(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】成形体の製造方法、成形体及び発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240718BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240718BHJP
H01S 5/02 20060101ALI20240718BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240718BHJP
C09K 11/59 20060101ALI20240718BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20240718BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
H01S5/02
C09K11/80
C09K11/59
C09K11/61
C09K11/64
(21)【出願番号】P 2020159000
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国宗 哲平
(72)【発明者】
【氏名】岩本 真美
(72)【発明者】
【氏名】阿宮 利昌
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247067(JP,A)
【文献】特開2012-185402(JP,A)
【文献】特開平06-162924(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 33/50
H01S 5/02
C09K 11/80
C09K 11/59
C09K 11/61
C09K 11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる透光性の基体と、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した第1混合液と、を準備することと、
陽イオンを含む電解液中に前記基体を配置することと、
前記電解液に前記第1混合液を投入して第2混合液とし、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を沈降させることと、
前記第2混合液中の上澄み液を除去することと、
前記基体と、前記基体上に配置された前記第2蛍光体粒子と、を60℃以上400℃以下の温度範囲で熱処理して、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を固定することと、を含
み、
前記第1混合液中の前記第2蛍光体粒子の含有量は、前記第1混合液の全体量に対して、0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩が固形分換算で、1質量%以上50質量%以下の範囲内であり、
前記第1混合液は、前記第2蛍光体粒子の1質量部に対して、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を50質量部以上200質量部以下の範囲内で含み、前記第1混合液中のアルカリ金属ケイ酸塩の固形分の含有量が5質量%以上30質量%以下の範囲内であり、
前記第2蛍光体粒子を固定する工程において、前記第2蛍光体粒子及び前記基体の上面全体を覆うようにアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜にて固定している、成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第2蛍光体粒子を固定した後、前記被膜の表面に原子堆積法により透光性の保護膜を形成すること、を含む請求
項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記上澄み液を除去する工程後、前記第2蛍光体粒子を固定する工程前において、前記基体上に配置された前記第2蛍光体粒子の少なくとも一部が、前記第2混合液の液面から突出する部位を有する状態とすること、を含む請求項1
又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記準備する工程において、前記基体が、セラミックス及びガラスの少なくともいずれかを含む、請求項1か
ら3のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記準備する工程において、前記セラミックスが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求
項4に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記準備する工程において、前記第1蛍光体粒子が、希土類アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及びβサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体である、請求項1か
ら5のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記準備する工程において、前記第2蛍光体粒子が、フッ化物蛍光体、アルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体、及びα-サイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体である、請求項1か
ら6のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記電解液中に前記基体を配置する工程において、前記陽イオンが、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1か
ら7のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
前記準備する工程において、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が、ケイ酸ナトリウム溶液又はケイ酸カリウム溶液である、請求項1か
ら8のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる透光性の基体と、
前記基体に配置される第2蛍光体粒子と、
前記基体に前記第2蛍光体粒子を固定させたアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜と、
前記被膜上に形成された10nm以上1μm以下の厚みの酸化物又は窒化物の透光性の保護膜と、を含む成形体であり、
前記第2蛍光体粒子と前記基体との間に存在する前記アルカリ金属を含む二酸化ケイ素の厚みが1μm以下であり、
前記成形体の表面は前記第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されている成形体。
【請求項11】
レーザー回折式粒度分布測定法により測定した前記第2蛍光体粒子の体積基準の粒径が1μm以上50μm以下の範囲内
である、請求
項10に記載の成形体。
【請求項12】
前記基体の表面に前記第2蛍光体粒子とは異なる波長の光を出射する第3蛍光体粒子が固定されている、請求項
10又は
11に記載の成形体。
【請求項13】
前記請求項
10から
12のいずれか1項に記載の成形体と、前記成形体を照射する光源と、を備えた発光装置。
【請求項14】
前記光源が半導体レーザーである、請求
項13に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法、成形体及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)チップ等の発光素子と蛍光体を組み合わせた発光装置は、照明、液晶表示装置のバックライト、車載ライト、プロジェクター用光源等として用いられている。発光装置は適用される用途や場所に応じて小型化が求められている。また、例えばLDを発光素子として用いたプロジェクター用光源は、発光素子から局所的に高いエネルギーの光が発せられるため、発光素子から発せられた光により波長変換する蛍光体を含む部材は、高い耐熱性を有することが求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、ガラスや熱伝導率のよいサファイア等の無機材料からなり、光を透過する基材上に、蛍光体と透光性セラミックスとからなる蛍光体層を備えた波長変換部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、演色性及び耐熱性に優れた成形体の製造方法、成形体及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の第一の態様は、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる透光性の基体と、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した第1混合液と、を準備することと、陽イオンを含む電解液中に前記基体を配置することと、前記電解液に前記第1混合液を投入して第2混合液とし、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を沈降させることと、前記第2混合液中の上澄み液を除去することと、前記基体と、前記基体上に配置された前記第2蛍光体粒子と、を60℃以上400℃以下の温度範囲で熱処理して、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を固定することと、を含む、成形体の製造方法である。
【0007】
本発明の第二の態様は、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる基体と、前記基体に配置される第2蛍光体粒子と、前記基体に前記第2蛍光体粒子を固定させるアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜と、前記被膜上に形成される10nm以上1μm以下の厚みの酸化物又は窒化物の透光性の保護膜と、を含む成形体であり、前記成形体の表面は前記第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されている成形体である。
【0008】
本発明の第三の態様は、前記成形体と、前記成形体を照射する光源と、を備えた発光装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、演色性及び耐熱性に優れた成形体の製造方法、成形体及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。
【
図6A】発光装置の一例である発光モジュールを示す模式的斜視図である。
【
図6B】発光装置の一例である発光モジュールを示す模式的平面図である。
【
図6E】成形体を光透過性部材として備えた発光装置を示す模式的断面図である。
【
図7】プロジェクター用の光源装置の概要を示す模式的側面図である。
【
図8A】
図7の矢印Aから見た蛍光体ホイールの一面を示す模式的平面図である。
【
図8B】
図8の矢印Bから見た蛍光体ホイールの一面を示す模式的平面図である。
【
図8C】
図8の矢印Cから見た蛍光体ホイールの一面を示す模式的平面図である。
【
図9】光源装置を備えたプロジェクターの構成を示す模式図である。
【
図11】実施例1に係り、基体の断面と、二酸化ケイ素の被膜で固定された第2蛍光体粒子の端面を示すSEM写真である。
【
図12】実施例1に係り、第2蛍光体粒子が基体の表面に固定された成形体の平面を示す外観写真である。
【
図13】実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の表面のSEM-EDSスペクトルを示す図である。
【
図14】実施例1に係り、SEM-EDSスペクトルを測定し、SEM-EDSマッピングを作成した、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面を示すSEM写真である。
【
図15】実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面のSEM写真における酸素(O)の存在する箇所を示すSEM-EDS元素マッピング図である。
【
図16】実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面のSEM写真におけるアルミニウム(Al)の存在する箇所を示すSEM-EDS元素マッピング図である。
【
図17】実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面のSEM写真におけるケイ素(Si)の存在する箇所を示すSEM-EDS元素マッピング図である。
【
図18】実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面のSEM写真におけるカリウム(K)の存在する箇所を示すSEM-EDS元素マッピング図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る成形体の製造方法、成形体及び発光装置を一実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の成形体の製造方法、成形体及び発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係は、JIS Z8110に従う。
【0012】
上述の特許文献1には、基材にガラスや高い熱伝導性を有するサファイアを使用することが記載されている。しかしながら、基材に蛍光体粒子を用いることは記載されていない。蛍光体層は基材の上に形成されている。蛍光体粒子の粒子径に対して蛍光体層の膜厚が過度に薄くなると、蛍光体粒子によって光が波長変換されずに透過してしまい、光を波長変換する性能が十分発揮されないことが、特許文献1に記載されている。また、蛍光体粒子の粒子径の大きさによって、蛍光体粒子の粒子径を1とした場合に、蛍光体の粒子径1に対して1.5以上の蛍光体層の膜厚が必要となることが開示されており、蛍光体の粒子径によっては、薄型化の要求に応えられない場合がある。さらに、熱伝導率の高い基材を用いることによって、蛍光体層の蓄熱を抑制し、蛍光体粒子の粒子径に対して蛍光体層の膜厚が所定倍を超えると、粒界の熱抵抗が高くなり、蛍光体層の温度が上昇し、発光強度が低下することが、特許文献1には記載されている。蛍光体粒子の粒子径によっては、蛍光体層中に所望の蛍光体を含有させることができない場合があり、所望の発光色が得られない場合がある。また、特許文献1には、蛍光体粒子を例えばエチルシリケートのような無機バインダーと混合しスクリーン印刷により塗布して、有機分を飛ばして蛍光体層を基材に接着している。蛍光体粒子と無機バインダーとを混合すると、蛍光体粒子の周囲に無機バインダーが付着し、蛍光体層中の蛍光体粒子と蛍光体粒子の間及び蛍光体粒子と基材の間には無機バインダーが介在する。このように、蛍光体粒子と蛍光体粒子の間及び蛍光体粒子と基材の間に無機バインダーが介在していると、基材よりも熱伝導率の低い無機バインダーを介して基材に熱が伝わるため、熱伝導率は低くなり、耐熱性は低下する。
【0013】
それに対し、本実施形態に係る成形体の製造方法、成形体及び発光装置によれば、演色性及び耐熱性に優れたものを提供することができる。つまり、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる基体を用い、第1蛍光体粒子の演色性の乏しい部分を補うように、第2蛍光体粒子を二酸化ケイ素の被膜で基体に固定することによって、全体として演色性の向上を図ることができる。つまり、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる基体では演色性は十分でなく、さらなる演色性向上が求められるため、この基体に第2蛍光体粒子を固定することにより演色性の向上を図ることができる。また、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した第1混合液を、陽イオンを含む電解液中に配置された基体上に投入して、第2蛍光体粒子を沈降させて、二酸化ケイ素で基体に第2蛍光体粒子を固定すると、第2蛍光体粒子は基体に密着して固定され、第2蛍光体粒子から基体に直接熱が伝達されるため、熱伝導率が高くなり、成形体は、優れた耐熱性を有する。
【0014】
成形体の製造方法
成形体の製造方法は、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる透光性の基体と、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した第1混合液と、を準備することと、陽イオンを含む電解液中に前記基体を配置することと、前記電解液に前記第1混合液を投入して第2混合液とし、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を沈降させることと、前記第2混合液中の上澄み液を除去することと、前記基体と、前記基体上に配置された前記第2蛍光体粒子と、を60℃以上400℃以下の温度範囲で熱処理して、前記基体上に前記第2蛍光体粒子を固定することと、を含む。
【0015】
図1及び
図2は、成形体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1及び
図2を参照にして、成形体の製造方法を説明する。成形体の製造方法は、基体を準備することS101aと、第1混合液を準備することS101bと、陽イオンを含む電解液中に基体を配置することS102と、電解液中に第1混合液を投入して第2混合液とし、基体上に第2蛍光体粒子を沈降させることS103と、第2混合液中の上澄み液を除去することS104と、基体と、基体上に配置された第2蛍光体粒子とを、熱処理して、基体上に第2蛍光体粒子を固定することS105とを含む。成形体の製造方法は、第2蛍光体粒子を固定した後、原子堆積法により保護膜を形成することS106を含んでいてもよい。
【0016】
基体と第1混合液を準備すること
成形体の製造方法において、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる基体と、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを混合した第1混合液と、を準備する。
【0017】
基体を準備すること
成形体の製造方法において、基体を準備する。基体は、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなり、透光性を有する。基体は第1蛍光体粒子のみを焼結や圧接等で固定してなるものであってもよい。第1蛍光体粒子のみで基体が構成されていると、波長変換効率を高くすることができる。また、第1蛍光体粒子のみで基体が構成されていると、他の部材の劣化や他の部材との線膨張係数差を考慮する必要もない。基体は、第1蛍光体粒子と、セラミックス及びガラスから選択される少なくとも1種の無機材料を含んでいてもよい。第1蛍光体粒子を単独で、又は、第1蛍光体粒子と他の無機材料との組み合わせであっても、基体は、無機材料のみで構成されるため熱伝導性に優れ、レーザ耐性、耐熱性及び耐光性の少なくとも1つに優れる。本明細書において、透光性は、基体に照射した光の発光ピーク波長における光透過率が5%以上であることをいい、基体に照射した光の発光ピーク波長における光透過率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。本明細書において、セラミックスは、1000℃以下の温度下において、あらゆる無機非金属材料をいう。
【0018】
基体はセラミックスを含む場合、セラミックスは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。セラミックスが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であれば、透光性を有し、耐熱性に優れた基体が得られる。セラミックスは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。基体に含まれる無機材料として、セラミックスが酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であると、透光性及び耐熱性を有し、熱伝導率に優れた基体が得られる。
【0019】
基体にガラスを含む場合、ガラスは、例えば、ホウケイ酸ガラスが挙げられる。ホウケイ酸ガラスとしては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、軟化点が500℃以上であってもよく、軟化点が600℃以上であってもよく、軟化点が700℃以上であってもよい。
【0020】
基体の厚みは、特に制限されない。機械的強度や波長変換効率を考慮して、基体は、1μm以上1mm以下の範囲内の厚みであることが好ましく、10μm以上800μm以下の範囲内の厚みでもよく、50μm以上500μm以下の範囲内の厚みでもよく、100μm以上300μm以下の範囲内の厚みでもよい。
【0021】
第1蛍光体粒子
第1蛍光体粒子は、光源から照射された光によって発光し、所望の色度を得るために、希土類アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及びβサイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
第1蛍光体粒子は、光源からの光の照射によって530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子であってもよく、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子であってもよい。
【0023】
第1蛍光体粒子が、光源からの光の照射によって、530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、第1蛍光体粒子は、少なくとも1種のアルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。
【0024】
アルミン酸塩蛍光体としては、下記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。
M1
3(Al,Ga)5O12:Ce (1A)
式(1A)中、M1は、Y、Lu、Gd及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本明細書において、組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有していることを意味する。組成式中のカンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、組成中にカンマで区切られた複数の元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、前記複数の元素から二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0025】
第1蛍光体粒子が、光源から照射された光によって530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合、第1蛍光体粒子としては、Y3Al5O12:Ce、Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Lu3Al5O12:Ce、又はLu3(Al,Ga)5O12:Ceが挙げられる。
【0026】
上記のように、又は上記に代えて、第1蛍光体粒子が、光源から照射された光によって、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、第1蛍光体粒子は、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及びβサイアロン蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であってもよい。例えば、下記式(1B)で表される組成を有するアルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、下記式(1C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、下記式(1D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及び下記式(1E)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0027】
BaSi2O2N2:Eu (1B)
Sr4Al14O25:Eu (1C)
(Ca,Sr,Ba)8MgSi4O16(F,Cl,Br)2:Eu (1D)
Si6-aAlaOaN8-a:Eu (1E)
式(1E)中、aは0<a<4.2を満たす数である。
【0028】
第1蛍光体粒子が、光源から照射された光によって490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合、第1蛍光体粒子としては、具体的には、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu等が挙げられる。
【0029】
基体中の第1蛍光体粒子の含有量は、所望の色度によって異なる。前述のとおり、基体が第1蛍光体粒子を焼結させたものであってもよく、基体中の第1蛍光体粒子の含有量が100%であってもよい。基体が、第1蛍光体粒子の他に、照射された光を波長変換しないセラミックス及びガラスから選択される少なくとも1種の無機材料を含む場合は、基体を構成する無機材料と第1蛍光体粒子の合計量に対して、第1蛍光体粒子の含有量が0.1質量%以上99.9質量%以下の範囲内でもよい。第1蛍光体粒子の含有量が、より好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、第1蛍光体粒子の含有量が、より好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。基体が、第1蛍光体粒子と照射された光を波長変換しないセラミックス及びガラスから選択される少なくとも1種の無機材料を含む場合に、第1蛍光体粒子と無機材料との合計量に対して、第1蛍光体粒子の含有量が0.1質量%以上99.9質量%以下の範囲内であれば、第1蛍光体粒子を含む基体と、基体の表面に沿って水平方向に断続的に存在する粒子を含む第2蛍光体粒子によって、照射された光を波長変換して所望の色度を有する混色光を得ることができる。
【0030】
第1蛍光体粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上50μm以下の範囲内である。第1蛍光体粒子の平均粒径は、より好ましくは2μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。また、第1蛍光体粒子の平均粒径は、より好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは15μm以下である。第1蛍光体粒子の平均粒径が1μm以上であると、第1蛍光体粒子を基体に略均一に分散させることができる。第1蛍光体粒子の平均粒径が50μm以下であると、基体中の空隙が少なくなるので照射された光の波長変換効率を高くすることができる。本明細書において、蛍光体粒子の平均粒径とは、フィッシャーサブシーブサイザー法(Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS法」ともいう。)により測定した平均粒径(Fisher Sub-Sieve Siezer’s Number)をいう。
【0031】
第1混合液を準備すること
成形体の製造方法において、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを含む第1混合液を準備する。
【0032】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液
第1混合液は、第2蛍光体粒子とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液とを含む。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、アルカリ金属ケイ酸塩を固形分換算で10質量%以上含有するものが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、ケイ酸ナトリウム水溶液、ケイ酸カリウム水溶液、ケイ酸リチウム水溶液等が挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液であることが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、ケイ素1モル当たりのアルカリ金属が、好ましくは0.1モル以上であり、より好ましくは0.12モル以上であり、さらに好ましくは0.14モル以上であり、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.2モル以下、さらに好ましくは1.0モル以下である。アルカリ金属ケイ酸塩は、下記式(I)で表される組成を有するものであってもよい。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液の市販品としては、例えばケイ酸カリウム(オーカシール(タイプA)、オーカシール(タイプB)(東京応化工業株式会社製))等が挙げられる。
A1
2O・vSiO2・wH2O (I)
(式(I)中、A1は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも1種であり、v及びwは、それぞれ0.4≦v≦3.9、5≦w≦90を満たす。)
【0033】
アルカリ金属ケイ酸水溶液は、水溶液中にアルカリ金属ケイ酸塩が固形分換算で、1質量%以上50質量%以下の範囲内で含まれていることが好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲内で含まれていることがより好ましい。第1混合液は、蛍光体1質量部に対して、アルカリ金属ケイ酸が固形分換算で前記範囲内で含まれているアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を50質量部以上200質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、80質量部以上150質量部以下の範囲内で含むことが好ましい。第1混合液中のアルカリ金属ケイ酸塩の固形分の含有量が、5質量%以上30質量%以下の範囲内であれば、第2蛍光体粒子が後述する第2混合液の液面から突出する部位を有する状態で第2蛍光体粒子を基体に配置させることができ、基体の表面に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されるように、第2蛍光体粒子を基体に固定させることができる。
【0034】
第2蛍光体粒子
第2蛍光体粒子は、光源から照射された光によって発光し、第1蛍光体粒子とは異なる波長範囲の光を出射する。第2蛍光体粒子は、所望の色度を得るために、フッ化物蛍光体、アルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体、及びα-サイアロン蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。
【0035】
第2蛍光体粒子は、光源から照射された光を波長変換し、600nm以上690nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を出射するものであることが好ましい
【0036】
成形体において、第1蛍光体粒子が、530nm以上590nm以下の範囲内の発光ピーク波長を有するものであるときに、第2蛍光体粒子が、600nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有するものであることが好ましい。
【0037】
成形体において、第1蛍光体粒子が、490nm以上555nm以下の範囲内の発光ピーク波長を有するものであるときに、第2蛍光体粒子が、600nm以上690nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有するものであることが好ましい。
【0038】
第2蛍光体粒子が、光源から出射された光によって、600nm以上690nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、下記式(2A)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体、下記式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体、下記式(2E)で表される組成を有するα-サイアロン蛍光体、及び下記式(2F)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。
【0039】
A2
2[M2
1-bMn4+
bF6] (2A)
式(2A)中、A2は、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種であり、M2は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、bは、0<b<0.2を満たす数である。
【0040】
(i-j)MgO・(j/2)M3
2O3・kMgF2・mCaF2・(1-n)GeO2・(n/2)M4
2O3:zMn4+ (2B)
式(2B)中、M3は、Li、Na、K、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Al、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、i、j、k、m、n及びzはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0<n<0.5、及び0<z<0.05を満たす数である。
【0041】
(Ca1-pSrp)AlSiN3:Eu (2C)
式(2C)中、pは、0≦p≦1.0を満たす数である。
【0042】
(Ca1-q-rSrqBar)2Si5N8:Eu (2D)
式(2D)中、q及びrは、それぞれ、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、q+r≦1.0を満たす数である。
【0043】
M5
cSi12-(d+e)Ald+eOeN16-e:Eu (2E)
式(2E)中、M5は、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(ただし、LaとCeを除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、c、d及びeは、それぞれ、0<c≦2.0、2.0≦d≦6.0、0≦e≦1.0、を満たす数である。
【0044】
M6
fM7
gM8
hAl3-sSisNt (2F)
式(2F)中、M6は、Sr、Ca、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M7は、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、M8は、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、f、g、h、s及びtは、それぞれ0.80≦f≦1.05、0.80≦g≦1.05、0.001<h≦0.1、0≦s≦0.5、3.0≦t≦5.0を満たす数である。
【0045】
第2蛍光体粒子が、光源から照射された光によって600nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合、第2蛍光体粒子としては、具体的には、K2SiF6:Mn、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+等で表されるマグネシウムフルオロジャーマネート蛍光体(MGF:Mn)、Ca2Si5N8:Eu、(Ba,Sr)2Si5N8:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、CaAlSiN3:Eu、Sr0.9925Li1.0000Eu0.0075Al3N4等が挙げられる。
【0046】
第2蛍光体粒子の平均粒径は、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。第2蛍光体粒子の平均粒径は、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。また、第2蛍光体粒子の平均粒径は、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。第2蛍光体粒子の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内であれば、後述する第2蛍光体粒子を基体上に沈降させる時間が短時間となり、作業性が向上する。第2蛍光体粒子の平均粒径が1μm以上5μm未満である場合には、後述する第2蛍光体粒子を基体上に沈降させる時間は、第2蛍光体粒子の平均粒径が5μm以上の場合と比較して長時間となるが、基体の表面により均等に第2蛍光体粒子を沈降させ、第2蛍光体粒子を基体の表面に均等に固定することができる。ここでの「均等」は、5μm以上の粒径のものに対して、5μm未満の粒径の方が、沈降させる時間が長くなることによって蛍光体の配置のバラツキを抑えられるという意味である。また、第2蛍光体粒子の平均粒径が1μm以上50μm以下の範囲内であれば、基体の表面に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されやすくなる。第2蛍光体粒子の平均粒径が、1μm以上50μm以下の範囲内であれば、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素よって、基体の表面に密着するように第2蛍光体粒子が固定され、基体に固定された第2蛍光体粒子と、基体中の第1蛍光体粒子と、光源から照射された光によって、演色性を向上させた混色光が得られる。
【0047】
第1混合液中の第2蛍光体粒子の含有量は、第1混合液の全体量に対して、好ましくは0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.3質量%以上0.9質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.4質量%以上0.8質量%以下の範囲内である。第1混合液中の第2蛍光体粒子の含有量が、第1混合液の全体量に対して0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であれば、第2蛍光体粒子を基体上に沈降させて、基体上に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されるように第2蛍光体粒子を基体上に固定することができる。第1混合液中の第2蛍光体粒子の量が少なすぎると、所望の色度を有する発光色が得難い場合がある。第1混合液中の第2蛍光体粒子の量が多すぎると、基体上に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されるように基体上に第2蛍光体粒子を配置し難くなる場合がある。
【0048】
第3蛍光体粒子
準備する工程において、第1混合液には、照射された光を波長変換し、第2蛍光体粒子とは異なる波長範囲の光を出射する第3蛍光体粒子をさらに含んでいてもよい。第1混合液にさらに第3蛍光体粒子を含んでいると、基体の表面に第2蛍光体粒子とともに第3蛍光体粒子を凹凸を形成するように基体に固定することができる。基体の表面に固定された第3蛍光体粒子は、第1蛍光体粒子で波長変換されずに基体を透過した光を、さらに基体の表面で波長変換することができ、成形体から所望の色度を有する混色光を得ることができる。
【0049】
第3蛍光体粒子は、第1蛍光体粒子又は第2蛍光体粒子からの光を波長変換するものでもよいが、光源から照射された光を波長変換するものであることが好ましい。基体に含まれる第1蛍光体粒子で波長変換されずに基体を透過した光を第3蛍光体粒子で波長変換することができ、基体を透過した光と、第1蛍光体粒子で波長変換された光と、第2蛍光体粒子で波長変換された光と、第3蛍光体粒子で波長変換された光と、によって、成形体から所望の色度を有する混色光を得ることができる。第3蛍光体粒子からの発光色が第1蛍光体粒子の発光色と同じ又は近似することにより、第1蛍光体粒子の発光色を補い、発光装置から出射される光は第1蛍光体粒子の発光色側へ色をシフトすることができる。
【0050】
第3蛍光体粒子は、光源から照射された光によって530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子であってもよく、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子であってもよい。
【0051】
第3蛍光体粒子が、光源から照射された光によって、530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、第3蛍光体粒子は、少なくとも1種のアルミン酸塩蛍光体であってもよい。アルミン酸塩蛍光体としては、前記式(1A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。第3蛍光体粒子が、光源から照射された光によって530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合、第3蛍光体粒子としては、Y3Al5O12:Ce、Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、Lu3Al5O12:Ce、又はLu3(Al,Ga)5O12:Ceが挙げられる。
【0052】
第3蛍光体粒子が、光源から照射された光によって、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及びβサイアロン蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種の蛍光体であることが好ましい。第3蛍光体粒子が、光源から照射された光によって、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合には、前記式(1B)で表される有するアルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、前記式(1C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、前記式(1D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、及び前記式(1E)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。第3蛍光体粒子が光源から照射された光によって490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体粒子である場合は、第3蛍光体粒子として、具体的には、BaSi2O2N2:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu、Si6-aAlaOaN8-a:Eu(式中、aは0<a<4.2を満たす数である。)が挙げられる。
【0053】
第3蛍光体粒子の平均粒径は、第2蛍光体粒子と同様に、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。第3蛍光体粒子の平均粒径が1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい理由は、第2蛍光体粒子と同様の理由である。
【0054】
第1混合液中に第3蛍光体粒子を含有する場合には、第2蛍光体粒子と第3蛍光体粒子の合計量が、第1混合液の全体量に対して、好ましくは0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.3質量%以上0.9質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.4質量%以上0.8質量%以下の範囲内である。第1混合液中の第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子の合計量が、第1混合液の全体量に対して0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であれば、第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子を基体上に沈降させて、基体上に第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されるように第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子を基体上に固定することができる。第2蛍光体粒子と第3蛍光体粒子の配合割合は、所望の色度の発光色を得るために、第2蛍光体粒子と第3蛍光体粒子の合計量に対して、第3蛍光体粒子が20質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、40質量%以上92質量%以下の範囲内でもよく、50質量%以上90質量%以下の範囲内でもよい。
【0055】
陽イオンを含む電解液中に基体を配置すること
成形体の製造方法において、基体は、陽イオンを含む電解液中に配置する。陽イオンを含む電解液中の陽イオンは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、及びアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種であること好ましい。電解液中に含まれる陽イオンは、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、及びアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、バリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。陽イオンを含む電解液は、アルカリ土類金属、アルカリ金属及びアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む酢酸溶液、硝酸塩溶液、又は硫酸塩溶液であることが好ましい。陽イオンを含む電解液は、具体的には、酢酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸アンモニウムを水又は脱イオン水に溶解させることによって得られる。陽イオンを含む電解液をクッション液という場合もある。電解液中の陽イオン濃度は、300質量ppm以上1000質量ppm以下の範囲内であり、より好ましくは400質量ppm以上900質量ppm以下の範囲内であり、さらに好ましくは500質量ppm以上800質量ppm以下の範囲内である。電解液中の陽イオンが、前記範囲内であると、基体の表面に結合したシラノール基(-Si-OH)と、第2蛍光体粒子の表面に結合したシラノール基の表面負荷電荷を中和し、第2蛍光体粒子と基体表面の反発作用を抑制し、基体の表面のシラノール基と第2蛍光体粒子の表面のシラノール基の縮合反応を促進する。第1混合液中に第3蛍光体粒子を含む場合には、第3蛍光体粒子の表面にもシラノール基が結合する。
【0056】
陽イオンを含む電解液は、第1混合液に対して、質量比で3倍以上10倍以下の範囲内であることが好ましく、4倍以上8倍以下の範囲内であってもよい。基体は、電解液中から基体を引き上げ可能な治具上に配置してもよい。また、底部から液体を排出可能な容器に、治具に設置した基体を配置し、容器中に陽イオンを含む電解液を投入してもよい。陽イオンを含む電解液は、配置した基体よりも電解液の液面が上となる量を入れることが好ましい。
【0057】
第2蛍光体粒子を沈降させること
成形体の製造方法において、基体を配置した陽イオンを含む電解液に第1混合液を投入して第2混合液とし、基体上に第2蛍光体粒子を沈降させる。第1混合液に第3蛍光体粒子が含まれる場合には、第2蛍光体粒子ととともに、第3蛍光体粒子も基体上に沈降させる。第2蛍光体粒子が基体上に沈降する時間、温度は制限されない。第2蛍光体粒子が沈降する際に、基体は静置されていることが好ましい。
【0058】
上澄み液を除去すること
成形体の製造方法において、基体上に第2蛍光体粒子を沈降させた後、第2混合液の上澄み液を除去する。第2混合液の上澄液は、基体上に沈降させた第2蛍光体粒子を動かさないように上澄み液を除去する。第2混合液の上澄み液は、吸引具、例えばスポイトによって吸い取って除去してもよく、容器の底部から排出するようにしてもよい。
【0059】
上澄み液を除去する工程後、第2蛍光体粒子を固定する前において、第2蛍光体粒子は、基体の表面において、第2蛍光体粒子の少なくとも一部が、第2混合液の液面から突出された状態で配置されることが好ましい。第2蛍光体粒子の少なくとも一部が第2混合液の液面から突出された状態で配置されていれば、第2蛍光体粒子が基体に固定される際に、第2蛍光体粒子に起因する凹凸が表面に形成されやすくなる。基体の表面に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されるように第2蛍光体粒子が固定されていると、凹凸によって出射される光が乱反射し、色むらを低減することができる。基体の表面に凹凸が形成されるように第2蛍光体粒子が固定されていると、無機バインダーに分散させた第2蛍光体粒子を塗布して形成する蛍光体層と比較して、薄い二酸化ケイ素の被膜を形成することができ、薄型化の要求に応えることができる。二酸化ケイ素等の被膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば0.005μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下の範囲内であることがより好ましい。また、第2蛍光体粒子は、基体に接触して固定されるため、セラミックスからなる第2蛍光体粒子と基体が直接伝熱するため、熱伝導率が高くなり、耐熱性に優れる。
【0060】
熱処理して基体に第2蛍光体粒子を固定すること
成形体の製造方法において、基体と、基体上に配置された第2蛍光体粒子を60℃以上400℃以下の温度範囲で熱処理して、固定する。基体の表面及び第2蛍光体粒子の表面には、それぞれアルカリ金属ケイ酸塩に起因するシラノール基が結合している。基体の表面に結合したシラノール基と、第2蛍光体粒子の表面に結合したシラノール基が脱水縮合してシロキサン結合(-Si-O-Si-)を形成することによって、第2蛍光体粒子の一部が基体に接触するように固定される。第1混合液に第3蛍光体粒子が含まれてる場合には、第3蛍光体粒子も同様に第3蛍光体粒子の表面に結合しているシラノール基が脱水縮合して、第3蛍光体粒子の一部が基体に接触するように固定される。以下、第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子をまとめて「蛍光体粒子」という場合がある。蛍光体粒子の表面及び基体の表面に存在する双方のシラノール基が脱水縮合してシロキサン結合を形成し、蛍光体粒子が基体に固定されると、無機バインダー中に蛍光体粒子を分散させて塗布した場合と比べて、膜厚を薄くすることができる。
【0061】
第2蛍光体粒子を固定する工程において、第2蛍光体粒子及び基体の上面全体を覆うようにアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜にて固定していることが好ましい。第2蛍光体粒子は、第2蛍光体粒子の表面及び基体の表面のそれぞれに結合しているシラノール基が脱水縮合してシロキサン結合を形成して基体に固定されるため、第2蛍光体粒子及び基体の上面全体を覆うようにアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜に覆われて固定されやすくなる。第1混合液に第3蛍光体粒子が含まれる場合には、第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子である蛍光体粒子及び基体の上面全体を覆うようにアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜に覆われて固定されることが好ましい。蛍光体粒子の表面及び基体の表面に結合しているシラノール基が脱水縮合してアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜が形成される。二酸化ケイ素の被膜は、蛍光体粒子の表面又は基体の表面に沿って形成され、蛍光体粒子に起因する凹凸が表面に形成されやすくなる。第2蛍光体粒子及び基体の上面全体を覆うようにアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜にて固定するためには、例えば第2混合液の上澄み液を除去した後、第2混合液で蛍光体粒子及び基体の表面が濡れている状態で熱処理することが好ましい。例えば第2混合液の上澄み液を除去した後、10分以内に熱処理を開始することが好ましく、8分以内に熱処理を開始することが好ましい。
【0062】
熱処理する工程において、熱処理温度は、70℃以上350℃以下の範囲内でもよく、80℃以上300℃以下の範囲内でもよい。熱処理は、大気雰囲気(酸素を20体積%含む雰囲気)下で行ってもよく、大気圧(101.3kPa)下で行ってもよい。熱処理時間は、1分以上1時間以内であってもよく、2分以上50分以内であってよく、5分以上40分以内であってもよい。熱処理は、炉等に第2蛍光体粒子及び必要に応じて第3蛍光体粒子を配置した基体を入れて熱処理してもよく、ホットプレート上に第2蛍光体粒子及び必要に応じて第3蛍光体粒子を配置した基体を載置して熱処理してもよい。
【0063】
透光性の保護膜を形成すること
成形体の製造方法は、第2蛍光体粒子を固定した後、前記被膜の表面に原子堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により透光性の保護膜を形成することを含むことが好ましい。保護膜は、例えば、無機材料によって形成されることが好ましい。無機材料としては、具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)等が挙げられるが、特に酸化アルミニウムが好ましい。これにより、基体、第2蛍光体粒子及び必要に応じて第3蛍光体粒子の表面に被膜の表面を水分等から保護できる緻密な保護膜を形成することができる。
【0064】
原子堆積法によって形成された保護膜の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等による断面又は端面の観察によって識別することができる。つまり、原子層の単位で形成された膜として識別することができる。具体的には、保護膜は、それを構成する原子同士が、水分子等を通過させるような隙間がないよう、互いに隣接して配置される。また、ALD法は、スパッタ、CVD等と異なり、反応成分の直進性が低いので、凹凸等の障害物近傍であっても、全反応成分が同等に成膜部位に供給され、原子層ごとに形成される。その結果、表面に蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されている場合であっても、略均一な膜厚及び膜質の良質な保護膜が形成される。
【0065】
保護膜は、1つの材料による単層膜又は多層膜であってもよく、2以上の異なる材料による多層膜でもよい。多層膜にすると、より水分等から、蛍光体粒子を保護することができ、成形体から出射する光の取り出しを向上することができる。保護膜は、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内の厚みとすることが好ましい。保護膜の厚みが10nm以上10μm以下の範囲内であると、第2蛍光体粒子及び必要に応じて第3蛍光体粒子を十分に保護しつつ、保護膜による成形体から出射する光の発光強度の低下を抑制することができる。
【0066】
原子堆積法により保護膜は、例えば、以下ように形成することができる。
まず、原子層堆積装置に、第2蛍光体粒子及び必要に応じて第3蛍光体粒子を配置した基体を導入し、続いて、原子層堆積装置内に、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスを導入し、被膜の表面に存在するOH基と、TMAとを反応させる。次に、余剰ガスを排気する。その後、H2Oガスを導入して、先の反応でOH基と結合したTMAとH2Oとを反応させる。次に、余剰ガスを排気する。
そして、TMAの反応、排気、OH基との反応及び排気を1サイクルとして繰り返すことにより、所定の膜厚のAl2O3の保護膜を形成することができる。
【0067】
成形体
第1実施形態の成形体は、第1蛍光体粒子を含む無機材料からなる透光性の基体と、基体に配置される第2蛍光体粒子と、基体に第2蛍光体粒子を固定させるアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜と、被膜上に形成される10nm以上1μm以下の厚みの酸化物又は窒化物の透光性の保護膜とを含む成形体であり、成形体の表面は、第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されている。本明細書において、成形体の表面に第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されている、とは、二酸化ケイ素の被膜及び保護膜が形成される前の状態をいう。二酸化ケイ素の被膜及び保護膜は、第2蛍光体粒子に起因する凹凸に沿って形成されるため、二酸化ケイ素の被膜が形成された状態で第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されていてもよい。保護膜は、原子堆積法によって形成されたものあることが好ましく、保護膜は、第2蛍光体粒子に起因する凹凸に沿って形成された二酸化ケイ素の被膜に沿って形成されるため、二酸化ケイ素の被膜及び保護膜が形成された状態で、第2蛍光体粒子に起因する凹凸が形成されていてもよい。
【0068】
図3は、第1実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。成形体31は、第1蛍光体粒子101aを含む無機材料101bからなる透光性の基体101と、基体101に配置された第2蛍光体粒子102aと、基体101に第2蛍光体粒子102aを固定させたアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の被膜103と、被膜103上に形成された10nm以上1μm以下の範囲内の厚みの酸化物又は窒化物の透光性の保護膜104と、を含む成形体であり、成形体31の表面に第2蛍光体粒子102aに起因する凹凸が形成されている。第2蛍光体粒子102aは、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液に由来するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素で基体101に固定されるため、第2蛍光体粒子が直接基体に伝熱し、熱伝導率が高くなり、耐熱性に優れる。また、基体101の表面に第2蛍光体粒子102aに起因する凹凸が形成されるように第2蛍光体粒子102aが固定されていると、凹凸によって出射される光が乱反射し、成形体31から出射する光の色むらを低減することができる。また、成形体31は、第2蛍光体粒子102aに起因する凹凸が表面に形成されるように第2蛍光体粒子102aに基体101に固定され、薄い二酸化ケイ素の被膜103及び保護膜104が形成されているため、無機バインダーに分散させた第2蛍光体粒子を塗布して形成する蛍光体層と比較して、成形体の厚みを薄くすることができ、薄型化の要求に応えることができる。
【0069】
FSSS法により測定した第2蛍光体粒子の平均粒径は、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。第2蛍光体粒子は、成形体の製造方法において説明した第2蛍光体粒子と同様の第2蛍光体粒子を用いることができる。第2蛍光体粒子の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内であれば、基体の表面に第2蛍光体粒子に起因する凹凸を形成することができる。第2蛍光体粒子の平均粒径が、1μm以上50μm以下の範囲内であれば、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素よって、基体の表面に密着するように第2蛍光体粒子が固定され、基体に固定された第2蛍光体粒子と、基体中の第1蛍光体粒子と、光源から照射された光によって、演色性を向上させた混色光が得られる。
【0070】
第2蛍光体粒子を固定するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素の厚みは1μm以下であることが好ましい。第2蛍光体粒子は、前述の成形体の製造方法における第1混合液に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に由来するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素で基体に固定され、アルカリ金属を含む二酸化ケイ素の厚みが1μm以下であれば、薄型化の要求に応えることができる。
【0071】
成形体31は、基体101の表面に沿った水平方向において、第2蛍光体粒子102aが断続的に存在する部分と、第2蛍光体粒子102aが存在しない部分と、を有していてもよい。基体101の表面において、第2蛍光体粒子102aが存在しない部分は、アルカリ金属を含む二酸化ケイ素のみが存在してもよい。
【0072】
成形体31からは、基体101の表面に凹凸が存在するように固定された第2蛍光体粒子102aで波長変換された光と、透光性の基体101を透過した光源からの光と、基体101に含まれる第1蛍光体粒子101aで波長変換された光と、の混色光が出射され、光源からの光と、第1蛍光体粒子101aで波長変換された光と、第2蛍光体粒子102aで波長変換された光と、によって、演色性に優れた混色光を出射することができる。
【0073】
図4は、第2実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。第2実施形態に係る成形体32は第1実施形態に係る成形体31に比べて、基体101が第1蛍光体粒子101aのみからなる点で異なる。所定の大きさの第1蛍光体粒子101aを所定の温度で焼結し固めたものである。第1蛍光体粒子101aのみで基体101を形成できるため、耐熱性に優れる。第1蛍光体粒子101aは全数のうちの少なくとも一部の粒子の表面の一部又は全部が溶け、第1蛍光体粒子101a同士を固定していることもある。
【0074】
図5は、第3実施形態に係る成形体を示す模式的断面図である。第3実施形態に係る成形体33は第1実施形態に係る成形体31に比べて、基体101の表面に配置される蛍光体が、第2蛍光体粒子102aに加え、第3蛍光体粒子102bが配置されている点で異なる。これにより成形体から所望の色度を有する混色光を得ることができる。成形体33は、基体101の表面に沿った水平方向において、アルカリ金属を含む二酸化ケイ素で固定された、第2蛍光体粒子102aとは異なる波長範囲の光を出射する第3蛍光体粒子102bが固定されている。第3蛍光体粒子102bは、基体101の表面に沿った水平方向において、第2蛍光体粒子102aと隣接するように配置されていてもよく、第2蛍光体粒子102aとは離れて配置されていてもよい。第3蛍光体粒子102bは、基体101の表面に第2蛍光体粒子102aが配置されていない部位に配置されていてもよい。また第3蛍光体粒子102bは第2蛍光体粒子102aの凹凸における凹の部分に配置されていてもよい。これにより、第2蛍光体粒子102aと、第3蛍光体粒子102bとで色度を補正しつつ、厚みも薄くすることができる。
【0075】
FSSS法により測定した第3蛍光体粒子の平均粒径は、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。第3蛍光体粒子は、成形体の製造方法において説明した第3蛍光体粒子と同様の第3蛍光体粒子を用いることができる。第3蛍光体粒子の平均粒径が5μm以上50μm以下の範囲内であれば、基体の表面に第3蛍光体粒子に起因する凹凸を形成することができる。第3蛍光体粒子の平均粒径が、1μm以上50μm以下の範囲内であれば、アルカリ金属ケイ酸塩に由来するアルカリ金属を含む二酸化ケイ素よって、基体の表面に密着するように第3蛍光体粒子が固定され、基体に固定された第3蛍光体粒子と、基体中の第1蛍光体粒子と、光源から照射された光によって、演色性を向上させた混色光が得られる。
【0076】
発光装置
発光装置は、前記成形体と、成形体を照射する光源とを備える。発光装置は、プロジェクター用光源や照明装置、標示装置などとして用いることができる。
【0077】
光源は、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)チップからなる発光素子であることが好ましく、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることができる。光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0078】
光源は、半導体レーザーであることがより好ましい。光源である半導体レーザーから出射された光を、成形体に入射させ、成形体によって波長が変換された光を集光させて、レンズアレイ、偏光変換素子、色分離光学系などの複数の光学系によって赤色光、緑色光、及び青色光に分離して、画像情報に応じて変調し、カラーの画像光を形成してもよい。光源として半導体レーザーから出射された光は、ダイクロイックミラー又はコリメート光学系などの光学系を通じて成形体に入射させてもよい。
【0079】
発光装置は、その平均演色評価数Raが70以上であることが好ましい。発光装置の平均演色評価数Raは、より好ましくは71以上、さらに好ましくは72以上である。発光装置の平均演色評価数Raは、JIS Z8726に準拠して測定することができる。発光装置の平均演色評価数Raの値が100に近づくほど、基準光源に近似した演色性となる。平均演色評価数Raが70以上であれば、オフィスや学校等の一般的な作業を行う照明用途に適する光を発する発光装置を提供することができる。
【0080】
発光装置(発光モジュール)
成形体と光源を備えた発光装置、発光装置を備えた発光モジュール、及び照明装置について説明する。発光装置は、以下の発光モジュールに限定するものではない。以下に説明する発光装置、発光モジュール、及び照明装置の構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、以下の記載のみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、各図で示す発光素子は、構成を理解し易いように一例として設定した数で図示している。
【0081】
図6Aは、成形体と、光源と、を備えた発光装置を含む、発光装置の一例である発光モジュールの構成を示す模式的斜視図である。
図6Bは、成形体と、光源と、を備えた発光装置を含む、発光装置の一例である発光モジュールの構成を示す模式的平面図である。
図6Cは、
図6BのVIC-VIC線における断面図である。
図6Dは、
図6BのVID-VID線における断面図である。
図6Eは、一例の発光装置の構成を示す模式的断面図である。
図6Fは、一例の発光装置の構成を示す模式的底面図である。
【0082】
発光装置の一例である発光モジュール200は、発光装置100と、発光装置100が載置されたモジュール基板80と、を備えている。
【0083】
発光装置
発光装置100について説明する。
発光装置100は、発光装置100の光取り出し領域として、上面に複数の発光面を備える。
発光装置100は、サブマウント基板10と、サブマウント基板10上に設けられた発光素子20と、発光素子20上に設けられた前述の成形体からなる光透過性部材30と、光透過性部材30と発光素子20の間に配置される導光部材40と、サブマウント基板10上で発光素子20の側面を被覆する第1被覆部材50と、を備える素子構造体15と、素子構造体15の側面を被覆して複数の素子構造体15を保持する第2被覆部材60と、を備えている。光透過性部材30の上面は、第2被覆部材60から露出しており、発光装置100が備える複数の発光面を構成している。
発光装置100は、それぞれが発光面を有する複数の素子構造体15が第2被覆部材60で保持されている。第2被覆部材60により、それぞれの素子構造体15を所望の配置で保持することができるため、複数の発光面をより狭い距離で高密度に配置することができる。
発光装置100は、導光部材40を用いず、光透過性部材30と発光素子20とを直接接合してもよい。
【0084】
以下、発光装置100の各構成について説明する。
サブマウント基板10は、発光素子20及び保護素子25を載置する部材である。サブマウント基板10は、例えば平面視で略長方形に形成されている。
サブマウント基板10としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子20から出射される光や外光等を透過しにくい材料を用いることが好ましい。例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト等のセラミックス、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、又は、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又は、フェノール樹脂等の樹脂を用いることができる。なかでも放熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましい。
【0085】
サブマウント基板10は、上面、下面、及び内部に、発光素子20や外部電源と電気的に接続するための配線を備えている。配線としては、例えば、Fe、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Al、Pt、Ti、W、Pd等の金属又は、これらの少なくとも一種を含む合金を用いて形成することができる。
例えばサブマウント基板10としては、発光素子20が載置される上面に発光素子20と接続される上面配線2を備え、発光素子20が載置される上面と反対側の下面に外部電源と電気的に接続される外部接続電極3(例えば、アノード電極3a及びカソード電極3b)を備えるものが挙げられる。この場合、上面配線2と外部接続電極3とは、上面及び下面の双方におよぶ、つまりサブマウント基板10を貫通するビア4が形成されていてもよい。これによって、上面配線2と外部接続電極3とが電気的に接続される。
【0086】
発光装置100において、隣接するサブマウント基板10間の距離L1は、例えば0.05mm以上0.2mm以下であってもよい。これにより、サブマウント基板10間に配置される第2被覆部材60の厚みが0.05mm以上0.2mm以下となるため、隣接するサブマウント基板10同士を密集して接合させることができる。また、複数の素子構造体15を備える発光装置100において、複数の素子構造体15それぞれがサブマウント基板10を備え、かつ、サブマウント基板10間に第2被覆部材60を配置することができる。これにより、個々の素子構造体15で発生した熱及び発光装置実装時の熱履歴等に起因するサブマウント基板10の膨張又は縮小による熱応力の影響を抑制することができる。
【0087】
発光素子20は、電圧を印加すると自ら発光する半導体素子である。発光素子20の形状や大きさ等は任意のものを選択できる。発光素子20の発光色としては、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色系(波長430nmから500nmの光)、緑色系(波長500nmから570nmの光)の発光素子20としては、前述の窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いたものを使用することができる。赤色系(波長610nmから700nmの光)の発光素子20としては、窒化物系半導体素子の他にもGaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。発光装置の光源は、半導体発光素子のうち半導体レーザーであることが好ましいが発光ダイオードを用いることもできる。
【0088】
発光素子20は、一つの面に正負の素子電極を備えるものを用いることが好ましく、これにより、導電性接着材8によりサブマウント基板10上で配線にフリップチップ実装することができる。導電性接着材8としては、例えば共晶はんだ、導電ペースト、バンプ等を用いればよい。
【0089】
保護素子25は、例えば、ツェナーダイオードである。保護素子25は、一つの面に正負の素子電極を備え、導電性接着材8によりサブマウント基板10上で配線にフリップチップ実装されている。なお、発光装置は、保護素子25を備えないものであってもよい。
【0090】
光透過性部材30は、前述の成形体を用いることができる。光透過性部材30は、個々の素子構造体15及び発光装置100の主たる発光面となる上面と、上面と対向する下面と、を有する平板状の部材である。光透過性部材30は、発光素子20上に配置されている。光透過性部材30は、発光素子20の上面よりも広い上面を有していることが好ましく、平面視で発光素子20を内包するように配置されていることが好ましい。
発光装置100において、発光装置100の上面で露出する光透過性部材30間の距離L2は例えば0.2mm以下であってもよい。隣接する光透過性部材30間の距離L2が0.2mm以下であれば、光源を小さくすることができる。隣接する光透過性部材30間の距離L2は、0.1mm以下でもよく、0.05mm以下でもよい。光透過性部材30間の距離L2は、発光装置100の製造のし易さの観点から、0.03mm以上でもよい。
【0091】
光透過性部材30の平面形状は、円形、楕円形、正方形又は六角形等の多角形等種々とすることができる。なかでも、複数の発光面を近接させて配置するという観点から、正方形、長方形等の矩形であることが好ましく、発光素子20の平面形状と類似する形状であることがより好ましい。
【0092】
導光部材40は、光透過性部材30と発光素子20の間に配置され、発光素子20と光透過性部材30とを接合する部材である。また、導光部材40は、発光素子20から光を取り出し易くし、発光素子20からの光を光透過性部材30に導光する部材である。導光部材40は、光束及び光の取り出し効率を向上させることができる。導光部材40は、発光素子20の側面にも設けられていることが好ましい。
発光素子20の側面を被覆する導光部材40は、光透過性部材30と発光素子20とを接合する接着部材が、発光素子20の側面に濡れ広がることで形成することができる。
【0093】
導光部材40は、断面視で、発光素子20の下面(サブマウント基板10側)から光透過性部材30に向かって、部材幅が広がるように三角形状に形成されている。このような形態とすることで、発光素子20から横方向に進む光が上方に反射され易くなるため、光束及び光の取り出し効率がより向上する。ただし、導光部材40の外側面の断面形状は、直線形状に限らず、湾曲形状であってもよい。例えば、導光部材40の湾曲形状は、第1被覆部材50側に膨らむ湾曲形状でもよいし、発光素子20側に凹む湾曲形状でもよい。
【0094】
導光部材40は、発光素子20の側面のうち発光部を含む領域を被覆すればよいが、光束及び光の取り出し効率を向上させる観点から、発光素子20の側面の略全部を被覆していることがより好ましい。
導光部材40としては、例えば、透光性の樹脂材料やガラスやセラミックスを用いることができる。また、導光部材40には拡散材が含有されていてもよい。これにより、光透過性部材30に、より均等に光を入射することができ、発光装置100の色ムラを抑制することができる。
【0095】
第1被覆部材50は、サブマウント基板10上に設けられ、発光素子20の側面を被覆する。第1被覆部材50は、サブマウント基板10と発光素子20との接着力を高めることができる。第1被覆部材50は、導光部材40を介して発光素子20の側面を被覆している。
第1被覆部材50は、断面視で、光透過性部材30側からサブマウント基板10に向かって、部材幅が広がるように、例えば断面視形状が三角形状に形成されている。第1被覆部材50の外側面の断面形状は、直線形状に限らず、湾曲形状であってもよい。例えば、第1被覆部材50の湾曲形状は、第2被覆部材60側に膨らむ湾曲形状でもよいし、発光素子20側に凹む湾曲形状でもよい。
【0096】
第1被覆部材50としては、例えば、透光性の樹脂材料に反射材を含有させたものを用いることができる。第1被覆部材50に用いる樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。特に、耐光性、耐熱性に優れるシリコーン樹脂を用いることが好ましい。反射材としては、例えば、酸化チタン、シリカ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化硼素等が挙げられる。なかでも、光反射の観点から、屈折率が比較的高い酸化チタンを用いることが好ましい。
【0097】
第1被覆部材50は、発光素子20の側面の少なくとも一部を被覆すればよい。好ましくは、第1被覆部材50が発光素子20の側面全体を被覆するのがよい。さらに好ましくは、発光素子20の側面から延在して光透過性部材30の側面の少なくとも一部を被覆することがよい。これにより、個々の素子構造体15において、発光素子20の側面からの光が直接外部に出射されるのを抑制することができる。これにより、複数の素子構造体15を備える発光装置100において、隣接する素子構造体15への光漏れが抑制され、発光むらの少ない発光装置100とすることができる。また、後述するように、素子構造体15毎に個片化された後に選別工程を行う際に、素子構造体15の色度座標をより把握し易くなる。
また第1被覆部材50は、発光素子20の下面を被覆することが好ましい。これにより、発光素子20の下方に進む光が第1被覆部材50に含有される反射材に照射され反射するため、発光装置100の光束をより高めることができる。また、サブマウント基板10と発光素子20との接着力をより高めることができる。
【0098】
第2被覆部材60は、複数の素子構造体15の周囲に設けられた部材である。第2被覆部材60は樹脂材料を用いることが好ましいがガラスやセラミックスも用いることができる。第2被覆部材60は、例えば、透光性の樹脂材料に反射材を含有させた白色樹脂により、素子構造体15の側面を被覆して形成される。すなわち、第2被覆部材60は、サブマウント基板10の側面、第1被覆部材50の側面及び光透過性部材30の側面を被覆している。第2被覆部材60は、隣接する素子構造体15の間にも設けられており、光透過性部材30の上面を露出させて、複数の素子構造体15それぞれの外周側面を被覆している。
【0099】
第2被覆部材60に用いる樹脂材料としては、例えば、第1被覆部材50に用いる樹脂材料として例示したものが挙げられる。第2被覆部材60に用いる樹脂に含有する反射材としては、例えば、第1被覆部材50に用いる反射材として例示したものが挙げられる。
【0100】
発光装置100は、複数の素子構造体15を備え、複数の素子構造体15それぞれが発光素子20の側面を被覆する第1被覆部材50を備えるため、発光素子20から出射された光の横方向への光漏れを抑制することができる。これにより、個々の素子構造体15の光取り出し効率を低下させることなく、複数の素子構造体15をより近接して配置させることが可能となる。
発光装置100は、ここでは一例として、2行2列の行列状に配置された4個の素子構造体15が第2被覆部材60により保持されている。素子構造体15は、それぞれ保護素子25が外側に位置するように配置されている。これにより、4つの光透過性部材30をより狭い間隔で行列状に配置することができる。発光装置は、素子構造体15を3個以下備えるものであってもよく、5個以上備えるものであってもよい。
【0101】
発光装置の製造方法
発光装置100の製造方法は、サブマウント基板10と、サブマウント基板10上に設けられた発光素子20と、発光素子20上に設けられた光透過性部材30と、発光素子20の側面に設けられた導光部材40と、サブマウント基板10上で発光素子20の側面を被覆する第1被覆部材50と、を備える素子構造体15を複数準備する工程である素子構造体準備工程と、素子構造体15のサブマウント基板10がシート部材に対面するように複数の素子構造体15をシート部材に載置する工程である素子構造体載置工程と、複数の素子構造体15の側面を被覆して複数の素子構造体15を保持する第2被覆部材60をシート部材上に形成する工程である第2被覆部材形成工程と、シート部材を除去する工程であるシート部材除去工程と、を含んでいてもよい。発光装置の製造方法は、光透過性部材30として前述の成形体を用いる他、特願2020-006262に記載の製造方法を参照することができる。
【0102】
発光モジュール
次に、発光装置である発光モジュール200について説明する。
発光モジュール200は、既に説明した構成の発光装置100と、発光装置100のサブマウント基板10が対面するように発光装置100が載置されたモジュール基板80と、を備えている。
なお、発光装置100に保護素子25を備えない場合、モジュール基板80側に保護素子25を備える構成としてもよい。また、モジュール基板80は、保護素子25以外の他の電子部品を備える構成としてもよい。
【0103】
発光装置100は前記説明した通りの構成を備えている。
モジュール基板80は、発光装置100を載置する部材であり、発光装置100を電気的に外部と接続する。モジュール基板80は、例えば平面視で略長方形に形成されている。
モジュール基板80の材料としては、例えば、サブマウント基板10に用いる材料として例示したものが挙げられる。
モジュール基板80は、上面に、発光装置100と電気的に接続するための配線を備えている。モジュール基板80の配線の材料としては、例えば、サブマウント基板10の配線に用いる材料として例示したものが挙げられる。また、絶縁性材料と金属部材との複合材料を用いてもよい。
【0104】
発光装置100は、導電性接着材を介してサブマウント基板10の配線とモジュール基板80の配線とが接合するようにモジュール基板80の上面に実装されている。導電性接着材としては、例えば共晶はんだ、導電ペースト、バンプ、金属焼結体等を用いればよい。金属焼結体、例えば銀粒子等の金属粉体を160℃以上、好ましくは180℃以上であり、400℃以下、好ましくは280℃以下で焼結したものを用いることで強固に固定することができる。
【0105】
発光モジュール200を駆動すると、外部電源から発光素子20に電流が供給され、発光素子20が発光する。発光素子20が発光した光は、上方へ進む光が、光透過性部材30を介して発光装置100の上方の外部に取り出される。また、下方へ進む光は、サブマウント基板10で反射され、光透過性部材30を介して発光装置100の外部に取り出される。また、横方向へ進む光は、第1被覆部材50及び/又は第2被覆部材60で反射され、光透過性部材30を介して発光装置100の外部に取り出される。
【0106】
発光モジュールの製造方法
発光モジュール200の製造方法は、発光装置100の製造方法を用いて発光装置100を準備する工程である発光装置準備工程と、発光装置100をサブマウント基板10がモジュール基板80に対面するように載置する工程である発光装置載置工程と、を含んでいてもよい。発光装置としての発光モジュールの製造方法は、特願2020-006262に記載の製造方法を参照することができる。
【0107】
プロジェクター用の光源装置
前記成形体と、光源を備える発光装置は、プロジェクター用光源として用いることができる。プロジェクターの一例を
図7及び
図8A乃至
図8Cを用いて説明する。
図7は、プロジェクター用の光源装置300の概要を示す模式的な側面図である。
【0108】
図7に示すように、光源装置300は、光源310と、光源310からの出射光が入射する集光レンズ320と、集光レンズ320の出射光が入射する蛍光体ホイール330と、蛍光体ホイール330の出射光が入射する受光レンズ340とを備えている。蛍光体ホイール330は、光源からの光を透過させる円板状の蛍光体ホイールであって、駆動軸352を介して駆動モータ350によって回転するようになっている。なお、
図7においては、光源310、集光レンズ320、蛍光体ホイール330及び受光レンズ340を含めて光源装置300として示してあるが、光源装置300に受光レンズ340を含めずに、光源310、集光レンズ320及び蛍光体ホイール330により光源装置300が構成される場合もあり得る。
【0109】
次に、光源310から出射した光の流れに沿って、光源装置300の概要を説明する。本実施形態では、光源310として青色光を出射する半導体レーザーを用いた場合を例にとって説明する。光源310から青色光が出射され、出射された青色光は集光レンズ320に入射し、集光レンズ320で集光されて、駆動モータ350によって回転する蛍光体ホイール330に入射する。蛍光体ホイール330は、光が透過する材料で構成され、少なくとも一部の領域に蛍光体を含む成形体33が設けられている。成形体33に限らず、成形体31、32、34、35のいずれも用いることができる。蛍光体ホイール330には、成形体33を設ける領域と、成形体33を設けていない領域に分けられていてもよい。成形体33を設けた領域と、成形体33を設けていない領域に分けられていれば、集光レンズ320から蛍光体ホイール330に青色光が入射すると、蛍光体ホイール330から第1蛍光体粒子の緑色光、第2蛍光体粒子の赤色光、第3蛍光体粒子の黄色光及び光源310の青色光が出射され、受光レンズ340に入射する。そして、受光レンズ340で平行光にされて、光源装置300から出射される。なお、受光レンズ340によって、平行光を出射する場合だけで無く、光が広がる方向に出射することもできるし、所定の位置に集光することもできる。
【0110】
蛍光体ホイールの説明
次に、
図7及び
図8A乃至
図8Cを用いて、プロジェクター用の光源装置300に用いる蛍光体ホイール330の構造を説明する。蛍光体ホイール330に設ける蛍光体として、前述の成形体を用いることができ、例えば成形体33を用いることができる。
蛍光体ホイール330は、光源310からの光を透過させる透過型の蛍光体ホイールであって、光源310側から順に、第1の基板332と第2の基板334を備える。第1の基板332及び第2の基板334は駆動モータ350の駆動軸352に固定され、駆動モータ350の駆動力により、駆動軸352を中心に回転するようになっている。つまり、第1の基板332及び第2の基板334は、駆動軸352によって互いの位置が固定されている。ただし、第1の基板332及び第2の基板334の相対的な位置の固定方法は、駆動軸352を用いた場合に限られるものではなく、例えば、第1の基板332及び第2の基板334の間にスペーサーを挿入する等、その他の任意手段で固定することができる。
蛍光体ホイール330は、第1の基板332と第2の基板334との間に、例えば成形体33を備える。なお、
図7の矢印Bから見た成形体33は、第1蛍光体粒子を含む基体が第1の基板332側に配置されていることが好ましい。また、成形体33の第2蛍光体粒子102a及び第3蛍光体粒子102cが第2の基板334側に配置されていることが好ましい。
【0111】
蛍光体ホイール330は、光源310側に、光源310からの光の波長域の光を透過し、成形体33に含まれる第1蛍光体粒子、第2蛍光体粒子又は第3蛍光体粒子により波長変換された光の波長域の光を反射するフィルタ360を備えている。
図7に示す実施形態では、フィルタ360は、第1の基板332の光源側に設けられている。具体的には、フィルタ360として、青色光の波長域の光を透過し、緑色光、黄色光及び赤色光の波長域の光を反射するショートパスフィルタを用いることができる。
【0112】
蛍光体ホイール330は、光源310と反対側に、第1蛍光体粒子、第2蛍光体粒子及び第3蛍光体粒子により波長変換された光の波長域の光を透過し、光源310からの光の波長域の光を反射するフィルタ362を備えている。
図7に示す実施形態では、回転方向における成形体33に対応する位置において、第2の基板334に光源310と反対側の面にフィルタ362を備えている。具体的には、フィルタ362として、緑色光、黄色光、及び赤色光の波長域の光を透過し、青色光の光を反射するロングパスフィルタを用いることができる。なお、青色光と赤色光の間の波長域の光、例えば黄色光や緑色光の波長域の光については、フィルタ362は、特定の波長域の光を透過させるようにすることもできるし、反射するようすることもでき、用途に応じて、フィルタの最適な透過波長域を定めることができる。
【0113】
ここで、
図8A乃至
図8Cを用いて、第1の基板332及び第2の基板334の各面上の配置について説明する。
図8Aは、
図7の矢印Aから見た蛍光体ホイール330の第1の基板332の光源側の面を示した図である。第1の基板332は、裏面側に成形体33が設けられた領域に、フィルタ360を備えている。
【0114】
図8Bは、
図7の矢印Bから見た蛍光体ホイール330の第2の基板334の光源側の面を示した図である。第2の基板334は、回転方向において成形体33を設けた領域SP、及び蛍光体を設けていない青色出射領域SBが設けられている。
【0115】
図8Cは、
図7の矢印Cから見た蛍光体ホイール330の第2の基板334の光源と反対側の面を示した図である。第2の基板334は、光源側の面の成形体33を備えた領域SPに対応するように、光源側の面と反対の面にフィルタ362が設けられている。また、青色出射領域SBには、蛍光体を有していない。ただし、青色出射領域SBに、誘電体多層膜を蒸着したり、反射防止膜を形成したり、散乱体を含有する層を形成することもできる。
【0116】
図7及び
図8A乃至
図8Cに示す蛍光体ホイール330では、成形体33の基体が第1の基板332の光源310と反対側の面に配置され、かつ第2の基板334の光源310側の面に成形体の第2蛍光体粒子102a及び第3蛍光体粒子102bが配置されている。
【0117】
プロジェクターの説明
次に、
図9を用いて、上述の光源装置300を、いわゆる1チップ方式のDLPプロジェクターにおける光源装置として用いる場合を説明する。なお、
図9は、上述の光源装置300を備えた1つの実施形態に係るプロジェクター400の構成を示すための模式図であって、光源装置300やプロジェクター400を上から見た模式的な平面図である。
図9において、光源装置300から出射された光は、光学系を介して、光空間変調器であるDMD(Digital Micromirror Device)素子(光変調手段)470に入射する。そして、DMD素子470で反射され、投影手段である投影レンズ480によって集光されて、スクリーン490に投影される。DMD素子470は、スクリーン490に投影された画像の各画素に相当する微細なミラーをマトリックス状に配列したものであり、各ミラーの角度を変化させてスクリーンへ出射する光を、マイクロ秒単位でオン/オフすることができる。また、各ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率によって、投影レンズへ入射する光の階調を変化させることにより、投影する画像の画像データに基づいた階調表示が可能になる。
【0118】
なお、本実施形態では、光変調手段としてDMD素子を用いているが、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他任意の光変調素子を用いることができる。また、本発明に係る光源装置300及びこの光源装置300を用いたプロジェクター400は、上述した実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
また、本実施形態では、受光レンズ340が光源装置300に含まれるようになっているが、これに限られるものではない。例えば、受光レンズ340が光源装置300に含まれずに、光学系の一部に含まれている場合もあり得る。
【0119】
以上のように、本実施形態におけるプロジェクター400は、上述の光源装置300と、画像データに基づいて、光源装置300から出射された複数の波長帯域の光を順次変調して画像を形成するDMD素子470と、画像を拡大して投影する投影レンズ480と、を備えている。
以上の工程により、演色性及び耐熱性に優れた成形体、発光装置を簡易に製造することができる。
【0120】
照明装置
成形体と光源を備えた照明装置について説明する。光源は、レーザー光を出射するものであってもよい。
図10Aは、照明装置の一例の概略を示す模式的正面図である。
図10Bは、照明装置の模式的断面図である。
【0121】
照明装置500は、筐体512と、反射鏡ユニット510と、複数のレーザー光源ユニット515と、前述の成形体からなる蛍光部材514と、を備えている。
図10Aにおいて、複数のレーザー光源ユニット512は、反射鏡ユニット510の裏側の位置(反射面510Aに隠れた位置)に配置されている。
【0122】
筐体512の出射口512Aには、カバー519を備え、筐体512の背面部512Bは、背後に向かって膨出していてもよい。筐体512は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウム等によって形成されていてもよい。
【0123】
レーザー光源ユニット515は、レーザー光源516と、レンズ517と、放熱部材518とを備える。レーザー光源516は、半導体レーザー(LD)を用いてもよい。レーザー光源516には、ファイバーレーザーを用いてもよい。レンズ517は、レーザー光源516から出射されたレーザー光を蛍光部材514に集光する。複数のレーザー光源ユニット515は、蛍光部材514からみて同じ角度、かつ同じ距離に配置されていることが好ましい。複数のレーザー光の重なりによる照射対象ががぼけるのを抑制することができ、照射スポット径の広がりを抑制することができる。
【0124】
蛍光部材514は、前述の成形体からなるものであることが好ましい。蛍光部材514は、反射鏡ユニット510の端部から中央部に延びる支持部材513によって反射鏡ユニット510の中央部分に支持されていることが好ましい。支持部材513は、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウム等によって形成されていてもよい。
【0125】
反射鏡ユニット510は、凹体形状を有し、凹面が反射面510Aである。反射鏡ユニット510の反射面510Aの裏側にレーザー光源ユニット515が配置されている。反射鏡ユニット510は、レーザー光源ユニット515から出射した光を透過させ、蛍光部材514に集光するための円環スリット状の孔部511を備える。反射鏡ユニット510は、孔部511により、中央部と円周部とが分離可能に分割されていてもよい。
【0126】
レーザー光源ユニット515から出射されたレーザー光は、円環スリット状の孔部511を通って、蛍光部材514に集光される。蛍光部材514に集光されたレーザー光は、蛍光部材514で波長変換され、蛍光部材514から反射鏡ユニット510の反射面510Aに向かって出射される。蛍光部材514から出射された光は、反射鏡ユニット510の反射面510Aで反射される。反射面510Aで反射された光は、光軸Kに略平行な平行光となり、照明装置500から照明光として出射される。
【実施例】
【0127】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明する。本実施形態は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0128】
第1蛍光体粒子a
第1蛍光体粒子aとして、Lu2.984Ce0.016Al5O12(以下「LAG蛍光体」ともいう。)で表される組成を有し、FSSS法で測定される平均粒径が21.5μmの希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を用いた。第1蛍光体粒子aは、490nm以上555nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していた。LAG第1蛍光体粒子aの真密度は6.69g/cm3であった。
【0129】
第1蛍光体粒子b
第1蛍光体粒子bとして、Y2.955Ce0.045Al5O12(以下「YAG蛍光体」ともいう。)で表される組成を有し、FSSS法で測定される平均粒径が14.9μmの希土類アルミン酸塩蛍光体粒子を用いた。第1蛍光体粒子aは、530nm以上590nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していた。YAG第1蛍光体粒子bの真密度は4.60g/cm3であった。
【0130】
第2蛍光体粒子c
第2蛍光体粒子として、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu(以下「SCASN蛍光体」ともいう。)で表される組成を有し、FSSS法で測定される平均粒径が12.5μmのアルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体粒子を用いた。第2蛍光体粒子cは、600nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していた。
【0131】
第2蛍光体粒子d
第2蛍光体粒子として、CaAlSiN3:Eu(以下「CASN蛍光体」ともいう。)で表される組成を有し、FSSS法で測定した平均粒径が12.0μmのアルカリ土類金属シリコンナイトライド蛍光体粒子を用いた。第2蛍光体粒子dは、600nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していた。
【0132】
FSSS法による平均粒径
第1蛍光体粒子の平均粒径は、Fisher Sub Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、気温25℃、相対湿度70%の環境下において、1cm3分の資料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を長し、差圧から比表面積を読み取り、FSSS法にょる平均粒径を算出した。
【0133】
実施例1:基体を準備すること
第1蛍光体粒子a(LAG蛍光体)を26.7質量%と、酸化アルミニウムを73.3質量%を、含み、相対密度が98.8%、厚みが0.18mmである基体A1を準備した。また、第1蛍光体粒子b(YAG蛍光体)を13質量%と、酸化アルミニウムを87質量%を、含み、相対密度が99.7%、厚みが0.18mmである基体B1を準備した。実施例及び参考例において、基体の相対密度は以下の式(1)から(3)に基づき算出した。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
実施例1:第1混合液を準備すること
第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)と、K2O・3.40SiO2・42.58H2Oで表されるケイ酸カリウム水溶液(オーカシール(タイプB)、東京応化工業株式会社製)とを混合した第1混合液を準備した。第1混合液100質量%に対して、第2蛍光体粒子d(CASN蛍光体)の含有量は、0.4質量%であった。第2蛍光体粒子c1質量部に対して、ケイ酸カリウム水溶液を120質量部加え、さらに後述する酢酸バリウム水溶液の1/6重量比になり、かつ全体が50gになるよう、つまりは第1混合液として8.57g(50g/7)になるよう純水を加えて第1混合液とした。
【0138】
実施例1:陽イオンを含む電解液中に基体を配置すること基体に蛍光体含有組成物を塗布する工程
陽イオンを含む電解液(クッション液)として、酢酸バリウム水溶液を準備した。酢酸バリウム水溶液中のバリウムイオンの濃度は、736質量ppmであった。第1混合液の容積に対して6倍の容積の酢酸バリウム水溶液を準備し、50mLビーカーの容器に投入した。治具に載置した基体A1を酢酸バリウム水溶液中に配置した。
【0139】
実施例1:第2蛍光体粒子を基体上に沈降させること成形体を得る工程
酢酸バリウム水溶液中に第1混合液を投入して第2混合液とし、第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)を基体A1上に沈降させた。酢酸バリウム水溶液、第1混合液及び第2混合液の温度は室温(20℃±5℃)であり、第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)が沈降した時間は5分以内であった。
【0140】
実施例1:第2混合液の上澄み液を除去すること
第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)を基体A1上に沈降させた後、第2蛍光体粒子を流動させないようにスポイトで第2混合液の上澄みを吸い取って除去した。
【0141】
実施例1:熱処理して第2蛍光体粒子cを基体に固定すること
治具ごと容器から第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)を配置した基体A1を取り出し、治具に乗せたまま基体A1をホットプレート上に配置し、80℃で10分間熱処理し、アルカリ金属を含む二酸化ケイ素で第2蛍光体粒子cを基体A1に固定して、成形体を製造した。上澄み液を除去してから5分以内に熱処理を開始した。熱処理は、大気雰囲気(酸素含有量が20体積%以上、大気圧101.3kPa)で行った。
【0142】
実施例2
基体として基体B1を用い、第2蛍光体粒子として第2蛍光体粒子d(CASN蛍光体)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体を製造した。
【0143】
実施例3
第1混合液100質量%に対して、第2蛍光体粒子d(CASN蛍光体)の含有量は、0.6質量%としたこと以外は、実施例2と同様にして成形体を製造した。
【0144】
実施例4
実施例2と同様にして製造した成形体の二酸化ケイ素の被膜上に原子堆積法(ALD)保護膜を形成した。第2蛍光体粒子d(CASN蛍光体)が基体B1に固定され、二酸化ケイ素の被膜で覆われている基体B1を、原子層堆積装置に導入し、原子層堆積装置内に、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスを導入し、二酸化ケイ素の被膜の表面に存在するOH基とTMAを反応させ、余剰ガスを排気した。その後、H2Oガスを導入して、先の反応でOH基と結合したTMAとH2Oとを反応させた。次に、余剰ガスを排気した。そして、TMAの反応、排気、OH基との反応及び排気を繰り返し、17.5nmの膜厚のAl2O3の保護膜を形成し、保護膜の形成された成形体を得た。
【0145】
参考例1
第2蛍光体粒子を基体に固定してない基体B1を参考例1の基体とした。
【0146】
参考例2
第2蛍光体粒子を基体に固定してない基体A1を参考例2の基体とした。
【0147】
比較例1
実施例1と同様の基体A1を用いた。シリカ前駆体であるポリシラノールを1質量%以上10質量%以下の範囲で含み、イソプロピルアルコールを溶媒として含む無機バインダー(ゾルゲル)を50質量%と、第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)を50質量%を混合し、蛍光体含有組成物を形成し、基体A1上にマスクを用いて印刷法により塗布し、基体をホットプレート上に置き、80℃で3分間、乾燥する乾燥工程を行い、無機バインダーに含まれる溶媒を除去した。使用したマスクの厚さは、58μmであった。続いて150℃で5分間、200℃で5分間、250℃で5分間おいて、段階的に昇温し、昇温後300℃で30分間熱処理し、無機バインダー由来の二酸化ケイ素からなる透光性のセラミックスを介して、第2蛍光体粒子c(SCASN蛍光体)を、基体A1の表面に固定させ成形体を得た。さらに実施例4と同様に、原子層堆積層地により17.5nmの膜厚のAl2O3の保護膜を形成し、保護膜の形成された成形体を得た。
【0148】
比較例2
第2蛍光体粒子として第2蛍光体粒子d(CASN蛍光体)を用いた事、段階的な昇温後の最終熱処理温度を450℃とした事、17.5nmの膜厚のAl2O3の保護膜を形成しなかった事以外は比較例1と同様にして成形体を得た。
【0149】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(製品名JSM-IT200、JEOL社製)を用いて、各実施例及び参考例の成形体の平面又は断面(端面)のSEM写真を得た。
図11及び
図14にSEM写真を示す。
【0150】
SEM-EDS元素マッピング
SEM画像上で、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法、Energy Dispersive X-ray Spectrometry)により、基体に含まれる元素(Al、O)、二酸化ケイ素の被膜に含まれる元素(K、Si)を分析した。SEM-EDSにおける測定条件は、加速電圧:20kV、焦点距離:11.7mm、試料傾斜角度:0°とした。
図13にSEM-EDSスペクトルを示し、
図15から
図18にSEM-EDSマッピングを示す。
【0151】
LEDの照射による色度x、y
実施例及び参考例の各成形体に対して、砲弾型LEDから波長が455nmの青色光を照射し、ハンディ型LED分光放射測定器(製品:MK-350、UPRtek社製)を用いて、室温における各成形体の第2蛍光体粒子が存在する側から出射された透過光を測定し、この測定値から、CIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclarirage)1931表色系における色度図のx、y色度座標を求めた。JIS Z8726に準拠して平均演色評価数Ra測定した。演色評価数Ra測定する際の投入電流は、定格順電流とするため20mAであり、そのときの順電圧は3Vであった。
【0152】
耐熱性
実施例及び比較例及び参考例の各成形体の第2蛍光体粒子が固定された側にスポット径0.785mm2で波長450nmの青色レーザー光を照射し、レーザー照射のパワー密度を10から126W/mm2まで上昇させ、成形体に変化が生じたレーザー照射のパワー密度を測定した。成形体に変化が生じたレーザー照射のパワー密度(W/mm2)の数値が大きいほど、耐熱性に優れている。
【0153】
ダイシング脱落幅
実施例2及び実施例4の成形体を第2蛍光体粒子が固定された側を上にしてダイシングテープに貼り付け、ダイシング装置(株式会社ディスコ(DISCO)製)を用いて10×10mmサイズに切り出し、第2蛍光体粒子の脱落した部分について脱落幅を測定した。脱落幅は、ダイシングラインから第2蛍光体粒子が脱落した部分における最も大きい部分の幅とした。
【0154】
【0155】
実施例1に係る成形体は、劣化が認められるレーザー照射密度が47.1(W/mm2)であり、第2蛍光体粒子を基体に固定させていない参考例2の成形体と比べて同等以上の耐熱性を有していた。ゾルゲル法によって第2蛍光体粒子を基体に固定させた比較例1及び2の成形体は、レーザー照射密度5.1と10.2(W/mm2)で劣化が始まっており、耐熱性が低かった。ゾルゲルは完全に反応すれば無機バインダーとなるが、厚膜になったりすると有機を含む原料が残りやすい。有機残渣の影響で耐熱性が低くなっていると思われる。
【0156】
実施例2及び実施例3に係る成形体の第2蛍光体粒子が存在する側から出射された透過光の平均演色評価数Ra(CRI)は、参考例1に比べて高くなっており、第2蛍光体粒子が固定されたことによって演色性が向上された。またケイ酸カリウム水溶液は、耐水性が低いと推測されるが、保護膜を備えた実施例4の成形体は、保護膜を備えていない実施例2の成形体よりも脱落幅が小さく、脱落幅が抑えられていた。保護膜を備えた成形体は、水をかけならがら切るダイシング工程においても、第2蛍光体粒子の脱落が抑えられており、実用レベルに達していた。この結果から、保護膜を含む成形体は、ダイシングが必要な用途においても使用可能である。
【0157】
図11は、実施例1に係り、基体の断面と、基体にカリウムを含む二酸化ケイ素の被膜で固定された第2蛍光体粒子の端面を示すSEM写真である。
図12は、実施例1に係り、第2蛍光体粒子が基体の表面に固定された成形体の平面を示す外観写真である。
実施例1に係る成形体は、基体の表面に第2蛍光体粒子が固定されていた。実施例1に係る成形体は、第2蛍光体粒子がカリウムを含む二酸化ケイ素によって結合され、第2蛍光体粒子の表面が二酸化ケイ素の被膜で覆われていることが確認できた。
【0158】
図13は、実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の表面のSEM-EDSスペクトルを示す図である。
図14は、実施例1に係り、SEM-EDSスペクトルを測定し、SEM-EDSマッピングを作成した、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面を示すSEM写真である。
図15から
図18は、実施例1に係り、基体の断面と二酸化ケイ素で固定された第2蛍光体粒子の端面のSEM写真における各元素の存在箇所を示すSEM-EDSマッピング図を示し、
図15は酸素(O)の存在する箇所を示し、
図16はアルミニウム(Al)の存在箇所を示し、
図17はケイ素(Si)の存在箇所を示し、
図18はカリウム(K)の存在箇所を示す。
SEM-EDSスペクトルにおいて、実施例1に係る成形体は、酸素(O)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)及びカリウム(K)のピークが確認できる。基体表面の第2蛍光体粒子103の部分からは酸素(O)、ケイ素(Si)及びカリウム(K)のピークが確認できる。第2蛍光体粒子(SCASN)に含まれるストロンチウム(Sr)等のピークは確認されていない事からバインダーが粒子表面を完全にコーティングしており、またバインダーはケイ酸カリウム由来のカリウム(K)を含む二酸化ケイ素(SiO2)である事を示している。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の一態様に成形体は、LEDやLDの光源と組み合わせて、車載用や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源に用いる発光装置の波長変換部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0160】
2:上面配線、3:外部接続電極、3a:アノード電極、3b:カソード電極、4:ビア、8:導電性接着材、10:サブマウント基板、15:素子構造体、20:発光素子、25:保護素子、30:光透過性部材(成形体)、31、32、33:成形体、40:導光部材、50:第1被覆部材、60:第2被覆部材、80:モジュール基板、100:発光装置、101:基体、101a:第1蛍光体粒子、101b:無機材料、102a:第2蛍光体粒子、102b:第3蛍光体粒子、103:二酸化ケイ素の被膜、104:保護膜、200:発光モジュール、300:光源装置、310:光源、320:集光レンズ、330:蛍光体ホイール、332:第1の基板、334:第2の基板、340:受光レンズ、350:駆動モータ、352:駆動軸、360:フィルタ、362:フィルタ、400:プロジェクター、470:DMD素子、480:投影レンズ、490:スクリーン、
500:照明装置、510:反射鏡ユニット、510A:反射面、511:孔部、512:筐体、512A:出射口、512B:背面部、513:支持部材、514:蛍光部材、515:レーザー光源ユニット、516:レーザー光源、517:レンズ、518:放熱部材、519:カバー。