IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ ソニックス株式会社の特許一覧

特許7522405プログラム、情報処理方法及び情報処理システム
<>
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図1
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図2
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図3
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図4
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図5
  • 特許-プログラム、情報処理方法及び情報処理システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/349 20210101AFI20240718BHJP
【FI】
A61B5/349
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024031725
(22)【出願日】2024-03-01
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】514322858
【氏名又は名称】SIMPLEX QUANTUM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】藤生 克仁
(72)【発明者】
【氏名】荷見 映理子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】白土 稔
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲エイ▼
(72)【発明者】
【氏名】ヤラス エドウイン
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-066352(JP,A)
【文献】国際公開第2023/133166(WO,A2)
【文献】国際公開第2020/081472(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0196132(US,A1)
【文献】特表2022-503956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0095955(US,A1)
【文献】特表2022-516719(JP,A)
【文献】HARSH, P., et al.,Positive Correlation between P Wave Analysis and Severity of Heart Failure with Preserved and Reduced Ejection Fraction,Journal of Cardiac Failure,2019年08月,Vol.25, No.8 S,p.43, Article 105
【文献】ITO, K., et al.,Usefulness of P-wave peak time as an electrocardiographic parameter in predicting left ventricular diastolic dysfunction in patients with mitral regurgitation,Annals of noninvasive electrocardiology,2022年11月,Vol.27, No.6,e13000,<DOI: 10.1111/anec.13000>, <Epub 2022 Aug 16>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムであって、
取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとをコンピュータに実行させるように構成され、
前記取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得し、
前記算出ステップでは、前記第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスと、前記左室駆出率の期待値に応じたインデックスとを算出し、
前記参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、前記インデックスとの関係を示す情報であり、
前記出力ステップでは、算出された前記インデックスを出力し、
前記HFpEFに応じたインデックスは、前記HFpEFを発症している確率、該確率から算出される期待値、及び、該期待値を所定範囲にスケール化した情報のうち少なくとも1つである、
プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記インデックスとの関係を学習させた学習済モデルである、
プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記第2被検体は、前記HFpEFを発症しているが心不全の自覚症状が無い被検体を含む、
プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記第1心電図データは、12誘導のうち何れか1つの誘導に対応する電極から取得されたデータである、
プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記1つの誘導は、前記第1被検体の右手及び左手から取得された第I誘導である、
プログラム。
【請求項6】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記算出ステップでは、前記第1心電図データと、前記第1被検体の第1臨床データと、前記参照情報とに基づいて、前記インデックスを算出し、
前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記第2被検体の第2臨床データと、前記インデックスとの関係を示す情報である、
プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記第2臨床データと、前記インデックスとの関係を学習させた学習済モデルである、
プログラム。
【請求項8】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記算出ステップでは、前記HFpEF以外の前記表現型であるHFrEF及びHFmrEFの少なくとも一方に応じたインデックスをさらに算出する、
プログラム。
【請求項9】
情報処理方法であって、
請求項1からまでの何れか1項に記載のプログラムの各ステップを備える、
情報処理方法。
【請求項10】
情報処理システムであって、
制御部を備え、
前記制御部は、請求項1からまでの何れか1項に記載のプログラムの各ステップを実行するように構成される、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、心不全を評価するためのアッセイが開示されている。
【0003】
このアッセイについて説明する。患者における心血管疾患を検出及び/又はモニタリングするための、及び/又は、患者における心血管疾患の可能性又は重症度を評価するためのイムノアッセイ法であって、患者からの生体液試料をVI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC-末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させること、及び/又は、患者からの生体液試料をIII型コラーゲンのN-末端プロペプチドのC-末端ネオ-エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させること、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2022-535513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、心不全は、左室駆出率により3つの表現型として分類される。この分類された表現型のうちHFpEFは、左室駆出率が保たれている心不全であるため、早期検知が困難であった。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、HFpEFを早期に検知可能なプログラム、情報処理方法及び情報処理システム等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとをコンピュータに実行させるように構成される。取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得する。算出ステップでは、第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスを算出する。参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、インデックスとの関係を示す情報である。出力ステップでは、算出されたインデックスを出力する。
【0008】
このような態様によれば、HFpEFを早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システム100を表す構成図である。
図2】情報処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】端末300のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】情報処理装置200(制御部210)によって実現される機能を示すブロック図である。
図5】情報処理装置200によって実行される情報処理方法の流れを示すアクティビティ図である。
図6】端末300の表示部330に表示された内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
ところで、一実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、一実施形態に係る種々の情報処理において、入力と、入力に応じた出力とが実現されうる。ここで、入力の結果として出力が得られれば、かかる情報処理において参照される情報(以下、参照情報と称する。)の態様は、限定されない。参照情報は、例えば、データベース、ルックアップテーブル、所定の関数(統計学的手法によって構築された、回帰式等の判定式を含む。)等のルールベースの情報でもよいし、入力と出力との相関を予め学習させた学習済みモデルでもよいし、プロンプトを入力することで所望の結果を出力可能な大規模言語モデルでもよい。
【0013】
また、一実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、一実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0014】
さらに、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0015】
1.ハードウェア構成
第1節では、本実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0016】
1-1.情報処理システム100
図1は、情報処理システム100を表す構成図である。情報処理システム100は、情報処理装置200と、端末300と、心電計400とを備え、これらがネットワークを通じて接続されている。これらの構成要素についてさらに説明する。ここで、情報処理システム100に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。したがって、例えば、情報処理装置200単体であっても情報処理システム100に例示されるシステムになりうる。
【0017】
1-2.情報処理装置200
図2は、情報処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置200は、制御部210と、記憶部220と、通信部250とを有し、これらの構成要素が情報処理装置200の内部において通信バス260を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0018】
制御部210は、情報処理装置200に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部210は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部210は、記憶部220に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置200に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部220に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部210によって具体的に実現されることで、制御部210に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、第2節においてさらに説明する。なお、制御部210は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部210を有するように実施してもよい。またそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
記憶部220は、情報処理装置200の情報処理に必要な様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部210によって実行される情報処理装置200に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0020】
通信部250は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、5G/LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置200は、通信部250を介して、端末300とネットワークを介して種々の情報を通信する。
【0021】
1-3.端末300
図3は、端末300のハードウェア構成を示すブロック図である。端末300は、制御部310と、記憶部320と、表示部330と、入力部340と、通信部350とを有し、これらの構成要素が端末300の内部において通信バス360を介して電気的に接続されている。制御部310、記憶部320及び通信部350の説明は、情報処理装置200における制御部210、記憶部220及び通信部250の説明と略同様のため省略する。なお、端末300は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。
【0022】
表示部330は、端末300の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部330は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、端末300の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。以下では、表示部330は、端末300の筐体に含まれるものとして説明する。
【0023】
入力部340は、端末300の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部340は、表示部330と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部340は、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力は、命令信号として、通信バス360を介して制御部310に転送される。そして、制御部310は、必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。
【0024】
1.4 心電計400
心電計400は、心臓の拍動に伴う心筋細胞の活動電位の時間的変動に係るデータを心電図データとして取得するように構成される。心電計400は、例えば、12誘導心電計、心電計機能付きのウェアラブル端末等であってもよく、用途によって、ベクトル心電計、長時間記録心電計、体表面電位計、自動心電計等が適宜選択されればよい。
【0025】
心電計400は、情報処理装置200における通信部250とネットワークを介して接続され、取得した心電図データを情報処理装置200に転送可能に構成される。なお、心電計400は、通信部を有していなくてもよい。この場合、取得された心電図データは、メモリーカード等の記録媒体に記録され、当該記録媒体から端末300に転送され、端末300から情報処理装置200に転送されてもよい。
【0026】
2.機能構成
第2節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部220に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部210によって具体的に実現されることで、制御部210に含まれる各機能部として実行されうる。
【0027】
図4は、情報処理装置200(制御部210)によって実現される機能を示すブロック図である。上記のように、情報処理装置200(情報処理システム)は、制御部210を備える。具体的には、情報処理装置200(制御部210)は、本実施形態のプログラムの各ステップを実行するように構成される。情報処理装置200(制御部210)は、本実施形態のプログラムの各ステップに対応して、取得部211と、算出部212と、出力部213とを備える。ここで、本実施形態のプログラムは、取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとを情報処理装置200等のコンピュータに実行させるように構成される。
【0028】
取得部211は、種々の情報を取得するように構成される。取得部211は、取得ステップを実行するように構成される。例えば、取得部211は、第1被検体の第1心電図データを心電計400から取得する。
【0029】
算出部212は、種々の情報を算出するように構成される。算出部212は、算出ステップを実行するように構成される。例えば、算出部212は、取得された第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックス(以下「HFpEFのインデックス」ともいう。)を算出する。当該参照情報は、第1被検体とは異なる第2被検体の第2心電図データと、当該インデックスとの関係を示す情報である。
【0030】
ここで、左室駆出率による心不全の表現型は、HFpEF、HFrEF、HFmrEFの3つに分類される。HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は、左室駆出率の保たれた心不全として定義され、左室駆出率が50%以上と定義される。HFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)は、左室駆出率の低下した心不全として定義され、左室駆出率が40%未満と定義される。HFmrEF(heart failure with mid-range ejection fraction)は、左室駆出率が軽度低下した心不全として定義され、左室駆出率が40%以上50%未満と定義される。
【0031】
出力部213は、種々の情報を出力するように構成される。出力部213は、出力ステップを実行するように構成される。例えば、出力部213は、算出されたインデックスを端末300に出力する。
【0032】
3.情報処理方法
第3節では、前述した情報処理装置200により実行される情報処理方法の流れについて説明する。この情報処理方法は、本実施形態のプログラムの各ステップを備える。この情報処理方法は、取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとを備える。取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得する。算出ステップでは、取得された第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスを算出する。参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、当該インデックスとの関係を示す情報である。出力ステップでは、算出されたインデックスを出力する。
【0033】
図5は、情報処理装置200によって実行される情報処理方法の流れを示すアクティビティ図である。以下、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、説明するものとする。
【0034】
心電計400は、任意の被検体である第1被検体の第1心電図データを取得する(アクティビティA110)。
【0035】
第1心電図データは、1~50拍から構成されてもよい。具体的には、第1心電図データは、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50拍から構成され、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。好ましくは、第1心電図データは、1~2拍から構成される。このように、情報処理装置200は、少ないデータ量であっても、HFpEFのインデックスを算出して出力することができる。したがって、第1心電図データの取得に要する時間を短縮することができる。
【0036】
第1心電図データは、5~300秒間における波形から構成されてもよい。具体的には例えば、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150,155,160,165,170,175,180,185,190,195,200,205,210,215,220,225,230,235,240,245,250,255,260,265,270,275,280,285,290,295,300秒間における波形から構成され、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。好ましくは、第1心電図データは、5~10秒間における波形から構成される。このように、情報処理装置200は、少ないデータ量であっても、HFpEFのインデックスを算出して出力することができる。したがって、第1心電図データの取得に要する時間を短縮することができる。
【0037】
第1心電図データは、12誘導のうち何れか1つの誘導に対応する電極から取得されたデータであってもよい。好ましくは、当該1つの誘導は、第1被検体の右手及び左手から取得された第I誘導である。このような態様によれば、容易に取得可能な第I誘導を用いることができる。したがって、第1心電図データの取得に伴う第1被検体の負担の増大を抑制することができる。
【0038】
続いて、心電計400は、取得した第1心電図データを、ネットワークを介して情報処理装置200に送信する(アクティビティA120)。
【0039】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、心電計400から送信された第1心電図データを受信する(アクティビティA130)。ステップに換言すると、取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得する。アクティビティA130では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部250は、心電計400から送信された第1心電図データを受信する。(2)制御部210は、受信された第1心電図データを記憶部220に記憶させる。
【0040】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、第1心電図データを前処理する(アクティビティA140)。ここで、前処理は、例えば、トレンド除去、運動アーチファクト除去、ノイズ除去、心拍ごとの波形データ切り出し、正規化等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて実行される。好ましくは、前処理は、トレンド除去、運動アーチファクト除去、ノイズ除去、心拍ごとの波形データ切り出し、正規化の順番に実行される。アクティビティA140では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、第1心電図データ及び所定のパラメータを記憶部220から読み出す。(2)制御部210は、第1心電図データの生データに所定のパラメータを適用し、第1心電図データを前処理する。(3)制御部210は、前処理後の第1心電図データを記憶部220に記憶させる。アクティビティA140によれば、第1心電図データに含まれるノイズを除去することで、HFpEFのインデックスの精度を向上させることができる。
【0041】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、第1被検体の第1臨床データを読み出す(アクティビティA150)。ここで、第1臨床データは、年齢、性別、BMI(Body Mass Index:ボディマス指数)、PWTT(Pulse Wave Transit Time:脈波伝播時間)、血圧、心拍数、SDNN(Standard Deviation Of The NN Interval:正常心拍間隔の標準偏差)、CVRR(Coefficient Of Variation Of RR Interval:RR間隔変動係数)、心房細動及びHRV(Heart Rate Variability:心拍変動)のうちの少なくとも1つを含むデータであればよい。後述する第2臨床データも同様である。アクティビティA150では、例えば、次の情報処理が実行される。制御部210は、当該第1臨床データを記憶部220から読み出す。アクティビティA150によれば、第1心電図データに加えて第1臨床データを用いることにより、HFpEFのインデックスの精度を向上させることができる。
【0042】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、第1被検体の第1心電図データと、第1被検体の第1臨床データと、参照情報とに基づいて、HFpEFのインデックスを算出する(アクティビティA160)。ステップに換言すると、算出ステップでは、第1心電図データと、第1被検体の第1臨床データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスを算出する。HFpEFのインデックスは、HFpEFを発症している確率、当該確率から算出される期待値、当該期待値を所定範囲にスケール化した情報など、HFpEFの検知に有用な情報として提示されるものであればよい。アクティビティA160では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、前処理された第1心電図データと、参照情報とを記憶部220からさらに読み出す。(2)制御部210は、前処理された第1心電図データと、第1臨床データとを参照情報に入力し、HFpEFのインデックスを算出する。(3)制御部210は、算出されたHFpEFのインデックスを記憶部220に記憶させる。
【0043】
ここで、参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、第2被検体の第2臨床データと、HFpEFのインデックスとの関係を示す情報である。好ましくは、参照情報は、当該第2心電図データと、当該第2臨床データと、HFpEFのインデックスとの関係を学習させた学習済モデルである。このような学習済モデルを用いることにより、HFpEFの検知の精度をさらに向上させることができる。
【0044】
ここで、第2被検体は、HFpEFを発症しているが心不全の自覚症状が無い被検体を含む。すなわち、本実施形態の学習済モデルは、HFpEFの発症により心不全の自覚症状がある被検体(NYHA分類「II度」から「IV度」の被検体)の心電図データだけではなく、過去にHFpEFを発症して心不全の自覚症状があったが現在は心不全の自覚症状が無い被検体(現在はNYHA分類「I度」の被検体)の心電図データも学習している。つまり、本実施形態の学習済モデルは、HFpEFに関する多様な心電図データを学習している。したがって、超音波検査を施行しても診断が難しい初期のHFpEFであっても、HFpEFのインデックスが出力されるため、HFpEFのスクリーニングの際に有用な情報として提示することができる。このような態様によれば、NYHA分類「I度」の患者、又は初回のHFpEFを発症し始めた患者のように自覚症状が無い患者であっても、HFpEFをより正確に検知することができる。
【0045】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、端末300で視認可能な情報として、HFpEFのインデックスに係る視覚情報(以下単に「視覚情報」ともいう。)を生成する(アクティビティA170)。アクティビティA170では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、HFpEFのインデックスを記憶部220から読み出す。(2)制御部210は、生成処理を実行し、当該視覚情報を生成する。(3)制御部210は、当該視覚情報を記憶部220に記憶させる。
【0046】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、HFpEFのインデックスに係る視覚情報を端末300に送信する(アクティビティA180)。ステップに換言すると、出力ステップでは、算出されたインデックスを出力する。アクティビティA180では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、当該視覚情報を記憶部220から読み出す。(2)制御部210は、通信部250を介して、当該視覚情報を端末300に送信する。
【0047】
続いて、端末300における制御部310は、情報処理装置200から送信された視覚情報を受信する(アクティビティA190)。アクティビティA190では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部350は、情報処理装置200から送信された視覚情報を受信する。(2)制御部310は、受信された視覚情報を記憶部320に記憶させる。
【0048】
続いて、端末300における制御部310は、表示部330にHFpEFのインデックスを表示させる(アクティビティA200)。アクティビティA200では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部310は、受信された視覚情報を記憶部320から読み出す。(2)制御部310は、通信バス360を介して、視覚情報を表示部330に入力する。(3)表示部330は、HFpEFのインデックスを表示する。
【0049】
4.表示例
第4節では、HFpEFのインデックスの表示例について説明する。
【0050】
図6は、端末300の表示部330に表示された内容を示す図である。表示部330は、HFpEFのインデックスに加えて、HFrEFのインデックスを表示し、さらに、HFEFのインデックスを表示している。ここで、HFEFのインデックスは、心不全の各表現型をまとめた概念として、左室駆出率の期待値に応じたインデックスを示す。図6では、HFEFのインデックスは、HFpEF及びHFrEFのそれぞれの確率を用いて算出されており、さらにHFmrEFの確率を用いて算出されてもよい。すなわち、図6では、アクティビティA160において、算出ステップでは、HFpEF以外の表現型であるHFrEF及びHFmrEFの少なくとも一方に応じたインデックス、及び、左室駆出率の期待値に応じたインデックスをさらに算出している。
【0051】
表示部330に表示された各インデックスは、0から100までの範囲に設定されている。HFpEFのインデックスは、0に近いほどHFpEFのリスクが低く、100に近いほどHFpEFのリスクが高いことを示している。HFrEFのインデックスは、同様に、0に近いほどHFrEFのリスクが低く、100に近いほどHFrEFのリスクが高いことを示している。HFEFのインデックスは、心不全時の左室駆出率の度合いを推定するものであり、0に近いほど心不全時の左室駆出率が高く、100に近いほど心不全の左室駆出率が低いことを示している。すなわち、HFEFのインデックスは、第1被検体が心不全を発症している患者である場合に算出・表示されるインデックスである。
【0052】
図6では、HFEFのインデックスが「50」であるため、心不全の左室駆出率の度合いが中程度であることを示している。また、HFpEFのインデックスが「55」に対し、HFrEFのインデックスが「20」であり、HFpEFのインデックスの方が高いため、HFrEFを発症している傾向よりもHFpEFを発症している傾向の方が強いことが分かる。そこで、図6の表示部330では、心電図データの測定結果として、「HFpEFの傾向があるようです。」と表示された。このような態様によれば、心不全の各表現型のリスクを提示することができる。
【0053】
このような態様によれば、特に診断が難しいHFpEFを早期に検知することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
5.変形例
第5節では、本実施形態の変形例について説明する。
【0056】
本実施形態の態様は、記録媒体であってもよい。この記録媒体は、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体である。この記録媒体は、本実施形態のプログラムを記録している。
【0057】
制御部210は、各種データ及び各種情報について記憶部220に書き出し処理(記憶処理)及び読み出し処理をしているが、これに限られず、例えば、制御部210内のレジスタやキャッシュメモリ等を使用して、各アクティビティの情報処理を実行してもよい。
【0058】
出力部213による出力は、インデックスに係る視覚情報を端末300に送信処理することに限られることはなく、例えば、情報処理装置200の表示デバイスに表示することとしてもよい。
【0059】
インデックスの範囲は、0から100の範囲に限られず、例えば、0から1の範囲であってもよいし、0から10の範囲であってもよく、適宜設定されればよい。また、各インデックスは、重み付けの程度を適宜設定可能であり、値を逆にしてもよい。例えば、HFEFのインデックスでは、0に近いほど心不全時の左室駆出率が低く、100に近いほど心不全時の左室駆出率が高いことを示してもよい。
【0060】
参照情報は、学習済モデルに限られることはなく、ルックアップテーブル等を格納するデータベース、ある変数に依存して決まる値の対応を表す関数、複数の情報を数学的に関係づけた数理モデル等であってもよい。
【0061】
心電計400は、端末300を経由して情報処理装置200と通信可能に構成されてもよい。この場合、心電計400は、端末300における通信部350とネットワークを介して接続されてもよいし、端末300と直接接続する態様であってもよい。
【0062】
出力部213は、HFpEFのインデックスに加えて、他の項目をさらに出力するように構成されてもよい。例えば、出力部213は、第1被検体の採血結果をさらに出力してもよい。
【0063】
参照情報は、第2被検体の臨床データとは関係なく、第2被検体の第2心電図データと、HFpEFのインデックスとの関係を示す情報であってもよい。この場合、参照情報は、当該第2心電波形と、当該インデックスとの関係を学習させた学習済みモデルであってもよい。
【0064】
出力部213は、心不全の表現型のインデックスとして、HFpEFのインデックスのみが表示されてもよい。すなわち、アクティビティA160に示すように、HFpEFのインデックスのみが算出されてもよい。このような態様によれば、HFpEFかどうかを確認したい場合における視認性を向上させることができる。
【0065】
第1心電図データは、第I誘導を用いるものに限られず、他の誘導を用いるものであってもよい。また、第1心電図データは、複数の誘導を用いるものであってもよい。使用する誘導が多いほど、インデックスの精度が向上しうる。このような態様によれば、手軽に心電図データを取得可能であるとともに、目的に応じて使用する誘導の数を調整することができる。
【0066】
6.その他
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0067】
(1)プログラムであって、取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとをコンピュータに実行させるように構成され、前記取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得し、前記算出ステップでは、前記第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスを算出し、前記参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、前記インデックスとの関係を示す情報であり、前記出力ステップでは、算出された前記インデックスを出力する、プログラム。
【0068】
このような態様によれば、HFpEFを早期に検知することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0069】
(2)上記(1)に記載のプログラムにおいて、前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記インデックスとの関係を学習させた学習済モデルである、プログラム。
【0070】
このような態様によれば、HFpEFの検知の精度を向上させることができる。
【0071】
(3)上記(1)又は(2)に記載のプログラムにおいて、前記第2被検体は、前記HFpEFを発症しているが心不全の自覚症状が無い被検体を含む、プログラム。
【0072】
このような態様によれば、NYHA分類「I度」の患者、又は初回のHFpEFを発症し始めた患者のように自覚症状がない患者であっても、HFpEFをより正確に検知することができる。
【0073】
(4)上記(1)から(3)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記第1心電図データは、12誘導のうち何れか1つの誘導に対応する電極から取得されたデータである、プログラム。
【0074】
このような態様によれば、手軽に心電図データを取得することができる。
【0075】
(5)上記(4)に記載のプログラムにおいて、前記1つの誘導は、前記第1被検体の右手及び左手から取得された第I誘導である、プログラム。
【0076】
このような態様によれば、容易に取得可能な第I誘導を用いることができる。
【0077】
(6)上記(1)から(5)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記算出ステップでは、前記第1心電図データと、前記第1被検体の第1臨床データと、前記参照情報とに基づいて、前記インデックスを算出し、前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記第2被検体の第2臨床データと、前記インデックスとの関係を示す情報である、プログラム。
【0078】
このような態様によれば、HFpEFの検知の精度をより向上させることができる。
【0079】
(7)上記(6)に記載のプログラムにおいて、前記参照情報は、前記第2心電図データと、前記第2臨床データと、前記インデックスとの関係を学習させた学習済モデルである、プログラム。
【0080】
このような態様によれば、HFpEFの検知の精度をさらに向上させることができる。
【0081】
(8)上記(1)から(7)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記算出ステップでは、前記HFpEF以外の前記表現型であるHFrEF及びHFmrEFの少なくとも一方に応じたインデックスをさらに算出する、プログラム。
【0082】
このような態様によれば、心不全の各表現型のリスクを提示することができる。
【0083】
(9)上記(1)から(8)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記算出ステップでは、前記左室駆出率の期待値に応じたインデックスをさらに算出する、プログラム。
【0084】
このような態様によれば、心不全のリスクの一覧性を向上させることができる。
【0085】
(10)情報処理方法であって、上記(1)から(9)までの何れか1つに記載のプログラムの各ステップを備える、情報処理方法。
【0086】
このような態様によれば、HFpEFを早期に検知することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0087】
(11)情報処理システムであって、制御部を備え、前記制御部は、上記(1)から(9)までの何れか1つに記載のプログラムの各ステップを実行するように構成される、情報処理システム。
【0088】
このような態様によれば、HFpEFを早期に検知することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0089】
100 :情報処理システム
200 :情報処理装置
210 :制御部
211 :取得部
212 :算出部
213 :出力部
220 :記憶部
250 :通信部
260 :通信バス
300 :端末
310 :制御部
320 :記憶部
330 :表示部
340 :入力部
350 :通信部
360 :通信バス
400 :心電計
【要約】
【課題】HFpEFを早期に検知可能なプログラム、情報処理方法及び情報処理システム等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、取得ステップと、算出ステップと、出力ステップとをコンピュータに実行させるように構成される。取得ステップでは、第1被検体の第1心電図データを取得する。算出ステップでは、第1心電図データと、参照情報とに基づいて、左室駆出率により分類される心不全の表現型の1つであるHFpEFに応じたインデックスを算出する。参照情報は、第2被検体の第2心電図データと、インデックスとの関係を示す情報である。出力ステップでは、算出されたインデックスを出力する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6