(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】チャックテーブルの固定方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20240717BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240717BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240717BHJP
B23Q 3/18 20060101ALI20240717BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240717BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240717BHJP
B24B 7/04 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
B23Q3/18 C
B23Q17/00 A
H01L21/304 631
B24B7/04 A
(21)【出願番号】P 2019232598
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 大輔
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-203271(JP,A)
【文献】特開2011-083829(JP,A)
【文献】特開平08-017897(JP,A)
【文献】特開2003-326456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0343589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
B24B 41/06
B23Q 3/08
B23Q 3/18
B23Q 17/00
H01L 21/304
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によって被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルを支持する支持面を有する支持テーブルと、該支持面の中心を回転中心とし該支持面の反対面に連結する回転軸と、該回転軸を貫通させる開口を有し該回転軸を回転可能に支持する基台と、該回転軸を回転させる回転手段と、該回転軸の回転角度を検知するエンコーダと、該回転軸の中心を中心とする円周上の3箇所に等間隔に配設され、該基台を下から支持し該基台に装着される部品と該基台との重さを検知する3つの重さ検知部と、を備える加工装置において、該保持面の中心と該支持面の中心とを一致させ該支持テーブルに該チャックテーブルを固定させるチャックテーブルの固定方法であって、
該支持テーブルの該支持面に該チャックテーブルを仮置きさせる仮置き工程と、
該仮置き工程の後、該重さ検知部が検知した値をゼロリセットするリセット工程と、
該回転軸を回転させて、該3つの該重さ検知部のうち、1つの重さ検知部の値が最大となった時に、該回転軸の中心、該保持面の中心、及び該重さ検知部を通る一直線と該チャックテーブルの側面との交点を該チャックテーブルの外から該回転中心に向かって押し込み該支持面の中心と該保持面の中心とを一致させる中心一致工程と、
該中心一致工程の後、該チャックテーブルを該支持テーブルに固定させる固定工程と、
を備えるチャックテーブルの固定方法。
【請求項2】
該加工装置は該重さ検知部が検知する値の大きさを該支持面の中心と該支持面の上に仮置きした該チャックテーブルの該保持面の中心とのズレ量に変換可能なデータテーブルを備え、
該中心一致工程
の前に、1つの該重さ検知部が検知した該値を基に、該データテーブルを参照して、該チャックテーブルを押し込む押し込み量を算出する押し込み量算出工程を含む
請求項1記載のチャックテーブルの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、研削砥石を用いて保持面に保持されたウェーハを研削する際に、特許文献1に開示のように、ウェーハの外周に形成されウェーハの結晶方位を示すノッチまたはオリエンテーションフラットを特定の位置に位置決めして、ウェーハの中心と保持面の中心とを一致させて保持面に保持する。保持面は、ウェーハの面積及び形状に一致した面積及び形状に形成されている。かかる保持面にウェーハを保持すると、両者の形状が一致しているために、保持面はウェーハに覆われることとなる。これにより、研削中に保持面からウェーハが剥がれるという問題と、ウェーハの下面に研削屑が付着するという問題とが解消されている。
【0003】
ここで、例えば、研削装置には、チャックテーブルを装着する少なくとも2つの基台をターンテーブルに備える種類の研削装置があり、かかる2つの基台にはそれぞれチャックテーブルが装着される。例えば、ターンテーブルの上に2つの基台が配設されている場合、ターンテーブルを回転させると、一方のチャックテーブルが研削加工位置に位置づけられるとともに、他方のチャックテーブルがウェーハを保持面に搬送可能な搬送位置に位置づけられる。2つの基台は、ターンテーブルの円周上に等しい間隔をあけて配設されている。それぞれの基台は、基台の中心を通り基台に垂直な回転軸を軸に基台を回転させる回転手段を備える。チャックテーブルは、作業者が基台の中心とチャックテーブルの中心とを一致させて基台に装着する。ウェーハを搬送する搬送手段を備えた全自動機では、ターンテーブルが回転することによって、チャックテーブルが公転させられて、チャックテーブルが毎度同じ搬送位置に位置づけられるため、ウェーハも同様に毎度同じ搬送位置に位置づけることにより、順次、保持面とウェーハとを一致させて保持面にウェーハを保持させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャックテーブルの中心と基台の中心のずれ量を測定する測定作業は、チャックテーブルの外周面に外周面の変位を測定するゲージを接触させ、チャックテーブルを回転させ外周面の変位を測定するという面倒な作業を要する。
したがって、加工装置には、作業者が容易に基台の中心と保持面の中心とを一致させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面によって被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルを支持する支持面を有する支持テーブルと、該支持面の中心を回転中心とし該支持面の反対面に連結する回転軸と、該回転軸を貫通させる開口を有し該回転軸を回転可能に支持する基台と、該回転軸を回転させる回転手段と、該回転軸の回転角度を検知するエンコーダと、該回転軸の中心を中心とする円周上の3箇所に等間隔に配設され、該基台を下から支持し該基台に装着される部品と該基台との重さを検知する3つの重さ検知部と、を備える加工装置において、該保持面の中心と該支持面の中心とを一致させ該支持テーブルに該チャックテーブルを固定させるチャックテーブルの固定方法であって、該支持テーブルの該支持面に該チャックテーブルを仮置きさせる仮置き工程と、該仮置き工程の後、該重さ検知部が検知した値をゼロリセットするリセット工程と、該回転軸を回転させて、該3つの該重さ検知部のうち、1つの重さ検知部の値が最大となった時に、該回転軸の中心、該保持面の中心、及び該重さ検知部を通る一直線と該チャックテーブルの側面との交点を該チャックテーブルの外から該回転中心に向かって該チャックテーブルを押し込み該支持面の中心と該保持面の中心とを一致させる中心一致工程と、該中心一致工程の後、該チャックテーブルを該支持テーブルに固定させる固定工程と、を備えるチャックテーブルの固定方法である。
上記のチャックテーブルの固定方法においては、該加工装置は該重さ検知部が検知する値の大きさを該支持面の中心と該支持面の上に仮置きした該チャックテーブルの該保持面の中心とのズレ量に変換可能なデータテーブルを備え、該中心一致工程の前に、1つの該重さ検知部が検知した該値を基に、該データテーブルを参照して、該チャックテーブルを押し込む押し込み量を算出する押し込み量算出工程を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本固定方法は、認識されたズレ量を利用して支持テーブルの中心とチャックテーブルの中心とを一致させるため、作業者の心出し作業の作業工数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】支持テーブルに支持されているチャックテーブル等を側方から見た断面図である。
【
図3】(a)は、支持テーブルの上にチャックテーブルが仮置きされている状態を表す平面図であり、(b)は、支持テーブルを回転させる途中の様子を表す平面図であり、(c)は、支持面の中心と、保持面の中心と、第2重さ検知部とが一直線状に配置された状態を表す平面図である。
【
図4】基台の回転角度を横軸に表示し、かつ、重さ検知部に検知された重さの値を縦軸に表示して、基台の回転角度に応じて変化する重さ検知部の重さの値を表したグラフである。
【
図5】チャックテーブルの側面を押し込んで、支持面の中心と保持面の中心とを一致させる様子を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置
図1に示す加工装置1は、被加工物Wを加工する加工装置である。以下、加工装置1について説明する。加工装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の上における+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0010】
コラム11の-Y方向側の側面には、例えば、加工手段3を支持する加工送り手段4が配設されている。加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備えている。研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状を有する複数の研削砥石340とを備えており、研削砥石340の下面は被加工物Wを研削する研削面340aとなっている。
スピンドルモータ32を用いて、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されているマウント33及びマウント33に装着されている研削砥石340が、回転軸35を軸にして回転することとなる。
【0011】
加工送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の上端に連結され回転軸45を軸にしてボールネジ40を回動させるモータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結されスピンドル30を保持するホルダ44とを備えている。
モータ42を用いてボールネジ40を駆動することにより、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともにホルダ44に保持されている加工手段3がZ軸方向に移動することとなる。
【0012】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は、円板状の吸引部20と吸引部20を支持する環状の枠体21とを備えている。吸引部20の上面は被加工物Wが吸引保持される保持面20aであり、枠体21の上面21aは、保持面20aに面一に形成されている。
【0013】
チャックテーブル2の周囲にはカバー12が配設されており、カバー12は蛇腹13に伸縮可能に連結されている。
チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー12が支持テーブル22と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹13が伸縮することとなる。
【0014】
ベース10の内部には、内部ベース100が配設されている。内部ベース100の上には、支持テーブル22を水平方向に移動させる水平移動手段5が配設されている。
【0015】
水平移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結され回転軸55を軸にしてボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合してガイドレール51に沿ってY軸方向に移動する可動板53とを備えている。Y軸モータ52にボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転軸55を軸として回転すると、これに伴い、可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動することとなる。
【0016】
ベース10の上における-Y方向側には、チャックテーブル2の枠体21の側面21cを押す機能を有する押し部6が備えられている。押し部6は、チャックテーブル2の枠体21の側面21cに当接して側面21cをY軸方向に押す当接部材60と、当接部材60を支持するアーム61とを備えている。押し部6は、水平移動手段5による支持テーブル22の移動方向であるY軸方向において、支持テーブル22に対して離間して配設されている。
【0017】
ベース10の上には、押し部6を水平方向に移動させる機能を有する押し部移動手段7が配設されている。押し部移動手段7は、例えば、ベース10の上にY軸方向に延設された支持板700と、支持板700の側面700cに配設され、Y軸方向の回転軸75を有するボールネジ70と、ボールネジ70に対して平行になるように、同じく支持板700の側面700cに配設されたガイドレール71と、ボールネジ70に連結され回転軸75を軸にしてボールネジ70を回動させるモータ72と、ボールネジ70に螺合するナット部74と、ナット部74に連結されるとともにガイドレール71に摺接しガイドレール71に沿ってY軸方向に移動する可動部73と、を備えており、可動部73にはアーム61が連結されている。
【0018】
モータ72によってボールネジ70が駆動されてボールネジ70が回転軸75を軸として回転すると、これに伴い、可動部73がガイドレール71に案内されてY軸方向に移動し、可動部73に連結されているアーム61がY軸方向に移動することとなる。
押し部移動手段7は、押し部6をY軸方向に移動させる機能を有するものに限らず、例えば、アーム61をX-Y平面上において旋回移動させる機能等を有するものであってもよい。
例えば、水平移動手段5により支持テーブル22がY軸方向に移動したり、押し部移動手段7により押し部6がY軸方向に移動したりすることによって、支持テーブル22と押し部6とは、互いに接近・離間する構成となっている。
【0019】
枠体21の側面21cは、押し部6に当接する部分となっており、枠体21の上面21aにおける外周部分には、複数の貫通孔210が枠体21の高さ方向(Z軸方向)に貫通形成されている。
【0020】
チャックテーブル2の下方には、
図2に示すように、支持テーブル22が配設されている。支持テーブル22は、チャックテーブル2を支持する支持面22aを有している。
支持テーブル22の支持面22aにおける外周部分には、例えば、貫通孔210よりも小さな径を有する、貫通孔210と同じ個数のネジ穴220が、支持テーブル22の高さ方向(Z軸方向)に形成されている。
チャックテーブル2が支持テーブル22の上に支持されている状態で、ネジ穴220に対応するネジ23が+Z方向から貫通孔210を貫通して、ネジ穴220に螺合することにより、支持テーブル22にチャックテーブル2が固定されることとなる。
【0021】
支持テーブル22の支持面22aの反対側の面である反対面22b(-Z方向に面している)には回転軸25が連結されている。回転軸25は、支持面22aの中心O2を通るZ軸方向の軸心を有しており、支持面22aの中心O2をその回転中心として回転することが可能となっている。
【0022】
回転軸25の周りには、環状の基台24が配設されている。基台24は開口240を有しており、開口240には回転軸25が貫通している。基台24は、その環の内側面に配設された連結部241が回転軸25の外側面に連結して、回転軸25を回転可能に支持している。
【0023】
支持テーブル22の下方には、回転軸25を回転させる回転手段26が配設されている。
回転手段26には、モータ260が配設されている。モータ260にはモータ260の回転量を検知するエンコーダ261が取り付けられている。
回転手段26は、例えばプーリ機構であり、モータ260によってZ軸方向の軸心を軸に回転可能な駆動軸262と、駆動軸262の上端に連結されている駆動プーリ263と、駆動プーリ263に巻回されて駆動プーリ263の駆動力を従動プーリ265に伝達する伝動ベルト264と、駆動プーリ263とともに伝動ベルト264に巻回されている従動プーリ265と、従動プーリ265に接続されている従動軸266と、従動軸266の下端に連結されたロータリージョイント267と、を備えている。従動軸266は、回転軸25に連結されている。
【0024】
モータ260には、回転角度制御部91が接続されている。回転角度制御部91は、エンコーダ261によって検知されるモータ260の回転量等を参照して回転軸25の回転角度を制御する機能を有している。
【0025】
モータ260を用いて駆動軸262を回転させると、駆動プーリ263が回転するとともに、駆動プーリ263の回転力が伝動ベルト264によって従動プーリ265に伝達されて従動プーリ265が回転することとなる。これにより、従動プーリ265に接続されている従動軸266がZ軸方向の軸心を軸にして回転して、従動軸266に連結されている回転軸25が支持面22aの中心O2を回転中心として回転する構成となっている。
【0026】
基台24と可動板53との間には、3つの重さ検知部8が配設されている。3つの重さ検知部8は、第1重さ検知部8a(
図2に不図示)、第2重さ検知部8b、及び第3重さ検知部8cを備えている。3つの重さ検知部8はそれぞれ圧電素子を有しており、回転軸25の中心である支持面22aの中心O2を中心とする円周上の3箇所において基台24を支持している。
3つの重さ検知部8のうちの1つ、例えば第2重さ検知部8bは、支持面22aの中心O2とともに、押し部6の移動経路(Y軸方向)に一直線状に整列されて配設されているものとする。
なお、重さ検知部8は、支持面22aの中心O2を中心とする円周上に等間隔で配置されていてもよい。
【0027】
重さ検知部8は、基台24に支持されている回転軸25、回転軸25に連結されている支持テーブル22、及び支持テーブル22に支持されるチャックテーブル2を含む諸々の部品と基台24との合計の重さを検知することができる。
各々の重さ検知部8により検知される重さの値は、チャックテーブル2が支持テーブル22の支持面22aにどのように位置づけられているかによって変わるものとする。すなわち、例えば、チャックテーブル2が、その中心O1の位置が第2重さ検知部8bよりも第3重さ検知部8cに近い位置に位置づけられて支持面22aに載置されている場合には、第3重さ検知部8cの方が第2重さ検知部8bよりも大きな値の重さを検知することとなる。
【0028】
加工装置1はデータテーブル9を備えている。データテーブル9は、重さ検知部8が検知する重さの値の大きさを、支持面22aの中心O2と支持面22aの上に仮置きされたチャックテーブル2の保持面20aの中心O1との間のズレ量に変換することができる。
加工装置1は、重さ検知部8に検知された重さの値を基にデータテーブル9を参照して、チャックテーブル2を押し込む押し込み量を算出することができる。
【0029】
押し部移動手段7には移動量制御部90が接続されている。移動量制御部90は、算出された上記の押し込み量の分、チャックテーブル2を押し込むために押し部6を移動させる際の、押し部6の+Y方向への移動量を制御する機能を有している。
【0030】
上記の加工装置1による被加工物Wの研削加工においては、まず、
図1に示したチャックテーブル2が支持テーブル22の支持面22aに固定されている状態で、チャックテーブル2の保持面20aに被加工物Wを保持してから、水平移動手段5を用いてチャックテーブル2及びその保持面20aに保持された被加工物Wを+Y方向に移動させることにより、被加工物Wを加工手段3の下方に位置付ける。
【0031】
次いで、保持面20a及び保持面20aに保持されている被加工物Wを回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
被加工物Wと研削砥石340とが回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に移動させて、研削砥石340の研削面340aを被加工物Wの上面Waに接触させる。研削面340aが被加工物Wの上面Waに接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に移動させて被加工物Wの上面Waに押し下げていくことにより、被加工物Wが研削加工される。
なお、加工装置1は、上記のような研削加工装置に限定されず、例えば切削装置、研磨装置等であってもよい。
【0032】
2 チャックテーブルの固定方法
(1)仮置き工程
上記の加工装置1において、支持テーブル22にチャックテーブル2を固定させるチャックテーブル2の固定方法について以下に説明する。
まず、
図2に示した支持テーブル22の支持面22aにチャックテーブル2を仮置きする。具体的には、支持テーブル22の支持面22aにチャックテーブル2を載置してから、チャックテーブル2の枠体21に形成されている複数の貫通孔210にネジ23を貫通させ、さらにネジ23を支持テーブル22のネジ穴220に僅かに螺入させる。これにより、支持面22aに対するチャックテーブル2の仮の位置合わせがなされる。
【0033】
(2)リセット工程
チャックテーブル2の仮置きを行うと、支持テーブル22に装着されたチャックテーブル2等の部品と支持テーブル22との合計の重さが、重さ検知部8によって検知される。そこで、チャックテーブル2の仮置きを行った後、重さ検知部8が検知した値をゼロリセットする。
図3(a)には、支持テーブル22と支持テーブル22に仮置きされたチャックテーブル2との位置関係の例が図示されている。
【0034】
(3)
回転軸の中心と保持面の中心と重さ検知部とを一直線上に配置する工程
重さ検知部8によって検知された値をゼロリセットした後、
図2に示した回転手段26を用いて、第1重さ検知部8aに検知される重さの値が最大になる角度まで回転軸25を回転させて、支持テーブル22を回転させる。
具体的には、回転角度制御部91を用いてモータ260を制御して回転軸25を回転さ
せることにより、
図3(a)の支持テーブル22を、例えば、中心O2を回転の中心として反時計回りに回転させる。
図3(b)には、支持テーブル22が50°回転した状態が示されている。
【0035】
さらに、支持テーブル22を回転させていき、第2重さ検知部8bに検知される重さの値が最大となったときに、回転軸25の回転を停止させて、支持テーブル22の回転を停止させる。
図4のグラフに示すように、支持テーブル22が60°回転した状態において、第2重さ検知部8bに検知される重さの値が最大となっている。
図3(c)に示すように、支持テーブル22が60°回転した状態では、回転軸25の回転中心である中心O2と、保持面20aの中心O1と、第2重さ検知部8bとが一直線状に配置された状態になっている。
【0036】
(4)押し込み量算出工程
及び中心一致工程
その後、
図1に示したデータテーブル9を参照して、第2重さ検知部8bに検知された重さの値の大きさを、支持面22aの中心O2と支持面22aの上に仮置きされたチャックテーブル2の保持面20aの中心O1とのズレ量に変換して、チャックテーブル2を支持面22aの中心O2に向かって押し込む押し込み量を算出する。
そして、
図5に示すように、移動量制御部90を用いて押し部6の移動量を制御して、上記の押し込み量の分、チャックテーブル2を押し込む。具体的には、押し部移動手段7を用いて押し部6を移動させて、回転軸25の中心である中心O2、保持面20aの中心O1、及び第2重さ検知部8bを通る一直線Lとチャックテーブル2の枠体21の側面21cとの交点Pをチャックテーブル2の外から中心O2に向かって押し込む。これにより、支持面22aの中心O2と保持面20aの中心O1とが一致する。
【0037】
なお、上記のように押し部移動手段7を用いて押し部6を+Y方向に移動させてチャックテーブル2を+Y方向に押し込むかわりに、例えば、水平移動手段5を用いてチャックテーブル2を-Y方向に移動させてもよい。かかる場合には、その水平位置が固定されている押し部6に向かってチャックテーブル2を-Y方向に向けて適宜押し込んでいくと、チャックテーブル2が支持テーブル22に対して+Y方向に移動していき、これにより、支持面22aの中心O2と保持面20aの中心O1とが一致する。
【0038】
(5)固定工程
上記のように支持面22aの中心O2と保持面20aの中心O1とを一致させた後、ネジ穴220に僅かに螺入しているネジ23を更にネジ穴220と螺入させて、ネジ穴220にネジ23を螺嵌させる。これにより、チャックテーブル2が支持テーブル22に固定される。
【0039】
本固定方法においては、認識されたズレ量を利用して支持テーブル22の中心O2とチャックテーブル2の中心O1とを一致させるため、作業者の芯出し作業の作業工数を少なくすることができる。
【0040】
また、データテーブル9を参照して、重さ検知部8に検知された重さの値を支持面22aの中心O2と保持面20aの中心O1とのズレ量に変換することによって、より効率的に芯出し作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1:加工装置 10:ベース 11:コラム 100:内部ベース
12:カバー 13:蛇腹
2:チャックテーブル 20:吸引部 20a:保持面 O1:保持面の中心
21:枠体 21a:枠体の上面 21b:枠体の下面 21c:枠体の側面
210:貫通孔
22:支持テーブル 22a:支持面 O2:支持面の中心
22b:反対面 220:ネジ穴
23:ネジ 24:基台 240:開口 241:連結部 25:回転軸
26:回転手段 260:モータ 261:エンコーダ 262:駆動軸
263:駆動プーリ 264:伝動ベルト 265:従動プーリ 266:従動軸
267:ロータリージョイント
3:加工手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石 340a:研削面
341:ホイール基台 35:回転軸
4:加工送り手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
53:可動板 55:回転軸
6:押し部 60:当接部材 61:アーム
7:移動手段 70:ボールネジ 700:支持板 700c:側面
71:ガイドレール 72:モータ 73:可動部 74:ナット部 75:回転軸
8:重さ検知部
8a:第1重さ検知部 8b:第2重さ検知部 8c:第3重さ検知部
9:データテーブル 90:移動量制御部 91:回転角度制御部
W:被加工物 Wa:被加工物の上面 L:一直線 P:交点