(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】グルコセレブロシダーゼ及びイソファゴミンを含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20240717BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240717BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240717BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K38/46
A61K9/08
A61K9/19
A61K31/445
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/26
A61P3/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2020521515
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 US2018057575
(87)【国際公開番号】W WO2019084309
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ユン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】フゥ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】メイヤッパン,ムトゥラマン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,トーマス アレン
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】齋藤 恵
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509961(JP,A)
【文献】特表2013-500976(JP,A)
【文献】Biochem. Biophys. Res. Commun. (2008) vol.369, issue 4, p.1071-1075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/
C12N 9/
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコセレブロシダーゼ(GCB)とイソファゴミン(IFG)とを1:少なくとも2.5のモル比で含み、皮下投与
用である、組成物。
【請求項2】
前記GCBがベラグルセラーゼアルファである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記GCBと前記IFGとのモル比が、1:2.5~1:30である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記GCBと前記IFGとのモル比が、1:2.5~1:10である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記GCBと前記IFGとのモル比が、1:10~1:30である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記GCBと前記IFGとのモル比が、1:2.5~1:3.5である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記GCBと前記IFGとのモル比が、1:3.0である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項8】
20℃以上、0℃~20℃、または0℃未満の温度である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
製薬上許容できる賦形剤、製薬上許容できる塩、または製薬上許容できる賦形剤および製薬上許容できる塩の両方をさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記IFGが酒石酸イソファゴミンである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記酒石酸イソファゴミンがD-酒石酸イソファゴミンである、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
酸化防止剤、炭水化物、および/または界面活性剤をさらに含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
液体である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
水溶液である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物のpHが6.0、6.5、または7.0である、請求項
13または
14に記載の組成物。
【請求項16】
45~120mg/mLのGCBと、0.2~1.8mg/mLのイソファゴミンとを含む、請求項
13~
15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
60mg/mLのGCBと、0.9mg/mLのイソファゴミンとを含む、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
50mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート20をさらに含む、請求項
16または
17に記載の組成物。
【請求項19】
5~20mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20をさらに含む、請求項
16または
17に記載の組成物。
【請求項20】
10mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20を含む、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
pHが6.0である、請求項
16~
20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
凍結乾燥物である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物
が充填された容器。
【請求項24】
前記容器が、予充填シリンジ、バイアル瓶、またはアンプルからなる群より選択される、請求項23に記載の容器。
【請求項25】
請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物の調製方法であって、IFGを水に溶解させること、pHを6.0に調節すること、およびGCBを添加して前記組成物を得ることを含む、方法。
【請求項26】
a)GCBを添加する前にIFGを凍結乾燥させること;
b)ポリソルベート20を0.01%まで添加すること;
c)前記組成物を、0.22μmの膜に通して濾過すること
の1つまたは複数をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記IFGが、前記組成物中において前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記IFGが、0~50℃で少なくとも3日間、前記組成物中において前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項29】
前記IFGが、0~40℃で少なくとも6ヶ月間、前記組成物中において前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項30】
治療で使用するための請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
対象におけるGCase
活性の欠損に起因する疾患の治療に使用するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記皮下投与が皮下注射である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
1週間に2回、1週間に1回、1週間に1回よりも少ない頻度で、または隔週に1回投与される、請求項31または32に記載の組成物。
【請求項34】
前記GCase活性の欠損が酵素活性の低下を含む、請求項
31~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記疾患がリソソーム蓄積症である、請求項31~
34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記リソソーム蓄積症がゴーシェ病、ファブリ病、ポンペ病、ムコ多糖体症、および多系統萎縮症から選択される、請求項
35に記載の組成物。
【請求項37】
前記疾患が神経変性疾患である、請求項31~
36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、およびレヴィー小体型認知症から選択される、請求項
37に記載の組成物。
【請求項39】
前記対象がヒトである、請求項31~
38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
GCase
活性の欠損に起因する疾患を治療するための組成物であって、0.5~5.0mg/kgのGCBと、前記GCBに対して少なくとも約3倍モル過剰のIFGとを含み、皮下投与
用である、組成物。
【請求項41】
0.8~4.0mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項42】
1.0~3.0mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項43】
1.2~2.0mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項44】
1.5mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項45】
2.0~5.0mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項46】
2.25~4.5mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項47】
2.25~3.75mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項48】
3.5~5.0mg/kgのGCBを含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項49】
前記IFGが、前記GCBに対して3~10倍モル過剰、10~30倍モル過剰、または30~100倍モル過剰で存在する、請求項
40~
48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記IFGが、前記GCBに対して3倍モル過剰で存在する、請求項
40~
49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
脾臓、肝臓および/または血清における前記GCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増大する、請求項31~
50のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年10月26日に出願された米国特許仮出願第62/577,429号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
グルコセレブロシダーゼ(GCB)は、(GCB)の欠乏を特徴とする常染色体劣性リソソーム蓄積症であるゴーシェ病を治療するために使用可能な、タンパク質薬剤である。
【0003】
ゴーシェ病は、GBA遺伝子での変異により引き起こされる常染色体劣性疾患であり、リソソーム酵素のβ-グルコセレブロシダーゼの欠乏をもたらす。グルコセレブロシダーゼは、スフィンゴ脂質グルコセレブロシドの、グルコース及びセラミドへの転換を触媒する。酵素の欠乏は主にマクロファージのリソソーム区画における、グルコセレブロシドの蓄積を引き起こし、泡沫細胞または「ゴーシェ細胞」が生じる。ゴーシェ病では、1つまたは複数の変異アミノ酸に応じて、様々な形態の変異GCaseのグルコシルセラミド開裂活性は少ない、ほとんどない、または全くない。この疾患の重症度は、残った酵素活性の相対的なレベル、及び、得られた基質の蓄積度合いと相関している。
【0004】
GCBは、白血球細胞及び赤血球細胞の膜内での、グリコスフィンゴリピドの分解後に形成される糖脂質グルコセレブロシドを加水分解するリソソーム酵素である。この酵素が欠乏していると、グルコセレブロシドが、ゴーシェ患者の肝臓、脾臓、及び骨髄に位置する食細胞のリソソームに、多量に蓄積する。これらの分子が蓄積することにより、脾腫、肝腫大、骨格疾患、血小板減少症、及び貧血を含む、様々な臨床症状が引き起こされる。(非特許文献1)
【0005】
ベラグルセラーゼアルファは、ゴーシェ病を治療するために使用されるGCBの一形態である。VPRIVは、ベラグルセラーゼアルファを含有する製剤である。ベラグルセラーゼアルファはグルコセレブロシドの加水分解を触媒し、蓄積するグルコセレブロシドの量を減少させる。臨床試験において、VPRIVは脾臓及び肝臓のサイズを減少させ、貧血及び血小板減少症を改善した。
【0006】
VPRIV及びベラグルセラーゼアルファ、ならびに、タンパク質を含有する他の類似の薬剤製品は、液体または凍結乾燥(即ちフリーズドライ)形態で保存される。凍結乾燥した薬剤製品は多くの場合、患者への使用の直前に、好適な投与希釈剤を添加することにより元に戻される。変性及び凝集を含む物理的不安定性、ならびに、例えば、加水分解、アミド分解、及び酸化を含む、化学的不安定性の結果として、液体または凍結乾燥形態での、ベラグルセラーゼアルファまたはGCBの量の減少が起こる可能性がある。
【0007】
GCB、VPRIV、またはベラグルセラーゼアルファの安定性が改善された、改善製剤、特に、皮下(SC)投与に好適な製剤が必要とされている。GCBは、24時間にわたり、室温にて30mg/mL未満の溶解限度を有する。SC注射製品の好都合な体積は、典型的には2.5mL以下である。このことは、治療に十分な用量を投与するために、十分に高いレベルに濃縮可能な製剤を有することが必要とされる。更に、製剤は理想的には、室温で、または冷蔵条件下にて、適切な保存安定性を有する。
【0008】
GCB、VPRIV、またはベラグルセラーゼアルファの生物学的利用能が改善したSC投与のための製剤もまた、必要とされている。静脈内(IV)投与される現在のVPRIV製剤は、約1%の血清生物学的利用能をもたらしている。皮下(SC)投与は、IV投与の組織曝露と同等の組織曝露を提供する可能性は低い。GCBは、IV投与薬剤として、15分未満の血清半減期を有する。血清安定性が改善することにより、SC投与されたGCBがより、SC区画から分散し、体循環内に入ることが可能となる。向上した血清安定性により、高循環GCB濃度の維持もまた可能になり、これにより、GCBが単球、マクロファージ、及び組織常在型組織球により一層取り込まれることが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Beutler et al.“Gaucher disease”The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease(McGraw-Hill,Inc,New York,1995,pp.2625-2639。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、グルコセレブロシダーゼ(GCB)とイソファゴミン(IFG)とを、1:1、または少なくとも、約1:>1(例えば、1:x(xは1より大きい))のモル比で含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、GCBはベラグルセラーゼアルファである。ベラグルセラーゼアルファは、ヒト細胞株で産生された、天然ヒトGCBと同じアミノ酸配列を有する、組み換え産生酵素であり、特に、本発明を実施するのに好適なGCBの形態である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは約6.0である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは約6.5である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは約7.0である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:1~約1:30である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:1~約1:10である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:2~約1:10である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:2.5~約1:10である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:2.5~約1:5である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:10~約1:30である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:30~約1:100である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:2.5~約1:3.5である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は、約1:3.0である。いくつかの実施形態では、IFGに対するGCBのモル比は1:3.0であり、これは本発明を実施するのに特に好適である。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも20℃の温度である。いくつかの実施形態では、組成物は0℃~20℃の温度である。いくつかの実施形態では、組成物は0℃未満の温度である。いくつかの実施形態では、組成物は水溶液である。いくつかの実施形態では、組成物は凍結乾燥物である。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物は、製薬上許容できる賦形剤、製薬上許容できる塩、または製薬上許容できる賦形剤及び製薬上許容できる塩の両方を更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、IFGは酒石酸イソファゴミン(IFGT)である。いくつかの実施形態では、酒石酸イソファゴミンはD-酒石酸イソファゴミンである。IFGT、そして特に、D-酒石酸イソファゴミンは、本発明を実施するためのIFGの特に好適な塩である。酒石酸イソファゴミンは血清中において、通常、2.5mg/kgの皮下投与量で達成される上限値を超えて、GCB活性を有利に増加させることができる。したがって、IFGTと同時に製剤化したGCBは、特に、少なくとも1:3.0のGCB:IFGTのモル比の際に、皮下投与を可能にする血清生物学的利用能を提供することができる。IFGT同時製剤化により、GCBの全体の酵素活性もまた増加する。いくつかの実施形態では、IFGは酒石酸イソファゴミン以外である。いくつかの実施形態では、組成物は液体である。いくつかの実施形態では、組成物は酸化防止剤を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は炭水化物を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は界面活性剤を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、45~120mg/mLのベラグルセラーゼアルファ、及び0.2~1.8mg/mLのD-酒石酸イソファゴミンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は60mg/mLのベラグルセラーゼアルファ、及び0.9mg/mLのD-酒石酸イソファゴミンを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、組成物は、クエン酸塩またはリン酸塩、及びポリソルベート20(例えば、50mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、及び0.01%のポリソルベート20)を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は5~20mMのクエン酸ナトリウム、及び0.01%のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのクエン酸ナトリウム及び0.01%のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5~20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は5~20mMのクエン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのクエン酸ナトリウム及び0.01%(w/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5~20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(w/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は5~20mMのクエン酸ナトリウム、及び0.01%(v/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのクエン酸ナトリウム及び0.01%(v/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5~20mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(v/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10mMのリン酸ナトリウム、及び0.01%(v/v)のポリソルベート-20を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は約pH6.0である。いくつかの実施形態では、組成物はpH6.0である。
【0015】
別の態様では、本明細書で記載した組成物のいずれかを含む容器を提供する。いくつかの実施形態では、容器は予充填シリンジ、バイアル瓶、またはアンプルからなる群から選択される。
【0016】
別の態様では、本明細書で記載した組成物のいずれかの調製方法を提供する。方法は、IFGを(例えば水に)溶解させることと、pHを約6.0に調節することと、GCBを添加して組成物を得ることと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、GCBを添加する前にIFGを凍結乾燥させることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、ポリソルベート20を0.01%まで添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、ポリソルベート20を0.01%(w/v)まで添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、ポリソルベート20を0.01%(v/v)まで添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、0.22μmの膜に通して組成物を濾過することを更に含む。いくつかの実施形態では、IFGは、組成物中でのGCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態では、IFGは、少なくとも3日間、0~50℃にて、組成物中でGCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態では、IFGは、少なくとも6ヶ月間、0~40℃にて、組成物中でGCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する。
【0017】
別の態様では、本明細書で記載した組成物のいずれかを投与することを含む、GCase経路での機能障害に関する疾患の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、疾患を治療するのに効果的である。いくつかの実施形態では、組成物は静脈内投与または皮下投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば皮下注射により皮下投与され、これは、本発明を実施するのに特に好適である。いくつかの実施形態では、組成物は1週間に2回、1週間に1回、1週間に1回より頻度を落として、または隔週で投与される。典型的には、本明細書で記載した組成物は注射により、1週間に1回もしくは2回、または隔週に1回のいずれかで、皮下投与される。皮下投与される、本明細書で記載した組成物(特に、IFGTとの製剤)は、比較可能なGCBのみの静脈内投与量と比較して、著しく大きい血清曝露をもたらすことができる。より大きな血清生物学的利用能は、対象に投与されることが必要とされる皮下注射の回数を、有利に減少させることができる。例えば、治療的有効量を得るための、治療当たりで投与される必要のある注射の回数が減少し、及び/または複数の皮下注射の時間間隔を延ばすことができる。
【0018】
別の態様では、本明細書で記載した組成物は治療法に使用するためのものである。一実施形態では、本明細書で記載した組成物は、本明細書で開示した、GCase経路での機能障害に関する疾患の治療方法で使用するためのものである。別の実施形態では、本明細書で記載した組成物は、例えば、本明細書で開示した方法による、GCase経路での機能障害に関する疾患を治療するための薬剤の製造で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は静脈内投与または皮下投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば皮下注射により、皮下投与される。いくつかの実施形態では、組成物は1週間に2回、1週間に1回、1週間に1回より頻度を落として、または隔週で投与される。典型的には、本明細書で記載した組成物は注射により、1週間に1回もしくは2回、または隔週に1回のいずれかで、皮下投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、疾患は、GCase活性の欠損を含む。いくつかの実施形態では、GCase活性の欠損は、酵素活性の低下を含む。いくつかの実施形態では、疾患はα-シヌクレイン調節異常を含む。いくつかの実施形態では、疾患は、リソソーム蓄積症、例えばゴーシェ病、ファブリ病、ポンペ病、ムコ多糖体症、または多系統萎縮症である。本明細書で記載した組成物は、ゴーシェ病を治療するのに特に好適である。いくつかの実施形態では、疾患は、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、またはレヴィー小体型認知症である。
【0020】
別の態様では、GCase経路での機能障害の治療を必要とする対象に、本明細書で記載した組成物のいずれかを投与することを含む、GCase経路での機能障害の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0021】
別の態様では、0.5~5.0mg/kgのGCB及びIFG(例えば、IFGはGCBに対して少なくとも約1、1.25、1.5、2、2.5、3、4、または5倍モル過剰である)を含む組成物を対象に投与することを含む、GCase経路での機能障害の治療方法を提供し、組成物は皮下投与される。別の態様では、GCase経路での機能障害の治療方法で使用するための、0.5~5.0mg/kgのGCB及びIFG(例えば、IFGはGCBに対して少なくとも約1、1.25、1.5、2、2.5、3、4、または5倍モル過剰である)を含む組成物を提供し、組成物は皮下投与される。別の態様では、GCase経路での機能障害の治療方法のための薬剤の製造における、0.5~5.0mg/kgのGCB及びIFG(例えば、IFGはGCBに対して少なくとも約1、1.25、1.5、2、2.5、3、4、または5倍モル過剰である)を含む組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、組成物中のIFGは、内因性血清GCB活性を増加させない量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は0.8~4.0mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1.0~3.0mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1.2~2.0mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は約1.5mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1.5mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は2.0~5.0mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は2.25~4.5mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は2.25~3.75mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、組成物は3.5~5.0mg/kgのGCBを含む。いくつかの実施形態では、IFGは、GCBに対して1~5、または1~10倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、IFGはGCBの2~10倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、IFGはGCBに対して10~30倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、IFGはGCBに対して30~100倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、IFGはGCBに対して2.5~3.5倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、IFGはGCBに対して3倍のモル比で存在する。いくつかの実施形態では、GCBの曝露、活性、または生物学的利用能は、例えば、IV投与された等しい量のGCBのみの曝露、活性、または生物学的利用能と比較して増加する。いくつかの実施形態では、脾臓におけるGCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する。いくつかの実施形態では、肝臓におけるGCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する。いくつかの実施形態では、血清におけるGCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】グルコセレブロシダーゼ(GCB)及びイソファゴミン(IFG)製剤を調製するためのプロセスを示すフローチャートである。
【
図2】IFGを添加した後の1日目(2A)、及びIFGを添加した2週間後(2B)における、GCB試料のSDS-PAGE試験を示す。IFGのpH調節は行わなかった。
【
図3】pH調節した酒石酸イソファゴミン(IFGT)の凍結乾燥溶液を含有するエッペンドルフチューブを示す。
【
図4】IFGを添加した同じ日(4A)、及び、3日間の保存後(4B)における、GCB試料のSDS-PAGE試験を示す。IFGはpH調節を行った。
【
図5】GCBに添加したpH調節したIFGTの、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)アッセイの結果を示す。
【
図6A】GCBに添加したpH調節IFGの、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)アッセイの結果を示す。
【
図6B】GCBに添加したpH調節IFGの、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)アッセイの結果を示す。
【
図7A】GCBへのIFG結合の表面プラズモン共鳴研究の結果を示す。
【
図7B】GCBへのIFG結合の表面プラズモン共鳴研究の結果を示す。
【
図7C】GCBへのIFG結合の表面プラズモン共鳴研究の結果を示す。
【
図7D】GCBへのIFG結合の表面プラズモン共鳴研究の結果を示す。
【
図8】GCB:IFGが1:3~1:100の範囲の異なるIFGモル比での、GCB融解温度の変化を評価する、ナノ示差走査蛍光定量(ナノ-DSF)アッセイの結果を示す。
【
図9A】IFGTでプレインキュベートしたベラグルセラーゼアルファにて実施した酵素活性反応の結果を示し、合成比色分析pNP-GPS基質による阻害曲線を示す。
【
図9B】IFGTでプレインキュベートしたベラグルセラーゼアルファにて実施した酵素活性反応の結果を示し、合成蛍光定量4MU-GPS基質による阻害曲線を示す。
【
図9C】IFGTでプレインキュベートしたベラグルセラーゼアルファにて実施した酵素活性反応の結果を示し、天然グリコスフィンゴリピドC12-GluCer基質による阻害を示す。
【
図10A】3週間40℃にて保存した、GCB/IFGT試料の外観を示す。
【
図10B】3週間保存したGCB/IFGT試料のSDS-PAGE分析を示す。群1~3(G1、G2、G3)の溶液は透明に見える。群4(G4)溶液は濁ったように見える。
【
図11】カニクイザルにおける、静脈内GCB及び皮下GCB+IFGの薬物動態学研究からのGCB免疫組織化学分析(IHC)のための、陰性及び陽性対照を示す。
【
図12】GCBの皮下注射(上パネル)、及びGCBの静脈内注射(下パネル)後の様々な時点における、肝臓内でのGCBの染色(2倍拡大)を示す。
【
図13】GCBの皮下注射(上パネル)、及びGCBの静脈内注射(下パネル)後の様々な時点における、肝臓内でのGCBの染色(20倍拡大)を示す。
【
図14】GCBの皮下注射(上パネル)、及びGCBの静脈内注射(下パネル)後の様々な時点における、脾臓内でのGCBの染色(2倍拡大)を示す。
【
図15】GCBの皮下注射(上パネル)、及びGCBの静脈内注射(下パネル)後の様々な時点における、脾臓内でのGCBの染色(20倍拡大)を示す。
【
図16A】ベラグルセラーゼアルファの投与(16A)後の、肝臓及び脾臓ホモジェネートでの、ベラグルセラーゼアルファタンパク質及び酵素活性レベルのアッセイ結果を示す。
【
図16B】1:3のモル比での、ベラグルセラーゼアルファとIFGTの投与(16B)後の、肝臓及び脾臓ホモジェネートでの、ベラグルセラーゼアルファタンパク質及び酵素活性レベルのアッセイ結果を示す。
【
図16C】IFGTとベラグルセラーゼアルファの皮下投与後の、カニクイザルにおけるGCBの血清活性レベルのアッセイ結果を示す。
【
図17】(1:3~1:100)の範囲の異なるモル比で、4mg/kgのベラグルセラーゼアルファ及びIFGを皮下投与した後の、GCBの血清生物学的利用能(17A)、及びGCB活性アッセイ(17B)の、ECL ELISAアッセイの結果を示す。
【
図18】10mg/kgのベラグルセラーゼアルファの静脈内投与後、または、1:100のモル比での、4mg/kgのベラグルセラーゼアルファ及びIFGの皮下投与後の、肝臓(18A)及び脾臓(18B)での、GCB含有量プロファイルのECL ELISAアッセイの結果を示す。
【
図19】1:3のモル比での、4mg/kgのベラグルセラーゼアルファ及びIFGの皮下投与後の、肝臓(19A)及び脾臓(19B)での、GCB含有量のECL ELISAアッセイの結果を示す。
【
図20】(1:1~1:30)の範囲の異なるモル比で、1.5mg/kgのベラグルセラーゼアルファ及びIFGを皮下投与した後の、GCBの血清生物学的利用能(20A)、及びGCB活性アッセイ(20B)の、ECL ELISAアッセイの結果を示す。
【
図21】IFGなし、3nMのIFG、10nMのIFG、30nMのIFG、100nMのIFG、300nMのIFG、及び1000nMのIFGを用いて、37℃でインキュベートしたヒト血清中のVPRIVの、活性アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
概説
グルコセレブロシダーゼ(GCB)を含む組成物は、組成物が液体のときなどに、安定性の増加の効果があり得る。GCB内で曝露を受けた3つの遊離チオール基は反応を受けることができ、例えばGCB分子の凝集により、安定性の低下がもたらされ得る。例えば、pH6の緩衝液において、1ヶ月の保存で、典型的にはタンパク質の1~2%が凝集し、6ヶ月の保存後には、約15%が凝集した。理論またはメカニズムに厳格に束縛されるものではないが、タンパク質の安定性は、多数の因子に影響を受ける。
【0024】
イソファゴミン(IFG)、例えば酒石酸イソファゴミン(IFGT)を添加することにより、特に、IFG(例えばIFGT)が、GCBへの添加前にpH6.0に調節されるときに、インビトロでのGCBの安定性が改善する。IFGは以下の構造を有する:
【化1】
【0025】
理論に束縛されるものではないが、IFGは活性部位付近のアミノ酸残基と相互作用し、GCBを、安定性の向上をもたらすコンフォーメーションで固定することができる。Shen,J.S.et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2008,369:1071-1075を参照のこと。IFGはGCBと会合して、GCBをよりコンパクトにし、一層熱安定性にするため、IFGは、GCBの凝集を防止することもまた可能である。
【0026】
GCBに対するIFGのモル比が、液体組成物中でのGCBの安定化に決定的であることを、本発明らは示している。本出願を通してより詳細に記載するように、モル比が少なくとも1:2.5(GCB:IFG)(即ち、1:x(xは少なくとも2.5である))の組成物は、実質的により少ない、GCB凝集及び分解を有し得る。実質的に1:2.5を下回るモル比を有するGCBでは、実質的により多くの凝集及び分解が生じ得る。
【0027】
GCBに対するIFG/IFGTのモル比が少なくとも1:2.5(GCB:IFG)である組成物は、皮下投与されたときに、GCB生物学的利用能、活性、組織曝露、及び全身曝露を改善したこともまた、本発明者らは示している。生物学的利用能の改善は、肝臓でのGCBの組織染色の増加、脾臓でのGCBの組織染色の増加、血清でのGCBの濃度増加、及び、血清でのGCB活性の増加の1つ以上により検出することができる。全身曝露の改善は、血清中での、GCBのタンパク質濃度、またはGCBの酵素活性を測定することによりアッセイすることができる。IFG(例えばIFGT)をGCBに、少なくとも1:2.5(GCB:IFG)のモル比で添加することにより、皮下製剤での、GCBの生物学的利用能、活性、組織曝露、または全身曝露が、静脈内製剤、特に、IFGを含まない製剤での、GCB生物学的利用能、活性、組織曝露、または全身曝露と同等になる、またはこれを上回ることができる。
【0028】
定義
用語「対象」とは、ヒト、非ヒト霊長類、霊長類、ヒヒ、チンパンジー、サル、齧歯類(例えばマウス、ラット)、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む、これらに分類される任意の動物を含むがこれらに限定されない任意の哺乳類を意味する。用語「対象」とは、用語「患者」と同じ意味で用いることができる。
【0029】
用語「単離された」とは、その自然環境を実質的に含まない分子を意味する。例えば、単離タンパク質とは、そのタンパク質が由来する細胞または組織源の、細胞材料または他のタンパク質を実質的に含まない。単離タンパク質を含む調製物は、治療用組成物として投与されるのに十分純粋である、または、少なくとも70%~80%(w/w)純粋である、より好ましくは少なくとも80%~90%(w/w)純粋である、更により好ましくは、90~95%純粋である、そして、最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、または100%(w/w)純粋である。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「約」とは、この用語により限定される値の、最大±10%を意味する。例えば、約50mMとは、50mM±5mMを意味し、約4%とは、4%±0.4%を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、語句「非経口的投与」、「非経口投与される」、及び「非経口投与する」とは、通常注射による、また、静脈内(IV)、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下(SC)、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外の及び胸骨内注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない、経腸及び局所投与以外の投与形態を意味する。
【0032】
用語「治療的有効用量」、及び「治療的有効量」とは、症状の予防をもたらす化合物の量、例えば、症状(例えば、ゴーシェ病を有すると診断された対象における、ゴーシェ病の症状)の、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の予防、症状の開始の遅延、または、ゴーシェ病の症状の回復を意味する。治療的有効量は、例えば、ゴーシェ病に関連する疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、重症度を低下させる、開始を遅延させる、及び/または、その発生リスクを低下させるのに十分である。有効量は、当該技術分野において周知の方法により、そして、本明細書の後のセクションに記載のとおりに、測定することができる。
【0033】
用語「治療」及び「治療法」とは、存在する疾患の治療、及び/または、予防的/予防用方法を意味する。治療が必要なものとしては、特定の医学疾患を既に有する個体、及び、その疾患を有するリスクにある、または、その疾患を最終的に獲得し得る個体を挙げることができる。治療の必要性は例えば、疾患の発症に関連する1つ以上の危険因子の存在、疾患の存在もしくは進行、または、その疾患を有する対象の治療の受容可能性により評価される。治療は、疾患の進行の遅延、または逆転を含むことができる。
【0034】
用語「治療すること」とは、統計的に有意な程度、または、当業者が検出可能な程度のいずれかまで、疾患(例えば、本明細書で記載する疾患)に関連する状態、症状、もしくはパラメーターを改善もしくは予防する、または、その疾患の開始、進行、もしくは悪化を予防するのに効果的な量、方法、及び/または様式で治療法を投与することを意味する。したがって、治療することは、治療的、及び/または予防的効果を達成することができる。有効量、方法、または様式は、対象に応じて変化することができ、対象に対して個別対応してよい。特定の実施形態において、GCase経路での機能障害に関する疾患(例えばゴーシェ病)の治療は、例えば、GCase経路での機能障害が治療されていない対象における、ヘモグロビン濃度の増加、血小板レベルの増加、肝体積の減少、脾体積の減少、または、骨格パラメーターの変化(例えば、骨塩濃度の増加)の1つ以上をもたらす治療である。特定の実施形態において、GCase経路での機能障害に関する疾患(例えばゴーシェ病)の治療は、例えば、GCase経路での機能障害を治療した対象における、ヘモグロビン濃度の増加、血小板レベルの増加、肝体積の減少、脾体積の減少、または、骨格パラメーターの変化(例えば、骨塩濃度の増加)、または、これらのパラメーターの1つ以上の維持の1つ以上をもたらす治療である。
【0035】
用語「組み合わせ」とは、同じ患者を治療するために、2種以上の作用物質または治療法を使用することを意味し、作用物質または治療法の使用または作用が、時間的に重複する。作用物質または治療法は、同時に(例えば、患者に投与される1つの製剤として、もしくは、同時に投与される2つの個別の製剤として)投与することができる、または、任意の順序で逐次的に投与することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「持続放出性」、「持続放出性送達」、及び「持続放出性薬剤送達」とは、薬剤の一回投与が、血液中での薬剤の有効濃度を長い間、例えば12時間以上維持することを意味する。例えば、ポリペプチドの一般的な投与経路は皮下、筋肉内、または静脈内(IV)注射である。
【0037】
用語「塩」は、遊離酸または遊離塩基の付加塩を含む。用語「製薬上許容できる塩」とは、薬剤用途での実用性をもたらす範囲内での毒性プロファイルを有する塩を意味する。製薬上許容できる塩ではない塩も依然として、高結晶性といった性質を考慮すると、合成、精製、または製剤化において有用であり得る。
【0038】
GCB、ベラグルセラーゼ、またはベラグルセラーゼアルファに関する用語「ユニット」とは、37℃にて1分当たり、1マイクロモルのp-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシドをp-ニトロフェノールに転換する、または4-メチルウンベリフェロンβ-D-グルコピラノシドを4-メチルウンベリフェロンに転換するのに必要なこれらの量を意味する。
【0039】
グルコセレブロシダーゼ
ベラグルセラーゼは、ヒト細胞株における遺伝子活性化により、例えば、選択したヒト細胞株における、内因性β-グルコセレブロシダーゼ遺伝子を活性化するプロモーターを用いる、標的組み換えにより、産生されるヒトβ-グルコセレブロシダーゼである。ベラグルセラーゼは、約63kDaの単量体糖タンパク質として分泌される。ベラグルセラーゼは、天然のヒトタンパク質と同一の配列を有する、497のアミノ酸で構成される。Zimran et al.,Blood Cells Mol.Dis.,2007,39:115-118を参照のこと。
【0040】
ベラグルセラーゼアルファのグリコシル化は、WO2013/130963により詳細に記載されているように、細胞培養中にマンノシダーゼI阻害剤であるキフネンシンを用いて、主に、グリカン当たり、6~9個のマンノース単位を有する高マンノース型グリカンを含有する分泌タンパク質を産生することにより変化することができる。
【0041】
イミグルセラーゼ(Cerezyme(登録商標))は、組み換えヒトβーグルコセレブロシダーゼの別の形態である。イミグルセラーゼは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内で組み換えにより産生される。
【0042】
タリグルセラーゼα(Elelyso(登録商標)またはUplyso(登録商標))は、植物細胞で発現する組み換えグルコセレブロシダーゼ(prGCB)である。植物組み換えグルコセレブロシダーゼは、米国特許出願公開第2009/0208477号及び同第2008/0038232号、ならびに、国際公開第2004/096978号及び同第2008/132743号に少なくとも記載されている方法により得ることができる。
【0043】
組み換えGCBのいずれかは、当該技術分野において既知の、バイオリアクター及び製造規模の合成方法を用いて産生することができる。任意数の製造スケール精製系を使用することができる。
【0044】
イソファゴミン
イソファゴミンの様々な代替形態を使用することができる。これらとしては、酒石酸イソファゴミン、イソファゴミンHCl、イソファゴミン遊離塩基、及びクエン酸イソファゴミンのいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、イソファゴミンは、イソファゴミンHCl、イソファゴミン遊離塩基、及びクエン酸イソファゴミンの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、イソファゴミンは酒石酸イソファゴミンを含む。
【0045】
イソファゴミンHClは、米国特許第5,844,102号、及び同第7,501,439号に記載されている。イソファゴミンHClは、融点が低い黄色固体である。イソファゴミン遊離塩基は、イソファゴミンHClを遊離塩基形態に転換することにより作製することができる。
【0046】
本明細書で記載した態様及び実施形態のいずれかにおいて、イソファゴミンは酒石酸イソファゴミンの形態でなくてもよい、または、GCB/IFG組成物は、酒石酸イソファゴミンを含まなくてもよい。
【0047】
酒石酸イソファゴミン
酒石酸イソファゴミン(IFGT)は、本明細書にて開示した様々な実施形態で使用可能な、特定の形態のイソファゴミン(IFG)であり、本発明を実施するのに特に好適である。IFGTは以下の式を有する:
【化2】
【0048】
IFGTは、IFGと比較して改善された特性を有し、これには、改善された合成製造性が含まれる。例えば、水及びエタノールなどの溶媒中で、IFGTを精製するのがより簡単となり得る。IFGTは、イソファゴミンの他の既知の塩形態よりも高い安定性を有する。IFGTは、工業規模での製造、例えば、1kgを超える製品の製造においてもまた、特に好適である。
【0049】
GCB及びIFGを含む組成物は場合により、本出願を通して、「GCB/IFG組成物」と呼ばれる。GCB及びIFGTを含む組成物は場合により、本出願を通して、「GCB/IFGT組成物」と呼ばれる。
【0050】
IFG/IFGTに対するGCBのモル比
様々な実施形態において、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)及びイソファゴミン(IFG)、例えば、酒石酸イソファゴミン(IFGT)を、少なくとも約1:1、1:1.5、1:2、または1:2.5(GCB:IFG)のモル比で含む。IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3.0、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4.0、1:4.1、1:4.2、1:4.3、1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9、1:5.0、1:5.1、1:5.2、1:5.3、1:5.4、1:5.5、1:5.6、1:5.7、1:5.8、1:5.9、1:6.0、1:6.1、1:6.2、1:6.3、1:6.4、1:6.5、1:6.6、1:6.7、1:6.8、1:6.9、1:7.0、1:7.1、1:7.2、1:7.3、1:7.4、1:7.5、1:7.6、1:7.7、1:7.8、1:7.9、1:8.0、1:8.1、1:8.2、1:8.3、1:8.4、1:8.5、1:8.6、1:8.7、1:8.8、1:8.9、1:9.0、1:9.1、1:9.2、1:9.3、1:9.4、1:9.5、1:9.6、1:9.7、1:9.8、1:9.9、1:10.0、1:10.1、1:10.2、1:10.3、1:10.4、1:10.5、1:10.6、1:10.7、1:10.8、1:10.9、1:11.0、1:11.1、1:11.2、1:11.3、1:11.4、1:11.5、1:11.6、1:11.7、1:11.8、1:11.9、1:12.0、1:12.1、1:12.2、1:12.3、1:12.4、1:12.5、1:12.6、1:12.7、1:12.8、1:12.9、1:13.0、1:13.1、1:13.2、1:13.3、1:13.4、1:13.5、1:13.6、1:13.7、1:13.8、1:13.9、1:14.0、1:14.1、1:14.2、1:14.3、1:14.4、1:14.5、1:14.6、1:14.7、1:14.8、1:14.9、1:15.0、1:15.1、1:15.2、1:15.3、1:15.4、1:15.5、1:15.6、1:15.7、1:15.8、1:15.9、1:16.0、1:16.1、1:16.2、1:16.3、1:16.4、1:16.5、1:16.6、1:16.7、1:16.8、1:16.9、1:17.0、1:17.1、1:17.2、1:17.3、1:17.4、1:17.5、1:17.6、1:17.7、1:17.8、1:17.9、1:18.0、1:18.1、1:18.2、1:18.3、1:18.4、1:18.5、1:18.6、1:18.7、1:18.8、1:18.9、1:19.0、1:19.1、1:19.2、1:19.3、1:19.4、1:19.5、1:19.6、1:19.7、1:19.8、1:19.9、1:20.0、1:20.1、1:20.2、1:20.3、1:20.4、1:20.5、1:20.6、1:20.7、1:20.8、1:20.9、1:21.0、1:21.1、1:21.2、1:21.3、1:21.4、1:21.5、1:21.6、1:21.7、1:21.8、1:21.9、1:22.0、1:22.1、1:22.2、1:22.3、1:22.4、1:22.5、1:22.6、1:22.7、1:22.8、1:22.9、1:23.0、1:23.1、1:23.2、1:23.3、1:23.4、1:23.5、1:23.6、1:23.7、1:23.8、1:23.9、1:23.9、1:24.0、1:24.1、1:24.2、1:24.3、1:24.4、1:24.5、1:24.6、1:24.7、1:24.8、1:24.9、1:25.0、1:25.1、1:25.2、1:25.3、1:25.4、1:25.5、1:25.6、1:25.7、1:25.8、1:25.9、1:26.0、1:26.1、1:26.2、1:26.3、1:26.4、1:26.5、1:26.6、1:26.7、1:26.8、1:26.9、1:27.0、1:27.1、1:27.2、1:27.3、1:27.4、1:27.5、1:27.6、1:27.7、1:27.8、1:27.9、1:28.0、1:28.1、1:28.2、1:28.3、1:28.4、1:28.5、1:28.6、1:28.7、1:28.8、1:28.9、1:29.0、1:29.1、1:29.2、1:29.3、1:29.4、1:29.5、1:29.6、1:29.7、1:29.8、1:29.9、または1:30.0であることができる。
【0051】
IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:2.5~1:3.5、1:2.6~1:3.4、1:2.7~1:3.5、1:2.7~1:3.4、1:2.5~1:3.3、1:2.8~1:3.5、1:2.8~1:3.3、1:2.7~1:3.2、1:2.6~1:3.1、1:2.5~1:3.0、1:2.9~1:3.3、1:2.8~1:3.2、1:2.7~1:3.1、1:2.6~1:3.0、1:2.5~1:2.9、1:3.0~1:3.4、または1:3.1~1:3.5であることができる。
【0052】
IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:7~1:33、1:8~1:32、1:9~1:33、1:7~1:31、1:9~1:31、1:8~1:30、1:7~1:29、1:10~1:32、1:11~1:33、1:7~1:29、1:10~1:30、1:9~1:29、1:8~1:28、1:7~1:27、1:11~1:31、1:12~1:32、1:13~1:33、1:11~1:29、1:10~1:28、1:9~1:27、1:8~1:26、1:7~1:25、1:12~1:30、1:13~1:31、1:14~1:32、1:15~1:33、1:13~1:29、1:12~1:28、1:11~1:27、1:10~1:26、1:9~1:25、1:8~1:24、1:7~1:23、1:14~1:30、1:15~1:31、1:16~1:32、1:17~1:33、1:14~1:28、1:13~1:27、1:12~1:26、1:11~1:25、1:10~1:24、1:9~1:23、1:8~1:22、1:7~1:21、1:15~1:29、1:16~1:30、1:17~1:31、1:18~1:32、1:19~1:33、1:15~1:27、1:14~1:26、1:13~1:25、1:12~1:24、1:11~1:23、1:10~1:22、1:9~1:21、1:8~1:20、1:7~1:19、1:16~1:28、1:17~1:29、1:18~1:30、1:19~1:31、1:20~1:32、または1:21~1:33であることができる。
【0053】
IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:16~1:26、1:15~1:25、1:14~1:24、1:13~1:23、1:12~1:22、1:11~1:31、1:10~1:30、1:9~1:29、1:8~1:28、1:7~1:27、1:17~1:27、1:18~1:28、1:19~1:29、1:20~1:30、1:21~1:31、1:22~1:32、1:23~1:33、1:17~1:25、1:14~1:24、1:13~1:23、1:12~1:22、1:11~1:21、1:10~1:20、1:9~1:19、1:18~1:26、1:19~1:27、1:20~1:28、1:21~1:29、1:22~1:30、1:23~1:31、1:18~1:24、1:17~1:23、1:16~1:22、1:15~1:21、1:14~1:20、1:13~1:19、1:12~1:18、1:11~1:17、1:19~1:25、1:20~1:26、1:21~1:27、1:22~1:28、1:23~1:29、1:24~1:30、1:19~1:23、1:17~1:21、1:15~1:19、1:13~1:17、1:11~1:15、1:9~1:13、1:7~1:11、1:21~1:25、1:23~1:27、1:25~1:29、1:27~1:31、1:29~1:33、1:20~1:23、1:18~1:21、1:16~1:19、1:14~1:17、1:12~1:15、1:10~1:13、1:8~1:11、1:22~1:25、1:24~1:27、1:26~1:29、1:28~1:31、または1:30~1:33であることができる。
【0054】
IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、1:50、1:51、1:52、1:53、1:54、1:55、1:56、1:57、1:58、1:35、1:59、1:60、1:61、1:62、1:63、1:64、1:65、1:66、1:67、1:68、1:69、1:70、1:71、1:72、1:73、1:74、1:75、1:76、1:77、1:78、1:79、1:80、1:81、1:82、1:83、1:84、1:85、1:86、1:87、1:88、1:89、1:90、1:91、1:92、1:93、1:94、1:95、1:96、1:97、1:98、1:99、または1:100であることができる。
【0055】
IFGに対するGCB、例えば、IFGTに対するGCBのモル比は、1:30~1:100、1:30~1:80、1:40~1:90、1:50~1:100、1:30~1:60、1:40~1:70、1:50~1:80、1:60~1:90、1:70~1:100、1:30~1:50、1:40~1:60、1:50~1:70、1:60~1:80、1:70~1:90、1:80~1:100、1:30~1:40、1:40~1:50、1:50~1:60、1:60~1:70、1:70~1:80、1:80~1:90、または1:90~1:100であることができる。
【0056】
本明細書で記載される他の様々な実施形態では、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)と酒石酸イソファゴミン(IFGT)とを、少なくとも約1:2.5のモル比で含む。
【0057】
本明細書で記載される他の様々な実施形態では、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)とクエン酸イソファゴミンとを、少なくとも約1.2.5のモル比で含む。
【0058】
本明細書で記載される他の様々な実施形態では、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)とイソファゴミンHClとを、少なくとも約1:2.5のモル比で含む。
【0059】
本明細書で記載される他の様々な実施形態では、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)とイソファゴミン遊離塩基とを、少なくとも約1:2.5のモル比で含む。
【0060】
本明細書で記載される他の様々な実施形態では、組成物は、グルコセレブロシダーゼ(GCB)と、IFGTを含まないイソファゴミンとを、少なくとも約1:2.5のモル比で含む。
【0061】
GCB濃度
組成物のいずれかにおけるGCBの濃度は、約0.1~約40mg/mL、約0.5~約10mg/mL、約5~約15mg/mL、約10~約20mg/mL、約15~約25mg/mL、約20~約30mg/mL、約25~約35mg/mL、約30~約40mg/mL、約2~約8mg/mL、約5~約11mg/mL、約8~約14mg/mL、約11~約17mg/mL、約14~約20mg/mL、約17~約23mg/mL、約20~約26mg/mL、約23~約29mg/mL、約26~約32mg/mL、約29~約35mg/mL、約32~約38mg/mL、約2~約5mg/mL、約5~約8mg/mL、約8~約11mg/mL、約11~約14mg/mL、約14~約17mg/mL、約17~約20mg/mL、約20~約23mg/mL、約23~約26mg/mL、約26~約29mg/mL、約29~約32mg/mL、約32~約35mg/mL、約35~約38mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL、約26mg/mL、約27mg/mL、約28mg/mL、約29mg/mL、約30mg/mL、約31mg/mL、約32mg/mL、約33mg/mL、約34mg/mL、約35mg/mL、約36mg/mL、約37mg/mL、約38mg/mL、約39mg/mL、または約40mg/mLであることができる。
【0062】
GCBの濃度は、50ユニット/mL~200ユニット/mL、70ユニット/mL~160ユニット/mL、80ユニット/mL~175ユニット/mL、90ユニット/mL~190ユニット/mL、60ユニット/mL~145ユニット/mL、50ユニット/mL~130ユニット/mL、80ユニット/mL~140ユニット/mL、70ユニット/mL~120ユニット/mL、60ユニット/mL~100ユニット/mL、50ユニット/mL~85ユニット/mL、90ユニット/mL~160ユニット/mL、100ユニット/mL~180ユニット/mL、120ユニット/mL~200ユニット/mL、90ユニット/mL~125ユニット/mL、80ユニット/mL~105ユニット/mL、70ユニット/mL~100ユニット/mL、60ユニット/mL~90ユニット/mL、50ユニット/mL~80ユニット/mL、100ユニット/mL~140ユニット/mL、115ユニット/mL~160ユニット/mL、130ユニット/mL~180ユニット/mL、145ユニット/mL~200ユニット/mL、100ユニット/mL~115ユニット/mL、90ユニット/mL~105ユニット/mL、80ユニット/mL~95ユニット/mL、70ユニット/mL~85ユニット/mL、60ユニット/mL~75ユニット/mL、50ユニット/mL~65ユニット/mL、110ユニット/mL~125ユニット/mL、120ユニット/mL~135ユニット/mL、130ユニット/mL~145ユニット/mL、140ユニット/mL~160ユニット/mL、160ユニット/mL~180ユニット/mL、180ユニット/mL~200ユニット/mL、約50ユニット/mL、約60ユニット/mL、約70ユニット/mL、約80ユニット/mL、約90ユニット/mL、約100ユニット/mL、約110ユニット/mL、約120ユニット/mL、約130ユニット/mL、約140ユニット/mL、約150ユニット/mL、約160ユニット/mL、約170ユニット/mL、約180ユニット/mL、約190ユニット/mL、約200ユニット/mL、50ユニット/mL、60ユニット/mL、70ユニット/mL、80ユニット/mL、90ユニット/mL、100ユニット/mL、110ユニット/mL、120ユニット/mL、130ユニット/mL、140ユニット/mL、150ユニット/mL、160ユニット/mL、170ユニット/mL、180ユニット/mL、190ユニット/mL、または200ユニット/mLであることができる。
【0063】
医薬組成物
医薬組成物は、「治療的有効量」の、本明細書で記載したGCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物を含むことができる。そのような有効量は、投与される組成物の効果に基づいて決定することができる。GCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物の治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに、組成物が個体における所望の応答、例えば、状態または疾患(例えばグルコセレブロシダーゼ欠乏症、例えばゴーシェ病)の少なくとも1つの症状の回復を誘発する能力などの因子によってもまた変化し得る。治療的有効量とは、治療の有益な効果が、組成物の任意の毒性または有害作用にまさる量でもある。
【0064】
GCB/IFG組成物は、IFGTを含まなくてもよい。
【0065】
本発明の医薬組成物は、その所望する投与経路と適合性があるように製剤化することができる。例えば、GCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物は非経口様式、例えば静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉注射により投与されることができる。様々な実施形態では、投与経路は静脈内である。様々な実施形態では、投与経路は皮下である。非経口適用に使用される溶液または懸濁液としては、以下の構成成分を挙げることができる:注射用水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝液、及び、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの、張度調節剤。医薬組成物のpHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基により調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または、複数投与用バイアル瓶に閉じ込めることができる。
【0066】
pH
pHは、本明細書で記載した、様々なGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物中での、GCBの安定性への影響力を有し得る。pHは、GCBのコンフォーメーション、及び/または凝集、及び/または分解、及び/または反応性に影響を与え得る。例えば、高いpHにおいて、酸素はより反応性となることができる。pHは、好ましくは7.0未満、より好ましくは約4.5~約6.5の範囲内、より好ましくは約5.0~約6.0、及びより好ましくは約5.5~約5.8、より好ましくは約5.7である。GCBを用いると、7.0を上回るpHにおいて、凝集が望ましくないレベルに達する可能性があり、4.5もしくは5.0を下回るpHにおいて、または、6.5もしくは7.0を上回るpHにおいて、分解(例えば断片化)が望ましくないレベルに達する可能性がある。
【0067】
候補となるpHは、試験用GCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物を提供し、その組成物を、候補となるpHに調節し、組成物の酸素をパージすることにより試験することができる。候補となるpHにおける、組成物中でのGCBの安定性は、例えば、所定の時間における凝集率または分解率として測定することができる。測定した安定性は、1つ以上の基準と比較することができる。例えば、好適な基準は、組成物のpHが調製されていないことを除いて、試験組成物に類似している組成物である。次に、pHを調節した組成物の安定性と、pHを調節していない組成物の安定性とを比較してよい。GCBが、比較基準組成物における安定性よりも安定している場合、GCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物はより安定し得る。この基準と比較しての、試験処理による安定性の増加により、適性を示すことができる。例えば、比較基準GCB/IFG組成物が5.5のpHを有するものの、GCB/IFG組成物が6.3のpHを有する場合にGCBの安定性が増加した場合、GCBが、pH5.5よりもpH6.3にてより安定しているため、6.3のpHにおける組成物はより適している。
【0068】
タンパク質組成物のpHを調節するために使用可能な緩衝液としては、ヒスチジン、シトレート、ホスフェート、グリシン、サクシネート、アセテート、グルタメート、トリス、タータラート、アスパルテート、マレエート、及びラクテートが挙げられる。
【0069】
GCB安定性アッセイ
タンパク質の安定性は、タンパク質凝集またはタンパク質分解を測定することにより、測定可能である。タンパク質凝集は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、非変性PAGE、または、サイズを測定する他の方法などを含む様々な方法により測定することができる。タンパク質分解は例えば、逆相HPLC、非変性PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ペプチドマッピング、または同様の方法により測定することができる。
【0070】
本明細書で使用する場合、安定性には、タンパク質構造のパラメーター(例えば、タンパク質構造の変化、例えば、タンパク質凝集もしくはタンパク質分解(例えば断片化)の最小化、もしくは防止)、及び/または、タンパク質の生物活性(例えば、基質を生成物に転換する能力)が含まれる。
【0071】
GCB安定性は例えば、タンパク質凝集、タンパク質分解、または、GCBの生物活性レベルを測定することにより、測定することができる。GCBの凝集は、サイズ排除クロマトグラフィー、非変性PAGE、及び、サイズを測定する他の方法を含む様々な方法により測定することができる。例えば、組成物は、保存(例えば、2~8℃にて、最大3、6、9、12、または24ヶ月(またはそれ以上)の期間の保存)前に組成物中に存在したタンパク質凝集の量と比較して、(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定すると、)GCBタンパク質凝集の、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%未満の増加量を有することができる。
【0072】
タンパク質分解は、逆相HPLC、非変性PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ペプチドマッピング、または同様の方法を含む様々な方法により測定することができる。例として、組成物は、保存(例えば、2~8℃にて、最大3、6、9、12、または24ヶ月(またはそれ以上)の期間の保存)前に組成物中に存在したGCB分解の量と比較して、(例えば、逆相HPLCにより測定すると、)GCB分解の、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%未満の増加量を有することができる。GCBの生物活性は例えば、インビトロまたはインビボアッセイ、例えばELISA(例えば、結合または酵素活性を測定するため)、及び他の酵素アッセイ(例えば、分光光度、蛍光定量、熱量分析、化学発光、放射分析、またはクロマトグラフアッセイ)、キナーゼアッセイなどにより測定することができる。例として、組成物は、保存(例えば、2~8℃にて、最大3、6、9、12、または24ヶ月(またはそれ以上)の期間の保存)前に組成物中に存在した生物活性の量と比較して、GCBの生物活性(例えば酵素活性、例えば、インビトロアッセイにより測定される)の、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%未満の減少を有することができる。
【0073】
酸化防止剤及び安定剤
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、酸化防止剤を更に含むことができる。1つの好適な酸化防止剤はシステインである。システインは、0.030%~0.100%、0.050%~0.080%、0.040%~0.070%、0.030%~0.060%、0.060%~0.090%、0.070%~0.100%、0.065%~0.080%、0.060%~0.075%、0.055%~0.070%、0.050%~0.065%、0.070%~0.085%、0.075%~0.090%、約0.065%、約0.070%、約0.075%、約0.080%、0.065%、0.070%、0.075%、または0.080%で存在することができる。理論に束縛されるものではないが、システインは更に、GCBを安定化させることができる。
【0074】
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、スクロースまたはトレハロースなどの炭水化物を更に含むことができる。炭水化物、例えばスクロースまたはトレハロースは、12%~19%、13%~18%、14%~17%、12%~15%、13%~16%、15%~17%、約16%、または16%で存在することができる。理論に束縛されるものではないが、スクロースまたはトレハロースは、チオール(-SH)基の有効性を低下させることにより、GCBを更に安定化させることができる。
【0075】
本明細書のGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、界面活性剤を更に含むことができる。界面活性剤は、ポリソルベート20(本発明を実施するのに特に好適である)、または、任意数のポロキサマー系化合物であることができる。
【0076】
特定の実施形態において、GCBの安定性は、予め選択された条件下にて、炭水化物(スクロースもしくはトレハロース)、酸化防止剤、または、炭水化物と酸化防止剤の両方を欠いている点が異なる組成物中での、GCBの安定性よりも、少なくとも5~80%大きい(例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%大きい)。
【0077】
GCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、容器中で保存する前に、酸素をパージしてよい。更に、容器は理想的には、酸素の侵入を防止するために、気密性である。本明細書で記載したGCB組成物、例えば、GCBを含有する液体組成物は、より長い安定性を有することができる。例えば、予め選択された条件下にて、例えば、2~8℃の温度にて、最大3、6、9、12、または24ヶ月(または、いくつかの実施形態では更に長く)、気密性容器にて保存する際、組成物中のGCBは、保存前にGCBが有していた、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、または100%の安定性を保持する。
【0078】
好適なタンパク質濃度は、0.075%のシステイン、16%のスクロースを含有する組成物を提供し、pHを5.7に調節し、GCBを候補となる濃度に調節し、組成物のO2をパージすることにより試験することができる。候補となる濃度における、所定の時間にて、例えば凝集率または分解率として測定した、GCB/IFG、例えばGCB/IFGT組成物中でのGCBの安定性を、1つ以上の基準と比較する。各濃度におけるGCBの安定性を比較する。適性は、本明細書で記載される濃度よりも、安定性において相当の、またはより良い影響を有する候補となる濃度により示すことができる。
【0079】
GCBの安定性は、本出願を通して記載される方法のいずれかにより、例えば、タンパク質凝集またはタンパク質分解を測定することにより、測定することができる。タンパク質凝集は例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、非変性PAGE、または、サイズを測定する他の方法により測定することができる。タンパク質分解は例えば、逆相HPLC、非変性PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、SEC、SEC HPLC、ペプチドマッピング、または同様の方法により測定することができる。
【0080】
界面活性剤
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、1種以上の界面活性剤を更に含む。理論に束縛されるものではないが、界面活性剤は、例えば振盪時、または輸送中にタンパク質分解を低下させることができる、気体/液体界面を提供することにより、タンパク質の安定性を増加させることができる。特定の液体組成物において、例えば、タンパク質分解を引き起こさずにタンパク質の安定性を増加させる界面活性剤を、選択してよい。例示的な界面活性剤は、ポロキサマー188またはPluronic F68である。界面活性剤は、約0.005%~約5%、例えば約0.01%~約1%、例えば、約0.025%及び約0.5%、例えば、約0.03%及び約0.25%、例えば、約0.04~約0.1%、例えば、約0.05%~約0.075%、例えば、0.05%の量で存在することができる。理想的な界面活性剤は、GCBにより変性しない、または開裂されないものである。
【0081】
例えば、候補となる界面活性剤は、2mg/mLのGCB、ある量のIFG、0.075%のシステイン、16%のスクロースを含有する組成物を提供し、次いでpHを5.7に調節し、次いで候補となる界面活性剤を添加し、組成物のO2をパージすることにより試験することができる。候補となる界面活性剤を含有するGCB/IFG組成物の安定性を、1つ以上の基準と比較して、所定の時間における凝集率または分解率として測定する。例えば、好適な基準は、界面活性剤が組成物に添加されていないことを除いて、試験条件に類似する組成物である。処理した(界面活性剤を含有する)組成物の安定性と、未処理の(界面活性剤を欠く)組成物の安定性を、「実世界」シナリオ(例えば保存及び輸送)をシミュレートする条件において、比較することができる。基準は、ポロキサマー188の代わりに別の界面活性剤を使用することを除いて、試験組成物に類似する組成物であることができる。次に、ポロキサマー188を、比較の土台としての基準とする。適性は、本明細書で記載した界面活性剤よりも、安定性において相当の、またはより良い影響を有する、候補となる界面活性剤により示すことができる。候補となる界面活性剤が好適である(例えば、基準の1つと比較して組成物の安定性を増加させる)ことが測定された場合、候補となる界面活性剤の濃度を洗練することができる。例えば、濃度を、広い範囲の値にわたって増加または低下させ、基準、及び試験されている他の濃度と比較し、どの濃度が最も大きな安定性の増加を引き起こすかを測定することができる。
【0082】
あるいは、2種以上の界面活性剤の組み合わせを、本明細書で記載した組成物にて使用する。組み合わせの適性は、界面活性剤の試験の組み合わせによるGCB/IFG組成物の安定性を、ポロキサマー188によるGCB/IFG組成物の安定性と比較することにより、上述のとおりに試験することができる。
【0083】
タンパク質の安定性は例えば、タンパク質凝集またはタンパク質分解を測定することにより測定可能である。タンパク質凝集は例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、非変性PAGE、または、サイズを測定する他の方法などにより測定することができる。タンパク質分解は例えば、逆相HPLC、非変性PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ペプチドマッピング、または同様の方法により測定することができる。
【0084】
製薬上許容できる塩
医薬組成物は、塩または製薬上許容できる塩を更に含むことができる。
【0085】
好適な、製薬上許容できる酸付加塩を、無機酸または有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が挙げられる。好適な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボキシル、及びスルホンクラスの有機酸から選択することができ、これらの例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(パモ)酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、βーヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸、シュウ酸、マロン酸、及びガラクツロン酸が挙げられる。製薬上許容されない酸付加塩の例としては例えば、過塩素酸塩及びテトラフルオロホウ酸塩が挙げられる。これらの酸付加塩の全ては、例えば、イソファゴミンまたはGCBから、それら化合物と適切な酸を反応させることにより調製することができる。
【0086】
製薬上許容できる、イソファゴミンの好適な塩基付加塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び遷移金属塩を含む金属塩、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、及び亜鉛塩などが挙げられる。製薬上許容できる塩基付加塩としては、例えばN,N’ージベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、及びプロカインなどの塩基アミンから作製した有機塩もまた挙げられる。製薬上許容されない塩基付加塩の例としては、リチウム塩及びシアン酸塩が挙げられる。これらの塩基付加塩は全て、イソファゴミンから、例えば、好適な塩基をその化合物と反応させることにより調製することができる。
【0087】
医薬担体
GCB含有医薬組成物は、1種以上の製薬上許容できる担体を含むことができる。本明細書で使用する場合、「製薬上許容できる担体」という言葉は、薬剤投与に適合性のある、ありとあらゆる溶媒、賦形剤、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗カビ剤、等張剤及び吸着遅延剤などを含むことが意図される。製剤処方は十分に確立された技術であり、例えば、Gennaro(ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)(ISBN:0683306472);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999)(ISBN:0683305727);及び、Kibbe(ed.),Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,3rd ed.(2000)(ISBN:091733096X)において更に記載されている。任意の従来の媒体または作用物質が活性化合物と非適合性である場合を除き、このような媒体を、本発明の組成物で使用することができる。補助的活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0088】
本明細書で記載した組成物は、化合物が、体から急速に消失することを防止する担体、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む、徐放性製剤を更に含むことができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明白であろう。リポソーム懸濁液(ウイルス性抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞を標的にするリポソームを含む)もまた、製薬上許容できる担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に知られている方法に従い調製することができる。
【0089】
IV投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合も、組成物は滅菌されてなければならず、容易な注射可能性が存在する程度の流体でなければならない。組成物は、製造及び保存条件下において安定していなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することにより、分散液の場合は必要な粒径を維持することにより、そして、界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌及び抗カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより微生物作用の防止を達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸着を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ヒト血清アルブミン、及びゼラチンを含めることにより、注射可能な組成物の安定性の持続をもたらすことができる。
【0090】
GCB/IFGを、上に列挙した成分の1つ、または組み合わせと共に、適切な溶媒に組み込み、必要により、続いて濾過滅菌を行うことにより、無菌注射可能な溶液を調製することができる。通常、塩基性分散媒と、上に列挙した必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことにより分散液を調製する。無菌注射可能な溶液の組成物用の滅菌粉末の場合、組成物の好ましい方法は、真空乾燥及びフリーズドライ(例えば凍結乾燥)であり、これにより、先に滅菌濾過したその溶液から、活性成分の粉末に加えて、任意の追加の所望される成分が得られる。
【0091】
活性化合物(例えば本明細書で記載したGCB組成物)は、化合物が、体から急速に消失することを防止する担体、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む、徐放性製剤と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明白であろう。材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から、商業的に入手することもまた可能である。リポソーム懸濁液(ウイルス性抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞を標的にするリポソームを含む)もまた、製薬上許容できる担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に知られている方法に従い調製することができる。
【0092】
パッケージ化及び送達
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、様々な医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、本明細書に記載される組成物を、無針皮下注射デバイス、例えば、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号を用いて投与することができる。本発明で有用な周知のインプラント及びモジュールの例としては、制御した速度にて薬剤を分配するための、埋め込み型マイクロ注入ポンプについて開示している、米国特許第4,487,603号;皮膚を通して薬剤を投与するための治療用デバイスについて開示している、同第4,486,194号;正確な注入速度にて薬剤を送達するための薬剤注入ポンプについて開示している、同第4,447,233号;連続薬剤送達のための、流れ変更可能な埋め込み型注入装置について開示している、同第4,447,224号;複数のチャンバ区画を有する浸透性ドラッグ送達系について開示している、同第4,439,196号;及び、浸透性ドラッグ送達系について開示している、同第4,475,196号が挙げられる。もちろん、多くの他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールもまた知られている。
【0093】
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、ダブルチャンバーシリンジにパッケージ化することができる。例えば、凍結乾燥形態のGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物を第1のシリンジチャンバーに配置することができ、液体が、第2のシリンジチャンバーに存在することができる(例えば、米国公開出願番号第2004-0249339号を参照のこと)。
【0094】
本明細書で記載したGCB/IFG及びGCB/IFGT組成物は、無針シリンジにパッケージ化することができる(例えば、米国特許第6,406,455号及び同第6,939,324号を参照のこと)。手短かに言えば、一例として、注射デバイスは、気体または気体源を含有するガスチャンバと、ガスチャンバから気体の放出を可能にさせるポートと、ガスチャンバからの気体の放出時に、少なくとも第1のピストンの移動を可能にさせるプランジャと、第1のピストンと、第2のピストンと、第1のチャンバ(例えば、薬剤保存及び混合に好適なチャンバ)と、中に第1のピストン、第2のピストン、及び第1のチャンバが収容されているピストンハウジングと、ガスチャンバからの気体の動力とは無関係に、第1及び第2ピストンの1つまたは両方を移動させることができる、変位部材(変位部材は、プランジャまたは個別の部材であることができる)と、第1のチャンバと連通している、無針注射に好適なオリフィスと、を備え、第1及び第2のピストンが、ピストンハウジング内で摺動可能に収容され、変位部材、気体源、及びプランジャが、ピストンの第1の位置において、第2のチャンバ、例えば流体リザーバーが、第1のピストン、ピストンハウジング、及び第2のピストンによりピストンハウジング内に画定され、変位部材が、ピストンの1つまたは両方を第2の位置に移動させることができ(ここで、第1のピストンは、流体リザーバーであることができる第2のチャンバが、薬剤保存装置及び混合チャンバであることができる第1のチャンバと連通しているような位置にある)、第2のピストンが第1のピストンの方向に移動することにより、第2のチャンバの容積を減少させ、第2のチャンバから第1のチャンバへの流体の移動を可能にし、プランジャが、ガスチャンバからの気体の放出の際に、第1のピストンを、第1のチャンバの容積を減少させて、物質がチャンバから、例えば対象へ、オリフィスを通して吐き出されるように移動させるように配置されている。
【0095】
無針シリンジは、第1の成分(例えば乾燥または液状成分)用、及び第2の成分(例えば液状成分)用の個別のモジュールを含むことができる。モジュールは2つの個別の構成部品として提供され、例えば成分を自身に投与する対象により、または別の人により(例えば、健康管理を提供する、もしくはもたらす個人により)、組み立てられることができる。合わせて、モジュールは、本明細書で記載したデバイスのピストンハウジングの全てまたは一部を形成することができる。デバイスは、成分を個別に保存または提供し、対象への投与前に組み合わせるのが望ましい場合において、任意の第1及び第2成分を提供することができる。
【0096】
治療方法
本明細書に記載するGCB/IFG及びGCB/IFGT製剤のいずれかを患者に投与することができる。本明細書に記載するGCB/IFG及びGCB/IFGT製剤は、GCase経路での機能障害に関する疾患、特にゴーシェ病の治療方法で使用するためのものである。組成物は、本明細書で記載する治療方法により、このような疾患を治療するための薬剤の製造においてもまた使用される。
【0097】
用量は、約60ユニット/kg、または60ユニット/kgであることができ、隔週で投与される。用量は、約30ユニット/kg、または30ユニット/kgであることができ、毎週投与される。あるいは、用量は、隔週で投与される30~80ユニット/kg、隔週で投与される40~70ユニット/kg、隔週で投与される50~80ユニット/kg、隔週で投与される45~65ユニット/kg、隔週で投与される40~60ユニット/kg、隔週で投与される35~55ユニット/kg、隔週で投与される30~50ユニット/kg、隔週で投与される45~65ユニット/kg、隔週で投与される50~70ユニット/kg、隔週で投与される55~75ユニット/kg、隔週で投与される60~80ユニット/kg、隔週で投与される55~65ユニット/kg、隔週で投与される45~55ユニット/kg、隔週で投与される35~45ユニット/kg、または、隔週で投与される65~75ユニット/kgの範囲であることができる。あるいは、用量は、毎週投与される15~40ユニット/kg、毎週投与される20~35ユニット/kg、毎週投与される25~40ユニット/kg、毎週投与される22.5~32.5ユニット/kg、毎週投与される20~30ユニット/kg、毎週投与される17.5~22.5ユニット/kg、毎週投与される15~25ユニット/kg、毎週投与される22.5~32.5ユニット/kg、毎週投与される25~35ユニット/kg、毎週投与される22.5~37.5ユニット/kg、毎週投与される30~40ユニット/kg、毎週投与される27.5~32.5ユニット/kg、毎週投与される22.5~27.5ユニット/kg、毎週投与される17.5~22.5ユニット/kg、または、毎週投与される32.5~37.5ユニット/kgの範囲であることができる。典型的には、用量は隔週で投与される15~60ユニット/kg、特に、隔週で投与される60ユニット/kgである。治療目標の達成及び維持に基づいて、用量調節を個人ベースで行うことができる。
【0098】
用量は、約1.5mg/kg、または1.5mg/kgであることができ、隔週で投与される。用量は約0.75mg/kg、または0.75mg/kgであることができ、毎週投与される。あるいは、用量は、隔週で投与される0.75~2.0mg/kg、隔週で投与される1.0~1.75mg/kg、隔週で投与される1.25~2.0mg/kg、隔週で投与される1.125~1.625mg/kg、隔週で投与される1.0~1.5mg/kg、隔週で投与される0.875~1.375mg/kg、隔週で投与される0.75~1.25mg/kg、隔週で投与される1.215~1.625mg/kg、隔週で投与される1.25~1.75mg/kg、隔週で投与される1.375~1.875mg/kg、隔週で投与される1.5~2.0mg/kg、隔週で投与される1.375~1.625mg/kg、隔週で投与される1.125~1.375mg/kg、隔週で投与される0.875~1.125mg/kg、または、隔週で投与される1.625~1.875mg/kgの範囲であることができる。あるいは、用量は、毎週投与される0.375~1.0mg/kg、毎週投与される0.5~0.875mg/kg、毎週投与される0.625~1.0mg/kg、毎週投与される0.5625~0.8125mg/kg、毎週投与される0.5~0.75mg/kg、毎週投与される0.4375~0.5625mg/kg、毎週投与される0.375~0.625mg/kg、毎週投与される0.5625~0.8125mg/kg、毎週投与される0.625~0.875mg/kg、毎週投与される0.5625~0.9375mg/kg、毎週投与される0.75~1.0mg/kg、毎週投与される0.6875~0.8125mg/kg、毎週投与される0.5625~0.6875mg/kg、毎週投与される0.4375~0.5625mg/kg、または、毎週投与される0.8125~0.9375mg/kgの範囲であることができる。典型的には、用量は15mg/kgであり、隔週で、特に皮下投与により投与される。治療目標の達成及び維持に基づいて、用量調節を個人ベースで行うことができる。
【0099】
本明細書に記載するGCB/IFG及びGCB/IFGT製剤のいずれかを患者に投与することができる。用量は約90~180ユニット/kgであることができ、隔週で投与される。用量は、約90ユニット/kg、または90ユニット/kgであることができ、毎週投与される。あるいは、用量は、隔週で投与される90~150ユニット/kg、隔週で投与される110~160ユニット/kg、隔週で投与される120~180ユニット/kg、隔週で投与される120~150ユニット/kg、隔週で投与される90~120ユニット/kg、隔週で投与される100~130ユニット/kg、隔週で投与される110~140ユニット/kg、隔週で投与される120~150ユニット/kg、隔週で投与される130~160ユニット/kg、隔週で投与される140~170ユニット/kg、または、隔週で投与される150~180ユニット/kgの範囲であることができる。あるいは、用量は、隔週で投与される90~110ユニット/kg、隔週で投与される100~120ユニット/kg、隔週で投与される110~130ユニット/kg、隔週で投与される120~140ユニット/kg、隔週で投与される130~150ユニット/kg、隔週で投与される140~160ユニット/kg、隔週で投与される150~170ユニット/kg、または、隔週で投与される160~180ユニット/kgの範囲であることができる。
【0100】
用量は、約2.25~4.5mg/kgであることができ、隔週で投与される。あるいは、用量は、隔週で投与される2.25~3.75mg/kg、隔週で投与される2.75~4.0mg/kg、隔週で投与される3.0~4.5mg/kg、隔週で投与される3.0~3.75mg/kg、隔週で投与される2.25~3.0mg/kg、隔週で投与される2.5~3.25mg/kg、隔週で投与される2.75~3.5mg/kg、隔週で投与される3.0~3.75mg/kg、隔週で投与される3.25~4.0mg/kg、隔週で投与される3.5~4.25mg/kg、または、隔週で投与される3.75~4.5mg/kgの範囲であることができる。あるいは、用量は、隔週で投与される2.25~2.75mg/kg、隔週で投与される2.5~3.0mg/kg、隔週で投与される2.75~3.25mg/kg、隔週で投与される3.0~3.5mg/kg、隔週で投与される3.25~3.75mg/kg、隔週で投与される3.5~4.0mg/kg、隔週で投与される3.75~4.25mg/kg、または、隔週で投与される4.0~4.5mg/kgの範囲であることができる。
【0101】
GCB/IFG及びGCB/IFGT組成物の投与を行い、GCase経路における機能障害に関連する疾患、例えばリソソーム蓄積症を治療することができる。例示的なリソソーム蓄積症としては、ゴーシェ病、ファブリ病、ポンペ病、ムコ多糖体症、及び多系統萎縮症が挙げられる。本明細書で記載した組成物は、ゴーシェ病を治療するのに特に好適である。疾患は、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、またはレヴィー小体型認知症であることができる。あるいは、疾患はα-シヌクレインの調節異常を伴ってよい。
【0102】
疾患の治療において、GCB/IFG及びGCB/IFGT組成物を静脈内投与または皮下投与することができる。皮下投与としては皮下注射が挙げられ、これが、本発明を実施するのに特に好適である。様々な投与スケジュールを使用して、組成物を投与することができる。例えば、組成物は週に1回、2週に1回、または1ヶ月に1回投与することができる。組成物は例えば、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、15日に1回、または16日に1回投与することができる。様々な因子により、治療の過程全体を通して投与頻度を変更してよい。典型的には、本明細書で記載した組成物は注射により、1週間に1回もしくは2回、または隔週に1回のいずれかで、皮下投与される。
【0103】
本明細書で記載した組成物が皮下投与により記載される場合、投与中の患者の不快感を最小限にするように注意が払われなければならない。したがって、典型的には、注射1回当たりで患者に投与される全体積は、5mLを超えない。より典型的には、皮下投与される体積は、注射毎で2.5mL未満である。治療的有効量を達成するために複数回の皮下注射が必要とされる場合、これらは異なる部位に投与されることができる。あるいは、治療間隔を減らすことができる。治療目標の達成及び維持に基づいて、用量調節を個人ベースで行うことができる。
【実施例】
【0104】
本発明は、以下の実施例によってもまた記載及び実証される。しかし、明細書のいかなる場所においても、これらの、及び他の実施例の使用は例示のためだけのものであり、本発明の、またはあらゆる例示形態の範囲及び意味を少しも制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で記載された任意の特定の好ましい実施形態に限定されるものではない。実際、本発明の多くの修正及び変形が、本明細書を読むと当業者には明らかとなり得、このような変形は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく実施することができる。それ故、本発明は、これらの特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全ての範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されなければならない。
【0105】
実施例1:GCBの濃度
GCB(10mg/mLで5mL)を、-80℃で保存した後解凍した。次に、GCBを3800rpm、4℃にて30分間、遠心濾過し、濃縮した。次に、GCBを50倍に希釈し、A280で濃度を測定した。濃度が100mg/mLのGCBを得た。次に、1%のポリソルベート20を添加して、0.1%の終濃度にした。溶液のいくつかには、20mgのpH調節イソファゴミンを添加した。
【0106】
0.22umの膜に通して濾過を行った。具体的なプロセスを
図1に示す。
【0107】
実施例2:pH未調節のIFGを添加すると、GCBが不安定化する
以下に示すように、SDS-PAGEを用いて、様々なGCB試料を分析した。37℃で15分間、試料を変性した。8~16%のNovex(商標)トリス-グリシンプレキャストゲルで、SDS-PAGEを行った。50mMのジチオトレイトールを還元剤として使用した。試料のいくつかに、pH未調節のイソファゴミンを添加した。初日の結果を
図2Aに示す:
レーン1:分子量マーカー
レーン2:0.5%アッセイ対照(60ngのGCB)
レーン3:1%アッセイ対照(120ngのGCB)
レーン4:12μgのGCB参照、還元
レーン5:12μgのGCB(4℃)、1日目、非還元
レーン6:12μgのGCB(4℃)、1日目、還元
レーン7:12μgのGCB(4℃)、1日目、12μgのイソファゴミン含有、非還元
レーン8:12μgのGCB(4℃)、1日目、12μgのイソファゴミン含有、還元
レーン9:12μgのGCB(-80℃)、1日目、非還元
レーン10:12μgのGCB(-80℃)、1日目、還元
レーン11:12μgのGCB(-80℃)、1日目、12μgのイソファゴミン含有、非還元
レーン12:12μgのGCB(-80℃)、1日目、12μgのイソファゴミン含有、還元
【0108】
2週間後の結果を
図2Bに示す:
レーン1:分子量マーカー
レーン2:0.5%アッセイ対照(60ngのGCB)
レーン3:1%アッセイ対照(120ngのGCB)
レーン4:12μgのGCB参照、還元
レーン5:12μgのGCB(4℃)、2週目、非還元
レーン6:12μgのGCB(4℃)、2週目、還元
レーン7:12μgのGCB(4℃)、2週目、12μgのイソファゴミン含有、非還元
レーン8:12μgのGCB(4℃)、2週目、12μgのイソファゴミン含有、還元
レーン9:12μgのGCB(-80℃)、2週目、非還元
レーン10:12μgのGCB(-80℃)、2週目、還元
レーン11:12μgのGCB(-80℃)、2週目、12μgのイソファゴミン含有、非還元
レーン12:12μgのGCB(-80℃)、2週目、12μgのイソファゴミン含有、還元
【0109】
約0.5%の総タンパク質を含み得る、レーン4~12における、150kDa~200kDaのかすかなバンドにより示されるように、濃縮手順自体が、GCBのシステイン関連オリゴマー化を誘発した可能性がある。
図2Aのレーン7及び8における、50kDa未満のサイズでのいくつかのかすかなバンドにより示されるように、イソファゴミンを-80℃でGCBに添加したときよりも、イソファゴミンを4℃でGCBに添加したときに、実質的により多くのGCBの断片が確認された。かすかなバンドの出現は、酸性イソファゴミンによるGCBの不安定化によるものであり得る。
【0110】
イソファゴミンを添加することにより、4℃ではGCBの断片が得られたが、-80℃では得られなかった。
図2A及び2Bのレーン5~8を参照のこと。
【0111】
実施例3:IFGTのpH調節、及びそれに続く凍結乾燥
IFGTが水に溶解すると、酸性溶液が得られる。特に、103mgの酒石酸イソファゴミンを5mLの水に溶解させると、溶液のpHは3.25となる。15μLの10M 水酸化ナトリウムを溶液に添加することにより、pHを6.0に調節した。
【0112】
pH調節IFGT溶液の500μLアリコートを、2mLのエッペンドルフチューブに添加した。ドライアイス上で、エッペンドルフチューブ含有溶液を1時間冷凍し、針で穴を開けたパラフィルムを被せ、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥物を含むエッペンドルフチューブを
図3に示す。
【0113】
実施例4:pH調節IFGへの、GCBの添加
pHを6.0に調節したIFGTにGCBを添加する前に、GCB溶液のpHもまた、クエン酸ナトリウムにより6.0に調節した。特に、50mM クエン酸ナトリウム中の100mg/mL GCBは、pHが6.0の溶液をもたらす。100mM/mLのIFGT(pH6.0にて)を、50mM クエン酸ナトリウム中の100mg/mLのGCBに添加したとき、pHは6.0であった。
【0114】
実施例5:pH調節IFGの添加は、GCBを不安定化させない
以下に示すように、SDS-PAGEを使用して、pH調節したイソファゴミンに添加したGCBを含む、調製した様々なGCB試料を、同じ日(0日目)、及び3日間の保存後(3日目)に分析した。37℃で15分間、試料を変性した。8~16%のNovex(商標)トリス-グリシンプレキャストゲルで、SDS-PAGEを行った。50mMのジチオトレイトールを還元剤として使用した。試料のいくつかを、pH未調節のイソファゴミンに添加した。
レーン1:分子量マーカー
レーン2:0.5%アッセイ対照(60ngのGCB)
レーン3:1%アッセイ対照(120ngのGCB)
レーン4:12μgのGCB参照、非還元
レーン5:100mg/mL濃度からの12μgのGCB、非還元
レーン6:100mg/mL濃度からの12μgのGCB、還元
レーン7:100mg/mL濃度からの12μgのGCB、12μgのpH調節イソファゴミン含有、非還元
レーン8:100mg/mL濃度からの12μgのGCB、12μgのpH調節イソファゴミン含有、還元
【0115】
3日目に、試料にSEC HPLCを実施し、安定性を確認した。パラメーターには、移動相として、400mM 塩化ナトリウムを添加したGibco DPBS、0.8mL/分の流速、SECカラムとしての、Sepax Zenix-C SEC-150(3μm、150A、7.8×300mm)、及び25℃のカラム温度を含んだ。
【0116】
0日目の結果を
図4Aに、3日目の結果を
図4Bに示す。GCBバンドはレーン4~8に確認された。50kDa未満のサイズを有する、より小さなバンドは、0日目でも3日目でも観察されなかった。イソファゴミンのpHを、GCBのpHに類似する6.0に調節することにより、GCBの不安定化を最小限にすることができる。
【0117】
実施例6:pH調節IFGTにおける、GCB安定性の分析
GCBを100mg/mLに濃縮した。100mg/mLの酒石酸イソファゴミン(IFGT)のpHを6.0に調節した。次に、IFGTをGCBと混合した。IFGTのpH調節を行わなかった場合、GCB/IFGは安定せず、タンパク質クリッピングがSDS-PAGEにより観察された。
【0118】
pH調節を行った場合、溶液中のGCBは、SECにより測定すると、少なくとも3日間安定した。移動相は、400mM 塩化ナトリウムを添加したGibco DPBSであり、流速は0.8mL/分であり、SECカラムはSepax Zenic-C SEC-150(3μm、150A、7.8×300mm)であった。カラム温度は25℃であった。
図5に示すように、4つの試料をSECにより分析した。DS緩衝液中のGCB、98.8%純度のGCB参照、及び98.7%純度のGCBを、基準として実施した。3日間保存した、中和イソファゴミンを有するGCB(pHを6.0に調節)もまたSECで分析すると、安定していたようであった。
【0119】
実施例7:pH調節IFGの、GCB安定性のサイズ排除クロマトグラフィー分析
下表1に記載する、少なくとも以下の試料にて、SEC分離アッセイを実施した:
【表1】
【0120】
以下のパラメーターをSECに使用した:400mM 塩化ナトリウムを添加したGibco DPBSを移動相として使用した。流速は0.8mL/分であった。SECカラムはSepax Zenix-C SEC-150(3μm、150A、7.8×300mm)であった。カラム温度は25℃であった。
【0121】
結果を
図6A及び6Bに示す。SDS-PAGEで観察したペプチド断片は、約10分30秒~10分45秒にて溶出するピークに現れる。イソファゴミン及びGCBの両方を含む、-80℃の試料は、4℃の試料、または更に、-80℃のGCB試料のいずれかよりもペプチド断片と関連するピークが少ない。
【0122】
実施例8:GCB及びIFG濃度の、粘度への影響
(a)GCB、及び、(b)イソファゴミンと混合したGCB(GCB/IFG)の様々な製剤を調製した。GCB製剤は、10mg/mLのGCB、25mg/mLのGCB、50mg/mLのGCB、75mg/mLのGCB、及び100mg/mLのGCBを含んだ。GCB/IFG製剤は、5mg/mLの酒石酸IFGを含む10mg/mLのGCB、12.5mg/mLの酒石酸IFGを含む25mg/mLのGCB、25mg/mLの酒石酸IFGを含む50mg/mLのGCB、37.5mg/mLの酒石酸IFGを含む75mg/mLのGCB、及び、50mg/mLの酒石酸IFGを含む100mg/mLのGCBを含んだ。各製剤の粘度及び剪断速度を、粘度計(RheoSense,San Ramon,CA,USA製のm-VROC)で測定した。各測定のために、サイズが約200μLの試料が必要である。Slope Fit R2乗が>0.98である粘度結果を報告する。下表に結果を示す:
【表2】
【表3】
【0123】
粘度は、GCBの濃度と相関している。100mg/mLのGCB及び50mg/mLの酒石酸IFGによる製剤は約5cPの粘度を有し、皮下注射に許容される。
【0124】
実施例9:Biacoreにより測定した、pH7.4及びpH5.0における、GCBへのIFGの結合
実験を行い、表面プラズモン共鳴(SPR)により、pH7.4及び5.0における、GCB及びイソファゴミンの結合親和性、及び動態を同定した。これらのpHは、例えば、異なるpH値を有する血漿、細胞質、及びリソソーム区画などの異なる環境において、GCB及びイソファゴミンが互いにどのように結合するかを示し得る。
【0125】
全てのSPR実験は、シングルサイクルカイネティクス法により、Biacore S-200で実施した。pH7.4における実験のために、2mg/mLのGCBを、酢酸GE(pH5.0)緩衝液に希釈し、終濃度を100μg/mLにした。固定ランニング緩衝液は、10mM HEPES、5mM EDTA、0.01%のP-20(pH7.4)であった。この緩衝液はその後、結合アッセイにて直接使用した。
【0126】
pH5.0における実験のために、2mg/mLのGCBを、酢酸GE(pH5.0)緩衝液に希釈し、終濃度を100μg/mLにした。固定ランニング緩衝液は、20mMのリン酸ナトリウム、2.7mMの塩化カリウム、137mMの塩化ナトリウム、5mMの酒石酸塩、0.01%のP-20(pH5.0)であった。酒石酸塩をランニング緩衝液に添加し、酒石酸イソファゴミンにより取り入れられた溶質効果を取り除いた。通常のイミンカップリング手順を用いて、CM5チップにGCBを固定した。目標の固定レベルは4000RUであった。
【0127】
pH7.4でのBiacore実験に関して、濃度範囲は0.39~100nMであった。合計は、2倍連続希釈で9ポイントであった。pH5.0でのBiacore実験に関して、濃度範囲は0.39~100nMであった。合計は、2倍連続希釈で9ポイントであった。
【0128】
結合アッセイの条件は、以下のとおりであった:30μL/分の流速、120秒の会合時間、600秒の解離時間、及び、再生試薬としての3Mの塩化マグネシウム。初期濃度範囲が0.3μm~100μMのイソファゴミンを、表面再生することなく、シングルサイクルモードで固定したベラグルセラーゼアルファに流した。
【0129】
pH5.0及びpH7.4研究のそれぞれに関して、2回の操作を行った。得られたデータを下表、及び
図7A~7Dに示す。黒線は実際のデータを表し、赤線はモデルフィッティングを表す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0130】
pH5.0における、GCB/IFG結合のKDは198~251nMである。pH7.4における、GCB/IFG結合のKDは6.4~9.4nMである。
【0131】
実施例10:イソファゴミンは、ベラグルセラーゼアルファの融解温度を増加させる
ベラグルセラーゼのみ、または、異なる比率でのイソファゴミンの組み合わせの熱安定性を、ナノ示差走査蛍光定量法(nano-DSF)を用いて評価した(
図8)。40mg/mLのベラグルセラーゼアルファ濃度における示したイソファゴミンのモル比にて、まず試料を調製した。nano-DSF装置にロードする前に、試料を2mg/mLのベラグルセラーゼアルファ濃度まで希釈した。
図8に列挙する試料条件は、以下のとおりである:
対照:D-酒石酸イソファゴミン(IFGT)なし
試料1:100倍のモル比のIFGT
試料2:30倍のモル比のIFGT
試料3:10倍のモル比のIFGT
試料4:3倍のモル比のIFGT
試料5:IFGTなし
試料7:100倍のモル比の塩酸イソファゴミン
試料8:100倍のモル比の酢酸イソファゴミン
【0132】
ベラグルセラーゼアルファへのイソファゴミンの結合もまた、GCB酵素活性アッセイで測定した。酵素反応を、37℃で1時間行った。酒石酸イソファゴミンをベラグルセラーゼアルファで、約10分間プレインキュベートした。
【0133】
酒石酸イソファゴミンのアッセイ濃度は、
図9A~9Cに示すグラフに表示されるとおりである。ベラグルセラーゼアルファの最終アッセイ濃度は、pH5.0において約1nM、及びpH7.4において約10nMであった。
図9Aは、合成比色分析pNP-GPS基質による活性阻害曲線を示す。
図9Bは、合成蛍光定量4MU-GPS基質による活性阻害曲線を示す。
図9Cは、天然グリコスフィンゴリピドC12-GluCer基質による活性阻害を示す。C12-GluCer開裂反応は、グルコースオキシダーゼアッセイキットでグルコース産生を測定することによりアッセイした。
【0134】
実施例11:3週間の安定性研究
4種類の異なる、GCBとD-酒石酸イソファゴミンの混合物を、下表8に示すように調製した。
【表8】
【0135】
最初の時点、及び、40℃で3週間保存した後で、SEC、rpHPLC、及びSDS-PAGEのそれぞれで測定した比活性及び純度をアッセイした。SECは、可溶性の高分子量種を検出できる一方で、rpHPLCは、酸化への耐性などの、GCBの化学的安定性についての情報を提供する。SDS-PAGEは、タンパク質のクリッピング及び凝集を検出することができる。比活性に関して、参照基準の活性は、16μmol/分/mg(0日目)、及び18μmol/分/mg(3週目)であった。蛍光ベースの活性アッセイにより、日ごとで著しい変化が観察された。全ての安定性試料は、参照基準の活性よりもわずかに高い活性を有していた。
【0136】
目視検査もまた実施した。試料の画像を
図10Aに示す。データを下表に示す。
図1に示すSDS-PAGE結果において、以下のレーンが上の試料に対応する。
レーン1:分子量マーカー
レーン2:12μgのGCB参照、非還元
レーン3:12μgのGCB群1、非還元
レーン4:12μgのGCB群2、非還元
レーン5:12μgのGCB群3、非還元
レーン6:12μgのGCB群4、非還元
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0137】
IFGに対するGCBのモル比が1:1では、40℃にて3週間にわたり安定性を付与するには小さすぎた。SDS-PAGEアッセイで凝集が見られ、3週間にて溶液が混濁した。しかし、IFGに対するGCBのモル比が1:3以上だと、3週間で、SDS-PAGEでの純度は少なくとも98%であり、溶液は透明であった。
【0138】
実施例12:カニクイザルにおける、静脈内GCB及び皮下GCB+IFGの、薬物動態研究
2群のカニクイザルを、GCBの薬物動態について試験した。群1では、GCBは静脈内注射で1回投与した。群2では、GCBとIFGの製剤を、皮下注射で1回投与した。肝臓及び脾臓からの3つの試料を、投与後1時間、2時間、8時間、及び24時間のそれぞれにて収集した。研究設計の更なる詳細を、下表13に示す。
【表13】
【0139】
投与後1、2、8、及び24時間にて、肝臓及び脾臓で収集を行った(n=3)。
【0140】
次に、組織学的分析を全ての試料で行った。10%NBFで固定した肝臓及び脾臓を、パラフィンブロックのために処理した。GCB IHC(一次抗体TK36-マウス抗huGCB、1:10,000)、ならびにヘマトキシリン及びエオシン染色のために、5マイクロメートルの断片を準備した。
【0141】
図11は、肝臓及び脾臓における、サル組織へのGCB IHC染色のための陰性及び陽性対照を示す。GCB IHC抗体が不存在下にて、無視できる染色が確認された(上パネル)。GCB IHC抗体の存在下にて、未処理肝臓でかすかな背景染色が確認された(左下パネル)。GCB IHC抗体の存在下にて、処理済み肝臓及び脾臓にて、暗い染色が確認された(下の中、及び右下パネル)。特に、肝臓は、クッパー細胞、内皮、及び肝細胞にてGCB陽性染色を示し、脾臓は、内皮及びマクロファージ陽性染色を示した。
【0142】
肝臓でのGCBの生体内分布を、静脈内注射によるGCBの送達後、及び、皮下注射によるGCB+IFGの送達後に研究した。皮下注射で処理したサルの肝臓では、8時間の時点で強力なGCBが確認された。静脈内注射により処理したサルの肝臓内で、1時間及び2時間の時点にて、強力なGCB染色が確認された。結果を
図12(2倍倍率)に示す、及び
図13(20倍倍率)で示す。
【0143】
図14(2倍倍率)及び
図15(20倍倍率)で示すように、脾臓でも同様の結果が確認された。GCB+IFGを皮下投与することにより、GCBのIV投与におけるものに相当するGCB組織曝露を提供することができることを、これらのデータは示唆している。
【0144】
実施例13:肝臓及び脾臓での、ベラグルセラーゼアルファ活性とタンパク質レベルの相関
カニクイザルでのIV用量投与の後、肝臓及び脾臓ホモジェネートにて、ベラグルセラーゼアルファタンパク質及び酵素活性レベルを評価した。投与後の所定の時点(0.5~24時間)にて、組織を収集した。
図16A及び16Bにデータを示す。具体的には、
図16Aは、2~10mg/kgの範囲にわたって、ベラグルセラーゼアルファのみをIV投与した結果を示す。
図16Bは、イソファゴミンに対するベラグルセラーゼアルファのモル比が1:3となるように、相当量のイソファゴミン(0.0075~5mg/kg)で製剤化した、1.5~10mg/kgの範囲でベラグルセラーゼアルファをSC投与した結果を示す。
【0145】
実施例14:酒石酸イソファゴミンの皮下投与後での、カニクイザルでの血清GCB活性レベル
ベラグルセラーゼアルファ+酒石酸イソファゴミンを皮下(SC)投与した後、カニクイザルにて、GCBの血清活性レベルをアッセイした。
図16Cにデータを示す。ビヒクル、ならびに4~14ng/mLまたは0.07~0.25nmol 4MU/分/mLの範囲のGCBで処理した投与前動物(n=39)から、内因性GCB血清活性を測定した。通常は2.5mg/kgのSC投与の上限を超えて、酒石酸イソファゴミンは血清中でGCB活性を増加させることができる。血清活性のこの増加は、血清で連続して生じる、内在性GCB分解プロセスの防止によるものである可能性がある。より多い0.025mg/kgの用量のデータに基づくと、Vela-3xIFGTに組み込まれた酒石酸イソファゴミンの用量(0.0225mg/kg)は、内因性血清GCB活性を増加させない。
【0146】
実施例15:IFGは、ベラグルセラーゼアルファSC血清曝露において、25倍を超える向上をもたらす
4mg/kgの用量で、カニクイザルに皮下投与したベラグルセラーゼアルファ及びIFG(1:3のモル比)は、4mg/kgのIV投与のベラグルセラーゼアルファと比較して、血清曝露において25倍を超える改善をもたらすことができた。ベラグルセラーゼアルファに対して、3倍~100倍モル過剰のIFGの比率により、血清曝露の同様の増加が促進された。ECL ELISAアッセイから測定した血清生物学的利用能の増加は、GCB活性アッセイ(4MU-GPS基質)により実証された。結果を
図17A及び17Bに示す。4mg/kgのGCBに0.07mg/kgのIFGTを添加することにより、血清でのGCBの量(16A)、及び、GCBの全体の酵素活性(16B)の量が実質的に増加した。それ故、GCBをIFG、例えばIFGT、特に少なくとも1:3(GCB:IFG、例えばGCB:IFGT)のモル比で共に製剤化すると、SC投与を可能にする血清生物学的利用能が提供可能であることをデータは示す。
【0147】
実施例16:VPRIVのみの静脈内投与と比較しての、皮下VPRIVとIFGが1:100のモル比率の場合の、優れた組織生体内分布
4mg/kgの用量で、カニクイザルに皮下投与したベラグルセラーゼアルファ及びIFG(1:100のモル比)は、ベラグルセラーゼアルファの組織取り込みを付与することが可能であり、これはベラグルセラーゼアルファのみを10mg/kg IV投与した場合の組織取り込みを上回った。VPRIVの標準治療でのIV注入用量は、1.5mg/kgである。いくつかの実施形態では、約1.5mg/kgの目標皮下用量を使用してよい。約250mgの組織を、1mLのHEPES/Triton X-100細胞溶解緩衝液中で均質化した。ECL ELISAアッセイを使用して組織のベラグルセラーゼアルファの含有量を測定し、BCAアッセイにより測定した総タンパク質含有量に正規化した。結果を
図18A及び18Bに示す。GCB:IFGを1:100のモル比で皮下投与した後の、肝臓(18A)及び脾臓(18B)に存在するGCBの曝露プロファイルは、5日間(120時間)にわたってGCBを静脈内投与した際の曝露プロファイルより優れていた。
【0148】
実施例17:VPRIVのみを静脈内投与した場合に対する、皮下VPRIVとIFGが1:3のモル比における、組織生体内分布の比較可能性
目標の1.5mg/kgの臨床用量で、カニクイザルに皮下投与したベラグルセラーゼアルファ及びIFG(1:3のモル比)は、ベラグルセラーゼアルファのみを2mg/kg IV投与した場合の組織取り込みに相当する、ベラグルセラーゼアルファの組織取り込みを付与することができた。VPRIVの標準治療でのIV注入用量は、1.5mg/kgである。約250mgの組織を、1mLのHEPES/Triton X-100細胞溶解緩衝液中で均質化した。ECL ELISAアッセイを使用して組織のベラグルセラーゼアルファの含有量を測定し、BCAアッセイにより測定した総タンパク質含有量に正規化した。結果を
図19A及び19Bに示す。GCB:IFGを1:3のモル比で皮下投与した後に、肝臓に存在するGCBの量は、8時間及び24時間の両方の時点における、GCBの静脈内投与の場合の量に相当した。同様に、GCB:IFGを1:3のモル比で皮下投与した後の、脾臓におけるGCB組織曝露は、8時間及び24時間の両方の時点における、GCBの静脈内投与の場合の量に相当した。
【0149】
同様に、GCB:IFGを1:3のモル比で皮下投与した後の、脾臓におけるGCB組織曝露は、8時間及び24時間の両方の時点における、GCBの静脈内投与の場合の量に相当した。したがって、IFG、例えばIFGTをGCB製剤に添加することで、GCB含有製剤の皮下投与が可能となる。
【0150】
実施例18:最低1:1のイソファゴミン比率により、それより高いイソファゴミンのモル比と同様の血清曝露がもたらされる
1.5mg/kgの用量で、カニクイザルに皮下投与したベラグルセラーゼアルファ及びIFG(1:1のモル比)は、より高いイソファゴミン比率と同様のGCB血清曝露をもたらすことができた。1:1~1:100のモル比では、GCB血清曝露において明らかな差は観察されなかった。ECL ELISAアッセイから測定した血清生物学的利用能の増加は、GCB活性アッセイ(4MU-GPS基質)により実証された。結果を
図20A及び20Bに示す。
【0151】
投与のための試験物品を、投与前に動物設備への冷凍製剤として準備した。試験物品は、投与の約1~3時間前に解凍した。それ故、冷温保存(例えば凍結)により室温保存の責任を回避することができる場合、GCBをIFG、例えばIFGTと、特に少なくとも1:1(GCB:IFG、例えばGCB:IFGT)のモル比率で共に製剤化したときに、SC投与を可能にする、十分な血清生物学的利用能を提供することができることをデータは示す。
【0152】
実施例19:イソファゴミンは、ヒト血清において、37℃での熱変性からVPRIVを保護する
10nM VPRIV(ある形態のGCB)を含有する血清を試験し、IFGがGCBを安定化させられるか否かを測定した。IFGが血清中で、以下のIFG濃度:1nM、3nM、10nM、30nM、100nM、300nM,及び1000nMを有するように、IFGをVPRIVに添加した。陰性対照にはIFGを添加せずに使用した。
【0153】
4-メチルウンベリフェロン b-D-グルコピラノシド基質の開裂を用いて、酵素活性を測定した。陰性対照、1nM IFG、及び10nM IFGにおいて、活性は60分間で100%から約40%まで下がった。
図21を参照のこと。しかし、30nM(3倍のモル比)以上の濃度を添加することで、活性喪失の大部分が防止された。IFGは、血清中での熱変性からGCBを保護するのに効果的であり得る。IFG及びIFGTが媒介して、熱変性からGCBを保護することにより、GCBの生物学的利用能を向上させ、血清中でのGCB耐性を向上させ、かつ、GCBの細胞及び組織取り込みプロセスが生じる時間を長くすることができる可能性がある。
【0154】
本発明は、本明細書において記載される特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本明細書において記載されるものに加えての本発明の様々な修正は、先の記載及び添付の図から当業者らに明白になるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。全ての値はおよそのものであり、説明のために提供されていることが更に理解されなければならない。
【0155】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含め、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
グルコセレブロシダーゼ(GCB)とイソファゴミン(IFG)を、少なくとも約1:2.5のモル比で含む、組成物。
[実施態様2]
前記GCBがベラグルセラーゼアルファである、実施態様1に記載の組成物。
[実施態様3]
前記組成物のpHが約6.0、約6.5、または約7.0である、実施態様1または2に記載の組成物。
[実施態様4]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、約1:2.5~約1:30である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様5]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、約1:2.5~約1:10である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様6]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、約1:10~約1:30である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様7]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、約1:2.5~約1:3.5である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様8]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、約1:3.0である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様9]
前記IFGに対する前記GCBの前記モル比が、1:3.0である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[実施態様10]
前記組成物が少なくとも20℃の温度である、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
[実施態様11]
前記組成物が0℃~20℃の温度である、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
[実施態様12]
前記組成物が0℃未満の温度である、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
[実施態様13]
前記組成物が水溶液である、実施態様8~12のいずれかに記載の組成物。
[実施態様14]
前記組成物が凍結乾燥物である、実施態様1~9、および12のいずれかに記載の組成物。
[実施態様15]
製薬上許容できる賦形剤、製薬上許容できる塩、または製薬上許容できる賦形剤および製薬上許容できる塩の両方をさらに含む、実施態様1~14のいずれかに記載の組成物。
[実施態様16]
前記IFGが酒石酸イソファゴミンである、実施態様1~15のいずれかに記載の組成物。
[実施態様17]
前記酒石酸イソファゴミンがD-酒石酸イソファゴミンである、実施態様16に記載の組成物。
[実施態様18]
前記組成物が液体である、実施態様1~13、および15~17のいずれかに記載の組成物。
[実施態様19]
酸化防止剤をさらに含む、実施態様1~18のいずれかに記載の組成物。
[実施態様20]
炭水化物をさらに含む、実施態様1~19のいずれかに記載の組成物。
[実施態様21]
界面活性剤をさらに含む、実施態様1~20のいずれかに記載の組成物。
[実施態様22]
前記組成物が、45~120mg/mLのGCB、および0.2~1.8mg/mLのイソファゴミンを含む、実施態様1~21のいずれかに記載の組成物。
[実施態様23]
前記組成物が60mg/mLのGCB、および0.9mg/mLのイソファゴミンを含む、実施態様22に記載の組成物。
[実施態様24]
前記組成物が、50mMのクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート20をさらに含む、実施態様22または23に記載の組成物。
[実施態様25]
前記組成物が5~20mMのクエン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20を含む、実施態様24に記載の組成物。
[実施態様26]
前記組成物が10mMのクエン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20を含む、実施態様25に記載の組成物。
[実施態様27]
前記組成物が5~20mMのリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20を含む、実施態様24に記載の組成物。
[実施態様28]
前記組成物が10mMのリン酸ナトリウム、および0.01%のポリソルベート-20を含む、実施態様27に記載の組成物。
[実施態様29]
前記組成物が約pH6.0である、実施態様22~28のいずれかに記載の組成物。
[実施態様30]
前記組成物がpH6.0である、実施態様22~28のいずれかに記載の組成物。
[実施態様31]
実施態様1~30のいずれかに記載の組成物を含む容器。
[実施態様32]
前記容器が、予充填シリンジ、バイアル瓶、またはアンプルからなる群から選択される、実施態様31に記載の容器。
[実施態様33]
前記IFGを水に溶解させることと、pHを約6.0に調節することと、前記GCBを添加して前記組成物を得ることと、を含む、実施態様1~30のいずれかに記載の組成物の調製方法。
[実施態様34]
GCBを添加する前に前記IFGを凍結乾燥させることをさらに含む、実施態様33に記載の方法。
[実施態様35]
ポリソルベート20を0.01%まで添加することをさらに含む、実施態様33または34に記載の方法。
[実施態様36]
前記組成物を、0.22μmの膜に通して濾過することをさらに含む、実施態様33~35のいずれかに記載の方法。
[実施態様37]
前記IFGが、前記組成物中での前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、実施態様33~36のいずれかに記載の方法。
[実施態様38]
前記IFGが、少なくとも3日間、0~50℃にて、前記組成物中で前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、実施態様33~36のいずれかに記載の方法。
[実施態様39]
前記IFGが、少なくとも6ヶ月間、0~40℃にて、前記組成物中で前記GCBの安定性を維持するのに十分な量で存在する、実施態様33~36のいずれかに記載の方法。
[実施態様40]
治療法で使用するための、実施態様1~30のいずれかに記載の組成物。
[実施態様41]
GCase経路での機能障害に関する疾患の治療方法であって、それを必要とする患者に、実施態様1~11、13、および15~30のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
[実施態様42]
前記方法が、前記疾患を治療するのに効果的である、実施態様41に記載の方法。
[実施態様43]
前記組成物が静脈内投与または皮下投与される、実施態様41または42に記載の方法。
[実施態様44]
前記組成物が皮下投与される、実施態様43に記載の方法。
[実施態様45]
前記皮下投与が皮下注射である、実施態様44に記載の方法。
[実施態様46]
前記組成物が1週間に2回投与される、実施態様41~45のいずれかに記載の方法。
[実施態様47]
前記組成物が1週間に1回投与される、実施態様41~45のいずれかに記載の方法。
[実施態様48]
前記組成物が1週間に1回よりも少ない頻度で投与される、実施態様41~45のいずれかに記載の方法。
[実施態様49]
前記組成物が隔週に1回投与される、実施態様41~45のいずれかに記載の方法。
[実施態様50]
前記疾患がGCase活性の欠損を含む、実施態様41~49のいずれかに記載の方法。
[実施態様51]
前記GCase活性の欠損は酵素活性の低下を含む、実施態様50に記載の方法。
[実施態様52]
前記疾患がα-シヌクレイン調節異常を含む、実施態様41~49のいずれかに記載の方法。
[実施態様53]
前記疾患がリソソーム蓄積症である、実施態様41~52のいずれかに記載の方法。
[実施態様54]
前記リソソーム蓄積症がゴーシェ病、ファブリ病、ポンペ病、ムコ多糖体症、および多系統萎縮症から選択される、実施態様53に記載の方法。
[実施態様55]
前記疾患が神経変性疾患である、実施態様41~54のいずれかに記載の方法。
[実施態様56]
前記神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、およびレヴィー小体型認知症から選択される、実施態様55に記載の方法。
[実施態様57]
GCase経路での機能障害の治療方法であって、それを必要とする対象に、実施態様1~11、13、および15~30のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
[実施態様58]
前記対象がヒトである、実施態様57に記載の方法。
[実施態様59]
0.5~5.0mg/kgのGCBと、前記GCBに対して少なくとも約3倍モル過剰であるIFGと、を含む組成物を対象に投与することを含む、GCase経路での機能障害の治療方法であって、前記組成物が皮下投与される、前記方法。
[実施態様60]
前記組成物が0.8~4.0mg/kgのGCBを含む、実施態様59に記載の方法。
[実施態様61]
前記組成物が1.0~3.0mg/kgのGCBを含む、実施態様60に記載の方法。
[実施態様62]
前記組成物が1.2~2.0mg/kgのGCBを含む、実施態様60に記載の方法。
[実施態様63]
前記組成物が約1.5mg/kgのGCBを含む、実施態様60に記載の方法。
[実施態様64]
前記組成物が1.5mg/kgのGCBを含む、実施態様60に記載の方法。
[実施態様65]
前記組成物が2.0~5.0mg/kgのGCBを含む、実施態様59に記載の方法。
[実施態様66]
前記組成物が2.25~4.5mg/kgのGCBを含む、実施態様59に記載の方法。
[実施態様67]
前記組成物が2.25~3.75mg/kgのGCBを含む、実施態様59に記載の方法。
[実施態様68]
前記組成物が3.5~5.0mg/kgのGCBを含む、実施態様59に記載の方法。
[実施態様69]
前記IFGが、前記GCBに対して3~10倍モル過剰で存在する、実施態様60~68のいずれかに記載の方法。
[実施態様70]
前記IFGが、前記GCBに対して10~30倍モル過剰で存在する、実施態様60~68のいずれかに記載の方法。
[実施態様71]
前記IFGが、前記GCBに対して30~100倍モル過剰で存在する、実施態様60~68のいずれかに記載の方法。
[実施態様72]
前記IFGが、前記GCBに対して3倍モル過剰で存在する、実施態様60~68のいずれかに記載の方法。
[実施態様73]
脾臓における前記GCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する、実施態様41~72のいずれかに記載の方法。
[実施態様74]
肝臓における前記GCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する、実施態様41~73のいずれかに記載の方法。
[実施態様75]
血清における前記GCBの曝露、活性、または生物学的利用能が増加する、実施態様41~74のいずれかに記載の方法。
[実施態様76]
実施態様41~75のいずれかに記載の方法で使用するための、実施態様1~11、13、および15~30のいずれかに記載の組成物。
[実施態様77]
実施態様41~76のいずれかに記載の方法のための薬剤の製造における、実施態様1~11、13、および15~30のいずれかに記載の組成物の使用。