前記雲の雲頂高度を算出する雲頂高度算出部と、
前記雲底高度と前記雲頂高度との差から前記雲の厚さを算出する雲厚算出部と、
前記雲の厚さを基に雲の規模を含む雲の様相を識別する様相識別部とをさらに備え、
画像照合部は、前記画像解析部により特定された前記雲の種類を基に前記画像照合を実行する
ことを特徴とする請求項7に記載の気象情報処理システム。
【請求項9】
前記地上センサは、地上の温度、気圧及び相対湿度を含む地上気象データを取得する気象データ取得部をさらに備え、
前記雲頂高度算出部は、前記気象データ取得部により取得された前記地上の温度を基に前記雲の雲頂高度を算出し、
前記雲底高度算出部は、前記気象データ取得部により取得された前記地上気象データから持ち上げ凝結高度を求め、求めた前記持ち上げ凝結高度を基に前記雲底高度の推定を行い、推定結果を用いて前記雲底高度の検証及び補正を行うことを特徴とする請求項8に記載の気象情報処理システム。
【請求項10】
予め取得した前記雲の種類、前記雲底高度、前記雲頂高度、前記雲の厚さ及び前記雲の規模の情報を用いて機械学習を行い、前記機械学習の結果を基に、前記雲の種類、前記雲底高度、前記雲頂高度、前記雲の厚さ及び前記雲の規模の情報に含まれる情報のうちのいくつかの情報を用いて残りの情報を推定する気象情報生活基盤をさらに備えたことを特徴とする請求項
8又は9に記載の気象情報処理システム。
【請求項11】
前記気象情報生活基盤は、前記雲の様相を他の気象情報と関連付けて加工して提供することを特徴とする請求項10に記載の気象情報処理システム。
【請求項12】
天頂方向を中心とした平面の天球画像を撮影するカメラを有する地上センサ及び気象衛星で撮影された衛星画像を配信する気象データ配信システムから受信した、前記天球画像及び前記衛星画像を基に、前記天球画像に映った雲分布と前記衛星画像に映った雲分布との同定を行って画像照合を実行し、
前記画像照合の結果を基に、前記衛星画像の水平方向の距離情報から前記天球画像における水平方向の距離情報を取得し、
前記天球画像における前記水平方向の距離情報及び前記天球画像における雲の天頂角を基に前記雲の雲底高度を算出する
ことを特徴とする気象情報処理方法。
【請求項13】
天頂方向を中心とした平面の天球画像を撮影するカメラを有する地上センサ及び気象衛星で撮影された衛星画像を配信する気象データ配信システムから受信した、前記天球画像及び前記衛星画像を基に、前記天球画像に映った雲分布と前記衛星画像に映った雲分布との同定を行って画像照合を実行し、
前記画像照合の結果を基に、前記衛星画像の水平方向の距離情報から前記天球画像における水平方向の距離情報を取得し、
前記天球画像における前記水平方向の距離情報及び前記天球画像における雲の天頂角を基に前記雲の雲底高度を算出する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする気象情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気象観測は、静止気象衛星、レーダー及び各地の観測所等を用いて行われる。そして、気象観測により得られた各種の気象データは、一般に公開される等して、事業者や個人を問わず広く利用される。
【0003】
近年、気象データは様々な分野での活用が進んでいる。例えば、得られた気象データを用いて将来の気象を予測することで、天気予報、災害予報、河川管理、登山者向けの情報提供及び農業生産管理等を行うことが可能である。また、気象データにより雲の動き等を予測することで、太陽光発電の出力予測等を行うことも可能となる。さらには、気象データから得られる太陽光発電の出力予測等を用いて、発電所からの電力供給量の調整等といった運用管理に用いることも可能である。また、雲の状況を把握することで、気象データは航空機の運航管理等にも用いられる。
【0004】
特に、気象データにおける雲の情報は、防災や太陽光発電等において重要な役割を担う情報である。気象庁は、気象衛星による観測データや数値予報データを用いて求めた雲頂高度、雲型及び雲の品質情報等の雲情報の提供を行っている。また、気象衛星画像を用いて気象学的な解釈に基づいて雲画像に含まれる各種の気象情報を抽出する技術がある。この技術では、例えば、可視(VIS:Visible)画像を使用することで、雲の輝度から雲を識別したり雲の厚みを求めたりできる。また、赤外(IR:InfraRed)画像を用いることで、雲頂温度及び雲頂高度を求めることができ、且つ、雲の識別も行うことができる(特許文献1)。
【0005】
また、雲の厚さに関しては、雲底高度を測定する雲底高度計(シーロメータ)を用いて雲量判定を行なう雲量判定装置が提案されている。雲底高度計は、鉛直上方に向けてレーザー光を発射し、発射された該レーザー光の雲による反射光を受光素子により受光し、発射から受光までに要した時間に基づいて雲の最下部の高度である雲底高度を求める装置である。
【0006】
このような、気象データを取り扱う技術として、気象衛星画像の可視画像データ(VIS)から取得した反射情報及び赤外画像データから取得した輝度温度情報を用いて雲の種類を判定し、日射量を推定する従来技術がある。また、2台のカメラで撮影した天頂を中央とする広角画像から雲の経度緯度を求めて雲の移動速度や風速を求める従来技術がある(特許文献2)。また、衛星画像データにおける雲やエアロゾルの影響を表すパラメータを調整して、調整後の衛星画像データから日射量を推定する従来技術がある(特許文献3)。他にも、日射強度から雲種を判定し、雲種から日射強度を補正して日射強度の推定値を算出する従来技術がある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-90442号公報
【文献】特開2019-60754号公報
【文献】特開平11-211560号公報
【文献】特開2015-137903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、衛星画像データを用いて雲の様相(雲の規模、雲底高度、雲頂高度、雲の厚み)を求める場合、例えば輝度から雲の厚みを予測することになり、雲の高度等による影響を受けるため正確な厚みを求めることは困難である。また、雲底高度計を用いることで雲底高度測定を行なうことはできるが、雲底高度計は高価であり、且つ、鉛直上の雲底の計測に制限されるため設置性が悪い。そのため、設置場所によっては設置することが困難であり、また、多数の装置を設置した場合には多額のコストがかかることになり、広い範囲で雲の厚みを測定することが困難である。したがって、雲の様相を正確に同定することは困難である。
【0009】
また、気象衛星画像から雲の種類を判定する従来技術では、雲の正確な厚みを求めることは困難である。これは、天頂を中心とする広角画像から雲の移動速度や風速を求める従来技術や、雲やエアロゾルの影響を表すパラメータを調整して日射量を推定する従来技術や、日射強度から雲種を判定する従来技術であっても同様である。したがって、雲の様相を正確に同定することは困難であり、気象データを用いるシステムの性能を向上させることは難しい。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、気象データを活用するシステムの性能を向上させる気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラムの一つの態様において、画像照合部は、天頂方向を中心とした平面の天球画像を撮影するカメラを有する地上センサ及び気象衛星で撮影された衛星画像を配信する気象データ配信システムから受信した、前記天球画像及び前記衛星画像を基に、前記天球画像に映った雲分布と前記衛星画像に映った雲分布との同定を行って画像照合を実行する。範囲取得部は、前記画像照合の結果を基に、前記衛星画像の水平方向の距離情報から前記天球画像における水平方向の距離情報を取得する。雲底高度算出部は、前記天球画像における前記水平方向の距離情報及び前記天球画像における雲の天頂角を基に前記雲の雲底高度を算出する。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、本発明は、気象データを活用するシステムの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1に係る気象情報提供システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、天球カメラ及び気象情報処理装置の詳細を表すブロック図である。
【
図3】
図3は、天球画像の平面画像への変換の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、天球カメラにおける画像取得の概略を説明するための図である。
【
図5】
図5は、気象衛星画像の一例を表す図である。
【
図6】
図6は、雲種の判定テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、画像照合解析処理の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、雲のマッチング処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、天頂角と方位角とを説明するための図である。
【
図11】
図11は、雲の厚さと雲頂高度及び雲底高度との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、雲の様相を含む気象情報提供のフローチャートである。
【
図13】
図13は、気象情報処理装置による雲の様相の識別処理のフローチャートである。
【
図14】
図14は、高度の違う雲の平面画像における位置関係を説明するための図である。
【
図15】
図15は、実施例1の変形例に係る気象情報処理装置による高さの異なる雲のそれぞれの雲底高度の算出を説明するための図である。
【
図16】
図16は、実施例2に係る気象情報処理装置のブロック図である。
【
図17】
図17は、移動方向及び移動速度の算出の一例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、実施例2に係る気象情報処理装置による雲及び雲域の移動方向及び移動速度の算出処理のフローチャートである。
【
図19】
図19は、気象情報処理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する気象情報処理装置、気象情報処理システム、気象情報処理方法及び気象情報処理プログラムが限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る気象情報提供システムのブロック図である。また、
図2は、天球カメラ及び気象情報処理装置の詳細を表すブロック図である。気象情報提供システム100は、
図1に示すように、気象情報処理装置1、地上センサ2、気象情報データベース3及び情報活用基盤4を有する。
【0016】
地上センサ2は、気象情報処理装置1に接続される。地上センサ2は、
図2に示すように、天球カメラ21及び気象データ取得部22を有する。また、地上センサ2は、自装置の設置場所の緯度及び経度と時刻とを測定する測定機能を有する。
【0017】
地上センサ2には、風が通り抜ける個所が設けられる。気象データ取得部22は、地上センサ2を通り抜ける風を用いて、地上の気温、気圧及び相対湿度を含む地上気象データを測定する。
【0018】
地上センサ2は、天球カメラ21により撮影された天球画像201及び気象データ取得部22による測定結果を気象情報処理装置1へ送信する。この際、地上センサ2は、自装置の設置場所の緯度及び経度、並びに、撮影時刻も気象情報処理装置1へ送信する。
【0019】
天球カメラ21は、予め設定された時間毎に、可視光及び赤外線で天頂方向を中心とした半球面画像である
図3に示す天球画像201を撮影する。
図3は、天球画像の平面画像への変換の一例を示す図である。ここで、天球画像201について具体的に説明する。
【0020】
天球カメラ21は、
図4に示すイメージセンサ23及び魚眼レンズ24を有する。
図4は、天球カメラにおける画像取得の概略を説明するための図である。魚眼レンズ24は、半球の形をしており、天頂を中心にした円周の全周にわたって例えば画角180度の光を取り込む。魚眼レンズ24に取り込まれた光は屈折される入射ルートを経由してイメージセンサ23により受光される。これにより、イメージセンサ23は、天頂を中心にした円周の全周にわたって画角180度の画像を形成する。
【0021】
ここで、天球画像201は、地上から撮影された画像であるため、
図3に示すように東西が反転された画像となる。天球画像201には、雲底部分が映される。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。気象データ配信システム5は、ひまわり8号等の気象衛星6により撮影された気象衛星画像を取得する。そして、気象データ配信システム5は、取得した気象衛星画像を蓄積する。気象衛星画像には、可視画像、赤外画像及び近赤外画像が含まれる。
【0023】
気象情報処理装置1は、地上センサ2から取得した天球画像201及び地上気象データ、並びに、気象データ配信システム5から取得した衛星画像を用いて、天球画像201に映った雲と衛星画像に映った雲との同定を行う。そして、気象情報処理装置1は、同定し天球画像から雲の様相の情報を取得する。その後、気象情報処理装置1は、取得した雲の様相の情報を気象情報データベース3に格納する。気象情報処理装置1は、地上センサ2、気象情報データベース3及び気象データ配信システム5が接続される。以下に、
図2を参照して気象情報処理装置1の詳細について説明する。
【0024】
図2に示すように、本実施例に係る気象情報処理装置1は、画像解析部101、変換部102、雲頂高度算出部103、画像照合部104、範囲取得部105、雲厚算出部106、雲底高度算出部107及び様相識別部108を有する。
【0025】
画像解析部101は、天球カメラ21で撮影された天球画像201を地上センサ2から受信する。この時、画像解析部101は、地上センサ2の設置場所の緯度及び経度、撮影時刻及び地上気象データも地上センサ2から受信する。また、画像解析部101は、天球画像203の撮影時刻の通知を地上センサ2から受ける。そして、画像解析部101は、通知された撮影時刻の気象衛星画像を気象データ配信システム5から取得する。画像解析部101が取得する気象衛星画像には、
図5に示すような可視画像301及び赤外画像302が含まれる。
図5は、気象衛星画像の一例を表す図である。
【0026】
ここで、
図5を参照して気象衛星画像について説明する。例えば、気象衛星6として気象衛星ひまわり8号を用いる場合について説明する。その場合の気象衛星6が可視画像301を撮影する場合の衛星直下点における空中分解能は、0.5~1.0kmである。また、気象衛星6が赤外画像302を撮影する場合の空中分解能は、1~2kmである。気象衛星6が近赤外画像を撮影する場合の空中分解能も同様に2kmである。また、気象衛星6は、可視画像301を生成する観測バンドを3個、近赤外の画像を生成するバンドを3個、赤外画像302を生成する観測バンドを10個有する。そして、気象衛星6は、2.5分の観測時間間隔で、可視画像301及び赤外画像302を取得する。
【0027】
気象衛星画像には、雲頂部分が映される。そして、気象衛星画像では、画像の任意の点に対して、緯度及び経度で表される地上における位置が得られる。したがって、気象衛星画像を用いることで、気象衛星画像内の雲の水平方向の距離を把握することが可能である。
【0028】
可視画像301は、太陽光の反射であるアルベドを観測する画像である。可視画像301において雲がある部分は白く映り、雲がない部分は黒く映る。可視画像301では、それぞれの雲の高さの違いは表現されない。また、可視画像301では、雲の厚さの違いは表現されない。
【0029】
一方、赤外画像302は、雲の放射輝度温度を表す画像である。ここで、雲の最も高い位置は雲頂と呼ばれる。赤外画像302において雲頂が高い雲は白く映り、雲頂が低い部分は黒く映る。すなわち、赤外画像302を用いることで、雲の高さを把握することができる。
【0030】
また、
図5の紙面に向かって右端の輝度温度差画像303は、異なる観測バンドを用いて撮影された赤外画像302の差分の画像である。輝度温度差画像303は、雲が厚い場合は白く映り、雲が薄い場合は黒く映る。すなわち、赤外画像302を用いて輝度温度差画像303を求めることで、雲のおおよその厚さを把握することができる。
【0031】
画像解析部101は、気象衛星画像である可視画像301及び赤外画像302を用いて画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別を行う。また、画像解析部101は、時間毎の衛星画像を蓄積して個別の雲の時系列変化の把握も行う。
【0032】
また、画像解析部101は、天球画像201を用いて画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別及び雲の種類の特定を行う。また、画像解析部101は、時間毎の天球画像201を蓄積して個別の雲の時系列変化の把握も行う。さらに、画像解析部101は、識別した天球画像201における個々の雲の端部の数点を用いて、個々の雲の地上センサ2からの方位角及び天頂角を算出する。ここでの天頂角とは、天頂からの角度を指す。
【0033】
さらに、画像解析部101は、天球画像又は気象衛星画像のいずれかもしくは双方を用いて画像解析を行い、天球画像及び気象衛星画像に映った雲の種類を特定する。画像解析部101による雲の種類の判定方法は様々な方法が存在する。以下に雲の種類判定方法のいくつかの例を説明する。
【0034】
例えば、画像解析部101は、
図6に示す雲種の判定テーブル304を有する。
図6は、雲種の判定テーブルの一例を示す図である。判定テーブル304に示すように、雲の種類は、輝度温度と予め決められたバンドを用いた場合の輝度温度差との組み合わせから識別可能である。
図6の輝度温度差におけるB13は10.4μmの波長帯(バンド)の赤外画像を表す、B15は12.3μmの波長帯の赤外画像を表す。すなわち、輝度温度差B13-B15は、10.4μmの波長帯(バンド)の赤外画像と12.3μmの波長帯の赤外画像との差から得られる輝度温度差である。そこで、画像解析部101は、赤外画像302から輝度温度及び輝度温度差を赤外画像302から求める。そして、画像解析部101は、求めた輝度温度及び輝度温度差から雲の種類を特定する。
【0035】
他にも、画像解析部101は、既存の天球画像や衛星画像およびそれぞれの画像における雲の種類及び状態の情報を用いて、深層学習を行い天球画像や衛星画像と雲の種類及び状態との関係を予め学習する。そして、画像解析部101は、画像解析実行時に取得した天球画像や衛星画像を入力として学習結果を用いて、その天球画像や衛星画像に映された雲の種類を特定する。この方法では、画像解析部101は、天球画像又は衛星画像のいずれか一方を用いてもよいし双方を用いてもよい。
【0036】
以下では、画像解析部101が可視画像301及び赤外画像302の画像解析により求めた各雲に紐づけされた雲の種類の判定結果を含む画像情報を、「衛星画像解析情報」と呼ぶ。また、画像解析部101が天球画像201の画像解析により求めた情報を、「天球画像解析情報」と呼ぶ。本実施例では、衛星画像解析情報と天球画像解析情報ともに雲の種類の判定結果が含まれるとして説明する。
【0037】
画像解析部101は、天球画像201を変換部102へ出力する。また、画像解析部101は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、地上気象データを画像照合部104へ出力する。このとき、画像解析部101は、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像203の撮影時刻も画像照合部104へ出力する。さらに、画像解析部101は、地上気象データ及び赤外画像302を雲頂高度算出部103へ出力する。
【0038】
変換部102は、天球画像201の入力を画像解析部101から受ける。魚眼レンズ24は、
図4に示すように画角が180度に近づく、すなわち天頂から離れるにしたがい入射ルートの屈折率が大きくなる。このため、魚眼レンズ24を用いて撮影された天球画像201は、天頂から離れるにしたがい歪みが大きくなる。これに対して、気象衛星6により撮影される気象衛星画像は平面として撮影された画像である。そのため、天球画像と気象衛星画像とを比較照合するには、天球画像201を平面として撮影された画像に変換することが好ましい。そこで、変換部102は、
図4に示すように、天球画像201を平面展開して平面画像202に変換する。
【0039】
ここで、変換部102による平面展開の方法の一例について説明する。変換部102は、天球カメラ21により調整用の平面を撮影することで得られた複数の調整用画像を予め蓄積する。そして、変換部102は、複数の調整用画像を画集データとしてキャリブレーションを行い、求めた曲値を基に魚眼レンズ24で撮影した画像を平面展開して、天球画像201を平面展開するためのパラメータの最適値を求める。そして、変換部102は、天球画像201を平面展開する場合、天球画像201の端部付近の歪みが大きい箇所を切り捨てる。これにより、変換部102が生成する平面画像202に含まれる範囲は、天球画像201よりも狭まる。例えば、変換部102は、天頂を0度として天頂を中心とする天頂角が45度の範囲の平面画像202を生成する。例えば、天頂角が45度の場合、上空で雲が存在する高度が1kmから10kmとすれば、天頂角内に納まる円形画像は、地上の水平距離で半径0.5kmから5.0kmの雲の画像となる。
【0040】
ただし、ここでは一例として天頂角が45度である平面画像202を用いて説明するが、パラメータをさらに増やして高次元での計算による学習を行うことで、天頂角を広げることができる。例えば、変換部102は、平面画像202の天頂角を60度にすることも可能である。
【0041】
そして、変換部102は、学習で得られたパラメータを用いて天球カメラ21により撮影された天球画像201を平面展開して平面画像202を生成する。
図4に示すように、変換部102は、天球画像201における端部付近の画像を除外し、45度の天頂角の平面画像202を生成する。ここで、天球画像201を変換して生成された平面画像202も、天球画像201と同様に東西が反転された画像となる。変換部102は、生成した平面画像202を画像照合部104へ出力する。
【0042】
画像照合部104は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、地上気象データの入力を画像解析部101から受ける。また、画像照合部104は、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像203の撮影時刻の入力を画像解析部101から受ける。また、画像照合部104は、平面画像202の入力を変換部102から受ける。
【0043】
ここで、平面画像202は、天頂角に応じた範囲の画像であることから、雲の高さによって映る領域が異なる。すなわち、高度が高い雲であれば広い範囲の雲が平面画像202に納まり、高度が低い雲であれば狭い範囲の雲が平面画像202に納まることになる。そのため、雲の高さをある程度推定することで、平面画像202に映った雲の範囲が把握でき、可視画像301に映った雲と平面画像202に映った雲とを照合することが可能となる。
【0044】
そこで、画像照合部104は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報に含まれる可視画像301及び天球画像201に映った雲の種類から雲の高度を推定する。次に、平面画像202は東西が反転された画像であるので、画像照合部104は、平面画像202の東西を反転して可視画像301と平面画像202との方位を合わせる。次に、画像照合部104は、地上センサ2の緯度及び経度の情報から、
図7に示すように、平面画像202が可視画像301のどの領域に位置するかを特定する。
図7は、画像照合解析処理の一例を示す図である。次に、画像照合部104は、推定した雲の高さを用いて、平面画像202に映された雲が含まれる可視画像301の領域における同程度の範囲で形状等が類似する雲を平面画像202に映った雲として抽出する。
【0045】
その後、
図8に示すように、画像照合部104は、平面画像202に対して拡大、回転及び平行移動を施して、可視画像301に映った雲と平面画像202に映った雲とをマッチングする。
図8は、雲のマッチング処理を説明するための図である。
図8における点線で表される各枠が拡大及び平行移動が加えられた平面画像202を表す。
図8では、説明の都合上、回転は除いて図示したが、実際のマッチングでは平面画像202に対して回転が加えられてもよい。画像照合部104は、平面画像202における雲の距離が推定されていることから、このマッチングを実行することが可能となる。
【0046】
このように、画像照合部104は、平面画像202に映った雲と可視画像301に映った雲とを一致させて映った雲を同定する画像照合解析処理を行う。その後、画像照合部104は、画像照合解析処理を行った平面画像202及び可視画像301を範囲取得部105へ出力する。また、画像照合部104は、衛星画像解析情報、天球画像解析情報及び地上気象データを範囲取得部105へ出力する。また、画像照合部104は、画像照合解析処理を施した可視画像301と平面画像202との対応関係から、赤外画像302における平面画像202に対応する領域を特定する。そして、画像照合部104は、赤外画像302における平面画像202に対応する領域の情報を雲頂高度算出部103へ出力する。さらに、画像照合部104は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報を雲厚算出部106へ出力する。
【0047】
範囲取得部105は、画像照合解析処理が施された平面画像202及び可視画像301の入力を画像照合部104から受ける。また、範囲取得部105は、衛星画像解析情報、天球画像解析情報及び地上気象データの入力を画像照合部104から受ける。範囲取得部105は、気象衛星画像である可視画像301を用いることで水平方向の正確な距離を算出することができる。そこで、範囲取得部105は、
図8に示すように、可視画像301を用いて画像照合解析処理が施された平面画像202に映った雲の水平方向の距離を求める。衛星画像の雲と天球の平面画像の雲との同定を行うことで、平面画像に距離情報が加わる。同じ種類の雲であれば雲底の高度は同じと仮定することができるため、範囲取得部105は、雲の規模(大きさ)を測定するのに必要な任意の2地点間の距離の情報を求めることができる。
図8における距離LHが、平面画像202に映った雲の水平方向の距離にあたる。
【0048】
その後、範囲取得部105は、平面画像202に映った雲の水平方向の距離の情報とともに、衛星画像解析情報、天球画像解析情報及び地上気象データを雲底高度算出部107へ出力する。
【0049】
雲底高度算出部107は、天球画像解析情報から、平面画像202に映った雲の端部の地上センサ2の天頂からの方位角及び天頂角を取得する。そして、雲底高度算出部107は、平面画像202に映った雲の水平方向の距離、並びに、平面画像202に映った雲の端部の地上センサ2の天頂からの方位角及び天頂角を用いて雲の最下部の高度である雲底高度を算出する。
【0050】
雲底高度算出部107は、方位角により雲の天頂角を求める。
図9は、天頂角と方位角とを説明するための図である。αは方位角であり、方向と真南とのなす角であり、西周りに計測した角度である。すなわち真南が方位角0度の方位である。そして、雲底高度算出部107は、
図9に示すように、雲の位置を表す3次元座標が(Rsinθcosα,Rsinθsinα,Rcosθ)と表されることから天頂角θを算出する。
【0051】
図10は、雲底高度の算出の一例を示す図である。
図10は、地上センサ2の真上の雲の雲底高度を算出する場合を示す。ここでは、天頂角がθ度である場合で説明する。この場合、雲底高度算出部107は、雲底高度を次の数式(1)で算出する。Hは、雲底高度を表す。
【0052】
【0053】
例えば、平面画像202における水平方向の雲の範囲が18kmであり、天頂角が45度である場合、雲底高度算出部107は、雲底高度を約9kmと算出する。
【0054】
さらに、雲底高度算出部107は、地上センサ2により取得された地上気象データに含まれる地上における気温、気圧及び相対湿度を用いて、持ち上げ凝結高度を求める。そして、雲底高度算出部107は、求めた持ち上げ凝結高度から雲底高度の推定値を算出する。ここで、雲底高度の推定値とは、求めた持ち上げ凝結高度から求まるおおよその雲底高度である。そして、雲底高度算出部107は、雲底高度の推定値を用いて、可視画像301から求めた雲底高度の検証及び補正を行う。その後、雲底高度算出部107は、検証や補正を行った雲底高度を雲厚算出部106へ出力する。
【0055】
図2に戻って説明を続ける。雲頂高度算出部103は、赤外画像302の入力を画像解析部101から受ける。また、雲頂高度算出部103は、赤外画像302における平面画像202に対応する領域の情報の入力を画像照合部104から受ける。次に、雲頂高度算出部103は、平面画像202に対応する赤外画像302の領域に含まれる雲の輝度から雲頂の温度を算出する。また、雲頂高度算出部103は、気象データ取得部22から地上の温度を取得する。
【0056】
次に、雲頂高度算出部103は、地上の温度と雲頂の温度との温度差を算出する。そして、雲頂高度算出部103は、算出した温度差に対して気温減率を用いて雲頂高度を算出する。例えば、標準大気の気温減率は6.5K/kmである。その後、雲頂高度算出部103は、算出した雲頂高度を雲厚算出部106へ出力する。
【0057】
例えば、地上センサ2で計測された地上の温度が20℃であり、赤外画像302から求められた雲頂の温度が220Kの場合で説明する。この場合、雲頂高度算出部103は、220-(273.15+20)=-73.15K/-6.5K=11.25から、雲頂高度を約11kmと算出する。
【0058】
雲厚算出部106は、雲底高度の入力を雲底高度算出部107から受ける。また、雲厚算出部106は、雲頂高度の入力を雲頂高度算出部103から受ける。
図11は、雲の厚さと雲頂高度及び雲底高度との関係を示す図である。
図11において、距離Hは雲底高度を表し、距離H’は雲頂高度を表し、距離LTは雲の厚さを表し、距離LWは雲の規模にあたる雲の水平距離を表す。
図11に示すように、距離LT=距離H’-距離Hである。そこで、雲厚算出部106は、雲頂高度から雲底高度を減算して、雲の厚さを算出する。例えば、雲頂高度が11kmであり、雲底高度が9kmの場合、雲厚算出部106は、雲の厚さを2kmと算出する。その後、雲厚算出部106は、求めた雲の厚さを様相識別部108へ出力する。
【0059】
ここで、雲厚算出部106は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報から取得できる雲の厚さの情報を用いて、求めた雲の厚さの検証及び補正を行ってもよい。例えば、雲厚算出部106は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報を画像照合部104から取得する。次に、雲厚算出部106は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報に含まれる雲の種類の情報から雲の厚さの推定値を求める。そして、雲厚算出部106は、雲の厚さの推定値を用いて、雲底高度及び雲頂高度から求めた雲の厚さの検証や補正を行う。
【0060】
様相識別部108は、雲の厚さの情報の入力を雲厚算出部106から受ける。そして、様相識別部108は、雲の厚さの情報を基に、衛星画像等を用いて、雲の規模LWといった雲の様相を識別する。その後、様相識別部108は、地上センサ2の天球カメラ21により撮影された雲の様相を気象情報データベース3へ送信して格納させる。
【0061】
図1に戻って説明を続ける。気象情報データベース3は、各種気象情報を保持管理するデータベースである。気象情報データベース3は、気象情報処理装置1の様相識別部108により識別された地上センサ2の天球カメラ21により撮影された雲の様相を取得して格納する。また、気象情報データベース3は、雲底高度、雲頂高度、雲の厚さを格納する。他にも、気象情報データベース3は、気象庁高解像度降水ナウキャスト等から得られるレーダー雨量、気象庁LIDEN(Lightning Detection Network system)から得られる雷情報、及び、気象庁の竜巻等のトップデータベースから得られる突風情報等の各種気象情報を格納する。
【0062】
気象情報データベース3に、雲の種類、雲底高度、雲頂高度、雲の厚さ及び雲の規模を蓄積していき、それらの情報を用いて機械学習を行うことで、いずれかの情報が得られない場合でも、他の情報から得られない情報を補うことが可能となる。この情報の補填は、情報活用基盤4が実行してもよいし、他のコンピュータにより実行されてもよい。
【0063】
情報活用基盤4は、気象情報データベース3に格納された雲の様相を含む各種気象情報を取得して、各種気象情報活用システム7で利用し易い形に加工する。例えば、情報活用基盤4は、雲の種類、規模、形状と、レーダー雨量、雷情報及び突風情報等の情報と関連付ける。これにより、情報活用基盤4は、様々な施設や設備の運用及び管理活用することができるデータに各種気象情報を加工することができる。情報活用基盤4は、気象情報を活用する各種気象情報活用システム7へ加工したデータを提供する。
【0064】
各種気象情報活用システム7は、例えば、太陽光発電システム71、発電所運用管理システム72、河川管理システム73、航空運航管理システム74、山岳情報提供システム75、気象予報システム76及び気象情報視覚化システム77等を含む。ただし、
図1に示したシステムは一例であり、気象情報を活用することが可能なシステムであれば、他のシステムであってもよい。
【0065】
例えば、太陽光発電システム71であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、より正確な太陽光発電による出力予測等を行うことが可能となる。また、発電所運用管理システム72であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、電力供給量の調整をより適切に行うことが可能となる。また、河川管理システム73であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、より正確な雨の予測ができ、川の氾濫等を正確に予測して適切な河川管理を行うことが可能となる。また、航空運航管理システム74であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、航路上の雲の状態等を正確に把握することができ、航空運航の管理をより適切に行うことができる。また、山岳情報提供システム75や気象予報システム76であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、より正確に将来の気象予測を行うことができ、適切な情報提供を行うことができる。また、気象情報視覚化システム77であれば、情報活用基盤4から提供された雲の様相を利用することで、より正確な雲の画像を提供することが可能となる。
【0066】
次に、
図12を参照して、雲の様相を含む気象情報提供の流れについて説明する。
図12は、雲の様相を含む気象情報提供のフローチャートである。
【0067】
地上センサ2は、天球カメラ21を用いて天球画像201を撮影する。また、地上センサ2は、気象データ取得部22を用いて地上の気温、気圧及び相対湿度を含む地上気象データを取得する(ステップS1)。そして、地上センサ2は、天球画像201及び地上気象データを気象情報処理装置1へ送信する。
【0068】
気象情報処理装置1は、天球画像201及び地上気象データを地上センサ2から受信する。また、気象情報処理装置1は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像を気象データ配信システム5から取得する。そして、気象情報処理装置1は、天球画像201、地上気象データ、並びに、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像を用いて天球画像201に映った雲の厚さを求めてその雲の様相を識別する(ステップS2)。
【0069】
気象情報処理装置1は、識別した雲の様相の情報を気象情報データベース3に格納する(ステップS3)。
【0070】
情報活用基盤4は、気象情報データベース3に格納された雲の様相の情報を含む各種気象情報を、各種気象情報活用システム7が利用し易いように加工する(ステップS4)。
【0071】
その後、情報活用基盤4は、加工した気象情報を各種気象情報活用システム7へ提供する(ステップS5)。
【0072】
各種気象情報活用システム7は、加工された気象情報を情報活用基盤4から取得する。そして、各種気象情報活用システム7は、天気予報や太陽光発電による出力予測等に加工された気象情報を活用する(ステップS6)。
【0073】
次に、
図13を参照して、気象情報処理装置1による雲の様相の識別処理の流れについて説明する。
図13は、気象情報処理装置による雲の様相の識別処理のフローチャートである。
【0074】
画像解析部101は、天球画像201及び気象データを地上センサ2から取得する(ステップS101)。
【0075】
また、画像解析部101は、気象衛星6により撮影された可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像を気象データ配信システム5から取得する(ステップS102)。
【0076】
次に、画像解析部101は、天球画像201の画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別、雲の種類の特定、個別の雲の時系列変化、並びに、個々の雲の地上センサ2からの方位角及び天頂角を含む天球画像解析情報を取得する。また、画像解析部101は、気象衛星画像の画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別、雲の種類の特定及び個別の雲の時系列変化を含む衛星画像解析情報を取得する(ステップS103)。その後、画像解析部101は、天球画像201を変換部102へ出力する。また、画像解析部101は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、地上気象データを画像照合部104へ出力する。このとき、画像解析部101は、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像203の撮影時刻も画像照合部104へ出力する。さらに、画像解析部101は、地上気象データ及び赤外画像302を雲頂高度算出部103へ出力する。
【0077】
変換部102は、天球画像201の入力を画像解析部101から受ける。そして、変換部102は、天球画像201を平面展開して平面画像202に変換する(ステップS104)。その後、変換部102は、生成した平面画像202を画像照合部104へ出力する。
【0078】
画像照合部104は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、地上気象データ、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像201の撮影時刻の入力を画像解析部101から受ける。そして、画像照合部104は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報から雲の種類を取得する。次に、画像照合部104は、取得した雲の種類から雲の高さを推定する。次に、推定した雲の高さを用いて、推定した雲の高さから平面画像202に納まった雲の水平方向の距離の推定値を求める。さらに、画像照合部104は、平面画像202の東西を反転する。次に、画像照合部104は、地上センサ2の緯度及び経度の情報から、平面画像202が可視画像301のどの領域に位置するかを特定し、可視画像301における平面画像202に映った雲を抽出する。次に、画像照合部104は、平面画像202に対して平行移動、回転及び拡大縮小等を行い、平面画像202と可視画像301とのマッチングを行う。画像照合部104は、このような画像照合解析処理を行うことで、可視画像301に映された雲の中から平面画像202に映された雲を同定する(ステップS105)。その後、画像照合部104は、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301を範囲取得部105へ出力する。
【0079】
範囲取得部105は、画像照合解析処理が施された平面画像202及び可視画像301を画像照合部104から取得する。次に、範囲取得部105は、可視画像301を用いて、平面画像202に映された雲の水平方向の距離を求める(ステップS106)。その後、範囲取得部105は、平面画像202に映った雲の水平方向の距離を雲底高度算出部107へ出力する。
【0080】
雲底高度算出部107は、平面画像202に映った雲の水平方向の距離の入力を範囲取得部105から受ける。そして、雲底高度算出部107は、平面画像202に映された雲の端部の地上センサ2に対する方位角及び天頂角を用いて、雲の水平方向の距離から平面画像202に映った雲の雲底高度を算出する(ステップS107)。この時、雲底高度算出部107は、地上の温度、気圧及び相対温度から持ち上げ凝結高度を求めて、雲底高度の推定値を算出する。そして、雲底高度算出部107は、雲底高度の推定値を用いて算出した雲底高度の検証及び補正を行う。その後、雲底高度算出部107は、算出した雲底高度を雲厚算出部106へ出力する。
【0081】
雲頂高度算出部103は、赤外画像302及び地上気象データの入力を画像解析部101から受ける。次に、雲頂高度算出部103は、地上気象データ及び赤外画像302から地上の温度及び雲頂温度を取得する(ステップS108)。
【0082】
次に、雲頂高度算出部103は、地上の温度と雲頂温度との温度差に気温減率を用いて雲頂高度を算出する(ステップS109)。その後、雲頂高度算出部103は、算出した雲頂高度を雲厚算出部106へ出力する。
【0083】
雲厚算出部106は、雲底高度の入力を雲底高度算出部107から受ける。また、雲厚算出部106は、雲頂高度の入力を雲頂高度算出部103から受ける。そして、雲厚算出部106は、雲頂高度から雲底高度を減算して、雲の厚さを算出する(ステップS110)。この時、雲厚算出部106は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報に含まれる雲の種類の情報を用いて雲の厚さの推定値を求めて、算出した雲の厚さの検証及び補正を行ってもよい。その後、雲厚算出部106は、算出した雲の厚さを様相識別部108へ出力する。
【0084】
様相識別部108は、雲の厚さの情報を雲厚算出部106から受ける。そして、様相識別部108は、雲の厚さを基に、可視画像301、赤外画像302及び平面画像202を用いて雲の種類、規模及び形状等の平面画像202に映った雲の様相を識別する(ステップS111)その後、様相識別部108は、識別した雲の様相の情報を気象情報データベース3に格納する。
【0085】
以上に説明したように、本実施例に係る気象情報処理装置は、地上から撮影された天球画像を平面画像に変換し、平面画像に映る雲を可視画像に映る雲の中から同定する。さらに、気象情報処理装置は、同定した結果を用いて平面画像に映る雲の水平方向の距離を求め、水平方向の距離を基に雲底高度を求める。また、気象情報処理装置は、赤外画像及び地上の温度から雲頂高度を求める。そして、気象情報処理装置は、求めた雲底高度及び雲頂高度から雲の厚さを算出し、算出した雲の厚さを用いて雲の様相を識別する。
【0086】
これにより、気象情報処理装置は、正確に雲の様相を識別することができ、気象データを活用するシステムの性能を向上させることが可能となる。また、雲の種類、雲底高度、雲頂高度及び雲の厚さを気象情報データベースに蓄積していき、それらの情報を用いて機械学習を行うことで、いずれかの情報が得られない場合でも、他の情報から得られない情報を補うことが可能となる。したがって、情報が十分に得られない場合でも、適切な気象情報を各種気象情報活用システムに提供することが可能となる。
【0087】
(変形例)
次に、実施例1の変形例について説明する。
図14は、高度の違う雲の平面画像における位置関係を説明するための図である。例えば、
図14に示すように、低い高度の雲C1と高い高度の雲C2とが存在する場合について説明する。平面画像202では、高度の差は表現されずに、高度の異なる雲C1及びC2はいずれも同一平面に表される。そのため、雲C1及びC2が同じ高度に存在するようにも考えられ、その場合、雲C2は、見かけの位置が雲C1と同じ高度となり、雲C21の位置に存在するように見える。この時、雲C2を雲C1と同じ高度と考えた場合、雲C2の天頂からの距離は、距離L1と算出される。しかし、実際には、雲C2からの天頂からの距離は、距離L2であり、算出された距離L1とは大きく異なる。例えば、雲C1の高度が1000mであり、雲C2の高度が10000mであり、天頂と雲C2との角度φが30度である場合、距離L2は5800mであるのに対して、距離L1は580mとなる。このように、雲の構造が複雑な場合に、平面画像202に映った雲の高度を考慮せずに同一高度として算出すると、雲の水平方向の距離に誤差が発生してしまう。
【0088】
そこで、本変形例に係る気象情報処理装置1は、雲の構成が複雑な場合に、高さの異なる雲を分類して、それぞれについて水平方向の距離を求める。以下に、変形例に係る気象情報処理装置1による雲の水平方向の距離の求め方について説明する。
図15は、実施例1の変形例に係る気象情報処理装置による高さの異なる雲のそれぞれの雲底高度の算出を説明するための図である。
【0089】
範囲取得部105は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報から、識別された個々の雲の種類の情報を取得する。そして、範囲取得部105は、雲の種類に応じて平面画像202に映った雲を分類することで、雲の高度に応じた分類を行う。ここで、範囲取得部105は、等しい高度に存在する雲については同じ分類としてもよい。そして、範囲取得部105は、分類毎に、天頂からの雲の端部の方位角及び天頂角を用いて雲の水平距離を求める。そして、範囲取得部105は、雲の高度に応じた分類毎の雲の水平距離を雲底高度算出部107へ出力する。
【0090】
例えば、範囲取得部105は、
図15に示す雲C1が属する雲のグループと、雲C2が属する雲のグループに雲を分類する。そして、範囲取得部105は、雲C1が属するグループの雲の水平方向の距離を距離LH1と求める。また、範囲取得部105は、雲C2が属するグループの雲の水平方向の距離を距離LH2と求める。このように、範囲取得部105は、異なる高さの雲C1と雲C2とのそれぞれについて水平方向の距離を求める。
【0091】
雲底高度算出部107は、雲の高度に応じた分類毎の雲の水平距離を範囲取得部105から取得する。そして、雲底高度算出部107は、雲の高度に応じた分類毎に雲底高度を算出する。例えば、
図15に示すように、雲底高度算出部107は、雲C1の雲底高度を距離H1と求める。また、雲底高度算出部107は、雲C2の雲底高度を距離H2と求める。その後、雲底高度算出部107は、雲の高度に応じた分類毎の雲底高度を雲厚算出部106へ出力する。
【0092】
その後、雲厚算出部106は、雲の高度に応じた分類毎の雲底高度の入力を雲底高度算出部107から受ける。そして、雲厚算出部106は、雲の高度に応じた分類毎の雲底高度を用いて、雲の高度に応じた分類毎に雲の厚さを算出する。
【0093】
ここで、本実施例では、異なる高度の雲のそれぞれについての様相を識別する場合で説明したが、特定の雲について注目する場合には、気象情報処理装置1は、特定の雲についての情報を取得すればよい。例えば、範囲取得部105は、雲の高度に応じて雲を分類したうえで、注目する特定の雲以外の雲は除外し、特定の雲が含まれる分類に制限して水平方向の算出を行ってもよい。
【0094】
以上に説明したように、本変形例に係る気象情報処理装置は、雲の種類を用いて雲を分類することで高度に応じた雲の分類を行う。そして、気象情報処理装置は、雲の高度に応じた分類毎に雲の水平方向の距離を求めて雲の厚さを算出する。これにより、平面画像に映った高度の異なる雲の水平方向の距離の誤差を低減することができる。すなわち、雲の構成が複雑な場合にも、各雲の様相を適切に識別することができ、気象データを活用するシステムの性能を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0095】
図16は、実施例2に係る気象情報処理装置のブロック図である。本実施例に係る気象情報処理装置1は、雲の様相の識別に加えて、雲及び雲域の移動方向及び移動速度を求める。そこで、以下では、気象情報処理装置1による雲及び雲域の移動方向及び移動速度の算出について主に説明する。本実施例に係る気象情報処理装置1は、実施例1の各部に加えて、移動速度算出部109を有する。以下の説明では、実施例1と同様の各部の動作については説明を省略する。
【0096】
画像解析部101は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報を移動速度算出部109へ出力する。また、画像照合部104は、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301を移動速度算出部109へ出力する。
【0097】
移動速度算出部109は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報の入力を画像解析部101から受ける。また、移動速度算出部109は、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301の入力を画像照合部104から受ける。
【0098】
そして、移動速度算出部109は、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301を用いて、個別の雲や雲域の時系列変化をトレースする。そして、移動速度算出部109は、トレースした時系列変化を用いて、個別の雲や雲域の移動方向及び移動速度を算出する。
【0099】
図17は、移動方向及び移動速度の算出の一例を説明するための図である。例えば、移動速度算出部109は、12:00に撮影された可視画像401において同定された位置411の雲を抽出する。画像解析部101は、2.5分~10分程度で次の衛星画像を取得する。そこで、移動速度算出部109は、12:10に撮影された可視画像402において同定された位置412の雲を抽出する。そして、移動速度算出部109は、雲の種類や形状等から位置411に存在した雲が位置412まで移動した判定する。そこで、移動速度算出部109は、10分間で位置411が位置412まで雲が移動したことから、矢印P1で表される雲の移動速度及び移動方向を求める。
【0100】
次に、移動速度算出部109は、現在までの個別の雲や雲域の移動方向及び移動速度の履歴から、個別の雲や雲域の将来の移動速度及び移動位置を算出して、個別の雲や雲域の将来の位置を予測する。例えば、
図17に示すように、移動速度算出部109は、矢印P1で表される移動方向及び移動速度を含むそれまでの雲の移動方向及び移動速度の履歴から、雲のその後の移動方向及び移動速度を算出する。そして、移動速度算出部109は、その後の雲の移動位置である位置413~415を予測する。
【0101】
その後、移動速度算出部109は、個別の雲や雲域の移動方向及び移動速度の履歴を気象情報データベース3へ送信して格納させる。また、移動速度算出部109は、個別の雲や雲域の移動速度及び移動方向の予測値、並びに、個別の雲や雲域の予測した位置の情報を気象情報データベース3へ送信して格納させる。
【0102】
情報活用基盤4は、個別の雲や雲域の移動方向及び移動速度、並びに、将来の位置等を用いて、データ加工を行う。そして、情報活用基盤4は、個別の雲や雲域の移動方向及び移動速度、並びに、将来の位置等を用いて加工した気象情報を各種気象情報活用システム7へ提供する。
【0103】
次に、
図18を参照して、気象情報処理装置1による雲及び雲域の移動方向及び移動速度の算出処理の流れについて説明する。
図18は、実施例2に係る気象情報処理装置による雲及び雲域の移動方向及び移動速度の算出処理のフローチャートである。
【0104】
画像解析部101は、天球画像201及び気象データを地上センサ2から取得する(ステップS201)。
【0105】
また、画像解析部101は、気象衛星6により撮影された可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像を気象データ配信システム5から取得する(ステップS202)。
【0106】
次に、画像解析部101は、天球画像201の画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別、雲の種類の特定、個別の雲の時系列変化、並びに、個々の雲の地上センサ2からの方位角及び天頂角を含む天球画像解析情報を取得する。また、画像解析部101は、気象衛星画像の画像解析を行い、各領域の雲のありなしの判定、個々の雲の識別、雲の種類の特定及び個別の雲の時系列変化を含む衛星画像解析情報を取得する(ステップS203)。その後、画像解析部101は、天球画像201を変換部102へ出力する。また、画像解析部101は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、地上気象データを画像照合部104へ出力する。このとき、画像解析部101は、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像203の撮影時刻も画像照合部104へ出力する。さらに、画像解析部101は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報を移動速度算出部109へ出力する。
【0107】
変換部102は、天球画像201の入力を画像解析部101から受ける。そして、変換部102は、天球画像201を平面展開して平面画像202に変換する(ステップS204)。その後、変換部102は、生成した平面画像202を画像照合部104へ出力する。
【0108】
画像照合部104は、可視画像301及び赤外画像302を含む気象衛星画像、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、地上気象データ、地上センサ2の緯度経度及び平面画像202の元となった天球画像203の撮影時刻の入力を画像解析部101から受ける。そして、画像照合部104は、画像照合解析処理を行うことで、可視画像301に映された雲の中から平面画像202に映された雲を同定する(ステップS205)。その後、画像照合部104は、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301を移動速度算出部109へ出力する。
【0109】
移動速度算出部109は、衛星画像解析情報及び天球画像解析情報の入力を画像解析部101から受ける。また、移動速度算出部109は、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301の入力を画像照合部104から受ける。そして、移動速度算出部109は、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、画像照合解析処理を施した平面画像202及び可視画像301を用いて、個別の雲や雲域の時系列変化をトレースして移動方向及び移動速度の履歴を求める(ステップS206)。
【0110】
次に、移動速度算出部109は、移動方向及び移動速度の履歴から、個別の雲及び雲域の将来の移動を予測する(ステップS207)。その後、移動速度算出部109は、予測した個別の雲及び雲域の将来の移動の情報を気象情報データベース3に格納させる。
【0111】
以上に説明したように、本実施例に係る気象情報処理装置は、衛星画像解析情報、天球画像解析情報、並びに、雲の同定を行った平面画像及び可視画像を用いて、個別の雲及び雲域の移動方向及び移動速度の履歴を求める。また、気象情報処理装置は、個別の雲及び雲域の移動方向及び移動速度の履歴から、個別の雲及び雲域の将来の移動を予測する。これらの情報を加えて加工を行った気象情報を各種気象情報活用システムへ提供することでより、詳細で利用価値の高い情報を提供することができ、気象データを活用するシステムの性能を向上させることが可能となる。
【0112】
(ハードウェア構成)
図19は、気象情報処理装置のハードウェア構成図である。気象情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、ハードディスク93及びネットワークインタフェース94を有する。CPU91は、メモリ92、ハードディスク93及びネットワークインタフェース94とバスで接続される。
【0113】
ネットワークインタフェース94は、例えば、地上センサ2、気象情報データベース3及び気象データ配信システム5と通信を行うためのインタフェースである。
【0114】
ハードディスク93は、
図2及び16に例示した画像解析部101、変換部102、雲頂高度算出部103、画像照合部104、範囲取得部105、雲厚算出部106、雲底高度算出部107、様相識別部108及び移動速度算出部109の機能を実現するためのプログラムを含む各種プログラムを格納する。
【0115】
CPU91は、
図2及び16に例示した、各種プログラムをハードディスク93から読み出し、メモリ92上に展開して実行する。これにより、CPU91及びメモリ92は、
図2及び16に例示した、画像解析部101、変換部102、雲頂高度算出部103、画像照合部104、範囲取得部105、雲厚算出部106、雲底高度算出部107、様相識別部108及び移動速度算出部109の機能を実現する。
【符号の説明】
【0116】
1 気象情報処理装置
2 地上センサ
3 気象情報データベース
4 情報活用基盤
5 気象データ配信システム
6 気象衛星
7 各種気象情報活用システム
101 画像解析部
102 変換部
103 雲頂高度算出部
104 画像照合部
105 範囲取得部
106 雲厚算出部
107 雲底高度算出部
108 様相識別部
109 移動速度算出部
21 天球カメラ
22 気象データ取得部