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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】テープ貼着装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023266
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129038
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118584(JP,A)
【文献】特開2011-187537(JP,A)
【文献】特開2007-088038(JP,A)
【文献】特開2019-009182(JP,A)
【文献】特開2013-243286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の中央に円形の凹部を備えるとともに、該凹部の外側に環状の凸部を備える円板状の被加工物の一方の面に、テープを貼着するテープ貼着装置であって、
被加工物の他方の面を載置する載置面を有する載置手段と、
該載置面に載置された該被加工物の一方の面を覆うようにテープを配置するテープ配置手段と、
該被加工物の凸部の上面のみに該テープを押し付けるためのローラと、
該テープの上面上で転動するように該ローラを移動させるためのローラ移動手段と、
少なくとも該載置手段と該ローラとを収容する収容室と、
該収容室内を減圧する減圧手段と、
該収容室内を加圧する加圧手段と、
該減圧手段を用いて、該収容室内を減圧すること、該ローラ移動手段を用いて、該被加工物における該凸部の上面のみに該テープを貼着すること、および、該加圧手段を用いて該収容室内を加圧して、該凹部と該凸部との角部に該テープを押し付けること、を制御する制御手段と、を備える、
テープ貼着装置。
【請求項2】
該テープ配置手段は、該被加工物を収容可能な開口を有する環状のリングフレームと、該開口を塞ぐように該リングフレームに貼着された該テープとを含むフレームユニットを用いる、
請求項1記載のテープ貼着装置。
【請求項3】
該テープを加熱する加熱手段をさらに備え、
該制御手段は、該収容室内を加圧する際に、該加熱手段を用いて該テープを加熱して軟化させて、該テープを該角に押し付ける、
請求項1記載のテープ貼着装置。
【請求項4】
該テープを加熱する加熱手段をさらに備え、
該制御手段は、該収容室内を加圧する際に、該加熱手段を用いて該テープを加熱して軟化させて、該テープを該角に押し付ける、
請求項2記載のテープ貼着装置。
【請求項5】
該テープは、該リングフレームに対応する部分にのみ粘着層を備え、該加熱手段で加熱し、さらに該加圧手段で加圧することによって、該テープを該角に押し付ける、
請求項4記載のテープ貼着装置。
【請求項6】
一方の面の中央に円形の凹部を備えるとともに、該凹部の外側に環状の凸部を備える円板状の被加工物の一方の面に、テープを貼着するテープ貼着装置であって、
被加工物の他方の面を載置する載置面を有する載置手段と、
該載置面に載置された該被加工物の一方の面を覆うようにテープを配置するテープ配置手段と、
該被加工物に該テープを押し付けるためのローラと、
該テープの上面上で転動するように該ローラを移動させるためのローラ移動手段と、
少なくとも該載置手段と該ローラとを収容する収容室と、
該収容室内を減圧する減圧手段と、
該収容室内を加圧する加圧手段と、
該減圧手段を用いて、該収容室内を減圧すること、該ローラ移動手段を用いて、該被加工物における該凸部の上面に該テープを貼着すること、および、該加圧手段を用いて該収容室内を加圧して、該凹部と該凸部との角部に該テープを押し付けること、を制御する制御手段と、を備え、
該テープ配置手段は、該被加工物を収容可能な開口を有する環状のリングフレームと、該開口を塞ぐように該リングフレームに貼着された該テープとを含むフレームユニットを用いており、
該テープを加熱する加熱手段をさらに備え、
該制御手段は、該収容室内を加圧する際に、該加熱手段を用いて該テープを加熱して軟化させて、該テープを該角に押し付け、
該テープは、該リングフレームに対応する部分にのみ粘着層を備え、該加熱手段で加熱し、さらに該加圧手段で加圧することによって、該テープを該角に押し付ける、
テープ貼着装置。
【請求項7】
該加圧手段は、エアを噴射するエア供給手段であり、
該制御手段は、該エア供給手段を用いて、該載置面にエアを噴射して該載置面を清掃する、
請求項1または請求項6記載のテープ貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ貼着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、被加工物の一方の面を保護するために、この面にテープを貼着するテープ貼着装置が開示されている。この装置では、真空室内で、被加工物にテープを貼着することによって、テープと被加工物と間に空気溜まりができることを抑制している。
【0003】
また、特許文献3には、TAIKOプロセスが開示されている。このプロセスでは、ウェーハの中央部分を研削砥石で研削することによって、中央部分に凹部を有するとともに、この凹部の周囲に環状の凸部を有するTAIKOウェーハが形成される。その後、TAIKOウェーハを分割加工してチップを得る。
【0004】
この分割加工では、まず、ウェーハの凹部にテープを貼着し、凹部の外周を環状に加工することにより、環状の凸部を除去する。その後、ウェーハの一方の面に形成されている複数のデバイスの間のストリートに沿って、ウェーハを分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-073767号公報
【文献】特開2017-050388号公報
【文献】特開2007-019461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術では、TAIKOウェーハにおける環状の凸部を除去するための環状の加工の際、大きなチッピングが形成され、このチッピングを起点としてウェーハが割れることがある。
また、ストリートに沿ってウェーハを分割する際に、ウェーハの外周に形成される三角形のチップが飛散することがある。
【0007】
これらの対策として、TAIKOウェーハにおける環状の凸部と凹部との境に、テープを密着させることが好ましい。すなわち、真空室内でテープをTAIKOウェーハに貼着した後、TAIKOウェーハを大気圧にさらす。これにより、テープが、大気圧に押されて、環状の凸部と凹部との境(角部)に密着される。また、加熱によってテープを軟化することにより、密着をさらに容易にすることができる。
【0008】
しかし、上記のような方法によってテープを密着させるには、時間がかかる。また、テープを軟化させるための時間もかかる。そして、加温されたテープを冷却する冷却時間も必要となる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、TAIKOプロセスにおいて、短い時間で、TAIKOウェーハにおける環状の凸部と凹部との角部にテープが密着するように、TAIKOウェーハにテープを貼着することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のテープ貼着装置(本テープ貼着装置)は、一方の面の中央に円形の凹部を備えるとともに、該凹部の外側に環状の凸部を備える円板状の被加工物の一方の面に、テープを貼着するテープ貼着装置であって、被加工物の他方の面を載置する載置面を有する載置手段と、該載置面に載置された該被加工物の一方の面を覆うようにテープを配置するテープ配置手段と、該被加工物の凸部の上面のみに該テープを押し付けるためのローラと、該テープの上面上で転動するように該ローラを移動させるためのローラ移動手段と、少なくとも該載置手段と該ローラとを収容する収容室と、該収容室内を減圧する減圧手段と、該収容室内を加圧する加圧手段と、該減圧手段を用いて、該収容室内を減圧すること、該ローラ移動手段を用いて、該被加工物における該凸部の上面のみに該テープを貼着すること、および、該加圧手段を用いて該収容室内を加圧して、該凹部と該凸部との角部に該テープを押し付けること、を制御する制御手段と、を備える。
【0011】
本テープ貼着装置では、該テープ配置手段は、該被加工物を収容可能な開口を有する環状のリングフレームと、該開口を塞ぐように該リングフレームに貼着された該テープとを含むフレームユニットを用いてもよい。
【0012】
本テープ貼着装置は、該テープを加熱する加熱手段をさらに備えてもよく、該制御手段は、該収容室内を加圧する際に、該加熱手段を用いて該テープを加熱して軟化させて、該テープを該角に押し付けてもよい。
また、この場合、該テープは、該リングフレームに対応する部分にのみ粘着層を備えてもよい。そして、該加熱手段で加熱し、さらに該加圧手段で加圧することによって、該テープを該角に押し付けてもよい。
【0013】
また、本発明の他のテープ貼着装置は、一方の面の中央に円形の凹部を備えるとともに、該凹部の外側に環状の凸部を備える円板状の被加工物の一方の面に、テープを貼着するテープ貼着装置であって、被加工物の他方の面を載置する載置面を有する載置手段と、該載置面に載置された該被加工物の一方の面を覆うようにテープを配置するテープ配置手段と、該被加工物に該テープを押し付けるためのローラと、該テープの上面上で転動するように該ローラを移動させるためのローラ移動手段と、少なくとも該載置手段と該ローラとを収容する収容室と、該収容室内を減圧する減圧手段と、該収容室内を加圧する加圧手段と、該減圧手段を用いて、該収容室内を減圧すること、該ローラ移動手段を用いて、該被加工物における該凸部の上面に該テープを貼着すること、および、該加圧手段を用いて該収容室内を加圧して、該凹部と該凸部との角部に該テープを押し付けること、を制御する制御手段と、を備え、該テープ配置手段は、該被加工物を収容可能な開口を有する環状のリングフレームと、該開口を塞ぐように該リングフレームに貼着された該テープとを含むフレームユニットを用いており、該テープを加熱する加熱手段をさらに備え、該制御手段は、該収容室内を加圧する際に、該加熱手段を用いて該テープを加熱して軟化させて、該テープを該角に押し付け、該テープは、該リングフレームに対応する部分にのみ粘着層を備え、該加熱手段で加熱し、さらに該加圧手段で加圧することによって、該テープを該角に押し付ける。
本発明のテープ貼着装置では、該加圧手段は、エアを噴射するエア供給手段であってもよく、該制御手段は、該エア供給手段を用いて、該載置面にエアを噴射して該載置面を清掃してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本テープ貼着装置では、収容室を減圧した後、被加工物の一方の面を覆っているテープを、被加工物の環状の凸部の先端に貼着する。その後、収容室を加圧することにより、テープを、被加工物の一方の面に形成されている凹部に向かう方向に押しつける。これにより、凹部と環状の凸部との境である角部を含む、被加工物の一方の面の略全面に、実質的に隙間なく、テープを貼着することができる。
このように、本テープ貼着装置では、収容室内の気圧を調整することにより、容易かつ短時間で、テープを被加工物の一方の面の略全面に貼着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ウェーハの構成を示す斜視図である。
図2】ウェーハの構成を示す断面図である。
図3】テープ貼着装置の構成を示す断面図である。
図4】フレームユニットの構成を示す斜視図である。
図5】テープ貼着装置の筐体内にフレームユニットを配置する様子を示す説明図である。
図6】テープ貼着装置の収容室が密封されている状態を示す説明図である。
図7】収容室が減圧されている状態を示す説明図である。
図8図7に示した点線で囲まれている領域を拡大して示す説明図である。
図9】収容室が加圧されている状態を示す説明図である。
図10図9に示した点線で囲まれている領域を拡大して示す説明図である。
図11】テープ貼着装置の他の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかる円板状の被加工物であるウェーハ100は、一方の面である裏面104の中央に、円形の凹部110を備えている。さらに、ウェーハ100は、凹部110の外側に、環状凸部112を備えている。
【0017】
このように、ウェーハ100は、いわゆるTAIKOウェーハであり、中央が薄化されている一方、外周の環状凸部112によって、ウェーハ100が反ったり、割れたりしないように補強されている。
なお、ウェーハ100の他方の面である表面101には、図示しないデバイスが形成されている。
【0018】
図3に示す本実施形態にかかるテープ貼着装置1は、このようなウェーハ100の裏面104に、テープを貼着する。
なお、ウェーハ100の裏面104にもデバイスを形成することがあり、その際は、デバイスにテープを貼着する。
【0019】
図3に示すように、テープ貼着装置1は、上側筐体50および下側筐体40を含む筐体10、および、開閉手段13を備えている。上側筐体50および下側筐体40は、ともに、有底筒状を有している。筐体10は、上側筐体50および下側筐体40を、その開口を対向させるように重ねて連結することによって構成される。開閉手段13は、上側筐体50を、下側筐体40に対して、上下方向に移動させるものである。
【0020】
筐体10は、内部空間としての収容室15を有している。上側筐体50が、開閉手段13によって下方に移動されて、下側筐体40に連結されることにより、筐体10が閉じられて、その内部の収容室15が密封される。
また、上側筐体50が、開閉手段13によって上方に移動されて、下側筐体40から離れることにより、筐体10および収容室15が開放されて、収容室15の密封が破られる。
【0021】
また、上側筐体50は、円板状の上側底部51と、上側底部51の外周上に設けられた筒状の上側側部52とを有している。上側底部51には、エア供給口53が設けられている。このエア供給口53は、エアを噴射するエア供給手段としてのエア供給源55に、加圧バルブ57を介して接続されている。エア供給源55は、エア供給口53を介して、密封された収容室15内にエアを供給して、収容室15を加圧することが可能となっている。このように、エア供給源55は、収容室15内を加圧する加圧手段として機能する。
【0022】
また、下側筐体40は、円板状の下側底部41と、下側底部41の外周上に設けられた筒状の下側側部42とを有している。下側底部41には、減圧口43が設けられている。この減圧口43は、真空源45に、真空バルブ44を介して接続されている。真空源45は、たとえば真空ポンプである。真空源45は、減圧口43を介して、密封された収容室15内の空気を吸い込むことにより、収容室15内の気圧を下げることができる。このように、真空源45は、収容室15内を減圧する減圧手段として機能する。
【0023】
なお、下側側部42は、上側筐体50の上側側部52と、パッキン47を介して連結されることが可能である。下側側部42と上側側部52とがパッキン47を介して連結されることにより、筐体10の内部の収容室15の密封度を高めることができる。
【0024】
また、本実施形態では、下側側部42と上側側部52とが連結される際には、これらは、ロック部材49によって互いに固定される。これにより、収容室15が加圧されたときに、下側側部42と上側側部52との連結が解除されることを抑制することができる。
【0025】
また、下側筐体40の内部には、フレーム保持テーブル20が配置されており、フレーム保持テーブル20上には、載置手段の一例としてのウェーハ保持テーブル30が配置されている。
【0026】
ウェーハ保持テーブル30は、円板状の基台32と、基台32の外周上に設けられた薄い筒状のウェーハ保持部31とを有している。ウェーハ保持部31は、ウェーハ100の表面101を載置するための載置面として機能し、ウェーハ100の表面101を吸着保持する。このため、ウェーハ保持部31および基台32内には、第1吸引路36が設けられている。この第1吸引路36は、筐体10の外部に配置された吸引源27に連通されることが可能である。
【0027】
フレーム保持テーブル20は、ウェーハ保持テーブル30のウェーハ保持部31に載置されたウェーハ100の裏面104を覆うようにダイシングテープ122を配置するために用いられる。
【0028】
フレーム保持テーブル20は、下側筐体40の下側底部41に支持されている円板状の基台22と、基台22の外周上に設けられた筒状のフレーム保持部21とを有している。
【0029】
図4に示すように、本実施形態においてウェーハ100に貼着されるテープであるダイシングテープ122は、フレームユニット120の状態で取り扱われる。
フレームユニット120は、ウェーハ100を収容可能な開口123を有する環状のリングフレーム121と、開口123を塞ぐようにリングフレーム121に貼着されたダイシングテープ122とを含む。このように、ダイシングテープ122は、その外周にリングフレーム121が貼着された状態、すなわち、ダイシングテープ122に支持された状態で用いられる。フレーム保持テーブル20には、このようなフレームユニット120が載置される。
【0030】
図3に示したフレーム保持テーブル20のフレーム保持部21は、ダイシングテープ122を支持しているリングフレーム121を載置して吸着するために用いられる。このため、フレーム保持テーブル20のフレーム保持部21および基台22内には、第2吸引路26が設けられている。この第2吸引路26は、第1吸引路36と同様に、吸引源27に連通されることが可能である。
【0031】
また、上側筐体50の上側底部51には、ローラ移動手段63が設けられており、ローラ移動手段63には、貼着ローラとしてのローラ61が取り付けられている。ローラ61は、ウェーハ100にダイシングテープ122を押し付けるために用いられる。ローラ移動手段63は、ローラ61を移動させるためのレールおよびモータ等を備えており、ダイシングテープ122の上面上で転動するように、ローラ61移動させることが可能である。
【0032】
このように、本実施形態にかかるテープ貼着装置1では、ローラ61、ローラ移動手段63、フレーム保持テーブル20、およびウェーハ保持テーブル30が、収容室15内に収容されている。
【0033】
また、テープ貼着装置1は、テープ貼着装置1の各部材を制御するための制御手段70を有している。
以下に、制御手段70の機能とともに、テープ貼着装置1におけるダイシングテープ122の貼着動作について説明する。
【0034】
動作の開始時には、図5に示すように、開閉手段13によって上側筐体50が上昇されて、上側筐体50と下側筐体40との連結が解除されて、筐体10および収容室15が開放された状態となっている。なお、このときには、真空バルブ44および加圧バルブ57は、ともに閉じられている。
【0035】
この状態で、ウェーハ100が、凹部110を有する裏面104が上向きとなるように、ウェーハ保持テーブル30上に載せられる。この際、ウェーハ保持テーブル30のウェーハ保持部31上に、ウェーハ100の環状凸部112が配置される。そして、第1吸引路36が吸引源27に連通されて、ウェーハ保持部31が、ウェーハ100の環状凸部112を吸引保持する。
【0036】
なお、上述したように、ウェーハ保持部31は、円板状の基台32の外周上に設けられた薄い筒状を有しており、ウェーハ保持部31から上方に突き出ている。このため、本実施形態では、ウェーハ保持テーブル30において下面となるウェーハ100の表面101が、基台32に接触することを抑制することができる。これにより、表面101に形成されているデバイスを保護することができる。
【0037】
次に、搬送手段80によって、フレーム保持テーブル20に、フレームユニット120が載置される。
搬送手段80は、テープ配置手段の一例であり、ウェーハ保持テーブル30のウェーハ保持部31に載置されたウェーハ100の裏面104を覆うように、ダイシングテープ122を配置する。このために、搬送手段80は、ダイシングテープ122を含むフレームユニット120を用いる。
【0038】
すなわち、搬送手段80は、円板状の基体83と、基体83の外周における複数箇所に設けられた吸引パッド85と、基体83の中央を支持し、基体83を上下方向および水平方向に移動可能なアーム81と、を備えている。
【0039】
搬送手段80は、吸引パッド85によって、図4に示したフレームユニット120のリングフレーム121を吸引保持した状態で、アーム81によって、上側筐体50と下側筐体40との間に基体83を挿入させて、基体83をフレーム保持テーブル20の上方に配置する。
【0040】
その後、搬送手段80は、アーム81を用いて基体83を降下させて、リングフレーム121を、フレーム保持テーブル20のフレーム保持部21上に載置する。その後、搬送手段80は、アーム81を用いて、基体83を筐体10の外部に退避させる。
【0041】
また、第2吸引路26が吸引源27に連通されて、フレーム保持部21が、フレームユニット120のリングフレーム121を吸引保持する。これにより、ウェーハ保持部31に載置されたウェーハ100の裏面104上が、フレームユニット120のダイシングテープ122によって覆われる。
【0042】
次に、図6に示すように、開閉手段13によって上側筐体50が降下されて、上側筐体50の上側側部52と下側筐体40の下側側部42とが、パッキン47を介して連結されて、ロック部材49によって固定される。これにより、筐体10内の収容室15が密封される。
【0043】
この状態で、制御手段70が、真空バルブ44を開放して、減圧口43と真空源45とを連通させる。これにより、真空源45が、減圧口43を介して、密封された収容室15内の空気を吸い込む。これにより、収容室15内が減圧されるとともに、ウェーハ保持テーブル30に保持されているウェーハ100の凹部110と、その上を覆っているダイシングテープ122との間も減圧される。
【0044】
このような減圧により、図7に示すように、ダイシングテープ122が垂れ下がり、凹部110に接触する。ただし、図8に示すように、ウェーハ100における環状凸部112の近傍では、ウェーハ100の凹部110と環状凸部112との境である角部113には、まだダイシングテープ122が貼着(密着)されていない可能性がある。この図8には、図7に示した点線で囲まれている、環状凸部112の近傍の領域400が、拡大して示されている。
【0045】
なお、収容室15の減圧時には、吸引源27を用いた、ウェーハ保持部31によるウェーハ100の吸着およびフレーム保持部21によるリングフレーム121の吸着は、停止されてもよい。
【0046】
次に、制御手段70は、ローラ移動手段63を用いて、ウェーハ100における環状凸部112の上方に位置しているダイシングテープ122を、環状凸部112の先端(上面)に、押しつけて貼着する。
【0047】
すなわち、図7に示すように、制御手段70は、ローラ移動手段63を制御して、ローラ61を、ウェーハ100の環状凸部112上のダイシングテープ122に沿って転動させることにより、環状凸部112にダイシングテープ122を押しつける。これにより、ダイシングテープ122が、ウェーハ100の環状凸部112の上面に、堅固に貼着される。その結果、凹部110とダイシングテープ122との間の空間が、ダイシングテープ122によって、収容室15から実質的に隔離される。
【0048】
次に、制御手段70は、図9に示すように、真空バルブ44を閉じるとともに、加圧バルブ57を開放する。これにより、減圧口43と真空源45との連通が遮断されるとともに、エア供給口53とエア供給源55とが連通される。このようにして、制御手段70は、エア供給源55を用いて、密封された収容室15内に空気を送り込み、収容室15内を加圧する。
【0049】
これにより、加圧された収容室15と、収容室15から実質的に隔離されている凹部110とダイシングテープ122との間の空間とに、気圧差が生じる。その結果、ダイシングテープ122が、収容室15から凹部110に向かう方向に押しつけられる。このため、図10に示すように、ウェーハ100における環状凸部112の近傍において、ウェーハ100の凹部110と環状凸部112との境である角部113にも、ダイシングテープ122が押しつけられる。
【0050】
したがって、角部113にダイシングテープ122が密着するように、ウェーハ100の裏面104にダイシングテープ122が貼着される。すなわち、角部113を含むウェーハ100の裏面104の略全面に対して、実質的に隙間なく、ダイシングテープ122が貼着(密着)される。
【0051】
以上のように、本実施形態では、密封された収容室15を減圧した後、ウェーハ100の裏面104を覆っているダイシングテープ122を、ウェーハ100の環状凸部112の上面に貼着している。その後、収容室15を加圧することにより、ダイシングテープ122を、ウェーハ100の裏面104に形成されている凹部110に向かう方向に押しつけている。これにより、凹部110と環状凸部112との境である角部113を含む、ウェーハ100の裏面104の略全面に、実質的に隙間なく、ダイシングテープ122を貼着することができる。
【0052】
このように、本実施形態では、収容室15内の気圧を調整することにより、容易かつ短時間で、ダイシングテープ122をウェーハ100の裏面104の略全面に貼着することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、図11に示すように、たとえばウェーハ保持テーブル30の基台32内に、ダイシングテープ122を加熱する加熱手段90をさらに備えてもよい。この構成では、収容室15内を加圧する際に、加熱手段90によって、ウェーハ100の凹部110を覆っているダイシングテープ122を、加熱して軟化させることができる。
【0054】
これにより、ウェーハ100の裏面104の略全面に、ダイシングテープ122を、より容易に貼着することができる。なお、加熱手段90によってダイシングテープ122を加熱するタイミングは、収容室15内を加圧する前でもよいし、加圧中でもよい。また加圧後であってよい。
【0055】
また、図11に示す構成を用いる場合、ダイシングテープ122は、リングフレーム121に対応する部分のみに粘着層を備えていてもよい。そして、加熱手段90で加熱し、さらに、加圧手段としてのエア供給源55を用いて加圧することによって、ダイシングテープ122を角部113に押し付けてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、制御手段70は、エア供給源55を用いて、ウェーハ100の表面101を載置するための載置面であるウェーハ保持テーブル30のウェーハ保持部31を清掃してもよい。この場合、エア供給口53に、ウェーハ保持部31にエアを容易に噴射することを可能とするノズルが備えられてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:テープ貼着装置,10:筐体,15:収容室,
20:フレーム保持テーブル,21:フレーム保持部,22:基台,
26:第2吸引路,27:吸引源,
30:ウェーハ保持テーブル,31:ウェーハ保持部,32:基台,
36:第1吸引路,
40:下側筐体,41:下側底部,42:下側側部,
43:減圧口,44:真空バルブ,45:真空源,
13:開閉手段,47:パッキン,49:ロック部材,
50:上側筐体,51:上側底部,52:上側側部,
53:エア供給口,55:エア供給源,57:加圧バルブ,
61:ローラ,63:ローラ移動手段,
70:制御手段,90:加熱手段,
80:搬送手段,81:アーム,83:基体,85:吸引パッド,
100:ウェーハ,101:表面,104:裏面,
110:凹部,112:環状凸部,113:角部,
120:フレームユニット,121:リングフレーム,122:ダイシングテープ,
図1
図2
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図4
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図11