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特許7521427樹脂組成物溶液、インクジェット印刷用インク、及び、樹脂膜を有する物品
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  • 特許-樹脂組成物溶液、インクジェット印刷用インク、及び、樹脂膜を有する物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物溶液、インクジェット印刷用インク、及び、樹脂膜を有する物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/02 20060101AFI20240717BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20240717BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240717BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20240717BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C08L33/02
C09D133/02
B41M5/00 120
B41M5/00 116
B41J2/01 501
C08L83/06
C09D183/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020562860
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042223
(87)【国際公開番号】W WO2020137132
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2018246893
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】会津 和郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中村 武史
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-169710(JP,A)
【文献】特開平10-183064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を有するアクリル重合体と、
(B)下記式(1):
【化1】

で表され、Rが置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示す、ヒドロキシシロキサン単位を含むポリシロキサン化合物と、
溶剤と、
を含有し、
前記ポリシロキサン化合物が、複数のシロキサン単位を含むポリシロキサン鎖を有する重合体であり、前記複数のシロキサン単位のうち少なくとも一部が、式(1)で表される前記ヒドロキシシロキサン単位であり、前記ヒドロキシシロキサン単位の割合が、前記複数のシロキサン単位の全量を基準として50~100モル%であり、
前記溶剤が、グリコールエーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アルコール、テトラヒドロフラン及び1,8-シネオールから選ばれる1種以上を含み、
前記ポリシロキサン化合物の含有量が、前記溶剤以外の成分の合計質量を基準として10質量%以上50質量%以下である、
樹脂組成物溶液。
【請求項2】
ポリシロキサン化合物と、溶剤と、を含有する、樹脂組成物溶液であって、
前記ポリシロキサン化合物が、ポリシロキサン鎖及び該ポリシロキサン鎖に共有結合によって結合したアクリル重合体を有するアクリル重合体変性ポリシロキサン化合物であり、
前記ポリシロキサン鎖が複数のシロキサン単位を含み、前記複数のシロキサン単位のうち少なくとも一部が、下記式(1):
【化2】

で表され、Rが置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示す、ヒドロキシシロキサン単位であり、前記ヒドロキシシロキサン単位の割合が、前記複数のシロキサン単位の全量を基準として50~100モル%であり、
前記溶剤が、グリコールエーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アルコール、テトラヒドロフラン及び1,8-シネオールから選ばれる1種以上を含み、
前記アクリル重合体の量を含まない前記ポリシロキサン化合物の含有量が、前記溶剤以外の成分の合計質量を基準として10質量%以上50質量%以下である、
樹脂組成物溶液。
【請求項3】
前記アクリル重合体のうち少なくとも一部が、下記式(2):
【化3】

で表され、Rがアリール基、又は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示し、Rが水素原子又はメチル基を示し、Lがシリルオキシ基を有する2価の基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいアルキレン基及びオキシ基を有する炭素数1~20の2価の基を示し、Q及びQがそれぞれ独立に、Rを含む単量体単位とともに前記アクリル重合体を形成している基を示す、変性シロキサン単位を前記ポリシロキサン化合物中に形成することにより、前記ポリシロキサン鎖と結合しており、前記複数のシロキサン単位が前記変性シロキサン単位を更に含む、請求項2に記載の樹脂組成物溶液。
【請求項4】
着色剤を更に含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物溶液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物溶液からなるインクジェット印刷用インク。
【請求項6】
基材と、該基材上に形成された樹脂膜と、を備え、
前記樹脂膜が、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物溶液から形成された硬化物である、物品。
【請求項7】
前記基材がガラス基材で、前記樹脂膜が遮光膜で、当該物品がウインドガラスである、請求項6に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、インクジェット印刷用インク、及び、樹脂膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基材の表面上に種々の目的で機能性の膜が設けられることがある。例えば、基材としてのフロントウインドガラスの表面上に、遮光膜が設けられることが多い(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-141241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材の表面を覆う樹脂膜を有する物品を長期に使用したときに、樹脂膜の色等の外観の変化が少ないことが求められることがある。例えば、物品が外部環境に曝された状態で使用される場合、太陽光への暴露及び温度変化に対して安定した特性を維持するために、樹脂膜が優れた耐候性を有することが望ましい。また、各種の画像表示装置を構成する樹脂膜は、光による特性変化が少ないことが求められる。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、耐候性又は耐光性に優れた樹脂膜を形成できる、新規な樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、(A)アクリル重合体と、(B)ポリシロキサン化合物とを含有する樹脂組成物を提供する。前記ポリシロキサン化合物は、下記式(1):
【化1】
で表されるヒドロキシシロキサン単位を含む。式(1)中のRは、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示す。樹脂組成物が、前記アクリル重合体及び前記ポリシロキサン化合物を互いに結合していない個別の化合物として含有していてもよい。又は、樹脂組成物中の前記アクリル重合体のうち少なくとも一部が、前記ポリシロキサン化合物と共有結合によって結合していてもよい。この樹脂組成物は、耐候性又は耐光性に優れた樹脂膜を形成することができる。
【0007】
本発明の別の一側面は、上記樹脂組成物からなるインクジェット印刷用インクを提供する。
【0008】
本発明の更に別の一側面は、基材と、該基材上に形成された樹脂膜と、を備える物品を提供する。前記樹脂膜が、上記樹脂組成物、又はこれから形成された硬化物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、耐候性又は耐光性に優れた樹脂膜を形成できる新規な樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ウインドガラスの一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」又は「メタクリロイル基」を意味する。
【0013】
<樹脂組成物>
一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)アクリル重合体と、(B)ポリシロキサン化合物とを含有する。この樹脂組成物は、例えば、各種の基材の表面を覆う樹脂膜を形成するために用いることができる。
【0014】
(A)アクリル重合体及び(B)ポリシロキサン化合物
(B)成分のポリシロキサン化合物は、複数のシロキサン単位を含むポリシロキサン鎖を有する重合体である。ポリシロキサン化合物を構成するシロキサン単位のうち少なくとも一部が、下記式(1):
【化2】
で表されるヒドロキシシロキサン単位である。式(1)中、Rは置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示す。一実施形態に係る樹脂組成物は、加熱により、ヒドロキシシロキサン単位の反応を含む架橋反応によって架橋構造を形成し、それにより硬化物を形成することができる。この架橋反応は比較的低温で進行するため、樹脂組成物は、低温で硬化することができる。樹脂組成物を低温で硬化すると、硬化後の物品中に、熱収縮差に起因する歪みが残存し難い。
【0015】
としてのアリール基は、フェニル基であってもよい。Rとしての脂肪族炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であってもよい。アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、直鎖状、分枝状、又は環状であることができる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、及び2-ノルボルニル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、及び1-シクロヘキセニル基が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、及び1-オクチニル基が挙げられる。Rが、メチル基又はフェニル基であってもよい。Rとしてのアリール基又は脂肪族炭化水素基が有し得る置換基の例としては、アルキルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フルオロ基)、及びエポキシ基が挙げられる。
【0016】
ポリシロキサン化合物は、上記ヒドロキシシロキサン単位を主な構成単位として含むことができる。例えば、ヒドロキシシロキサン単位の割合が、ポリシロキサン化合物を構成する全シロキサン単位の量を基準として、50~100モル%、60~100モル%、70~100モル%、80~100モル%、又は90~100モル%であってもよい。後述のように、ポリシロキサン化合物がアクリル重合体が結合した変性シロキサン単位を含む場合、ヒドロキシシロキサン単位と変性シロキサン単位の合計の割合が、上記範囲内であってもよい。
【0017】
(A)成分のアクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する単量体単位から主として構成される重合体である。
【0018】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、末端にアルキル基又はアリール基を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、β-(2-フリル)(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。アクリル重合体が、(メタ)アクリル酸メチル、又は(メタ)アクリル酸ブチルのうち少なくとも一方を単量体単位として含んでいてもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0021】
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの例としては、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノアクリレート、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、及びポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノメタクリレートが挙げられる。
【0022】
末端にアルキル基又はアリール基を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの例としては、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、及びノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノメタクリレートが挙げられる。
【0023】
アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体以外の単量体に由来する単量体単位を更に含んでいてもよい。ただし、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する単量体単位の割合は、アクリル重合体を構成する単量体単位の全量に対して、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0024】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体以外の単量体の例としては、スチレン;α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリロニトリル;ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエステル;並びに、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸等の重合性有機カルボン酸が挙げられる。
【0025】
アクリル重合体は、カルボキシル基を有していてもよい。例えば、アクリル重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単量体単位、及び、カルボキシル基を有する単量体単位(例えば、(メタ)アクリル酸に由来する単量体単位)を含む共重合体であってもよい。カルボキシル基を有するアクリル重合体の酸価は、樹脂組成物の密着性の観点から、20mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、又は60mgKOH/g以上であってもよい。優れた密着性の点から、アクリル重合体の酸価は、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、又は220mgKOH/g以下であってもよい。同様の観点から、カルボキシル基を有するアクリル重合体の酸価は、20mgKOH/g以上で250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、又は220mgKOH/g以下であってもよく、40mgKOH/g以上で250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、又は220mgKOH/g以下であってもよく、60mgKOH/g以上で250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、又は220mgKOH/g以下であってもよい。ここでの酸価は、以下の方法によって測定される値を意味する。
【0026】
まず、アクリル重合体を含む重合体溶液約1gを精秤する。その後、この重合体溶液にアセトンを30g添加し、均一に混合する。混合後の溶液に、指示薬であるフェノールフタレインを適量添加する。0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。KOH水溶液の滴定量を求め、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは重合体溶液の質量(g)を示し、重合体溶液中の不揮発分(バインダーポリマー、アクリル重合体)の割合(質量%)を示す。
【0027】
アクリル重合体の重量平均分子量は、20000以上、又は25000以上であってもよい。樹脂組成物をインクジェット印刷用インクとして用いる場合のノズルからの良好な吐出性の観点から、アクリル重合体の重量平均分子量は、300000以下、200000以下、150000以下、70000以下、又は60000以下であってもよい。アクリル重合体の重量平均分子量は、20000以上で300000以下、200000以下、150000以下、70000以下、又は60000以下であってもよく、25000以上で300000以下、200000以下、150000以下、70000以下、又は60000以下であってもよい。ここでのアクリル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定される、標準ポリスチレン換算値である。
【0028】
樹脂組成物中のアクリル重合体のうち少なくとも一部が、ポリシロキサン化合物と共有結合によって結合していてもよい。すなわち、樹脂組成物が、ポリシロキサン鎖及び該ポリシロキサン鎖に共有結合によって結合したアクリル重合体を有するポリシロキサン化合物(以下「アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物」ということがある。)を含有してもよい。この場合、樹脂組成物が、アクリル重合体が結合していないポリシロキサン化合物、ポリシロキサン化合物に結合していないアクリル重合体、又はこれらの両方を更に含んでいてもよい。
【0029】
アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物は、例えば、上述のヒドロキシシロキサン単位と、下記式(2):
【化3】
で表される変性シロキサン単位とを含む。式(2)中のRは、式(1)のRと同義である。Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは2価の結合基を示し、Q及びQは、それぞれ独立に、Rを含む単量体単位とともにアクリル重合体を形成している基を示す。
【0030】
Lは、例えば、シリルオキシ基を有する2価の基、置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよいアルキレン基及びオキシ基を有する炭素数1~20の2価の基であってもよい。炭化水素基又はアルキレン基が有し得る置換基の例としては、アルキルオキシ基、ハロゲン原子(例えばフルオロ基)、及びエポキシ基が挙げられる。
【0031】
Lがシリルオキシ基を有する2価の基であるときの式(2)の変性シロキサン単位は、例えば下記式(2a)又は(2b)で表される。
【化4】
【0032】
式(2a)中、p及びqは0~2の整数を示し、p+q=2である。式(2b)中、r及びsは0又は1を示し、r+s=1である。式(2a)及び(2b)中、Rは置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基を示す。変性シロキサン単位が式(2a)で表され、pが0で、qが2である基であってもよい。
【0033】
の具体例は、式(1)中のRに関して挙げられた上述の具体例と同様のものを含む。Rは、メチル基又はエチル基であってもよい。
【0034】
としての脂肪族炭化水素基は、アルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基であってもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基は、直鎖状、分枝状、又は環状であることができる。Rとしての2価の脂肪族炭化水素基の具体例は、Rが示す脂肪族炭化水素基として例示された1価の基における1個の水素原子を結合手に置き換えたものを含む。Rとしての脂肪族炭化水素基が有し得る置換基の例としては、アルキルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フルオロ基)、及びエポキシ基が挙げられる。
【0035】
アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物を構成する全シロキサン単位の量に対する、アルキル重合体が結合した変性シロキサン単位の割合は、15モル%以上で50モル%以下又は40モル%以下であってもよく、20モル%以上で50モル%以下又は40モル%以下であってもよい。
【0036】
ヒドロキシシロキサン単位を含むポリシロキサン化合物は、例えば、ヒドロシリル基を有するシロキサン単位を含むポリシロキサン化合物とヒドロキシ基を有する化合物とを溶媒中、触媒存在下で反応させ、それによりポリシロキサン化合物を生成する工程を含む方法によって、得ることができる。この反応により、ヒドロシリル基の水素原子が水酸基に置換される。ヒドロシリル基を有するシロキサン単位は、例えば、下記式(3)で表される。式(3)中のRは、式(1)中のRと同義である。
【化5】
【0037】
ヒドロシリル基を有するポリシロキサン化合物は、直鎖状又は環状であってもよい。ヒドロシリル基を有するポリシロキサン化合物は、カルビノール基、アミノ基、ジアミノ基、カルボキシ基、酸無水物基、ビニル基、メルカプト基、エポキシ基、及びグリシジル基等から選ばれる官能基を有していてもよい。
【0038】
ヒドロキシ基を有する化合物は、水であってもよい。水とともに、ヒドロキシ基を有するその他の化合物を併用してもよい。ヒドロキシ基を有するその他の化合物の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、及びクレゾールが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ヒドロキシ基を有する化合物が、ヒドロキシ基以外の官能基を有していてもよい。そのような化合物の例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、及び2,2,2-トリフルオロエタノールが挙げられる。
【0039】
ヒドロシリル基を有するポリシロキサン化合物とヒドロキシ基を有する化合物との反応のために用いられる溶媒は、例えば、アルコール、エステル、ラクトン、エーテル、ケトン、アミド、炭化水素、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
ヒドロシリル基を有するポリシロキサン化合物とヒドロキシ基を有する化合物との反応のために用いられる触媒は、カルボニル基を有する配位子と、スズ、鉄、ニッケル、及びルテニウムから選ばれる金属とを含む金属錯体であってもよい。特にルテニウム錯体を用いると、副反応が起こりにくい。
【0041】
ヒドロシリル基を有するポリシロキサン化合物とヒドロキシ基を有する化合物との反応の温度は、5~120℃、又は50~90℃であってもよい。反応時間は1~120時間、又は4~24時間であってもよい。
【0042】
アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物は、ヒドロキシシロキサン単位を有するポリシロキサン化合物に(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、(メタ)アクリロイル基が導入されたポリシロキサン化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体を含む単量体混合物の重合反応により、アクリル重合体を生成させる工程と、を含む方法により、得ることができる。
【0043】
ヒドロキシシロキサン単位を有するポリシロキサン化合物に(メタ)アクリロイル基を導入する工程は、例えば、ヒドロキシシロキサン単位のヒドロキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン化合物との反応を含む。この反応により、例えば、下記式(5a)又は(5b)で表される変性シロキサン単位を含むポリシロキサン化合物が生成する。式(5a)及び(5b)中のR、R、R、R、R、p、q、r及びsは、式(2a)及び(2b)中のR、R、R、R、R、p、q、r及びsと同様に定義される。
【化6】
【0044】
(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランの例として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、及び3-アクリロキシプロピルジメトキシメチルシランが挙げられる。
【0045】
ヒドロキシシロキサン単位のヒドロキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン化合物との反応において、反応温度は20~120℃、又は60~80℃であってもよく、反応時間は1~6時間、又は1~4時間であってもよい。
【0046】
アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物は、ヒドロシリル基を有するシロキサン単位を含むポリシロキサン化合物と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとの脱水縮合反応を含む方法によって、得ることもできる。この反応を含む方法によって、例えば、式(2)で表され、Lがアルキレン基である変性シロキサン単位を含む、アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物が生成する。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイル基が導入されたポリシロキサン化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体を含む単量体混合物の重合反応は、適切なラジカル重合開始剤の存在下で行うことができる。ラジカル重合開始剤の量は、例えば、単量体混合物100質量部に対し0.01~3.0質量部であってもよい。重合反応の温度は、例えば、30~90℃、又は30~70℃であってもよい。反応時間は1~12時間であってもよい。ここで用いられる単量体混合物は、例えば、(A)成分のアクリル重合体を構成する単量体として例示された化合物を含むことができる。
【0048】
樹脂組成物における(A)アクリル重合体の含有量は、後述の溶剤以外の成分の合計質量を基準として、10質量%以上であってもよく、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。アクリル重合体の含有量は、アクリル重合体及びポリシロキサン化合物の合計量を基準として、10質量%以上で50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよく、20質量%以上で50質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。ここで、アクリル重合体の含有量は、ポリシロキサン化合物に結合しているアクリル重合体(例えば、式(2)におけるRを含む単量体単位、Q及びQに相当する部分)の量も含む。
【0049】
樹脂組成物における(B)ポリシロキサン化合物の含有量は、後述の溶剤以外の成分の合計質量を基準として、10質量%以上で50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよく、20質量%以上で50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよく、25質量%以上で50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよい。ここで、ポリシロキサン化合物の含有量は、ポリシロキサン化合物に結合しているアクリル重合体(例えば、式(2)におけるRを含む単量体単位、Q及びQに相当する部分)の量を含まない。
【0050】
(C)着色剤
樹脂組成物は、着色剤を更に含有してもよい。イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック等の様々な色の着色剤を採用することができる。着色剤は、樹脂組成物に良好に分散し、耐光性の優れた有機顔料又は無機顔料のような顔料であってもよい。
【0051】
有機顔料の具体例としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料が挙げられる。無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0052】
顔料が凝集するとノズルの目詰まりの原因となり得る。目詰まり抑制の観点からは、顔料の平均粒径が10~300nm、10~250nm、又は10~200nmであってもよい。ここで、本願明細書において、顔料の平均粒径は、ゼータ電位粒度分布計(大塚電子(株)製、ELSZ-2Plus、0.5質量%プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート溶液)を用いて個数平均径(d50)を測定する方法によって測定される値を意味する。
【0053】
樹脂組成物を遮光膜を形成するために用いる場合、樹脂組成物は、遮光性を付与する顔料(色材)として、カーボンブラックを含んでいてもよい。カーボンブラックの市販品の例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラック339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLR;キャンカーブ社製のカーボンブラックサーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908;旭カーボン株式会社製のカーボンブラック旭#80、旭#70、旭#70L、旭F-200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル;デグサ社製のカーボンブラックColorBlackFw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlack Fw1、ColorBlackFw18、ColorBlackS170、ColorBlackS160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V;山陽色素株式会社製のSF BLACK AD2065、SF BLACK AD2091、SF BLACK AD2128、SF BLACK AD4179等が挙げられる。
【0054】
遮光性を付与する顔料は、無機顔料と有機顔料との組み合わせであってもよい。有機顔料は無機顔料の補色を呈するものを選択することにより次の様な効果が得られる。例えば、カーボンブラックと青色有機顔料とを組み合わせることにより、樹脂膜がより高品質な黒色を呈することができる。
【0055】
着色剤(特に顔料)の含有量は、樹脂組成物のうち溶剤以外の成分の合計質量を基準として、25~60質量%であってもよい。着色剤(又は顔料)の含有量が25質量%以上であると、高い光学濃度(OD値)を有する樹脂膜が形成され易い。着色剤(又は顔料)の含有量が60質量%以下であると、樹脂膜の基材への密着性がより一層向上する傾向がある。
【0056】
(D)溶剤
樹脂組成物は、溶剤を更に含有してもよい。本明細書において、溶剤を含有する樹脂組成物は、「樹脂組成物溶液」ということがある。溶剤を含有する樹脂組成物は、例えば、インクジェット印刷用インクとして用いられる。溶剤の含有量は、樹脂組成物の質量を基準として、60~95質量%であってもよい。溶剤の含有量が60質量%以上であると、特に良好なインクジェット吐出性が得られ易い傾向がある。溶剤の含有量が95質量%以下であると、十分に濃い色味を有する樹脂膜が形成され易い傾向がある。
【0057】
溶剤の例としては、グリコールエーテル(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-iso-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びシクロヘキサノン等)、エステル(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、メシチレン及びリモネン等)、アルコール(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)及びエーテル(テトラヒドロフラン及び1,8-シネオール等)が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0058】
溶剤は、酢酸エステル(酢酸エステル系溶剤)、グリコールエーテル(グリコールエーテル系溶剤)及びグリコールエステル(グリコールエステル系溶剤)から選択された少なくとも1種を主成分として含んでいてもよい。ここで主成分とは、通常、溶剤全量のうち50質量%以上を占める成分を意味する。樹脂組成物をインクジェット印刷用インクとして用いる場合の吐出性の観点から、溶剤がグリコールエーテル、グリコールエステル又はこれらの組み合わせを主成分として含んでいてもよい。
【0059】
酢酸エステルの例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル及びアセト酢酸エチルが挙げられる。
【0060】
グリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0061】
グリコールエステルの例としては、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0062】
(E)シランカップリング剤
樹脂組成物は、シランカップリング剤を更に含有してもよい。シランカップリング剤を含有する樹脂組成物は、基材とのより一層高い密着性を有する樹脂膜を形成することができる。
【0063】
シランカップリング剤は、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリロイルシラン、メタクリロイルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0064】
シランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びアミノシランが挙げられる。これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0065】
シランカップリング剤は、エポキシ基を有していてもよい。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、樹脂膜の基材との密着性向上に寄与する。エポキシ基を有するシランカップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0066】
シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物のうち溶剤以外の成分の合計質量を基準として、0~10質量%であってもよい。これにより、樹脂組成物により形成される樹脂膜の基材への密着性がより一層向上する傾向がある。
【0067】
分散剤
顔料の分散性向上、及び樹脂組成物の保存安定性向上等の目的で、樹脂組成物が顔料分散剤を更に含有してもよい。顔料分散剤は、インクの分野において通常使用されているものから特に制限なく選択できるが、高分子分散剤であってもよい。
【0068】
高分子分散剤としては、例えば、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤、カチオン基含有アクリルポリマー系分散材、窒素含有グラフトポリマー分散剤が挙げられる。これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0069】
顔料分散剤の市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製の顔料分散剤(Anti-Terra-U、DISPERBYK-101、103、106、110、161、162、164、166、167、168、170、174、182、184又は2020等)、味の素ファインテクノ株式会社製の顔料分散剤(アジスパーPB711、PB821、PB814、PN411及びPA111等)、共栄社化学株式会社製の顔料分散剤(フローレンDOPA-15B、15BHFS、17HF、22、35、100、KDG-2400)及びルーブリゾール社製の顔料分散剤(ソルスパーズ5000、12000、32000、33000及び39000等)が挙げられる。これらの顔料分散剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料分散剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の質量を基準として0~20質量%であってもよい。
【0070】
<物品>
一実施形態に係る物品は、基材と、該基材上に形成された樹脂膜とを備える。樹脂膜は、上記実施形態に係る樹脂組成物、又はこれから形成された硬化物である。樹脂膜は、着色した膜であってもよく、遮光膜であってもよい。遮光膜として用いられる樹脂膜は、自動車のフロントガラス又はリアガラス用のウインドシールドであってもよい。言い換えると、物品が、図1に例示されるような、基材としてのガラス基材1と、ガラス基材1上に形成された遮光膜3とを有するウインドガラス5(例えば、フロントウインドグラス又はリアウインドグラス)であってもよい。ガラス基材1は、合わせガラス等の板状のガラス部材であってもよい。あるいは、樹脂膜が画像表示装置用のブラックマトリックスであってもよい。
【0071】
基材は、物品の種類及び用途に応じて適宜選択すればよいが、例えばガラス板であってもよい。基材としてガラス板を有する物品は、例えば、車両等の窓ガラスであることができる。
【0072】
樹脂膜の厚さも、物品の種類、又は、樹脂膜の機能等に応じて適切に調整すればよい。例えば、樹脂膜の厚さは、2μm以上で15μm以下、10μm以下、又は6μm以下であってもよく、3μm以上で15μm以下、10μm以下、又は6μm以下であってもよい。
【0073】
樹脂膜を有する物品は、例えば、基材の表面の少なくとも一部を覆う樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜を加熱等により硬化させて、それにより樹脂組成物の硬化物である樹脂膜を形成する工程とを含む方法により、製造することができる。樹脂組成物をインクジェット印刷用インクとして用いた印刷により、樹脂膜を形成してもよい。樹脂膜を硬化させるための加熱温度は、硬化反応が適切に進行する範囲で調整すればよいが、例えば200℃以下であることができる。このような比較的低温で樹脂膜を硬化させることにより、熱収縮率差に起因する歪の発生を抑制することができる。加熱温度は、80℃以上、又は100℃以上であってもよい。
【実施例
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
1.材料
(A)アクリル重合体
アクリル重合体A1
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、100質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた。フラスコ内の液を、窒素ガス雰囲気下で100℃に昇温した。そこに、12質量部のメタクリル酸、58質量部のメタクリル酸メチル、30質量部のアクリル酸エチル、及び1.8質量部の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の混合物を、反応溶液の温度を100℃±2℃に保ちながら、2.5時間かけて均一に滴下した。滴下後、反応溶液を100℃±2℃で更に2時間撹拌することによって重合反応を進行させて、カルボキシル基を有するアクリル重合体A1を含む溶液を得た。アクリル重合体A1の濃度は50質量%であった。アクリル重合体A1の重量平均分子量を表1に示す。アクリル重合体A1の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定される、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算して得られる値である。他のアクリル重合体の重量平均分子量も同様である。
【0076】
アクリル重合体A2、A3及びA4
モノマー及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の量を表1に示すように変更したこと以外はアクリル重合体A1の合成と同様にして、カルボキシル基を有するアクリル重合体A2、A3及びA4の溶液(アクリル重合体の濃度:50質量%)を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
(B)ポリシロキサン化合物
・シリコーン樹脂B1:式(1)のヒドロキシシロキサン単位(Rはメチル基)から構成されるポリシロキサン化合物を以下の方法で合成した。
まず、容積2000mLの3つ口フラスコ内を窒素で十分に満たした。次いで、3つ口フラスコ内にポリメチル水素シロキサン(KF-99、信越化学工業(株)製)500g、エタノール(和光純薬工業(株)製)500g、イオン交換水335g、ルテニウムドデカカルボニル((株)フルヤ金属製)0.2gを投入した。その後、還流操作を行いながら加熱攪拌を行った。6時間後にサンプリングを行い、FT-IRスペクトル測定にて2200cm-1のSi-H由来のピークが消失していることを確認した。すなわち、ポリヒドロキシシロキサン化合物が生成されていることを確認した。
・シリコーン樹脂B2:式(1)のヒドロキシシロキサン単位(Rはメチル基)、及び式(2)の変性シロキサン単位から構成されるアクリル重合体変性ポリシロキサン化合物(変性シロキサン単位の比率:30質量%、アクリル重合体:メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチルの共重合比が3/1(質量比)である共重合体)を以下の方法で合成した。
上記シリコーン樹脂B1の合成にて得られたポリヒドロキシシロキサン化合物を1000g分けとり、そこにメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、信越化学工業(株)製)10gを加え、60℃で還流操作を行いながら加熱攪拌を行った。1時間後、反応液を75℃に加熱し、アクリル酸ブチル66.0g、メタクリル酸メチル22.0g、及びアゾビスイソブチロニトリル2.1gの混合物を、滴下漏斗を用いて30分かけて滴下した。以上のようにして、アクリル重合体変性ポリシロキサン化合物を含む組成物である単黄色のワニスを得た。
(C)顔料
・SF BLACK AG4306:カーボンブラック組成物(カーボンブラック含有量30~40質量%、山陽色素株式会社製)
・SF BLACK AD4179:カーボンブラック組成物(カーボンブラック含有量30~40質量%、山陽色素株式会社製)
(D)溶剤
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三協化学株式会社製)
・EDGAC:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(株式会社ダイセル製)
(E)シランカップリング剤
・KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
・BYK-333:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
【0079】
2.樹脂組成物溶液
上記材料を表2に示す比(質量部)で混合した。混合物を15分間攪拌して、樹脂膜を形成するための実施例及び比較例の樹脂組成物溶液を得た。それぞれの成分の量は、溶媒を除いた成分(固形分)の量(質量部)である。表中の「その他の溶剤」は、混合前の各成分に含まれていた溶剤の合計量を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
3.樹脂膜の作製
基材として、ソーダガラス板(大阪硝子工業株式会社製、商品名ソーダライムガラス、サイズ:100mm×100mm×厚み0.8mm)を準備した。基材の表面を、エタノールが浸み込んだ布で拭き、次いでアセトンが浸み込んだ布で拭き、その後、空気乾燥させた。乾燥後の基材表面に、各樹脂組成物溶液をバーコーター#4を用いて均一に塗布した。塗布により形成された樹脂膜を140℃の熱風対流式乾燥機中で60分間の加熱により硬化させて、厚さ5μmの硬化した樹脂膜を有する評価用試験片を得た。
【0082】
4.評価
4-1.樹脂膜の光学濃度(OD値)
樹脂膜の光学濃度(OD値)を、透過濃度計(伊原電子工業株式会社製、商品名「白黒透過濃度計 TM-5」)を使用して測定した。
【0083】
4-2.クロスカット試験(密着性)
(1)初期
JIS規格(K5400:塗料一般試験方法[K5600])を参考にして、100マスのクロスカット試験を実施した。樹脂膜の試験面に、カッターナイフを用いて1×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れた。樹脂膜の碁盤目部分にメンディングテープ#810(スリーエムジャパン株式会社製)を強く圧着させた。メンディングテープの端をほぼ0°の角度で引っ張ることで、メンディングテープを樹脂膜からゆっくりと引き剥がした。その後、樹脂膜の碁盤目部分の全面積のうち基材に密着した状態で残っている部分の面積比率を測定し、以下の評点に従ってクロスカット密着性を評価した。
A : 碁盤目部分の全面積(ほぼ100%)が基材に密着している。
B : 碁盤目部分の全面積のうち95%以上が基材に密着して残っている。
C : 碁盤目部分の全面積のうち65~95%が基材に密着して残っている。
D : 碁盤目部分の全面積うち35~65%が基材に密着して残っている。
E : 碁盤目部分の全面積のうち0~35%が基材に密着して残っている。
【0084】
(2)湯浴試験
基材及び樹脂膜を有する評価用試験片を、90℃に温めた純水中に1時間放置した。試験片を取り上げた後、水分をよくふき取った。その後、上記と同様のクロスカット試験により、樹脂膜の密着性を評価した。
【0085】
(3)冷熱サイクル試験
基材及び樹脂膜を有する評価用試験片を、-40℃の雰囲気下で30分間の加熱、次いで100℃の雰囲気下で30分間の加熱で構成されるヒートサイクルを100回繰り返す冷熱サイクル試験に供した。その後、上記と同様のクロスカット試験により、樹脂膜の密着性を評価した。
【0086】
(4)耐熱性試験
基材及び樹脂膜を有する評価用試験片を、120℃の恒温槽中で300時間加熱する耐熱性試験に供した。その後、上記と同様のクロスカット試験により、樹脂膜の密着性を評価した。
【0087】
(5)耐候性試験
基材及び樹脂膜を有する評価用試験片を、促進耐候性試験機(スガ試験機株式会社製、スーパーキセノンウェザーメーターSX75)のサンプルホルダーに固定した。その状態で、試験片を、光源をキセノンロングライフアークランプ、照射強度を180W/m(λ=300~400nm)、温度を63℃、湿度を50%RH、試験時間を300時間とする耐候性試験に供した。その後、上記と同様のクロスカット試験により、樹脂膜の密着性を評価した。
【0088】
4-3.色度変化
上記の耐候性試験前後の樹脂膜の色度(L*、a*、b*)を、分光色差計(SD6000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。耐候性試験前後の色度変化(ΔE*ab)を、下記の式(I)により求めた。
ΔE*ab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 (I)
【0089】
4-4.樹脂組成物溶液のインクジェット吐出性
インクジェット素子として、SL-128(富士フィルムDimatix社製インクジェットヘッド)を準備した。このインクジェット素子に、樹脂組成物溶液を印刷用インクとして充填し、インクジェット吐出試験を実施した。樹脂組成物溶液の吐出状態を観察し、以下の評点に従ってインクジェット吐出試験を評価した。
A : 良好(インクが正常に吐出される。)
B : 不良(インク垂れ、連続する液滴の粒径が揃わないことによるインクの飛び散り及びかすれの発生、ノズルの詰まりが発生して印刷インクが正常に吐出されない、又は連続してインクが吐出されない。)
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示されるとおり、アクリル重合体及びヒドロキシシロキサン単位を含むポリシロキサン化合物を含む実施例の樹脂組成物によって形成された樹脂膜は、耐候性試験において十分に小さい色度変化を示した。また、各実施例の樹脂組成物によって形成された樹脂膜は、光学濃度、及び密着性の点でも優れていた。
【符号の説明】
【0092】
1…ガラス基材、3…遮光膜、5…ウインドガラス。
図1