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特許7521311読取装置、画像形成装置、画像処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】読取装置、画像形成装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/393 20060101AFI20240717BHJP
   G06T 3/4046 20240101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N1/393
G06T3/4046
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020131625
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028306
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥一
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-170112(JP,A)
【文献】特許第6723488(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/38 - 1/393
G06T 1/00 - 1/40
3/00 - 5/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍率が50%であって、前記変倍率に応じて対象物の画像を読み取った読取画像データに予測モデルを用いて第一画像データを生成する第一画像生成部と、
前記読取画像データと前記第一画像データとに基づき、第二画像データを生成する第二画像生成部と、
前記第一画像データと、前記第二画像データとを合成した画像データを出力する画像出力部と、を備える、
読取装置。
【請求項2】
前記予測モデルは、畳み込みニューラルネットワークである、
請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記変倍率が50%である場合、
前記画像出力部は、前記第一画像データに含まれる画素値と前記第二画像データに含まれる画素値とをラインごとに交互に含む画像を示す前記画像データを出力する、
請求項1または2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記第二画像生成部は、前記読取画像データに含まれる読取画素値と前記第一画像データに含まれる第一画素値とに基づいて、前記読取画素値が前記第一画素値と第二画素値との平均値となる第二画素値を算出し、算出された前記第二画素値によって示される前記第二画像データを生成する、
請求項2に記載の読取装置。
【請求項5】
前記第一画像生成部は、畳み込みニューラルネットワークを用いて前記読取画像データの特徴量を算出し、算出された前記特徴量に基づいて前記第一画像データを生成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項6】
読取装置と印刷装置とを備える画像形成装置であって、
前記読取装置は、
変倍率が50%であって、前記変倍率に応じて対象物の画像を読み取った読取画像データに予測モデルを用いて第一画像データを生成する第一画像生成部と、
前記読取画像データと前記第一画像データとに基づき、第二画像データを生成する第二画像生成部と、
前記第一画像データと、前記第二画像データとを合成した画像データを出力する画像出力部と、を備え、
前記印刷装置は、前記画像出力部が出力した前記画像データに示される画像を印刷する、
画像形成装置。
【請求項7】
読取装置が実行する画像処理方法であって、
変倍率が50%であって、前記変倍率に応じて対象物の画像を読み取った読取画像データに予測モデルを用いて第一画像データを生成するステップと、
前記読取画像データと前記第一画像データとに基づき、第二画像データを生成するステップと、
前記第一画像データと、前記第二画像データとを合成した画像データを出力するステップと、を備える、
画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
変倍率が50%であって、前記変倍率に応じて対象物の画像を読み取った読取画像データに予測モデルを用いて第一画像データを生成するステップと、
前記読取画像データと前記第一画像データとに基づき、第二画像データを生成するステップと、
前記第一画像データと、前記第二画像データとを合成した画像データを出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置、画像形成装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速の読み取りによって取得した画像データを高解像度化する読取装置が開発されている。
【0003】
例えば、シートスルードキュメントフィーダによって読み取られた縮小された画像データを、バイキュービック法等の変倍方法によって拡大する画像処理装置が開示されている。
【0004】
また、拡大後の画像を高品質にするために、ニューラルネットワークを用いた超解像処理によって画像を拡大する画像処理装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイキュービック法、バイリニア法等による拡大処理では、拡大後の画質が十分ではないという問題がある。また、ニューラルネットワークを用いて拡大処理を行うと、演算量が多くなり、画像の拡大に時間がかかるという問題がある。さらに、ニューラルネットワークを用いて画像を拡大する場合、演算結果によっては、拡大された画像が元の画像と乖離した画像になってしまう可能性があるという問題がある。
【0006】
開示の技術は、十分な画質を維持しつつ、画像の拡大処理を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、変倍率が50%であって、前記変倍率に応じて対象物の画像を読み取った読取画像データに予測モデルを用いて第一画像データを生成する第一画像生成部と、前記読取画像データと前記第一画像データとに基づき、第二画像データを生成する第二画像生成部と、前記第一画像データと、前記第二画像データとを合成した画像データを出力する画像出力部と、を備える読取装置である。
【発明の効果】
【0008】
十分な画質を維持しつつ、画像の拡大処理を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】読取装置を有する画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】読取装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】読取装置の機能の一例を示す図である。
図4】読取装置の処理フローの一例を示す図である。
図5】画像の読み取り方法を説明するための図である。
図6】(a)等倍読取画像の一例を示す図、(b)変倍率50%の読取画像の一例を示す図である。
図7】変倍率50%の読取画像の生成方法を説明するための図である。
図8】読取装置の画像処理を説明するための図である。
図9】読取装置の画像処理の変形例を説明するための図である。
図10】従来の画像処理方法を説明するための第一の図である。
図11】従来の画像処理方法を説明するための第二の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、読取装置を有する画像形成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0012】
画像形成装置100は、読取装置110と、印刷装置120と、給紙装置140と、操作装置150と、を備える。
【0013】
読取装置110は、対象物の画像を読み取って、画像データを出力する装置である。読取装置110は、密着センサ111と、白色ローラ112と、挿入口から挿入された対象物を密着センサ111と白色ローラ112との間に搬送するローラ113と、画像データを画像処理によって加工して出力する制御装置114と、を有する。
【0014】
密着センサ111に取り付けられたLED(Light Emitted Diode)は、ローラ113により搬送された対象物に対して光を照射する。また、密着センサ111に取り付けられたイメージセンサは、対象物からの反射光を検出して、電気信号を出力する。イメージセンサから出力される電気信号は、A/D変換回路等によってデジタル信号に変換され、制御装置114に送信される。
【0015】
印刷装置120は、読取装置110が出力した画像データに示される画像を印刷する装置である。印刷装置120は、帯電装置121と、発光素子アレイユニット122と、感光体ドラム123と、を有する。
【0016】
帯電装置121は、感光体ドラム123を-1200ボルトに一様に帯電させるグリッド付きのスコロトロンチャージャである。発光素子アレイユニット122は、LED(もしくはLD)をアレイ状に並べたものであり、SLA(セルフォック(登録商標)レンズアレイ)を介して感光体ドラム123に対してLED光(もしくはLD光)を照射する。
【0017】
発光素子アレイユニット122は、感光体ドラム123に対してLED光を照射するにあたり、対象物の画像において濃度の淡い部分については、LEDを発光せず、対象物の画像において濃度の濃い部分については、LEDを発光する。これにより、感光体ドラム123には、対象物の画像の濃淡に対応した静電潜像が形成される。
【0018】
印刷装置120は、更に、現像ユニット124と、レジストローラ125と、転写チャージャ126と、分離チャージャ127と、搬送タンク128と、定着ユニット129と、排紙ローラ130,131と、を有する。
【0019】
現像ユニット124は、感光体ドラム123に形成された静電潜像を現像する。現像ユニット124内のトナーは撹拌により負に帯電されており、-700ボルトのバイアスが印加されているため、現像ユニット124は、LED光が照射された部分にだけトナーを付着させることができる。
【0020】
レジストローラ125は、所定のタイミングで感光体ドラム123の下部を用紙が通過するように、当該用紙を搬送する。転写チャージャ126は、レジストローラ125により感光体ドラム123の下部を用紙が通過している間に、トナー像を当該用紙に転写する。
【0021】
分離チャージャ127は、トナー像が転写された用紙を感光体ドラム123から分離させる。搬送タンク128は、分離された用紙を定着ユニット129に搬送する。
【0022】
定着ユニット129は、用紙に転写されたトナー像を定着させる。排紙ローラ130、131は、トナー像が定着された用紙を排紙する。
【0023】
給紙装置140は、用紙を印刷装置120に供給する装置である。また、操作装置150は、ユーザから画像の読み取り、印刷の開始等の操作を受ける装置である。
【0024】
図2[岩瀬1]は、読取装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0025】
読取装置110は、前述のように、密着センサ111と、白色ローラ112と、ローラ113と、制御装置114と、を備える。
【0026】
制御装置114は、読取装置110の各機器を制御する。また、制御装置114は、密着センサ111から取得した信号に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを印刷装置120に送信する。
【0027】
制御装置114は、コンピュータによって構成され、CPU(Central Processing Unit)1141と、メモリ1142と、通信IF1143と、を備える。
【0028】
CPU1141は、演算装置であって、後述する各種処理を実行する。
【0029】
メモリ1142は、主記憶装置であって、CPU1141に各種の処理を実行させるためのプログラムや各種情報を記憶する。また、メモリ1142は、CPU1141のワークエリアとして使用される。
【0030】
通信IF1143は、密着センサ111、白色ローラ112、ローラ113等の読取装置110が備える機器との間、または印刷装置120、給紙装置140、操作装置150等の画像形成装置100が備える他の装置との間で、データ通信をするためのインターフェースである。
【0031】
図3は、読取装置の機能の一例を示す図である。
【0032】
読取装置110は、記憶部11と、読取部12と、読取画像生成部13と、第一画像生成部14と、第二画像生成部15と、画像合成部16と、画像出力部17と、を備える。
【0033】
記憶部11は、各種データを記憶する。具体的には、記憶部11は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)90を記憶する。畳み込みニューラルネットワーク90は、入力されたパラメータに基づいて出力値を算出するための予測モデルの一例である。記憶部11は、制御装置114のメモリ1142によって実現される。
【0034】
読取部12は、所定の変倍率に応じた速度でラインごとに対象物の画像を読み取る。変倍率は、操作装置150を介してユーザからの指示を受けて決定される。例えば、変倍率が50%と指定されると、読取部12は、等倍と指定された場合の約2倍の速度で読み取る。読取部12は、密着センサ111によって実現される。
【0035】
読取画像生成部13は、読取部12が読み取った対象物の画像を示す読取画像データを生成する。例えば、変倍率が50%と指定されると、生成される読取画像データは、副走査方向の解像度が等倍と指定された場合の半分のデータである。
【0036】
第一画像生成部14は、読取画像データに基づいて第一画像データを生成する。具体的には、第一画像生成部14は、畳み込みニューラルネットワーク90を用いて第一画像データを生成する。例えば、変倍率が50%と指定された場合は、第一画像生成部14は、偶数ラインの画素値を推定して、偶数ラインの画素値からなる偶数ライン画像データを生成する。偶数ライン画像データは、変倍率が50%と指定された場合の第一画像データの一例である。なお、偶数ラインとは、副走査方向のライン数が2ライン目、4ライン目、6ライン目、・・・である。
【0037】
第二画像生成部15は、読取画像データと第一画像データとに基づく演算によって第二画像データを生成する。例えば、変倍率が50%と指定された場合は、読取画像データに含まれる画素値(読取画素値c)と第一画像データに含まれる画素値(第一画素値a)とに基づいて、読取画素値cが第一画素値あと第二画素値bとの平均値となる第二画素値bを算出し、算出された第二画素値bによって示される第二画像データを生成する。
【0038】
すなわち、読取画素値c、第一画素値aおよび第二画素値bは、以下の式(1)の関係となる。
【0039】
c=(a+b)/2・・・式(1)
【0040】
すなわち、第二画像生成部15は、以下の式(2)によって、第二画素値bを算出する。
【0041】
b=2c-a・・・式(2)
【0042】
この場合、第二画素値bは、奇数ラインの画素値であって、第二画像データは、奇数ラインの画素値からなる奇数ライン画像データである。したがって、奇数ライン画像データは、変倍率が50%と指定された場合の第二画像データの一例である。
【0043】
画像合成部16は、第一画像データに含まれる画素値または第二画像データに含まれる画素値をラインごとに含む画像を示す画像データを生成する。例えば、変倍率が50%と指定された場合は、画像合成部16は、第一画像データに含まれる画素値と第二画像データに含まれる画素値とをラインごとに交互に配置して、拡大された画像データを生成する。
【0044】
読取画像生成部13、第一画像生成部14、第二画像生成部15および画像合成部16は、CPU1141によって実現される。
【0045】
画像出力部17は、画像合成部16によって生成された画像データを印刷装置120に出力する。画像出力部17は、通信IF1143によって実現される。
【0046】
次に、画像形成装置100の動作について説明する。
【0047】
操作装置150は、ユーザの操作を受けて、対象物の読み取りの開始と、指定された変倍率と、を示す信号を読取装置110に送信する。
【0048】
読取装置110は、操作装置150から信号を受信すると、対処物を読み取る処理を開始する。
【0049】
図4は、読取装置の処理フローの一例を示す図である。
【0050】
読取装置110の読取部12は、対象物の画像を読み取る(ステップS11)。具体的には、読取部12は、指定された変倍率に対応した速度で対象物の画像を読み取る。例えば、読取装置110は、密着センサ111が備えるラインセンサ等を用いて、対象物をライン単位で読み取っていく。以下、変倍率が50%と指定された場合の例を示す。
【0051】
図5は、画像の読み取り方法を説明するための図である。
【0052】
読取部12は、ラインセンサ201または対象物200を副走査方向に移動させつつ、対象物200をライン単位で主走査方向に読み取る。変倍率が指定されると、読取部12は、ラインセンサ201または対象物200の副走査方向への移動速度を変えることによって、等倍よりも高速に読み取ることができる。
【0053】
図4に戻り、次に、読取画像生成部13は、変倍率50%の読取画像データを生成する(ステップS12)。
【0054】
図6は、(a)等倍読取画像の一例を示す図、(b)変倍率50%の読取画像の一例を示す図である。
【0055】
例えば、読取部12は、等倍が指定された場合の読取画像202の主走査方向および副走査方向の解像度がともに600dpiである場合、変倍率50%が指定された場合の読取画像203の主走査方向の解像度は600dpi、副走査方向の解像度は300dpiである。
【0056】
図7は、変倍率50%の読取画像の生成方法を説明するための図である。
【0057】
読取部12は、変倍率50%で読み取る場合、2ライン分をまとめて1ラインとして読み取る。例えば、図6(a)に示す等倍の読取画像データ210の7ライン目と8ライン目について注目すると、読取画像データ210には、7ライン目と8ライン目の画素値を示すライン画像データ211が含まれる。
【0058】
この場合、読取画像生成部13は、ライン画像データ211を平均化したライン画像データ212を生成する。例えば、ライン画像データ212は、ライン画像データ211の上下2つ分の画素値の平均値を画素値とする画素から構成される。
【0059】
図4に戻り、第一画像生成部14は、畳み込みニューラルネットワーク90に読取画像データを入力して、偶数ライン画像データを生成する(ステップS13)。
【0060】
具体的には、第一画像生成部14は、畳み込みニューラルネットワーク90を用いて、読取画像データから偶数ラインの画素値を推定して、推定された偶数ラインの画素値からなる偶数ライン画像データを生成する。
【0061】
次に、第二画像生成部15は、読取画像データと偶数ライン画像データに基づく演算によって、奇数ライン画像データを生成する(ステップS14)。
【0062】
具体的には、第二画像生成部15は、読取画像データに含まれる画素値(読取画素値c)と第一画像データに含まれる画素値(第一画素値a)とに基づいて、読取画素値cが第一画素値あと第二画素値bとの平均値となる第二画素値bを算出し、算出された第二画素値bによって示される第二画像データを生成する。
【0063】
続いて、画像合成部16は、偶数ライン画像データと奇数ライン画像データとを合成して、拡大された画像データを生成する(ステップS15)。
【0064】
具体的には、画像合成部16は、画像合成部16は、第一画像データに含まれる画素値と第二画像データに含まれる画素値とをラインごとに交互に配置して、拡大された画像データを生成する。
【0065】
そして、画像出力部17は、拡大された画像データを出力する(ステップS16)。出力された画像データに基づいて、印刷装置120は、用紙等に画像を印刷する。
【0066】
図8は、読取装置の画像処理を説明するための図である。
【0067】
読取画像データ220は、読取画像生成部13によって図4のステップS12で生成される画像データである。偶数ライン画像データ221は、第一画像生成部14によってステップS13の処理で、読取画像データ220を畳み込みニューラルネットワーク90に入力して、生成される画像データである。
【0068】
第二画像生成部15は、ステップS14の処理によって、偶数ライン画像データ221の画素値aと、読取画像データ220の画素値cと、に基づいて、奇数ライン画像データの画素値bを算出する。
【0069】
図8に示す画像データ222は、奇数ラインの画素値を0として、偶数ライン画像データ221を引き延ばしたものである。また、画像データ223は、偶数ラインの画素値を0として、奇数ライン画像データを引き延ばした画像データである。
【0070】
画像合成部16は、画像データ222と画像データ223とを合成することによって、偶数ライン画像データ221の画素値と奇数ライン画像データの画素値とをラインごとに交互に配置した画像データ224を生成する。
【0071】
次に、第一画像生成部14による第一画像データの別の生成方法について、説明する。
【0072】
図9は、読取装置の画像処理の変形例を説明するための図である。
【0073】
第一画像生成部14は、畳み込みニューラルネットワーク90に読取画像データ220を入力して、読取画像データ220の特徴量を算出しても良い。この場合、第一画像生成部14は、算出された特徴量を示すデータ230を用いて、読取画像データ220から偶数ライン画像データ221を生成する。
【0074】
具体的には、データ230は、偶数ラインの各画素における係数αの集合である。第一画像生成部14は、読取画像データ220の各画素値cに係数αを掛けた値aを、生成される偶数ライン画像データ221の画素値とする。すなわち、偶数ライン画像データ221の画素値aは、以下の式(3)によって算出される。
【0075】
a=c×α・・・式(3)
【0076】
次に、本実施形態との比較のために、従来の画像処理方法について説明する。
【0077】
従来、変倍率が小さく指定された画像を等倍で読み取られた画像と同じサイズに拡大する方法として、バイキュービック法、バイリニア法といった、処理対象の画素の周囲の数画素の画素値を用いて推定することによって、拡大後の画像データを生成する方法が知られている。このような従来の方法では、等倍で読み取られた画像と比較して、拡大後の画像の精度が高くないという問題があった。
【0078】
これに対して、本実施形態に係る読取装置110によれば、畳み込みニューラルネットワークを使用することによって、精度の高い画像を得ることができる。
【0079】
また、畳み込みニューラルネットワークを使用する画像処理方法についての従来の方法を例示する。
【0080】
図10は、従来の画像処理方法を説明するための第一の図である。
【0081】
従来のSRCNN(Super-Resolution Convolution Neural Network)による画像処理方法では、入力画像をバイキュービック法にて、所望の解像度(副走査方向:H画素、主走査方向:W画素)に拡大し、拡大された画像データを畳み込みニューラルネットワークに入力することによって、拡大された画像データを得る。
【0082】
図11は、従来の画像処理方法を説明するための第二の図である。
【0083】
従来のSRResnet(Super-Resolution Residual Network)による画像処理方法では、入力画像(副走査方向:h画素、主走査方向:w画素)のサイズのまま畳み込みニューラルネットワークに入力し、畳み込みニューラルネットワークの最終段付近では所望の解像度(副走査方向:H画素、主走査方向:W画素)に拡大された画像を入力させる。
【0084】
図10および図11に示した従来の画像処理方法では、いずれも入力画像から拡大された画像に対して畳み込み演算を行うため、演算量が多い。これに対して、上述した実施形態に係る読取装置110によれば、入力画像のサイズのまま処理を行うため、図10および図11に示した従来の画像処理方法よりも演算量が少ない。
【0085】
具体的には、読取装置110は、偶数ライン画像データの作成にのみ畳み込み演算を行い、奇数ライン画像データの作成には畳み込み演算を行わないため、従来の畳み込みニューラルネットワークを用いた超解像処理に比べて演算量を削減することができる。例えば、従来のSRCNNによる画像処理方法と比較して、演算量を約半分にすることができる。
【0086】
また、本実施形態では、変倍率が50%と指定された場合について例示したが、本発明の範囲はこれに限られない。例えば、変倍率が75%と指定された場合は、読取部12は、等倍が指定された場合の4/3の移動速度で、対象物の画像を読み取る。そして、読取画像生成部13は、副走査方向の解像度が、等倍で読み取った場合の3/4の読取画像データを生成する。
【0087】
この場合、第一画像生成部14は、4ラインごとに3ライン分の第一画像データを生成し、第二画像生成部15は、4ラインごとに1ライン分の第二画像データを生成する。画像合成部16は、4ラインごとに3ライン分の第一画像データの画素値と、4ラインごとに1ライン分の第二画像データの画素値と、を含む画像データを生成する。
【0088】
このように、指定された変倍率に応じた配分で、第一画像データと第二画像データとをラインごとに配置することによって、指定された変倍率に応じた画像処理が可能となる。
【0089】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0090】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0091】
11 記憶部
12 読取部
13 読取画像生成部
14 第一画像生成部
15 第二画像生成部
16 画像合成部
17 画像出力部
100 画像形成装置
110 読取装置
120 印刷装置
140 給紙装置
150 操作装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【文献】特開2001-157042号公報
【文献】国際公開第2018/216207号
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11