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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】RNAの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 1/00 20060101AFI20240717BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20240717BHJP
   C40B 40/12 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07H1/00 ZNA
C07H21/02
C40B40/12
C12N15/11 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021511250
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008313
(87)【国際公開番号】W WO2020202949
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019067993
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】宮川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】和泉 延明
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119503(WO,A1)
【文献】米国特許第07205399(US,B1)
【文献】今田清久 ほか,多孔質ガラスの表面状態とその化学修飾,日本化学会誌,1990年,4,407-414
【文献】TONG,G. et al.,The synthesis of oligonucleotide-polyamide conjugate molecules suitable as PCR primers,Journal of Organic Chemistry,1993年,58,2223-2231
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C40B 40/
C12N 15/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1級アミノ基を含む無機多孔質担体を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、100mer以上のRNAを製造する方法であって、前記無機多孔質担体が、無機多孔質体に、下記式(s1)で表されるシランカップリング剤を反応させることにより調製されたものであり、前記無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量が、下記式(1)を満たす、RNAの製造方法。
【化1】
[式中、R は、炭素数1~4のアルキル基を表し、mは、1~4の整数を表し、nは、2~8の整数を表し、Lは、単結合又は-NH-を表す。]
【数1】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)、
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)、
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【請求項2】
前記無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量が、下記式(1’)を満たす、請求項1に記載のRNAの製造方法。
【数2】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)、
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)、
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【請求項3】
前記無機多孔質担体の無機多孔質体が、多孔質ガラスである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機多孔質担体の細孔径(モード径)が、90~120nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機多孔質担体の細孔径(モード径)が、120~200nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法が、下記の工程1~4を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法:
工程1)前記第1級アミノ基を含む無機多孔質担体と、ヒドロキシル基が保護されたヌクレオシドを含むリンカーとを反応させて、前記無機多孔質担体に前記保護されたヌクレオシドを導入する工程;
工程2)前記ヌクレオシドを導入した無機多孔質担体を核酸固相合成機のカラムに充填する工程;
工程3)前記核酸固相合成機を使用して、脱保護、アミダイト化合物を用いたカップリング、及び酸化を含むサイクルを、複数回繰り返す工程;および
工程4)前記工程3の後、無機多孔質担体から、ヒドロキシル基が保護されたRNAを切り出し、脱保護する工程。
【請求項7】
前記リンカーが、スクシニルリンカーである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程3)におけるサイクルを100回以上繰り返す、請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2019-067993号(2019年3月29日出願)に基づくパリ条約上の優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が、本明細書中に組み込まれるものとする。
本発明は、RNAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の化学合成法としては、ホスホロアミダイト法による固相合成法が広く用いられている。この方法では、まず、シランカップリング剤等を用いて固相担体上にアミノ基等の官能基を導入し、前記官能基に核酸の3’末端となるヌクレオシドを結合させる。その後、前記ヌクレオシドを起点として、固相担体上で核酸伸長反応を行う。
【0003】
固相合成法では、合成する核酸の鎖長が長くなると、合成効率が急速に低下し、多量の副生成物が混入する結果になりがちである。これは、固相担体表面上で伸長する核酸分子どうしが干渉し、伸長反応の阻害や副反応等が生じているためと考えられる。
固相担体表面上での核酸分子どうしの干渉を防ぐためには、固相担体上に導入する官能基の量を制限することが考えられる。例えば、特許文献1には、アルキルアミノ基を、ピクリン酸による定量値として0.3~2.5μmol/mの割合で導入した固相担体を用いることにより、15merのDNAの合成収率が向上したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2958338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固相担体が担持するアミノ基の量を制限すれば、核酸分子どうしの干渉を防ぎ、合成収率の向上や副生成物量の低減化が図れると考えられる。しかしながら、固相担体におけるアミノ基の担持量が低すぎると、核酸の生産性が低下する。そのため、核酸の生産性を維持しつつ、収率や純度を向上させるためには、固相担体のアミノ基担持量を適切な範囲に設定する必要がある。
また、一般的に、DNA合成と比較して、RNA合成は難しい。特に、長鎖RNAの合成においては、固相担体が担持するアミノ基量を最適な範囲に制御することが求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、中鎖~長鎖RNA合成においても純度を向上させることができる、RNAの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、第1級アミノ基を含む無機多孔質担体を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、RNAを製造する方法であって、前記無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量が、下記式(1)を満たす、RNAの製造方法である(以下、「本発明の製造方法」と称する)。
【0008】
【数1】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【0009】
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量が、下記式(1’)を満たす。
【数2】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【0010】
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記無機多孔質担体の無機多孔質体が、多孔質ガラスである方法であってもよい。
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記無機多孔質担体の細孔径(モード径)が、90~120nmである方法であってもよい。
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記無機多孔質担体の細孔径(モード径)が、120~200nmである方法であってもよい。
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、下記の工程1~4を含む方法であってよい:
工程1)前記第1級アミノ基を含む無機多孔質担体と、ヒドロキシル基が保護されたヌクレオシドを含むリンカーとを反応させて、前記無機多孔質担体に前記保護されたヌクレオシドを導入する工程;
工程2)前記ヌクレオシドを導入した無機多孔質担体を核酸固相合成機のカラムに充填する工程;
工程3)前記核酸固相合成機を使用して、脱保護、アミダイト化合物を用いたカップリング、及び酸化を含むサイクルを、複数回繰り返す工程;および
工程4)前記工程3の後、無機多孔質担体から、ヒドロキシル基が保護されたRNAを切り出し、脱保護する工程。
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記リンカーが、スクシニルリンカーである方法であってもよい。
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、前記工程3)におけるサイクルを40回以上繰り返す方法であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、中鎖~長鎖のRNA合成においても純度を向上させることができる、RNAの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中、ある数値範囲について、「AからB」または「A~B]という場合には、特に断らない限り、「A以上から(~)B以下」の範囲を意味する。
【0013】
本発明の一態様にかかるRNAの製造方法は、第1級アミノ基を含む無機多孔質担体を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、RNAを製造する方法であって、前記無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量が、下記式(1)を満たす、RNAの製造方法である。
【0014】
【数3】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【0015】
<無機多孔質担体>
本実施形態の製造方法で用いられる無機多孔質担体は、第1級アミノ基が導入された無機多孔質担体であって、第1級アミノ基の量が前記式(1)を満たす担体である。
無機多孔質担体は、例えば第1級アミノ基を無機多孔質体の表面に何らかの化学結合を介して共有結合させてなる担体であり、例えば、表面にシラノール基を有する無機多孔質体に、アミノ基(又は保護されたアミノ基)を有するシランカップリング剤を反応させて得られる無機多孔質担体が挙げられる。
【0016】
(無機多孔質体)
無機多孔質体としては、特に限定されず、核酸固相合成用担体の基材として一般的に用いられるものを使用することができる。中でも、シリカゲルやゼオライトや多孔質ガラスが好ましく、多孔質ガラスがさらに好ましい。
前記多孔質ガラスとしては、例えば、一般にCPG(Controlled Pore Glass)などの名称にて市販されている多孔質ガラスが挙げられる。
【0017】
無機多孔質体の形状は、特に限定されず、略球状、多面体形状、略柱状、破砕状等いずれの形状であってもよいが、カラムへの充填効率等の観点から、破砕状であることが好ましい。
【0018】
無機多孔質体の粒子径は、特に限定されないが、カラム充填効率及びカラム充填時の送液速度等の観点から、レーザー回折(散乱式)により測定される平均粒径が1~1000μmであることが好ましく、5~500μmであることがより好ましく、10~200μmであることがさらに好ましい。
【0019】
無機多孔質体における細孔径は、特に限定されず、合成するRNAの鎖長に応じて、適宜選択することができる。一般的に、合成するRNAの鎖長が長い場合には、細孔径の大きいものを選択することが好ましい。例えば、40mer以上のRNAを合成する場合、細孔径としては、50nm以上が挙げられる。例えば、40~200merのRNAを合成する場合、細孔径としては、50~300nmが挙げられる。例えば、50~200merのRNAを合成する場合、細孔径としては、70~300nmが挙げられる。例えば、100~200merのRNAを合成する場合、細孔径としては、100~300nmが挙げられる。前記の細孔径は、水銀圧入法により測定されるものである。
細孔径(モード径)は、水銀圧入法により得られる細孔径分布(X軸を細孔径の値とし、Y軸を細孔容積を細孔径で微分した値としたグラフ)において、ピークトップのX軸の値から求められる。
好ましい態様において、無機多孔質体の細孔径(モード径)としては、90~120nmが挙げられる。別の好ましい態様において、無機多孔質体の細孔径(モード径)としては、120~200nmが挙げられる。
【0020】
無機多孔質体における比表面積は、特に限定されない。一般的に、比表面積が大きいと細孔径が小さくなる傾向にある。比表面積としては、一般的に、10~100m/gが挙げられる。例えば、40mer以上(例、40~200mer)のRNAを合成する場合、比表面積は10~40m/gが好ましく、20~40m/gがより好ましい。本発明における無機多孔質体の比表面積は、窒素吸着法により測定されるものである。窒素吸着法による比表面積の測定は、具体的には以下のように行うことができる。
【0021】
〔窒素吸着法による比表面積の測定法〕
本明細書の実施例に記載した無機多孔質体の窒素吸着法による比表面積の測定は、以下の手順に従って行った。無機多孔質担体の比表面積は、以下の手順に従って求められる値が、上記記載した範囲内であることが好ましい。
試料の前処理として、真空加熱前処理装置(例えば、BELPREP-vacII(マイクロトラック・ベル株式会社製))を使用して120℃で3時間、真空脱気を行う。前記処理を行った試料0.3gを、細孔分布測定装置(例えば、BELSORP-mini(マイクロトラック・ベル株式会社製))を使用して、真空脱気しながら温度77Kで試料に窒素ガスを吸着後、脱着させ、吸着等温線を作成する。得られた吸着等温線から、BET法により比表面積を算出する。
【0022】
(無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量)
無機多孔質担体は、前記無機多孔質体に第1級アミノ基が導入されたものであり、第1級アミノ基を含む。本実施形態の製造方法において、無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量は、下記式(1)満たす。
【0023】
【数4】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【0024】
無機多孔質担体に含まれる第1級アミノ基の量は、下記式(1’)を満たすことが好ましい。
【0025】
【数5】
【0026】
〔アミノ基量:I〕
前記式(1)及び(1’)中、Iは、2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量により測定される固相担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)を表す。「2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法」とは、アミノ基にイオン結合する2-ニトロベンゼンスルホン酸の量に基づき、アミノ基を定量する方法を意味する。
【0027】
2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法によるアミノ基量の測定は、以下のように行うことができる。
30mg程度の無機多孔質担体を、脱脂綿で栓をしたパスツールピペット等に採取し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(DIPEA 5容量%)1mLを通液して洗浄する。次いで、2-ニトロベンゼンスルホン酸のTHF溶液(2-ニトロベンゼンスルホン酸 50mM)1mLで4回通液した後、1mLのTHFで4回通液洗浄する。次いで、10mLメスフラスコ等の容器を受器として、希アンモニア水(28%アンモニア水と水とを体積比1:100で混合した溶液)とアセトニトリルとを体積比1:1で混合した混合溶液を通液する。受器に受けた流出液に、アセトニトリルの水溶液(アセトニトリル 15容量%)を添加して10mLとし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、2-ニトロベンゼンスルホン酸のピーク面積値を測定する。HPLCの分析条件は、2-ニトロベンゼンスルホン酸を測定可能な条件であれば、特に限定されないが、例えば、後述の実施例に示す分析条件等が例示される。
前記2-ニトロベンゼンスルホン酸のピーク面積値をB、分析に用いた無機多孔質担体の質量をM、2-ニトロベンゼンスルホン酸の標準溶液を用いて作成した検量線の傾きをa、検量線の切片をbとすると、アミノ基量は、以下のように算出することができる。下記式中、「203.17」は、2-ニトロベンゼンスルホン酸無水物(CNOS)の分子量である。
アミノ基量I=(B-b)/(203.17Ma)×10
【0028】
検量線の作成方法
2-ニトロベンゼンスルホン酸の検量線は、以下のように作成することができる。
まず、中和滴定により、2-ニトロベンゼンスルホン酸の含量を求める(市販品は水和物のため)。次いで、異なる濃度の2-ニトロベンゼンスルホン酸溶液を少なくとも3種類調製し、HPLC分析を行う。HPLC分析におけるピークの面積値を縦軸、2-ニトロベンゼンスルホン酸濃度を横軸にとってプロットし、線形近似により検量線を得ることができる。
【0029】
本実施形態の製造方法で用いる無機多孔質担体において、アミノ基量は、本実施形態の製造方法の効果を損なわない限り、特に限定されず、合成するRNAの鎖長に応じて、適宜選択することができる。一般的に、合成するRNAの鎖長が長くなるほど、アミノ基量Iは低い方が好ましい。例えば、40mer以上(例、40~200mer)のRNAを合成する場合、アミノ基量Iとしては、20~110μmol/gが挙げられる。例えば、100mer以上(例、100~200mer)のRNAを合成する場合、アミノ基量Iとしては、20~60μmol/gが挙げられる。
【0030】
〔第1級アミノ基の割合:R〕
前記式(1)中、Rは、無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合を表す。例えば、無機多孔質担体に含まれる全アミノ基のモル数をA1、第1級アミノ基のモル数をA2とすると、R=A2/A1により、Rを求めることができる。
【0031】
例えば、下記式(Lcaa(c9)-SP1)~(Lcaa(c9)-SP6)のいずれかで表されるLcaa(C9)リンカーを担持する無機多孔質担体の場合、Lcaa(C9)リンカー中の全アミノ基数が2、第1級アミノ基数が1であるため、R=1/2となる。
【0032】
【化1】
[式中、SPは無機多孔質体を表し、Meはメチル基を表す。]
【0033】
また、例えば、下記式(Aminopropyl-SP1)~(Aminopropyl-SP6)のいずれかで表されるAminopropylリンカーを担持する無機多孔質担体の場合、Aminopropylリンカー中の全アミノ基数が1、第1級アミノ基数が1であるため、R=1/1となる。
【0034】
【化2】
[式中、SPおよびMeは上記と同義である。]
【0035】
〔無機多孔質担体の比表面積:S〕
前記式(1)及び(1’)中、Sは、窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)を表す。比表面積Sの測定は、上記「〔窒素吸着法による比表面積の測定法〕」で記載した方法と同様に行うことができる。
【0036】
(無機多孔質担体の作製方法)
本実施形態の製造方法で用いる無機多孔質担体は、例えば、無機多孔質体に、第1級アミノ基又は保護された第1級アミノ基を有するシランカップリング剤等を反応させることにより作製することができる。以下、無機多孔質体に、第1級アミノ基又は保護された第1級アミノ基を有するシランカップリング剤を反応させて、無機多孔質担体を調製する方法を説明する。
【0037】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(s1)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0038】
【化3】
[式中、Rは、炭素数1~4のアルキル基を表し、mは、1~4の整数を表し、nは、2~8の整数を表し、Lは、単結合又は-NH-を表す。]
【0039】
具体的には、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシランなどの1個の第1級アミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(Lcaa(C9))などの1個の第1級アミノ基と1個の第2級アミノ基とを有するアミノアルキルアルコキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
無機多孔質体と第1級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応は、通常、乾燥した有機溶媒、例えば、アセトニトリル、トルエン、キシレン、アニソール、2-ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、またはこれらの2種以上中で実施する。前記シランカップリング剤との反応を妨げる水分を除く為に、無機多孔質体に含まれる水分を予め除いておくことが好ましく、無機多孔質体をトルエンやキシレンなどの有機溶媒中に分散させた後、脱水処理をすることにより、水分を除去することができる。無機多孔質体の脱水を有機溶媒中で実施した場合には、脱水処理後の混合物に前記シランカップリング剤を加えて、引き続き無機多孔質体とシランカップリング剤との反応を実施することができる。
前記シランカップリング剤と無機多孔質体との反応における反応温度は、例えば、0~110℃、好ましくは100~110℃であるが、通常、シランカップリング剤と無機多孔質体によっては、用いる有機溶媒の沸点近くの温度、すなわち、還流温度で反応を実施してもよい。また、反応時間は、通常、2~6時間程度であるが、用いる無機多孔質体とシランカップリング剤によっては、適宜、反応時間を短縮しても延長してもよい。
使用する前記シランカップリング剤の量は、無機多孔質体の比表面積および目標とする第1級アミノ基の量を勘案して、適宜設定することができる。
上述の反応により得られた無機多孔質担体は、常法によって、分離、洗浄、乾燥し、RNA合成用の固相担体として使用することができる。
【0041】
また、無機多孔質体とシランカップリング剤との反応後、さらに、アミン化合物を反応させて、リンカーを伸長させてもよい。例えば、前記式(s1)においてm=1であり、n=2であり、Lが、単結合を表すとき、公知の方法により、前記式(s1)で表されるシランカップリング剤を無機多孔質体と反応させて、第1級アミノ基を含む無機多孔質担体を得た後、前記末端の1級アミノ基をさらにp-ニトロフェニルギ酸クロライドと反応させ、反応性のカルボニル基を導入し、これに種々のアルカンジアミンを反応させて、下記のリンカー(L-1)又は(L-2)を有する無機多孔質担体を調製することができる。
【0042】
【化4】
[式(L-1)、(L-2)中、rは、1~3の整数を表す。]
【0043】
上記のように製造した無機多孔質担体は、上記で説明した方法によりアミノ基量を算出し、第1アミノ基量が上記式(1)を満たすことを確認すればよい。そして、上記式(1)を満たすことが確認された無機多孔質担体を用いて、RNA固相合成を行う。
また、かかる無機多孔質担体にスクシニル基を介してヌクレオシドを結合させた固相担体を合成してRNAの固相合成に使用することができる。
【0044】
<RNA合成>
本実施形態の製造方法では、上記説明した無機多孔質担体を用いて、ホスホロアミダイト法により、RNAの固相合成を行う。ホスホロアミダイト法は、公知の方法により行うことができる。ホスホロアミダイト法によるRNA合成の具体例を以下に示す。
【0045】
第1級アミノ基を含む無機多孔質担体と、ヒドロキシル基が保護されたヌクレオシドを含むリンカーとを反応させて、固相担体を製造し、これを用いた固相合成法により、所望のアミダイト化合物と、例えば、核酸合成機(AKTA Oligopilot100plus(GEヘルスケア社製)等)を用いた反応を繰り返すことにより、RNAを合成することができる。なお、本明細書において、「アミダイト化合物」とは、アミダイトの構造を含む化合物を意味し、例えば、ヒドロキシル基が保護されたヌクレオシドホスホロアミダイト等が挙げられる。
【0046】
かかるRNA固相合成法で使用するアミダイト化合物としては、特に制限されず、たとえば、下記構造式(2)中の、保護基Rがtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、ビス(2-アセトキシ)メチル(ACE)基、(トリイソプロピルシリロキシ)メチル(TOM)基、(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、(2-シアノエトキシ)メチル(CEM)基、パラ-トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基、(2-シアノエトキシ)メトキシメチル(EMM)基などである、TBDMSアミダイト(TBDMS RNA Amidites、商品名、ChemGenes Corporation)、ACEアミダイト、TOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト(Chakhmakhchevaの総説:Protective Groups in the Chemical Synthesis of Oligoribonucleotides、Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 2013, Vol. 39, No. 1, pp. 1-21.)、EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号に記載)等を使用することもできる。
【0047】
【化5】
[式(2)において、Rは保護されていてもよい核酸塩基を示し、Rは、保護基を表す。]
【0048】
アミダイト化合物としては、下記構造式(3)に示されるプロリン骨格を有するアミダイト(Amidite P)を使用することもできる(WO2012/017919の実施例A4参照)。また、構造式(III-c)、(III-d)および(III-e)で表される下記のアミダイト(WO2013/103146の実施例A1~A3参照)を使用して核酸を合成することもできる。
【0049】
【化6】
[式(3)において、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。]
【0050】
【化7】
[式中、iPrはイソプロピル基を表し、DMTrは4,4’-ジメトキシトリチル基を表し、Tfaはトリフルオロアセチル基を表す。]
【0051】
アミダイト化合物中のヌクレオチドを構成する塩基は、通常は、核酸、典型的にはRNAを構成する天然の塩基であるが、非天然の塩基を場合によっては、使用してもよい。かかる非天然の塩基としては、天然又は非天然の塩基の修飾アナログが例示される。
【0052】
塩基の例としては、例えば、前記式(2)において、Rが、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基等が挙げられる。塩基は、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ネブラリン(nebularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等が挙げられる。前記塩基は、例えば、2-アミノアデニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン等のアミノ誘導体;5-メチルウラシル、5-メチルシトシン、7-メチルグアニン、6-メチルプリン、2-プロピルプリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;6-アザウラシル、6-アザシトシン及び6-アザチミン;5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化及び他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化及び他の5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);ジヒドロウラシル;3-デアザ-5-アザシトシン;7-デアザアデニン;N6-メチルアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン;5-アミノ-アリル-ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル-5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;2-チオウラシル、5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等;およびこれらの2種以上が挙げられる。また、プリンおよびピリミジンは、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858~859頁、クロシュビッツ・ジェー・アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0053】
無機多孔質担体の第1級アミノ基に対して、核酸伸長反応の起点となるヒドロキシル基を含むヌクレオシドを結合させる工程について説明する。この工程の反応には、公知の核酸固相合成用のリボヌクレオシドリンカー又はユニバーサルリンカーを用いることができる。リボヌクレオシドリンカー及びユニバーサルリンカーは、公知のものを特に制限なく使用することができる。リボヌクレオシドリンカーを用いる場合、合成するRNAの配列に応じて、3’末端の塩基に対応するリボヌクレオシドリンカーを選択する。
前記リボヌクレオシドリンカー又はユニバーサルリンカーとしては、第1級アミノ基と反応する官能基としてスクシニル基を有するもの(スクシニルリンカー)が挙げられる。また、核酸伸長反応の起点となるヒドロキシル基が、ジメトキシトリチル(DMTr)基等の保護基により保護されたものが挙げられる。
【0054】
(核酸伸長反応)
本明細書において、「核酸伸長反応」とは、ホスホジエステル結合を介して、ヌクレオチドを順次結合させることにより、核酸鎖、特にRNA鎖を伸長させる反応を意味する。核酸伸長反応は、一般的なホスホロアミダイト法の手順に従い行うことができる。核酸伸長反応は、ホスホロアミダイト法を採用する核酸自動合成装置等を用いて行ってもよい。
【0055】
ホスホロアミダイト法では、一般的に、脱保護工程、縮合工程、及び酸化工程の各工程を繰り返し行うことにより、核酸伸長反応を行う。
【0056】
脱保護反応は、固相担体上に担持されるRNA鎖末端の5’ヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程である。一般的な保護基としては、DMTr基が用いられる。脱保護は、酸を用いて行うことができる。脱保護用の酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸等、またはこれらの2種以上が挙げられる。
【0057】
縮合工程は、前記脱保護工程により脱保護したRNA鎖末端の5’ヒドロキシル基に対して、ヌクレオシドホスホロアミダイトを結合させる反応である。前記ヌクレオシドホスホロアミダイトとしては、5’ヒドロキシル基が保護基(例、DMTr基)で保護されたものを用いる。縮合工程は、前記ヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化する活性化剤を用いて行うことができる。活性化剤としては、例えば、5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(BTT)、1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール(DCI)、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)、N-メチルベンズイミダゾリウムトリフラート(N-MeBIT)、ベンズイミダゾリウムトリフラート(BIT)、N-フェニルイミダゾリウムトリフラート(N-PhIMT)、イミダゾリウムトリフラート(IMT)、5-ニトロベンズイミダゾリウムトリフラート(NBT)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)又は5-(ビス-3,5-トリフルオロメチルフェニル)-1H-テトラゾール(Activator-42)等、またはこれらの2種以上が挙げられる。
縮合工程の後は、適宜、未反応の5’ヒドロキシル基をキャッピングしてもよい。キャッピングは、無水酢酸-テトラヒドロフラン溶液、フェノキシ酢酸/N-メチルイミダゾール溶液等の公知のキャッピング溶液を用いて行うことができる。
【0058】
酸化工程は、前記縮合工程により形成された亜リン酸エステルを酸化する工程である。酸化工程は、酸化剤を用いて行うことができる。酸化剤としては、ヨウ素、m-クロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2-ブタノンペルオキシド、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、1,1-ジヒドロペルオキシシクロドデカン、過酸化水素等、またはこれらの2種以上が挙げられる。酸化工程は、前記キャッピング操作の後で行ってもよいし、逆に、酸化工程の後でキャッピング操作を行ってもよいし、この順番は限定されない。
【0059】
酸化工程後は、脱保護工程に戻り、合成するRNA鎖の鎖長に応じて、上記工程を繰り返すことにより、所望の配列を有するRNAを合成することができる。
所望の配列を有するRNA鎖の合成が完了した後は、アンモニア又はアミン類等を用いて、固相担体からRNA鎖を切断して回収する。アミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等、またはこれらの2種以上が挙げられる。
回収したRNAは、適宜、公知の方法で精製してもよい。
【0060】
RNAの合成は、DNAの合成と比較して難易度が高く、特に長鎖RNAの合成においては、収率や純度が大きく低下する。しかしながら、本実施形態の製造方法では、上記の固相担体を用いることにより、長鎖RNAの合成においても、高い収率及び純度を維持し得る。
本実施形態の製造方法により合成されるRNAとしては、例えば、40mer以上又は50mer以上のRNAが挙げられる。RNA鎖の鎖長の上限は、特に限定されないが、例えば、200mer以下又は150mer以下とすることができる。
本実施形態の製造方法により得られるRNAは、純度が高く品質が良好であるため、医薬品等に好適に用いることができる。
【0061】
本実施形態の製造方法は、下記の工程1~4を含む方法であってもよい:
工程1)前記第1級アミノ基を含む無機多孔質担体と、ヒドロキシル基が保護されたヌクレオシドを含むリンカーとを反応させて、前記無機多孔質担体に前記保護されたヌクレオシドを導入する工程;
工程2)前記ヌクレオシドを導入した無機多孔質担体を核酸固相合成機のカラムに充填する工程;
工程3)前記核酸固相合成機を使用して、脱保護、アミダイト化合物を用いたカップリング、及び酸化を含むサイクルを、複数回繰り返す工程;および
工程4)前記工程3の後、無機多孔質担体から、ヒドロキシル基が保護されたRNAを切り出し、脱保護する工程。
上記工程3)におけるサイクル数は、合成するRNAの長さに応じて設定すればよく、例えば、40回以上、又は50回以上等とすることができる。また、サイクル数の上限は、例えば、200回以下、又は150回以下等とすることができる。
【0062】
本発明は、他の態様において、(a)第1級アミノ基を含む無機多孔質担体であって、第1級アミノ基の量が、下記式(1)を満たす、無機多孔質担体を選択する工程と、(b)前記無機多孔質担体を用いて、ホスホロアミダイト法により、RNAを合成する工程と、を含む、RNAの製造方法もまた提供する。
【0063】
【数6】
I:2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法により測定される無機多孔質担体の単位質量当たりのアミノ基量(μmol/g)
R:無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合(第1級アミノ基量/全アミノ基量)
S:窒素吸着法により測定される無機多孔質担体の比表面積(m/g)
【実施例
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0065】
<測定方法>
以下の試験で用いた各測定方法を以下に示す。
【0066】
(測定方法1:CPG上に担持されたアミノ基の測定方法)
a. 2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法
無機多孔質担体40~50mgを、脱脂綿で栓をしたパスツールピペットに採取し、5容量%のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)/テトラヒドロフラン(THF)溶液1mLを通液して洗浄した。次に、50mM 2-ニトロベンゼンスルホン酸/THF溶液1mLで4回通液した後、1mLのTHFで4回通液して洗浄した。次いで、10mLメスフラスコを受器として、希アンモニア水(28%アンモニア水1容を水100容にて希釈した溶液)とアセトニトリルとの1対1(容量比)混合液を通液した。メスフラスコに受けた流出液を15容量%アセトニトリル/水溶液にて10mLに希釈し、分析試料とした。当該試料を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、下記の条件に従って分析した。さらに、下記に従って作成した検量線から、無機多孔質担体に担持されたアミノ基量Iを求めた。
【0067】
〔高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件〕
カラム:Scherzo SM-C18(Imtakt製),4.6mmφ×150mm,3μm
移動相:A液 10mM ギ酸アンモニウム水溶液
B液 アセトニトリル
グラジエント条件:A/B=85%/15%(一定)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:210nm
注入量:10μL
【0068】
〔検量線の作成〕
上記2-ニトロベンゼンスルホン酸吸着法に用いた2-ニトロベンゼンスルホン酸試薬(2-ニトロベンゼンスルホン酸水和物)の中和滴定を行い、試薬中の2-ニトロベンゼンスルホン酸の含有量を求めた。次に、異なる濃度の2-ニトロベンゼンスルホン酸溶液を3種類調製し、HPLCを用いて、上記の条件に従って分析した。HPLCによるピーク面積値を縦軸に、2-ニトロベンゼンスルホン酸濃度を横軸にとってプロットし、線形近似により検量線を得た。
【0069】
(測定方法2:CPG比表面積の測定方法)
CPG比表面積の測定は、窒素吸着法により、以下の手順に従って行った。
試料の前処理として、BELPREP-vacII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用して120℃で3時間、真空脱気を行った。前記処理を行った試料0.3gを、BELSORP-mini(マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用して真空脱気しながら温度77Kで試料に窒素ガスを吸着後、脱着させ、得られた吸着等温線から、BET法により比表面積Sを算出した。
【0070】
(測定方法3:ヌクレオシド担持量の測定方法)
70%過塩素酸をメタノールで希釈し、30%過塩素酸溶液を調製した。ヌクレオシドを担持させた無機多孔質担体40~50mgをメスフラスコに採取し、30%過塩素酸溶液で20mLに希釈した。この溶液を30%過塩素酸溶液でさらに10倍に希釈した後、脱離したDMTrカチオンの498nmでの吸光度を測定し、ヌクレオシド担持量を算出した。
【0071】
(測定方法4-a:オリゴヌクレオチドの純度の測定方法)
固相合成後のオリゴヌクレオチド粗生成物の純度の測定は、HPLCにより行った。粗生成物をHPLC(波長260nm、カラムDNAPacTM PA100 4×250mm)によって各成分に分離し、得られたクロマトグラムの総面積値における主生成物の面積値からオリゴヌクレオチドの純度を算出した。
【0072】
(測定方法4-b:オリゴヌクレオチドの純度の測定方法)
固相合成後のオリゴヌクレオチド粗生成物の純度の測定は、HPLCにより行った。粗生成物をHPLC(波長260nm、カラムACQUITY UPLC Oigonucleotide BHE C18,2.1mm×100mm)によって各成分に分離し、得られたクロマトグラムの総面積値における主生成物の面積値からオリゴヌクレオチドの純度を算出した。
【0073】
<第1級アミノ基を含む無機多孔質担体の作製>
以下のようにCPGのアミノ基修飾を行い、実施例1~17、比較例1~6の無機多孔質担体を作製した。表1および2に、各例で用いたCPG(Controlled Pore Glass)の物性とそれに対応する第1級アミノ基を含む無機多孔質担体のアミノ基量をまとめて示す。
【0074】
(実施例1~9)
実施例1~9の無機多孔質担体として、アミノ基修飾されたCPGをそれぞれ用意した。実施例1~9で用いたCPGの物性及び無機多孔質担体に担持されたアミノ基量を、表1に示した。
【0075】
(実施例10)アミノ基修飾
Dean-Stark装置を用い、トルエン共沸にて脱水処理を予め施したCPG(6.07g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(40.6mL)を加えた。更に[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(121μL,425.8μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表1に記す。
【0076】
(実施例11)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.36g)、トルエン(42.5mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(72.3μL,254.4μmol)を使用する以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表1に記す。
【0077】
(実施例12)アミノ基修飾
CPG(3.00g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(23.1mL)を加えた。更に3-(Trimethoxysilyl)propylamine(27.5μL,156.5μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表1に記す。
【0078】
(実施例13)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.90g)、トルエン(46.2mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(58μL,204.1μmol)を使用する以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0079】
(実施例14)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.92g)、トルエン(46.3mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(58μL,204.1μmol)とTrimethoxy(methyl)silane(87.0μL,613.1μmol)とを用いる以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0080】
(実施例15)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.82g)、トルエン(52.5mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(46μL,163.3μmol)を使用する以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0081】
(実施例16)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.87g)、トルエン(45.9mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(44μL,153.8μmol)とTrimethoxy(methyl)silane(29μL,205.1μmol)とを使用する以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0082】
(実施例17)アミノ基修飾
実施例10の方法において、CPG(6.95g)、トルエン(46.5mL)、[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(81.5μL,286.8μmol)を使用する以外は、実施例10と同様の方法で、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0083】
(比較例1、2)
比較例1及び2の無機多孔質担体として、表1に記載のとおりのアミノ基量でLcaa(C9)を担持したCPGをそれぞれ使用した。
【0084】
(比較例3)アミノ基修飾
表1に記載のとおりの物性を有するCPG(6.17g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(41.1mL)を加えた。更に[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(238μL,837.6μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表1に記す。
【0085】
(比較例4)アミノ基修飾
CPG(7.00g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(53.9mL)を加えた。更に3-(Trimethoxysilyl)propylamine(335.0μL,1905.9μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表1に記す。
【0086】
(比較例5)アミノ基修飾
表2に記載のとおりの物性を有するCPG(5.00g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(33.5mL)を加えた。更に[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(286μL,1006.4μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0087】
(比較例6)アミノ基修飾
表2に記載のとおりの物性を有するCPG(5.09g)を、200mL4つ口フラスコに入れ、トルエン(33.5mL)を加えた。更に[3-(6-Aminohexylamino)-propyl]trimethoxysilane(186μL,652.8μmol)を加え、4時間110℃で加熱還流した。その後、室温まで冷却した反応液を濾過除去し、トルエン、メタノール、水で順次洗浄した後、1N塩酸で中和した。更に、中和液を濾過除去後、水、メタノールで順次洗浄し、減圧下で乾燥させ、アミノ基修飾したCPGを白色粉末状固体(アミノ基を含む無機多孔質担体)として得た。CPGの物性とともにアミノ基量を表2に記す。
【0088】
[比表面積当たりのアミノ基担持量((I×R)/S)]
〔アミノ基担持量Iの測定〕
上記測定方法1の方法に従って、実施例1~17、比較例1~6の無機多孔質担体のアミノ基担持量を測定した。その結果を「アミノ基量I」として表1及び表2に示した。
【0089】
〔CPGの比表面積の測定〕
上記測定方法2の方法に従って、実施例1~17、比較例1~6の無機多孔質担体に用いたCPGの比表面積を測定した。その結果を「比表面積S」として表1及び表2に示した。
【0090】
〔比表面積当たりの第1級アミノ基量((I×R)/S)の算出〕
上記測定されたアミノ基担持量I及びCPGの比表面積Sから、実施例1~17、比較例1~6の比表面積当たりのアミノ基担持量((I×R)/S)それぞれ算出した。その結果を「比表面積当たりの1級アミノ基量((I×R)/S)」として表1及び表2に示した。なお、実施例1~11、13~17、及び比較例1~3、5、6では、アミノ基担持用リンカーとして用いたLcaa(C9)を用いており、無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合Rは、1/2(すなわち0.5)である。また、実施例12及び比較例4では、アミノ基担持用リンカーとして用いたAminopropylを用いており、無機多孔質担体に含まれる全アミノ基中の第1級アミノ基の割合Rは、1/1(すなわち1)である。
【0091】
<無機多孔質担体へのヌクレオシドの担持>
(実施例1の無機多孔質担体)
rG-succinate 154.9mg、HBTU(1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-benzotriazolium 3-Oxide Hexafluorophosphate) 63.1mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン39.5μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例1の無機多孔質担体約3.0gを加えた。25℃で20時間静置した後ろ過し、固体をアセトニトリル100mLで洗浄した。洗浄後の固体に0.35mol/L フェノキシ酢酸無水物溶液(テトラヒドロフラン/ピリジン混合溶媒、容量比8/1)25mLを加えた。3時間静置した後にろ過し、固体をアセトニトリル100mLで洗浄した後、乾燥して、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0092】
(実施例2の無機多孔質担体)
上記実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 174.1mg、HBTU 84.0mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン72.3μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例2の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0093】
(実施例3の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 224.5mg、HBTU 100.6mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン86.1μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例3の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0094】
(実施例4の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 114.3mg、HBTU 46.7mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン24.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例4の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0095】
(実施例5の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 160.0mg、HBTU 65.7mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン32.9μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例5の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0096】
(実施例6の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 193.2mg、HBTU 93.4mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン80.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例6の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0097】
(実施例7の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 206.2mg、HBTU 92.8mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン79.3μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例7の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0098】
(実施例8の無機多孔質担体)
実施例1無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 211.2mg、HBTU 94.8mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン81.1μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例8の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0099】
(実施例9の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 251.9mg、HBTU 113.2mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン96.7μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例9の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0100】
(実施例10の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 135.4mg、HBTU 56.0mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン35.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例10の無機多孔質担体約2.5gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0101】
(実施例11の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 161.9mg、HBTU 68.0mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン45.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例11の無機多孔質担体約2.5gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0102】
(実施例12の無機多孔質担体)
rG-succinate 259.4mg、HBTU 96.8mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン65.0μLおよびアセトニトリル15mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例12の無機多孔質担体2.31gを加えた。25℃で21時間静置した後ろ過し、固体をアセトニトリル80mLで洗浄した。洗浄後の固体に0.35mol/L フェノキシ酢酸無水物溶液(テトラヒドロフラン/ピリジン混合溶媒、容量比8/1)46mLを加えた。3時間静置した後にろ過し、固体をアセトニトリル80mLで洗浄した後、乾燥して、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0103】
(比較例1の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 286.0mg、HBTU 128.1mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン109.4μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例1の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0104】
(比較例2の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 94.2mg、HBTU 42.2mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン36.1μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例2の無機多孔質担体約3.0gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0105】
(比較例3の無機多孔質担体)
実施例1の無機多孔質担体で用いた方法において、rG-succinate 123.3mg、HBTU 50.2mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン35.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例3の無機多孔質担体約2.5gを用いる以外は、実施例1の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0106】
(比較例4の無機多孔質担体)
rG-succinate 676.7mg、HBTU 251.2mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン170.0μLおよびアセトニトリル15mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例4の無機多孔質担体3.00gを加えた。25℃で18時間静置した後ろ過し、固体をアセトニトリル100mLで洗浄した。洗浄後の固体に0.35mol/L フェノキシ酢酸無水物溶液(テトラヒドロフラン/ピリジン混合溶媒、容量比8/1)60mLを加えた。3時間静置した後にろ過し、固体をアセトニトリル100mLで洗浄した後、乾燥して、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0107】
上記で使用したrG-succinateの構造を以下に示す。
【化8】
[式中、Rは、水素原子、ピリジン塩(=ピリジン+H)、又はトリエチルアミン塩(=トリエチルアミン+H)を表し、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、TBDMSはtert-ブチルジメチルシリル基を表す。]
【0108】
(実施例13の無機多孔質担体)
rU-succinate 93.0mg、HBTU 47.1mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン31.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例13の無機多孔質担体2.50gを加えた。25℃で18時間静置した後ろ過し、固体をアセトニトリル83mLで洗浄した。洗浄後の固体に10%酢酸無水物溶液(80%THF/10%ピリジン混合溶媒)13mLと16%NMI(1-Methylimidazole)84%THF溶液13mLを加えた。1時間静置した後にろ過し、固体をアセトニトリル83mLで洗浄した後、乾燥して、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0109】
(実施例14の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 89.1mg、HBTU 44.5mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン29.3μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例14の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0110】
(実施例15の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 133.4mg、HBTU 66.9mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン39.2μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例15の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0111】
(実施例16の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 137.8mg、HBTU 69.2mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン40.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例16の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0112】
(実施例17の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 117.5mg、HBTU 58.3mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン40.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、実施例17の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0113】
(比較例5の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 410.0mg、HBTU 210.0mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン150.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例5の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0114】
(比較例6の無機多孔質担体)
実施例13の無機多孔質担体で用いた方法において、rU-succinate 280.0mg、HBTU 140.0mg、N,N-ジイソプロピルエチルアミン95.0μLおよびアセトニトリル12mLを混合し、アミノ基を担持した、比較例6の無機多孔質担体2.50gを用いる以外は、実施例13の無機多孔質担体で用いた方法と同様の方法で、ヌクレオシドを担持したCPGを白色粉末状固体(ヌクレオシドを含む無機多孔質担体)として得た。
【0115】
上記で使用したrU-succinateの構造を以下に示す。
【化9】
[式中、Rは、水素原子、ピリジン塩(=ピリジン+H)、又はトリエチルアミン塩(=トリエチルアミン+H)を表し、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、TBDMSはtert-ブチルジメチルシリル基を表す。]
【0116】
[ヌクレオシド担持量の測定]
上記測定方法3の方法に従って、実施例1~12、比較例1~4の無機多孔質担体のヌクレオシド基担持量を測定した。その結果を「Tr担持量」として表1に示した。
【0117】
<長鎖オリゴヌクレオチドの固相合成>
(実施例1~12、比較例1~4の無機多孔質担体)
配列(A):5’-AGCAGAGUACACACAGCAUAUACC-P-GGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUC-P-G-3’(配列番号1,2) 53mer。AGCAGAGUACACACAGCAUAUACC(配列番号1)およびGGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUC(配列番号2)。
【0118】
前記配列(A)において、Pは、以下の化学式において波線で区切られる部分構造で示される。
【化10】
【0119】
固相担体として、上記で製造した、ヌクレオシドを担持した実施例1~12、及び比較例1~4のいずれかの無機多孔質担体を使用し、核酸合成機としてAKTA Oligopilot100plus(GEヘルスケア社製)を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、上記配列(A)からなるオリゴヌクレオチドを3’側から5’側に向かって合成した。合成には、US2012/0035246の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト、実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイト、およびWO2017/188042に記載の化合物(3)を使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN-メチルイミダゾール溶液を使用した。
【0120】
(実施例13~17、比較例5~6の無機多孔質担体)
配列(B):5’-AUAACUCAAUUUGUAAAAAAGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU-3’(配列番号3) 103mer
(Jinek M, Chylinski K, Fonfara I, Hauer M, Doudna JA, Charpentier E. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science. 2012 Aug 17;337(6096):816-21.)
【0121】
固相担体として、上記で製造した、ヌクレオシドを担持した実施例13~17及び比較例5~6のいずれかの無機多孔質担体を使用し、核酸合成機としてAKTA Oligopilot100plus(GEヘルスケア社製)を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、上記配列(B)からなるオリゴヌクレオチドを3’側から5’側に向かって合成した。合成には、US2012/0035246の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイトおよび実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイトを使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN-メチルイミダゾール溶液を使用した。
【0122】
<オリゴヌクレオチドの固相担体からの遊離および脱保護>
(実施例1~17、比較例1~6の無機多孔質担体)
実施例1~17及び比較例1~6のいずれかの無機多孔質担体を用いた上記の固相合成終了後、ヌクレオシド担持量として8.1μmolに相当する量を採取し、アンモニア水、次いでニトロメタンの存在下でフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)を作用させてオリゴヌクレオチドを固相担体から遊離させるとともに脱保護を行い、粗生成物を得た。
【0123】
[オリゴヌクレオチド収量の測定]
前記粗生成物のOD260を測定した。OD260とは1mL溶液(pH=7.5)における10mm光路長あたりのUV260nmの吸光度を表す。一般的にRNAでは1OD=40μgであることが知られていることから、前記OD260の測定値に基づき、収量を算出した。さらに、無機多孔質担体の単位体積当たりの収量を算出した。実施例1~12及び比較例1~4については実施例2の収量に対する相対収量を求め、その結果を「単位体積当たりの相対収量」として表1に示した。実施例13~17及び比較例5~6については実施例13の収量に対する相対収量を求め、その結果を「単位体積当たりの相対収量」として表2に示した。
【0124】
[純度の測定]
(実施例1~12、比較例1~4の無機多孔質担体)
上記測定方法4-aの方法に従って、実施例1~12、比較例1~4の無機多孔質担体を用いて合成したオリゴヌクレオチドの純度を測定した。その結果を「純度」として表1に示した。
【0125】
(実施例13~17、比較例5~6の無機多孔質担体)
上記測定方法4-bの方法に従って、実施例13~17、比較例5~6の無機多孔質担体を用いて合成したオリゴヌクレオチドの純度を測定した。その結果を「純度」として表2に示した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
表1及び2に示すように、実施例1~17で用いた無機多孔質担体では、いずれも、無機多孔質担体の比表面積当たりの第1級アミノ基の担持量((I×R)/S)が0.7~1.8μmol/mの範囲内であった。一方、比較例1~6で用いた無機多孔質担体では、いずれも、(I×R)/S>1.8μmol/mであり、前記の範囲外であった。実施例1~12では、比較例1~4と比較して、オリゴ核酸の純度が大きく向上した。また、実施例13~17においても、比較例5及び6と比較して、オリゴ核酸の純度が大きく向上した。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明により、中鎖~長鎖RNA合成においても純度を向上させることができる、RNAの製造方法が提供される。本発明の実施態様にかかる製造方法により得られるRNAは、医薬品の原料として有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0130】
配列表の配列番号1~3は、本発明の製造方法に従って製造されるオリゴヌクレオチドの塩基配列を表す。
【配列表】
0007522099000001.app