(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】フェノール化合物、樹脂組成物及びその製造方法、並びに、成形体
(51)【国際特許分類】
C07C 69/54 20060101AFI20240717BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240717BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240717BHJP
C08K 5/134 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07C69/54 B CSP
C08F299/02
C08L101/00
C08K5/134
(21)【出願番号】P 2021536921
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027523
(87)【国際公開番号】W WO2021020133
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019141555
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】原内 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】寳川 卓士
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-92901(JP,A)
【文献】特公平7-64786(JP,B2)
【文献】特開2010-270310(JP,A)
【文献】米国特許第4168387(US,A)
【文献】特開平11-193381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/54
C08F 299/02
C08L 101/00
C08K 5/134
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
〔一般式(I)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。〕
で表されるフェノール化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)のR
1及びR
2がそれぞれ水素原子である、請求項1に記載のフェノール化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)のR
1がメチル基であり、且つ、R
2が水素原子である、請求項1に記載のフェノール化合物。
【請求項4】
樹脂、及び、請求項1~3の何れかに記載のフェノール化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、熱可塑性重合体である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項7】
前記樹脂及び前記フェノール化合物を含む混合物を、200℃以上且つ減圧下で加熱する、加熱工程を含む、請求項4又は5に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール化合物、樹脂組成物及びその製造方法、並びに、成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物の製造にあたり、重合溶媒を含むポリマー溶液を、減圧及び高温条件下で熱処理する製造プロセスが実施されることがある。かかる熱処理では、通常、重合溶媒を除去する目的で、重合溶媒の沸点よりもかなり高い温度でポリマー溶液が処理されるため、熱処理を経て得られたポリマーが、熱劣化する、あるいは、着色するなどの問題が生じることがあった。そこで、樹脂組成物に対して添加することで、熱処理に起因する熱劣化などの問題を軽減することができる、添加剤が開発されてきた。
【0003】
例えば特許文献1では、ブタジエン系重合体製造時の重合体溶液から重合体を分離するために高温処理する際等において、重合体の熱劣化及び着色を防止し得るフェノール系化合物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、樹脂組成物の製造にあたり、樹脂(即ち、重合体)に対して上記のような減圧及び高温条件下での熱処理を施した場合に、重合体が分解し、これにより、重合体が熱劣化することがある。
そこで、樹脂組成物の製造にあたり、減圧及び高温条件下で熱処理を実施した場合であっても、樹脂の分解を十分に抑制し得る添加剤が必要とされている。そのためには、添加剤が樹脂の分解抑制能を有することのみならず、添加剤それ自体が、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散しないことが必要である。
【0006】
しかし、特許文献1記載のビスフェノールモノアクリレート化合物、及びその他の公知の添加剤は、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が不十分であるか、或いは、高温条件下にて揮散し易いものであった。
【0007】
そこで、本発明は、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高い、フェノール化合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記フェノール化合物を含む樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記樹脂組成物よりなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、特定の構造を満たすフェノール化合物が、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、且つ、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能に優れることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のフェノール化合物は、下記一般式(I):
【化1】
〔一般式(I)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。〕で表されることを特徴とする。このように、上記所定の構造を有するフェノール化合物は、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高い。このため、かかるフェノール化合物を樹脂組成物に配合することで、減圧、高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂の分解を十分に抑制することができる。
【0010】
ここで、本発明のフェノール化合物において、前記一般式(I)のR1及びR2がそれぞれ水素原子であることが好ましい。換言すれば、本発明のフェノール化合物が、ビスフェノールモノアクリレート化合物であることが好ましい。かかるビスフェノールモノアクリレート化合物を樹脂組成物に対して配合することにより、樹脂組成物を減圧及び高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂が分解されることを一層十分に抑制することができる。
【0011】
また、本発明のフェノール化合物において、前記一般式(I)のR1がメチル基であり、且つ、R2が水素原子であることが好ましい。換言すれば、本発明のフェノール化合物が、ビスフェノールモノメタクリレート化合物であることが好ましい。かかるビスフェノールモノメタクリレート化合物を樹脂組成物に対して配合することにより、樹脂組成物を減圧及び高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂が分解されることを一層十分に抑制することができる。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂組成物は、樹脂、及び、上述したフェノール化合物の何れかを含むことを特徴とする。樹脂組成物が上述したようなフェノール化合物の少なくとも何れかを含んでいれば、樹脂組成物を減圧及び高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂が分解されることを十分に抑制することができる。
【0013】
ここで、本発明の樹脂組成物において、前記樹脂が、熱可塑性重合体であることが好ましい。樹脂としての熱可塑性重合体と、上述したようなフェノール化合物とを組み合わせて樹脂組成物に配合することで、減圧及び高温条件下での樹脂の分解抑制能を一層効果的に発揮することができる。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の成形体は、上述の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。上述した樹脂組成物を成形してなる成形体は、優れた性状を有する。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記樹脂及び前記フェノール化合物を含む混合物を、200℃以上且つ減圧下で加熱する、加熱工程を含むことを特徴とする。樹脂及び所定のフェノール化合物を含む混合物を所定の条件下で減圧及び加熱することで、良好な性状を有する樹脂組成物を効率的に製造することができる。
なお、本明細書において、「減圧下で」とは絶対圧で50kPa以下である環境下であることを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高い、フェノール化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記フェノール化合物を含む樹脂組成物、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記樹脂組成物よりなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のフェノール化合物は、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、且つ、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高いため、特に、製造時及び成形時等に減圧及び高温条件下での処理に曝されうる樹脂組成物に対して好適に配合されうる。そして、本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物の製造方法により効率的に製造することができる。さらに、本発明の樹脂組成物は、本発明の成形体の材料として好適に用いることができる。
【0018】
(フェノール化合物)
本発明のフェノール化合物は、下記一般式(I)で表されるフェノール化合物である。
【化2】
〔一般式(I)中、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。〕
【0019】
本発明のフェノール化合物は、所定の一般式(I)で示される構造を満たすため、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、高温及び減圧条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高い。このため、かかるフェノール化合物を樹脂組成物に対して配合することで、減圧及び高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂の分解を十分に抑制することができる。
【0020】
上記一般式(I)中、R1、R2、のアルキル基は、それぞれ独立して、例えば、炭素数1~6のアルキル基であり得る。炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の、直鎖、分岐鎖又は環状構造を有するアルキル基が挙げられる。
【0021】
中でも、R
1、R
2が、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
より具体的には、一般式(I)で示される構造を満たすフェノール化合物が、下記式(I-1)又は(I-2)の何れかにより表されるフェノール化合物であることが好ましい。
【化3】
【0022】
さらに、本発明のフェノール化合物は、融点が30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。フェノール化合物の融点が上記下限値以上であれば、常温で固体となるため、化合物の取り扱いに優れる。また、フェノール化合物の融点が上記上限値以下であれば、樹脂の乾燥温度や濃縮温度、成形温度よりも低くなり易く、樹脂組成物を用いた成形体の製造時にフェノール化合物が十分に溶融し易く、得られる成形体の透明性を高め得る。
なお、フェノール化合物の融点は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0023】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、樹脂と、上述のフェノール化合物とを含む。本発明の樹脂組成物は、上述のフェノール化合物を含むので、減圧及び高温条件下での処理に曝した場合であっても、樹脂が分解されることを十分に抑制することができる。なお、樹脂組成物は、任意で、溶媒及び添加剤を含有していても良い。樹脂組成物は、常温常圧(25℃、1atm)条件下にて、溶媒中に樹脂が溶解してなる溶液であっても良いし、固体状態の樹脂を含む固形物(例えば、樹脂ペレット)であっても良い。
【0024】
樹脂組成物における、上記所定のフェノール化合物の含有割合は、樹脂の含有量を100質量部として、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
【0025】
<樹脂>
ここで、本発明の樹脂組成物に含有される樹脂としては、用途に応じて既知のあらゆる重合体を用いることができる。そのような重合体の一例としては、特開平3-207788号公報に成分a)として列挙された各種の重合体が挙げられる。
【0026】
具体的な例は以下のものである。
1.モノオレフィン及びジオレフィンのポリマー、例えばポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン又はポリブタジエン、並びにシクロオレフィンのポリマー、例えばシクロペンテン又はノルボルネン、ジシクロペンタジエンやテトラシクロドデセンのポリマー、ポリエチレン(これは架橋していなくても架橋していてもよい)、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)。
2.上記1に記載のポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレンとの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物(例えば、PP/HDPE及びPP/LDPE)及び異なる種類のポリエチレンの混合物(例えばLDPE/HDPE)。モノオレフィン及びジオレフィンのコポリマー、並びに、ものオレフィン及びジオレフィンの何れか又は双方と、他のビニルモノマー及びシクロオレフィン類の何れか又は双方とのコポリマー、シクロオレフィン類のコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)とのその混合物、プロピレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニル又はエチレン/アクリル酸コポリマー及びそれらの塩(アイオノマー)、並びにエチレンとプロピレン及びジエン例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネンとのターポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/テトラシクロドデセンコポリマー;及び更にそのようなコポリマーの互いの及び上記1で述べたポリマーとの混合物、例えばポリプロピレン/エチレン・プロピレンコポリマー、LDPE/EVA、LDPE/EAA,LLDPE/EVA及びLLDPE/EAA。
3.炭化水素樹脂(例えば炭素原子数5ないし9)。
4.ビニル芳香族のポリマー、例えばポリスチレン、ポリ-(p-メチルスチレン)、ポリ-(α-メチルスチレン)、ポリビニルナフタレン、ポリジフェニルエチレン。
5.スチレン又はその他のビニル芳香族とジエン又はアクリル系誘導体とのコポリマー、例えばスチレン/ブタジエン、スチレン/イソプレン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アルキルメタクリレート、スチレン/メチルスチレン、スチレン/ビニルナフタレン、スチレン/メチルスチレン/イソプレン、スチレン/ビニルナフタレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリレート、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリレート、スチレンコポリマーと他のポリマー、例えばポリアクリレート、ジエンポリマー又はエチレン/ブロビレン/ジエンターポリマーとから製造される耐衝撃性混合物、及びスチレンのブロックコポリマー、例えばスチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレン。
6.スチレン又はα-メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えばポリブタジエンに対するスチレンのグラフトコポリマー、ポリブタジエン/スチレン又はポリブタジエン/アクリロニトリルに対するスチレンのグラフトコポリマー、ポリブタジエンに対するスチレン及びアクリロニトリル(又はメタクリロニトリル)のグラフトコポリマー、ポリブタジエンに対するスチレン及び無水マレイン酸又はマレイミドのグラフトコポリマー、ポリブタジエンに対するスチレン、アクリロニトリル及び無水マレイン酸又はマレイミドのグラフトコポリマー、ポリブタジエンに対するアクリロニトリル及びメチルメタクリレートのグラフトコポリマー・ポリブタジエンに対するスチレン及びアルキルアクリレート又はメタクリレートのグラフトコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーに対するスチレン及びアクリロニトリルのグラフトコポリマー、ポリアルキルアクリレート又はポリアルキルメタクリレートに対するスチレン及びアクリロニトリルのグラフトコポリマー、アクリレート/ブタジエンコポリマーに対するスチレン及びアクリロニトリルのグラフトコポリマー、並びにそれらと上記5.に記載したコポリマーとの混合物、例えばABS、MBS、ASA又はAESポリマーとして知られるコポリマー混合物。
7.ハロゲン化ポリマー、例えばポリクロロプレン、塩素化ゴム、塩素化又はスルホン化ポリエチレン、エチレンと塩素化エチレンとのコポリマー、エピクロロヒドリンモノ及びコポリマー、好ましくはハロゲン化ビニル化合物のポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにそれらのコポリマー、例えば塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニル又は塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマー。
8.α,β-不飽和酸及びその誘導体から誘導されたポリマー、例えばポリアクリレート及びポリメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリアクリロニトリル。
9.上記8に記載のモノマー同士のコポリマー、又は上記8に記載のモノマーと他の不飽和モノマーとのコポリマー、例えばアクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル/アルキルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル/アルコキンアルキルアクリレート又はアクリロニトリル/ハロゲン化ビニルコポリマー又はアクリロニトリル/アルキルメタクリレート/ブタジエンターポリマー。
10.不飽和アルコール及びアミン又はアシル誘導体又はそれらのアセタールから誘導されたポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリフタル酸アリル又はポリアリルメラミン;並びに上記1に記載のオレフィンとそれらのコポリマー。
11.環状エーテルのホモポリマー及びコポリマー。例えばポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はビスグリシジルエーテルとのそれらのコポリマー。
12.ポリアセタール。例えばポリオキシメチレン及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含むそれらのポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリレート又はMBSを用いて変性されたポリアセタール。
13.ポリフェニレンオキンド、ポリフェニレンスルフィド、及びポリスチレン;並びに、これらの少なくとも何れかとポリアミドとの混合物。
14.一方の末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル、ポリエステル又はポリブタジエンと他方の脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートとから誘導されたポリウレタン、並びにそれらの先駆体。
15.ジアミンとジカルボン酸とから及び/又はアミノカルボン酸又は相当するラクタムから誘導されたポリアミド又はコポリアミド、例えばポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6,6/10,6/9,6/12及び4/6、ポリアミド11、ポリアミド12、m-キシレンジアミンとアジピン酸との縮合により得られた芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸及び/又はテレフタル酸とから、変性剤としてエラストマーを用いるか又は用いることなく製造されたポリアミド、例えばポリ-2,4,4-トリメチルへキサメチレンテレフタルアミド又はポリm-フェニレンイソフタルアミド;前述のポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、アイオノマー又は化学的に結合もしくはグラフトされたエラストマーとの;又はポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマー;及び、更にEPDM又はABSを用いて変性されたポリアミド又はコポリアミド。
16.ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミド-イミド、及びポリベンズイミダゾール。
17.ジカルボン酸とジオールとから及び/又はヒドロキンカルボン酸又は相当するラクトンから誘導されたポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート並びにヒドロキシル末端ポリエーテルから誘導されたブロックーコポリエーテルエステル;及び更にポリカーボネート又はMBSを用いて変性されたポリエステル。
18.ポリカーボネート及びポリエステルカーボネート。
19.ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
20.飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコール及び架橋剤としてのビニル化合物を用いたコポリエステルから誘導された不飽和ポリエステル、及び更に低易燃性のそれらのハロゲン含有変性体。
21.置換アクリル酸エスエルから誘導された架橋性アクリル樹脂、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート又はポリエステルアクリレート。
22.前述のポリマーの混合物(ポリブレンド)、例えばPP/EPDM、ポリアミド6/EPDM又はABS、PVC/EVA、PVS/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS,PC/ASA,PC/PBT,PVC/CPE、PVC/アクリレート、POM/熱可塑性PUR、PC/熱可塑性PUR、POM/アクリレート、POM/MBS、PPE/HIPS、PPE/PA6.6及びコポリマー、PA/HDPE、PA/PP、PA/PPE。
23.上記1から22に記載の重合体の水素化変性物。
【0027】
上記列挙した各種の重合体の中でも、本発明の樹脂組成物に含有される樹脂が、熱可塑性重合体であることが好ましい。中でも、熱可塑性重合体が、ビニル芳香族のポリマー又はその水素化変性物;スチレン又はその他のビニル芳香族とジエンとのコポリマー;及び、スチレンのブロックコポリマーのうちの少なくとも何れかを含むことが好ましい。ここで、本明細書において「熱可塑性重合体」とは、加熱により、成形できる程度の流動性を呈し得る重合体であり、ガラス転移点及び融点の少なくとも一方が検出可能であるとともに、ガラス転移点又は融点以上の温度に加熱することで軟化する重合体を意味する。
【0028】
なお、上述した重合体は、特に限定されることなく、重合体を形成するために用いる単量体に適した、既知のあらゆる重合方法を採用して重合することができる。さらにまた、重合体としては、市販のものを用いることも勿論可能である。
【0029】
<<重合体の重量平均分子量>>
また、重合体は、重量平均分子量が、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、1,000,000以下であることが好ましい。重合体の重量平均分子量が10,000以上であれば、樹脂組成物から形成される成形体の耐熱性及び機械強度を高めることができる。一方、重合体の重量平均分子量が1,000,000以下であれば、樹脂組成物の成形性を高めることができる。
なお、重合体の重量平均分子量は、実施例に記載した方法に従って測定することができる。
【0030】
<溶媒>
本発明の樹脂組成物に任意に含有されうる溶媒としては、特に限定されることなく、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。なお、樹脂組成物が溶液状である場合には、樹脂組成物中における溶媒の含有量は、適宜設定することができる。なお、樹脂組成物が樹脂ペレット等の固形物である場合には、樹脂組成物中における溶媒の含有量がゼロ、即ち、樹脂組成物中に溶媒が実質的に含まれなくても良い。
【0031】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物に、必要に応じて他の添加剤、例えば熱劣化防止剤、各種の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)などの光安定剤、滑剤、造核剤、帯電防止剤、無機充填剤、及び顔料などを配合してもよい。
これらの添加剤の一部につき、以下に具体例を挙げる。
【0032】
熱劣化防止剤としては、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル(Sumilizer GM)、アクリル酸1'-ヒドロキシ[2,2'-エチリデンビス[4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)ベンゼン]]-1-イル(Sumilizer GS)が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、特に限定されることなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤などを挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,2'-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)(Sumilizer MDP-S)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(Sumilizer WX-R)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)(Sumilizer BBM-S)、2,2'-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(Yoshinox 425)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(Irganox 1076)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Irganox 1010)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Irganox 259)、2,2'-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](Irganox 1035)、N,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](Irganox 1098)、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)](Irganox 245)、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン(Irganox 1330)、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(Irganox 3114)、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(Irganox 565)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(Irganox 1520)、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox 1726)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(Cyanox 1790)、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート](Sumilizer GA-80)、4,4',4''-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)(Adekastab AO-30)などがあげられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(Irgafos 168)、4,4',4'',4'''-[[(1,1'-ビフェニル-4,4'-ジイル)ビス(ホスフィントリイル)]テトラキスオキシ]テトラキス(1,3-ジ-tert-ブチルベンゼン) (Sandostab P-EPQ)、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(Ultranox 626)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン(Adekastab PEP-36)、2,2'-メチレンビス (4,6-ジ-tert-ブチルフェニル) 2-エチルヘキシルフォスファイト(Adekastab HP-10)、2-tert-ブチル-6-メチル-4-{3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル}フェノール(Sumilizer GP)などが挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3'-チオジプロピオネート(Sumilizer TPL-R)、3,3'-チオジプロピオン酸ジテトラデシル(Sumilizer TPM)、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート(Sumilizer TPS)、ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロピルオキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル(SumilizerTP-D)などがあげられる。
金属不活性化剤としては、例えばN,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン(Irganox MD1024)、[2,2-オキサミドビスエチル,3(3,5-ジ-tert-butyl-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Naugard LX-1)などが挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えばドロメトリゾール(Tinuvin P)、ブメトリゾール(Tinuvin 326)、4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)-2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(Tinuvin 328)、オクトリゾール(Tinuvin 329)、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin 234)、ビスオクトリゾール(Tinuvin 360)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸2,4-ジ-tert-ブチルフェニル(Tinuvin 120)、オクタベンゾン(Chimassorb 81)、オクタベンゾン(Tinuvin 1577)、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール(Cyasorb UV-1164)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール(Adekastab LA-46)、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(Adekastab LA-F70)などが挙げられる。
【0035】
HALSとしては、例えばセバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(Tinuvin 770)、2-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-2-ブチルプロパン二酸ビス[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル](Tinuvin 144)、デカン二酸ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル](Tinuvin 123)、1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(N-ブチル-N-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン(Tinuvin 119)、コハク酸ジメチル・1-(2ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン重縮合物(Tinuvin 622)、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-S-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](Chimassorb 944)、1,6-ヘキサンジアミン及びN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)からなるポリマーと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン及びN-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応物(Chimassorb 2020、ポリ[(6-モルフォリノ-S-トリアジン-2,4-ジイル)〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](Cyasorb UV-3346)、1,6-Hexanediamine, 1,6-ヘキサンジアミン及びN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)からなるポリマーとモルフォリン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの反応物(Cyasorb UV-3529)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(Adekastab LA-52)、 テトラキス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート(Adekastab LA-57)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールと β,β,β',β'-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物(Adekastab LA-63P)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルと2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールと β,β,β',β'-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応物(Adekastab LA-68)などが挙げられる。
【0036】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上述した樹脂及び上述したフェノール化合物を含む混合物を、200℃以上且つ減圧下で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする。
【0037】
より具体的には、上記加熱工程は、上記混合物から、上記混合物に不可避的に含有されうる不純物、及び上記混合物に任意で配合されうる溶媒の少なくとも一部を除去して、上記混合物を乾燥及び濃縮して、溶液状又は固形状の樹脂組成物を得る工程であり得る。
【0038】
加熱工程における加熱温度は、200℃以上である必要があり、400℃以下であり得る。また、加熱工程における圧力は、絶対圧で、50kPa以下であることが好ましく、20kPa以下であることがより好ましい。換言すると、加熱工程では、50kPa以下の圧力条件下において、混合物を200℃以上に加熱するという操作を実施することが好ましい。
【0039】
加熱工程では、上記温度条件及び圧力条件が満たされる限りにおいて特に限定されることなく、遠心薄膜連続蒸発機、掻面熱交換型連続反応器型蒸発機、及び高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いた直接加熱乾燥法を実施することができる。
【0040】
なお、加熱工程に先立って、上述した樹脂及び上述したフェノール化合物を混和して混合物を得る工程を行い得る。混合方法としては、特に限定されることなく、樹脂が溶解してなる溶液に対して所定のフェノール化合物を添加し、既知の方法により混和する方法が挙げられる。
【0041】
さらに、加熱工程の後に、樹脂及び所定のフェノール化合物を含有する溶融体をペレタイジングしてペレット状の樹脂組成物を形成するペレタイジング工程を実施しても良い。
【0042】
(成形体)
本発明の成形体は、上述した樹脂組成物を成形してなる。本発明の成形体は、樹脂と、上述した特定のフェノール化合物とを含んでいるので、減圧及び高温条件下に曝した場合であっても樹脂(重合体)の分解が進行し難く、機械強度等の性状を良好に維持することができる。そして、本発明の成形体は、例えば、光学レンズ等として有利に使用することができる。
【0043】
本発明の成形体は、所望の形状に応じて適した既知の成形方法を経て、フィルムや各種形状の成形体に成形することができる。成形方法としては、特に限定されることなく、例えば、射出成形法、押出成形法、及びブロー成形法等を挙げることができる。さらに、成形方法としては、スパンボンド法やメルトブロー法などの溶融紡糸による不織布や繊維への加工方法も上げられる。成形条件は、成形時に使用する機材、及び、成形体の所望の形状等に応じて、適宜設定することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。また、一般式(I)を満たす各種フェノール化合物は、製造例1~2に記載した手順に従って製造した。
更にまた、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。そして、以下の説明において記載した圧力は、全て絶対圧である。
【0045】
各種の物性の測定及び各種の評価は、下記の方法に従って行った。
(1)供試サンプルの揮発性評価及びフェノール化合物の融点
供試サンプルとして、製造例1、2に従って製造したフェノール化合物及び比較例2~4のそれぞれにて用いた各種添加剤を、それぞれ用いた。供試サンプル10mgをアルミパンに入れ、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、日立ハイテクサイエンス社製、製品名「STA7200」)を使用して、30℃~300℃まで昇温速度15℃/分で加温し、加温終了後の重量減少率を得て、下記の基準に従って、各供試サンプルの揮発性を評価した。
A:5%未満
B:5%以上
また、フェノール化合物の融点は、融点測定装置(メトラー・トレド社製、製品名「MP70」)を用い、測定開始温度を20℃、測定終了温度を200℃とし、昇温速度5℃/分で測定を行った。このようにして、製造例1、2に従って製造したフェノール化合物の融点を得た。
(2)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めた。標準ポリスチレンとしては、東ソー社製標準ポリスチレン(Mw=589、1,010、3,120、9,490、13,700、37,200、98,900、189,000、397,000)を用いた。測定装置としては、東ソー社製、HLC8020GPCを用い、カラムには東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
(3)分解抑制能の評価
加熱工程前の時点における重合体の重量平均分子量をMw0、ペレタイジング後の時点における重合体の重量平均分子量をMw1とし、重量平均分子量維持率(%)=Mw1/Mw0×100を求め、下記の基準に従って、供試サンプル(製造例1、2に従って製造したフェノール化合物及び比較例2~4のそれぞれにて用いた各種添加剤)の重合体分解抑制能を評価した。
A:90%以上
B:80%以上90%未満
C:80%未満
(4)透明性の評価
実施例、比較例で得た樹脂組成物を成形してなる成形体(平板)について、ヘイズメータ(日本電色工業社製、製品名NDH2000)を用いて、JIS K7136:2000に従ってヘイズ(全光線透過率に対する拡散透過率の比率:%)を測定して、下記の基準に従って、成形体の透明性を評価した。
A:0.5%以下
B:0.5超1.0%未満
C:1.0%以上
【0046】
(製造例1)
温度計、攪拌装置を備えた四つ口フラスコに、2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノール100部、キシレン133部、ドデシルスルホン酸1.2部、10%p-トルエンスルホン酸25部、ホルムアルデヒド4.3部を仕込み、窒素置換した後、110℃で4時間攪拌しつつ反応を行い、反応液を得た。反応終了後、反応液に対してキシレンを2400部投入し、水層を分液除去した。その後、有機層が中性になるまで水洗した。次いで、90~110℃、約200mmHgの減圧下で、溶媒を還流しながら水分を系外に留去した。得られた縮合反応混合物を冷却後、トリエチルアミンを15.2部仕込み、窒素置換した後、塩化アクリロイルを6.8部滴下し、40℃で1時間保温した。そのあと有機層を中性になるまで水洗し、さらにキシレンを減圧留去した。次いで、この蒸留残査にメタノールを加えて晶析することにより、87部の2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-6-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)]ベンジルフェニルアクリレート(ビスフェノールモノアクリレート化合物。以下、「フェノール化合物1」とも称する。下式にて表される。)を得た。上記に従ってフェノール化合物1の揮発性を評価する際に得た重量減少率(TG/DTAによる測定値)は2.8%であった。さらに、フェノール化合物1の融点は、52℃であった。
【化4】
【0047】
(製造例2)
塩化アクリロイルを塩化メタクリロイルに変えた以外は製造例1と同様に行い、2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-6-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)]ベンジルフェニルメタクリレート(ビスフェノールモノメタクリレート化合物。以下、「フェノール化合物2」とも称する。下式にて表される。)を得た。上記に従って得た重量減少率(TG/DTAによる測定値)は、2.8%であった。さらに、フェノール化合物2の融点は、57℃であった。
【化5】
【0048】
(実施例1)
<熱可塑性樹脂調製工程(重合~水素化)>
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン231部、脱水スチレン100部、及びジブチルエーテル0.39部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.53部を加えて重合を開始させた。引続き全容を60℃で60分間攪拌した。次いで、イソプロピルアルコール0.18部を加えて反応を停止させることによって、ポリスチレン溶液を得た。
ポリスチレン溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、ケイソウ土担持型ニッケル触媒(日揮触媒化成社製、製品名「E22U」、ニッケル担持量60%)10部を添加し、0.1時間攪拌した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度180℃、圧力4.6MPaにて7時間水素化反応を行った。これにより、樹脂組成物に配合する重合体としての水素化ポリスチレンを含む反応溶液を得た。得られた水素化ポリスチレンの重量平均分子量(Mw0)は、90,000であった。
反応溶液に対して製造例1で得たフェノール化合物1(ビスフェノールモノアクリレート化合物)を0.5部加え溶解させた。この溶液を、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、圧力0.35MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製「フンダバックフィルター」)して、水素化触媒を除去し、無色透明な水素化ポリスチレン溶液を得た。
<加熱工程(濃縮工程)>
水素化ポリスチレン溶液を、窒素雰囲気下で200℃に加熱し、圧力3MPaで薄膜蒸発器(日立製作所社製、製品名コントロ)に連続的に供給した。薄膜蒸発器の運転条件は、圧力13.4kPa下、内部の濃縮された重合体溶液の温度を200℃とした。次に、濃縮された溶液を、薄膜蒸発機から連続的に導出し、さらに同型の薄膜蒸発機に圧力1.6MPaで供給した。運転条件は、圧力0.5kPa、温度260℃とした。
<ペレタイジング工程>
溶融状態の重合体を含む組成物を、薄膜蒸発機から連続的に導出し、クラス100のクリーンルーム内でダイから200℃で押し出し、水冷後、ペレタイザー(製品名「OSP-2」、長田製作所社製)でカッティングして、フェノール化合物1(ビスフェノールモノアクリレート化合物)と重合体としての水素化ポリスチレンとを含む樹脂組成物としてのペレットを得た。ペレットを再度シクロヘキサンに溶解させ、Mw1の測定を行ったところ、Mw1は86,000だった。
<成形工程>
ペレットを小型混練機(Micro15Compounder、DSMXplore社製)を用い、260℃、100rpmの条件で1分間混錬し溶融させた後、小型射出成形機(MicroInjectionMouldingMachine10cc、DSMXplore社製)で成形温度260℃、射出圧力0.7MPa、金型内保持時間10秒で、それぞれ金型温度を100℃の条件で、縦70mm、横30mm、厚さ3mmの平板を成形した。得られた成形体としての平板のヘイズは、0.3%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
熱可塑性樹脂としての水素化ポリスチレンを含む反応溶液に対してフェノール化合物2(ビスフェノールモノメタクリレート化合物)を0.5部加えた以外は、実施例1と同様の各種操作を実施して、ペレット及び平板を得た。ペレットのMw1は85,500であった。また、平板のヘイズは0.4%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
水素化反応後にフェノール化合物1を添加しないこと以外は実施例1と同様の各種操作を実施して、ペレット及び成形体としての平板を得た。ペレットのMw1は60,000であった。また、平板のヘイズは1.1%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
熱可塑性樹脂としての水素化ポリスチレンを含む反応溶液に対して、一般式(I)に示す構造を満たさない添加剤である、Sumilizer GS(住友化学社製:アクリル酸1'-ヒドロキシ[2,2'-エチリデンビス[4,6-ビス(1,1-ジメチルプロピル)ベンゼン]]-1-イル、下式)を0.5部加えた以外は実施例1と同様の各種操作を実施して、ペレット及び成形体としての平板を得た。Sumilizerの重量減少率は12.7%であった。また、ペレットのMw1は77,000であった。さらにまた、平板のヘイズは0.4%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【化6】
【0052】
(比較例3)
熱可塑性樹脂としての水素化ポリスチレンを含む反応溶液に対して、一般式(I)に示す構造を満たさない添加剤である、Sumilizer GM(住友化学社製、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル:下式)を0.5部加えた以外は実施例1と同様の各種操作を実施して、ペレット及び成形体としての平板を得た。Sumilizer GMの重量減少率は29.5%であった。また、ペレットのMw1は75,000であった。さらにまた、平板のヘイズは0.9%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【化7】
【0053】
(比較例4)
熱可塑性樹脂としての水素化ポリスチレンを含む反応溶液に対して、一般式(I)に示す構造を満たさない添加剤である、Irganox1010(BASFジャパン社製、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])を0.5部加えた以外は実施例1と同様の各種操作を実施して、ペレット及び成形体としての平板を得た。ペレットのMw1は64,000であった。また、平板のヘイズは0.4%であった。得られた各種測定値に基づいて、上記に従って各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1の実施例1~2より明らかなように、一般式(I)を満たす所定の構造を有するビスフェノールモノアクリレート化合物及びビスフェノールモノメタクリレート化合物は、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、且つ、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高かったことが分かる。
一方、比較例1より、かかる所定のビスフェノールモノアクリレート化合物あるいはビスフェノールモノメタクリレート化合物を配合しない場合には、実施例1で用いた熱可塑性樹脂は、真空、高温条件に曝した場合に、分解が進行したことが確認された。
また、比較例2~3より、実施例1で用いたビスフェノールモノアクリレート化合物と類似の構造を有するものの、一般式(I)を満たさない添加剤は、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が不十分であるとともに、高温条件下に曝された場合に、揮散し易い傾向があったことが分かる。
さらにまた、比較例4より、実施例1で用いたビスフェノールモノアクリレート化合物とは構造が顕著に異なる酸化防止剤(Irganox 1010)は、高温条件下で揮散し難いものの、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が不十分であったことが分かる。
そして、実施例1~2において、透明性の評価結果が全て「A」評価であった。このことから、一般式(I)を満たす所定の構造を有するビスフェノールモノアクリレート化合物及びビスフェノールモノメタクリレート化合物によれば、高温条件下に曝した場合において樹脂が着色することを良好に抑制し得たことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、高温条件下に曝された場合であっても容易に揮散せず、減圧及び高温条件下における樹脂の分解抑制能が充分に高い、フェノール化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記フェノール化合物を含む樹脂組成物、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記樹脂組成物よりなる成形体を提供することができる。