(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】成形用樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240717BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240717BHJP
C08G 59/00 20060101ALI20240717BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240717BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240717BHJP
C08K 3/24 20060101ALN20240717BHJP
C08K 3/36 20060101ALN20240717BHJP
C08K 3/22 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/00
H01L23/30 R
C08K3/24
C08K3/36
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2024508598
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012350
(87)【国際公開番号】W WO2023190419
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/016913
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山浦 格
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6870778(JP,B1)
【文献】特開2020-122115(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
H01L 23/28- 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂と、
シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方と、チタン酸カルシウム粒子と、を含む無機充填材と、
硬化剤と、
を含み、
前記チタン酸カルシウム粒子の含有率は、無機充填材全体に対して10体積%以上30体積%未満であり、
無機充填材全体の含有率は、成形用樹脂組成物全体に対して60体積%を超えている成形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化剤は、活性エステル化合物を含む、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤は、フェノール硬化剤をさらに含む、請求項2に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
活性エステル化合物及びその他の硬化剤の合計量に占める活性エステル化合物の質量割合は、60質量%以上である、請求項2に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂の少なくともいずれか1つを含む、請求項2に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填材は、アルミナ粒子を含む、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項7】
シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計含有率は、
無機充填材全体に対して70体積%を超えて90体積%以下である、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項8】
応力緩和剤をさらに含む、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項9】
前記応力緩和剤は、インデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含む、請求項8に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項10】
シリコーン系応力緩和剤の含有率は、成形用樹脂組成物全体に対し5質量%以下である、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項11】
シリコーン系応力緩和剤を含まない、請求項9に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項12】
チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子を含まない請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項13】
高周波デバイスに用いられる、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項14】
高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いられる、請求項13に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項15】
アンテナ・イン・パッケージに用いられる、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項16】
支持部材と、
前記支持部材上に配置された電子部品と、
前記電子部品を封止している請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
【請求項17】
前記電子部品がアンテナを含む請求項16に記載の電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形用樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、軽薄短小化の要求に伴い電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできており、これらの電子機器に使用される半導体パッケージは、従来にも増して、益々、小型化が進んでいる。さらに、電子機器の通信に使用される電波の高周波化も進んでいる。
【0003】
半導体パッケージの小型化、及び高周波への対応の点から、半導体素子の封止に用いる高誘電率樹脂組成物が提案されている(例えば、特開2015-036410号公報、特開2017-057268号公報、及び特開2018-141052号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子等の電子部品を封止する材料としては、例えば、硬化性樹脂と無機充填材とを含む成形用樹脂組成物が挙げられる。上記成形用樹脂組成物として、誘電正接の高い材料を用いると、伝送損失により伝送信号が熱に変換され、通信効率が低下しやすくなる。ここで、通信のために発信された電波が誘電体において熱変換されることで発生する伝送損失の量は、周波数と比誘電率の平方根と誘電正接との積として表される。つまり、伝送信号は、周波数に比例して熱に変わりやすくなる。そして、特に近年、情報の多様化に伴うチャンネル数増加等に対応するため、通信に使用される電波が高周波化されているため、低い比誘電率及び低い誘電正接を有する硬化物を成形可能な成形用樹脂組成物が求められている。一方、比誘電率が大きい程、基板の小型化、半導体パッケージの小型化等が可能であるため、伝送損失の抑制及び基板等の小型化の観点から、過度な比誘電率の上昇及び低下を抑制して比誘電率を維持しつつ、低い誘電正接を確保することが望ましい。
【0005】
本開示は、比誘電率を維持しつつ、低い誘電正接を有する硬化物を成形可能な成形用樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 硬化性樹脂と、
シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方と、チタン酸カルシウム粒子と、を含む無機充填材と、
を含み、
前記チタン酸カルシウム粒子の含有率は、無機充填材全体に対して10体積%以上30体積%未満であり、
無機充填材全体の含有率は、成形用樹脂組成物全体に対して60体積%超えている成形用樹脂組成物。
<2> 前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含み、かつ、前記成形用樹脂組成物が硬化剤をさらに含む、<1>に記載の成形用樹脂組成物。
<3> 前記硬化剤は、活性エステル化合物を含む、<2>に記載の成形用樹脂組成物。
<4> 前記硬化剤は、フェノール硬化剤をさらに含む、<3>に記載の成形用樹脂組成物。
<5> 前記エポキシ樹脂は、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂の少なくともいずれか1つを含む、<2>~<4>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<6> 前記無機充填材は、アルミナ粒子を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<7> 応力緩和剤をさらに含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<8> 前記応力緩和剤は、インデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含む、<7>に記載の成形用樹脂組成物。
<9> シリコーン系応力緩和剤の含有率は、成形用樹脂組成物全体に対し5質量%以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<10> シリコーン系応力緩和剤を含まない、<8>に記載の成形用樹脂組成物。
<11> チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子を含まない<1>~<10>に記載の成形用樹脂組成物。
<12> 高周波デバイスに用いられる、<1>~<11>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<13> 高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いられる、<12>に記載の成形用樹脂組成物。
<14> アンテナ・イン・パッケージに用いられる、<1>~<13>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物。
<15> 支持部材と、
前記支持部材上に配置された電子部品と、
前記電子部品を封止している<1>~<14>のいずれか1つに記載の成形用樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
<16> 前記電子部品がアンテナを含む<15>に記載の電子部品装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、比誘電率を維持しつつ、低い誘電正接を有する硬化物を成形可能な成形用樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、「シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計含有率」は、「シリカ粒子の含有率」と読み替えてもよく、「アルミナ粒子の含有率」と読み替えてもよい。
本開示において、「シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計」は、「シリカ粒子」と読み替えてもよく、「アルミナ粒子」と読み替えてもよい。
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
<成形用樹脂組成物>
本実施形態の成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂と、シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方と、チタン酸カルシウム粒子と、を含む無機充填材と、を含み、前記チタン酸カルシウム粒子の含有率は、無機充填材全体に対して10体積%以上30体積%未満であり、無機充填材全体の含有率は、成形用樹脂組成物全体に対して60体積%超えている。
【0011】
前記のように、成形用樹脂組成物では、成形後の硬化物において伝送損失を抑制することが求められている。伝送損失を抑制する観点から、低い誘電正接を実現することが望ましく、伝送損失の抑制及び基板の小型化、半導体パッケージの小型化等の観点から、過度な比誘電率の上昇及び低下を抑制して比誘電率のバランスをとることが好ましい。本実施形態の成形用樹脂組成物では、シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方とチタン酸カルシウム粒子とを組み合わせること、チタン酸カルシウム粒子の含有率を無機充填材全体に対して10体積%以上30体積%未満とすること、及び、無機充填材全体の含有率を成形用樹脂組成物全体に対して60体積%超とすることで伝送損失の抑制及び基板の小型化、半導体パッケージの小型化等に適した比誘電率を維持しつつ、低い誘電正接を有する硬化物を成形可能である。
【0012】
さらに、本実施形態の成形用樹脂組成物では、チタン酸カルシウム粒子を使用することでチタン酸バリウム等を使用した場合と比較して低い誘電正接を有する硬化物が成形可能である。
【0013】
以下、成形用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。本実施形態の成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂と、無機充填材と、を含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
(硬化性樹脂)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂を含む。
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれであってもよく、量産性の観点からは、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、成形性及び電気特性の観点から、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂及びビスマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
以下、硬化性樹脂の一例として、エポキシ樹脂について説明する。
【0015】
-エポキシ樹脂-
成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
成形用樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、硬化性樹脂全体に対するエポキシ樹脂の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。硬化性樹脂全体に対するエポキシ樹脂の含有率は、100質量%であってもよい。
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
【0016】
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂は、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂の少なくともいずれか1つを含むことが好ましく、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂又はビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0019】
エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、成形用樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0020】
成形用樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、成形用樹脂組成物の全体に占めるエポキシ樹脂の質量割合は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、3.5質量%~13質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
-硬化剤-
成形用樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、成形用樹脂組成物はさらに硬化剤を含んでもよい。成形用樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方及びチタン酸カルシウム粒子を含む無機充填材と、を含むことが好ましい。硬化剤の種類は特に制限されない。
【0022】
硬化剤は活性エステル化合物を含むことが好ましい。活性エステル化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、活性エステル化合物とは、エポキシ基と反応するエステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有する化合物をいう。なお、硬化剤が活性エステル化合物を含む場合、硬化剤は活性エステル化合物以外の硬化剤を含んでいてもよく、活性エステル化合物以外の硬化剤を含んでいなくてもよい。
【0023】
硬化剤として活性エステル化合物を用いると、硬化剤としてフェノール硬化剤又はアミン硬化剤を用いた場合に比べ、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。その理由は以下のように推測される。
エポキシ樹脂とフェノール硬化剤又はアミン硬化剤との反応においては、2級水酸基が発生する。これに対して、エポキシ樹脂と活性エステル化合物との反応においては、2級水酸基のかわりにエステル基が生じる。エステル基は、2級水酸基に比べて極性が低い故、硬化剤として活性エステル化合物を含む成形用樹脂組成物は、硬化剤として2級水酸基を発生させる硬化剤のみを含む成形用樹脂組成物に比べて、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。
また、硬化物中の極性基は硬化物の吸水性を高めるところ、硬化剤として活性エステル化合物を用いることによって硬化物の極性基濃度を抑えることができ、硬化物の吸水性を抑制することができる。そして、硬化物の吸水性を抑制すること、つまりは極性分子であるH2Oの含有量を抑制することにより、硬化物の誘電正接をさらに低く抑えることができる。
【0024】
活性エステル化合物は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。活性エステル化合物としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。
【0025】
活性エステル化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。
【0026】
活性エステル化合物の具体例としては、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールと、の混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
【0027】
活性エステル化合物の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物と、を反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【0029】
構造式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは非置換のベンゼン環、非置換のナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し0~5である。
【0030】
構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。
【0031】
【0032】
【0033】
活性エステル化合物の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【0035】
構造式(2)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0036】
構造式(3)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0037】
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。
【0038】
【0039】
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。
【0040】
【0041】
活性エステル化合物としては、市販品を用いてもよい。活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製);芳香族構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8」、「EXB-9425」(DIC株式会社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル株式会社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製);等が挙げられる。
【0042】
活性エステル化合物のエステル当量(分子量/エステル基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqがさらに好ましい。
活性エステル化合物のエステル当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0043】
エポキシ樹脂と活性エステル化合物との当量比(エステル基/エポキシ基)は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点からは、0.9以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.97以上がさらに好ましい。
エポキシ樹脂と活性エステル化合物との当量比(エステル基/エポキシ基)は、活性エステル化合物の未反応分を少なく抑える観点からは、1.1以下が好ましく、1.05以下がより好ましく、1.03以下がさらに好ましい。
【0044】
硬化剤は、活性エステル化合物以外のその他の硬化剤を含んでもよい。その他の硬化剤の種類は特に制限されず、成形用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。その他の硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
【0045】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、その他の硬化剤の官能基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0047】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、成形用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0048】
エポキシ樹脂と硬化剤(硬化剤を複数種用いた場合はすべての硬化剤)との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0049】
硬化剤は、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、及びブロックイソシアネート硬化剤からなる群より選択される少なくとも一種のその他の硬化剤と、活性エステル化合物と、を含んでいてもよい。成形用樹脂組成物を硬化した後の曲げ靭性に優れる観点から、硬化剤は、フェノール硬化剤と、活性エステル化合物とを含んでいてもよく、アラルキル型フェノール樹脂と、活性エステル化合物とを含んでいてもよく、アラルキル型フェノール樹脂と、メラミン変性フェノール樹脂と、活性エステル化合物と、を含んでいてもよい。
以下、その他の硬化剤は、フェノール硬化剤と読み替えてもよい。
【0050】
硬化剤が活性エステル化合物及びその他の硬化剤を含む場合、活性エステル化合物及びその他の硬化剤の合計量に占める活性エステル化合物の質量割合は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、40質量%以上であることが好ましく、60質量%であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが極めて好ましい。
【0051】
硬化剤が活性エステル化合物及びその他の硬化剤を含む場合、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量に占めるエポキシ樹脂及び活性エステル化合物の合計質量割合は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、40質量%以上であることが好ましく、60質量%であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが極めて好ましい。
【0052】
硬化剤が活性エステル化合物及びその他の硬化剤を含む場合、活性エステル化合物及びその他の硬化剤の合計量に占める活性エステル化合物の質量割合は、成形用樹脂組成物を硬化した後の曲げ靭性に優れる観点及び硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、40質量%~90質量%であることが好ましく、50質量%~80質量%であることがより好ましく、55質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
硬化剤が活性エステル化合物及びその他の硬化剤を含む場合、活性エステル化合物及びその他の硬化剤の合計量に占めるその他の硬化剤の質量割合は、成形用樹脂組成物を硬化した後の曲げ靭性に優れる観点及び硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、10質量%~60質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましく、30質量%~45質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
成形用樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含む場合、エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂の含有率は、成形用樹脂組成物の全体に対して、5質量%未満であってもよく、4質量%以下であってもよく、3質量%以下であってもよい。
【0055】
-ポリイミド樹脂-
成形用樹脂組成物は、硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を含んでもよい。
ポリイミド樹脂は、イミド結合を有する高分子化合物であれば特に限定されるものではない。ポリイミド樹脂としては、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
【0056】
ビスマレイミド樹脂としては、2以上のN-置換マレイミド基を有する化合物と2以上のアミノ基を有する化合物との共重合体が挙げられる。以下、2以上のN-置換マレイミド基を有する化合物を「ポリマレイミド化合物」ともいい、2以上のアミノ基を有する化合物を「ポリアミノ化合物」ともいう。
ビスマレイミド樹脂は、ポリマレイミド化合物とポリアミノ化合物とを含む組成物を重合させた重合体であればよく、ポリマレイミド化合物及びポリアミノ化合物以外のその他の化合物に由来する単位を含んでもよい。その他の化合物としては、2以上のエチレン性不飽和二重結合を含む基を有する化合物等が挙げられる。以下、2以上のエチレン性不飽和二重結合を含む基を有する化合物を「エチレン性化合物」ともいう。
【0057】
ポリマレイミド化合物は、2以上のN-置換マレイミド基を有する化合物であれば限定されず、2つのN-置換マレイミド基を有する化合物であってもよく、3以上のN-置換マレイミド基を有する化合物であってもよい。入手容易性の観点から、ポリマレイミド化合物は、2つのN-置換マレイミド基を有する化合物であることが好ましい。
【0058】
ポリマレイミド化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,12-ビスマレイミドドデカン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,4,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
これらのポリマレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
ポリアミノ化合物は、2以上のアミノ基を有する化合物であれば限定されず、2つのアミノ基を有する化合物であってもよく、3以上のアミノ基を有する化合物であってもよい。入手容易性の観点から、ポリアミノ化合物は、2つのアミノ基を有する化合物であることが好ましい。
【0060】
ポリアミノ化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス[1-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらのポリアミノ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
エチレン性化合物が有する「エチレン性不飽和二重結合を含む基」としては、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。エチレン性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を含む基を、1分子中に1種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。
エチレン性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を含む基のほかに、さらに他の基を有してもよい。他の基としては、アミノ基、エーテル基、スルフィド基等が挙げられる。
エチレン性化合物の具体例としては、ジアリルアミン、ジアリルエーテル、ジアリルスフィド、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0062】
ビスマレイミド樹脂中における、ポリアミノ化合物のアミノ基数(Ta2)に対するポリマレイミド化合物のN-置換マレイミド基数(Ta1)の当量比(Ta1/Ta2)は、1.0~10.0の範囲であることが好ましく、2.0~10.0の範囲であることがより好ましい。
また、ビスマレイミド樹脂がエチレン性化合物に由来する単位を含む場合、ビスマレイミド樹脂中におけるポリマレイミド化合物のN-置換マレイミド基数(Ta1)に対するエチレン性化合物のエチレン性不飽和二重結合数(Ta3)の当量比(Ta3/Ta1)としては、例えば、0.05~0.2の範囲が挙げられる。
【0063】
ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば、800~1500の範囲であってもよく、800~1300の範囲であってもよく、800~1100の範囲であってもよい。
【0064】
ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算することで、求めることができる。
検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type:A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製]を用いて3次式で近似する。
GPCに用いる装置としては、ポンプ:L-6200型(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)、検出器:L-3300型RI(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)、カラムオーブン:L-655A-52(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)、ガードカラム:TSK Guardcolumn HHR-L(東ソー製株式会社製、カラムサイズ6.0×40mm)、カラム:TSK gel-G4000HHR+gel-G2000HHR(東ソー製株式会社製、カラムサイズ7.8×300mm)
GPCの測定条件としては、溶離液:テトラヒドロフラン、試料濃度:30mg/5mL、注入量:20μL、流量:1.00mL/分、測定温度:40℃が挙げられる。
【0065】
成形用樹脂組成物が硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を含む場合、成形用樹脂組成物の全体に占めるポリイミド樹脂の質量割合としては、例えば0.5質量%~30質量%が挙げられ、2質量%~20質量%であることが好ましく、3.5質量%~13質量%であることがより好ましい。
【0066】
(硬化促進剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、硬化性樹脂の種類、成形用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0067】
硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む成形用樹脂組成物に用いる硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物に、無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物とを反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;テトラアルキルホスホニウムと芳香族カルボン酸無水物の部分加水分解物との塩;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物;などが挙げられる。
硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
硬化促進剤は、これらの中でも、有機ホスフィンを含む硬化促進剤であることが好ましい。有機ホスフィンを含む硬化促進剤としては、前記有機ホスフィン、前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物、前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物にπ結合をもつ化合物を付加して成る分子内分極を有する化合物などが挙げられる。
これらの中でも、特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリブチルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリ-p-トリルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。
【0069】
成形用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
ここで、樹脂成分とは、硬化性樹脂及び必要に応じて用いられる硬化剤を意味する。また、樹脂成分100質量部とは、硬化性樹脂と、必要に応じて用いられる硬化剤と、の合計量が100質量部であることを意味する。
【0070】
(硬化開始剤)
成形用樹脂組成物が硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を含む場合、成形用樹脂組成物は、必要に応じて硬化開始剤を含んでもよい。
硬化開始剤としては、熱により遊離ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤等が挙げられる。硬化開始剤としては、具体的には、無機過酸化物、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
無機過酸化物としては、過硫酸カリウム(ペルオキソ硫酸二カリウム)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、α、α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-へキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-へキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノネート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル等が挙げられる。
【0071】
成形用樹脂組成物が硬化開始剤を含む場合、硬化開始剤の含有量としては、ポリイミド化合物100質量部に対して0.1質量部~8.0質量部が挙げられ、硬化性の観点から0.5質量部~6.0質量部がより好ましい。硬化開始剤の含有量が8.0質量部以下であると、揮発分が発生しにくく硬化中のボイドの発生がより抑制される傾向にある。また、硬化開始剤の含有量を1質量部以上とすることで、硬化性がより良好となる傾向にある。
【0072】
(無機充填材)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方と、チタン酸カルシウム粒子と、を含む無機充填材を含む。
無機充填材は、シリカ粒子、アルミナ粒子又はチタン酸カルシウム粒子以外のその他の充填材を含んでいてもよい。
【0073】
-シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方-
無機充填材は、シリカ粒子及びアルミナ粒子の少なくとも一方を含む。無機充填材は、シリカ粒子及びアルミナ粒子の一方のみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
シリカ粒子及びアルミナ粒子は、それぞれ独立に、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリカ粒子及びアルミナ粒子は、それぞれ体積平均粒径の異なる2種以上の充填材の混合物であってもよい。
【0074】
シリカ粒子としては、特に限定されず、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス等が挙げられる。シリカ粒子の形状としては、特に限定されず、球形、楕円形、不定形等が挙げられる。シリカ粒子は、破砕されたものであってもよい。
シリカ粒子は、表面処理されたものであってもよい。
【0075】
アルミナ粒子の形状としては、特に限定されず、球形、楕円形、不定形等が挙げられる。アルミナ粒子は、破砕されたものであってもよい。
アルミナ粒子は、表面処理されたものであってもよい。
【0076】
誘電率及び熱伝導性の観点から、無機充填材はアルミナ粒子を含むことが好ましい。
【0077】
シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計含有率は、無機充填材全体に対し、70体積%を超えて95体積%以下であることが好ましく、75体積%~90体積%であることがより好ましく、75体積%~85体積%であることがさらに好ましい。
【0078】
無機充填材全体に対するシリカ粒子の含有率(体積%)、アルミナ粒子の含有率(体積%)及びチタン酸カルシウム粒子の含有率(体積%)は、下記の方法により求めることができる。
成形用樹脂組成物の硬化物の薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる無機充填材の総面積Aを求める。次に、SEM-EDX(エネルギー分散型X線分光器)を用い、無機充填材の元素を特定することで、無機充填材の総面積Aの中に含まれるシリカ粒子、アルミナ粒子、チタン酸カルシウム粒子等の特定の粒子の総面積Bを求める。特定の粒子の総面積Bを無機充填材の総面積Aで除算した値を百分率(%)に換算し、この値を無機充填材全体に対する特定の粒子の含有率(体積%)とする。
面積Sは、無機充填材の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、無機充填材が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい。
【0079】
無機充填材がシリカ粒子及びアルミナ粒子を含む場合、アルミナ粒子とシリカ粒子との体積比率であるアルミナ粒子:シリカ粒子は、10:90~90:10であってもよく、30:70~90:10であってもよく、50:50~90:10であってもよく、70:30~90:10であってもよい。
【0080】
シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計含有率は、低誘電正接の観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、30体積%~85体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、40体積%75体積%であることがさらに好ましい。
【0081】
成形用樹脂組成物中にて、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計に対するシリカ粒子及びアルミナ粒子の合計の質量割合(シリカ粒子及びアルミナ粒子の合計/エポキシ樹脂及び硬化剤の合計)は、誘電正接及び流動性のバランスの観点から、1~25であることが好ましく2~20であることがより好ましく、3~15であることがさらに好ましく、4~12であることが特に好ましい。
【0082】
シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径は、特に制限されない。シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径は、それぞれ独立に、0.2μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~50μmであることがより好ましい。前述の体積平均粒径が0.2μm以上であると、成形用樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向にある。前述の体積平均粒径が100μm以下であると、成形用樹脂組成物の充填性がより向上する傾向にある。
シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径は、成形用樹脂組成物をるつぼに入れて800℃で4時間放置し灰化させる。得られた灰分をSEMで観察し、形状ごと分離し観察画像から粒度分布を求め、その粒度分布から体積平均粒径(D50)としてシリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径を求めることができる。また、シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば株式会社堀場製作所、LA920)による測定により求めてもよい。
【0083】
シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径は、それぞれ独立に、成形用樹脂組成物の粘度の観点から、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、成形用樹脂組成物の流動性の観点から、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。
【0084】
-チタン酸カルシウム粒子-
チタン酸カルシウム粒子の形状としては、特に限定されず、球形、楕円形、不定形等が挙げられる。また、チタン酸カルシウム粒子は、破砕されたものであってもよい。
チタン酸カルシウム粒子は、表面処理されたものであってもよい。
チタン酸カルシウム粒子は、体積平均粒径の異なる2種以上の充填材の混合物であってもよい。
【0085】
チタン酸カルシウム粒子の体積平均粒径は、0.1μm~100μmであることが好ましく、0.2μm~80μmであることがより好ましく、0.5μm~30μmであることがさらに好ましく、0.5μm~10μmであることが特に好ましく、0.5μm~8μmであることが極めて好ましい。
チタン酸カルシウム粒子の体積平均粒径は、以下のようにして測定することができる。成形用樹脂組成物をるつぼに入れ、800℃で4時間放置し、灰化させる。得られた灰分をSEMで観察し、形状ごと分離し観察画像から粒度分布を求め、その粒度分布から体積平均粒径(D50)としてチタン酸カルシウム粒子の体積平均粒径を求めることができる。また、チタン酸カルシウム粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば株式会社堀場製作所、LA920)による測定により求めてもよい。
【0086】
チタン酸カルシウム粒子の含有率は、誘電率及び誘電正接のバランスの観点から、無機充填材全体に対し、10体積%以上30体積%未満であり、15体積%~25体積%であることが好ましく、20体積%~25体積%であることがより好ましい。
【0087】
チタン酸カルシウム粒子の含有率は、誘電率及び誘電正接のバランスの観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、5体積%~30体積%であることが好ましく、7体積%~25体積%であることがより好ましく、10体積%~20体積%であることがさらに好ましい。
【0088】
成形用樹脂組成物中にて、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計に対するチタン酸カルシウム粒子の質量割合(チタン酸カルシウム粒子/エポキシ樹脂及び硬化剤の合計)は、誘電正接及び流動性のバランスの観点から、1~10であることが好ましく、1.2~8であることがより好ましく、1.5~6であることがさらに好ましく、2~5であることが特に好ましい。
【0089】
-その他の充填材-
無機充填材は、シリカ粒子、アルミナ粒子又はチタン酸カルシウム粒子以外のその他の充填材を含んでいてもよい。
その他の充填材の形状としては、特に限定されず、球形、楕円形、不定形等が挙げられる。また、その他の充填材は、破砕されたものであってもよい。
その他の充填材は、表面処理されたものであってもよい。
その他の充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他の充填材は、体積平均粒径の異なる2種以上の充填材の混合物であってもよい。
【0090】
その他の充填材の種類は、特に制限されない。その他の充填材の材質としては、具体的には、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。
その他の充填材として、難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
【0091】
その他の充填材は、チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子を含んでもよい。チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子としては、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸カリウム粒子、チタン酸マグネシウム粒子、チタン酸鉛粒子、チタン酸アルミニウム粒子、チタン酸リチウム、酸化チタン粒子等が挙げられる。
ただし、硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、チタン酸バリウム粒子の含有率は、無機充填材全体に対し、1体積%未満であることが好ましく、0.5体積%未満であることがより好ましく、0.1体積%未満であることがさらに好ましい。つまり、無機充填材は、チタン酸バリウム粒子を含まないか、又はチタン酸バリウム粒子を上記含有率で含むことが好ましい。
また、チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子の合計含有率は、無機充填材全体に対し、1体積%未満であってもよく、0.5体積%未満であってもよく、0.1体積%未満であってもよい。つまり、無機充填材は、チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子を含まなくてもよく、チタン酸カルシウム粒子以外のチタン化合物粒子を上記含有率で含んでもよい。
【0092】
その他の充填材の体積平均粒径の好ましい範囲は、シリカ粒子の体積平均粒径及びアルミナ粒子の体積平均粒径の好ましい範囲と同様である。
【0093】
-無機充填材全体の含有率及び特性-
成形用樹脂組成物に含まれる無機充填材全体の含有率は、成形用樹脂組成物の硬化物の流動性及び強度を制御する観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、60体積%を超えており、60体積%を超えて90体積%以下であることが好ましく、62体積%~85体積%であることがより好ましく、65体積%~85体積%であることがさらに好ましく、68体積%~80体積%であることが特に好ましく、70体積%~78体積%であることが極めて好ましい。
【0094】
成形用樹脂組成物における無機充填材の含有率(体積%)は、下記の方法により求めることができる。
成形用樹脂組成物の硬化物の薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる無機充填材の総面積Aを求める。無機充填材の総面積Aを面積Sで除算した値を百分率(%)に換算し、この値を成形用樹脂組成物に占める無機充填材の含有率(体積%)とする。
面積Sは、無機充填材の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、無機充填材が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい。
無機充填材は、成形用樹脂組成物の硬化時の重力方向において存在割合に偏りが生じることがある。その場合、SEMにて撮像する際、硬化物の重力方向全体を撮像し、硬化物の重力方向全体が含まれる面積Sを特定する。
【0095】
無機充填材全体における10GHzでの比誘電率としては、例えば80以下の範囲が挙げられる。以下、10GHzでの比誘電率を単に「誘電率」ともいう。
無機充填材全体における誘電率を80以下とする方法としては、例えば、チタン酸カルシウム粒子として未焼成のチタン酸カルシウム粒子を用いる方法が挙げられる。ここで、未焼成のチタン酸カルシウム粒子とは、合成された後に1000℃以上の温度にさらされていないチタン酸カルシウム粒子をいう。
【0096】
チタン酸カルシウム粒子は、1000℃以上の温度において焼成することで、誘電率が大きく上昇する。例えば、未焼成のチタン酸カルシウムを1000℃の温度で2時間焼成した後における誘電率は、焼成前のチタン酸カルシウムにおける誘電率の10倍以上の値となる。
【0097】
無機充填材全体における誘電率は、誘電損失を抑える観点から、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。無機充填材全体における誘電率は、アンテナ等の電子部品の小型化の観点から、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。無機充填材全体における誘電率は、誘電損失を抑える観点及びアンテナ等の電子部品の小型化の観点から、5~50であることが好ましく、10~40であることがより好ましく、15~30であることがさらに好ましい。
【0098】
ここで、無機充填材全体における誘電率は、例えば以下のようにして求める。
具体的には、測定対象の無機充填材と特定の硬化性樹脂とを含み、無機充填材の含有率が異なる測定用樹脂組成物3種以上と、前記特定の硬化性樹脂を含み無機充填材を含まない測定用樹脂組成物と、を準備する。測定対象の無機充填材と特定の硬化性樹脂とを含む測定用樹脂組成物としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と、フェノールアラルキル型フェノール樹脂であるフェノール硬化剤と、有機ホスフィンを含む硬化促進剤と、測定対象の無機充填材と、を含む測定用樹脂組成物が挙げられる。また、無機充填材の含有量が異なる3種以上の測定用樹脂組成物としては、例えば、測定用樹脂組成物全体に対する無機充填材の含有率が10体積%、20体積%、及び30体積%の測定用樹脂組成物が挙げられる。
準備した各測定用樹脂組成物を、圧縮成形により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、それぞれ測定用硬化物を得る。得られた各測定用硬化物における10GHzでの比誘電率を測定し、無機充填材の含有率を横軸、比誘電率の測定値を縦軸としてプロットしたグラフを作成する。得られたグラフから、最小二乗法により直線近似を行い、無機充填材の含有率が100体積%のときの比誘電率を外挿により求め、「無機充填材全体における誘電率」とする。
【0099】
[各種添加剤]
本実施形態における成形用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含んでもよい。本実施形態における成形用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0100】
(カップリング剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。樹脂成分と無機充填材との接着性を高める観点からは、成形用樹脂組成物はカップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、ジシラザン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート系化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0101】
成形用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
【0102】
(イオン交換体)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。成形用樹脂組成物は、封止される電子部品を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0103】
Mg(1-X)AlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0104】
成形用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、イオン交換体の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0105】
(離型剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
成形用樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
【0107】
(難燃剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
成形用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、難燃剤の量は、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0109】
(着色剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は、目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
(応力緩和剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、インデン-スチレン-クマロン共重合体等、トリフェニルホスフィンオキシド、リン酸エステル等の有機リン化合物、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられ、エポキシ基を有するシリコーン化合物、ポリエーテル系シリコーン化合物等のシリコーン化合物がより好ましい。
【0111】
誘電正接の観点から、応力緩和剤は、インデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0112】
成形用樹脂組成物が応力緩和剤を含む場合、その量は、例えば、樹脂成分100質量部に対し、1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
応力緩和剤がインデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含む場合、その合計量は、例えば、樹脂成分100質量部に対し、1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
インデン-スチレン-クマロン共重合体の含有量は、例えば、樹脂成分100質量部に対し、1質量部~20質量部であってもよく、2質量部~10質量部であってもよい。
トリフェニルホスフィンオキサイドの含有量は、例えば、樹脂成分100質量部に対し、1質量部~30質量部であってもよく、5質量部~15質量部であってもよい。
シリコーン系応力緩和剤の含有量は、例えば、樹脂成分100質量部に対し、2質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよい。成形用樹脂組成物は、シリコーン系応力緩和剤を含んでいなくてもよい。誘電正接の観点から、成形用樹脂組成物では、応力緩和剤がインデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方(好ましくは両方)を含み、かつ、シリコーン系応力緩和剤を含んでいないことが好ましい。シリコーン系応力緩和剤の含有量の下限値は特に限定されず、0質量部であってもよく、0.1質量部であってもよい。
【0113】
シリコーン系応力緩和剤の含有率は、誘電正接の観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、0.5質量%以下であることが極めて好ましく、0.1質量%以下であることが極めて好ましい。シリコーン系応力緩和剤の含有率の下限値は特に限定されず、0質量%であってもよく、0.1質量%であってもよい。
【0114】
(成形用樹脂組成物の調製方法)
成形用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を攪拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
【0115】
本実施形態における成形用樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。成形用樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。成形用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0116】
(成形用樹脂組成物の特性)
本実施形態における成形用樹脂組成物を、圧縮成形により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形することで得られる硬化物の10GHzでの比誘電率としては、例えば5~30が挙げられる。前記硬化物の10GHzでの比誘電率は、アンテナ等の電子部品の小型化の観点から6~20であることが好ましく、7~15であることがより好ましく、8~15であることがさらに好ましい。
上記比誘電率の測定は、誘電率測定装置(例えば、アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下で行う。
【0117】
本実施形態における成形用樹脂組成物を、圧縮成形により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形することで得られる硬化物の10GHzでの誘電正接としては、例えば0.015以下が挙げられる。前記硬化物の10GHzでの誘電正接は、伝送損失低減の観点から0.010以下であることが好ましく、0.007以下であることがより好ましく、0.005以下であることがさらに好ましい。前記硬化物の10GHzでの誘電正接の下限値は、特に限定されず、例えば0.001が挙げられる。
上記誘電正接の測定は、誘電率測定装置(例えば、アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下で行う。
【0118】
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、成形用樹脂組成物を金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形したときの流動距離は、80cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、120cm以上であることがさらに好ましい。以下、上記流動距離を「スパイラルフロー」ともいう。スパイラルフローの上限値は特に限定されず、例えば200cmが挙げられる。
【0119】
成形用樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムは、30秒~100秒であることが好ましく、40秒~70秒であることがより好ましい。
175℃におけるゲルタイムの測定は、以下のようにして行う。具体的には、成形用樹脂組成物の試料3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(sec)とする。
【0120】
(成形用樹脂組成物の用途)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、例えば、後述する電子部品装置、その中でも特に高周波デバイスの製造に適用することができる。本実施形態における成形用樹脂組成物は、高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いてもよい。
特に、近年、第5世代移動通信システム(5G)の普及に伴い、電子部品装置に使用される半導体パッケージ(PKG)の高機能化及び小型化が進んでいる。そして、PKGの小型化及び高機能化に伴い、アンテナ機能を有するPKGであるアンテナ・イン・パッケージ(AiP、Antenna in Package)の開発も進められている。AiPでは、情報の多様化に伴うチャンネル数増加等に対応するため、通信に使用される電波が高周波化されるようになっており、封止材料において、高い誘電率と低い誘電正接との両立が求められている。
本実施形態における成形用樹脂組成物は、前記の通り、高い誘電率と低い誘電正接と両立した硬化物が得られる。そのため、高周波デバイスにおいて、支持部材上に配置されたアンテナを成形用樹脂組成物で封止したアンテナ・イン・パッケージ(AiP)用途に特に好適である。
アンテナ・イン・パッケージ等のアンテナを含む電子部品装置では、電力供給用のアンプをアンテナと反対側に設けた場合に電力供給による発熱が発生する。放熱性向上の観点から、電子部品装置の製造に用いられる成形用樹脂組成物は、無機充填材としてアルミナ粒子を含むことが好ましい。
【0121】
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止している前述の成形用樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、電子部品(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子、アンテナなど)を搭載して得られた電子部品領域を成形用樹脂組成物で封止したもの(例えば高周波デバイス)が挙げられる。
【0122】
上記支持部材の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材を使用できる。
上記電子部品は、アンテナを含んでもよく、アンテナ及びアンテナ以外の素子を含んでもよい。上記アンテナは、アンテナの役割を果たすものであれば限定されるものではなく、アンテナ素子であってもよく、配線であってもよい。
【0123】
また、本実施形態の電子部品装置では、必要に応じて、支持部材上における上記電子部品が配置された面と反対側の面に、他の電子部品が配置されていてもよい。他の電子部品は、前述の成形用樹脂組成物により封止されていてもよく、他の樹脂組成物により封止されていてもよく、封止されていなくてもよい。
【0124】
(電子部品装置の製造方法)
本実施形態に係る電子部品装置の製造方法は、電子部品を支持部材上に配置する工程と、前記電子部品を前述の成形用樹脂組成物で封止する工程と、を含む。
上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び電子部品の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び電子部品を使用できる。
【0125】
前述の成形用樹脂組成物を用いて電子部品を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
【実施例】
【0126】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
<成形用樹脂組成物の調製>
下記に示す成分を表1~表3に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の成形用樹脂組成物を調製した。この成形用樹脂組成物は、常温常圧下において固体であった。
なお、表1~表3中、空欄はその成分を含まないことを意味する。
また、用いた無機充填材全体に対するチタン酸カルシウム粒子の含有率(表中の「粒子割合(体積%)」、成形用樹脂組成物全体に対する無機充填材の含有率(表中の「含有率(体積%)」、無機充填材全体における10GHzでの比誘電率(表中の「充填材誘電率」)を前述の方法により求めた結果も併せて表1~表3に示す。
【0128】
・エポキシ樹脂1:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq(DIC株式会社製「N500P」)
・エポキシ樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、エポキシ当量274g/eq(日本化薬株式会社、品名「NC-3000」)
・エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量192g/eq
(三菱ケミカル株式会社、品名「YX―4000」)
【0129】
・硬化剤1:活性エステル化合物、DIC株式会社、品名「EXB-8」
・硬化剤2:フェノール硬化剤、フェノールアラルキル樹脂、水酸基当量170g/eq(明和化成株式会社、品名「MEH7851シリーズ」)
【0130】
・無機充填材1:アルミナ粒子、体積平均粒径:5.7μm、形状:球形
・無機充填材2:アルミナ粒子、体積平均粒径:0.7μm、形状:球形
・無機充填材3:未焼成のチタン酸カルシウム粒子、体積平均粒径:8.9μm、形状:不定形
・無機充填材4:未焼成のチタン酸カルシウム粒子、体積平均粒径:0.2μm、形状:不定形
【0131】
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン/1,4-ベンゾキノン付加物
・カップリング剤:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社、品名「KBM-573」)
・離型剤:モンタン酸エステルワックス(クラリアントジャパン株式会社、品名「HW-E」)
・着色剤:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社、品名「MA600」)
・応力緩和剤1:ポリエーテル系シリコーン化合物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社、品名「SIM768E」)
・応力緩和剤2:インデン-スチレン-クマロン共重合体
・応力緩和剤3:トリフェニルホスフィンオキサイド
【0132】
なお、上記各無機充填材の体積平均粒径は、以下の測定により得られた値である。
具体的には、まず、分散媒(水)に、無機充填材を0.01質量%~0.1質量%の範囲で添加し、バス式の超音波洗浄機で5分間分散した。
得られた分散液5mlをセルに注入し、25℃で、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所、LA920)にて粒度分布を測定した。
得られた粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を体積平均粒径とした。
【0133】
<成形用樹脂組成物の評価>
(比誘電率及び誘電正接)
成形用樹脂組成物を真空ハンドプレス機に仕込み、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、後硬化を175℃で6時間行い、板状の硬化物(縦12.5mm、横25mm、厚さ0.2mm)を得た。この板状の硬化物を試験片として、誘電率測定装置(アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下、10GHzでの比誘電率と誘電正接を測定した。結果を表1~表3(表中の「比誘電率」及び「誘電正接」)に示す。
【0134】
(流動性:スパイラルフロー)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、成形用樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。結果を表1~表3(表中の「流動距離(cm)」)に示す。
【0135】
(熱伝導率)
成形用樹脂組成物の熱伝導率の評価は、下記により行った。具体的には、調製した成形用樹脂組成物を用いて、金型温度180℃、成形圧力7MPa、硬化時間300秒間の条件でトランスファ成形を行い、金型形状の硬化物を得た。得られた硬化物の比重(密度、g/cm3)をアルキメデス法により測定した。得られた硬化物の熱拡散率(m2/s)を、熱拡散率測定装置(NETZSCH社、LFA467)を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。封止用樹脂組成物を構成する各材料の比熱の文献値と配合比に基づき硬化物の比熱(J/(g・K))を理論的に算出した。上記の測定値などから、式2により硬化物の熱伝導率を算出した。
λ=α×Cp×d ・・・(式2)
ここで、λは熱伝導率(W/(m・K))、αは熱拡散率(m2/s)、Cpは比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m3)である。
【0136】
(ゲルタイム)
成形用樹脂組成物3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とした。結果を表1~表3(表中の「ゲルタイム(秒)」)に示す。
なお、表中において「不可」とは、トルク曲線の立ち上がりが観測できないほどゲルタイムが短いことを意味する。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
表1~表3に示される通り、実施例の成形用樹脂組成物では、比較例の成形用樹脂組成物に比べて、比誘電率を維持しつつ、低い誘電正接を有する硬化物が得られる傾向にあった。
【0141】
2022年3月31日に出願されたPCT/JP2022/016913の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。