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特許7521299感光性樹脂組成物、硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品
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  • 特許-感光性樹脂組成物、硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20240717BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240717BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240717BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20240717BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20240717BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G03F7/075 501
G03F7/027 514
G03F7/11 501
G03F7/40 501
C07F7/18 L
G03F7/20 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125844
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021934
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大江 匡之
(72)【発明者】
【氏名】朝田 皓
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219850(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071422(WO,A1)
【文献】特開2018-200470(JP,A)
【文献】特開2017-193500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/075
G03F 7/027
G03F 7/11
G03F 7/40
C07F 7/18
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、重合性モノマーと、光重合開始剤と、ウレイド構造を有するシラン化合物と、下記一般式(14)で表わされる化合物と、溶剤と、を含有し、
質量基準の塩化物イオン濃度が、0ppm超、50ppm以下である感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(14)中、R 33 はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基であり、R 34 及びR 35 は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基である。cは1~10の整数であり、dは1~3の整数である。)
【請求項2】
0.1モル/L水溶液としたときの25℃におけるpHが2~5となる塩酸塩の質量基準の含有率が、200ppm以下である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
塩化ピリジニウムの質量基準の含有率が、200ppm以下である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレイド構造を有するシラン化合物が、下記一般式(13)で表される化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(13)中、R31及びR32は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基である。aは1~10の整数であり、bは1~3の整数である。)
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(6)で表される構造単位を有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】


(一般式(6)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(7)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(7)で表される基である。)
【化3】


(一般式(7)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、現像剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化物の製造方法。
【請求項7】
前記加熱処理の温度が380℃以下である請求項6に記載のパターン硬化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項9】
パターン硬化物である請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜として用いられる請求項8又は請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の保護膜材料として、ポリイミド樹脂等の高い耐熱性を有する有機材料が広く適用されている。
このようなポリイミド樹脂を用いた保護膜(硬化膜)は、ポリイミド前駆体又はポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して形成した樹脂膜を、加熱して硬化することで得られる。
【0003】
LSIの製造に広く用いられるシリコンウェハとの密着性等の向上を目的として、特定のシランカップリング剤を用いた感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、LSIの製造に広く用いられるシリコンウェハの表面には、水分、金属イオン等の不純物による影響を防ぐ目的でパッシベーション膜と呼ばれる薄い窒化ケイ素膜が形成されることがある。この場合、ポリイミド樹脂は半導体素子においてパッシベーション膜と接触するため、窒化ケイ素との接着性がポリイミド樹脂には必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-76506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている感光性樹脂組成物を用いて形成されるポリイミド膜は、窒化ケイ素との密着性が必ずしも高いものではない場合があった。また、ケイ素原子で構成されるシリコンウェハとの密着性の向上に関しても、さらなる改良の余地があった。
本開示は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ケイ素原子を含む半導体との密着性に優れるポリイミド膜を形成可能な感光性樹脂組成物、並びに、この感光性樹脂組成物を用いた硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、重合性モノマーと、光重合開始剤と、ウレイド構造を有するシラン化合物と、溶剤と、を含有する感光性樹脂組成物。
<2> 0.1モル/L水溶液としたときの25℃におけるpHが2~5となる塩酸塩の質量基準の含有率が、200ppm以下である<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3> 塩化ピリジニウムの質量基準の含有率が、200ppm以下である<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 質量基準の塩化物イオン濃度が、100ppm以下である<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<5> 前記ウレイド構造を有するシラン化合物が、下記一般式(13)で表される化合物を含む<1>~<4>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(一般式(13)中、R31及びR32は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基である。aは1~10の整数であり、bは1~3の整数である。)
<6> 前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(6)で表される構造単位を有する<1>~<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
(一般式(6)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(7)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(7)で表される基である。)
【0011】
【化3】
【0012】
(一般式(7)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、現像剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化物の製造方法。
<8> 前記加熱処理の温度が380℃以下である<7>に記載のパターン硬化物の製造方法。
<9> <1>~<6>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
<10> パターン硬化物である<9>に記載の硬化物。
<11> 層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜として用いられる<9>又は<10>に記載の硬化物。
<12> <9>~<11>のいずれか1項に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ケイ素原子を含む半導体との密着性に優れるポリイミド膜を形成可能な感光性樹脂組成物、並びに、この感光性樹脂組成物を用いた硬化物、パターン硬化物の製造方法、及び電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る電子部品の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0016】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
層又は膜の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本開示において、層又は膜の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
【0017】
<感光性樹脂組成物>
本開示の感光性樹脂組成物は、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、重合性モノマーと、光重合開始剤と、ウレイド構造を有するシラン化合物と、溶剤と、を含有する。
本開示の感光性樹脂組成物によれば、ケイ素原子を含む半導体との密着性に優れるポリイミド膜を形成可能となる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
シラン化合物の有するウレイド構造とポリイミド前駆体の有するカルボキシ基とが反応することにより、本開示の感光性樹脂組成物を加熱することで得られるポリイミド膜中には、ウレイド構造を有するシラン化合物が取り込まれると考えられる。また、シラン化合物の有するアルコキシ基がシリコン基板、窒化ケイ素膜、窒化ケイ素基板等のケイ素原子を含む半導体との密着性に寄与すると考えられる。その結果、本開示の感光性樹脂組成物を用いて得られたポリイミド膜は、ケイ素原子を含む半導体との密着性に優れると推察される。
【0018】
本開示の感光性樹脂組成物は、ネガ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
以下、本開示の感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0019】
(ポリイミド前駆体)
本開示の感光性樹脂組成物は、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体(以下、不飽和ポリイミド前駆体と称することがある。)を含有する。
重合性の不飽和結合としては、炭素-炭素の二重結合等が挙げられる。
不飽和ポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(6)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であってもよい。不飽和ポリイミド前駆体が一般式(6)で表される構造単位を有することで、i線の透過率が高く、380℃以下の硬化時にも良好な硬化物を形成できる傾向にある。
不飽和ポリイミド前駆体に占める下記一般式(6)で表される構造単位の含有率は、不飽和ポリイミド前駆体に含有される全構造単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0020】
不飽和ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを用いて合成されたものであってもよい。この場合、Xは、テトラカルボン酸二無水物由来の残基に該当し、Yは、はジアミン化合物由来の残基に該当する。なお、不飽和ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物に替えて、テトラカルボン酸を用いて合成されたものであってもよい。
【0021】
【化4】
【0022】
一般式(6)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(7)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(7)で表される基である。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(7)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。
【0025】
一般式(6)において、Xで表される4価の有機基は、炭素数が3~20であることが好ましく、5~15であることがより好ましく、7~13であることがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基は、芳香環を含んでもよい。Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ポリイミド前駆体の紫外領域における光透過性を向上する観点から、ベンゼン環が好ましい。
Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、各芳香環は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。芳香環の置換基としては、アルキル基、フッ素原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
Xで表される4価の有機基がベンゼン環を含む場合、Xで表される4価の有機基は1個~4個のベンゼン環を含むことが好ましく、1個~3個のベンゼン環を含むことがより好ましく、1個又は2個のベンゼン環を含むことがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基が2個以上のベンゼン環を含む場合、各ベンゼン環は、単結合により連結されていてもよいし、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)等の連結基、これら連結基を少なくとも2つ組み合わせた複合連結基などにより結合されていてもよい。また、2つのベンゼン環が単結合及び連結基の少なくとも一方により2箇所で結合されて、2つのベンゼン環の間に連結基を含む5員環又は6員環が形成されていてもよい。
【0026】
一般式(6)において、-COOR基と-CONH-基とは互いにオルト位置にあり、-COOR基と-CO-基とは互いにオルト位置にあることが好ましい。
【0027】
Xで表される4価の有機基の具体例としては、下記一般式(A)~下記一般式(E)で表される基を挙げることができるが、本開示は下記具体例に限定されるものではない。
【0028】
【化6】
【0029】
一般式(D)において、A及びBは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、ハロゲン化メチレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)又はシリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)を表し、A及びBの両方が単結合となることはない。
【0030】
一般式(E)において、Cは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Cは、下記式(C1)で表される構造であってもよい。
【0031】
【化7】
【0032】
一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基としては、炭素数が1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、エチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基等が好ましい。
【0033】
一般式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるCで表されるハロゲン化アルキレン基の具体例としては、上述の一般式(E)におけるCで表されるアルキレン基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヘキサフルオロジメチルメチレン基等が好ましい。
【0034】
上記シリレン結合又はシロキサン結合に含まれるR又はRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。R又はRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0035】
一般式(D)におけるA及びBの組み合わせは特に限定されるものではなく、メチレン基とエーテル結合との組み合わせ、メチレン基とスルフィド結合との組み合わせ、カルボニル基とエーテル結合との組み合わせ等が好ましい。
一般式(E)におけるCとしては、単結合、エーテル結合、カルボニル基等が好ましい。
【0036】
一般式(6)におけるR及びRで表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~4であり、1又は2であることが好ましい。R及びRで表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(7)におけるR~R10で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は1~3であり、1又は2であることが好ましい。R~R10で表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0038】
一般式(7)におけるR~R10の組み合わせとしては、R及びRが水素原子であり、R10が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましい。
【0039】
一般式(7)におけるqは1~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
【0040】
一般式(6)においては、R及びRの少なくとも一方が、前記一般式(7)で表される基であることが好ましく、R及びRの両方が前記一般式(7)で表される基であることがより好ましい。
【0041】
Xがテトラカルボン酸二無水物由来の残基に該当する場合、当該残基の元となるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。
【0042】
一般式(6)において、Yで表される2価の有機基は、炭素数が1~30であることが好ましく、5~25であることがより好ましく、10~20であることがさらに好ましい。
Yで表される2価の有機基は、2価の脂肪族基であってもよく、2価の芳香族基であってもよい。耐熱性の観点から、Yで表される2価の有機基は、2価の芳香族基であることが好ましい。
【0043】
Yで表される2価の芳香族基の具体例としては、下記一般式(F)及び下記一般式(G)で表される基を挙げることができる。
【0044】
【化8】
【0045】
一般式(F)又は一般式(G)において、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基又はフェニル基を表し、nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
一般式(G)において、Dは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Dは、上記式(C1)で表される構造であってもよい。一般式(G)におけるDの具体例は、一般式(E)におけるCの具体例と同様である。
一般式(G)におけるDとしては、単結合が好ましい。
【0046】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は4のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0047】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基としては、炭素数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が1又は4のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0048】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のハロゲン化アルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基の具体例としては、一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0049】
一般式(F)又は一般式(G)におけるnは、それぞれ独立に、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0050】
Yで表される2価の脂肪族基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロアルキレン基、ポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基、ポリシロキサン構造を有する2価の基等が挙げられる。
【0051】
Yで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数が1~15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基であることがさらに好ましい。
Yで表されるアルキレン基の具体例としては、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、2-メチルヘキサメチレン基、2-メチルヘプタメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、2-メチルノナメチレン基、2-メチルデカメチレン基等が挙げられる。
【0052】
Yで表されるシクロアルキレン基としては、炭素数が3~20のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数が3~10のシクロアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が3~6のシクロアルキレン基であることがさらに好ましい。
Yで表されるシクロアルキレン基の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0053】
Yで表されるポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基に含まれる単位構造としては、炭素数1~10のアルキレンオキサイド構造が好ましく、炭素数1~8のアルキレンオキサイド構造がより好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキサイド構造がさらに好ましい。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリエチレンオキサイド構造又はポリプロピレンオキサイド構造が好ましい。アルキレンオキサイド構造中のアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリアルキレンオキサイド構造中の単位構造は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0054】
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基としては、ポリシロキサン構造中のケイ素原子が水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基と結合しているポリシロキサン構造を有する2価の基が挙げられる。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数6~18のアリール基は、無置換でも置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基は、1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基を構成するケイ素原子は、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基などを介して一般式(6)中のNH基と結合していてもよい。
【0055】
Yがジアミン化合物由来の残基に該当する場合、当該残基の元となるジアミン化合物の具体例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,2’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-トリジン、o-トリジンスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4-ジアミノメシチレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、ビス-{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス{4-(3’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
ジアミン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
一般式(6)における、Xで表される4価の有機基とYで表される2価の有機基との組み合わせは特に限定されるものではない。Xで表される4価の有機基とYで表される2価の有機基との組み合わせとしては、Xが一般式(A)で表される基及び一般式(E)で表される基の併用であり、Yが一般式(G)で表される基の組み合わせ等が挙げられる。
Xが一般式(A)で表される基及び一般式(E)で表される基の併用である場合、一般式(A)で表される基XAと、一般式(E)で表される基XEとの個数基準の比率(XA/XE)は、1~8の範囲であることが好ましく、2~6の範囲であることがより好ましく、3~5の範囲であることがさらに好ましい。
【0057】
不飽和ポリイミド前駆体は、一般式(6)で表される構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。一般式(6)で表される構造単位以外のその他の構造単位としては、一般式(6)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である構造単位、つまりは、一般式(6)におけるR及びRのいずれもが一般式(7)で表される基ではない構造単位が挙げられる。
【0058】
不飽和ポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物とR-OHで表される化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤中にて反応させジエステル誘導体とした後、ジエステル誘導体とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを縮合反応させるか、または、テトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを有機溶剤中にて反応させポリアミック酸を得て、R-OHで表される化合物を加え、有機溶剤中で反応させエステル基を導入することで、得ることができる。
ここで、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物におけるYは、一般式(6)におけるYと同様であり、具体例及び好ましい例も同様である。また、R-OHで表される化合物におけるRは、一般式(7)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基を表し、具体例及び好ましい例は、一般式(6)におけるR及びRの場合と同様である。
式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物及びR-OHで表される化合物は、各々、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
また、不飽和ポリイミド前駆体は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物にR-OHで表される化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、塩化チオニル等の塩素化剤を作用させて酸塩化物に変換し、次いで、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物と酸塩化物とを反応させることで得ることができる。
さらに、不飽和ポリイミド前駆体は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物にR-OHで表される化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、カルボジイミド化合物の存在下でHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とジエステル誘導体とを反応させることで得ることができる。
さらに、不飽和ポリイミド前駆体は、下記一般式(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸とした後、トリフルオロ酢酸無水物の存在下でポリアミック酸をイソイミド化し、次いでR-OHで表される化合物を作用させて得ることができる。この場合、テトラカルボン酸二無水物の一部に予めR-OHで表される化合物を作用させて、部分的にエステル化されたテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸としてもよい。
上述のようにして得られた不飽和ポリイミド前駆体は、定法に従って精製してもよい。
【0059】
【化9】
【0060】
一般式(8)において、Xは、一般式(6)におけるXと同様であり、具体例及び好ましい例も同様である。
【0061】
不飽和ポリイミド前駆体の合成に用いられるR-OHで表される化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0062】
不飽和ポリイミド前駆体の分子量には特に制限はないが、重量平均分子量で10,000~200,000であることが好ましい。
重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0063】
(重合性モノマー)
本開示の感光性樹脂組成物は、重合性モノマーを含有する。重合性モノマーとしては、重合性の不飽和結合を分子中に少なくとも1つ含む化合物であればよく、重合性の不飽和結合を分子中に2つ以上含む化合物であることが好ましい。
重合性の不飽和結合を含む基としては、アリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0064】
重合性モノマーの分子量は、50~1000であることが好ましく、75~800であることがより好ましく、100~500であることがさらに好ましい。
【0065】
重合性モノマーとしては、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも一方を分子中に2つ含有する化合物が好ましく、分子中に含有される2つのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が、直鎖状の2価の有機基で連結された化合物であることがより好ましく、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される化合物(以下、特定重合性モノマーと称することがある。)であることがさらに好ましい。
【0066】
【化10】
【0067】
一般式(4)又は一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~8のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~8のアルキレン基を表し、pは2~5の整数を表す。複数のR及びRは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0068】
一般式(4)又は一般式(5)におけるRとしては、メチル基が好ましい。
一般式(4)におけるRで表される炭素数1~8のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
一般式(5)におけるRで表される炭素数1~8のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、ジメチルメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
一般式(5)におけるpとしては、3~4の整数であることが好ましい。
【0069】
特定重合性モノマーとしては、具体的には、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、テトラエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0070】
重合性モノマーとしては、特定重合性モノマー以外のその他の重合性モノマーを用いてもよい。
その他の重合性モノマーとしては、具体的には、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4-ビニルトルエン、4-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、1,3-ビス(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロパン、1,3-ビス(メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
重合性モノマーは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0071】
重合性モノマーの含有量は特に限定されるものではなく、例えば、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、1質量部~50質量部が好ましい。硬化物の疎水性向上の観点から、より好ましくは3質量部~50質量部であり、さらに好ましくは5質量部~35質量部である。
重合性モノマーの含有量が上記範囲内である場合、実用的なレリーフパターンが得られやすく、未露光部の現像後残滓を抑制しやすい。
【0072】
特定重合性モノマーとその他の重合性モノマーとが併用される場合、その他の重合性モノマーの含有量は特に限定されるものではなく、例えば、特定重合性モノマー100質量部に対して、1質量部~300質量部が好ましく、より好ましくは10質量部~200質量部であり、さらに好ましくは20質量部~150質量部である。
【0073】
(光重合開始剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。感光性樹脂組成物が光重合開始剤を含有することで、不飽和ポリイミド前駆体及び重合性モノマーを含有する樹脂組成物に感光性を付与することができる。
光重合開始剤は、活性光線照射によりラジカルを発生しうる化合物であれば特に制限はない。活性光線は、i線等の紫外線、可視光線、放射線等が挙げられる。
【0074】
光重合開始剤としては、オキシム化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、アシルジアルコキシメタン化合物等が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤は、下記一般式(9)で表される化合物及び下記一般式(10)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0076】
【化11】
【0077】
一般式(9)中、R11は炭素数1~12のアルキル基であり、a1は0~5の整数である。R12は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。a1が2以上の整数の場合、R11はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。
【0078】
11は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。a1は好ましくは1である。R12は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはエチル基である。R13及びR14は、好ましくはそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0079】
一般式(9)で表される化合物としては、例えば、下記式(9-1)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE OXE 02」として入手可能である。
【0080】
【化12】
【0081】
【化13】
【0082】
一般式(10)中、R15は、-OH、-COOH、-OCHOH、-O(CHOH、-COOCHOH又は-COO(CHOHであり、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基である。b1は0~5の整数である。b1が2以上の整数の場合、R15はそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。
15は、好ましくは-O(CHOHである。b1は好ましくは0又は1である。R16は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はヘキシル基である。R17は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0083】
一般式(10)で表される化合物としては、例えば下記式(10-1)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE OXE 01」として入手可能である。また、下記式(10-2)で表される化合物が挙げられ、株式会社ADEKA製「NCI-930」として入手可能である。
【0084】
【化14】
【0085】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0086】
光重合開始剤の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1質量部~10質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部~5質量部である。
光重合開始剤の含有量が上記範囲内の場合、光架橋が膜厚方向で均一となりやすく、実用的なレリーフパターンを得やすくなる。
【0087】
(カップリング剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、ウレイド構造を有するシラン化合物(以下、特定シラン化合物と称することがある。)を含有する。特定シラン化合物は、カップリング剤として機能することができる。
通常、カップリング剤は、現像後の加熱処理工程において、官能基部分が不飽和ポリイミド前駆体と反応し、かつシロキサン部分が基板と反応する。これにより、得られる硬化物と基板との接着性をより向上させることができる。
【0088】
低温での硬化を行った際の接着性の発現に優れる点で、特定シラン化合物は、下記一般式(13)で表される化合物が好ましい。
【0089】
【化15】
【0090】
一般式(13)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。aは1~10の整数であり、bは1~3の整数である。
【0091】
一般式(13)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2-ウレイドエチルトリメトキシシラン、2-ウレイドエチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4-ウレイドブチルトリメトキシシラン、4-ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3-ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0092】
本開示においては、特定シラン化合物以外のその他のカップリング剤を併用してもよい。その他のカップリング剤としては、ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤、及び特定シラン化合物を併用すると、さらに低温硬化時の硬化物の基板への接着性を向上することができる。
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、t-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、t-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、t-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、t-ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4-ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン、下記一般式(14)で表わされる化合物等が挙げられる。中でも、特に、基板との接着性をより向上させるため、その他のカップリング剤としては、下記一般式(14)で表される化合物が好ましい。
【0093】
【化16】
【0094】
一般式(14)中、R33はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基であり、R34及びR35は、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基である。cは1~10の整数であり、dは1~3の整数である。
【0095】
一般式(14)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0096】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、さらに、窒素原子を含むことが好ましく、アミノ基又はアミド結合を有するシランカップリング剤が好ましい。
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有し、且つ、アミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-グリシドキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-グリシドキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0097】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有し、且つ、アミド結合を有するシランカップリング剤としては、R36-(CH-CO-NH-(CH-Si(OR37(R36はヒドロキシ基又はグリシジル基であり、e及びfは、それぞれ独立に、1~3の整数であり、R37はメチル基、エチル基又はプロピル基である)で表される化合物等が挙げられる。
【0098】
カップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0099】
本開示の感光性樹脂組成物がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましく、0.3質量部~15質量部がより好ましく、0.5質量部~10質量部がさらに好ましい。
カップリング剤として特定シラン化合物とその他のカップリング剤とが併用される場合、その他のカップリング剤の含有量は特に限定されるものではなく、例えば、特定シラン化合物100質量部に対して、10質量部~100質量部が好ましく、より好ましくは15質量部~70質量部であり、さらに好ましくは20質量部~70質量部である。
【0100】
(溶剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、溶剤を含む。
溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、メチル3-メトキシプロピオネート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、N-ジメチルモルホリン等が挙げられ、感光性樹脂組成物に含有される各成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はない。
この中でも、各成分の溶解性と感光性樹脂膜形成時の塗布性に優れる観点から、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0101】
また、溶剤としては、下記一般式(21)で表される化合物を用いてもよい。
【0102】
【化17】
【0103】
一般式(21)中、R41~R43は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。
【0104】
一般式(21)におけるR41~R43で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1又は3である。
41~R43で表される炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
一般式(21)で表される化合物は、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(例えば、商品名「KJCMPA-100」(KJケミカルズ株式会社製))であることが好ましい。
【0105】
溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、一般的に、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、50質量部~1000質量部である。
【0106】
(熱重合開始剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、重合反応の促進の観点から、さらに、熱重合開始剤を含んでもよい。
熱重合開始剤としては、成膜時に溶剤を除去するための加熱(乾燥)では分解せず、硬化時の加熱により分解してラジカルを発生し、重合性モノマー同士、又は不飽和ポリイミド前駆体及び重合性モノマーの重合反応を促進する化合物が好ましい。
熱重合開始剤は、分解点が110℃~200℃の化合物が好ましく、より低温で重合反応を促進する観点から、分解点が110℃~175℃の化合物がより好ましい。
【0107】
熱重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、p-メンタンハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル、ビス(1-フェニル-1-メチルエチル)ペルオキシドなどが挙げられる。
市販品としては、商品名「パークミルD」、「パークミルP」、「パークミルH」(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0108】
本開示の感光性樹脂組成物が熱重合開始剤を含有する場合、熱重合開始剤の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましく、良好な耐フラックス性の確保のために0.2質量部~20質量部がより好ましく、乾燥時の分解による溶解性低下抑制の観点から、0.3質量部~10質量部がさらに好ましい。
【0109】
(増感剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。感光性樹脂組成物が増感剤を含有することにより、広範囲の露光量において、残膜率の維持と良好な解像性とを両立できる。
【0110】
増感剤としては、ミヒラーズケトン、ベンゾイン、2-メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、アントラキノン、メチルアントラキノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,5-アセナフテン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジフェニルジスルフィド、アントラセン、フェナンスレンキノン、リボフラビンテトラブチレート、アクリジンオレンジ、エリスロシン、フェナンスレンキノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,6-ビス(p-ジエチルアミノベンジリデン)-4-メチル-4-アザシクロヘキサノン、6-ビス(p-ジメチルアミノベンジリデン)-シクロペンタノン、2,6-ビス(p-ジエチルアミノベンジリデン)-4-フェニルシクロヘキサノン、アミノスチリルケトン、3-ケトクマリン化合物、ビスクマリン化合物、N-フェニルグリシン、N-フェニルジエタノールアミン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0111】
増感剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0112】
本開示の感光性樹脂組成物が増感剤を含有する場合、増感剤の配合量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~1.0質量部が好ましく、0.2質量部~0.8質量部がより好ましい。
【0113】
(安定剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、安定剤を含有してもよい。感光性樹脂組成物が安定剤を含有することにより、放置安定性を良好にすることができる。
【0114】
安定剤としては、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類、下記式F1で表される化合物等が挙げられる。
【0115】
【化18】
【0116】
安定剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0117】
本開示の感光性樹脂組成物が安定剤を含有する場合、安定剤の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.05質量部~1.0質量部が好ましく、0.1質量部~0.8質量部がより好ましい。
【0118】
(界面活性剤及びレベリング剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有してもよい。感光性樹脂組成物が界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有することにより、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性を向上させることができる。
【0119】
界面活性剤又はレベリング剤としては、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファック(登録商標)F171」、「F173」、「R-08」(以上、DIC株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0120】
界面活性剤及びレベリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0121】
本開示の感光性樹脂組成物が界面活性剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含有する場合、界面活性剤及びレベリング剤の合計の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.05質量部~5質量部がより好ましく、0.05質量部~3質量部がさらに好ましい。
【0122】
(防錆剤)
本開示の感光性樹脂組成物は、防錆剤を含有してもよい。感光性樹脂組成物が防錆剤を含有することにより、銅及び銅合金の腐食の抑制及び変色の防止ができる。
防錆剤としては、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体等が挙げられる。
防錆剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0123】
本開示の感光性樹脂組成物が防錆剤を含有する場合、防錆剤の含有量は、不飽和ポリイミド前駆体100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましく、0.5質量部~3質量部がさらに好ましい。
【0124】
本開示の感光性樹脂組成物は、不飽和ポリイミド前駆体、重合性モノマー、カップリング剤、光重合開始剤及び溶剤、並びに、任意成分である熱重合開始剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、レベリング剤、及び防錆剤を含有し、本開示の効果を損なわない範囲でその他の成分及び不可避不純物を含んでもよい。
本開示の感光性樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上又は100質量%が、
不飽和ポリイミド前駆体、重合性モノマー、カップリング剤、光重合開始剤及び溶剤、
不飽和ポリイミド前駆体、重合性モノマー、カップリング剤、光重合開始剤、溶剤及び熱重合開始剤、又は、
不飽和ポリイミド前駆体、重合性モノマー、カップリング剤、光重合開始剤及び溶剤、並びに任意に熱重合開始剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、レベリング剤、及び防錆剤からなっていてもよい。
【0125】
本開示の感光性樹脂組成物は、0.1モル/L水溶液としたときのpHが2~5となる塩酸塩(特定塩酸塩)の質量基準の含有率が、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
特定塩酸塩としては、例えば、塩化ピリジニウム、アミン塩酸塩等が挙げられる。特定塩酸塩は、不飽和ポリイミド前駆体を合成する際に用いられるピリジン等のアミン系化合物から生じた塩酸塩であってもよい。
特定塩酸塩のpHは、感光性樹脂組成物中に含まれる特定塩酸塩の種類をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)等により特定し、特定された特定塩酸塩を別途準備し、準備した特定塩酸塩を水中に溶解して1モル/L水溶液を調製し、得られた水溶液についてpHメーターを用いることで測定することができる。なお、特定塩酸塩のpHは、25℃で求められた値とする。
特定塩酸塩が塩化ピリジニウムである場合、本開示の感光性樹脂組成物は、塩化ピリジニウムの質量基準の含有率が、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
特定塩酸塩の含有率が200ppm以下であれば、感光性樹脂組成物中における凝集物の発生が抑制される。
本開示の感光性樹脂組成物についての質量基準の塩化物イオン濃度は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。
質量基準の塩化物イオン濃度が100ppm以下であれば、感光性樹脂組成物中における凝集物の発生が抑制される。
感光性樹脂組成物中の質量基準の塩化物イオン濃度は、硝酸銀滴定法により測定することができる。なお、感光性樹脂組成物の組成が判明している場合には、ポリイミド前駆体等の塩化物イオンを含有する成分について個別に硝酸銀滴定法により質量基準の塩化物イオン濃度を測定し、各成分の配合比率を加味して感光性樹脂組成物中の質量基準の塩化物イオン濃度を求めてもよい。
【0126】
<硬化物及びその製造方法並びに電子部品>
本開示の硬化物は、本開示の感光性樹脂組成物を硬化することで得ることができる。
本開示の硬化物は、パターン硬化物として用いてもよく、パターンがない硬化物として用いてもよい。
本開示の硬化物の平均厚みは、5μm~20μmが好ましい。
【0127】
本開示のパターン硬化物の製造方法は、本開示の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、パターン露光後の樹脂膜を、現像剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。
これにより、パターン硬化物を得ることができる。
【0128】
パターンがない硬化物を製造する方法は、例えば、本開示の感光性樹脂膜を形成する工程と加熱処理する工程とを備える。さらに、露光する工程を備えてもよい。
【0129】
基板としては、ガラス基板、Si基板(シリコンウェハ)等の半導体基板、TiO基板、SiO基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板などが挙げられる。本開示の感光性樹脂組成物から形成されるポリイミド膜は、ケイ素原子を含む半導体の中でも特に窒化ケイ素との密着性に優れることから、ポリイミド膜の形成される面に窒化ケイ素膜の形成された基板、又は窒化ケイ素基板を用いることが好ましい。
【0130】
本開示の感光性樹脂組成物の塗布方法には特に制限はなく、スピナー等を用いて行うことができる。
【0131】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は90℃~150℃が好ましく、溶解コントラストを確保する観点から、100℃~135℃がより好ましい。
乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。
これにより、本開示の感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0132】
感光性樹脂膜の平均厚みは、3μm~30μmが好ましく、5μm~20μmがより好ましく、5μm~15μmがさらに好ましい。
【0133】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
照射する活性光線は、i線等の紫外線、可視光線、放射線などが挙げられるが、i線であることが好ましい。
露光装置としては、平行露光機、アライナー、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0134】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像剤で除去する。
現像剤としては、感光性樹脂膜の良溶媒を単独で、又は良溶媒と貧溶媒を適宜混合して用いることができる。
良溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
貧溶媒としては、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、水等が挙げられる。
【0135】
現像剤に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像剤100質量部に対して、0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。
【0136】
現像時間は、例えば感光性樹脂膜を浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍とすることができる。
現像時間は、用いる不飽和ポリイミド前駆体によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0137】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0138】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化物を得ることができる。
不飽和ポリイミド前駆体が、加熱処理工程によって脱水閉環反応を起こし、対応するポリイミド樹脂となる。
【0139】
加熱処理の温度は、380℃以下が好ましく、250℃~350℃がより好ましく、270℃~320℃がさらに好ましい。
加熱処理の温度が上記範囲内であることにより、基板又はデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留りよく生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0140】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。
加熱処理の時間が上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0141】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0142】
本開示の硬化物は、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜として用いることができる。さらには、本開示の硬化物は、パッシベーション膜、バッファーコート膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群より選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス、積層デバイス(マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ等)等の電子部品などを製造することができる。
【0143】
本開示の電子部品である半導体装置の製造工程の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る電子部品である多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
図1において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成される。その後、半導体基板1上に層間絶縁膜4が形成される。
【0144】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、層間絶縁膜4上に形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる。
【0145】
窓6Aが露出した層間絶縁膜4は、選択的にエッチングされ、窓6Bが設けられる。
次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が除去される。
【0146】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成し、第1導体層3との電気的接続を行う。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0147】
次に、本開示の感光性樹脂組成物を用いて、パターン露光により窓6Cを開口し、表面保護膜8を形成する。表面保護膜8は、第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
尚、前記例において、層間絶縁膜4を本開示の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例
【0148】
以下、実施例及び比較例に基づき、本開示についてさらに具体的に説明する。尚、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0149】
[実施例1-3及び比較例1-3]
表1に記載の各成分を、表1に記載の配合量で配合して、実施例1-3及び比較例1-3の感光性樹脂組成物を得た。なお、表1の各成分の配合量は、質量部基準である。
【0150】
【表1】
【0151】
表1に記載の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0152】
(ポリマーの合成)
-製造例1(ピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)-
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させたピロメリット酸二無水物43.624g(200mmol)とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル54.919g(401mmol)とハイドロキノン0.220gをN-メチル-2-ピロリドン394gに溶解し、1,8-ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加後、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行うことで、ピロメリット酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0153】
-製造例2(4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)-
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’-オキシジフタル酸49.634g(160mmol)とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル44.976g(328mmol)とハイドロキノン0.176gをN-メチル-2-ピロリドン378gに溶解し、1,8-ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加後、室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行い、4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0154】
-合成例1(ポリマーIの合成)-
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に製造例1で得られたPMDA(HEMA)溶液195.564gと製造例2で得られたODPA(HEMA)溶液58.652gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下漏斗を用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。次いで、滴下漏斗を用いて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル31.696g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN-メチル-2-ピロリドン90.211g溶液を氷冷下で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミック酸エステルを得た。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。これをポリマーIとする。
【0155】
-合成例2(ポリマーIIの合成)-
合成後の精製をさらに2回行った以外は合成例1の場合と同様にして、ポリマーIIを得た。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。
具体的な精製操作は下記の通りである。
ハイドロキノンを0.024質量%溶解したN-メチル-2-ピロリドンにポリマーIを濃度が10質量%となるように加えて溶解した。このポリマー溶液を蒸留水に滴下し、沈殿物を析出させた。この沈殿物をろ別して集め、再び蒸留水に入れて45℃で攪拌洗浄を行った。洗浄後の沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥した。
【0156】
・溶剤:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(「KJCMPA-100」(KJケミカルズ株式会社製))
・重合性モノマー:テトラエチレングリコールジメタクリレート
・光重合開始剤:式(10-2)で表される化合物(「NCI-930」(株式会社ADEKA製))
・安定剤:式F1で表される化合物(「Taobn」(Hampford Research社製))
・カップリング剤1:SIT-8188.0(「トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート」(GELEST社製))
・カップリング剤2:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(「UCT-801」(United Chemical Technology社製))
・カップリング剤3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(「KBM403」(信越化学工業株式会社製))
・防錆剤:ベンゾトリアゾール
【0157】
(密着性1)
得られた感光性樹脂組成物を、6インチ窒化ケイ素ウェハ又は6インチシリコンウェハ上にスピンコート法によって塗布し、125℃のホットプレート上で200秒加熱し、溶剤を揮発させた後、アライナーにより、300mJ/cmで全面露光を行った。その後、現像剤としてシクロペンタノンを用いて現像を行い、約15μmとなる現像後膜を得た。これを280℃で4時間、窒素雰囲気下で硬化し、硬化膜を得た。
この硬化膜と、基板として用いた窒化ケイ素ウェハ又はシリコンウェハとの密着性を確認するため、スタッドプル法により、密着性を調べた。
1cm角の測定サンプル上に、エポキシ樹脂付きスタッドピンをマウントクリップで挟み込み、150℃にて1時間加熱して接合した。冷却後、マウントクリップを外し、測定サンプルをスタッドプル装置に挟み込んだ上で、スタッドに垂直引張荷重を加えていき、スタッドピン接着部が破断した後の測定サンプル上の剥がれの有無を確認した。以上を5回繰り返し、接着部の硬化膜が剥がれなかった基板の割合で、接着性を評価した。
【0158】
(密着性2)
得られた感光性樹脂組成物を、6インチ窒化ケイ素ウェハ又は6インチシリコンウェハ上にスピンコート法によって塗布し、125℃のホットプレート上で200秒加熱し、溶剤を揮発させた後、アライナーにより、300mJ/cmで全面露光を行った。その後、現像剤としてシクロペンタノンを用いて現像を行い、約15μmとなる現像後膜を得た。これを280℃で4時間、窒素雰囲気下で硬化し、硬化膜を得た。
この硬化膜と、基板として用いた窒化ケイ素ウェハ又はシリコンウェハとの密着性を確認するため、クロスカット法により、密着性を調べた。
測定サンプル上にカッターガイド、カッターナイフを用いて、ウェハ表面まで達する11本の切り傷を縦横につけ、1mm幅で100個の碁盤目を作った。碁盤目部分に幅24mmのセロテープを圧着し、テープの端を45°の角度で一気に引きはがし、碁盤目上に残ったフィルムの数を確認した。以上を5回繰り返し、接着部の硬化膜が剥がれなかった碁盤目の割合で、接着性を評価した。
【0159】
(密着性3)
得られた感光性樹脂組成物を、6インチ窒化ケイ素ウェハ又は6インチシリコンウェハ上にスピンコート法によって塗布し、125℃のホットプレート上で200秒加熱し、溶剤を揮発させた後、アライナーにより、300mJ/cmで全面露光を行った。その後、現像剤としてシクロペンタノンを用いて現像を行い、約15μmとなる現像後膜を得た。これを280℃で4時間、窒素雰囲気下で硬化し、硬化膜を得た。
この硬化膜と、基板として用いた窒化ケイ素ウェハ又はシリコンウェハとの密着性を確認するため、SAICAS法により、密着性を調べた。
SAICAS装置のステージに、上記の硬化膜サンプルを設置し、切刃を接触させた後、水平速度3.0μm/sec、垂直速度0.5μm/secで2分~5分間切削を行い、剥がれが生じた後の横方向の水平力(KN/m)の平均値を評価した。
SAICAS:サイカス (Surface and Interfacial Cutting Analysis System)法においては、鋭利な切刃を用いて、試料表面から基体と被着体との接着界面にかけて超低速度で切削を行う。このため、従来法では測定が困難であった積層多層膜の各層間界面近傍の状態観察、塗膜、複合材料等の深さ方向解析、耐候性試験後の塗膜表層から内面までの劣化状態の追跡などが可能である。本開示では、ダイプラ・ウィンテス株式会社製のSAICAS ENを使用した。
【0160】
(塩化物イオン濃度測定方法)
上述のようにして合成された感光性樹脂組成物の原料のポリマーI又はポリマーIIを0.3g~1.0g取り、これをγ-ブチロラクトン50gに溶解した後で30%硝酸0.5gを加えた。この溶液を、平沼産業株式会社製 電位差滴定計COM-1700(使用した指示電極:AG-312、比較電極:MS-231、滴定溶液:0.002mol/L硝酸銀水溶液)にて硝酸銀滴定を行い、その測定結果からポリマーI又はポリマーII中の遊離の塩素分濃度(質量基準の塩化物イオン濃度)を得た。この値と、感光性樹脂組成物のポリマーI又はポリマーIIの配合比率から、感光性樹脂組成物中の質量基準の塩化物イオン濃度を算出し、下記評価基準に沿って評価した。
-基準-
A:塩化物イオン濃度が30ppm以下。
B:塩化物イオン濃度が30ppmを超え50ppm以下。
C:塩化物イオン濃度が50ppmを超え100ppm以下。
D:塩化物イオン濃度が100ppmを超える。
【0161】
(異物の確認方法)
得られた感光性樹脂組成物を、6インチ窒化ケイ素ウェハ又は6インチシリコンウェハ上にスピンコート法によって塗布し、125℃のホットプレート上で200秒加熱し、溶剤を揮発させた後、アライナーにより、300mJ/cmで全面露光を行った。その後、現像剤としてシクロペンタノンを用いて現像を行い、約15μmとなる現像後膜を得た。上記現像後膜を、オリンパス製光学顕微鏡MX61Lにて50倍~500倍で観察し、ウェハ面内の凝集物起因と見られる斑点の有無を確認した。
【0162】
表1から明らかなように、実施例の硬化膜及び比較例の硬化膜共に、スタッドプル法による評価では同等の密着性を示した。また、実施例の硬化膜及び比較例1及び2の硬化膜共に、クロスカット法による評価では同等の密着性を示すものの、比較例3の硬化膜は、窒化ケイ素ウェハの場合にやや密着性に劣るものであった。一方、実施例の硬化膜は、比較例の硬化膜に比較してSAICAS法による評価において優れた密着性を示した。また、塩化物イオンの含有量が少ない実施例1及び2で異物が発生しなかったのに対し、塩化物イオンの含有量の多い実施例3及び比較例1-3では異物が発生した。
【符号の説明】
【0163】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜
5 感光性樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜
図1