(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】粒子解析装置および粒子解析方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20240717BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20240717BHJP
G01N 15/0227 20240101ALI20240717BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
G01N23/2251
G01N15/0227 110
(21)【出願番号】P 2023525250
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021021042
(87)【国際公開番号】W WO2022254620
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 絵里乃
(72)【発明者】
【氏名】久田 明子
(72)【発明者】
【氏名】大南 祐介
(72)【発明者】
【氏名】平野 遼
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-87369(JP,A)
【文献】特開2006-269489(JP,A)
【文献】特開2007-26885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0075287(US,A1)
【文献】国際公開第2018/138874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
G01N 23/2251
G01N 15/0227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の粒子を解析する粒子解析装置であって、
前記粒子解析装置は、複数の動作パターンのいずれかで動作可能であり、前記複数の動作パターンは、
第1時間で調製された1つ以上の粒子の画像を第1倍率で取得した後に、単一の粒子の形態が第1基準を満たしているかを判定する第1動作パターンと、
前記第1時間で調製された複数の粒子の画像を取得した後に、前記複数の粒子の明るさおよび面積が第2基準を満たしているかを判定する第2動作パターンと、
前記第1時間より長い第2時間で調製された複数の粒子の画像を、前記第1倍率より低い第2倍率で取得した後に、前記複数の粒子の数が第3基準を満たしているかを判定する第3動作パターンと、
を含む粒子解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、前記画像を取得する電子顕微鏡を備える、粒子解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子解析装置であって、
前記1つ以上の粒子を濃縮することによって試料を作製する観察試料作製装置と、
前記第1基準、前記第2基準および前記第3基準を表す情報を格納するデータベースと、
前記判定の結果を表示するディスプレイと、
を備える粒子解析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、
前記粒子解析装置は、観察倍率および粒子サイズを取得し、
前記粒子解析装置は、前記観察倍率をM倍とし、前記粒子サイズをDマイクロメートルとし、比例定数をKとして、M=K/Dとしたときに、
K>5000である場合には、前記第1動作パターンで動作し、
500<K<5000である場合には、前記第2動作パターンで動作し、
K<500である場合には、前記第3動作パターンで動作する、
粒子解析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、前記1つ以上の粒子は、アルコールまたは金属を含む染色剤を用いて処理された粒子である、粒子解析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、前記粒子解析装置は、前記1つ以上の粒子に液体を分注し、画像取得範囲全体において前記液体をろ過することにより、前記1つ以上の粒子を前記画像取得範囲にわたって分散させる、粒子解析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、
前記粒子解析装置はデータベースを備え、
前記データベースは、
前記第1基準、前記第2基準および前記第3基準を表す情報と、
前記第1基準、前記第2基準および前記第3基準に関連する判定を行うためのプログラムと、
を格納する、粒子解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の粒子解析装置であって、
前記粒子解析装置は、通信ネットワークを介して外部のコンピュータと接続され、
前記粒子解析装置は、前記外部のコンピュータから、
前記第1基準、前記第2基準または前記第3基準を表す情報、または、
前記第1基準、前記第2基準または前記第3基準に関連する判定を行うためのプログラム、
を取得する、粒子解析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の粒子解析装置であって、
前記第2動作パターンにおいて、前記画像は、前記第1倍率より低く前記第2倍率より高い中間倍率で取得される、粒子解析装置。
【請求項10】
請求項3に記載の粒子解析装置であって、
前記ディスプレイは、
前記1つ以上の粒子の種類および状態を入力するための粒子パラメータ入力部と、
前記判定の結果を表示するための結果表示部と、
を表示する、粒子解析装置。
【請求項11】
1つ以上の粒子を解析する粒子解析方法であって、
前記粒子解析方法は、複数の動作パターンのいずれかで実行可能であり、前記複数の動作パターンは、
第1時間で調製された1つ以上の粒子の画像を第1倍率で取得した後に、単一の粒子の形態が第1基準を満たしているかを判定する第1動作パターンと、
前記第1時間で調製された複数の粒子の画像を取得した後に、前記複数の粒子の明るさおよび面積が第2基準を満たしているかを判定する第2動作パターンと、
前記第1時間より長い第2時間で調製された複数の粒子の画像を、前記第1倍率より低い第2倍率で取得した後に、前記複数の粒子の数が第3基準を満たしているかを判定する第3動作パターンと、
を含む粒子解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子解析装置および粒子解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のナノ・マイクロテクノロジーの発展から、百ナノメートルから数百マイクロメートル程度の粒子を使用する産業が増加している。例えば、電子回路の微細化に伴うコンデンサに使う誘電体粒子や、電池の大容量化に伴う電極材に使う導電性微粒子などである。これら粒子は、粉砕や焼結による粒子形成や結晶成長などの製造プロセスをへて製造される。製造の観点でこれら粒子の評価が重要である一方で、製造した材料に混入する異物粒子の許容可能なサイズの微細化も進んでいる。つまり、材料製造プロセスで混入する異物としての粒子の評価も重要になってきている。
【0003】
粒子を検査するために顕微鏡画像の解析が用いられる。さらに粒子を詳細に評価するため十分な分解能をもつ電子顕微鏡がよく用いられる。特許文献1は濾過面積を制御することによって、液体に含まれる異物の捕集を迅速化するための方法を開示している。特許文献2では、電子顕微鏡を用いた粒子解析の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-138226号公報
【文献】特開2012-238722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術(たとえば特許文献2)では、粒子の観察条件および検査指標が単一パターンであり、固定された条件で調製される粒子の解析にしか適応することができない。
【0006】
本発明は、粒子に係る条件に応じて3つの動作パターンのいずれかで動作することにより、粒子に係る条件に応じた解析を可能とする粒子解析装置および粒子解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粒子解析装置の一例は、
1つ以上の粒子を解析する粒子解析装置であって、
前記粒子解析装置は、複数の動作パターンのいずれかで動作可能であり、前記複数の動作パターンは、
第1時間で調製された1つ以上の粒子の画像を第1倍率で取得した後に、単一の粒子の形態が第1基準を満たしているかを判定する第1動作パターンと、
前記第1時間で調製された複数の粒子の画像を取得した後に、前記複数の粒子の明るさおよび面積が第2基準を満たしているかを判定する第2動作パターンと、
前記第1時間より長い第2時間で調製された複数の粒子の画像を、前記第1倍率より低い第2倍率で取得した後に、前記複数の粒子の数が第3基準を満たしているかを判定する第3動作パターンと、
を含む。
また、本発明に係る粒子解析方法の一例は、
1つ以上の粒子を解析する粒子解析方法であって、
前記粒子解析方法は、複数の動作パターンのいずれかで実行可能であり、前記複数の動作パターンは、
第1時間で調製された1つ以上の粒子の画像を第1倍率で取得した後に、単一の粒子の形態が第1基準を満たしているかを判定する第1動作パターンと、
前記第1時間で調製された複数の粒子の画像を取得した後に、前記複数の粒子の明るさおよび面積が第2基準を満たしているかを判定する第2動作パターンと、
前記第1時間より長い第2時間で調製された複数の粒子の画像を、前記第1倍率より低い第2倍率で取得した後に、前記複数の粒子の数が第3基準を満たしているかを判定する第3動作パターンと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る粒子解析装置および粒子解析方法によれば、粒子に係る条件に応じた解析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】粒子の変化に対する粒子サイズと数の関係を示す例のグラフ
【
図7】計測結果をデータベースと照合する例のフローチャート
【
図16】前処理治具を使用した粒子の均一な回収例を示す図
【
図19】データベースにおける各条件のリストの変形例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で、本発明の実施例における粒子の解析方法について詳細を記載する。なお、以下で「粒子」とは、以下のものを含むが、これらに限定されない。
‐粉砕、焼結または結晶化により形成される粒子
‐腐食によって、メッキによって、または電池などの化学反応によって、表面に析出または形成される段差や模様などの立体構造
‐材料の劣化またはエッチングにより発生する空孔または傷
‐外部要因として生成される異物
‐ある粒子に対して外部からの刺激(たとえば加熱、振動、加圧、化学変化など)を加えることで変化した後の粒子
‐有機物であるファイバー、マイクロプラスチック、花粉、細胞、血球、細菌、またはウイルス
【0011】
本発明が活用されるいくつかの例を以下に示す。一つ目の例として、結晶成長を観察し判定を行う場合である。成長の元となる種結晶を用いた結晶成長において、成長初期の短時間後では種結晶の周りに結晶が成長して粒子の形状が変化する。成長が進んだ長時間後では、隣接する結晶同士がくっつくことで粒子数が減少していく。このような場合の粒子判定において本発明を用いることが可能である。
【0012】
二つ目の例として、材料の傷または空孔の成長を観察し判定を行う場合である。材料を劣化させる反応や張力を負荷した状況において、短時間では、元々存在する空孔が広がるという形状変化を示し、長時間では、空孔自体の数が増加し材料が劣化する(シートの引張試験など)。このような場合も本発明を用いることが可能である。
【0013】
三つ目の例として、粉体の粉砕による微粒生成を観察し判定を行う場合である。粉体を粉砕することによる微粒子製造プロセスにおいて、短時間では、粉体を形成する粒子の角が取れるなどの形状変化が起きるが、長時間では、粒子自体が粉砕され、微粒子化することで、トータルの微粒子の数が増える。このような場合の粒子解析に本発明を用いることが可能である。
【0014】
これらの事例の場合に本発明を用いることで、短時間での形状変化を認識することで長時間経過後の判定を実施しなくてよく、検査の効率化が行えるという効果を得られる場合がある。
【0015】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を図面を用いて説明する。
【0016】
結晶成長における粒子の変化の詳細に関して
図1を用いて説明する。図中横軸は時間を表し、粒子の時間経過に伴う変化を示す。縦軸は撮像時の倍率を表す。図中の画像は粒子解析装置によって取得される画像の模式図である。
【0017】
本実施例では、たとえば時刻t0からt1における単一粒子の形態の変化を高倍率にて判定する。高倍率で観察する理由は、単一粒子の形態を詳細に観察できるためである。一方で、粒子の数を判定する場合は、t0からt3まで反応を行った後に行うことで、粒子の数の判定をすることができる。また、中間倍率で観察するとその形状変化と数の両方を捉えることが可能であり、粒子群としてどのような挙動を示しているか判定することができる。
【0018】
横軸を粒子サイズ、縦軸を粒子の数として粒子の分布の変化の様子を
図2に示す。粒子変化前は粒子数が多く粒子サイズが小さいため分布はグラフcのようになり、粒子変化後は粒子数が少なく粒子サイズが大きいためグラフdのようになる。本実施例では、粒子数を評価する場合は縦軸に沿った変化量Yで判定し、粒子サイズで評価する場合は横軸に沿った変化量Xで判定する。粒子群を評価する場合は、縦軸に沿った粒子数の変化量Y’と、横軸に沿った粒子サイズ変化量X’とを用いて判定する。粒子群の判定において、粒子のサイズと数だけでなく明るさによって判定してもよい。
【0019】
なお、
図1と
図2では、時間と共に粒子の数が減少する事例について記載したが、時間と共に増加する場合にも本実施例を適用可能である。
【0020】
粒子を製造するときに、粒子が正しく製造できているか検査する必要がある場合がある。あるいは、粒子の製造においてどのプロセス条件が良いか確認するために、様々な反応条件で生成した粒子の評価を行う場合がある。
【0021】
このような粒子の評価を行う際に、長い時間(
図1の時刻t0~t3)の反応を行わずに、短時間(
図1の時刻t0~t1)の反応を行って高倍率で観察するという選択が可能である。また、正しく粒子が製造できるか確認するためには、長い時間(
図1の時刻t0~t3)の反応を行い、粒子の数の評価するために低倍率で観察するという選択が可能である。
【0022】
つまり、本実施例により、短時間で反応した粒子の形態変化を捉える場合は高倍率で観察を可能とし、長時間かけて粒子を調製した場合等は、形状ではなく粒子の数を多数カウントすることが可能な低倍率での観察を可能とすることによって、粒子判定を効率的に行うことが可能となる。粒子の製造プロセスにおいて、製造途中の短時間で高倍率で観察した画像の解析結果から、その製造条件に問題があることを検知し報告することによって製造の効率化を達成することも可能である。データベースの構築により、得られた画像解析の結果は、製造の条件を最適化して改善提案することにも利用可能である(ソリューション提案)。
【0023】
(電子顕微鏡の有用性)
粒子の数、種類、形態等を観察するためには、粒子の形態の詳細解析が可能な分解能を有することが好適である。そこで、粒子数の解析、粒子種の解析、粒子形態の解析を行うために、数十ミリメートルの視野で観察することも可能であり、ナノメートルサイズの構造物の形態を観察することが可能な電子顕微鏡を用いると好適である。以下では、電子顕微鏡を用いて粒子を解析する方法に関して以下詳細を説明する。但し、以下で説明する方法及び装置は、電子顕微鏡に限らず、光やレーザーを用いる光学式の顕微鏡などでも適応することが可能である。
【0024】
(粒子解析フロー)
図3は本発明を実施するためのフローチャートである。本実施例に係る粒子解析装置は、
図3に示す方法を実行することにより、1つ以上の粒子を解析する。
【0025】
まず初めに、粒子解析装置は、検査する粒子についての観察条件を選択する(S1)。たとえば、使用者が様々な観察条件のうち1つを選択し、粒子解析装置はその入力を受け付ける。観察条件は、たとえば粒子の材料種や調製時間および観察方法(単一の粒子を観察するか、または複数の粒子を観察するか)を表す情報を含む。
【0026】
本実施例に係る粒子解析装置は、複数の動作パターン(
図3に示す3つの動作パターンを含む)のいずれかで動作可能である。また、本実施例に係る粒子解析方法は、これらの動作パターンのいずれかで実行可能である。粒子解析装置は、観察条件に応じて動作パターンのいずれかを選択する。動作パターンは、たとえば調製時間(S2)および解析対象が単一粒子であるか否か(S3)に基づいて選択される。
【0027】
調製時間が短く(たとえば所定の閾値以下であり)、単一粒子を観察する場合には、第1動作パターンが選択される。第1動作パターンでは、第1時間(たとえば比較的短い時間)で調製された粒子の画像を第1倍率(たとえば比較的高い倍率)で取得する(S11)。
【0028】
次に、単一の粒子を抽出する(S12)。複数の粒子を含む画像から単一の粒子の画像を抽出するための具体的な処理は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば公知技術に基づいてもよい。
【0029】
次に、抽出された単一の粒子の形態を計測する(S13)。第1動作パターンにおける粒子の形態は、たとえば粒子の面積および長さによって表される。以下では、顕微鏡画像として表示される粒子サイズのことを粒子の面積と記載するが、実際に画像から計測する値は二次元の顕微鏡画像から抽出可能な、直径、半径、短径、長径、面積、重心、形状などを数値化した情報のことを言う。すなわち、粒子の形態、寸法、面積等は、顕微鏡画像における形態、寸法、面積等であってもよいし、顕微鏡画像に基づいて推定または計算される値によって表されてもよい。「長さ」の定義は当業者が適宜決定可能であるが、たとえば粒子の寸法が最も大きくなる方向における寸法とすることができる。画像に基づいて粒子の面積および長さを取得するための具体的な処理は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば公知技術に基づいてもよい。
【0030】
次に、データベースから粒子の形態に関する第1基準を取得し(S14)、抽出された単一の粒子の形態が第1基準を満たしているかを判定する(S15)。たとえば、面積および長さがそれぞれ所定範囲内であれば第1基準を満たすと判定され、いずれかまたは双方が所定範囲外であれば第1基準を満たさないと判定される。
【0031】
第1基準が満たされる場合には、粒子は正常であると判定され、そうでなければ粒子は異常であると判定される。判定の結果は表示装置または記憶装置に出力されてもよい。
【0032】
調製時間が短く、複数の粒子からなる粒子群を観察する場合には、第2動作パターンが選択される。第2動作パターンでは、第1時間(たとえば比較的短い時間)で調製された粒子の画像を、所定の中間倍率(たとえば第1倍率より低く、後述の第2倍率より高い倍率)で取得する(S21)。
【0033】
次に、複数の粒子からなる粒子群を抽出する(S22)。複数の粒子を含む画像から粒子群の画像を抽出するための具体的な処理は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば公知技術に基づいてもよい。
【0034】
次に、抽出された粒子群の形態を計測する(S23)。第2動作パターンにおける粒子の形態は、たとえば粒子群の明るさおよび面積によって表される。明るさは、たとえば画像における輝度の強度値によって表すことができる。粒子群が複数の画素によって表される場合には、明るさの統計値(平均値、標準偏差、ヒストグラム、等)を用いてもよい。また、画像に基づいて粒子群の面積を取得するための具体的な処理は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば公知技術に基づいてもよい。
【0035】
次に、データベースから粒子の形態に関する第2基準を取得し(S24)、抽出された粒子群の形態が第2基準を満たしているかを判定する(S25)。たとえば、明るさおよび面積がそれぞれ所定範囲内であれば第2基準を満たすと判定され、いずれかまたは双方が所定範囲外であれば第2基準を満たさないと判定される。
【0036】
第2基準が満たされる場合には、粒子群は正常であると判定され、そうでなければ粒子群は異常であると判定される。判定の結果は表示装置または記憶装置に出力されてもよい。
【0037】
調製時間が長い場合(たとえば所定の閾値を超えている場合)には、第3動作パターンが選択される。本実施例では、第3パターンは、複数の粒子からなる粒子群を観察するための動作パターンである。第3動作パターンでは、第1時間より長い第2時間で調製された粒子の画像を低倍率(すなわち第1倍率および中間倍率より低い倍率)で取得する(S31)。
【0038】
次に、複数の粒子からなる粒子群を抽出し(S32)、その粒子群に含まれる粒子の数を計測する(S33)。粒子群の画像に基づいて粒子の数を取得するための具体的な処理は、当業者が適宜設計可能であり、たとえば公知技術に基づいてもよい。
【0039】
次に、データベースから粒子の数に関する第3基準を取得し(S34)、抽出された粒子の数が第3基準を満たしているかを判定する(S35)。たとえば、粒子数が所定範囲内であれば第3基準を満たすと判定され、所定範囲外であれば第3基準を満たさないと判定される。
【0040】
第3基準が満たされる場合には、粒子群は正常であると判定され、そうでなければ粒子群は異常であると判定される。判定の結果は表示装置または記憶装置に出力されてもよい。
【0041】
以下で設定倍率に関して詳細を記載する。1マイクロメートルの粒子を1ピクセルの大きさにするには、
図4(a)より倍率を100倍前後にする。そのため、1マイクロメートルの粒子の数をカウントする場合は、1粒子が最低でも数ピクセルの大きさとなるように、倍率は100~500倍程度とすると好適である。粒子のサイズが10マイクロメートルの場合、好適な倍率は10~50倍程度となる。
【0042】
一方、1マイクロメートル粒子の形態の詳細を把握する場合は、粒子の画像を数十ピクセル程度にするため、
図4(a)より倍率を1000~5000倍程度またはそれ以上にすると好適である。
【0043】
また、1マイクロメートルの粒子群として評価したい場合や、粒子の明るさを評価したい場合は、1マイクロメートルの粒子を数ピクセルから数十ピクセル程度にするため、倍率を500~5000倍程度にすると好適である。
【0044】
ここで、粒子の大きさをD[μm]とし、倍率をM[倍]とし、比例定数をKとすると、
M=K/D
となり、実用上の画像ピクセル数から考えると、
図4(b)に示すように、比例定数Kは以下の通りとなる。
第1動作パターンで単一粒子の評価を行う場合: K>5000
第2動作パターンで粒子群の評価を行う場合: 500<K<5000
第3動作パターンで粒子数の評価を行う場合: K<500
【0045】
S2およびS3に代えて、この比例定数Kに基づいて動作パターンを選択することも可能である。たとえば、粒子解析装置は、S1において観察倍率および粒子サイズを取得する。そして、粒子解析装置は、観察倍率をM[倍]とし、粒子サイズをD[μm]とし、比例定数をKとして、M=K/Dとしたときに、
K>5000である場合には、第1動作パターンで動作し、
500<K<5000である場合には、第2動作パターンで動作し、
K<500である場合には、第3動作パターンで動作する、
ように構成することができる。このように、3段階の倍率を設定することにより、粒子の状態に応じた適切な画像が取得される。
【0046】
粒子の形態の違いをより強調するための方法例を
図5に示す。
図5は、アルコールまたは金属を含む染色剤を用いて処理された粒子500の模式図である。
図5(a)はアルコール処理をした粒子の画像であり、
図5(b)はアルコール処理をしていない粒子の画像である。
【0047】
図5(a)の画像に示されているようにアルコールで処理することで粒子内にアルコールが浸透し形の一部が膨れた形態に変化し、
図5(b)のアルコール処理無しの形態と比べて粒子が増長して観察される。このように、回収した粒子に対して染色剤やアルコールなどの試薬で処理することで、粒子の特徴をより計測しやすくすることが可能である。処理された粒子を用いると、粒子の製造過程の状況や状態について判断するための適切な指標を得ることができる。
【0048】
図6は輝度の強度による粒子の状態の例を示す図である。
図6(a)は観察した粒子に厚みがあり、粒子の中に染色液が浸透しない状態の例を示す図である。粒子の表面からの反射電子のみから得られる像を示す。
図6(b)は観察した粒子に厚みがなく、電子線が粒子を通過し、回収した器材の状態も反映するような状態の例を示す図である。回収した器材にある粒子に加え、反射電子量の違うパターン600(穴など)がある場合にはその状態を反映したような像を示す。
図6(c)は観察した粒子に染色液が透過した状態を示す図である。粒子の状態や性質によって染色液が粒子の内部に浸透し粒子像の輝度が高くなった像を示す。このように、例えば粒子の電子顕微鏡画像における粒子由来の輝度の強度によって粒子の状態がわかり、粒子の調製時の状況を判断するための適切な指標を得ることができる。
【0049】
このように、粒子の形態に代えて、またはこれに加えて、顕微鏡画像における輝度の強度、染色具合(たとえば輝度の強度分布に基づいて取得可能である)に基づいて、使用者は粒子の厚みや組成を把握することができ、これを判定基準として用いることも可能である。
【0050】
また、粒子の形態に代えて、またはこれに加えて、粒子と反射電子量の違うパターンが粒子を回収する観察面に存在し、粒子の電子線透過具合に応じてそのパターンが粒子の観察像に反映された場合に、使用者はこのパターンをその粒子が正常かどうかの判定基準として用いることも可能である。
【0051】
図7は粒子の計測結果をデータベースの判定基準と照合する例のフローチャートである。例えば、粒子結晶成長により調製した粒子を検査するときに、第1動作パターンにおける判定を複数回繰り返し、さらなる総合判定を行うことができる。
【0052】
たとえば、観察画像から複数の粒子の形態を抽出し、各粒子について第1動作パターンでの判定を行う。判定結果の例として、標準粒子に該当する形態(すなわち、
図3のS15において正常と判定される形態)の粒子が70%、そうでない形態(すなわち、
図3のS15において異常と判定される形態)の粒子が30%含まれていたとする。また、データベースには標準粒子に該当する形態が60%以上存在するという基準が格納されているとする。
【0053】
この場合には、標準粒子に該当する形態の粒子の比率が基準を満たすため、その調製した粒子は、
図7の処理において正常と判定される。この閾値は材料と調製状態あるいは条件の組み合わせによって予め決めておくことができる。
【0054】
なお、上記の例では第1動作パターンにおける判定を繰り返したが、変形例として、第2動作パターンにおける1回の処理によって
図7の処理を行ってもよい。たとえば、粒子解析装置は、粒子群に含まれる各粒子について、その粒子が標準粒子に該当する否かを判定し、標準粒子に該当する粒子の比率に基づいて、粒子群が正常か否かを判定してもよい。その場合には、第2基準は、粒子の形態に関する基準に代えて、またはこれに加えて、標準粒子に該当する粒子の比率に関する基準を含んでもよい。
【0055】
(粒子捕集ユニット説明)
粒子を解析するために、材料上に付着した粒子を観察することもあるが、粒子の数が少ない場合や、観察したい材料自体のサイズが大きい場合は、粒子の数と形状を評価することは非常に手間となる。そこで、液体中や気体中に粒子を移し、フィルタ上に粒子を吸引して、そのフィルタを観察することで粒子の解析を行うことができる。以下では、液中に存在する粒子をフィルタを用いてろ過して、フィルタ上の粒子を観察する方法に関して詳細例を説明する。
【0056】
粒子解析装置は、粒子を濃縮することによって観察試料を作製する観察試料作製装置を備えてもよい。
図8は、観察試料作製装置800の構成の一例を示している。観察試料作製装置800は、
‐粒子を含んだ液体をろ過するためのろ過ユニット801と、
‐液体のろ過に用いる圧力差を発生させる真空排気ポンプ802と、
‐真空排気ポンプ802とろ過ユニット801とを接続するための配管803と、
‐ろ過ユニット801から真空排気ポンプ802へ微細な粒子の流入を防止するためのフィルタ804と、
‐真空排気状態と大気開放状態を切り替えるための排気バルブ805と、
‐ろ過により生じた排液を排出するための排液バルブ806と、
を備える。
【0057】
ろ過ユニット801は、多数の微細孔をもつメンブレンに粒子を含有する液体を通すことで、メンブレン上に粒子が分散された試料を作製することができる。真空排気ポンプ802は、たとえばダイアフラム真空ポンプやドライポンプ等の低真空で動作可能なものが使用される。配管803は、たとえば金属製或いはゴム製のものを使用する。フィルタ804は、真空排気ポンプ802への微細な粒子の吸引を防止し、真空排気ポンプ802の故障や真空排気ポンプ802の排気口からの微細粒子の放出を防止する目的で用いられる。フィルタ804には、たとえばHEPAフィルタのようなエアフィルタが用いられる。排気バルブ805は、手動方式、電動方式のどちらも使用可能であり、電動タイプを用いる場合、真空排気ポンプ802の動作と連動させることで操作を簡便化できる。排液バルブ806は、手動方式、電動方式のどちらも使用可能であるが、使用する液体に対して耐性のあるものを使用すると好適である。
【0058】
図9は、観察試料作製装置800における、ろ過ユニット801の一例を示している。ろ過ユニット801は、
‐粒子を含有する液体を分注し保持するための分注ケース900と、
‐液体に含有する粒子をろ過するためのメンブレンとそれを支持するためのフレームから成るメンブレンアセンブリ902と、
‐分注ケース900とメンブレンとの間の液漏れ防止および、ろ過ユニット801内部と外部との圧力差を保持するための上部シール材901と、
‐メンブレンアセンブリを搭載するための支持板904と、
‐メンブレンと支持板間の液漏れを防止するための下部シール材903と、
‐メンブレンによるろ過で発生した排液を溜めるためのベース905と、
‐分注ケース900をベースに固定し、メンブレンとシール材を密着させるための固定ネジ906と、
を備える。
【0059】
分注ケース900は、粒子を含有する液体を分注するためのウェルを複数有し、同時に複数の異なる液体のろ過が可能である。分注ケース900の各ウェルの容量は、ろ過する液体の濃度や、染色、洗浄処理の条件に依存し、およそ100~2000mlの容量を有する。分注ケース900の各ウェル下部の流路径は、顕微鏡を用いた観察の際、1つの視野に存在する粒子の個数に影響する。例えば、ウェル下部の流路径φ2mmの分注ケース900を用いて、濃度150000個/mlの液体を1mlろ過し、観察視野0.0002mm2で顕微鏡観察を行う場合、1視野あたり10個の微粒子を観察することができる。顕微鏡で100倍率~10000倍率の倍率で観察したときの観察画像の1視野当たりの面積0.0001~0.01mm2に1個以上の粒子を観察することができる密度で粒子を濃縮して回収することで、どの視野を観察しても粒子を観察することができ、観察のための時間を短縮することが出来る。
【0060】
例えば粒子を回収する観察試料作製装置800のろ過流路の径を6mmにすると105個/mLの粒子懸濁液を1mL回収し、10000倍率の倍率で観察したときに1観察画像あたりに1個の粒子を観察することが可能となる。例えば、粒子の大きさが1μm2の時、105個の粒子の面積が回収面の半分を占める場合には、粒子を回収する観察試料作製装置800のろ過流路の径は0.5mmであると望ましい。
【0061】
観察試料作製装置800の径が小さすぎると吸引ろ過するときに時間がかかる。観察試料作製装置800の径が大きいときに底面の一部に気泡ができた場合には、そこには菌が回収されず、均一性が保てなくなる。また、観察試料作製装置800の径が小さく、気泡が底面全体を覆うと吸引ろ過できず、粒子を回収できないことがある。液体の濃度や液量などの条件にもよるが、ろ過流路の流路径のサイズはおよそφ0.5~6mmであることが望ましい。
【0062】
ウェル下部の流路径はウェル上部の径と同等もしくはそれ未満にすることで、分注する液量が少ない場合でも、粒子が高密度に分散した試料が作製できる。
【0063】
また、分注ケース900の下面には、上部シール材との密着性を高め、リークを防止するための凸構造が設けられる。上部シール材901および下部シール材903には、耐薬品性の材質が用いられ、分注ケース900の流路と同じ位置に同様な穴構造が設けられる。このとき粒子を回収する面積を一定にするために、下部シール材903の穴構造の径は回収する面積に応じた径をもち、上部シール材901はそれより大きな径にすると好適である。この場合には、下部シール材903の穴が上部シール材901の穴の中に位置することで粒子が常に下部シール材の面積に回収されることにより、部材のわずかな位置ずれによる回収面積のばらつきを抑えることが可能となる。
【0064】
メンブレンアセンブリ902は、薄く単体では取扱いづらいメンブレンをフレームに固定することで、ろ過ユニット801からの着脱および顕微鏡の試料ステージへの搭載を容易にする役割をもつ。
【0065】
支持板904は、分注ケース900、上部シール材901および下部シール材903と同じ位置に流路としての穴構造を有する。支持板904は、固定ネジを締めシール材を押さえた際、支持板904が湾曲しないような厚みを有するが、流路径と流路長のアスペクト比を小さくし、流路の圧力損失を小さくするために、各流路の下面側からザグリ穴を有する。また、支持板904は、メンブレンアセンブリの位置を合わせるためにフレームを嵌め込むための溝構造を有する。
【0066】
ベース905は、1度のろ過処理で発生する排液を溜める容積を有する。また、ベース905は、排気用のポートと排液用のポートを有し、排気用ポートは液体の流入を防ぐために、排液用ポートより上方に位置する。分注ケース900、支持板904およびベース905は、使用する液体に対して耐性のある材質が用いられる。また、分注ケース900やベース905は、透過性のある材質を使用することで、ろ過処理の状態をユニット外部から視認することができる。
【0067】
図10はろ過ユニット801で使用するメンブレンアセンブリの一例を示している。メンブレンアセンブリ902はメンブレン1000とフレーム1001で構成される。メンブレン1000は、多数の10nm~10μm程度の微細な孔を有する高分子材料のシートであり、数μ~数十μmの厚みをもつ。メンブレン1000は、テープ或いは、接着剤によりフレーム1001に固定されている。フレーム1001は、導電性のある材質を使用することで、例えば、電子顕微鏡観察の際、電子線による帯電を緩和することができる。また、メンブレン1000に直接、金や白金によるコート等の導電性化処理を行うことも、電子ビームによる帯電緩和に効果的である。
【0068】
図11はメンブレンアセンブリのフレームを示している。フレームは、角形フレーム1101aや丸形フレーム1101bが用いられる。フレームには、顕微鏡の試料台に搭載する際にフレームの方向を示す切欠き形状或いは刻印を有する。また、フレームに英数字や記号を記載することで、ウェル毎に試料をナンバリングし管理することができる。
【0069】
図12はろ過ユニットにおける、単一ウェルのろ過流路断面の一例を示している。分注ケース900の下部の流路径が上部のウェル径よりも小さい場合、上部のウェルと下部の流路間をテーパ形状とすることで、ウェル内の分注液の残留を低減できる。また、ウェルおよび、ろ過流路の断面形状は円形でなく多角形でも良いが、ろ過流路の断面が多角形の場合、流路壁面の抵抗により、隅の流量が低下することで、ろ過の均一性が損なわれるため、流路の断面形状は多角形よりも円形が好ましい。支持板904の下面からのザグリ穴は、図のようなザグリ形状や、その他テーパ形状でも良い。
【0070】
図13はろ過ユニットにおける、分注ケース1301のウェル配置の一例を示している。分注ケース900は複数のウェル1300を有し、各ウェルは行方向、列方向において、それぞれ等間隔に配置されている。このため、複数のピペットを有する分注機を用いて、複数のウェルに同時に液体を分注することが可能である。特に、各ウェルの間隔を市販されているマルチピペットに合わせることで、より汎用的な処理に使用できるが、任意に設計したピペットに合わせて各ウェルの間隔を決めても良い。
【0071】
ウェル数は顕微鏡のステージの可動範囲とろ過流路の間隔により決められる。例えば、X方向の可動範囲50mmのステージで、ろ過流路の間隔を9mm、流路径をφ3mmとした場合、X方向に5つのウェルを設けることができる。流路の間隔はウェルの間隔と必ずしも同じではなく、ステージの可動範囲に、より多くの観察領域を作製したい場合は、流路の間隔をウェルの間隔よりも狭くすると良い。
【0072】
図14は顕微鏡観察用の試料台の一例を示している。試料台1400は、顕微鏡のステージにメンブレンアセンブリを搭載するために用いられる。例えば、電子顕微鏡を用いて観察する際にはアルミや銅といった非磁性の金属が用いられ、試料台1400がメンブレンと密着することで電子線による帯電を緩和することができる。試料台1400は、メンブレンアセンブリのフレーム1001に合致する形状を有し、高精度で試料を顕微鏡ステージに搭載することが可能であり、自動での試料搭載や撮像において有利となる。
【0073】
図15はメンブレン上にサンプリングされた試料の一例を示している。ろ過される液体によっては無色透明のために、目視での試料位置の確認が困難である。このような場合、予めメンブレン上のろ過部1500の位置座標を顕微鏡のステージ座標に対応付けて記憶しておくことで、容易に試料位置を特定して観察可能である。
【0074】
顕微鏡観察用の試料台1400を使用して粒子を均一に回収することで回収面の一部を観察した画像から全体の粒子の輝度値を算出できる例を
図16に示す。
図16は顕微鏡観察用の試料台1400を使用した粒子の均一な回収例を示す図である。
【0075】
図16(a)は回収した粒子が均一に分散していない状態の例である。回収した円内の一部に白い塊がライン上に見えるが、これはそこに粒子の凝集1600がある様子である。この場合、観察する位置によって粒子の密度が異なるため、粒子数を計測し比較するには回収面全体を観察すると好適である。
【0076】
また高倍率で観察した場合にも、粒子単体の形態を抽出する際に、粒子が凝集して回収されていると個々の粒子の形態を抽出することは難しく、また凝集したことで形態が変化する可能性もある。
【0077】
回収面の一部にのみ液体を送液し、回収面全体に液体が行き渡る前に液体を吸引すると、その部分にだけ粒子が回収されることがある。試料台1400に液体を分注し保持するための分注ケース900があることにより、回収する液体を保持し回収面全体でろ過でき、これによって、回収面に均一に分散した状態で粒子を回収することができる。
【0078】
図16(b)は回収した粒子が均一に分散している状態の例である。観察位置による粒子の密度のばらつきがないため、一部を観察することで、全体の輝度値や粒子数などに換算することが可能である。例えば、粒子を平面上に均一に分散して回収することで、回収面の全面ではなく一部を電子顕微鏡で観察し計測することができ、粒子の判定がより適切に行える。また個々の粒子が凝集せず重なっていないことで個々の粒子の形態を抽出しやすくなる。粒子数が増加する過程で3次元的な凝集体を構成する粒子種については、顕微鏡の試料台を傾けることで高さ方向を観察し、計測することが可能である。
【0079】
このように、粒子解析装置は、粒子に液体を分注し、画像取得範囲全体において液体をろ過することにより、粒子を画像取得範囲にわたって分散させると好適である。
【0080】
以上説明するように、実施例1に係る粒子解析装置および粒子解析方法によれば、粒子に係る条件に応じた解析が可能となる。
【0081】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の粒子解析装置に、さらなる構成要素を追加するものである。以下、実施例1と共通する部分については説明を省略する場合がある。
【0082】
(装置構成)
図17は粒子解析装置の例の構成図である。粒子解析装置は、
‐粒子を観察に適切な密度で平面上に濃縮することによって試料を作製する観察試料作製装置800と、
‐回収した粒子を観察し、粒子の画像を取得する顕微鏡1701(たとえば電子顕微鏡)と、
‐粒子の観察条件を判断し、観察した画像を解析して結果を表示する制御/分析装置1702と、
‐粒子の種類(たとえば材料種類および製造条件)、状態、等などを入力するための材料・状態入力部1731(粒子パラメータ入力部)と、判定の結果を表示するための結果表示部1732を含む操作画面1703(
図18に関連して詳述する)を表示するディスプレイと、
を備える。このような構成により、粒子解析装置単独で条件の入力から結果の出力までを一貫して行うことができる。とくに、1つの画面で粒子パラメータの入力および結果出力を行うことができる。
【0083】
顕微鏡1701は、観察試料作製装置800で粒子を回収したメンブレンアセンブリ902を観察するために取り付けられる配置部1711を備えている。
【0084】
制御/分析装置1702は、
‐入力された材料種類や粒子状態の情報に基づき、顕微鏡の観察条件を判断する観察条件判断部1721と、
‐顕微鏡の観察画像を取り込み、画像中の粒子を計測し解析する画像計測/解析部1724と、
‐これまでの粒子の解析結果と判定閾値を格納したデータベース1722と、
‐画像計測/解析部で得られた情報とデータベースにある判定閾値とを照合して粒子の解析結果を判定する判定部1723と、
を備える。
【0085】
データベース1722は、第1基準、第2基準および第3基準を表す情報を格納してもよい。また、データベース1722は、第1基準、第2基準および第3基準に関連する判定を行うためのプログラムを格納してもよい。さらに、データベース1722は、BI(Business Intelligence)ツールにおいて用いられる様々なリスト1725を格納してもよい。このようなデータベース1722により、様々な基準およびアルゴリズムを事前に準備して用いることができる。
【0086】
制御/分析装置1702内のデータベース1722は、インターネット上に繋がるクラウドサーバなどであってもよい。すなわち、粒子解析装置は、通信ネットワークを介して外部のコンピュータと接続されてもよく、粒子解析装置は、この外部のコンピュータから、第1基準、第2基準または第3基準を表す情報を取得してもよい。また、粒子解析装置は、この外部のコンピュータから、第1基準、第2基準または第3基準に関連する判定を行うためのプログラムを取得してもよい。このような構成によれば、様々な基準およびアルゴリズムを適宜取得して用いることができる。
【0087】
観察条件判断部1721では、材料・状態入力部1731で入力された粒子調製時間、調製条件などの情報に基づいて顕微鏡1701の動作パターンを決定する。より具体的には、
図3で説明したフローに沿って、あらかじめ決められた加速電圧や倍率などの条件に基づいて動作パターンを決定してもよい。つまり、粒子を調製するために要した時間によって粒子を高倍率で観察するか、低倍率で観察するかなどを決定する。
【0088】
次に、決定された動作パターンに基づく観察条件にて取得された画像が、画像計測/解析部1724に入力される。また、材料・状態入力部1731で入力された粒子調製時間、調製条件などの情報に基づいてデータベース1722を参照し、判定閾値を取得する。
【0089】
画像計測/解析部1724では、取得した画像または粒子情報から、輝度分布、コントラスト、大きさ、長さ、面積、等の数値データを算出する。算出された数値データは判定部1723に入力され、データベース1722から出力される判定閾値と比較され、比較結果は操作画面1703上の結果表示部1732に表示される。
【0090】
画像計測/解析部1724は画像中のそれぞれの粒子の特徴量(形態または数)を抽出し、標準粒子の特徴量(たとえば第1基準、第2基準および第3基準の判定に用いられる)との差異を解析する。例えば、製造した粒子の力学的性質を評価する場合には、使用者は、製造した粒子に応力やひずみなどの外部刺激を与えたものと、与える前の粒子とを調製して双方を観察し、その画像中の粒子の特徴量を比較した解析結果から製造した粒子を評価してもよい。
【0091】
標準粒子の特徴量については、過去に観察し、画像計測/解析部1724に蓄積されている画像または当該画像から抽出された情報を用いることも可能である。
【0092】
図18は、材料・状態入力部1731と結果表示部1732とを備える操作画面1703の例を示した図である。使用者が、材料・状態入力部1731において解析する粒子の材料種類や粒子状態などをあらかじめ登録されたタブの中から選択し、その後に観察スタートボタンを押すことで
図3の処理が開始される。
【0093】
材料種類や粒子状態は新たに追加することも可能であり、その場合にはデータベース1722のデータも更新される。結果表示部1732では粒子の画像解析結果(たとえば「正常」または「異常」)を示す。画像表示ボタンを押すことで解析した画像をディスプレイに表示させ確認することも可能である。
【0094】
例えば、粉砕加工して製造したトナー粒子を解析する場合において、材料種類としてトナー粒子、粒子状態として粉砕を選択し、観察スタートボタンを押すと、自動的に顕微鏡観察が開始され、画像解析の後に結果表示部に解析結果が表示される。解析結果には、正常あるいは異常のほかに解析スコアなどを表示することも可能である。
【0095】
図19は、データベースにおける各条件のリストの変形例を示した図である。材料・状態入力部1731で入力された材料種類や状態の情報に基づき、
図19のリストに記載された観察条件で顕微鏡観察が実行される。その観察画像が決められた指標で計測され、データベース1722に記載された閾値と照合され正常/異常が判定される。
【0096】
例えば、電子顕微鏡を用いて粉砕によって製造したトナー粒子を解析する場合、材料・状態入力部1731にトナー粒子、粉砕条件などが入力され、また解析する際の製造工程(たとえば短時間検査または長時間検査。
図18には示さない)が入力されることにより、観察条件判断部1721にあらかじめ設定されている倍率や加速電圧などの条件が読み込まれる。指定された条件で観察された画像について、画像計測/解析部1724で指定された指標で粒子が計測される。
【0097】
図19に示した、粉砕で製造したトナー粒子について短時間検査(工程1)で検査する場合には、倍率5000、加速電圧5kV、電流パターン1で画像を10枚取得することが指定される。次に、取得された画像について粒子の形態が計測され、標準粒子の形態と比較される。検査粒子の標準粒子に対する一致率(たとえば、判定されたすべての粒子のうち、正常と判定された粒子の比率)についても解析される。一致率を、データベース1722に格納された基準に基づいてさらに評価して閾値と比較し、総合的な結果を結果表示部1732に表示してもよい。材料・状態入力部1731において材料種類や状態を入力することで、画像計測/解析部1724で計測される指標が指定されることになる。
【0098】
[実施例3]
実施例1または2において、
図8に示した観察試料作製装置800を使って粒子を濃縮し染色し、その後に回収面の外観観察や、顕微鏡で観察し輝度を計測することで、表面に回収した粒子の密度やろ過した粒子の濃度を算出することができる。
【符号の説明】
【0099】
500…粒子、600…パターン、800…観察試料作製装置、801…過ユニット、802…真空排気ポンプ、803…配管、804…フィルタ、805…排気バルブ、806…排液バルブ、900…分注ケース、901…上部シール材、902…メンブレンアセンブリ、903…下部シール材、904…支持板、905…ベース、906…固定ネジ、1000…メンブレン、1001…フレーム、1101a…角形フレーム、1101b…丸形フレーム、1300…ウェル、1301…分注ケース、1400…試料台、1500…ろ過部、1600…粒子の凝集、1701…顕微鏡(電子顕微鏡)、1702…制御/分析装置、1703…操作画面、1711…配置部、1721…観察条件判断部、1722…データベース、1723…判定部、1724…画像計測/解析部、1725…リスト、1731…材料・状態入力部(粒子パラメータ入力部)、1732…結果表示部。