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特許7522409CNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼの電極への利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】CNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼの電極への利用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20240718BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20240718BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N27/327 353J
G01N27/30 B
G01N27/416 338
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020117072
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014636
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 尚▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
(72)【発明者】
【氏名】平塚 淳典
(72)【発明者】
【氏名】田中 丈士
(72)【発明者】
【氏名】六車 仁志
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157506(WO,A1)
【文献】特開2006-292495(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129273(WO,A1)
【文献】特開2020-085759(JP,A)
【文献】特開2001-174432(JP,A)
【文献】特開平09-304329(JP,A)
【文献】特開2019-039921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上にカーボンナノチューブ及びフルクトースデヒドロゲナーゼを含む層を有し、前記カーボンナノチューブは、平均直径が2nm未満の単層カーボンナノチューブである、電極(但し、金属基板の表面に多孔質酸化物及びカーボンナノチューブを含み、カーボンナノチューブが前記多孔質酸化物から生成している場合を除く)
【請求項2】
該層が分散剤を更に含む、請求項に記載の電極。
【請求項3】
該分散剤がコール酸ナトリウムである、請求項に記載の電極。
【請求項4】
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを更に含む、請求項1~のいずれかに記載の電極。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の電極を備えたセンサ。
【請求項6】
フルクトース測定用である、請求項に記載のセンサ。
【請求項7】
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを含み、スクロース測定用である、請求項に記載のセンサ。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の電極または請求項のいずれかに記載のセンサを用いてフルクトースを検出する方法。
【請求項9】
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを含む、請求項のいずれかに記載のセンサを用いてスクロースを測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
CNTを電極に応用する技術分野について開示される。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンは電気の伝導率が高いことから他の物質との電子伝達を行う導電材料としての応用が進んでいる。例えばナノカーボンをカーボンと樹脂および有機溶剤からなるインクに混合し基板上に印刷してバイオセンサ用の電極として用いることが提案されている(特許文献1)。また、ナノカーボンの一種であるカーボンナノチューブは過酸化物を測定するセンサに用いられたり(特許文献2)、酵素とともにフィルム状に成形し、センサや燃料電池の電極として用いられたりしている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2005088288
【文献】WO2011007582
【文献】WO2012002290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノカーボンを電極に利用する技術をフルクトースデヒドロゲナーゼを用いた電極に応用した電極を提供することが1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
斯かる課題を解決する手段として、下記を包含する発明が提供される。
項1.
金属基板上にカーボンナノチューブ及びフルクトースデヒドロゲナーゼを含む層を有する、電極。
項2.
該カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、項1に記載の電極。
項3.
該カーボンナノチューブの平均直径が2nm未満である、項1又は2に記載の電極。
項4.
該層が分散剤を更に含む、項1~3のいずれかに記載の電極。
項5.
該分散剤がコール酸ナトリウムである、項4に記載の電極。
項6.
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを更に含む、項1~5のいずれかに記載の電極。
項7.
項1~6のいずれかに記載の電極を備えたセンサ。
項8.
フルクトース測定用である、項7に記載のセンサ。
項9.
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを含み、スクロース測定用である、項7に記載のセンサ。
項10.
項1~6のいずれかに記載の電極または項7~9のいずれかに記載のセンサを用いてフルクトースを検出する方法。
項11.
該層がβ-D-フルクトフラノシダーゼを含む、項7~9のいずれかに記載のセンサを用いてスクロースを測定する方法。
【発明の効果】
【0006】
フルクトースデヒドロゲナーゼを用いた糖の検出を感度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例で作製した電極の構造を示す。「1」はPETフィルムであり、「2」は粘着シートであり、「3」は金蒸着PETフィルムであり、「4」は作用電極部位である。
図2】直径0.8nmのカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定した場合のサイクリックボルタモグラムを示す。
図3】直径1.0nmのカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図4】直径1.5nmのカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定した場合のサイクリックボルタモグラムを示す。
図5】直径2.0nmのカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定した場合のサイクリックボルタモグラムを示す。
図6】直径9.5nmのカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定した場合のサイクリックボルタモグラムを示す。
図7】カーボンナノチューブを用いないでフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定した場合のサイクリックボルタモグラムを示す。
図8】0.25w/v%のコール酸ナトリウムで分散したカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図9】0.5w/v%のコール酸ナトリウムで分散したカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図10】1w/v%のコール酸ナトリウムで分散したカーボンナノチューブとフルクトースデヒドロゲナーゼを積層した電極を用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図11】酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼのみを用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図12】酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼとβ-D-フルクトフラノシダーゼを用いてフルクトースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図13】酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼのみを用いてスクロースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図14】酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼとβ-D-フルクトフラノシダーゼを用いてスクロースを測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
電極は、金属基板上にカーボンナノチューブ(「CNT」とも称する。)及び/又はフルクトースデヒドロゲナーゼを含む層を有することが好ましい。CNTとフルクトースデヒドロゲナーゼとは、単一の層に存在しても別々の層に存在してもよい。一実施形態において、CNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼは、2つの層に明確に分離できない層(実質的に単一の層)に存在することが好ましい。
【0009】
CNTの種類は特に制限されず、例えば、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTであってもよい。一実施形態において、CNTは、良好な検出感度を実現するため、単層CNTであることが好ましい。一実施形態において、CNTの直径は、2nm未満であることが好ましく、1.5nm以下が好ましく、1.4nm以下が好ましく、1.3nm以下が好ましく、1.2nm以下が好ましい。一実施形態において、CNTの直径は、0.1nm以上、0.5nm以上、0.6nm以上、0.7nm以上、又は0.8nm以上が好ましい。一実施形態において、CNTの長さは0.1~1000μmであることが好ましい。CNTは市販されているものを購入して使用してもよく、合成して使用してもよい。CNTの製造方法は公知である。カーボンナノチューブの直径は、ラマン分光法、光吸収スペクトル、近赤外蛍光分光法、透過電子顕微鏡(TEM)又は原子間力顕微鏡(AFM)によって測定することができる。
【0010】
フルクトースデヒドロゲナーゼは、フルクトースの脱水素反応を触媒する活性を有し、その反応に伴って、電子をCNTを介して電極に受け渡すことができる酵素であれば、その種類は制限されない。フルクトースデヒドロゲナーゼがフルクトースを酸化する際に生じる電子の量を測定することにより、試料中のフルクトースの量を測定することができる。よって、該層が積層された金属基板または電極を備えたセンサを用いて試料中のフルクトースを検出し、その量を測定することができる。
【0011】
一実施形態において、フルクトースデヒドロゲナーゼは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸以外の補酵素を持つものであることが好ましい。フルクトースデヒドロゲナーゼの由来については特定されないが、一実施形態においてグルコノバクター由来または酢酸菌由来のものが好ましい。
【0012】
該層に含有させる酵素の量は任意であり、目的に応じて設定できるが、例えば、0.1~100U/mmとすることができる。ここで1Uは1分間に1マイクロモルのフルクトースが酸化される酵素量である。
【0013】
金属基板は、電極として用いることができるものであれば特に制限されない。金属電極は、絶縁性基板に金属膜が固定されたものであることが好ましい。金属膜は、例えば、白金、金、パラジウムなどの貴金属、カーボン、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)、又はZnO(酸化亜鉛)などで形成することができる。一実施形態において、金属膜は、白金、金、パラジウムなどの貴金属で形成されていることが好ましい。絶縁性の基板としては、例えば、プラスチック(例えば、PET)、感光性材料、紙、ガラス、セラミック、または、生分解性材料などで形成されたものが挙げられる。このような金属電極は公知である。
【0014】
金属基板上のCNT及び/又はフルクトースデヒドロゲナーゼを含む層は、CNTが該層内で分散した状態で存在するように、分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、CNTの凝集(bundling)を防止することができる化合物であれば特に限定されない。分散剤としては、例えば、アニオン系化合物、カチオン系化合物およびノニオン系化合物から選択される少なくとも1種の化合物を用いることができる。
【0015】
アニオン系化合物としては、例えば、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、またはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。カチオン系化合物としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。ノニオン系化合物としては、オクチルフェノールエトキシレート(ダウケミカル社製のTriton-X-100、Triton-X-114、Triton-X-305、Triton-X-405など)、または、ポリソルベート類(ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、ポリソルベート60(Tween60)、ポリソルベート80(Tween80)など)が挙げられる。一実施形態において好ましい分散剤は、コール酸ナトリウムである。
【0016】
一実施形態において、分散剤(例えば、コール酸ナトリウム)は、0.25w/v%~0.75w/v%の濃度で液体に溶解して使用することが好ましい。
【0017】
金属基板上にCNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼを含む層を形成することは、例えば、適当な液体にCNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼ(並びに、必要に応じて分散剤等)を添加し、これらが分散した液体を基板上に滴下し、乾燥させることで実施することができる。CNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼを分散させる液体は特に制限されないが、水またはpH2~pH10の緩衝液であることが望ましく、例えば超純水、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、グッド緩衝液、及びトリス緩衝液等が挙げられる。一実施形態において、CNTを適当な液体(好ましくは、分散剤を含む)に添加し、音波破砕機等を用いて分散させ、それを金属基板上に滴下し、乾燥させた後、フルクトースデヒドロゲナーゼを含有する液体をその上に滴下し、乾燥させて、CNT及びフルクトースデヒドロゲナーゼを含む該層を形成することが好ましい。
【0018】
該層には、フルクトースデヒドロゲナーゼの活性やフルクトースデヒドロゲナーゼとCNT及びCNTと金属基板の間の電子の授受を阻害しない限り、任意の他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、フルクトースデヒドロゲナーゼ以外の酵素、pH緩衝剤(例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びグッド緩衝液等)、糖(ショ糖、乳糖等)、塩(リン酸塩、硫酸アンモニウム等)、アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン等))等を挙げることができる。これら酵素以外の物質は、酵素の安定化剤として機能する場合がある。
【0019】
一実施形態において、該層は、フルクトースデヒドロゲナーゼに加えて、β-D-フルクトフラノシダーゼを含むことが好ましい。β-D-フルクトフラノシダーゼは、サッカラーゼ、インベルターゼ、インバーターゼ、又はインベルチンとも称され、スクロースを加水分解し、フルクトースを遊離する活性を有する。よって、β-D-フルクトフラノシダーゼでスクロースを加水分解し、遊離したフルクトースをフルクトースデヒドロゲナーゼが更に脱水素することによって生じた電子の量を測定することにより、試料中に存在するスクロースの量を測定することが可能である。このようにして、フルクトースデヒドロゲナーゼとβ-D-フルクトフラノシダーゼを含む層が積層された金属基板または電極を備えたセンサをスクロース測定用のセンサとして用いることができる。
【0020】
一実施形態において、金属基板の表面には、上記層を形成し易くするために、親水性高分子膜が形成されていてもよい。親水性高分子膜としては、例えば、アセトニトリルプラズマ重合膜、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロールなどの親水性高分子、または、ポリビニルピロリドンなどの両親媒性高分子からなる膜などが挙げられる。
【0021】
センサは上記の金属基板または電極を備えることが好ましい。上記電極は、通常、センサ中の作用電極となる。センサは、更に、カウンター電極及び参照電極を備えることが好ましい。このようなセンサの構成は、当該技術分野において公知である。また、センサは、ポテンションスタット及び電流検出回路等のバイオセンサが通常備える構成を備えることができる。
【0022】
上述の電極またはそれを備えたセンサを用いてフルクトースを精度良く検出することができる。フルクトースは任意の物質に由来し得、例えば、他の糖類(例えば、スクロース)に由来し得る。センサは、通常測定器に装着されて使用される。測定器に装着されたセンサに試料(血液など)を供給すると、試料中の測定対象物質(フルクトース)とフルクトースデヒドロゲナーゼが反応し、活性中心近傍に存在するCNTへ、トンネル効果によって電子が伝達され、電流が生じる。センサの作用極および対極と電気的に接続された測定器により、この電流を計測することで、試料に含まれる測定対象物質の定量が可能である。作用極と対極の間に電圧を印加した際に流れる電流は、分析対象物濃度と相関がある。電流値と予め作成した検量線から分析対象物の濃度を決定することができる。
【実施例
【0023】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0024】
実施例1
以下の(1)~(5)のカーボンナノチューブのそれぞれの粉末30mgを別個の0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液に懸濁し30mLの懸濁液を5種類調製した。
(1)単層カーボンナノチューブ、直径:0.8nm(中央値),0.7-0.9nm(測定法:近赤外蛍光分光法)(SG65i:Sigma-Aldrich)
(2)単層カーボンナノチューブ、直径:1.0nm(中央値),0.5-1.5nm(測定法:ラマン分光法(RBM))(MEIJO eDIPS EC1.0:(株)名城ナノカーボン)
(3)単層カーボンナノチューブ、直径:1.5nm(中央値),1.2-1.7nm(測定法:ラマン分光法(RBM))(MEIJO eDIPS EC1.5:(株)名城ナノカーボン)
(4)単層カーボンナノチューブ、直径:2.0nm(中央値),1.5-2.5nm(測定法:ラマン分光法(RBM))(MEIJO eDIPS EC2.0:(株)名城ナノカーボン)
(5)多層カーボンナノチューブ、直径:9.5nm(中央値),5-15nm(測定法:TEM)(NC7000:Nanocyl)
【0025】
これらのカーボンナノチューブ懸濁液を18℃でチップ型超音波破砕機(Branson Sonifier 450D:日本エマソン株式会社)を用いて出力30%、1時間処理することによりカーボンナノチューブを分散させた。これらの超音波処理液を210,000g、2時間の超遠心にかけ上清の80%を回収した。これらの回収液をアミコンウルトラ遠心式フィルターユニット 100k(Merck)を用いて濃縮し、0.75~1.5mg/mLのカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0026】
PETシートに金を蒸着させ、9mmの作用電極部位を持つ電極チップを作製した(図1)。上記(1)~(5)のカーボンナノチューブの分散液又は0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液のいずれかを5μL作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)に溶解したフルクトースデヒドロゲナーゼ(東洋紡(株)製、2U/μL、グルコノバクター由来)5μLを作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、作用電極部位に2%ナフィオン液を5μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ及びフルクトースデヒドロゲナーゼを作用電極に固定化した。
【0027】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B:ビー・エー・エス社)の作用極に上記で作製した電極チップ、参照電極に銀/塩化銀電極、対極に白金線をセットした。この3電極をフルクトースを含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を実施した。0mM、10mM、20mM、又は48mMのフルクトース濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムを図2(直径0.8nmのカーボンナノチューブ)、図3(直径:1.0nmのカーボンナノチューブ)、図4(直径:1.5nmのカーボンナノチューブ)、図5(直径2.0nmのカーボンナノチューブ)、図6(直径9.5nmのカーボンナノチューブ)、図7(コール酸ナトリウム水溶液;カーボンナノチューブなし)に示す。これらのサイクリックボルタモグラムにおいて-0.8Vから+0.8Vへ掃引する際の+0.6Vの電流値は以下の通りであった。
【0028】
【表1】
【0029】
以上の結果より、フルクトースの測定には、単層カーボンナノチューブが好ましく、カーボンナノチューブの直径が2.0nm未満の場合により精度良くフルクトースの測定が可能であることが確認された。
【0030】
実施例2
直径1.0nm(中央値)の単層カーボンナノチューブ(MEIJO eDIPS EC1.0:(株)名城ナノカーボン)の粉末30mgを0.25w/v%、0.5w/v%、又は1w/v%のコール酸ナトリウム水溶液に懸濁し30mLの懸濁液を3種類調製した。
【0031】
これらのカーボンナノチューブ懸濁液を18℃でチップ型超音波破砕機(Branson Sonifier 450D:日本エマソン株式会社)を用いて出力30%、1時間処理することによりカーボンナノチューブを分散させた。これらの超音波処理液を210,000g、2時間の超遠心にかけ上清の80%を回収した。これらの回収液をアミコンウルトラ遠心式フィルターユニット 100k(Merck)を用いて濃縮し、0.75~1.5mg/mLのカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0032】
実施例1と同様に、PETシートに金を蒸着させ、9mmの作用電極部位を持つ電極チップを作製した。上記3種類のいずれかのカーボンナノチューブの分散液を5μL作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)に溶解したフルクトースデヒドロゲナーゼ(2U/μL)5μLを作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、作用電極部位に2%ナフィオン液を5μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ及びフルクトースデヒドロゲナーゼを作用電極に固定化した。
【0033】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B:ビー・エー・エス社)の作用極に上記で作製した電極チップ、参照電極に銀/塩化銀電極、対極に白金線をセットした。この3電極をフルクトースを含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を実施した。0mM、10mM、20mM、又は48mMのフルクトース濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムは図8(0.25w/v%コール酸ナトリウム)、図9(0.5w/v%コール酸ナトリウム)、図10(1w/v%コール酸ナトリウム)に示すものとなった。このサイクリックボルタモグラムにおいて-0.8Vから+0.8Vへ掃引する際の+0.6Vの電流値は以下の通りであった。
【0034】
【表2】
【0035】
実施例3
直径1.0nm(中央値)の単層カーボンナノチューブ(MEIJO eDIPS EC1.0:(株)名城ナノカーボン)の粉末30mgを0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液に懸濁し30mLの懸濁液を調製した。
【0036】
このカーボンナノチューブ懸濁液を18℃でチップ型超音波破砕機(Branson Sonifier 450D:日本エマソン株式会社)を用いて出力30%、1時間処理することによりカーボンナノチューブを分散させた。これらの超音波処理液を210,000g、2時間の超遠心にかけ上清の80%を回収した。これらの回収液をアミコンウルトラ遠心式フィルターユニット 100k(Merck)を用いて濃縮し、0.75~1.5mg/mLのカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0037】
実施例1と同様に、PETシートに金を蒸着させ、9mmの作用電極部位を持つ電極チップを作製した。上記のカーボンナノチューブの分散液を5μL作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、以下の(1)または(2)のいずれかの酵素液5μLを作用電極部位に滴下し乾燥させた。
(1)50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)にフルクトースデヒドロゲナーゼ(2U/μL)を溶解
(2)50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)にフルクトースデヒドロゲナーゼ(2U/μL)とβ-D-フルクトフラノシダーゼ(東洋紡(株)製「インベルターゼ」;4U/μL)を溶解
酵素液を乾燥後、作用電極部位に2%ナフィオン液を5μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ及び酵素を作用電極に固定化した。
【0038】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B:ビー・エー・エス社)の作用極に上記で作製した電極チップ、参照電極に銀/塩化銀電極、対極に白金線をセットした。この3電極をフルクトースまたはスクロースを含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.3)に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を実施した。0mM、10mM、20mM、又は48mMのフルクトース濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムは図11(酵素:フルクトースデヒドロゲナーゼのみ)、図12(酵素:フルクトースデヒドロゲナーゼとβ-D-フルクトフラノシダーゼ)、0mM、10mM、20mM、又は48mMのスクロース濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムは図13(酵素:フルクトースデヒドロゲナーゼのみ)、図14(酵素:フルクトースデヒドロゲナーゼとβ-D-フルクトフラノシダーゼ)に示すものとなった。このサイクリックボルタモグラムにおいて-0.8Vから+0.8Vへ掃引する際の+0.6Vの電流値は以下の通りであった。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
以上の結果より、フルクトースデヒドロゲナーゼを用いる電極にβ-D-フルクトフラノシダーゼを追加することで、スクロースの測定が可能であることが示された。
図1
図2
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図14