(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20240717BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N1/60
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2020138695
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-134490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46- 1/64
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色域を少なくとも2つの領域に分割して、分割された領域ごとに設定された変換方式によって、前記色域の色変換に係る制御点に対してガマットマッピングを行う変換手段を含み、
前記変換手段は、
前記ガマットマッピングをした色域において階調特性が所定の基準値外である制御点が生じた場合に、当該制御点に係る変換結果と、当該制御点を含む領域以外の領域に設定された変換方式によって当該制御点を色変換した場合の変換結果とを合成することを特徴とする、画像処理装置。
【請求項2】
前記階調特性は、前記ガマットマッピングをした色域において隣接する制御点の明度差、彩度差もしくは色相差またはこれらの組み合わせに基づいて算出される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記階調特性が前記所定の基準値
以内になるという条件を満たすまで変換結果の合成を繰り返すことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
画像処理装置が実行するプログラムであって、前記画像処理装置を、
色域を少なくとも2つの領域に分割して、分割された領域ごとに設定された変換方式によって、前記色域の色変換に係る制御点に対してガマットマッピングを行う変換手段として機能させ、
前記変換手段は、
前記ガマットマッピングをした色域において階調特性が所定の基準値外である制御点が生じた場合に、当該制御点に係る変換結果と、当該制御点を含む領域以外の領域に設定された変換方式によって当該制御点を色変換した場合の変換結果とを合成することを特徴とする、プログラム。
【請求項5】
前記階調特性は、前記ガマットマッピングをした色域において隣接する制御点の明度差、彩度差もしくは色相差またはこれらの組み合わせに基づいて算出される、請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記変換手段は、前記階調特性が前記所定の基準値
以内になるという条件を満たすまで変換結果の合成を繰り返すことを特徴とする、請求項4または5に記載のプログラム。
【請求項7】
色域を少なくとも2つの領域に分割して、分割された領域ごとに設定された変換方式によって、前記色域の色変換に係る制御点に対してガマットマッピングをするステップと、
前記ガマットマッピングをするステップにおける色変換の結果を評価するステップと、
前記評価するステップにおいて階調特性を評価した結果、前記ガマットマッピングをした色域において階調特性が所定の基準値外である制御点が生じた場合に、当該制御点に係る変換結果と、当該制御点を含む領域以外の領域に設定された変換方式によって当該制御点を色変換した場合の変換結果とを合成するステップと
を含む、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色域を変換する画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なるデバイス間での画像データの送受信においては、出力デバイスの色域において再現可能な色に変換するガマットマッピングが行われる。ガマットマッピングにおける色変換の方式は、ポリシーや好みなどに応じて種々のものから選択され得る。
【0003】
ここで、色変換方式について
図10を以て説明する。
図10は、一般的なガマットマッピングにおける種々の色変換方式を説明する図である。
図10は、色空間の彩度および明度を抽出したグラフであり、横軸が彩度、縦軸が明度を示している。
図10では、薄い色の線で示される入力デバイスの色域を、ガマットマッピングによる色変換によって、濃い色の線で示される出力デバイスの色域に変換する例を示している。
【0004】
図10(a)は、明度を重視した色変換の例である。
図10(b)は、鮮やかさを重視した色変換の例である。
図10(c)は、忠実性を重視した色変換の例である。
図10(d)は、階調性を重視した色変換の例である。なお、ガマットマッピングにおける色変換の方式は
図10に示したもの以外の方式であってもよい。
【0005】
ところで、出力デバイスの色再現性を向上するために、各種の色変換方式を組み合わせてガマットマッピングを行う技術が知られている。例えば、特許第5715442号公報(特許文献1)には、色域を複数の領域に分割し、領域ごとに異なる方式で色変換を行う技術が開示されている。
【0006】
しかしながら特許文献1を始めとする従来技術では、以下の
図11において説明するように階調の反転が生じ得るという問題があった。
図11は、従来技術において色域を分割してガマットマッピングする例を示す図である。
図11では、明度がL
sの位置で上下に2つの領域に分割して、第1の領域には
図10(d)に示すような階調性を重視した色変換方式を適用し、第2の領域には
図10(a)に示すような明度を重視した色変換方式を適用し、ガマットマッピングを実行した例を示している。
【0007】
従来技術では、
図11の破線の円形領域に示すように、出力デバイスの色域において、階調の反転が生じ、色の再現性が損なわれる場合があった。そのため、ガマットマッピングによる色変換において、色の再現性を向上する技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、色の再現性を向上する画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、
色域を少なくとも2つの領域に分割して、分割された領域ごとに設定された変換方式によって、前記色域の色変換に係る制御点に対してガマットマッピングを行う変換手段を含み、
前記変換手段は、
前記ガマットマッピングをした色域において階調特性が所定の基準値外である制御点が生じた場合に、当該制御点に係る変換結果と、当該制御点を含む領域以外の領域に設定された変換方式によって当該制御点を色変換した場合の変換結果とを合成することを特徴とする、画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色の再現性を向上する画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態におけるシステム全体のハードウェアの概略構成を示す図。
【
図2】第1の実施形態の画像処理装置に含まれるハードウェア構成を示す図。
【
図3】第1の実施形態の画像処理装置に含まれるソフトウェアブロック図。
【
図4】第1の実施形態における色変換処理を示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態における階調特性を説明する図。
【
図6】第1の実施形態におけるガマットマッピングにおいて階調特性が基準を満たさない例を説明する図。
【
図7】第1の実施形態において階調特性が改善される例を示す図。
【
図8】第2の実施形態における色変換処理を示すフローチャート。
【
図9】第2の実施形態において階調特性が改善される例を示す図。
【
図10】一般的なガマットマッピングにおける種々の色変換方式を説明する図。
【
図11】従来技術において色域を分割してガマットマッピングする例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。
【0013】
図1は、第1の実施形態におけるシステム100全体のハードウェアの概略構成を示す図である。
図1では、画像出力手段を備える画像処理装置110の例として、パソコン端末110aとモニタ110bとが接続されたシステム100を示している。
【0014】
例えばパソコン端末110aで作成した画像をモニタ110bにて表示する場合について考える。入力側の表示デバイスであるパソコン端末110aの画像出力手段と、出力側の表示デバイスであるモニタ110bの画像出力手段とは、必ずしも同じ色域特性を有しているとは限らない。したがって、第1の実施形態においてモニタ110bで画像を表示する際には、色再現性が損なわれないようにするため、パソコン端末110a側の色域を、モニタ110b側の色域に変換するガマットマッピングを行う。また、第1の実施形態におけるガマットマッピングでは、色域を複数の領域に分割し、領域ごとに選択された変換方式を適用することで、色再現性を向上することができる。
【0015】
なお、以下では、
図1に示したような構成の画像処理装置110を例に説明するが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、所定の色域を有して画像を出力するものであればパソコン端末110aやモニタ110b以外の画像処理装置であってもよく、例えば、MFPなどのように、プリント機能を備える画像処理装置などであってもよい。
【0016】
次に、画像処理装置110のハードウェア構成について説明する。
図2は、第1の実施形態の画像処理装置110に含まれるハードウェア構成を示す図である。画像処理装置110は、CPU210と、RAM220と、ROM230と、記憶装置240と、通信I/F250と、ディスプレイ260と、操作装置270とを含んで構成され、各ハードウェアはバスを介して接続されている。
【0017】
CPU210は、画像処理装置110の動作を制御するプログラムを実行し、所定の処理を行う装置である。RAM220は、CPU210が実行するプログラムの実行空間を提供するための揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータの格納用、展開用として使用される。ROM230は、CPU210が実行するプログラムやファームウェアなどを記憶するための不揮発性の記憶装置である。
【0018】
記憶装置240は、画像処理装置110を機能させるOSや種々のソフトウェア、設定情報、各種データなどを記憶する、読み書き可能な不揮発性の記憶装置である。記憶装置240の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0019】
通信I/F250は、画像処理装置110と他の装置とを接続し、ネットワークを介して他の装置との通信を可能にする。ネットワークを介した通信は、有線通信または無線通信のいずれであってもよく、TCP/IPなどの所定の通信プロトコルを使用し、各種データを送受信できる。
【0020】
ディスプレイ260は、各種データや画像処理装置110の状態などを、ユーザに対して表示する装置であり、例として、LCD(Liquid Crystal Display)などが挙げられる。操作装置270は、ユーザが画像処理装置110を操作するための装置であり、例として、キーボード、マウスなどが挙げられる。なお、ディスプレイ260と操作装置270は、それぞれ別個の装置であってもよいし、タッチパネルディスプレイのような両方の機能を備えるものであってもよい。
【0021】
以上、第1の実施形態の画像処理装置110に含まれるハードウェア構成について説明した。次に、第1の実施形態における各ハードウェアによって実行される機能手段について、
図3を以て説明する。
図3は、
図3は、第1の実施形態の画像処理装置110に含まれるソフトウェアブロック図である。第1の実施形態における画像処理装置110は、データ取得部310、変換方式設定部320、色変換部330、階調評価部340、表示部350を含んで構成される。以下に、各機能ブロックの詳細を説明する。
【0022】
データ取得部310は、ガマットマッピングに係るデータを取得する手段である。データ取得部310は、例えば通信I/F250を介して、入力装置の色空間を示す入力信号と、色変換方式の設定情報とを取得する。また、色域を複数の領域に分割してガマットマッピングを行う場合には、設定情報は、当該分割される領域を示す情報を含んで構成される。
【0023】
変換方式設定部320は、データ取得部310が取得したデータに基づいて、入力信号に係る色域に対して、ガマットマッピングにおける色変換の変換方式を設定する手段である。変換方式設定部320は、例えば、鮮やかさを重視した色変換、鮮やかさを重視した色変換、忠実性を重視した色変換、階調性を重視した色変換などの方式を設定することができる。また、色域を複数の領域に分割してガマットマッピングを行う場合には、変換方式設定部320は、領域ごとに変換方式を設定することができる。
【0024】
色変換部330は、変換方式設定部320が設定した色変換方式で以て、入力側の色域をガマットマッピングして、出力側の色域に変換する手段である。本実施形態の色変換部330は、色域が複数の領域に分割されている場合には、領域ごとにガマットマッピングを行い、各領域の変換結果を結合することで、出力側の色域に変換することができる。また、色変換部330は、後述する階調評価部340による階調特性の評価結果に基づいて、複数の色変換結果を合成することができる。
【0025】
階調評価部340は、色変換部330による変換結果の階調特性を評価する手段である。階調評価部340は、入力側の色域の色変換に係る制御点(以下、「入力側制御点」として参照する)と、入力側制御点に対応して色変換された出力側の色域を構成する制御点(以下、「出力側制御点」として参照する)とに基づいて、階調特性が所定の範囲内であるか否かを評価する。また、階調特性は、色域上で隣接する制御点間の明度差、彩度差もしくは色相差またはこれらの組み合わせなどから算出することができる。
【0026】
表示部350は、ディスプレイ260を制御し、画像を表示する手段である。
【0027】
なお、上述したソフトウェアブロックは、CPU210が本実施形態のプログラムを実行することで、各ハードウェアを機能させることにより、実現される機能手段に相当する。また、各実施形態に示した機能手段は、全部がソフトウェア的に実現されても良いし、その一部または全部を同等の機能を提供するハードウェアとして実装することもできる。
【0028】
次に、上述した各機能手段によって実行される一連の処理について、
図4を以て説明する。
図4は、第1の実施形態における色変換処理を示すフローチャートである。なお、以下の
図4の説明においては、
図5~
図7を適宜参照する。
【0029】
画像処理装置110は、ステップS1000から処理を開始する。ステップS1001では、データ取得部310は、ガマットマッピングに係る入力装置の色域を示す入力信号および色変換の設定情報を取得する。
【0030】
次に、ステップS1002では、変換方式設定部320は、取得した設定情報に基づいて入力装置側の色域を複数の領域に分割し、領域ごとに色変換の変換方式を設定する。
【0031】
続くステップS1003において色変換部330は、ステップS1002で設定された変換方式によって各領域に対してガマットマッピングを実行して、出力側の色域に色変換する。ここで、色変換部330は、領域ごとのガマットマッピングの結果を結合することで、出力側の色域に色変換する。
【0032】
その後、ステップS1004において階調評価部340は、ステップS1003におけるガマットマッピングの結果に対して階調特性を算出する。階調特性は、色域を分割した信号方向に対して算出し、例えば明度方向に分割した場合には、入力信号のうち同一色相の制御点に対して算出する。ここで、第1の実施形態における階調特性について、
図5を以て説明する。
図5は、第1の実施形態における階調特性を説明する図である。
【0033】
図5(a)は、出力側の色域を示すグラフであり、図中の黒丸印は出力側制御点を示している。また、
図5(a)において、L
iは制御点P
iの明度を、L
wは白色の明度を、L
bは黒色の明度をそれぞれ表している。第1の実施形態における階調特性値T
iは、例えば下記式(1)のようにして算出することができる。
【0034】
【0035】
階調評価部340は、各出力側制御点に対して上記式(1)を用いて階調特性を算出する。
図5(b)は、上記式(1)から算出した階調特性値T
iを、出力側制御点ごとにプロットしたグラフである。
図5(b)において、k
iは、出力側制御点P
iとP
i-1との間の階調特性値の傾きを示している。階調評価部340は、例えば下記式(2)から算出される階調特性値の傾きの比率R
iに基づいて、各出力側制御点P
iの階調を評価する。
【0036】
【0037】
階調特性値の傾きの比率Riは、任意の出力側制御点Piにおける階調特性の傾きの変化を示す値に相当する。階調評価部340は、上記式(2)から算出したRiに基づいて、階調を評価することができる。
【0038】
説明を
図4に戻す。ステップS1004において上記式(1)および(2)に基づいて階調を評価した後、ステップS1005では、階調特性が所定の基準値内であるか否かに基づいて処理を分岐する。階調特性を評価する基準は、特に限定されず任意に設定することができる。ここでは一例として、許容する傾きの変化を50%以内とすると、0.5≦R
i≦1.5を満たすか否かによって階調特性が基準値内であるかを判定することができる。また、基準値は色再現性に基づいて実験的に決定することができ、階調の反転や階調飛びなどを防止するためには、0≦R
i≦2.0程度とすることが好ましい。
【0039】
ステップS1005において階調特性が基準内である場合には(YES)、適切な色再現性で色変換ができたものとし、ステップS1007に進み、処理を終了する。一方で、ステップS1005において階調特性が基準内でない場合には(NO)、階調特性を改善するためにステップS1006に進む。
【0040】
ステップS1006では、色変換部330は、階調特性が基準を満たさなかった出力側制御点について、現在の色変換結果と、他の領域において設定されている色変換方式で色変換した場合の色変換結果とを合成する処理を行う。ここで、ステップS1006における処理の詳細について
図6および
図7を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態におけるガマットマッピングにおいて階調特性が基準を満たさない例を説明する図である。
図7は、第1の実施形態において階調特性が改善される例を示す図である。
【0041】
図6(a)は、入力側の色域を、階調性を重視した方式で色変換する場合を示している。また、
図6(b)は、入力側の色域を、明度を重視した方式で色変換する場合を示している。ここで、入力側の色域を明度L
sで分割して、明度がL
s以上である第1の領域に含まれる入力側制御点は階調性を重視した方式で色変換し、明度がL
sよりも小さい第2の領域に含まれる入力側制御点は明度を重視した方式で色変換する場合について考える。
【0042】
かかる場合には、
図6(a)において第1の領域に含まれる入力側制御点を色変換した出力側制御点であるP
1a,P
2a,P
3aと、
図6(b)において第2の領域に含まれる入力側制御点を色変換した出力側制御点であるP
4b,P
5b,P
6bとを結合した、
図6(c)に示すようなガマットマッピング結果が出力される。
図6(c)に示すガマットマッピング結果では、出力側の色域の出力側制御点P
3aおよびP
4bの近傍において階調の反転が生じている。したがって、階調評価部340は、
図4のステップS1005において、階調特性が基準を満たしていないものと判定する。
【0043】
そこで、色変換部330は、階調特性が基準を満たさなかった出力側制御点について、現在の色変換結果と、隣接する他の領域の色変換結果とを合成する処理を行う(
図4のステップS1006)。色変換結果の合成は、
図7(a)、(b)を参照して説明する。
【0044】
図7(a)は、入力側制御点P
3の色変換方式を変更する例を示している。入力側制御点P
3は、第1の領域に含まれていることから階調性を重視した方式で色変換されるところ、色変換後の階調特性が基準を満たさないため、色変換結果を合成する。そこで第1の実施形態の色変換部330は、入力側制御点P
3について、現在の色変換結果と、他の領域において設定されている色変換方式で色変換した場合の色変換結果とを平均化することで合成する。
図7(a)の例では、色変換部330は、階調性を重視して色変換したP
3aと、明度を重視して色変換したP
3bとを合成する。このようにして各領域の色変換結果を合成することで、P
3abのような出力側制御点が得られる。
【0045】
また
図7(b)は、入力側制御点P
4の色変換方式を変更する例を示している。入力側制御点P
4は、第2の領域に含まれていることから明度を重視した方式で色変換されるところ、色変換後の階調特性が基準を満たさないため、色変換結果を合成する。そこで第1の実施形態の色変換部330は、入力側制御点P
4について、現在の色変換結果と、他の領域において設定されている色変換方式で色変換した場合の色変換結果とを平均化することで合成する。
図7(b)の例では、色変換部330は、階調性を重視して色変換したP
4aと、明度を重視して色変換したP
4bとを合成する。このようにして各領域の色変換結果を合成することで、P
4abのような出力側制御点が得られる。
【0046】
図7(a),(b)のようにして色変換結果を合成することで、
図7(c)に示すようなガマットマッピング結果が得られる。
図7(c)の例では、
図6(c)に示したような階調の反転が解消し、色再現性が向上した出力色域を得ることができる。また、
図7(d)に示す階調特性は、
図5(b)に示したような傾きkの反転が緩和された特性が得られる。
【0047】
説明を再度
図4に戻す。ステップS1006において、階調特性が基準を満たさなかった出力側制御点について色変換結果を合成した後、画像処理装置110は、ステップS1007にて処理を終了する。
【0048】
図4に示した処理によって、出力側の色域の色再現性を向上したガマットマッピングを行うことができる。
【0049】
なお、上述した
図4~
図7では、出力側制御点の明度差に基づいて階調特性を評価した例を示して説明したが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、
図4~
図7において説明した方法以外の方法で階調特性を評価してもよい。ここで、階調特性を評価する他の方法として、下記式(3)に示すように、隣接する制御点間の色差を足し合わせた累積色差に基づいて評価することとしてもよい。
【0050】
【0051】
上記式(3-1)のΔEは、隣接する制御点間の色差である。また、上記式(3-2)のNは、評価される出力側制御点の数である。色相方向の場合には、入力信号から色空間における同一明度の制御点を抽出して、明度を色相に変更して算出することができる。
【0052】
さらにまた、階調特性の評価は、機械学習の学習効果によって生成された基準に基づくものであってもよい。ここで、機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり、コンピュータが、データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを,事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し,新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。機械学習のための学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、さらに、これらの学習方法を組み合わせた学習方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。
【0053】
ここまで、第1の実施形態について説明した。以下では、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態における画像処理装置110は、第1の実施形態における階調特性の評価と、色変換結果の合成とを繰り返すことで、色再現性をさらに向上できる。なお、第2の実施形態におけるハードウェア構成やソフトウェアブロック構成は
図1~
図3に示したものと共通するため、詳細な説明は省略する。
【0054】
図8は、第2の実施形態における色変換処理を示すフローチャートである。画像処理装置110は、ステップS2000から処理を開始する。なお、
図8に示すステップS2001~S2006の各処理は、
図4におけるステップS1001~S1006の各処理と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
第1の実施形態と異なり第2の実施形態では、画像処理装置110は、ステップS2006の処理を実行した後にステップS2004の処理に戻り、再度階調特性を算出する。そして、ステップS2006で実行されたガマットマッピングの階調特性が基準内でない場合には(ステップS2005のNO)、改めて変換結果の合成を行う。すなわち、第2の実施形態では、階調特性が所定の条件を満たすまで、現在の色変換結果と他の変換方式が設定された領域における色変換結果との合成を繰り返す。これによって第2の実施形態の画像処理装置110は、色変換結果の合成が1回だけである第1の実施形態と比較して、ガマットマッピングの色再現性をより向上することができる。
【0056】
図9は、第2の実施形態において階調特性が改善される例を示す図である。
図9(a)~(c)の上段は、入力側の色域を出力側の色域にガマットマッピングした結果を示し、
図9(a)~(c)の下段は、それぞれのガマットマッピング結果の階調特性を示している。また、
図9(a)はステップS2003の色変換結果を、
図9(b)は色変換結果の合成を1回した結果を(1回目のステップS2006)、
図9(c)は色変換結果の合成を2回した結果を(2回目のステップS2006)、それぞれ示している。
【0057】
図9(a)に示すように、領域ごとに異なる色変換方式を設定した1回目のガマットマッピングにおいて、P
iaとP
(i+1)bとの近傍で階調の反転が生じた場合について考える。かかる場合には、階調特性が基準を満たさないため、ステップS2006において、P
iaとP
(i+1)bは、他の領域における色変換結果と合成する処理が行われる。なお、以下ではP
iaに対する処理を説明の対象としているが、P
(i+1)bなどの他の出力側制御点でも同様の処理が行われ得る点に留意されたい。
【0058】
第2の実施形態におけるステップS2006では、色変換部330は、
図9(b)の上段に示すように、P
iaとP
ibとを合成することで、P
iabのような出力側制御点を得る。第2の実施形態では、階調評価部340はステップS2006のあと、再度階調特性の評価を行う。これによって、
図7(b)下段に示す階調特性が得られたものとする。
図7(b)下段に示す階調特性は、
図7(a)の階調特性からの改善がみられるが、傾きの反転が生じており、充分に改善されたものではない。したがって、ステップS2004およびS2005に戻って階調特性を評価した場合に基準を満たさず、画像処理装置110はさらにステップS2006の処理を行うこととなる。
【0059】
さらにステップS2006の処理を行う場合には、
図9(c)の上段に示すように、色変換部330は、上述したようにして合成された現在の色変換結果P
iabと、他の領域に設定されている変換方式で色変換した結果P
ibとを合成する。このようにして色変換結果を合成することで、
図9(c)の出力側制御点P
iab’を得ることができる。また、このような処理を行うことによって階調特性は
図9(c)下段に示すように、
図9(b)に示したものからさらに改善される。したがって、第2の実施形態における画像処理装置110は、色再現性を向上することができる。
【0060】
第2の実施形態において説明したように、色変換結果の合成と、合成されたガマットマッピング結果の階調特性評価を、所定の条件を満たすまで繰り返すことで、画像処理装置110は色再現性をさらに向上することができる。
【0061】
以上、説明した本発明の実施形態によれば、色の再現性を向上する画像処理装置、プログラムおよび画像処理方法を提供することができる。
【0062】
上述した本発明の実施形態の各機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)等で記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD-ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM(登録商標)、EPROM等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0063】
上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュールなどのデバイスを含むものとする。
【0064】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
100…システム、110…画像処理装置、210…CPU、220…RAM、230…ROM、240…記憶装置、250…通信I/F、260…ディスプレイ、270…操作装置、310…データ取得部、320…変換方式設定部、330…色変換部、340…階調評価部、350…表示部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】