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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電子機器及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240717BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240717BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/00 398
B41J29/38 350
B41J29/38 104
H04N1/00 885
H04N1/00 002Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020139511
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035294
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 克也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-069432(JP,A)
【文献】特開2005-049710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼働準備状態、前記稼働準備状態よりも待機電力を抑えた低電力状態の状態遷移を管理する状態遷移管理手段と、
前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段と、
前記予測時間の間に実行を完了できる機器診断を選択する機器診断選択手段と、
選択された前記機器診断を、前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの間に実行する機器診断実行手段と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記機器診断選択手段は、前記機器診断ごとに推定された前記機器診断の実行が完了するまでの推定機器診断時間に基づき、前記予測時間の間に実行を完了できる前記機器診断を選択すること
を特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記機器診断選択手段は、前記機器診断ごとに設定された前記機器診断を実行可能な前記稼働準備状態又は前記低電力状態に基づき、前記予測時間の間に実行を完了できる前記機器診断を選択すること
を特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記機器診断選択手段は、前記機器診断ごとに設定された前記機器診断の重要度及び実行履歴に基づき、前記予測時間の間に実行を完了できる前記機器診断の中から実行する前記機器診断を選択すること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器は定着部を有する画像形成装置であって、
前記予測時間算出手段は、測定した定着温度と前記低電力状態への移行条件となる定着温度閾値とに基づき、前記予測時間を算出すること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
外気温度を取得する外気温度取得手段、
を更に有し、
前記予測時間算出手段は、前記外気温度と、測定した定着温度と、前記低電力状態への移行条件となる定着温度閾値とに基づき、前記予測時間を算出すること
を特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器を、
稼働準備状態、前記稼働準備状態よりも待機電力を抑えた低電力状態の状態遷移を管理する状態遷移管理手段、
前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段、
前記予測時間の間に実行を完了できる機器診断を選択する機器診断選択手段、
選択された前記機器診断を、前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの間に実行する機器診断実行手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機などの画像形成装置において節電などの省エネルギー化に注目が集まっている。こうした背景の中、消費電力を少しでも減らすための省エネルギーモードを備えた画像形成装置が従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば画像形成装置などの電子機器には機器診断の機能を有したものがある。また、機器診断の機能を有した電子機器には省エネルギーモードを備えるものがある。さらに、電子機器が実行する機器診断の処理には、省エネルギーモードに移行するまでに完了させなければ処理が中断されるものがあった。
【0004】
このように、機器診断の機能を有する電子機器は、省エネルギーモードへの移行により中断された機器診断の処理が無駄になるという問題があった。なお、特許文献1は上記の問題について解決するものではない。
【0005】
本発明の一実施形態は、機器診断の処理の中断を減少させる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を達成するため、本発明の一実施形態は、稼働準備状態、前記稼働準備状態よりも待機電力を抑えた低電力状態の状態遷移を管理する状態遷移管理手段と、前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段と、前記予測時間の間に実行を完了できる機器診断を選択する機器診断選択手段と、選択された前記機器診断を、前記稼働準備状態から前記低電力状態に移行するまでの間に実行する機器診断実行手段と、を有する電子機器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、機器診断の処理の中断を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るMFPの一例のハードウェア構成図である。
図2】本実施形態に係るMFPの一例の機能構成図である。
図3】本実施形態に係るMFPの動作モードの一例の状態遷移図である。
図4】本実施形態に係るMFPの動作モードの一例の説明図である。
図5】本実施形態に係る機器診断に関する処理の一例のフローチャートである。
図6】動作モードと定着温度閾値とを対応付ける一例の表である。
図7】定着温度の時間経過による変化の一例を示すグラフである。
図8】予測時間の間に実行を完了できる機器診断を選択する処理の一例のフローチャートである。
図9】機器診断情報の一例を示すデータテーブルである。
図10】機器診断を選択するために利用する領域の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、省エネルギーモードを備え、機器診断の機能を有する電子機器の一例としてMFP(Multifunction Peripheral/Product/Printer)の例を説明する。MFPは画像形成装置の一例である。
【0010】
<ハードウェア構成>
省エネルギーモードを備え、機器診断の機能を有する電子機器の一例であるMFP900は、例えば図1に示すようなハードウェア構成により実現される。図1は本実施形態に係るMFPの一例のハードウェア構成図である。
【0011】
図1のMFP900は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、記憶部であるHD909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0012】
CPU901は、MFP900の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジである。また、NB903は、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0013】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902aと、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM902bとを有する。RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0014】
SB904はNB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDD908、及びMEM-C907を、それぞれ接続するブリッジの役割を有する。
【0015】
ASIC906は、PCIターゲット及びAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットを有する。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインタフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインタフェースを接続するようにしてもよい。
【0016】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0017】
また、近距離通信回路920には、近距離通信回路920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
【0018】
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931及びプリンタ部932によって構成されている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。
【0019】
コントローラ910は、MFP900全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0020】
なお、MFP900は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、及びファクス機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時には、ドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクス機能の選択時にはファクスモードとなる。
【0021】
また、ネットワークI/F950は、ネットワークを利用してデータ通信をするためのインタフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0022】
なお、MFP900はICカードによる認証を利用する場合、ICカードリーダが内蔵又は外付けされる。MFP900はICカードに埋め込まれたRFタグからICカードに固有の識別情報を無線通信で読み取る。ICカードはスマートフォンなどのスマートデバイスが内蔵するものでもよい。また、MFP900はICカードリーダ以外を利用してもよく、生体認証装置(指紋、掌紋、虹彩、顔など)やバーコード読み取り装置等を利用してもよい。
【0023】
<機能構成>
本実施形態に係るMFP900は例えば図2に示す機能構成により実現される。図2は本実施形態に係るMFPの一例の機能構成図である。図2の機能構成は、本実施形態の説明に不要な構成について適宜省略している。
【0024】
図2のMFP900は、UI制御部10、稼働制御部12、状態遷移管理部14、電力制御部16、機器診断実行判断部18、及び機器診断実行部20を有する。MFP900はプログラムを実行することにより、図2のような機能構成を実現する。
【0025】
UI制御部10は操作者とのUI(ユーザインタフェース)を制御し、操作パネル940の表示制御、及び操作者からの入力受付制御、などを行う。例えば操作者からの入力受付制御では、主電源、タッチパネル、テンキー、スタートキー等の操作者による操作を入力として受け付ける。UI制御部10は主電源のオンなどの各種イベントの発生を状態遷移管理部14に通知する。
【0026】
稼働制御部12は、印刷、スキャン、コピーなどのMFP900が操作者に提供可能な各種機能の処理を制御する。例えば稼働制御部12は、UI制御部10が受け付けた操作者の入力に従い、コピーなどの機能の処理を制御する。稼働制御部12はネットワークを介してデータ通信可能に接続されたPC等から操作者の入力を受け付け、受け付けた操作者の入力に従い、印刷などの機能の処理を制御してもよい。稼働制御部12は印刷終了などの各種イベントの発生を状態遷移管理部14に通知する。
【0027】
状態遷移管理部14は、省エネルギーのための状態(動作モード)の遷移を例えば図3及び図4に示すように管理する。図3は本実施形態に係るMFPの動作モードの一例の状態遷移図である。図4は本実施形態に係るMFPの動作モードの一例の説明図である。
【0028】
図3及び4は、オフモード、オンモード、予熱モード、及び省エネルギーモードを動作モードとしてMFP900が備えた例である。オフモードはMFP900の主電源がオフの状態である。オンモードは予熱モードや省エネルギーモードなどの低電力状態に遷移していない状態である。オンモードの状態は、稼働状態と稼働準備(レディ)状態とに分けられている。
【0029】
稼働状態は印刷などの機能の処理を実行している状態である。稼働準備状態は印刷などの処理を、予熱モードや省エネルギーモードよりも短い最小移行時間で実行可能な状態である。予熱モードは稼働状態への移行時間が稼働準備状態から稼働状態への移行時間よりも長く、待機電力が稼働準備状態よりも少ない状態である。また、省エネルギーモードは稼働状態への移行時間が予熱モードから稼働状態への移行時間よりも長く、待機電力が予熱モードよりも少ない状態である。
【0030】
MFP900は主電源がオフからオンの状態に替わると、オフモードからオンモードの稼働準備状態に遷移する。稼働準備状態のMFP900は印刷開始などの機能を稼働するイベントが発生すると、稼働状態に遷移する。また、稼働状態のMFP900は印刷終了などの機能の稼働が終了するイベントが発生すると、稼働準備状態に遷移する。
【0031】
稼働準備状態のMFP900は、予熱モードへの移行条件を満たすことで、予熱モードに遷移する。例えば予熱モードへの移行条件は、後述する定着温度(例えば定着部の定着ローラの表面の温度)の定着温度閾値への低下、操作者からの操作が無い状態での所定時間の経過、又は操作者から予熱モードへの移行操作の受け付けなど、である。なお、定着温度の定着温度閾値への低下が予熱モードへの移行条件となる理由は、例えばMFP900が備えるファンの電源をオフする前に、定着温度を所定温度まで低下させる必要があるためである。また、予熱モードのMFP900はオンモードへ遷移するイベントが発生すると、オンモードへ遷移する。
【0032】
予熱モードのMFP900は、省エネルギーモードへの移行条件を満たすことで、省エネルギーモードに遷移する。例えば省エネルギーモードへの移行条件は、後述するような定着温度の定着温度閾値への低下、操作者からの操作が無い状態での所定時間の経過、又は操作者から省エネルギーモードへの移行操作の受け付けなど、である。また、省エネルギーモードのMFP900はオンモードへ遷移するイベントが発生すると、オンモードへ遷移する。
【0033】
なお、図3及び図4に示した動作モードは一例であって、それぞれの動作モードが別の名称であってもよい。また、オンモードから遷移する低電力状態は、図3及び図4に示した予熱モード及び省エネルギーモードのように2つでなくてもよく、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0034】
図2に戻り、電力制御部16は状態遷移管理部14が管理する動作モードの遷移に基づいてMFP900の各部に供給する電力の制御を行うことで、図3及び図4に示したような動作モードを実現する。
【0035】
機器診断実行判断部18は図3及び図4に示した稼働状態から稼働準備状態へ遷移する時に機器診断の実行判断を行う。なお、本実施形態では稼働状態から稼働準備状態へ遷移する時に機器診断の実行判断を行う例を説明するが、MFP900のウォームアップが終了して稼働準備状態へ遷移する時に機器診断の実行判断を行うようにしてもよい。
【0036】
機器診断実行判断部18は予測時間算出部22及び機器診断選択部24を有する。予測時間算出部22は稼働準備状態から予熱モードや省エネルギーモードなどの低電力状態へ遷移(移行)するまでの予測時間を算出する。予測時間算出部22は予熱モードから省エネルギーモードへ遷移するまでの予測時間を算出してもよい。
【0037】
機器診断選択部24は、予測時間算出部22が算出した予測時間の間に実行を完了できる(予測時間内に実行可能な)機器診断を、機器診断ごとに推定された推定機器診断時間に基づき、選択する。なお、機器診断は実行可能な動作モード(実行可能動作モード)が予め設定されている場合がある。機器診断選択部24は実行可能動作モードを考慮して機器診断を選択するようにしてもよい。
【0038】
機器診断実行部20は、機器診断実行判断部18が行った機器診断の実行判断の結果に従い、機器診断を実行する。このように、本実施形態に係るMFP900は稼働準備状態から省エネルギーモードに移行するまでの予測時間を算出し、その予測時間の間に実行を完了できると推定される機器診断を選択して実行する。これにより、本実施形態に係るMFP900は機器診断の実行中に省エネルギーモードへの遷移が発生する可能性を減少させて、実行中の機器診断の処理の中断を減少させることができる。
【0039】
<処理>
図5は本実施形態に係る機器診断に関する処理の一例のフローチャートである。MFP900はステップS10において機器診断、ログ情報収集の初期化を行う。MFP900は図3及び図4に示した稼働状態から稼働準備状態への遷移が発生すると、ステップS14以降の処理を行う。
【0040】
ステップS14において、MFP900の予測時間算出部22は稼働準備状態から予熱モード及び省エネルギーモードに遷移するまでの予測時間を算出する。なお、予測時間算出部22が稼働準備状態から予熱モード及び省エネルギーモードに遷移するまでの予測時間の算出方法は様々考えられるが、例えば図6の表を用いて算出できる。
【0041】
図6は動作モードと定着温度閾値とを対応付ける一例の表である。定着温度閾値は現在の動作モードから次の動作モードへの移行条件の一例である。図6の表は動作モードごとに定着温度閾値が設定されている。
【0042】
例えば図6の表では「動作モード1」から「動作モード3」に遷移するまでの移行条件として定着温度が「120度超過」から「80度以下」となることを表している。図6の表のような移行条件が設定されている場合、MFP900は定着温度が「80度以下」となることで「動作モード1」から「動作モード3」に遷移できる。
【0043】
したがって、予測時間算出部22は現在の定着温度、図6の定着温度閾値、及び図7に示すような実験データによる定着温度のグラフを用いて、動作モードが遷移するまでの予測時間を算出する。
【0044】
図7は定着温度の時間経過による変化の一例を示すグラフである。例えば図7のグラフの例では現在の定着温度が「150度」で定着温度閾値が「80度」の場合、現在の定着温度が定着温度閾値に低下するまでの予測時間が約45秒となる。なお、MFP900は外気温度によって定着温度の変化が変わることが知られている。
【0045】
予測時間算出部22は、例えば外気温度が高い場合や夏季などの時期の場合に図7のグラフの傾きを緩やかに補正し、外気温度が低い場合や冬季などの時期の場合に図7のグラフの傾きを急に補正することで、より正確な予測時間を算出するようにしてもよい。
【0046】
図5のステップS16に戻り、機器診断選択部24は予測時間算出部22が算出した予測時間の間に実行を完了できる(予測時間内に実行可能な)機器診断を、機器診断ごとに推定された推定機器診断時間に基づき、後述するように選択する。
【0047】
ステップS18に進み、機器診断実行部20は、機器診断実行判断部18が行った機器診断の実行判断の結果に従い、機器診断を実行する。MFP900はオンモードへ遷移するイベントが発生する(ステップS20においてNo)か、ステップS16で選択した機器診断の実行が終了する(ステップS24においてYes)まで、ステップS20及びS24の処理を繰り返す。
【0048】
ステップS16の処理について更に説明する。図8は予測時間の間に実行を完了できる機器診断を選択する処理の一例のフローチャートである。図9は機器診断情報の一例を示すデータテーブルである。図10は機器診断を選択するために利用する領域の一例の説明図である。
【0049】
ステップS100において、機器診断選択部24は図10に示した抽出リスト、一時リスト、及び実行機器診断リストを初期化する。ステップS102に進み、機器診断選択部24は図9の機器診断情報のデータテーブルから、予測時間の間に実行を完了できる機器診断を全て抽出して抽出リストを作成する。
【0050】
図9の機器診断情報のデータテーブルは、機器診断ID及び機器診断名により識別される機器診断ごとに、実行可能動作モード、推定機器診断時間、重要度、実行閾値、及び実行履歴を対応付ける。
【0051】
実行可能動作モードは機器診断を実行する動作モードを表す。推定機器診断時間は機器診断の実行を開始してから終了するまでに掛かる推定時間を表す。重要度は機器診断の重要度を表す。実行履歴はステップS16の処理において抽出リストに抽出される度にカウントアップされ、機器診断が実行されると0クリアされる値である。実行閾値は機器診断の実行頻度を表す値である。図9の機器診断情報のデータテーブルの例では、実行履歴が実行閾値に到達した機器診断が実行される。
【0052】
ステップS104において、機器診断選択部24はステップS102で抽出リストに抽出した機器診断から、推定機器診断時間が予測時間内で、且つ実行可能な動作モードの機器診断の有無を判定する。ステップS102で抽出リストに抽出した機器診断に、推定機器診断時間が予測時間内で、且つ実行可能な動作モードの機器診断があれば、機器診断選択部24はステップS106に進む。
【0053】
ステップS106において、機器診断選択部24は同一の機器診断の実行頻度を抑制するため、更に実行履歴が実行閾値以上となっている機器診断の有無を判定する。実行履歴が実行閾値以上となっている機器診断があれば、機器診断選択部24はステップS108以降の処理で、実行する機器診断の選択を行う。
【0054】
ステップS108において、機器診断選択部24はステップS106で実行履歴が実行閾値以上となっていると判定した機器診断の全てを一時リストへ抽出する。ステップS110において、機器診断選択部24は一時リストに抽出した機器診断から最も重要度の高い機器診断以外を削除する。言い換えれば、機器診断選択部24は一時リストに抽出した機器診断から最も重要度の高い機器診断を再抽出する。
【0055】
ステップS112において、機器診断選択部24は一時リストの機器診断の中から最も推定機器診断時間の長い機器診断を実行機器診断に選択して、実行機器診断リストへ追加する。実行機器診断リストは一時リストから最終的に選択された、実行する機器診断が設定される。
【0056】
ステップS114において、機器診断選択部24は実行機器診断に選択した機器診断の実行履歴を0クリアすると共に、実行機器診断に選択した機器診断を一時リストから削除する。ステップS116において、機器診断選択部24は実行機器診断リストに追加した機器診断の終了後に実行可能な機器診断を再判定するため、実行機器診断の推定機器診断時間を予測時間から減算する。
【0057】
そして、機器診断選択部24はステップS104に戻り、実行機器診断リストに追加した機器診断の終了後に連続して実行可能な機器診断を再判定する。なお、ステップS106において、実行履歴が実行閾値以上となっている機器診断がなければ、機器診断選択部24は抽出リストに抽出した機器診断のうち、実行閾値未満の機器診断の実行履歴をカウントアップして図8の処理を終了する。また、ステップS104において、ステップS102で抽出リストに抽出した機器診断に、推定機器診断時間が予測時間内で、且つ実行可能な動作モードの機器診断がなければ、機器診断選択部24は図8の処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態のMFP900によれば、省エネルギーモードに遷移するまでの時間内に実行する機器診断を、推定機器診断時間、実行可能動作モード、重要度、実行閾値、及び実行履歴から選択することで、機器診断の処理の中断を減少できる。
【0059】
なお、図8のフローチャートに示した同一の機器診断の実行頻度を抑制する方法は一例であり、他の方法を用いてもよい。また、実行履歴の0クリアは主電源のオン、MFP900のリセット、時間経過、ユニット交換、操作者による手動操作、などによって行うようにしてもよい。
【0060】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0061】
10 UI制御部
12 稼働制御部
14 状態遷移管理部
16 電力制御部
18 機器診断実行判断部
20 機器診断実行部
900 MFP
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【文献】特開2014-119877号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10