(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】内視鏡用オーバーチューブ
(51)【国際特許分類】
A61B 1/01 20060101AFI20240717BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61B1/01 511
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2021501974
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006005
(87)【国際公開番号】W WO2020175206
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019036953
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519070817
【氏名又は名称】河本 博文
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河本 博文
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩太
(72)【発明者】
【氏名】米道 渉
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222813(JP,A)
【文献】特開昭62-022623(JP,A)
【文献】特開2004-057814(JP,A)
【文献】特開2014-033716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端部を湾曲させる偏向機能を備える内視鏡を案内する内視鏡用オーバーチューブであって、
体内に挿入される遠位端、体外に配置される近位端、および前記内視鏡が摺動可能に挿通される内腔を備えるメインチューブと、
基端部が前記メインチューブの遠位端に連結され、それぞれの中心軸が該メインチューブの遠位端部における中心軸方向に略沿って配置される第1の形体およびそれぞれの中心軸が順次交差するように湾曲して配置される第2の形体をとり得るように、複数の略部分円筒形状の節部が互いに略平行する回動軸周りに回動可能に順次連結された連節部と、
前記連節部を前記第1の形体から前記第2の形体に形体変化させる操作手段と、を有する内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項2】
前記操作手段は、先端に配置された前記節部に遠位端が接続され、近位端が前記メインチューブの近位端部に至る少なくとも1本のワイヤを備える請求項
1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項3】
前記ワイヤは、遠位端側に押し出すことにより前記連節部を前記第1の形体とし、近位端側に引っ張ることにより該連節部を前記第2の形体とする請求項
2に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項4】
前記ワイヤは、前記メインチューブの側壁内に形成されたワイヤルーメンに摺動可能に挿通された請求項
2または
3に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【請求項5】
前記ワイヤは、前記メインチューブの外壁に取り付けられたワイヤチューブに摺動可能に挿通された請求項
2または
3に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡が挿通される内腔を有する内視鏡用オーバーチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、細径内視鏡の開発が進んでおり、たとえば、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)に代えて、内視鏡の遠位端部を十二指腸乳頭を経て胆管内に挿入して、内視鏡が備えるカメラにより直接的に胆管内を観察し得るようになってきている。
【0003】
ここで、胃・十二指腸から乳頭を経て胆管内に至る経路は、鋭角で逆行する箇所を有するため、内視鏡の先端部の偏向機能のみでは、その挿入が容易ではない。このため、遠位端部近傍にバルーンおよび側孔を有する内視鏡用オーバーチューブが提案されている(特許文献1,2参照)。これらのオーバーチューブは、内視鏡の遠位端部を湾曲させた状態で該湾曲部の外側の一部を膨張したバルーンに押し当てることにより、内視鏡の遠位端部を乳頭に向けて誘導し易くしたものである。
【0004】
しかしながら、内視鏡の遠位端部の一部を膨張したバルーンに押し当てる際には、バルーンの表面は外側に凸の湾曲した面(略球面)であるため、両者の位置関係を厳密に設定しないと、両者が逃げ合って、バルーンからの反力が必ずしも適切な方向に作用せず、内視鏡の遠位端部が術者の望む方向に偏向しない場合がある。このため、内視鏡の遠位端部の位置を僅かにずらしつつ、試行錯誤する必要があり、円滑な手技の妨げとなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-22623号公報
【文献】特開2011-131047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、内視鏡を用いた手技を円滑に行い得る内視鏡用オーバーチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブは、
遠位端部を湾曲させる偏向機能を備える内視鏡を案内する内視鏡用オーバーチューブであって、
体内に挿入される遠位端、体外に配置される近位端、前記内視鏡が摺動可能に挿通される内腔、および遠位端部の側壁に内外にわたって形成された該内視鏡の遠位端部を側方に進出させるための側開放部を備えるメインチューブと、
前記側開放部の少なくとも一部を閉塞するように先端が前記メインチューブの近位端側を指向して該メインチューブの遠位端部の側部に略沿って配置される第1の姿勢、および該先端が該メインチューブの遠位端部の側部から外側に離間して配置される第2の姿勢をとり得るように、基端が該メインチューブの遠位端部に回動可能に軸支され、該側開放部から側方に進出した前記内視鏡の遠位端部を案内する案内面を備える案内部材と、を有する。
【0008】
本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブを用いた手技は、たとえば次のように行う。まず、案内部材を第1の姿勢(閉姿勢)とした状態でメインチューブを体内に挿入し、メインチューブの内腔に挿入されている内視鏡の遠位端部を側開放部の近傍に位置させる。次いで、内視鏡の遠位端部を該内視鏡の偏向機能を利用して偏向(湾曲)させるとともに、必要に応じて適宜に押し込んで側開放部から進出させると、内視鏡の遠位端に押されて案内部材は第2の姿勢(開姿勢)となるように回動される。内視鏡をさらに進出させると、内視鏡の遠位端部は案内部材の案内面に当接して案内(誘導)されるので、内視鏡の偏向機能と該案内面からの反力を適宜に利用することにより、内視鏡を所望の方向に進行させ易くなる。そして、従来技術のようにバルーンを用いるものと比較して、内視鏡との位置関係をそれ程厳密に設定する必要がないため、内視鏡の遠位端部を術者の望む方向に偏向させ易くなる。
【0009】
本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブにおいて、前記案内部材は、内面が前記案内面とされた略部分円筒形状の部材から構成することができる。略部分円筒形状の部材の内面を案内面とすることにより、内視鏡の遠位端部の左右の振れを抑制することができ、内視鏡の遠位端部の進行方向を安定させることができる。なお、本願明細書において、部分円筒形状には、半円筒形状、半長円筒形状、半楕円筒形状等が含まれる。
【0010】
本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブにおいて、前記案内部材の先端側に遠位端が接続され、近位端が前記メインチューブの近位端に至る少なくとも1本のワイヤをさらに有することができる。この場合において、前記ワイヤを、前記メインチューブの側壁内に形成されたワイヤルーメンに摺動可能に挿通し、または前記メインチューブの外壁に取り付けられたワイヤチューブに摺動可能に挿通するようにできる。前記ワイヤを近位端側に引っ張ることにより、第2の姿勢にある案内部材を第1の姿勢となるように回動させることができる。メインチューブを体内から引き抜く際には、ワイヤを近位端側に引っ張って、案内部材を閉じる、すなわち第1の姿勢とすることにより、案内部材が体内の管腔壁等に引っ掛かることなく円滑にこれを行い得る。また、ワイヤの引張量(または弛緩量)を調整することにより、第1の姿勢と第2の姿勢との間で案内部材の開き角度(チューブの遠位端部における中心軸と案内部材の基端から先端を結ぶ線とのなす角度)を任意に変更し得る。
【0011】
本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブにおいて、前記案内部材は、前記メインチューブの遠位端側の一部に基端側の一部が干渉して前記第2の姿勢で開き止まるようにすることができる。案内部材を、第1の姿勢から第2の姿勢となるように回動させた際に、第2の姿勢で確実に開き止まるようにできる。
【0012】
本発明の第1の観点に係る内視鏡用オーバーチューブにおいて、外力が作用しない状態で前記案内部材を前記第1の姿勢となるように付勢する付勢部材(閉姿勢付勢部材)をさらに有することができる。メインチューブを体内から引き抜く際には、内視鏡の遠位端部をメインチューブの側方に進出した状態からメインチューブの内腔内に引き込むことにより、付勢部材の付勢力によって案内部材を閉じる、すなわち第1の姿勢とすることができる。このため、案内部材が体内の管腔壁に引っ掛かることなくメインチューブを円滑に体内から引き抜くことができる。
【0013】
前記付勢部材(閉姿勢付勢部材)に代えて、外力が作用しない状態で前記案内部材を前記第2の姿勢となるように付勢する付勢部材(開姿勢付勢部材)をさらに有することができる。案内部材に対する外力の作用が解除されることにより、付勢部材の付勢力によって案内部材が開く、すなわち第2の姿勢となるため、たとえば内視鏡の遠位端部の偏向機能等を利用して案内部材を開く場合と比較して、かかる作業が不要となり、手技の容易化、迅速化を図り得る。
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る内視鏡用オーバーチューブは、
遠位端部を湾曲させる偏向機能を備える内視鏡を案内する内視鏡用オーバーチューブであって、
体内に挿入される遠位端、体外に配置される近位端、および前記内視鏡が摺動可能に挿通される内腔を備えるメインチューブと、
基端部が前記メインチューブの遠位端に連結され、それぞれの中心軸が該メインチューブの遠位端部における中心軸方向に略沿って配置される第1の形体およびそれぞれの中心軸が順次交差するように湾曲して配置される第2の形体をとり得るように、複数の略部分円筒形状の節部が互いに略平行する回動軸周りに回動可能に順次連結された連節部と、
前記連節部を前記第1の形体から前記第2の形体に形体変化させる操作手段と、を有する。
【0015】
本発明の第2の観点に係る内視鏡用オーバーチューブを用いた手技は、たとえば次のように行う。まず、連節部を第1の形体(直線形体)とした状態で体内に挿入し、メインチューブの内腔に挿入された内視鏡の遠位端部をメインチューブの遠位端の開口の近傍に位置させる。次いで、操作手段を操作して、連節部を第1の形体から第2の形体(湾曲形体)に形体変化させる。この状態で、内視鏡をさらに進行させると、内視鏡の遠位端部は連節部の湾曲した内面(各節部の内面)に案内されるので、内視鏡の偏向機能と湾曲した連節部の内面からの反力を適宜に利用することにより、内視鏡を所望の方向に進行させ易くなる。そして、従来技術のようにバルーンを用いるものと比較して、内視鏡との位置関係をそれ程厳密に設定する必要がないため、内視鏡の遠位端部を術者の望む方向に偏向させ易くなる。
【0016】
本発明の第2の観点に係る内視鏡用オーバーチューブにおいて、前記操作手段は、先端に配置された前記節部に遠位端が接続され、近位端が前記メインチューブの近位端部に至る少なくとも1本のワイヤを備えることができる。メインチューブの近位端部でワイヤを操作することにより、連節部の形体を変化させることができる。この場合において、前記ワイヤを、前記メインチューブの側壁内に形成されたワイヤルーメンに摺動可能に挿通し、または前記メインチューブの外壁に取り付けられたワイヤチューブに摺動可能に挿通するようにできる。前記ワイヤとしては、遠位端側に押し出すことにより前記連節部を前記第1の形体とし、近位端側に引っ張ることにより該連節部を前記第2の形体とするものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施形態の内視鏡用オーバーチューブのフラップを閉じた状態の遠位端部を示す正面図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Aの内視鏡用オーバーチューブの一部を分解して遠位端側から見た図である。
【
図1D】
図1Dは、
図1Aの内視鏡用オーバーチューブのフラップを開いた状態を示す正面図である。
【
図1E】
図1Eは、
図1Dの内視鏡用オーバーチューブに内視鏡を挿入した状態を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1Aの内視鏡用オーバーチューブを用いて、内視鏡を経口・経十二指腸乳頭的に胆管に挿入する手技の一例を説明するための図であり、十二指腸および胆管の一部を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第2実施形態の内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す正面図である。
【
図3C】
図3Cは、
図3Aの内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を他の方向から見た斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第3実施形態の内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す正面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第4実施形態の内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す正面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第5実施形態の内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す正面図であり、連節部を直線形体とした場合を示している。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す正面図であり、連節部を湾曲形体とした場合を示している。
【
図6C】
図6Cは、
図6Aの内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す斜視図であり、連節部を直線形体とした場合を示している。
【
図6D】
図6Dは、
図6Aの内視鏡用オーバーチューブの遠位端部を示す斜視図であり、連節部を湾曲形体とした場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。内視鏡用オーバーチューブは、内視鏡の体内への挿入を補助するために用いられる医療用補助器具であり、本発明に係る内視鏡用オーバーチューブは、内視鏡を用いた各種の手技に用いることができるが、以下では、一例として、細径内視鏡を経十二指腸乳頭的に胆管内に挿入する場合を例として説明する。
【0019】
ここで、細径内視鏡は、遠位端部を経十二指腸乳頭的に胆管内に直接挿入できる内視鏡であり、その具体例としては、経鼻用内視鏡として販売されている細径内視鏡を挙げることができる。なお、一般的な経口用内視鏡の外径(シャフト径)は、10~14mmであるのに対して、経鼻用内視鏡として販売されている細径内視鏡の外径(シャフト径)は、4.9~5.9mmである。なお、本実施形態では、細径内視鏡を経口的に用いる場合を例として説明する。
【0020】
第1実施形態
図1A~
図1Eを参照して、本発明の第1実施形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。本実施形態の内視鏡用オーバーチューブ1は、遠位端部を湾曲させる偏向機能を備える内視鏡を案内する内視鏡用オーバーチューブであり、メインチューブ2と、フラップ(案内部材)3と、一対のワイヤ4,4とを概略備えて構成されている。
【0021】
メインチューブ2は、体内に挿入される遠位端と、体外に配置される近位端と、内視鏡が摺動可能に挿通される内腔2aを有する長尺の部材である。メインチューブ2の内腔2aの近位端は内視鏡を導入するための開口(不図示)となっており、内腔2aの遠位端は、内視鏡を進出させるための開口2bとなっている。メインチューブ2の外径は、6~14mmの範囲内で設定することができ、内径は、4~12mmの範囲内で設定することができる。メインチューブ2の全長は、700~1500mm程度である。
【0022】
メインチューブ2の材料としては、可撓性を有する材料であれば特に限定されないが、高分子材料であることが好ましく、なかでも、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、結晶性ポリエーテルエーテルケトン、非晶性ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド系エラストマーのいずれかであることが特に好ましい。
【0023】
メインチューブ2の遠位端部には、側壁が遠位端から所定の寸法だけ略半割状に切りかかれて側方に(内外にわたって)開放された側口(側開放部)2cが形成されている。内視鏡の遠位端部を適宜に偏向させつつ押し込むことにより、この側口2cを介して、該内視鏡の遠位端部をメインチューブ2の側方に進出(突出)させ得るようになっている。側口2cの中心軸方向の長さは、20~60mm程度とすることができる。
【0024】
メインチューブ2の遠位端部(側口2cに対応する部分の遠位端部)には、メインチューブ2の遠位端部における中心軸に直交する方向に略平行する中心軸を有する一対の円柱状のフラップ取付孔2d,2dが形成されている。これらのフラップ取付孔2d,2dには、後述するフラップ3の一対の円柱状の突起3a,3aが回動可能に嵌合される。なお、本実施形態では、これらのフラップ取付孔2d,2dは内外にわたって貫通しているものとするが、外側から凹陥するものであってもよい。
【0025】
メインチューブ2の側壁内には、互いに離間して一対のワイヤルーメン2e,2eが内腔2aに沿って形成されている。ワイヤルーメン2e,2eは、その遠位端がメインチューブ2の側口2cが形成された部分の遠位端面に開口しており、その近位端がメインチューブ2の近位端部に至っている。これらのワイヤルーメン2e,2eは、一対のワイヤ4,4が摺動可能に挿通される挿通孔である。
【0026】
メインチューブ2の近位端部には、図示は省略しているが、メインチューブ2を体内に挿入する際に、術者が手で持って容易に操作(押し引き)し得るように、持ち手部が取り付けられている。持ち手部は、遠位端側および近位端側にそれぞれ鍔部を有する略円柱状の部材からなり、中央に貫通する貫通孔にメインチューブ2の近位端部が挿入されて接着等により固定されている。
【0027】
フラップ3は、閉姿勢(第1の姿勢)および開姿勢(第2の姿勢)をとり得るように、基端がメインチューブ3の遠位端部における中心軸に直交する方向に略平行する回動軸周りに回動可能に軸支されている。ここで、閉姿勢は、側口2cの一部を閉塞するようにフラップ3の先端がメインチューブ2の近位端側を指向してメインチューブ3の遠位端部に略沿って配置される姿勢(
図1Aに示す姿勢)である。また、開姿勢は、フラップ3の先端がメインチューブ3の遠位端部から外側に離間して配置される姿勢(
図1Dに示す姿勢)である。なお、本実施形態では、フラップ3を側口2cの一部を閉塞するものとしたが、側口2cの全部を閉塞するものであってもよい。
【0028】
より具体的には、フラップ3は、略部分円筒形状の部分円筒部を有する部材からなり、フラップ3の内面が側口2cから側方に進出した内視鏡の遠位端部を案内する案内面となっている。本実施形態では、フラップ3は、断面が略半円形の半円筒形状(ハーフパイプ状、雨樋状)の部材からなるものとするが、断面が長円を長軸または短軸方向に切断した略半長円形の半長円筒形状や断面が楕円を長軸または短軸方向に切断した略半楕円形の半楕円筒形状等の部材からなるものであってもよい。
【0029】
フラップ3の基端部には、フラップ3の中心軸に直交する方向に略平行する中心軸を有する一対の円柱状の突起3a,3aが形成されている。これらの突起3a,3aがメインチューブ2の一対のフラップ取付孔2d,2dに回動可能に嵌合されることにより、フラップ3の基端部がメインチューブ2の遠位端部における中心軸に直交する方向に略平行する回動軸周りに回動可能に軸支される。
【0030】
本実施形態では、フラップ3を構成する材料としては、メインチューブ2と同じ材料を用いているものとするが、異なる材料を用いてもよい。また、特に限定はされないが、本実施形態では、フラップ3の肉厚は、メインチューブ2の肉厚と同程度としているとともに、フラップ3の内径は、メインチューブ2の外径と同じか、僅かに大きい寸法としている。フラップ3の中心軸方向の長さ(基端から先端に至る長さ)は、20~70mm程度とすることができる。
【0031】
フラップ3の先端部には、一対のワイヤ取付孔3b,3bが互いに離間して形成されている。ワイヤ4,4は、遠位端がフラップ3のワイヤ取付孔3b,3bに取り付けられ(接続され)、メインチューブ2の一対のワイヤルーメン2e,2eに摺動可能に挿通されて、近位端がメインチューブ2の近位端部に至るように設けられている。ワイヤ4,4としては、本実施形態では、金属(ステンレス鋼等)からなる細線を用いている。ただし、ワイヤ4,4としては、樹脂からなる線材を用いてもよい。ワイヤ4,4を構成する線材の直径は、φ0.2~1.0mm程度の範囲で設定することができる。
【0032】
フラップ3を
図1Dに示した開姿勢とした状態から、メインチューブ2の近位端部においてワイヤ4,4を操作する(引っ張る)ことにより、フラップ3を
図1Aに示した閉姿勢にすることができる。フラップ3を
図1Dに示した開姿勢にする際には、ワイヤ4,4を緩めておくことにより、これをなし得る状態とすることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、一対のワイヤ4,4は、これらを近位端側に引っ張ることにより、フラップ3を閉姿勢にすることができるものの、遠位端側に押し出してフラップ3を開姿勢とする程の剛直性は有していないものを用いている。したがって、フラップ3を
図1Dに示した開姿勢とするには、ワイヤ4,4を緩めた(弛緩させた)状態で、内視鏡の偏向機能により該内視鏡の遠位端部を湾曲させて押し出す等により、フラップ3を開姿勢とすることになる。このとき、ワイヤ4,4の弛緩量を適宜に調整することにより、フラップ3の開き角度(メインチューブ2の遠位端部における中心軸と、フラップ3の中心軸とのなす角度)を任意に設定することができる。ただし、ワイヤ4,4として、遠位端側に押し出してフラップ3を開姿勢とし得る程度の剛直性を有するものを用いて、ワイヤ4,4の操作(遠位端側への押し出し)により、フラップ3を開姿勢とし得るようにしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、一対のワイヤ4,4は、メインチューブ2の側壁内に形成されたワイヤルーメン2e,2eに挿通するようにしたが、これに代えて、メインチューブ2の外壁に一対のチューブ(ワイヤチューブ)を取り付けて、該ワイヤチューブの内腔にそれぞれワイヤ4,4を挿通するようにしてもよい。ワイヤチューブのメインチューブ2に対する取り付けは、ワイヤチューブの全体をメインチューブ2に取り付けてもよいし、一部(たとえば間欠的に)にメインチューブ2に取り付けるようにしてもよい。
【0035】
また、上述した実施形態では、ワイヤ4を一対(2本)としたが、単一(1本)であってもよい。さらに、上述した実施形態では、ワイヤ4,4を一対(2本)とし、ワイヤルーメン2eもこれらに対応して一対(2本)としたが、ワイヤルーメンを単一(1本)として、一対のワイヤ4,4を該単一のワイヤルーメンに挿通するようにしてもよい。
【0036】
なお、ワイヤ4,4として、ステンレス鋼等の金属細線を用いた場合に、フラップ3を開姿勢とした際にワイヤ4,4の遠位端部の露出した部分(ワイヤルーメン3b,3bから引き出された部分)が体内組織に接触してこれを傷つけてしまうおそれがある。これを抑制するためには、樹脂からなる保護用チューブを設けて、ワイヤの当該露出することになる部分を該保護用のチューブの内腔に挿通し、あるいは当該部分を樹脂で被覆するとよい。
【0037】
次に、上述した内視鏡用オーバーチューブ1を用いて、内視鏡を口腔・十二指腸乳頭を経て胆管内に挿入する場合の手技について、
図2を参照して説明する。まず、メインチューブ2の内腔2aに内視鏡6を挿通した状態(内視鏡6の先端部をメインチューブ2の内腔2aの遠位端の開口2bから僅かに突出させた状態)で、メインチューブ2を内視鏡6とともに、患者の口腔から挿入し、内視鏡6のカメラ画像を観察しながら、食道、胃を経由して十二指腸7a内に挿入する。この挿入は、ワイヤ4,4を近位端側に引っ張ってフラップ3を閉姿勢とした(閉じた)状態で行う。
【0038】
次いで、メインチューブ2の遠位端部が十二指腸乳頭7bよりも奥側(小腸側)に到達したならば、メインチューブ2の側口2cが乳頭7b側を指向するようにメインチューブ2を適宜に回動させる。その後、ワイヤ4,4をフラップ3の開姿勢に係る最大開き角度との関係で設定される所定の弛緩量となるように弛緩させる(緩める)。これにより、フラップ3が開き得る状態となる。この状態で、内視鏡6を一旦適宜に引き戻し、内視鏡6の偏向機能を用いて、内視鏡6の遠位端部を適宜に偏向(湾曲)させるとともに、必要に応じて適宜に押し込んで、側口3cから進出させると、内視鏡6の遠位端に押されてフラップ3は開姿勢となるように回動される。
【0039】
内視鏡6をさらに進出させると、内視鏡6の遠位端部(遠位端または該遠位端よりも近位端側の近傍部分)の側部はフラップ3の内面に当接して案内されるので、内視鏡の偏向機能とフラップ3からの反力とを適宜に利用しつつ、内視鏡6を押し込んで、内視鏡6の遠位端部を乳頭7b内に挿入し、さらに押し込むことにより、胆管7c内に挿入する。これにより、内視鏡6のカメラ画像で胆管7c内を直接的に観察することができ、たとえば除去すべき胆石がある場合には、内視鏡6の処置具案内管を介して、適宜な処置具を挿入して、該胆石を破砕ないし掻き出す等の手技を行うことができる。
【0040】
必要な処置が終了し、内視鏡用オーバーチューブ1を体内から引き抜く際には、内視鏡6を全体的に引き抜きまたは内腔2a内に適宜に引き込んだ状態で、ワイヤ4,4を引っ張ってフラップ3を閉姿勢として、これを行う。
【0041】
本実施形態によれば、内視鏡6の遠位端部はフラップ3の内面に当接して案内されるので、内視鏡6の偏向機能とフラップ3の内面からの反力を適宜に利用することにより、内視鏡6を所望の方向に進行させ易くなる。そして、従来技術のようにバルーンを用いるものと比較して、内視鏡との位置関係をそれ程厳密に設定する必要がないため、内視鏡の遠位端部を術者の望む方向に偏向させ易くなる。特に、本実施形態では、フラップ3を部分円筒形状(半円筒形状)としているため、内視鏡6の遠位端部は、進行方向に対する左右のずれが抑制され、内視鏡6の遠位端部の進行方向を所望の方向に設定し易くなる。
【0042】
また、内視鏡用オーバーチューブ1を体内から引き抜く際には、ワイヤ4,4を引っ張ってフラップ3を閉姿勢として、これを行うことができるため、フラップ3の先端が体内の管腔壁等に引っ掛かることなく、円滑に引き抜くことができる。
【0043】
さらに、ワイヤ4,4の弛緩量を調整することにより、フラップ3の開き角度を変更することもできるため、これを適宜に調整することにより、内視鏡6の遠位端部を所望の方向に進行させ易い。
【0044】
第2実施形態
図3A~
図3Cを参照して、本発明の第2実施形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。なお、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付して、異なる部分について説明する。すなわち、上述した第1実施形態では、メインチューブ2の遠位端部には、側壁が遠位端から所定の寸法だけ略半割状に切りかかれて側方に(内外にわたって)開放された側口2cが形成されているが、第2実施形態では、この側口2cに代えて、側孔2fを形成している。
【0045】
この側孔2fは、メインチューブ2の内腔2a内から外部にわたって側壁を貫通するように形成されている。本実施形態では、側孔2fは、平面視でメインチューブ2の中心軸に沿う方向に長軸が設定された略長円形状となっており、正面視(
図3A参照)で中心軸に沿う方向に長軸が設定された略半割長円形状となっている。メインチューブ2の側孔2fよりも遠位端側の部分に、フラップ3の基端部が回動可能に軸支されている。
【0046】
メインチューブ2の側孔2fよりも遠位端側の部分は、フラップ3が開く方向に回動された際に、フラップ3の基端側の一部である干渉部3cが当該遠位端側の部分に干渉して開姿勢で開き止まるような長さに設定されている。本実施形態では、干渉部3cは、フラップ3の基端から先端側に向かって凹陥する円弧状の切欠部となっている。
【0047】
メインチューブ2の側孔2fの遠位端側の部分であって、フラップ3の内面が対面する部分には、
図3Cに示すように、外力が作用しない状態でフラップ3を開姿勢となるように付勢する付勢部材としてのコイルバネ5aが設けられている。コイルバネ5aは、一端がメインチューブ2の側孔2fの遠位端側の近傍部分に固定され、他端がフラップ3の基端部の内面に固定されている。コイルバネ5aは、フラップ3が開く方向に付勢するように圧縮された状態で設けられた圧縮コイルバネである。したがって、フラップ3は、外力が作用しない状態では、コイルバネ5aの付勢力によって、フラップ3の干渉部3cとメインチューブ2の遠位端部のこれに対応する部分との関係で規定される開き角度で開いた状態(開姿勢)となる。
【0048】
図示はしていないが、上述した第1実施形態のワイヤ4と同様のワイヤを設けて、ワイヤの近位端を近位端側に引っ張ることにより、コイルバネ5aの付勢力に抗して、フラップ3を閉じるようにできる。ワイヤを弛緩させれば(緩めれば)、コイルバネ5aの付勢力によって、フラップ3が開姿勢となるため、上述した第1実施形態のように、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等により、フラップ3を開くようにした場合と比較して、これらの作業が不要となり、手技の容易化、迅速化を図り得る。
【0049】
なお、上記では、コイルバネ5aとして、外力が作用しない状態でフラップ3を開姿勢となるように付勢する圧縮コイルバネとしたが、これと反対に、外力が作用しない状態でフラップ3を閉姿勢となるように付勢する引張コイルバネとしてもよい。コイルバネ5aを引張コイルバネとすることにより、フラップ3は、外力が作用しない状態では、コイルバネ5aの付勢力によって閉じて、メインチューブ2の側部に沿って配置される。
【0050】
フラップ3を開く際には、上述した第1実施形態と同様に、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等を利用して、コイルバネ5aの付勢力に抗して、フラップ3を外側に向かって押圧することにより、これを行うことができる。この状態から、内視鏡6の遠位端部をメインチューブ2の内腔2a内に引き込むことにより、コイルバネ5aの付勢力によって、フラップ3が閉姿勢となるので、上述した第1実施形態において用いているようなワイヤ4を省略しても、フラップ3を閉姿勢にし得るため、構成を簡略化し得る。
【0051】
なお、コイルバネ5aに代えて、フラップ3の回動軸(3a,2d)と同軸上に、ねじりバネを設けて、該ねじりバネの一端側をメインチューブ2に、他端側をフラップ3に固定して、フラップ3を開姿勢または閉姿勢となるように付勢するようにしてもよい。
【0052】
第3実施形態
図4Aおよび
図4Bを参照して、本発明の第3実施形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。なお、上述した第1実施形態または第2実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付して、異なる部分について説明する。すなわち、第3実施形態では、上述した第2実施形態のようなコイルバネ5aは設けておらず、これに代わって、板バネ5bを設けている。
【0053】
板バネ5bは、湾曲した短冊状の弾性部材からなり、その一端がメインチューブ2のフラップ3よりも遠位端側の部分に固定され、その他端がフラップ3の外面の中央部付近に固定されている。板バネ5bは、フラップ3が開く方向に付勢する付勢部材である。したがって、フラップ3は、外力が作用しない状態では、板バネ5bの付勢力によって、フラップ3の干渉部3cとメインチューブ2の遠位端部のこれに対応する部分との関係で規定される開き角度で開いた状態(開姿勢)となる。
【0054】
図示はしていないが、上述した第1実施形態のワイヤ4と同様のワイヤを設けて、ワイヤの近位端を近位端側に引っ張ることにより、板バネ5bの付勢力に抗して、フラップ3を閉じるようにできる。ワイヤを弛緩させれば(緩めれば)、板バネ5bの付勢力によって、フラップ3が開姿勢となるため、上述した第1実施形態のように、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等により、フラップ3を開くようにした場合と比較して、これらの作業が不要となり、手技の容易化、迅速化を図り得る。
【0055】
なお、上記では、板バネ5bとして、外力が作用しない状態でフラップ3を開姿勢となるように付勢する弾性部材を用いているが、これと反対に、外力が作用しない状態でフラップ3を閉姿勢となるように付勢する弾性部材を用いるようにしてもよい。このような板バネ5bとすることにより、フラップ3は、外力が作用しない状態では、板バネ5bの付勢力によって閉じて、メインチューブ2の側部に沿って配置される。
【0056】
フラップ3を開く際には、上述した第1実施形態と同様に、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等を利用して、板バネ5bの付勢力に抗して、フラップ3を外側に向かって押圧することにより、これを行うことができる。この状態から、内視鏡6の遠位端部をメインチューブ2の内腔2a内に引き込むことにより、板バネ5bの付勢力によって、フラップ3が閉姿勢となるため、上述した第1実施形態において用いているようなワイヤ4を省略することもでき、構成を簡略化し得る。
【0057】
第4実施形態
図5Aおよび
図5Bを参照して、本発明の第4実施形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。なお、上述した第1実施形態ないし第3実施形態と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付して、異なる部分について説明する。すなわち、第4実施形態では、上述した第2実施形態のようなコイルバネ5aや第3実施形態のような板バネ5bは設けておらず、代わって、一対のゴム部材5c,5cを設けている。
【0058】
ゴム部材5c,5cは、それぞれ短冊状の弾性部材からなり、一方のゴム部材5cの一端がメインチューブ2の側孔2fの両側部の一方に固定され、他端がフラップ3の両側部の対応する一方に固定され、他方のゴム部材5cの一端がメインチューブ2の側孔2fの両側部の他方に固定され、他端がフラップ3の両側部の対応する他方に固定されている。ゴム部材5c,5cは、フラップ3が開く方向に付勢する付勢部材である。したがって、フラップ3は、外力が作用しない状態では、ゴム部材5c,5cの付勢力によって、フラップ3の干渉部3cとメインチューブ2の遠位端部のこれに対応する部分との関係で規定される開き角度で開いた状態(開姿勢)となる。
【0059】
図示はしていないが、上述した第1実施形態のワイヤ4と同様のワイヤを設けて、ワイヤの近位端を近位端側に引っ張ることにより、ゴム部材5c,5cの付勢力に抗して、フラップ3を閉じるようにできる。ワイヤを弛緩させれば(緩めれば)、ゴム部材5c,5cの付勢力によって、フラップ3が開姿勢となるため、上述した第1実施形態のように、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等により、フラップ3を開くようにした場合と比較して、これらの作業が不要となり、手技の容易化、迅速化を図り得る。
【0060】
なお、上記では、ゴム部材5c,5cとして、外力が作用しない状態でフラップ3を開姿勢となるように付勢する弾性部材を用いているが、これと反対に、外力が作用しない状態でフラップ3を閉姿勢となるように付勢する弾性部材を用いるようにしてもよい。このようなゴム部材5c,5cとすることにより、フラップ3は、外力が作用しない状態では、ゴム部材5c,5cの付勢力によって閉じて、メインチューブ2の側部に沿って配置される。
【0061】
フラップ3を開く際には、上述した第1実施形態と同様に、内視鏡6の遠位端部の偏向機能等を利用して、ゴム部材5c,5cの付勢力に抗して、フラップ3を外側に向かって押圧することにより、これを行うことができる。この状態から、内視鏡6の遠位端部をメインチューブ2の内腔2a内に引き込むことにより、ゴム部材5c,5cの付勢力によって、フラップ3が閉姿勢となるため、上述した第1実施形態において用いているようなワイヤ4を省略しても、フラップ3を閉姿勢にし得るため、構成を簡略化し得る。
【0062】
なお、上記では、ゴム部材5c,5cはメインチューブ2の側孔2fおよびフラップ3の両側部のそれぞれに設けたが、一方だけに設けるようにしてもよい。
【0063】
第5実施形態
図6A~
図6Dを参照して、本発明の第5実施形態に係る内視鏡用オーバーチューブについて説明する。本実施形態の内視鏡用オーバーチューブ11は、遠位端部を湾曲させる偏向機能を備える内視鏡を案内する内視鏡用オーバーチューブであり、メインチューブ12と、連節部13と、一対のワイヤ(操作手段)14,14とを概略備えて構成されている。
【0064】
メインチューブ12は、上述した第1実施形態のような側口2cや第2実施形態のような側孔2fが設けられていない点を除いて、上述した第1実施形態のメインチューブ2と実質的に同一の構成であるので、詳細な説明は省略する。ただし、上述した第1実施形態のような側口2cや第2実施形態のような側孔2fが設けられていてもよい。
【0065】
メインチューブ12の側壁内には、互いに180°対向する位置に一対のワイヤルーメン(不図示)が内腔12aに沿って形成されている。ワイヤルーメンは、その遠位端がメインチューブ12の遠位端面に開口しており、その近位端がメインチューブ12の近位端部に至っている。これらのワイヤルーメンは、一対のワイヤ14,14が摺動可能に挿通される挿通孔である。
【0066】
連節部13は、複数の節部13aを順次連結して構成されており、基端側がメインチューブ12の遠位端に連続するように接続されている。連節部13を構成する節部13aの数は、特に限定されないが、同図では、5個としている。各節部13aは、それぞれ略部分円筒形状の部材から構成されている。
【0067】
最も基端側の節部13aの基端側の中央部分が、メインチューブ12を遠位端側から見て、一対のワイヤルーメンを9時および3時の方向として、6時の位置においてメインチューブ12の遠位端に回動可能に軸支されている。最も基端側の節部13aに隣接する節部13aの基端側の中央部分が、最も基端側の節部13aの先端側の中央部に回動可能に軸支されており、順次同様に節部13aが互いに回動可能に軸支され、最も先端側の節部13aの基端側の中央部分が、最も先端側の節部13aに隣接する節部13aの先端側の中央部に回動可能に軸支されている。各節部13a同士または最も基端側の節部13aとメインチューブ12の遠位端を連結する各回動軸は、メインチューブ12の遠位端部における中心軸に直交する方向に略平行している。
【0068】
各節部13aが上記のように連結されることにより、連節部13は、
図6Aおよび
図6Cに示すように、各節部13aのそれぞれの中心軸が略直線状に配置される直線形体(第1の形体)と、
図6Bおよび
図6Dに示すように、各節部13aのそれぞれの中心軸が順次互いに交差するように湾曲して配置される湾曲形体(第2の形体)とをとり得るようになっている。
【0069】
各節部13aの両側部の中央部には、ワイヤ支持用突起部13b,13bが一体的に設けられている。ワイヤ支持用突起部13b,13bの先端部近傍には、これらが設けられた節部13aの中心軸方向に沿う方向にワイヤ挿通孔がそれぞれ形成されている。これらのワイヤ挿通孔には、一対のワイヤ14,14が摺動可能に挿通される。
【0070】
本実施形態では、各節部13aは、断面が略半円形の半円筒形状の部材からなるものとするが、断面が長円を長軸または短軸方向に切断した略半長円形の半長円筒形状や断面が楕円を長軸または短軸方向に切断した略半楕円形の半楕円筒形状等であってもよい。
【0071】
本実施形態では、各節部13を構成する材料としては、メインチューブ12と同じ材料を用いているものとするが、異なる材料を用いてもよい。また、特に限定はされないが、本実施形態では、各節部13aの内径および外径は、メインチューブ12の内径および外径と同程度に設定している。各節部13aの中心軸方向の長さは、5~20mm程度とすることができる。
【0072】
一対のワイヤのうちの一方のワイヤ14は、各節部13aの対応するワイヤ支持用突起部13bおよびメインチューブ12の対応するワイヤルーメンに摺動可能に挿通されている。一方のワイヤ14の遠位端は最も先端側に配置された節部13aの対応するワイヤ支持用突起部13bに接続固定されている。一方のワイヤ14の近位端は、メインチューブ12の近位端部に至っている。他方のワイヤ14についても同様である。
【0073】
ワイヤ14,14としては、本実施形態では、メインチューブ12の湾曲に追従して湾曲し得る程度の柔軟性と、メインチューブ12の近位端側における操作により、ワイヤ14,14を遠位端側に押し出すことができる程度の剛直性を有する金属(ステンレス鋼等)からなる線材を用いている。ただし、ワイヤ14,14としては、樹脂からなる線材を用いてもよい。ワイヤ14,14を構成する線材の直径は、φ0.2~1.0mm程度の範囲で設定することができる。
【0074】
最も先端側に配置された節部13aには、ワイヤ支持用突起部13b,13bに架け渡すように、略半円環状の半円ループ部15が一体的に設けられており、連節部13を先端側から見た場合に、最先端の節部13aと半円ループ部15とで、メインチューブ12と略同径の円環形状を構成するようになっている。このようにすることで、内視鏡の遠位端を連節部13の遠位端から突出させた状態で体内に挿入する際に、ワイヤ14,14をテンションフリーとすることにより、連節部13を内視鏡の屈曲(偏向)に追従して湾曲させることができる。このような半円ループ部15を設けたのは、これが無いと、内視鏡の遠位端部が屈曲しても連節部13が追従しないので、管腔壁に引っかかってしまい、体内への挿入の妨げとなるおそれがあるからである。
【0075】
連節部13を
図6Aおよび
図6Cに示した直線形体とした状態から、メインチューブ12の近位端部においてワイヤ14,14を操作する(近位端側に引っ張る)ことにより、連節部13を
図6Bおよび
図6Dに示した湾曲形体にすることができる。連節部13を
図6Bおよび
図6Dに示した湾曲形体とした状態から、メインチューブ12の近位端部においてワイヤ14,14を操作する(遠位端側に押し出す)ことにより、連節部13を
図6Aおよび
図6Cに示した直線形体に戻すことができる。
【0076】
上述した実施形態では、ワイヤ14を一対(2本)としたが、単一(1本)であってもよい。
【0077】
次に、上述した内視鏡用オーバーチューブ11を用いて、内視鏡6を口腔・十二指腸乳頭を経て胆管内に挿入する場合の手技について説明する。まず、連節部13を直線形体に設定して、メインチューブ12の内腔12aに内視鏡6を挿通した状態(内視鏡6の先端部を連節部13の遠位端から突出させた状態)で、メインチューブ12を内視鏡6とともに、患者の口腔から挿入し、内視鏡6のカメラ画像を観察しながら、食道、胃を経由して十二指腸(
図2の符号7a参照)内に挿入する。
【0078】
次いで、メインチューブ12の遠位端部が十二指腸乳頭(
図2の符号7b参照)よりも奥側(小腸側)に到達したならば、連節部13が湾曲される側(内側)が乳頭側を指向するようにメインチューブ12を適宜に回動させる。その後、ワイヤ14,14を近位端側に引っ張ることにより連節部13を湾曲形体とし、内視鏡6を遠位端側に押し出す。
【0079】
そして、内視鏡6の遠位端部の偏向機能をも利用しつつ、さらに進行させると、内視鏡6の遠位端部の側部は各節部13aの内面に当接して案内されるので、内視鏡6の偏向機能と連節部13からの反力とを適宜に利用しつつ、内視鏡6を押し込んで、内視鏡6の遠位端部を乳頭内に挿入し、さらに押し込むことにより、胆管(
図2の符号7c参照)内に挿入する。これにより、内視鏡6のカメラ画像で胆管内を直接的に観察することができ、たとえば除去すべき胆石がある場合には、内視鏡6の処置具案内管を介して、適宜な処置具を挿入して、該胆石を破砕ないし掻き出す等の手技を行うことができる。
【0080】
必要な処置が終了し、内視鏡用オーバーチューブ11を体内から引き抜く際には、内視鏡6を全体的に引き抜きまたは内腔12a内に適宜に引き込んだ状態で、ワイヤ14,14を弛緩させて連接部13を弛緩状態とし、これを行う。
【0081】
本実施形態によれば、内視鏡6の遠位端部は連節部13(各節部13a)の内面に当接して案内されるので、内視鏡6の偏向機能と連節部13の内面からの反力を適宜に利用することにより、内視鏡6を所望の方向に進行させ易くなる。そして、従来技術のようにバルーンを用いるものと比較して、内視鏡6との位置関係をそれ程厳密に設定する必要がないため、内視鏡6の遠位端部を術者の望む方向に偏向させ易くなる。特に、本実施形態では、各節部13aを部分円筒形状(半円筒形状)としているため、内視鏡6の遠位端部は、進行方向に対する左右のずれが抑制され、内視鏡6の遠位端部の進行方向を所望の方向に設定し易くなる。
【0082】
また、内視鏡用オーバーチューブ11を体内から引き抜く際には、ワイヤ14,14を弛緩させて連節部13を直線形体として、これを行うことができるため、連節部13が体内の管腔壁等に引っ掛かることなく、円滑に引き抜くことができる。
【0083】
さらに、ワイヤ14,14の引張量(または押出量)を調整することにより、連節部13の湾曲の曲率を変更することもできるため、これを適宜に調整することにより、内視鏡6の遠位端部の進行方向を所望の方向に進行させ易い。
【0084】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0085】
1…内視鏡用オーバーチューブ
2…メインチューブ
2a…内腔
2b…開口
2c…側口(側開放部)
2d…フラップ取付孔
2e…ワイヤルーメン
2f…側孔(側開放部)
3…フラップ(案内部材)
3a…突起
3b…ワイヤ取付孔
3c…干渉部
4…ワイヤ
5a…コイルバネ
5b…板バネ
5c…ゴム部材
6…内視鏡
7a…十二指腸
7b…十二指腸乳頭
7c…胆管
11…内視鏡用オーバーチューブ
12…メインチューブ
12a…内腔
13…連節部(案内部材)
13a…節部
13b…ワイヤ支持用突起部
14…ワイヤ(操作手段)
15…半円ループ部