(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240716BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240716BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240716BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240716BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/36 D
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2022104965
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084965
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0075679
(32)【優先日】2022-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】姜 秉旭
(72)【発明者】
【氏名】梁 祐榮
(72)【発明者】
【氏名】崔 益圭
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-340226(JP,A)
【文献】国際公開第2021/045025(WO,A1)
【文献】特開2020-053115(JP,A)
【文献】特開2009-283354(JP,A)
【文献】特開2001-085006(JP,A)
【文献】特開2020-064858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
C01G53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の大結晶一次粒子を含むニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子であり、前記二次粒子は、内部に気孔を有する中空型構造であり、大結晶一次粒子サイズは、2μmないし6μmであり、二次粒子サイズは、10μmないし18μmである、リチウム二次電池用正極活物質
であって、
中空型構造を有する正極活物質の内部の気孔サイズは、2μmないし7μmであり、
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である、リチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Li
a
(Ni
1-x-y
M1
x
M2
y
)O
2±α1
化学式1で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦α1≦0.1であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【請求項2】
複数の大結晶一次粒子を含むニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子であり、前記二次粒子は、内部に気孔を有する中空型構造であり、大結晶一次粒子サイズは、2μmないし6μmであり、二次粒子サイズは、10μmないし18μmである、リチウム二次電池用正極活物質であって、
中空型構造を有する正極活物質の内部の気孔サイズは、2μmないし7μmであり、
前記正極活物質に係わるX線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(003)/I(104)が、1.2ないし4.0であり、I(003)は、(003)面のピーク強度であり、I(104)は、(104)面のピーク強度である、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項
2に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Li
a(Ni
1-x-yM1
xM2
y)O
2±α1
化学式1で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦α1≦0.1であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【請求項4】
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式2で表される化合物である、請求項
1に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式2]
Li
a(Ni
1-x-y-zCo
xM3
yM4
z)O
2±α1
化学式2で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれる。
【請求項5】
前記大結晶一次粒子サイズは、2μmないし4μmであり、二次粒子サイズは、12μmないし18μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質に係わるX線回折分析法によって測定された面積比A
(003)/A
(104)が、1.1ないし1.4である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質に係わるX線回折分析法によって測定されたFWHM
(003)/FWHM
(104)が、0.80ないし0.87である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記二次粒子は、2層以内の大結晶一次粒子層を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
ニッケル前駆体と、M1前駆体及びM2前駆体のうちから選択された1以上と、塩基性溶液とを混合して混合物を得て、前記混合物の共沈反応を実施した後、それを乾燥させて内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体を得る段階と、
前記内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体と、リチウム前駆体との混合物を得る段階と、
前記混合物の一次熱処理を実施する段階と、
一次熱処理された生成物に対する二次熱処理を実施して、請求項1ないし
8のうちいずれか1項に記載の正極活物質を製造する段階と、を含み、
前記一次熱処理は、二次熱処理に比べて高い温度で実施し、
前記M1前駆体は、コバルト前駆体、マンガン前駆体及びアルミニウム前駆体のうちから選択された1以上であり、
前記M2前駆体は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素を含む前駆体であり、
前記共沈反応時、混合物のpHが11ないし12において撹拌され、第1混合物のpHが初期pH比0.1~0.3ほど低減する、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体は、非晶質状態を有し、ニッケル系金属前駆体は、二次粒子であり、二次粒子サイズは、10μmないし18μmである、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記ニッケル系金属前駆体は、下記化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物、またはその組み合わせである、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法:
[化学式3]
(Ni
1-x-yM1
xM2
y)(OH)
2
化学式3で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、x及びyが同時に0である場合は、除かれ、
[化学式4]
(Ni
1-x-yM1
xM2
y)O
化学式4で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【請求項12】
前記ニッケル系金属前駆体は、下記化学式5の化合物、化学式6の化合物、またはそれらの組み合わせで表される、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法:
[化学式5]
Ni
1-x-y-zCo
xM3
yM4
z(OH)
2
化学式5で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれ、
[化学式6]
(Ni
1-x-y-zCo
xM3
yM4
z)O
化学式6で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれる。
【請求項13】
前記ニッケル系金属前駆体と前記リチウム前駆体は、Li/Liを除いた金属のモル比(Li/Me)が0.9以上であり、1.1未満になるように混合する、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム前駆体は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、またはそれらの組み合わせである、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記一次熱処理は、酸化性ガス雰囲気下、800℃ないし1,200℃で実施する、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記二次熱処理は、酸化性ガス雰囲気下、600℃ないし900℃で実施する、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記混合物の一次熱処理を実施する段階を実施した後、解砕段階をさらに含む、請求項
9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項18】
正極集電体、及び正極集電体上に配された正極活物質層を含むリチウム二次電池用正極であり、
前記正極活物質層は、i)請求項1ないし
8のうちいずれか1項に記載の正極活物質と、ii)前記正極活物質と同一組成である大結晶粒子、及びその凝集体のうちから選択される1以上と、を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項19】
前記正極活物質は、大きさが0.5μmないし5μmである気孔を含む、請求項
18に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項20】
前記正極は、正極集電体に隣接した中心部よりも表面部において、大結晶粒子を多く含む、請求項
18に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項21】
前記正極は、表面部よりも正極集電体に隣接した中心部において、中空型構造の正極活物質がさらに含まれる、正極活物質層を含む、請求項
18に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項22】
前記正極は、2層以内の正極活物質層を含む、請求項
18に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項23】
請求項
18に記載の正極と、
負極と、
それら間に介在された電解質と、を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器、通信機器などの発展により、高エネルギー密度のリチウム二次電池に係わる開発の必要性が高い。しかしながら、高エネルギー密度のリチウム二次電池は、安全性が低下されており、それに対する改善が必要である。
【0003】
長寿命及びガスが低減されたリチウム二次電池を製造するために、リチウム二次電池の正極活物質としては、大結晶粒子正極活物質の利用が検討されている。該大結晶粒子正極活物質は、大結晶粒子化のための高温における熱処理により、粒子凝集現象が生じるか、あるいは生産性が低下されるという問題点がある。
【0004】
大結晶粒子正極活物質の粒子凝集現象解消のために、該大結晶粒子正極活物質を利用する場合、粉砕工程を経る。ところが、そのような粉砕工程を経ると、正極活物質の大結晶粒子特性が低下され、残余粉砕物が生じてしまうため、それに対する改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、粒子間凝集が抑制され、陽イオン混合比が低減されたリチウム二次電池用正極活物質を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述の正極活物質の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述の正極活物質を含む正極を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述の正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様により、
複数の大結晶一次粒子(large primary particle)を含むニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子であり、前記二次粒子は、内部に気孔を有する中空型構造であり、大結晶一次粒子の大きさは、2μmないし6μmであり、二次粒子の大きさは、10μmないし18μmである、リチウム二次電池用正極活物質が提供される。
【0010】
他の態様により、ニッケル前駆体と、M1前駆体及びM2前駆体のうちから選択された1以上と、塩基性溶液とを混合して混合物を得て、前記混合物の共沈反応を実施した後、それを乾燥させて内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体を得る段階と、
前記内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体と、リチウム前駆体との混合物を得る段階と、
前記混合物の一次熱処理を実施する段階と、
一次熱処理された生成物に対する二次熱処理を実施して、前述の正極活物質を製造する段階と、を含み、
前記一次熱処理は、二次熱処理に比べて高い温度で実施し、
前記M1前駆体は、コバルト前駆体、マンガン前駆体及びアルミニウム前駆体のうちから選択された1以上であり、
前記M2前駆体は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素を含む前駆体である、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の態様により、正極集電体、及び正極集電体上に配された正極活物質層を含むリチウム二次電池用正極であり、
前記正極活物質層は、前述の正極活物質と、前記正極活物質と同一組成である大結晶粒子、及びその凝集体のうちから選択される1以上と、を含む、リチウム二次電池用正極が提供される。
【0012】
さらに他の態様により、前述の正極、負極、及びそれらの間に介在された電解質を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるリチウム二次電池用正極活物質を利用すれば、正極活物質の粉砕工程を省略することができ、粒子間凝集が抑制され、生産性が向上されるだけではなく、陽イオン混合比が低減され、高容量が可能な大結晶粒子リチウム二次電池用ニッケル系活物質を製造することができる。そのようなリチウム二次電池用ニッケル系活物質を利用して製造されたリチウム二次電池は、充放電効率が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】実施例1によって製造された正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)写真である。
【
図1B】一具現例による、1層構造を有する中空型正極活物質の構造を概略的に示した図である。
【
図1C】他の一具現例による、2層構造を有する中空型正極活物質の構造を概略的に示した図である。
【
図2A】比較例2の正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2B】比較例2の正極活物質の表面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2C】比較例3の正極活物質の表面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2D】比較例4の正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3A】製造例1によって製造されたニッケル系金属前駆体の断面を示す電子走査顕微鏡(SEM)分析結果を示した図である。
【
図3B】製造例1によって製造されたニッケル系金属前駆体の断面を示す電子走査顕微鏡(SEM)分析結果を示した図である。
【
図3C】比較製造例1のニッケル系金属前駆体に対する電子走査顕微鏡(SEM)分析結果を示した図である。
【
図4A】製作例1によって製造された正極の製造時の、プレスを実施する以前の状態を示したイメージである。
【
図4B】製作例1によって製造された正極の製造時の、プレスを実施する以前の状態を拡大して示したイメージである。
【
図4C】製作例1によって製造された正極の製造時の、プレスを実施した後の状態を示したイメージである。
【
図4D】比較製作例4によって製造された正極の製造時の、プレスを実施した後の状態を拡大して示したイメージである。
【
図5】例示的な具現例によるリチウム二次電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一具現例によるリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むリチウム二次電池用正極、及び前記正極を具備したリチウム二次電池について詳細に説明する。
【0016】
寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製造するために、大結晶粒子正極活物質を含む正極が利用される。該大結晶粒子正極活物質は、製造時、リチウムを過量に投入し、高温熱処理する過程を経るが、高温熱処理により、粒子同士が塊になるか、あるいは生産性が低下され、残留リチウムが増大される。また、そのような大結晶粒子正極活物質を利用し、リチウム二次電池を製造する場合、該リチウム二次電池の容量及び充放電効率が低下する。
【0017】
大結晶粒子正極活物質は、前述のように、粒子凝集現象が示されるため、正極の製造時、粉砕工程を経なければならない。ところが、そのような粉砕工程を経ると、正極活物質の大結晶粒子特性が低下され、残余粉砕物が生じてしまうため、それに対する改善が必要である。
【0018】
そのために、本発明者らは、前述の問題点を解決し、粉砕工程が不必要な大結晶粒子正極活物質に係わる本願発明を完成させた。
【0019】
一具現例によるリチウム二次電池用正極活物質は、複数の大結晶一次粒子を含むニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子であり、前記二次粒子は、内部に気孔を有する中空型構造であり、大結晶一次粒子の大きさは、2μmないし6μmであり、二次粒子の大きさは、10μmないし18μmである。
【0020】
本明細書において、粒子が球形である場合、「大きさ」は、平均粒径を示し、非球形である場合、長軸長を示す。粒子サイズは、電子走査顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)または粒子サイズ分析器を利用して測定可能である。該粒子サイズ分析器としては、例えば、レーザ粒子径分布測定装置(堀場製作所)を挙げることができる。粒子サイズを、粒子サイズ分析器を利用して測定する場合、平均粒径は、D50を言う。D50は、粒度分布において、累積体積が50体積%に該当する粒子の平均径を意味し、粒子サイズが最も小さい粒子から、粒子サイズが最大である粒子の順序で累積させた分布曲線において、全体粒子個数を100%にしたとき、最も小さい粒子から50%に該当する粒径の値を意味する。
【0021】
一具現例による正極活物質において二次粒子は、2層以内の大結晶一次粒子層を含むものでもある。
【0022】
一具現例による正極活物質10は、二次粒子であり、
図1Bから分かるように1層構造を有する中空型大結晶一次粒子層を含む。該中空型大結晶一次粒子層は、一次粒子11を含む。
【0023】
他の一具現例による正極活物質は、
図1Cに示されているように、2層構造を有する中空型大結晶一次粒子層を含む。そのような構造を有することにより、プレス時、崩れる過程が容易になされうる。
図1Cにおいて、参照番号11a,11bは、それぞれ第1一次粒子及び第2一次粒子を示し、それらは、それぞれ第1層の一次粒子層及び第2層の一次粒子層を形成する。
【0024】
一具現例による正極活物質は、プレスで崩れやすいクラスタ構造を有しており、別途の粉砕工程なしに正極を製造することができる。そのような正極活物質を利用すれば、粉砕工程なしに、正極板において、導電材及びバインダが連続して連結された形態を有しうる。
【0025】
一具現例による正極活物質は、プレス過程において一部崩れ、複数個の大結晶一次粒子と、前記一次粒子の凝集体である二次粒子とを含むものでもある。
【0026】
一具現例による正極活物質において、一次粒子サイズは、例えば、2μmないし6μm、2μmないし4μm、または2μmないし3.5μmであり、二次粒子サイズは、例えば、10μmないし18μm、12μmないし18μm、または12μmないし14μmである。そして、正極活物質の内部の気孔サイズは、2μmないし7μm、2μmないし5μm、または2.5μmないし4μmである。正極活物質の一次粒子サイズ、二次粒子サイズ及び内部の気孔サイズが前記範囲であるとき、容量特性がすぐれる正極活物質を得ることができる。本明細書において気孔サイズは、電子走査顕微鏡(SEM)、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法などを利用して測定可能である。
【0027】
本明細書において、用語「正極活物質の『内部』」は、正極活物質の中心から表面までの総体積において、中心から50ないし70体積%、例えば、60体積%の領域、または正極活物質の中心から表面までの総距離において、正極活物質の最外郭から3μm以内の領域(外部)を除いた残り領域を言う。
【0028】
ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式1で表される化合物である。
【0029】
[化学式1]
Lia(Ni1-x-yM1xM2y)O2±α1
化学式1で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦α1≦0.1であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【0030】
ニッケル系リチウム金属酸化物は、例えば、下記化学式2で表される化合物である。
【0031】
[化学式2]
Lia(Ni1-x-y-zCoxM3yM4z)O2±α1
化学式2で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれる。
【0032】
化学式2でニッケルの含量は、例えば、リチウムを除いた金属の総含量を基準にして、60ないし95モル%、または60ないし85モル%である。
【0033】
一具現例によるリチウム二次電池用正極活物質のX線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(003)/I(104)は、1.2ないし4.0、1.2ないし2.0、1.6ないし2.0、1.6ないし1.95、1.6ないし1.9、1.6ないし1.8または1.6ないし1.75、または1.67ないし1.75である。そして、前記正極活物質を含む正極板のX線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(003)/I(104)は、1.2ないし4.0、1.2ないし2.0、1.5ないし1.8または1.67ないし1.79であり、面積比A(003)/A(104)は、1.1ないし1.4、1.1ないし1.35ないし1.25ないし1.35である。
【0034】
X線回折分析において、ピーク強度I(003),I(104)は、それぞれ(003)面ピークの強度、及び(104)面ピークの強度I(104)を意味する。また、ピーク強度比I(003)/I(104)は、(104)面ピークの強度に対する(003)面ピークの強度比であり、結晶粒の均一配向程度(配向性)を評価するために作られたパラメータである。I(003)/I(104)から、陽イオン混合(cation mixingまたはcation exchange)程度を評価することができる。
【0035】
(104)面は、リチウムイオンの移動通路面に垂直である面を示し、層状構造の結晶面の配向程度が増大するほど、(104)面のピーク強度が低減することになる。従って、配向程度が増大するほど、(104)面のピーク強度が低減し、I(003)/I(104)が増大する。そして、ピーク強度比I(003)/I(104)が増大すれば、安定した正極活物質構造が形成されることを示す。
【0036】
本発明の正極活物質は、FWHM(full width at half maximum)(003)が0.079°ないし0.082°、例えば、0.081°であり、正極活物質のX線回折分析で求められるFWHM(003)/FWHM(104)は、0.80ないし0.87、または0.80ないし0.85ほどと、大結晶粒子であることが分かる。ここで、FWHM(003)は、(003)面に該当するピークの半値幅(FWHM)を示し、FWHM(104)は、(104)面に該当するピークの半値幅(FWHM)を示す。
【0037】
(003)面に該当するピークは、回折角が18°ないし20°、例えば、19°であり、(104)面に該当するピークは、回折角が43°ないし46°、例えば、45°である。
【0038】
また、一具現例による正極活物質は、電子走査顕微鏡(SEM)を介して断面微細構造を観測するとき、準マイクロ(sub-micro)スケール以上の結晶粒(grain)及び粒界(grain boundary)の確認を介し、大結晶粒子であることが分かる。
【0039】
一具現例による正極活物質、及び該正極活物質を含む正極板のピーク強度比I(003)/I(104)、FWHM(003)/FWHM(104)、A(003)/A(104)及びI(003)/I(101)がそれぞれ前述の範囲内である場合、正極活物質の結晶構造の安定性が改善され、リチウムの吸蔵/放出による膨張率と収縮率とを改善させることができる。従って、リチウム二次電池の容量特性を向上させることができる。
【0040】
以下、一具現例による正極活物質の製造方法について述べる。
【0041】
まず、ニッケル前駆体、M1前駆体及びM2前駆体のうちから選択された1以上の金属前駆体、及び塩基性溶液を混合して得た混合物の共沈反応を実施した後、乾燥させ、内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体を得る。該ニッケル系金属前駆体は、非晶質特性を有し、該ニッケル系金属前駆体は、二次粒子であり、該二次粒子サイズは、10μmないし18μmである。
【0042】
前記M1前駆体は、下記化学式1のM1と同一であり、コバルト前駆体、マンガン前駆体及びアルミニウム前駆体のうちから選択された1以上である。そして、前記M2前駆体は、下記化学式1のM2と同一であり、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素を含む前駆体である。
【0043】
[化学式1]
Lia(Ni1-x-yM1xM2y)O2±α1
化学式1で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦α1≦0.1であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【0044】
前記金属前駆体は、例えば、ニッケル前駆体、コバルト前駆体、マンガン前駆体及び金属(M2)前駆体のうちから選択された1以上を有しうる。
【0045】
前記共沈反応時、混合物を、pH11ないし12の範囲において、8ないし12時間、または9ないし10時間撹拌した後、混合物のpHを10.8ないし11.9に調節し、pHを、初期pH基準で、0.1ないし0.3または0.1ないし0.2ほど低減させ、共沈速度を変化させ、ニッケル系金属前駆体の内部及び外部の合成速度差を発生させる。混合物は、pH調整後、例えば、8ないし12時間撹拌することができる。その結果、内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体を得ることができる。ここで、該ニッケル系金属前駆体は、ニッケル系リチウム金属酸化物を得るための前駆体を示す。
【0046】
本発明において、前述の共沈反応は、一般的な正極活物質前駆体の製造方法と比較し、速い速度で進められ、コアの気孔分布を高く制御し、正極活物質に対する別途の粉砕工程を実施せずとも、正極活物質を容易に製造することができ、生産性が向上されうる。気孔分布を高く制御すれば、熱処理後、活物質に気孔が多くなり、プレス時、該活物質が良好に崩れ、正極において、優秀な電気化学特性を発揮することができることになる。ここで、該共沈反応を速い速度で進めることは、撹拌速度を速く進めながら、撹拌時間を短く調節することで可能になる。
【0047】
内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体は、正極活物質と同様に、複数の一次粒子を含む二次粒子であり、内部に気孔を有する中空型構造を有する。前記二次粒子サイズは、例えば、12μmないし18μm、または12μmないし14μmである。
【0048】
そして、前記一次粒子サイズは、0.2μmないし0.3μm(200nmないし300nm)である。内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体の一次粒子サイズ及び二次粒子サイズが前記範囲であるとき、相安定性にすぐれ、容量特性が改善された正極活物質を得ることができる。
【0049】
前述の、内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体は、非晶質特性を示し、気孔が存在する内部と、内部に比べて緻密な構造を有する外部とを含む。該ニッケル系金属前駆体の非晶質特性は、X線回折分析で確認可能である。
【0050】
本明細書において、ニッケル系金属前駆体の「内部」は、多数の気孔が存在する気孔領域を示し、前駆体の中心から表面までの総体積において、中心から50ないし70体積%、例えば、60体積%の領域、または前駆体の中心から表面までの総距離において、正極活物質の最外郭から3μm以内の領域(外部)を除いた残り領域を言う。
【0051】
他の一具現例によれば、ニッケル系金属前駆体の内部は、気孔を含む気孔領域を有し、該気孔領域は、例えば、長軸長が2μmないし7μm、例えば、3.5μmないし5μmである。
【0052】
前記混合物には、錯化剤、pH調節剤などが含まれてもよい。
【0053】
該pH調節剤は、反応器内部において、金属イオン溶解度を低くし、金属イオンが水酸化物として析出されるようにする役割を行う。該pH調節剤は、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などである。該pH調節剤は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0054】
該錯化剤は、共沈反応において、沈殿物の形成反応速度を調節する役割を行う。該錯化剤は、水酸化アンモニウム(NH4OH)(アンモニア水)、クエン酸、アクリル酸、酒石酸、グリコール酸、またはその組み合わせである。該錯化剤の含量は、一般的なレベルで使用される。該錯化剤は、例えば、アンモニア水である。
【0055】
前記共沈反応によって得られた生成物を洗浄した後、それを乾燥させ、目的とするニッケル系金属前駆体を得ることができる。ここで、該乾燥は、一般的な条件で実施される。
【0056】
前述のニッケル前駆体と、M1前駆体及びM2前駆体のうちから選択された1以上の金属前駆体は、例えば、ニッケル前駆体、マンガン前駆体及びコバルト前駆体を含む。代案としては、前記金属前駆体は、例えば、ニッケル前駆体、コバルト前駆体及びアルミニウム前駆体を含む。
【0057】
ニッケル前駆体の例としては、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O4・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物、またはその組み合わせを有しうる。マンガン前駆体は、例えば、Mn2O3、MnO2及びMn3O4のようなマンガン酸化物;MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン及び脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化物、塩化マンガンのようなハロゲン化物;またはその組み合わせを有しうる。
【0058】
コバルト前駆体の例としては、Co(OH)2、CoOOH、CoO、Co2O3、Co3O4、Co(OCOCH3)2・4H2O、CoCl2、Co(NO3)2・6H2O、CoSO4、Co(SO4)2・7H2O、またはその組み合わせを有しうる。
【0059】
アルミニウム前駆体は、例えば、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、またはその組み合わせを有しうる。
【0060】
前述のM2前駆体において、各元素を含む前駆体は、各元素を含む塩、水酸化物、オキシ水酸化物、ハロゲン化物、またはその組み合わせを有しうる。ここで、前述の元素を含む塩は、例えば、前述の元素を含む硫酸塩(sulfate)、アルコキシ化物(alkoxide)、シュウ酸塩(oxalate)、リン酸塩(phosphate)、ハロゲン化物(halide)、オキシハロゲン化物(oxyhalide)、硫化物(sulfide)、酸化物(oxide)、過酸化物(peroxide)、酢酸塩(acetate)、硝酸塩(nitrate)、炭酸塩(carbonate)、クエン酸塩(citrate)、フタル酸塩(phthalate)及び過塩素酸塩(perchlorate)のうちから選択される1種以上を有しうる。
【0061】
ニッケル前駆体と、M1前駆体及びM2前駆体のうちから選択された1以上の金属前駆体の含量は、目的とするニッケル系金属前駆体が得られるように、化学量論的に制御される。
【0062】
前記ニッケル系金属前駆体は、下記化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物、またはその組み合わせである。
【0063】
[化学式3]
(Ni1-x-yM1xM2y)(OH)2
化学式3で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、x及びyが同時に0である場合は、除かれ、
[化学式4]
(Ni1-x-yM1xM2y)O
化学式4で、M1は、Co、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M2は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4であり、x及びyが同時に0である場合は、除かれる。
【0064】
ニッケル系金属前駆体は、例えば、下記化学式5の化合物、化学式6の化合物、またはそれらの組み合わせで表される化合物である。
【0065】
[化学式5]
Ni1-x-y-zCoxM3yM4z(OH)2
化学式5で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれ、
[化学式6]
(Ni1-x-y-zCoxM3yM4z)O
化学式6で、M3は、Mn及びAlのうちから選択される1以上の元素であり、
M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれる。
【0066】
前記ニッケル系金属前駆体は、例えば、化学式7で表される化合物、化学式8で表される化合物、またはその組み合わせである。
【0067】
[化学式7]
Ni1-x-y-zCoxMnyM4z(OH)2
化学式7で、M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウムからなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれ、
[化学式8]
(Ni1-x-y-zCoxAlyM4z)O
化学式8で、M4は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択された1以上の元素であり、
0.6≦1-x-y-z<1、0≦x<0.4、0≦y<0.4、0≦z<0.4であり、x、y及びzが同時に0である場合は、除かれる。
【0068】
次に、前記内部に気孔を有するニッケル系金属前駆体と、リチウム前駆体とを混合し、混合物を得る。
【0069】
該リチウム前駆体と該ニッケル系金属前駆体との混合比は、目的とする正極活物質を製造することができるように、化学量論的に調節される。
【0070】
前記混合物の一次熱処理を実施する。そのような一次熱処理を介し、相変移及び粒成長が進められる。
【0071】
次に、一次熱処理された生成物に対し、粉砕工程を実施せずに、二次熱処理を実施し、前述の正極活物質を製造し、前記一次熱処理は、二次熱処理に比べて高い温度で実施する。もし一次熱処理が二次熱処理に比べて低い温度で実施されれば、相安定性にすぐれる大結晶粒子を得難くなる。
【0072】
本明細書において「粉砕」は、一次粒子間の強い凝集によってなる、二次粒子のそのような強い凝集を除去するために、強い力(空気圧、機械圧)を加えるジェットミルのような装備を利用して進められることを示す。
【0073】
ニッケル系金属前駆体と前記リチウム前駆体は、Li/Liを除いた金属のモル比(Li/Me)が0.9以上1.1未満、1.0超過1.1未満、1.01ないし1.06、または1.02ないし1.04になるように混合することができる。
【0074】
リチウム前駆体は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、またはそれらの組み合わせである。
【0075】
前記一次熱処理は、酸化性ガス雰囲気、800℃ないし1,200℃、900℃ないし1,100℃、または900℃ないし1,200℃で実施し、該二次熱処理は、酸化性ガス雰囲気、600℃ないし900℃、650℃ないし850℃、650℃ないし800℃、または650℃ないし750℃で実施する。該一次熱処理時、相変移及び粒成長が進められ、該二次熱処理の間、結晶性が定められ、該一次熱処理及び該二次熱処理が前記条件で実施されるとき、高密度及び長寿命のリチウム二次電池を製造することができる。
【0076】
一次熱処理時間は、一次熱処理温度によって異なり、例えば、8ないし20時間実施する。
【0077】
酸化性ガス雰囲気は、酸素または空気のような酸化性ガスを利用し、例えば、前記酸化性ガスは、酸素または空気10ないし20体積%と、不活性ガス80ないし90体積%とによってなる。
【0078】
前述の一次熱処理と二次熱処理との間に、解砕(disintegration)過程をさらに経ることができる。そのような解砕過程は、スクリーンのような分級装置を内蔵した回転式衝撃粉砕機や、カッタミル、ボールミル(ball mill)またはビードミル(bead mill)を利用した、適切な大きさへの分散を介して実施する。
【0079】
本明細書において「解砕」は、一般的に、二次粒子間の弱い凝集を除去するために、カッタミル、ロールクラッシャ(roll crusher)、コロイドミル(colloidal mill)のような装備を利用して進める。「解砕」は、粒子凝集体や組み立て物のような比較的弱い力で凝集した材料を分散させ、微粉化するものである。
【0080】
一具現例によれば、解砕は、ロールクラッシャにおいて、100~300rpm、100ないし250rpm、または120ないし275rpmで実施される。該ロールクラッシャの間隔は、1ないし3mm、1.2ないし2.8mm、または1.5mmである。解砕のための撹拌時間は、解砕条件によって異なるが、一般的に、10秒ないし60秒間実施する。
【0081】
ニッケル系金属前駆体と、リチウム前駆体との混合は、乾式混合でもあり、ミキサなどを利用して実施することができる。該乾式混合は、ミリングを利用して実施することができる。該ミリング条件は、特別に限定されていないが、出発物質として使用した各前駆体の微粉化などのような変形がほとんどないように実施することができる。
【0082】
ニッケル系金属前駆体と混合するリチウム前駆体の大きさを事前に制御することができる。リチウム前駆体の大きさ(平均粒径)は、5μmないし15μmの範囲、例えば、約10μmである。そのような大きさを有するリチウム前駆体を、ニッケル系リチウム金属酸化物前駆体と、300ないし3,000rpmでミリングを実施することにより、要求される混合物を得ることができる。該ミリング過程において、ミキサ内部温度が30℃以上に上がる場合には、ミキサ内部温度を常温(25℃)範囲に維持するように、冷却過程を経ることができる。
【0083】
ニッケル系金属前駆体は、例えば、Ni0.92Co0.06Mn0.02(OH)2、Ni0.92Co0.05Al0.03(OH)2、Ni0.94Co0.03Al0.03(OH)2、Ni0.88Co0.06Al0.06(OH)2、Ni0.96Co0.02Al0.02(OH)2、Ni0.93Co0.04Al0.03(OH)2、Ni0.8Co0.15Al0.05O2(OH)2、Ni0.75Co0.20Al0.05(OH)2、Ni0.92Co0.05Mn0.03(OH)2、Ni0.94Co0.03Mn0.03(OH)2、Ni0.88Co0.06Mn0.06(OH)2、Ni0.96Co0.02Mn0.02(OH)2、Ni0.93Co0.04Mn0.03(OH)2、Ni0.8Co0.15Mn0.05(OH)2、Ni0.75Co0.20Mn0.05(OH)2、Ni0.6Co0.2Mn0.2(OH)2、Ni0.7Co0.15Mn0.15(OH)2、Ni0.7Co0.1Mn0.2(OH)2、Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)2またはNi0.85Co0.1Al0.05(OH)2である。
【0084】
一具現例によるニッケル系リチウム金属酸化物は、例えば、LiNi0.92Co0.06Mn0.02O2、Li1.05Ni0.92Co0.05Al0.03O2、Li1.05Ni0.94Co0.03Al0.03O2、Li1.05Ni0.88Co0.06Al0.06O2、Li1.05Ni0.96Co0.02Al0.02O2、Li1.05Ni0.93Co0.04Al0.03O2、Li1.05Ni0.8Co0.15Al0.05O2、Li1.05Ni0.75Co0.20Al0.05O2、Li1.05Ni0.92Co0.05Mn0.03O2、Li1.05Ni0.94Co0.03Mn0.03O2、Li1.05Ni0.88Co0.06Mn0.06O2、Li1.05Ni0.96Co0.02Mn0.02O2、Li1.05Ni0.93Co0.04Mn0.03O2、Li1.05Ni0.8Co0.15Mn0.05O2、Li1.05Ni0.75Co0.20Mn0.05O2、Li1.05Ni0.6Co0.2Mn0.2O2、Li1.05Ni0.7Co0.15Mn0.15O2、Li1.05Ni0.7Co0.1Mn0.2O2、Li1.05Ni0.8Co0.1Mn0.1O2またはLi1.05Ni0.85Co0.1Al0.05O2である。
【0085】
他の態様により、正極集電体、並びに前述の正極活物質、及び前記正極活物質と同一組成である大結晶粒子、その凝集体のうちから選択される1以上を含むリチウム二次電池用正極が提供される。
【0086】
一具現例による正極は、例えば、前述の正極活物質と、前記正極活物質と同一組成である大結晶粒子と、を含むものでもある。
【0087】
本明細書において「大結晶粒子」とは、モルフォロジー(morphology)的に、粒子が相互凝集されていない独立された相(phase)で存在する単一体(monolith)の構造を意味し、粒子内に、粒界を有さずに単独で存在し、1つの粒子からなる、例えば、単結晶(single crystal)粒子でもある。大結晶粒子のサイズは、2μmないし6μmである。
【0088】
大結晶粒子は、正極活物質層の製造時に利用された出発物質であるニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子ではなく、ニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子が、正極プレス時、一部潰れたり、崩れたりして得られた生成物を示すことができる。
【0089】
一具現例による正極の正極活物質は、大きさが、0.5μmないし5μm、0.5μmないし4μm、または0.5μmないし2μmである気孔を含む。該気孔の大きさは、電子走査顕微鏡(SEM)分析を介して確認することができる。
【0090】
前記正極のプレス後、正極活物質が解砕されて、塊になっている一次粒子が分散され、大結晶粒子正極板を製造することができる。前記気孔は、例えば、閉じた気孔(closed pore)である。プレス後、正極の密度は、3.3g/cc以上である。
【0091】
一具現例による正極は、正極集電体に隣接した中心部よりも表面部においてさらに加圧され、粒子が崩れた構造を有する正極活物質層を含む。該正極活物質層が前述の構造を有するのは、正極集電体に隣接した中心部よりも表面部において、さらに加圧されるからである。そのような正極活物質層の構造は、電子走査顕微鏡(SEM)などのイメージの面積基準で評価することができる。
【0092】
中心部において、正極活物質の大きさは、1μmないし7μmであり、表面部において、正極活物質の大きさは、1μmないし5μmである。
【0093】
他の一具現例による正極は、正極集電体に隣接した中心部が、表面部に比べ、中空型構造の正極活物質がさらに含まれた構造を有する、正極活物質層を含む。そのような正極活物質層の構造は、電子走査顕微鏡(SEM)などのイメージの面積基準で評価することができる。そして、正極プレスを実施した後、正極活物質の気孔サイズは、正極プレス前の正極活物質の気孔サイズと異なってもいる。
【0094】
一具現例による正極は、例えば、2層以内の正極活物質層を含むものでもある。そのような正極活物質層の構造は、電子走査顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)などを介して確認可能である。
【0095】
本明細書において「表面部」は、正極集電体(基材)から遠い正極活物質層領域を示し、正極活物質層最表面から30ないし50長さ%、例えば、40長さ%の領域、または正極活物質層の最表面から20μm以内(極板40μm基準)の領域(基準:正極活物質層の総厚が40μmであるとき)を言う。
【0096】
「中心部」は、正極集電体(基材)に隣接した正極活物質層領域を示し、正極集電体から正極活物質層最表面までの総距離において、中心から50ないし70長さ%、例えば、60長さ%の領域、またはニッケル系活物質において、最外郭から20μm(正極活物質層の総厚40μm基準)以内の領域を除いた残り領域を言う。中空型粒子は、粉砕工程なしに容易に崩れ、大結晶粒子形状になり、混合密度を高めることができる構造を有することができる。
【0097】
さらに他の態様により、一具現例による正極、負極、及びそれらの間に介在された電解質を含むリチウム二次電池が提供される。
【0098】
一具現例による正極活物質の製造方法を利用すれば、粒子間凝集を抑制することができ、生産性が改善されるだけではなく、粉砕工程なしに、大結晶粒子正極活物質を製造することができる。そして、そのような正極活物質を利用すれば、高密度及び寿命が向上されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0099】
以下、一具現例による正極活物質を含む正極、負極、リチウム塩含有非水電解質、及び分離膜を有するリチウム二次電池の製造方法を記述する。
【0100】
正極及び負極は、集電体上に、正極活物質層形成用組成物及び負極活物質層形成用組成物をそれぞれ塗布して乾燥させ、正極活物質層及び負極活物質層を形成して作製される。
【0101】
前記正極活物質形成用組成物は、正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して製造される。前記正極活物質として、一具現例によるニッケル系活物質を利用することができる。
【0102】
正極バインダは、正極活物質粒子間の付着、及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を行う。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの多様な共重合体などを挙げることができ、それらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されうる。該バインダの含量は、正極活物質の総重量100重量部を基準にし、1ないし5重量部を使用する。該バインダの含量が前記範囲であるとき、集電体に対する活物質層の結着力が良好である。
【0103】
前記導電材としては、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボン系物質;炭素ナノチューブ、炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材;などが使用されうる。
【0104】
前記導電材の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、1ないし10重量部、または1ないし5重量部を使用する。導電材の含量が前記範囲であるとき、最終的に得られる電極の伝導度特性にすぐれる。
【0105】
前記溶媒の非制限的例として、N-メチルピロリドンなどを使用し、溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、20ないし200重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、正極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0106】
前記正極集電体は、3μmないし500μmの厚さであり、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面をカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したものなどが使用されうる。該集電体は、その表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のように、多様な形態が可能である。
【0107】
それと別途に、負極活物質、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質層形成用組成物を準備する。
【0108】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドーピング/脱ドーピングが可能な物質、遷移金属酸化物、またはその組み合わせを使用することができる。
【0109】
前記リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質としては、その例として、炭素物質、すなわち、リチウム二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質を有しうる。該炭素系負極活物質の代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛を挙げることができ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークスなどを挙げることができる。
【0110】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al及びSnからなる群のうちから選択される金属との合金が使用されうる。
【0111】
前記リチウムに、ドーピング/脱ドーピングが可能な物質としては、シリコン系物質、例えば、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される元素であり、Siではない)、Si-炭素複合体、Sn、SnO2、Sn-R(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択される元素であり、Snではない)、Sn-炭素複合体などを挙げることができ、またそれらのうち少なくとも一つと、SiO2とを混合して使用することもできる。前述の元素Q及び元素Rとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択されるものを使用することができる。
【0112】
前記遷移金属酸化物としては、リチウムチタン酸化物を使用することができる。
【0113】
負極バインダは、非制限的な例として、ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸、及びそれらの水素がLi、NaまたはCaなどで置換された高分子、または多様な共重合体のような多様な種類のバインダ高分子でもある。
【0114】
前記負極活物質層は、増粘剤をさらに含むものでもある。
【0115】
前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、澱粉、再生セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールのうち少なくともいずれか一つを使用することができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を使用することができる。
【0116】
前記溶媒の含量は、負極活物質の総重量100重量部を基準にし、100ないし300重量部を使用する。溶媒の含量が前記範囲であるとき、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0117】
前記負極活物質層は、導電性が確保された場合、導電材が不要である。しかしながら、該負極活物質層は、必要により、導電材をさらに含むものでもある。
【0118】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボンブラック;炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;炭素ナノチューブのような導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末のような金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材などが使用されうる。前記導電材は、例えば、カーボンブラックである。
【0119】
負極活物質層が導電材を含む場合、導電材の含量は、負極活物質層の総重量100重量部を基準にし、0.01重量部ないし10重量部、0.01重量部ないし5重量部、または0.1重量部ないし2重量部である。
【0120】
前記負極集電体は、一般的に、3μmないし500μmの厚みに作られる。そのような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面をカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、アルミニウム・カドミウム合金などが使用されうる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のように、多様な形態で使用されうる。
【0121】
前記過程によって作製された正極と負極との間に、分離膜を介在する。
【0122】
前記分離膜は、気孔径が0.01~10μmであり、厚みは、一般的に、5~30μmであるものを使用する。具体的な例として、ポリプロピレン・ポリエチレンのようなオレフィン系ポリマー、またはガラスファイバで作られたシートや不織布などが使用される。電解質として、ポリマーのような固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0123】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水系溶媒及びリチウム塩か らなる。該非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0124】
前記非水電解液としては、非制限的な例を挙げれば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、N,N-ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルのような非プロトン性有機溶媒が使用されうる。
【0125】
前記有機固体電解質としては、非制限的な例を挙げれば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用されうる。
【0126】
前記無機固体電解質としては、非制限的な例を挙げれば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2Liの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されうる。
【0127】
前記リチウム塩は、非水系有機溶媒に溶解されやすい物質であり、非制限的な例を挙げれば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(FSO2)2NLi、リチウムクロロボレート、またはその組み合わせが使用されうる。
【0128】
図5は、一具現例によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に図示した断面図である。
【0129】
図5を参照し、リチウム二次電池51は、一具現例による正極53、負極52及び分離膜54を含む。前記正極53は、一具現例による正極活物質を含む。
【0130】
前述の正極53、負極52及び分離膜54が巻き取られたり、折り畳まれたりした電極組み立て体が電池ケース55に収容される。電池形状により、正極53と負極52との間に分離膜54が配され、相互に積層された電池構造体が形成されうる。次に、前記電池ケース55に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ56に密封され、リチウム二次電池51が完成される。前記電池ケース55は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム二次電池51は、大型薄膜型電池でもある。前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池でもある。前記電池構造体がポーチに収容された後、有機電解液に含浸されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器にも使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などにも使用される。
【0131】
また、前記リチウム二次電池は、高温において、保存安定性、寿命特性及び高率特性がすぐれるので、電気車両にも使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車両にも使用される。
【0132】
以下の実施例及び比較例を介し、さらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、例示するためのものであり、それらだけによって限定されるものではない。
【0133】
(ニッケル系金属前駆体の製造)
製造例1
共浸法を介し、ニッケル系金属前駆体(Ni0.92Co0.06Mn0.02(OH)2)を合成した。
【0134】
硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)、硫酸コバルト(CoSO4・7H2O)及び硫酸マンガン(MnSO4・H2O)を、Ni:Co:Mn=92:6:2モル比になるように、溶媒である蒸留水に溶かし、混合溶液を準備した。錯化合物形成のために、アンモニア水(NH4OH)希釈液と、沈澱剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)とを準備した。その後、金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入した。該反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された。
【0135】
混合物のpHを11.7に調節し、10時間撹拌した後、次に、混合物のpHを11.5に調節し、pHを、初期pH基準で0.2ほど低減させて共沈速度を変化させ、ニッケル系リチウム金属酸化物前駆体の内部及び外部の合成速度差を発生させ、内部に気孔を有するニッケル系リチウム金属酸化物前駆体を得ることができた。
【0136】
前記反応混合物を撹拌しながら、約20時間反応を実施した後、原料溶液の投入を中止した。
【0137】
反応器内のスラリー溶液を濾過し、高純度の蒸留水で洗浄した後、200℃の熱風オーブンで24時間乾燥させ、中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物前駆体(Ni0.92Co0.6Mn0.2(OH)2)を得た。ニッケル系金属前駆体は、一次粒子の凝集体である二次粒子であり、一次粒子サイズは、約300nm(0.3μm)であり、二次粒子の平均粒径は、約14μmである。
【0138】
比較製造例1
混合物のpHを11.7に調節し、10時間撹拌した後、次に、混合物のpHを11.5に調節し、pHを、初期pH基準で0.2ほど低減させる過程の代わりに、混合物のpHの変化なしに、11.7に維持したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、中空型構造を有さないニッケル系金属前駆体を得た。
【0139】
(リチウム二次電池用正極活物質の製造)
実施例1
製造例1の中空型構造を有するニッケル系金属前駆体(Ni0.92Co0.06Mn0.02(OH)2)に炭酸リチウムを付加し、第1混合物を得た。該第1混合物において、リチウムと金属との混合モル比(Li/Me)は、約1.02である。ここで、該金属の含量は、Ni、Co及びMnの総含量である。
【0140】
前記第1混合物に対し、酸化性ガス雰囲気下、例えば、空気雰囲気下、900℃で15時間一次熱処理を実施した。
【0141】
一次熱処理生成物をロールクラッシャ(ロール間隔:0.1mm)を利用して解砕し、コロイドミル(間隔が100μm未満)を介する解砕により、粒子サイズ13μmないし14μmである生成物で作った。
【0142】
前記過程によって解砕が終わった結果物に対し、約750℃、酸素雰囲気下で二次熱処理を実施し、中空型構造を有する正極活物質(LiNi0.92Co0.06Mn0.02O2)を製造した。該正極活物質は、一次粒子の凝集体である二次粒子であり、一次粒子サイズ(平均粒径)は、約3.5μmであり、二次粒子サイズ(平均粒径)は、約13μmであり、正極活物質の内部に存在する気孔サイズ(平均粒径)は、3μmである。
【0143】
実施例2ないし5
下記表1に示されているような一次粒子サイズ、二次粒子サイズ、及び内部の気孔サイズを有する正極活物質を得ることができるように、製造工程を制御したことを除いては、実施例1と同一方法によって正極活物質を製造した。
【0144】
比較例1
製造例1の中空型構造を有するニッケル系金属前駆体(Ni0.92Co0.06Mn0.02(OH)2)に炭酸リチウムを付加し、第1混合物を得た。該第1混合物において、リチウムと金属との混合モル比(Li/Me)は、約1.02である。ここで、該金属の含量は、Ni、Co及びMnの総含量である。
【0145】
前記第1混合物に対し、空気雰囲気下、900℃で15時間一次熱処理を実施した。
【0146】
熱処理生成物を、ホソカワ・ジェットミル(Blower 35Hz、AFG 8,000rpm、空気4kgf/cm2)を利用して粉砕し、非中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物を製造した。
【0147】
前述の粉砕された非中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物に、約750℃、酸素雰囲気下で二次熱処理を実施し、単一粒子でありながら、非中空型構造を有する正極活物質を製造した。
【0148】
比較例1によって得た正極活物質は、粉砕されている一次粒子の形態を有するものの、表面に粉砕工程で発生した欠陥(defect)が多く、粒子形態が崩れている様相を呈した。
【0149】
比較例2
二次熱処理を実施しないことを除いては、比較例1と同一に実施し、非中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物、及び中空型構造を除去した正極活物質(粒子サイズ3μmないし4μm)を製造した。
【0150】
比較例2によって製造された正極活物質は、ジェットミルを利用した粉砕工程が必須的に実施された。粉砕後に得られた非中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物は、3~4μmの小粒の単結晶粒子(大結晶粒子)形態を示した。そのような小粒大結晶粒子は、粉体のフロー特性が良好ではなく、量産において、製造工程性が不良である結果を示した。そして、比較例1及び2によって製造された正極活物質は、粉砕された一次粒子の形態を有するが、表面に欠陥が多く、粒子形態が多く崩れている様相を示した。前記欠陥は、粉砕工程で生じたものである。
【0151】
それに比べ、実施例1の正極活物質は、大粒の形態を有するために、比較例2の正極活物質を利用した場合と比べ、比表面積が小さく、フロー性にすぐれ、量産工程性が改善される。
【0152】
比較例3
一次熱処理が750℃で実施され、二次熱処理が900℃で実施されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、単一粒子でありながら、中空型構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物及び正極活物質を製造した。
【0153】
比較例3によって正極活物質を製造する場合、二次熱処理を一次熱処理に比べ、高い温度で実施した。そのような熱処理条件によって得られた正極活物質は、実施例1の正極活物質と比較し、大結晶粒子が十分に成長しておらず、陽イオン混合比特性が不良である結果を示した。そして、比較例3によって正極活物質を製造する場合、二次熱処理温度が900℃であるために、Niが層状構造をなし難く、多量のNiが、スピネル相あるいはキュービック相に相転移され、実施例1の正極活物質と比較し、結晶特性自体がかなり異なっていた。
【0154】
比較例4(出発物質として、気孔がないニッケル系金属前駆体を使用)
製造例1の中空型構造を有するニッケル系金属前駆体の代わりに、比較製造例1の中空型構造を有さないニッケル系金属前駆体を使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、正極活物質を製造した。該正極活物質は、単一粒子でありながら、内部に中空型構造がない、一次粒子が密集した形態の正極活物質が生成された。
【0155】
【0156】
製作例1:コインセル製造
正極活物質として、実施例1によって得た正極活物質を利用し、別途の粉砕過程なしにコインセルを次のように製造した。
【0157】
実施例1によって得た正極活物質(LiNi0.92Co0.6Mn0.2O2)96g、ポリフッ化ビニリデン2g、及び溶媒であるN-メチルピロリドン47g、導電材であるカーボンブラック2gの混合物を、ミキサ機を利用して気泡を除去して均一に分散させた、正極活物質層形成用スラリーを製造した。
【0158】
前記過程によって製造されたスラリーを、ドクターブレードを使用してアルミニウム箔上にコーティングし、薄い極板形態にした後、それを135℃で3時間以上乾燥させた後、プレスと真空乾燥との過程を経て正極を作製した。
【0159】
前記正極と、対極としてのリチウム金属対極とを使用し、2032タイプのコインセル(coin cell)を製造した。前記正極とリチウム金属対極との間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚み:約16μm)を介在させ、電解液を注入し、2032タイプコインセルを作製した。前記電解液として、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:5の体積比で混合した溶媒に溶解された1.1M LiPF6が含まれた溶液を使用した。
【0160】
製作例1によってコインセルを製造すれば、正極の製造時、粉砕過程を経ずともよく、プレス過程において塊になっている一次粒子を分散させることができる。従って、生産性が向上されうる。
【0161】
製作例2ないし5:コインセル製造
実施例1の正極活物質の代わりに、実施例2ないし5の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、製作例1と同一方法によって実施し、コインセルを製造した。
【0162】
比較製作例1:コインセル製造
正極活物質として、実施例1の正極活物質の代わりに、比較例1によって得た正極活物質を利用したことを除いては、製作例1と同一に実施し、コインセルを製造した。
【0163】
比較製作例2
比較例1の正極活物質の代わりに、比較例2の正極活物質を使用したことを除いては、比較製作例1と同一方法によって実施し、コインセルを製造した。
【0164】
比較製作例3
比較例1の正極活物質の代わりに、比較例3の正極活物質を利用したことを除いては、比較製作例1と同一方法によって実施し、コインセルを製造した。
【0165】
比較製作例4
比較例1の正極活物質の代わりに、比較例4の正極活物質を使用したことを除いては、比較製作例1と同一方法によって実施し、コインセルを製造した。
【0166】
評価例1:電子走査顕微鏡(SEM)法
(1)実施例1、及び比較例2ないし4
実施例1、及び比較例2ないし4の正極活物質に対し、電子走査顕微鏡(SEM)分析を実施した。電子走査顕微鏡(SEM)は、Magellan 400L(FEI社)を利用し、分析結果を、
図1A、及び
図2Aないし
図2Dに示した。
【0167】
図1Aは、実施例1の正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真であり、
図2Aは、比較例2の正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。そして、
図2B及び
図2Cは、それぞれ比較例2及び比較例3の正極活物質の表面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
図2Dは、比較例4の正極活物質の断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【0168】
図1Aを参照し、実施例1の正極活物質は、大結晶一次粒子を含む二次粒子であり、内部に気孔を有する中空型構造を有した。一次粒子サイズは、約3.5μmであり、二次粒子サイズは、約13μmである。
【0169】
それに比べ、比較例2の正極活物質は、
図2Aに示されているように、小粒(1~5μm)の形態を有し、気孔が存在していない。実施例1の正極活物質は、
図2B及び
図2Cにそれぞれ示された比較例2及び3の小粒(一次粒子)が粉砕される前の集合体(二次粒子)である。
【0170】
一方、比較例4の正極活物質は、
図2Dに示されているように、大結晶粒子ではあるが、中空型構造なしに密集された集合の形態を示している。
【0171】
(2)製造例1及び比較製造例1
製造例1及び比較製造例1によって製造されたニッケル系金属前駆体断面に対する電子走査顕微鏡(SEM)分析を実施した。電子走査顕微鏡(SEM)は、Magellan 400L(FEI社)を利用した。製造例1によって製造されたニッケル系金属前駆体に係わる電子走査顕微鏡(SEM)分析結果は、
図3A及び
図3Bに示し、比較製造例1のニッケル系金属前駆体に係わる電子走査顕微鏡(SEM)分析結果は、
図3Cに示した。
【0172】
図3Aを参照し、製造例1のニッケル系金属前駆体は、内部に気孔を有し、大きさが0.3μm(300nm)である一次粒子と、大きさが14μmである二次粒子とを含んでいる。
図3Bによれば、気孔が存在する内部(すなわち、気孔領域)の長軸長が約5.76μmであり、非晶質特性がさらに優秀に示されている。
【0173】
それに比べ、
図3Cに示されているように、比較製造例1のニッケル系金属前駆体は、製造例1のニッケル系金属前駆体と異なり、内部に気孔が存在しない構造を示した。
【0174】
評価例2:正極の製造時におけるプレス後状態の分析
製作例1及び比較製作例4の正極において、プレス後の粒子サイズ及び気孔有無の比較のために、電子走査顕微鏡(SEM)分析を実施した。
【0175】
電子走査顕微鏡(SEM)分析結果を、
図4Aないし
図4Dに示した。
図4A及び
図4Bは、製作例1の正極の製造時の、プレスする以前の状態を示したものである。
図4Cは、製作例1によって製造された正極の製造時の、プレスを実施した後の状態を示したものであり、
図4Dは、比較製作例4によって製造された正極の製造時の、プレスを実施した後の状態を示したものである。
【0176】
製作例1の正極は、プレス後、気孔を有した正極活物質がプレスによって解砕されて分散される。その結果、
図4Cに示されているように、正極活物質層は、2層構造を有していた。前記正極活物質層は、正極活物質として、ニッケル系金属酸化物二次粒子を含み、前記ニッケル系金属酸化物は、複数の大結晶一次粒子を含む。
【0177】
製作例1の正極は、一次粒子Aと、一次粒子の凝集体である二次粒子Bとの混合物を含む。そして、正極活物質層に気孔が存在することを確認することができた。一次粒子Aは、複数の大結晶一次粒子であり、二次粒子Bは、ニッケル系リチウム金属酸化物二次粒子が正極プレスにより、一部潰れるか、あるいは崩れる状態を示した。
【0178】
そして、正極活物質層において、正極集電体に隣接した中心部よりも表面部においてさらに加圧され、粒子が崩れた状態を有するということを確認することができた。
【0179】
図4Dを参照し、比較製作例4によれば、正極の製造時、プレスを実施した後、製作例1の正極と異なり、二次粒子分離が起こらず、製作例1の正極(
図4C参照)とかなり異なる正極板状態を示した。そのような比較製作例4の正極を利用すれば、製作例1の場合との対比で、電気化学特性が不良であるという結果を知ることができる。
【0180】
評価例3:X線回折分析
実施例1によって製造された正極活物質、及び比較例1,2によって製造された正極活物質に対し、Cu Kα radiation(1.54056Å)を利用したX’pert pro(PAN alytical)を利用し、X線回折分析を実施した。
【0181】
下記表2において、I(003)は、(003)面に該当するピーク(2θが約18°ないし19°であるピーク)の強度であり、I(104)は、(104)面に該当するピーク(2θが約44.5°であるピーク)の強度を示す。そして、FWHM(003)は、(003)面に該当するピークの半値幅(FWHM)を示し、FWHM(104)は、(104)面に該当するピークの半値幅(FWHM)を示す。下記表2において、A(003)は、(003)面に該当するピークの面積を示し、A(104)は、(104)面に該当するピークの面積を示す。
【0182】
【0183】
実施例1の正極活物質は、表2のFWHM(003)及びFWHM(003)/FWHM(104)の特性から、大結晶粒子であることが分かった。そして、実施例1の正極活物質は、粉砕工程が実施されず、正極活物質の結晶損傷が少なく、比較例1及び2に比べ、結晶特性にすぐれることが分かった。正極活物質の結晶損傷が少ないことは、前述のFWHM(003)及びFWHM(003)/FWHM(104)の数値から確認可能である。FWHM(003)が低いほど、活物質の結晶粒が(003)方向に大きく、均一な結晶構造に成長したことを意味し、FWHM(003)/FWHM(104)比率が高いほど、(104)方向にも大きく、均一な結晶構造に成長したことを意味する。
【0184】
表2を参照し、実施例1の正極活物質は、比較例1及び2の正極活物質と比較し、I(003)/I(104)及びA(003)/A(104)の数値が増大し、陽イオン混合比が低減し、高容量化が可能であった。
【0185】
評価例4:充放電特性
製作例1、比較製作例1、比較製作例2及び比較製作例4によって作製されたコインセルにおいて、充放電特性などを、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0186】
最初の充放電は、25℃、0.1Cの電流で、4.25Vに達するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に達するまで、定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を行った。
【0187】
2回目の充放電サイクルは、0.2Cの電流で、4.25Vに達するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に達するまで、定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を行った。
【0188】
寿命評価は、1Cの電流で、4.3Vに達するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを50回反復的に実施して評価した。
【0189】
容量維持率(CRR:capacity retention ratio)は、下記数式2から計算され、充放電効率は、下記数式3から計算され、容量維持率、充放電効率特性及び電池容量を評価し、下記表3に示した。
【0190】
[数式2]
容量維持率[%]=[50回目サイクルの放電容量/最初サイクルの放電容量]×100
【0191】
[数式3]
充放電効率=[最初サイクルの放電電圧/最初サイクルの充電電圧]X100
【0192】
【0193】
表3を参照し、製作例1によって製造されたコインセルは、比較製作例4の場合と比較し、充放電効率及び容量維持率が改善された。そして、製作例1のコインセルは、比較製作例1及び2のコインセルと比較し、充放電効率及び容量維持率は、同等なレベルであるが、正極活物質の粒子フロー性が、粉砕を進めた比較製作例1,2のコインセルと比較し、大きく改善され、量産が容易である。そして、正極活物質の粉砕工程を省略することができ、粒子間凝集が抑制され、生産性が向上され、陽イオン混合比が低減され、高容量が可能な大結晶粒子リチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。
【0194】
以上においては、図面及び実施例を参照し、一具現例が説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0195】
10 正極活物質
11 一次粒子
11a 第1一次粒子
11b 第2一次粒子
51 リチウム二次電池
52 負極
53 正極
54 分離膜
55 電池ケース
56 キャップアセンブリ