IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7521184基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法
<>
  • 特許-基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法 図1
  • 特許-基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法 図2
  • 特許-基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法 図3
  • 特許-基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 25/14 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H05K3/28 Z
H01L23/12 501F
H05K3/28 G
H05K3/28 F
B32B25/14
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/38
B32B27/34
B32B27/00 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019198430
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072375
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真治
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 省吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 実佳
(72)【発明者】
【氏名】小川 紗瑛子
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216572(JP,A)
【文献】特開2017-204612(JP,A)
【文献】特開2014-201657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H01L 23/12
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられたプライマー層と、前記プライマー層上に設けられた仮固定材層と、を備え、
前記支持フィルムが、ポリイミドフィルムであり、
前記仮固定材層が、アクリルゴムと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、シリコーン化合物とを含有し、前記プライマー層と接しており、
前記プライマー層が、エポキシ基若しくはウレイド基を有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂、ポリウレタンゴム、及び、5mgKOH/g以上の酸価を有するアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種のみからなる、基板搬送用サポートテープ。
【請求項2】
前記5mgKOH/g以上の酸価を有するアクリルゴムは、5℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の基板搬送用サポートテープ。
【請求項3】
ソルダーレジストが設けられた主面を有する基板に、前記基板搬送用サポートテープを、前記仮固定材層が前記基板の前記主面に接するように貼り合わせることにより得られる、前記基板、前記仮固定材層、前記プライマー層及び前記支持フィルムをこの順に備える積層体を、130℃で30分間、170℃で1時間、及び260℃で5分間加熱したときに、前記仮固定材層と前記支持フィルムとの間の25℃における90°剥離強度が、前記基板と前記仮固定材層との間の25℃における90°剥離強度よりも大きい、請求項1又は2に記載の基板搬送用サポートテープ。
【請求項4】
前記基板と前記仮固定材層との間の前記90°剥離強度が、30N/m以上300N/m以下である、請求項に記載の基板搬送用サポートテープ。
【請求項5】
コアレス基板を搬送するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の基板搬送用サポートテープ。
【請求項6】
厚さ10~1000μmの有機基板に、請求項1~のいずれか一項に記載の基板搬送用サポートテープを、前記仮固定材層が前記有機基板に接するように貼り合わせて、前記支持フィルム、前記プライマー層、前記仮固定材層及び前記有機基板をこの順に備える積層体を得る第1工程と、
前記積層体の前記仮固定材層を加熱する第2工程と、
前記第2工程を経た前記積層体の前記有機基板上に半導体チップを搭載する第3工程と、
前記有機基板上に搭載された前記半導体チップを封止材で封止する第4工程と、
前記第4工程を経た前記積層体の前記有機基板から前記支持フィルム、前記プライマー層及び前記仮固定材層を剥離する第5工程と、
を備える、電子機器装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機基板がコアレス基板である、請求項に記載の電子機器装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機基板の厚さが200μm以下である、請求項6又は7に記載の電子機器装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送用サポートテープ及び電子機器装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC等の電子機器の多機能化に伴い、半導体素子を多段に積層することによって高容量化したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。半導体素子の実装には、ダイボンディング用接着剤としてフィルム状接着剤が広く用いられている。しかし、現行のワイヤボンドを使用した半導体素子の接続方式では、データの処理速度に限界があることから、電子機器の動作が遅くなる傾向にある。また、消費電力を低く抑え、充電せずにより長時間使用したいとのニーズが高まっていることから、省電力化も求められつつある。このような観点から、近年、更なる高速化及び省電力化を目的として、ワイヤボンドではなく貫通電極により半導体素子同士を接続する新しい構造の電子機器装置も開発されてきている。
【0003】
このように新しい構造の電子機器装置が開発されてきているものの、依然として高容量化も求められており、パッケージ構造に関わらず、半導体素子をより多段に積層できる技術の開発が進められている。しかし、より多くの半導体素子を限られたスペースに積層するためには、半導体素子の安定した薄型化が必要不可欠である。
【0004】
例えば、半導体ウェハを裏面側から研削して薄型化することが行われている。このときの研削工程では、いわゆるBGテープ(バックグラインドテープ)と呼ばれるテープを半導体ウェハに貼り付け、半導体ウェハをサポートした状態で研削工程を実施することが主流となっている。しかし、研削工程に供される半導体ウェハは、表面側に回路が形成されており、その影響により、研削によって薄型化されると反りが生じやすい。BGテープは、変形しやすいテープ素材であるから、薄型化された半導体ウェハを充分にサポートすることができず、半導体ウェハに反りが生じやすい。そこで、ウェハを粘着剤を介して支持体に固定して裏面研削及び搬送する方法も提案されている(例えば、下記特許文献1及び2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4565804号明細書
【文献】特許第4936667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体素子の薄型化を図るために、基板については薄型の有機基板の使用が検討されており、具体的には、ガラスクロスに熱硬化樹脂を含浸させたコア層を用いないコアレス基板の開発が盛んに行われている。コアレス基板はコア層がないため、基板の層厚を薄くすることが可能であるが、一方で、高弾性のコア層がないために、基板自体の剛性を確保することが難しく、半導体素子の製造プロセス中でのハンドリング性が課題となる。
【0007】
そこで、本発明は、有機基板を用いて薄型化した半導体素子を備える電子機器装置を高い生産性で製造することができる電子機器装置の製造方法、及びそれに用いることができる基板搬送用サポートテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らはコアレス基板を用いる半導体素子の製造及びそれを用いる電子機器装置の製造について検討を行った。ハンドリング性の課題については搬送時における有機基板のたわみの問題があるが、これを解消する手段として、有機基板に基板搬送用の支持フィルムを仮固定する基板搬送用サポートテープを検討した。このようなテープを用いるプロセスにおいては、貼りつけた支持フィルムを有機基板から剥離する必要があるが、有機基板に仮固定材が残るのは、有機基板の組み立て工程において機械的及び電気的に接続不良が生じるおそれがあるため、仮固定材を除去する工程が増えるなどの問題がある。そのため、支持フィルムと仮固定材との間の剥離強度はより高いことが望ましい。また、半導体素子の製造における高温プロセスへの対応を考慮すると、支持フィルムは耐熱性に優れていることが望ましい。
【0009】
なお、上述した特許文献等をはじめとする従来技術は、半導体ウエハの加工を想定しているため、仮固定材のシリコンウエハに対する剥離性は検討されているものの薄型の有機基板に対する剥離性及び有機基板及び支持フィルムに対する剥離強度のバランスに関する知見は示されていない。
【0010】
そこで、本発明者らは更に検討を行った結果、耐熱性に優れた特定の支持フィルムの表面を特定の化合物によって処理して、その処理面上に、特定の仮固定材層を設けることにより、支持フィルムと仮固定材層との間の剥離強度を高めることができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の一側面は、支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられたプライマー層と、プライマー層上に設けられた仮固定材層と、を備え、支持フィルムが、ポリイミドフィルムであり、仮固定材層が、熱可塑性樹脂を含有し、プライマー層が、エポキシ基若しくはウレイド基を有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂、ポリウレタンゴム、及び、5mgKOH/g以上の酸価を有するアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含む基板搬送用サポートテープを提供する。
【0012】
本発明に係る基板搬送用サポートテープによれば、ポリイミドフィルムによって有機基板を補強することができ、有機基板のハンドリング性を向上させることができるとともに、支持フィルムと仮固定材層との間の剥離強度を高められることから、所定の加工プロセス(特には、リフロー工程等の260℃以上の高温プロセス)を経た有機基板から支持フィルムを仮固定材層とともに容易に剥離することができる。これにより、有機基板を用いて薄型化した半導体素子を備える電子機器装置を高い生産性で製造することができる。
【0013】
支持フィルムと仮固定材層との剥離強度を一層高める観点から、アクリルゴムは5℃以下のガラス転移温度を有するものであってもよい。
【0014】
耐熱性向上の観点から、仮固定材層は熱硬化性樹脂を更に含有していてもよい。
【0015】
また、本発明に係る基板搬送用サポートテープは、下記の条件を満たすものであってもよい。
ソルダーレジストが設けられた主面を有する基板に、基板搬送用サポートテープを、仮固定材層が基板の主面に接するように貼り合わせることにより得られる、基板、仮固定材層、プライマー層及び支持フィルムをこの順に備える積層体を、130℃で30分間、170℃で1時間、及び260℃で5分間加熱したときに、仮固定材層と支持フィルムとの間の25℃における90°剥離強度が、基板と仮固定材層との間の25℃における90°剥離強度よりも大きい。
【0016】
上記の基板搬送用サポートテープは、更に下記の条件を満たすものであってもよい。
基板と仮固定材層との間の90°剥離強度が、30N/m以上300N/m以下である。
【0017】
本発明に係る基板搬送用サポートテープは、コアレス基板を搬送するために用いられるものであってもよい。
【0018】
本発明の別の一側面は、厚さ10~1000μmの有機基板に、上記本発明に係る基板搬送用サポートテープを、仮固定材層が有機基板に接するように貼り合わせて、支持フィルム、プライマー層、仮固定材層及び有機基板をこの順に備える積層体を得る第1工程と、積層体の仮固定材層を加熱する第2工程と、第2工程を経た積層体の有機基板上に半導体チップを搭載する第3工程と、有機基板上に搭載された半導体チップを封止材で封止する第4工程と、第4工程を経た積層体の有機基板から支持フィルム、プライマー層及び仮固定材層を剥離する第5工程とを備える電子機器装置の製造方法を提供する。
【0019】
本発明に係る電子機器装置の製造方法によれば、有機基板を用いて薄型化した半導体素子を備える電子機器装置を高い生産性で製造することができる。すなわち、本製造方法は、本発明に係る基板搬送用サポートテープを用いることにより、(i)第1工程においてポリイミドフィルムによって有機基板を補強することができ、薄型の有機基板のハンドリング性が向上すること、(ii)第2工程、第3工程及び第4工程において高温プロセスが含まれる場合であっても、耐熱性に優れたポリイミドフィルムによって有機基板を充分サポートすることができ、効率よく半導体チップの実装及び封止が可能となること、(iii)第5工程で有機基板から支持フィルムを仮固定材層とともに容易に剥離できること、等により上述した効果を奏することができる。
【0020】
上記有機基板はコアレス基板であってもよい。また、上記有機基板の厚さが200μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、有機基板を用いて薄型化した半導体素子を備える電子機器装置を高い生産性で製造することができる電子機器装置の製造方法、及びそれに用いることができる基板搬送用サポートテープを提供することができる。
【0022】
本発明に係る基板搬送用サポートテープは、有機基板のハンドリング性を向上させることができるとともに、有機基板から支持フィルムを仮固定材層とともに容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、基板搬送用サポートテープの一実施形態を示す図であり、(A)は上面図であり、(B)は(A)のI-I線に沿った模式断面図である。
図2図2(a)~図2(c)は、電子機器装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図3図3(d)~図3(e)は、電子機器装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図4図4(f)~図4(h)は、電子機器装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0025】
また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0026】
さらに、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0028】
[基板搬送用サポートテープ]
本実施形態の基板搬送用サポートテープは、支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられたプライマー層と、プライマー層上に設けられた仮固定材層とを備える。
【0029】
図1は、基板搬送用サポートテープの一実施形態を示す図であり、図1の(A)は上面図であり、図1の(B)は図1の(A)のI-I線に沿った模式断面図である。これらの図に示す基板搬送用サポートテープ10は、支持フィルム1と、プライマー層PLと、仮固定材層2Aと、保護フィルム3とをこの順に備える。
【0030】
本実施形態においては、支持フィルム1としてポリイミドフィルムが用いられる。ポリイミドフィルムは、例えば、100EN(東レ・デュポン株式会社製、製品名)などの市販品を用いることができる。
【0031】
支持フィルム1の厚さは、目的とする強度及び柔軟性により適宜設定することができ、3~350μmであることが好ましい。厚さが3μm以上であれば充分なフィルム強度が得られる傾向にあり、厚さが350μm以下であれば充分な柔軟性が得られる傾向にある。このような観点から、支持フィルム1の厚さは、5~200μmであることがより好ましく、7~150μmであることが更に好ましい。
【0032】
プライマー層PLは、エポキシ基若しくはウレイド基を有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂、ポリウレタンゴム、及び、5mgKOH/g以上の酸価を有するアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0033】
エポキシ基若しくはウレイド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このようなシランカップリング剤は、KBM303、KBM402、KBM403、KBE402、KBE403、KBE585(以上、信越化学工業(株)製、製品名)等の市販品を用いることができる。
【0034】
エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ樹脂が挙げられる。このようなエポキシ樹脂は、EX-810P(以上、ナガセケムテックス(株)製、製品名)等の市販品を用いることができる。
【0035】
ポリウレタンゴムとしては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタンが挙げられ、有機溶剤に可溶なものが好ましい。このようなポリウレタンゴムは、T-8175N、T-8180N(以上、ディーアイシーコベストロポリマー(株)製、製品名)等の市販品を用いることができる。
【0036】
ポリウレタンゴムは、重量平均分子量が、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0037】
5mgKOH/g以上の酸価を有するアクリルゴムとしては、例えば、SG708-6、WS-023 EK30、SG-70L(以上、ナガセケムテックス(株)製、製品名)等の市販品を用いることができる。
【0038】
支持フィルムと仮固定材層との剥離強度を一層高める観点から、アクリルゴムの酸価は、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、18mgKOH/g以上が更に好ましい。
【0039】
酸価は下記に示すような、JIS K0070に基づいた中和滴定法により測定することができる。まず、アクリルゴムの溶液を、130℃で1時間加熱し、揮発分を除去して、固形分を得る。そして、この固形分のアクリルゴム1.0gを精秤した後、このアクリルゴムにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解し、樹脂溶液を得る。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその樹脂溶液に適量添加して、0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて滴定を行った。そして、次式により酸価を算出する。
酸価=0.1×V×f×56.1/(Wp×I/100)
式中、Vは滴定に用いた0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)を示し、fは0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液のファクター(濃度換算係数)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した上記樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0040】
支持フィルムと仮固定材層との剥離強度を一層高める観点から、アクリルゴムのガラス転移温度は、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-5℃以下であることが更に好ましく、-8℃以下であることが更により好ましい。
【0041】
アクリルゴムのガラス転移温度は、後述する仮固定材層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度を測定する方法と同様にして求めることができる。
【0042】
アクリルゴムは、製膜性と流動性とを確保することが容易となる観点から、重量平均分子量が、10万~120万であることが好ましく、20万~100万であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0043】
プライマー層PLは、支持フィルム1の表面に上記化合物が含まれる処理液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0044】
処理液には、上記化合物を分散或いは溶解できる有機溶剤を含有させてもよい。有機溶剤は、特に限定されず、製膜時の揮発性等を考慮して沸点に基づき選択することができる。具体的には、製膜時にフィルムの硬化を進みにくくする観点から、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶剤を使用することが好ましい。また、製膜性を向上させる等の観点から、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較的高沸点の溶剤を使用することが好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。処理液(ワニス)における固形分濃度は、10~80質量%であることが好ましい。
【0045】
塗布は、乾燥後の厚みが100nm~10μmとなることが好ましい。乾燥は、使用した溶剤が充分に揮散する条件であれば特に制限はなく、通常60℃~200℃で、0.1~90分間加熱して行うことができる。
【0046】
保護フィルム3としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルムが挙げられる。保護フィルム3は、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムが好ましい。また、仮固定材層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを保護フィルム3として用いることが好ましい。
【0047】
保護フィルム3の厚さは、目的とする強度及び柔軟性により適宜設定することができ、例えば、10~350μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であれば充分なフィルム強度が得られる傾向にあり、厚さが350μm以下であれば充分な柔軟性が得られる傾向にある。このような観点から、保護フィルム3の厚さは、15~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることが更に好ましい。
【0048】
仮固定材層2Aは、(A)熱可塑性樹脂を含有するが、必要に応じて、(B)熱硬化性樹脂、(C)シリコーン化合物、(D)硬化促進剤、及びその他の成分を含有してもよい。
【0049】
(A)熱可塑性樹脂としては、有機基板と支持体とを貼り合わせる前において熱可塑性を有している樹脂であれば、特に制限なく用いることができる。本実施形態においては、熱可塑性樹脂が、加熱等により架橋構造を形成する樹脂であってもよい。このような樹脂としては、架橋性官能基を有するポリマーが挙げられる。
【0050】
架橋性官能基を有するポリマーとしては、熱可塑性ポリイミド樹脂、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体、ウレタン樹脂ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0051】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、パール重合、溶液重合等の重合方法によって得られるものを用いてもよく、あるいは、市販品を用いてもよい。架橋性官能基を有するポリマーは、架橋性官能基をポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。架橋性官能基の具体例としては、エポキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。架橋性官能基の中でも、カルボキシル基が好ましい。カルボキシル基は、アクリル酸を用いることによってポリマー鎖に導入することができる。
【0052】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と表記する場合もある)は、-50℃~50℃であることが好ましく、-40℃~20℃であることがより好ましい。Tgがこのような範囲であれば、タック力が上がりすぎて取り扱い性が悪化することを抑制しつつ、より充分な流動性を得ることができ、更に硬化後の弾性率をより低くすることができるため、剥離強度が高くなりすぎることをより抑制できる。
【0053】
Tgは、示差走査熱量測定(DSC、例えば株式会社リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて熱可塑性樹脂を測定したときの中間点ガラス転移温度値である。具体的には、上記Tgは、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0054】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に限定されず、好ましくは10万~120万であり、より好ましくは20万~100万である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量がこのような範囲であれば、成膜性と流動性とを確保することが容易となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0055】
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂が挙げられる。
【0057】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。
【0058】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製のjER(登録商標)シリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、「エピコート」は登録商標)、ダウケミカル社製のDER-330、DER-301、DER-361、及び新日鉄住金化学株式会社製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。
【0059】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN-201、ダウケミカル社製のDEN-438等が挙げられる。
【0060】
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027(「EOCN」は登録商標)、新日鉄住金化学株式会社製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。
【0061】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、ハンツマン・ジャパン株式会社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX-611、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-421、EX-411、EX-321等が挙げられる(「アラルダイト」、「デナコール」は登録商標)。
【0062】
アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、新日鉄住金化学株式会社製のYH-434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD-X及びTETRAD-C(「TETRAD」は登録商標)、住友化学株式会社製のELM-120等が挙げられる。
【0063】
複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。
【0064】
上述したエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。
【0066】
エポキシ樹脂硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れるという観点から、エポキシ樹脂硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。
【0067】
上記エポキシ樹脂硬化剤としてのフェノール樹脂の中で好ましいものとしては、例えば、DIC株式会社製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H-1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:jERキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65及び三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVRが挙げられる(「フェノライト」、「エピキュア」、「ミレックス」は登録商標)。
【0068】
熱硬化性樹脂及び硬化剤はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
仮固定材層における熱硬化性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、10~500質量部が好ましく、20~300質量部がより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記の範囲にあると、仮固定材層は充分な低温貼り付け性、耐熱性、硬化性及び剥離性を兼ね備えることが容易となる。熱硬化性樹脂の含有量が10質量部以上であれば貼付性及び耐熱性が向上するとともに、電子機器装置の製造時における有機基板の保持性も向上し、電子機器装置を構成する部品(例えば、半導体チップなど)が損傷しにくい傾向がある。一方、熱硬化性樹脂の含有量が500質量部以下であれば、硬化前の粘度が過度に低くなりにくく、比較的短時間で硬化できると共に、有機基板と支持フィルムとの保持性と、有機基板と支持フィルムとの剥離性とを両立しやすくなる傾向にある。
【0070】
(C)シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有するものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、シリコーン変性樹脂、ストレートシリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0071】
仮固定材層がシリコーン化合物を含有することで、仮固定材層を所定の加工を経た有機基板から剥離する際、100℃以下の低温であっても、溶剤を用いることなく容易に剥離することが可能となる。
【0072】
シリコーン変性樹脂としては、シリコーン変性アルキド樹脂が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンが挙げられる。
【0073】
上述したシリコーン化合物の市販品としては、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名:SH3773M、L-7001、SH-550、SH-710、信越化学工業株式会社製の商品名:X-22-163、KF-105、X-22-163B、X-22-163C、BYK社製の商品名:BYK-UV3500等が挙げられる。
【0074】
シリコーン化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
仮固定材層におけるシリコーン化合物の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0~100質量部が好ましく、0.01~80質量部がより好ましい。シリコーン化合物の含有量が上記範囲内であれば、加工時における有機基板に対する接着性と加工後における有機基板に対する剥離性とをより高水準で両立させることが可能となる。
【0076】
(D)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0077】
仮固定材層が、熱可塑性樹脂としてエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む場合、この共重合体が有するエポキシ基の硬化を促進する硬化促進剤を更に含有することが好ましい。
【0078】
硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
仮固定材層における硬化促進剤の含有量は、組成物に含まれる架橋性官能基を有するポリマー(熱可塑性樹脂)及び熱硬化性樹脂の合計100質量部に対して、0.01~5.0質量部が好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であれば、半導体素子を製造するときの熱履歴によって仮固定材層を充分に硬化させることが容易となり、有機基板と支持フィルムとをより確実に固定することができる。一方、硬化促進剤の含有量が5.0質量部以下であれば、仮固定材層の溶融粘度が過度に上昇しすぎず、基板搬送用サポートテープの保存安定性を確保しやすくなる。
【0080】
その他の成分としては、無機フィラー及び有機フィラー等のフィラー、並びに、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0081】
無機フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー;シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の非金属無機フィラー等が挙げられる。無機フィラーは所望する機能に応じて選択することができる。金属フィラーは、仮固定材層にチキソ性を付与する目的で添加することができる。非金属無機フィラーは、仮固定材層に低熱膨張性及び低吸湿性を付与する目的で添加することができる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
無機フィラーは表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されていることにより、仮固定材層を形成するための塗工液を調製するときの仮固定材層を構成する成分の有機溶剤への分散性、並びに仮固定材層の密着性及び耐熱性を向上させることが容易となる。
【0083】
表面に有機基を有する無機フィラーは、例えば、下記一般式(B-1)で表されるシランカップリング剤と無機フィラーとを混合し、30℃以上の温度で攪拌することにより得ることができる。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されたことは、UV(紫外線)測定、IR(赤外線)測定、XPS(X線光電子分光)測定等で確認することが可能である。
【0084】
【化1】

[式(B-1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、イソシアネート基及びメタクリロキシ基からなる群より選択される有機基を示し、sは0又は1~10の整数を示し、R11、R12及びR13は各々独立に、炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【0085】
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基は、入手が容易であるという観点から、メチル基、エチル基及びペンチル基が好ましい。
【0086】
Xは、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基が好ましく、グリシドキシ基及びメルカプト基がより好ましい。
【0087】
式(B-1)中のsは、高熱時における仮固定材の流動性を抑制し、耐熱性を向上させる観点から、0~5が好ましく、0~4がより好ましい。
【0088】
好ましいシランカップリング剤は、例えば、トリメトキシフェニルシラン、ジメチルジメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3―ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N,N’―ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましく、トリメトキシフェニルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0089】
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上記カップリング剤の使用量は、耐熱性を向上させる効果と保存安定性とのバランスを図る観点から、無機フィラー100質量部に対して、0.01~50質量部が好ましく、0.05質量部~20質量部がより好ましく、耐熱性向上の観点から、0.5~10質量部が更に好ましい。
【0091】
仮固定材層における無機フィラーの含有量は、Bステージ状態における仮固定材層の取扱い性の向上、及び低熱膨張性の向上の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。無機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。無機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、有機基板に対する接着性を充分に確保しつつ、所望の機能を付与することができる傾向にある。
【0092】
有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。
【0093】
仮固定材層における有機フィラーの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。有機フィラーの含有量の下限は特に制限はなく、熱可塑性樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。有機フィラーの含有量を上記範囲とすることにより、有機基板に対する接着性を充分に確保しつつ、所望の機能を付与することができる傾向にある。
【0094】
仮固定材層は、基板埋め込み性の観点から、60℃のずり粘度が100~10000Pa・sであることが好ましく、500~9000Pa・sであることがより好ましく、1000~8000Pa・sであることが更に好ましい。また、60℃のずり粘度は、ラミネート性の観点から、1000~9000Pa・sであることがより好ましく、2000~8000Pa・sであることが更に好ましく、3000~7000Pa・sであることが更により好ましい。
【0095】
ずり粘度は、以下の手順で測定される。まず、厚さ60μmの仮固定材層(仮固定材フィルム)を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmの測定用サンプルを作製する。この測定用サンプルについて、下記条件に設定した回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、ARES)を用い、5%の歪みを与えながら35℃から20℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、60℃に到達したときの粘度を測定する。
測定方法:「parallel plate」
測定冶具:直径8mmの円形の治具
測定モード:「Dynamic temperature ramp」
周波数:1Hz
【0096】
上記60℃のずり粘度は、例えば、(A)成分(特には、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体)の配合量によって調整することができる。また、熱可塑性樹脂のTg及び分子量の変更、熱硬化性樹脂のTm及び分子量の変更、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との配合割合の変更、フィラー及び樹脂の添加等によって調整してもよい。
【0097】
仮固定材層は、基板搬送性の観点から、130℃で30分間及び170℃で1時間加熱された後の弾性率が25℃において10~1000MPaであることが好ましく、100~900MPaであることがより好ましく、200~800MPaであることが更に好ましい。また、上記加熱後の25℃における弾性率は、剥離性と剛性の観点から、50~970MPaであることがより好ましく、100~940MPaであることが更に好ましく、200~900MPaであることが更により好ましい。
【0098】
加熱後の弾性率は、以下の手順で測定される。まず、厚さ60μmの仮固定材層(仮固定材フィルム)を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmのフィルムを作製する。これを、所定の条件で加熱(例えば、130℃のオーブンで30分、さらに170℃で1時間加熱)した後、厚み方向に4mm幅、長さ33mmに切り出す。切り出したフィルムを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel-E4000、(株)UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、25℃での測定値を記録する。
【0099】
さらに、仮固定材層は、基板搬送性の観点から、130℃で30分間、170℃で1時間、及び260℃で5分間加熱された後の弾性率が25℃において10~1000MPaであることが好ましく、200~900MPaであることがより好ましく、300~800MPaであることが更に好ましい。
【0100】
上記の加熱後の25℃における弾性率は、例えば、(A)成分(特には、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体)の配合量と(B)成分(特には、フェノール樹脂)の配合量によって調整することができる。また、熱可塑性樹脂のTg、分子量、及び官能基数の変更、熱硬化性樹脂の官能基数の変更、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との配合割合の変更、フィラー及び樹脂の添加等によって調整してもよい。
【0101】
仮固定材層は、耐リフロー性の観点から、130℃で30分間及び170℃で1時間加熱された後の5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが更に好ましい。
【0102】
加熱後の5%重量減少温度は、以下の手順で測定される。まず、厚さ60μmの仮固定材層(仮固定材フィルム)を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmのフィルムを作製する。これを、所定の条件で加熱(例えば、130℃のオーブンで30分、さらに170℃で1時間加熱)した後、測定試料として10mg切り出す。これを、示差熱天秤(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA220)により、昇温速度10℃/分で測定して求めることができる。
【0103】
上記加熱後の5%重量減少温度は、例えば、(A)成分(特には、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体)のガラス転移温度によって調整することができる。また、熱可塑性樹脂のTg、分子量、及び官能基数の変更、熱硬化性樹脂の官能基数の変更、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との配合割合の変更、フィラー及び樹脂の添加等によって調整してもよい。
【0104】
仮固定材層は、ソルダーレジストAUS308の表面を有する基板にラミネートし、130℃で30分及び170℃で1時間加熱された後の、上記基板との間の25℃における90°剥離強度が30~300N/m、40~250N/m又は50~200N/mであってもよい。90°剥離強度が上記範囲にあると、加工時においては仮固定材層が有機基板から剥離しにくく、支持フィルムで補強された有機基板のハンドリング性を一層向上させることができるとともに、加工後においては有機基板から支持フィルムを仮固定材層とともに容易に剥離することができる。
【0105】
90°剥離強度は以下のように測定される。ソルダーレジスト「PSR-4000 AUS308」(太陽インキ(株)社製、製品名)の表面を有する基板(材質:ガラスエポキシ基板、基板厚:1000μm)をロールラミネーター(大成ラミネーター株式会社製、ファーストラミネーターVA-400III)のステージ上に置き、厚さ60μmのフィルム状に形成した仮固定用樹脂組成物を基板に貼り付くように設置する。これを速度0.2m/分、温度80℃、圧力0.2MPaの条件で貼付け、測定用サンプルとする。得られた測定用サンプルを所定の加熱条件で加熱(例えば、130℃で30分及び170℃で1時間加熱)した後、10mm幅に切り出す。これを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機により、300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とする。
【0106】
また、仮固定材層は、リフロー工程への適用の観点から、ソルダーレジスト「PSR-4000 AUS308」(太陽インキ(株)社製、製品名)の表面を有する基板(材質:ガラスエポキシ基板、基板厚:1000μm)にラミネートし、130℃で30分間、170℃で1時間、及び260℃で5分間加熱された後の、上記基板との間の25℃における90°剥離強度が30~300N/mであってもよい。
【0107】
仮固定材層の厚さは、特に限定されず、有機基板と搬送用の支持フィルムとを充分に固定するという観点から、10~350μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であれば、塗工時の厚さのバラツキが少なくなり、また、厚さが充分であるため、仮固定材層又は仮固定材層の硬化物の強度が良好になり、有機基板と搬送用の支持フィルムとをより充分に固定することができる。厚さが350μm以下であれば、仮固定材層の厚さのバラツキが生じにくく、また、充分な乾燥により仮固定材層中の残留溶剤量を低減することが容易となり、仮固定材層の硬化物を加熱したときの発泡を更に少なくできる。
【0108】
仮固定材層2Aは、仮固定材層を構成する各成分を有機溶媒中で混合及び混練してワニスを調製し、作製したワニスを、プライマー層PLが設けられた支持フィルム1のプライマー層PL上に塗布して乾燥する方法により形成することができる。
【0109】
有機溶剤は特に限定されず、製膜時の揮発性等を沸点から考慮して決めることができる。具体的には、製膜時にフィルムの硬化を進みにくくする観点から、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶剤が好ましい。また、製膜性を向上させる等の目的では、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノンの比較的高沸点の溶剤を使用することが好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ワニスにおける固形分濃度は、10~80質量%であることが好ましい。
【0110】
混合及び混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。乾燥は、使用した有機溶剤が充分に揮散する条件であれば特に制限はなく、通常60℃~200℃で、0.1~90分間加熱して行うことができる。
【0111】
支持フィルム1のプライマー層PL上に仮固定材層2Aを形成した後、仮固定材層2A上に保護フィルム3を貼り合わせることによって基板搬送用サポートテープ10を得ることができる。
【0112】
本実施形態においては、保護フィルム3等の支持フィルム上に仮固定材層2Aを形成し、これをプライマー層PLが設けられた支持フィルム1と貼り合わせることによって基板搬送用サポートテープ10を得てもよい。
【0113】
基板搬送用サポートテープ10は、例えばロール状に巻き取ることによって容易に保存することができる。また、ロール状の基板搬送用サポートテープ10を好適なサイズに切り出した状態で保存することもできる。
【0114】
上述した仮固定材層2Aは単層の場合であるが、仮固定材層は多層構成を有していてもよい。例えば、仮固定材層が二層構成であると、より高度に加工性と、加工後の剥離性とを両立し得るという利点がある。
【0115】
仮固定材層は、一つの仮固定材層と、他の仮固定材層とが直接接していてもよい。この場合、二つの層が一体化して単層構造となっていてもよいし、二つの層の間に界面が存在して二層構造を維持していてもよい。
【0116】
[電子機器装置の製造方法]
本実施形態に係る基板搬送用サポートテープを用いた電子機器装置の製造方法は、大きく分けて以下の5工程を備えることができる。
(a)厚さ10~1000μmの有機基板に、本実施形態に係る基板搬送用サポートテープを、仮固定材層が有機基板に接するように貼り合わせて、支持フィルム、プライマー層、仮固定材層及び有機基板をこの順に備える積層体を得る第1工程。
(b)積層体の仮固定材を加熱する第2工程。
(c)第2工程を経た積層体の有機基板上に半導体チップを搭載する第3工程。
(d)有機基板上に搭載された半導体チップを封止材で封止する第4工程。
(e)第4工程を経た積層体の有機基板から支持フィルム、プライマー層及び仮固定材層を剥離する第5工程。
【0117】
図2図3及び図4は電子機器装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。なお、図2図3及び図4においては、仮固定材層が図1の(B)に示す単層構成である場合を図示したが、仮固定材層の構成はこれに限定されない。
【0118】
<(a)第1工程>
第1工程では、有機基板30に、仮固定材層2A及びプライマー層PLを介して支持フィルム1を貼り合わせて積層体15を得ている(図2の(a))。
【0119】
有機基板30は、ポリマー等の有機物から構成される基板であってもよく、又は、少なくとも主面の一部又は全部に有機物を有しているものであってもよい。有機物としては、感光性絶縁材料及びその硬化物、感光性ソルダーレジスト及びその硬化物(ソルダーレジスト)等が挙げられる。有機基板30が、表面の一部又は全部に感光性絶縁材料若しくはその硬化物、又は、感光性ソルダーレジスト若しくはその硬化物(ソルダーレジスト)を有する場合、コアとなる基板は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板等であってもよい。
【0120】
半導体素子又は電子機器装置の薄型化の観点から、有機基板30の厚さは500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。
【0121】
有機基板30は、コアレス基板であってもよい。コアレス基板の材質としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、及びそれを含む樹脂組成物(例えば、ビルドアップ材等)が挙げられる。
【0122】
図2の(a)に示すように、基板搬送用サポートテープ10を用いて積層体15を得る場合、ロールラミネーターを使用して有機基板30と、仮固定材層2Aを介して支持フィルム1とをラミネートすることができる。基板搬送用サポートテープ10が保護フィルム3を備える場合、保護フィルム3はラミネート前に剥がしていてもよく、保護フィルム3を剥がしながら仮固定材層2A及び支持フィルム1をラミネートしてもよい。
【0123】
ロールラミネーターとして、例えば、大成ラミネーター社製ロールラミネーターVA400III(商品名)が挙げられる。この装置を使用する場合、圧力0.1MPa~1.0MPa、温度40℃~150℃、速度0.1~1.0m/分で、有機基板30と支持フィルム1とを仮固定材層2Aを介して貼り合わせることができる。
【0124】
本実施形態においては、テープ状である基板搬送用サポートテープ10を連続して供給することができる。この場合、テープ状の支持フィルム1によって補強された有機基板30を連続的に搬送することができ、生産性の向上などを図ることができる。
【0125】
ロールラミネーターに代えて真空ラミネーターを用いることもできる。
【0126】
真空ラミネーターとして、例えば、株式会社エヌ・ピー・シー製真空ラミネーターLM-50×50-S(商品名)及びニチゴー・モートン株式会社製真空ラミネーターV130(商品名)が挙げられる。ラミネート条件として、気圧1hPa以下、圧着温度40℃~150℃(好ましくは60℃~120℃)、ラミネート圧力0.01~0.5MPa(好ましくは0.1~0.5MPa)、保持時間1秒~600秒(好ましくは30秒~300秒)で、有機基板30と支持フィルム1とを仮固定材層2A及びプライマー層PLを介して貼り合わせることができる。
【0127】
<(b)第2工程>
第2工程では、積層体15の仮固定材層2Aを加熱する。この工程により、硬化した仮固定材層2Cによって有機基板30と支持フィルム1とが充分に固定され(図2の(b))、有機基板30のハンドリング性が向上する。
【0128】
加熱は、例えば、防爆乾燥機、送風定温乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DKN602)を使用して行うことができる。加熱条件は、100~200℃で10~300分(より好ましくは20~210分)の硬化が好ましい。温度が100℃以上であれば仮固定材が充分に硬化して後段の工程で問題が起きにくく、200℃以下であれば仮固定材の硬化中にアウトガスが発生しにくく、仮固定材の剥離を更に抑制できる。また、な熱時間が10分以上であれば後段の工程で問題が起きにくく、300分以下であれば作業効率が悪化しにくい。図2の(b)における仮固定材層2Cは仮固定材層2Aの硬化体を示す。
【0129】
<(c)第3工程>
第3工程では、第2工程を経た積層体の有機基板上に半導体チップを搭載する。例えば、フリップチップボンダーを用いて有機基板30上に半導体チップ40を実装することができる(図2の(c))。実装する装置としては、例えば、東レエンジニアリング株式会社製FC3000L(商品名)等が挙げられ、実装条件は所望の有機基板及び半導体チップに応じて任意に選ぶことができる。
【0130】
<(d)第4工程>
第4工程では、図3の(d)に示すように、有機基板30上に搭載された半導体チップ40を封止材50で封止する。封止する装置としては、例えば、TOWA株式会社製FFT1030G(商品名)等が挙げられ、封止条件は所望の有機基板、半導体チップ、及び封止材に応じて任意に選ぶことができる。また、封止後の封止材の硬化条件は封止材種により任意に選ぶことができる。
【0131】
<(e)第5工程>
第5工程では、図3の(e)に示すように、第4工程を経た積層体の有機基板30から支持フィルム1、プライマー層PL及び仮固定材層2Cを剥離する。剥離方法としては、有機基板上に半導体チップが搭載され封止された半導体チップ実装基板又は支持フィルムの一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、半導体チップ実装基板の封止面に保護フィルムを貼り、半導体チップ実装基板と保護フィルムとをピール方式で支持フィルムから剥離する方法等が挙げられる。
【0132】
これらの剥離方法は、通常、室温で実施されるが、40~100℃程度の温度下で実施してもよい。
【0133】
本実施形態においては、半導体チップ実装基板に、仮固定材が一部残存した場合、これを除去するための洗浄工程を設けることができる。仮固定材の除去は、例えば、半導体チップ実装基板を洗浄することにより行うことができる。
【0134】
洗浄液は、一部残存した仮固定材を除去できるような洗浄液であれば、特に制限はない。このような洗浄液としては、例えば、仮固定用樹脂組成物の希釈に用いることができる上記有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
また、残存した仮固定材が除去しにくい場合は、有機溶剤に塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類は、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で0.01~10質量%が好ましい。また、洗浄液には、残存物の除去性を向上させるため既存の界面活性剤を添加してもよい。
【0136】
洗浄方法に特に制限はなく、例えば、上記洗浄液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が挙げられる。温度は10~80℃、好ましくは15~65℃が好適であり、最終的に水洗又はアルコール洗浄を行い、乾燥処理させて、半導体チップ実装基板が得られる。
【0137】
本実施形態においては、半導体チップが実装、封止された半導体チップ実装基板55は、更にダイシングによって半導体素子60に個片化される(図4の(f)及び(g))。
【0138】
図4の(h)は、上記工程を経て製造された電子機器装置100を模式的に示す断面図である。電子機器装置100は、配線基板70上に複数の半導体素子60がはんだボール65を介して配置されている。
【0139】
本実施形態の方法によって得られる電子機器装置は、薄型化を図ることができるため、スマートフォン、タブレット型端末等に好適に用いることができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【実施例
【0141】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
[アクリルゴムK-1の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル60g、メタクリル酸メチル10g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10g、グリシジルメタクリレート20g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液1.94g、ラウリルパーオキサイド0.2g、及びn-オクチルメルカプタン0.08gを配合した。続いて、60分間にわたってNガスをフラスコに吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して5時間重合を行った。更に、系内温度を90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。重合反応により得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムK-1を得た。
【0143】
アクリルゴムK-1の重量平均分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量はポリスチレン換算で30万であった。また、アクリルゴムK-1のTgは-20℃であった。
【0144】
[アクリルゴムK-2の合成]
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)及び水分受容器付きの還流冷却器を備えた500ccのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水200g、アクリル酸ブチル70g、メタクリル酸メチル10g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10g、グリシジルメタクリレート10g、1.8%ポリビニルアルコール水溶液1.94g、ラウリルパーオキサイド0.2g、及びn-オクチルメルカプタン0.06gを配合した。続いて、60分間にわたってNガスをフラスコに吹き込んで系内の空気を除去した後、系内温度を65℃に昇温して5時間重合を行った。更に、系内温度を90℃に昇温して2時間攪拌を続け重合を完結させた。重合反応により得られた透明のビーズをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄した後、真空乾燥機で50℃6時間乾燥させ、アクリルゴムK-2を得た。
【0145】
アクリルゴムK-2の重量平均分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量はポリスチレン換算で40万であった。また、アクリルゴムK-2のTgは-28℃であった。
【0146】
[仮固定材層形成用ワニスの調製]
(調製例1及び2)
表1に示す質量部の組成で、仮固定材層を形成するためのワニスをそれぞれ調製した。
【0147】
【表1】
【0148】
表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
(熱可塑性樹脂)
アクリルゴムK-1:上記で合成したアクリルゴム(GPCによる重量平均分子量30万、グリシジルメタクリレート20質量%、Tg-20℃)
アクリルゴムK-2:上記で合成したアクリルゴム(GPCによる重量平均分子量40万、グリシジルメタクリレート10質量%、Tg-28℃)
(熱硬化性成分)
N500P-10:クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名)
EXA-830CRP:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名)
MEH-7800M:フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、商品名)
(シリコーン化合物)
TA31-209E:シリコーン変性アルキド樹脂(日立化成株式会社製、商品名)
(硬化促進剤)
2PZ-CN:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、商品名)
【0149】
調製した仮固定材層形成用ワニスから形成した仮固定材層について、ずり粘度、加熱後の弾性率、及び加熱後の5%重量減少温度を、以下に示す方法にしたがって評価した。その評価結果を表1に示す。
【0150】
[ずり粘度の測定]
ずり粘度は、以下の手順で測定した。まず、厚さ60μmの仮固定材層を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmの測定用サンプルを作製した。この測定用サンプルについて、下記条件に設定した回転式粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、ARES)を用い、5%の歪みを与えながら35℃から20℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、60℃に到達したときの粘度を測定した。
測定方法:「parallel plate」
測定冶具:直径8mmの円形の治具
測定モード:「Dynamic temperature ramp」
周波数:1Hz
【0151】
[加熱後の弾性率の測定]
弾性率は、以下の手順で測定した。まず、厚さ60μmの仮固定材層を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmのフィルムを作製した。これを、130℃のオーブンで30分、さらに170℃で1時間加熱した後、厚み方向に4mm幅、長さ33mmに切り出した。切り出したフィルムを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel-E4000、(株)UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、25℃での測定値を記録した。
【0152】
[加熱後の5%重量減少温度]
加熱後の5%重量減少温度は、以下の手順で測定した。まず、厚さ60μmの仮固定材層を、80℃で4枚ラミネートすることにより、厚さ240μmのフィルムを作製した。これを、所定の条件で加熱(例えば、130℃のオーブンで30分、さらに170℃で1時間加熱)した後、測定試料として10mg切り出した。これを、示差熱天秤(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA220)により、昇温速度10℃/分で測定した。
【0153】
[支持フィルムのプライマー処理(プライマー層形成)]
(処理例1~16)
表2又は表3に示す組成(質量%)で、プライマー層を形成するためのワニスをそれぞれ調製した。次いで、調製したワニスを、表2又は表3に示す支持フィルム上に塗布し、100℃で2分間加熱乾燥することにより、プライマー層が設けられた支持フィルムを得た。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
表2及び3に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
シランカップリング剤A:3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBE585」)
シランカップリング剤B:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM403」 )
シランカップリング剤C:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM903」)
シランカップリング剤D:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM803」)
シランカップリング剤E:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM573」)
ポリウレタンゴムA:ポリウレタンゴム(ディーアイシーコベストロポリマー(株)製、製品名「T-8175N」)
アクリルゴムA:アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、製品名「WS-023 EK30」、酸価:20mgKOH/g、Tg:-10℃、Mw:50万)
アクリルゴムB:アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、製品名「SG708-6」、酸価:9mgKOH/g、Tg:4℃、Mw:70万)
アクリルゴムC:アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、製品名「SG-70L」、酸価:5mgKOH/g、Tg:-13℃、Mw:90万)
アクリルゴムD:アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、製品名「HTR280CHN」、酸価:<5mgKOH/g、Tg:-29℃、Mw:80万~90万)
アクリルゴムE:アクリルゴム(日立化成(株)製、製品名「KK2」、酸価:<5mgKOH/g、Tg:-20℃、Mw:25万)
アクリルゴムF:アクリルゴム(日立化成(株)製、製品名「KH-CT865」、酸価:<5mgKOH/g、Tg:6℃、Mw:55万)
エポキシ樹脂A:エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製、製品名「EX-810P」)
フルオレン系樹脂A:エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル(株)、製品名「SC-001」)
シリカスラリーA:シリカフィラ((株)アドマテックス、製品名「YA050HHG」)
【0157】
支持フィルムA:ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、製品名「100EN」、厚さ25μm)
【0158】
(実施例1~11、比較例1~10)
[基板搬送用サポートテープの作製]
表4又は表5に示す支持フィルムのプライマー層上に、表4又は表5に示す仮固定材層を形成するためのワニスを塗布し、90℃で5分間、120℃で5分間加熱乾燥することによって、厚さ60μmの仮固定材層を形成した。その後、仮固定材層上に保護フィルム(ポリエチレンフィルム)を貼り合わせ、支持フィルム、仮固定材層及び保護フィルムの構成を有する基板搬送用サポートテープを得た。
【0159】
作製した実施例及び比較例の基板搬送用サポートテープについて、加熱後の90°剥離強度を、以下に示す方法にしたがって評価した。その評価結果を表4及び5に示す。
【0160】
[加熱後の90°剥離強度の測定(1)]
支持フィルム及び仮固定材層の間の90°剥離強度を下記の方法により評価した。保護フィルムを剥離した基板搬送用サポートテープを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱し、これを更に260℃で5分間加熱した後、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。この測定用フィルムについて、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とした。
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
表5に記載の支持フィルムの詳細は以下のとおりである。
支持フィルムA:未処理のポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、製品名「100EN」、厚さ25μm)
【0164】
更に、作製した実施例1及び9の基板搬送用サポートテープについて、加熱後の90°剥離強度を、以下に示す方法にしたがって評価した。その評価結果を表6に示す。
【0165】
[加熱後の90°剥離強度の測定(2)]
基板及び仮固定材層の間の90°剥離強度を下記の方法により評価した。まず、剥離性基材フィルム上に仮固定材層を形成するためのワニスを塗布し、90℃で5分間、120℃で5分間加熱乾燥することによって、厚さ60μmの仮固定材層を形成し、転写用フィルムを作製した。ソルダーレジストAUS308の表面を有する厚さ200μmの有機基板をロールラミネーター(大成ラミネーター株式会社製、VA-400III)のステージ上に置き、転写用フィルムの仮固定材層が有機基板側に貼り付くように、80℃の温度、0.2MPaの圧力、0.2m/minsで、転写用フィルムをラミネートした後、剥離性基材フィルムを剥離した。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱した後、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。測定用フィルムを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とした。
【0166】
[加熱後の90°剥離強度の測定(3)]
基板及び仮固定材層の間の90°剥離強度を下記の方法により評価した。まず、剥離性基材フィルム上に仮固定材層を形成するためのワニスを塗布し、90℃で5分間、120℃で5分間加熱乾燥することによって、厚さ60μmの仮固定材層を形成し、転写用フィルムを作製した。ソルダーレジストAUS308の表面を有する厚さ200μmの有機基板をロールラミネーター(大成ラミネーター株式会社製、VA-400III)のステージ上に置き、転写用フィルムの仮固定材層が有機基板側に貼り付くように、80℃の温度、0.2MPaの圧力、0.2m/minsで、転写用フィルムをラミネートした後、剥離性基材フィルムを剥離した。得られたサンプルを130℃で30分間加熱し、続いて170℃で1時間加熱し、これを更に260℃で5分間加熱した後、10mm幅に切り出し、測定用フィルムとした。測定用フィルムを、剥離角度が90°となるように設定した剥離試験機で300mm/分の速度で剥離試験を実施し、そのときの剥離強度を90°剥離強度とした。
【0167】
【表6】
【0168】
調製例1又は2で形成される仮固定材層は、有機基板に対して低温で充分貼り合わせることができるずり粘度と、充分な耐熱性と、加熱後の適度な弾性率を有していることから、薄型の有機基板のハンドリング性を向上させ、有機基板を充分に補強しながら有機基板上に半導体チップの搭載及び封止を良好に行うことができる。そして、表4に示されるように、実施例1~11の基板搬送用サポートテープは、特定のプライマー層を有する支持フィルム上に仮固定材層が設けられていることにより、支持フィルム及び仮固定材層の間の加熱後の90°剥離強度を高めることができる。これにより、貼りつけた支持フィルムを、有機基板に仮固定材層が残らないように有機基板から剥離することが容易となる。
【符号の説明】
【0169】
1…支持フィルム、2A、2C…仮固定材層、3…保護フィルム、10…サポートテープ、15…積層体、30…有機基板、40…半導体チップ、50…封止材、55…半導体チップ実装基板、60…半導体素子、65…はんだボール、70…配線基板、100…電子機器装置。
図1
図2
図3
図4